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地 域 福 祉 に お け る 「 地 域 市 場 」 指 向 の 住 民 参 加 を支 え る ネ ッ トワ ー ク
一熊 本 県 阿 蘇 郡A町 の 調 査 か ら 一
森 川 美 絵
〔要 約 〕
本 稿 は 、 地 域 福 祉 にお け る住 民 参 加 に つ い て 、熊 本 県 阿 蘇 郡A町 にお け る 1990年 代 後 半 の高 齢 者福 祉 にお け る住 民 参 加 の動 向 を事 例 と して 、 コ ミュ ニ テ ィの 自立 的経 済 や地域 雇 用 、お よび 、他 の世 代(集 団)・ 分 野 の 問題解 決 と 関連付 けた多 分 野 ・多世 代 相 乗 的 な アプ ロ ーチ か ら論 じる もの であ る。
A町 にお け る福 祉 コ ミュニ テ ィへ の 参加 は 、住 民 の(1>計 画 主体 と して の 参加 、(2)非 経 済主 体 と して の参 加 に加 え、(3)地 域経 済 の主体 と して の 参加 とい う3タ イ プの回路 を通 じて 進 め られ て お り、地 域 で の経 済 活動 とい う 要素 を多 分 に持 ち合 わせ なが ら福 祉 充実 を進 め よ うとす る理 念 、期 待 、意 向 、 計 画 が み られ た。 福祉 コ ミュニ テ ィへ の コ ミッ トメ ン トや経 済 活動 以外 の価 値 の重視 は、非 営利 主体 に限定 され る特 質 で は な く、 む しろ営利 ・非 営利 とい う 活 動 形 態 を問 わず 、そ の担 い手 に備 わ り、醸 成 され うる。
事 例 か ら示唆 され た地域 福 祉 にお け る住 民 参 加 の課 題 は 、第一 は 、概 念 ・理 論 上 の課題 、 す なわ ち 「地域 市場 」指 向 とい う範 疇 を加 え た 「参 加」 概 念 ・理 論 の 再 構 築 で あ り、 第 二 の課 題 は、 第 一 に付 随 す る実践 上 の 課 題 、 す なわ ち
「地 域市 場 」 指 向 の住 民 参 加 を支 え る ネ ッ トワー ク構 築 の 戦略 形 成 、 で あ る。
〔キ ー ワ ー ド〕
地 域 福 祉 、 福 祉 コ ミュ ニ テ ィ、 ま ち づ く り、 住 民 参 加 、 地 域 市 場 、 ネ ッ ト ワ ー ク
100 人 文 学 報NQ319(社 会 福 祉 学17)2001.3
1分 野 間 、 集 団 ・世 代 間 の 相 乗 的 発 展 ア プ ロ ー チ か らの
「住 民 参 加 」 分 析
本 稿 は 、 地 域 福 祉 に お け る 住 民 参 加 に つ い て 、 熊 本 県 阿 蘇 郡A町 に お け る 1990年 代 後 半 の 高 齢 者 福 祉 行 政 と住 民 の 動 向 に つ い て の 調 査 を も と に分 析 す る 。 こ こ で は ま ず 、 調 査 お よ び 分 析 の視 座 を提 示 す る 。
福 祉 を め ぐる 議 論 ・政 策 で は 、福 祉 か 経 済 か とい う二 分 法 的 議 論 や 「世 代 間 ・集 団 間 の パ イ の 取 り合 い 」 と い っ た 議 論 を 克 服 す る 、 新 た な枠 組 み が 出 始 め て い る 。 近 年 で は 、 「福 祉 と経 済 の 相 補 関 係 」に着 目 した 議 論 が 増 え て い る1。
ま た 、 複 数 の 世 代 が 抱 え る 問 題 が 各 々 深 刻 で 、 か つ 、 全 体 と して 投 入 可 能 な資 源 の 制 約 が 大 きい 場 合 、例 え ば 高 齢 者 とい う特 定 の カ テ ゴ リー(世 代 ・集 団)
を特 権 的 に扱 い 、 資 源 の 高 齢 者 カ テ ゴ リ ー へ の 投 入 拡 大 の み を す す め る こ と は 、 合 意 形 成 上 大 き な 問 題 ・困 難 を は ら む こ と も、 社 会 保 障 制 度 にお け る 世 代 間 対 立 と して 指 摘 され て い る 。 こ れ らが 示 唆 す る の は 、 「福 祉 と経 済 」 お よび
「集 団 ・世 代 間 」 の 相 乗 的 な 問 題 解 決 を 実 現 す る力 量(構 想 、 仕 組 み 作 り、 運 営)が 、 地 域 に ど の 程 度 どの よ う に 蓄積 され て い る(し て い く)の か とい う観 点 か ら福 祉 を議 論 す る重 要 性 で あ る 。 これ は 、 地 域 福 祉 の 、 地 域 の 「内発 的 発 展 」 へ の 統 合 を 目指 す ア プ ロ ー チ 、 と もい え る 。 内 発 的 発 展 の 概 念 を取 り込 む 必 要 は 、 今 後 の地 域 福 祉 論 の 課 題 と され て い る が(栃 本2000)、 本 稿 は 、 住 民
参 加 とい うテ ー マ か ら こ の 課 題 に取 り組 む もの で あ る 。 す な わ ち 、 「一 般 コ ミュ ニ テ ィ」 と 「福 祉 コ ミュ ニ テ ィ」(岡 村1974)と の 回 路 形 成 の 局 面 に焦 点 を あ て 、 対 人 サ ー ビ ス の 計 画 ・利 用 ・供 給 の仕 組 み づ く りが 、 ど の よ うに 「地 域 の 自立 的 経 済 や 地 域 雇 用 、 他 の 世代(集 団)・ 分 野 の 問 題 解 決 」 と リ ン ク し
て 進 め られ る の か とい う点 か ら、 住 民 参 加 の 動 向 を 分 析 す る 。
「福 祉 コ ミュ ニ テ ィ」 とは 、 生 活 困 難 を抱 え た 者 に対 す る地 域 で の 直接 的 具 体 的 な援 助 活 動 の 前 提 条 件 と して 要 請 され る も の で 、a)現 実 的 ま た は 可 能 的 な サ ー ビ ス 受 給 者 な い しは対 象 者 を 中 核 と して 、b)生 活 困 難 の 当 事 者 と同 じ立 場 に 立 つ 同 調 者 や 利 害 を代 弁 す る代 弁 者 、c)生 活 困 難 者 に 対 して 各 種 の サ ー ビ ス を 提 供 す る 機 関 ・団 体 ・施 設 の3者 か ら構 成 され る(岡 村1974:70>。 福 祉 コ
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ミュ ニ テ ィ は生 活 困 難 を抱 え る 当 事者 に加 え 、 福 祉 問 題 の 発 見 ・主 張 お よ び 課 題 解 決 に む け た計 画 ・実 践 の 主 体 、 そ して 、 ボ ラ ン テ ィ ア も し くは 事 業 者 と い っ た 福 祉 サ ー ビ ス の 主 体 か ら構 成 さ れ る こ と に な る 。 こ れ らの 諸 主 体 は 、 地 域 に 潜 在 的 資 源 と して 存 在 し、 地 域 の 多様 な組 織 や 個 人 を福 祉 コ ミュ ニ テ ィ と 関 係 づ け る 回 路 を通 じて福 祉 コ ミュ ニ テ ィの 主 体 ・資 源 と して 出 現 して く る 。 本 稿 で 検 討 す る の は こ の 部 分 、 す な わ ち 、福 祉 コ ミュ ニ テ ィ と よ り広 い 地 域 社 会 との 間 に 、 福 祉 問 題 の 発 見 ・主 張 お よ び 課 題 解 決 に む け た 計 画 ・実 践 の 主体 や 、 福 祉 サ ー ビ ス の 主 体 が 出 現 す る の を促 す 、 い か な る 回路 が 、 い か に形 成 さ れ て い る の か 、 そ れ らが どの よ う に 「地 域 の 自立 的 経 済 や 地 域 雇 用 、 他 の 世 代
(集 団)・ 分 野 の 問 題 解 決 」 と リ ン ク して い る の か とい う部 分 で あ る 。
2調 査 の概 要
2‑1A町 の 概 要
A町 は 、 県 都 熊 本 市 か ら約70km、 熊 本 県 の 北 端 ・阿 蘇 外 輪 山 の 外 側 、 大 分 県 に近 接 す る 中LLi間 地 域 に 位 置 す る。 広 さ は 東 西1Skm、 南 北llkm。 南 部M地 区 を 中 心 に 、 東 部 ・北 部 は標 高 が 上 が り、 起 伏 が 激 しい 。 標 高250〜800mの 間 に 耕 地 、 山林 、採 草 放 牧 地 が 展 開 し、 山 林 が 総 面 積 の8割 弱 を しめ る 。 古 くか ら林 業 が 盛 ん で 、 近 年 は 高 冷 地 の 気 候 を活 か した 野 菜 栽 培 や 畜 産 が 行 わ れ て い る ほ
か 、 温 泉 街 で の 旅 館 業 等 の サ ー ビ ス 業 も町 の 重 要 な 産 業 で あ る(A町2000:8‑
10)(表1)。
(表1)産 業 別 就 業 人 口(1995年 国 勢 調 査)
就業者総数 農林業 製造業 卸 ・小 売 業 サーヒ諜 匿 の他
4830人 1070人 1339人 725人 1497人 199人
(22.2%) (27.7%) (15.d%) (si.o%) {4.1%)
多 くの 中 由 間 地 域 と同様 、A町 も人 口 の 過 疎 化 を経 験 して い る 。 人 口 は1955 年 の16467人 を ピー ク に 減 少 傾 向 をみ せ 、 現 在 は1万 人 を 下 回 っ て い る が 、 近 年 は 人 口 減 少 に歯 止 め が か か っ て い る(表2)。 高 齢 化 率 は26.1%(1998年)
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と高 率 で 、高齢 者 のい る世帯 が 町 の全 世帯 中4割 を超 えてい る。 高 齢者が子 ど も世 帯 と同居 す る割 合 は比 較 的高 い(表3)。
(表2)人 口(国 勢 調 査) 1955年 ピ ー ク(1.6467人)
1980年 1985年].99・ 年 1995年 1998年
総 人 口 10813 10464 9854 9413 9638
14歳 以 下 2386(22.1) 2195(21.0} 1897(19.3)
65歳 以 上 1492(13.8) 1662(15.9) igsa(19.(i} 2L45(23.8) ̀L512(26.1)
(表3)高 齢 者世 帯 の推 移(A町 統計 資料)
総 世帯 数 高齢者 の い る世 帯 高 齢 者 のい
ない 世帯 単 身世 帯 夫婦 世 帯 同居 世 帯 計
1980年 2874 7.Z% 12.9 79.9 39.1 60.9%
1985年 2860 12.0 1G.2 71.$ 48.8 512
1990年 2856 8.G 14.8 76.7 42.4 57.6
A町 で は1985年 に 町 政50周 年 を機 に 、 斬 新 な ま ち づ く りの 構 想 が 提 唱 され た 。 以 来 、 伝 統 的 な 山村 の発 想 の 枠 を 越 え 、 現 代 の 知 恵 や 感 覚 を プ ラ ス して 新 しい もの を つ く り出 す こ と を基 本 精 神 に 、 地 元 の 杉 材 を ア ピー ル す るユ ニ ー ク な 木 造 建 築 物 、 多 彩 な イベ ン トの 実 施 、 字 ご との 「土 地 利 用 計 画 チ ー ム(後 に コ ミュ ニ テ ィプ ラ ン推 進 チ ー ム)」 の 結 成 、 「ま ち づ く り条 例 」 の 施 行 を とお した 住 民 参 加 活 動 な ど、 多 彩 な ま ち づ く り活 動 が 繰 り広 げ ら れ て い る 。但 し、
そ の よ う な 「ま ちづ く り」 が 内 外 か ら定 評 を 得 て き た … 方 で 、90年 代 半 ば に は 、 ま ち の 「福 祉 の 遅 れ 」 に対 す る住 民 の 不 安 、 「住 民 の 日常 生 活 に密 着 した 住 み 安 い ま ち づ く り」 を求 め る住 民 の 声 が 、 強 ま っ て い た(森 川1996、 東 京 大 学 教 養 学 部 教 養 学 科 第 三/東 京 大 学 大 学 院 総 合 文 化 研 究 科 相 関 社 会 科 学 専 攻 (編)1996)fiYの 、rうな 中 、90年 代 後 半以 降 、禰1卜行 政 は保 健 医 療 福 祉 の 連 携 に よ る地 域 介 護iシス テ ム 推 進 に 取 り組 み 始 め 、 町 民 主 導 に よ る地 域 づ く りに
お い て も 「福 祉 」 が 課 題 と して ク ロ ー ズ ・ア ッ プ さ れ る よ う に な っ た 。
2‑2調 査 の 経 緯
調 査 は、東 京 大学 教 養学 部 相 関社 会科 学研 究 室 を調査 主体 と し、A町 か らの 委託 調 査 「21世紀A町 まちづ く り調査 研 究」 の一 環 と して実施 され た。期 間 は
地域福 祉 にお け る 「地 域市場 」指 向の住民 参加 を支 え るネ ッ トワー ク103
1997年4月 か ら2000年3月 の3年 間 。 年2〜3回 、A町 を 訪 問 ・滞 在 し、 役 場 職 員 、 福 祉 専 門 機 関 、 住 民 組 織 ・グ ル ー プ へ の 聞 き取 りを行 っ た ・ ま た ・ 高 齢 者 福 祉 以 外 の テ ーマ も含 め て 、 町 内 の 婦 人 会 全 会 員(2090人)を 対 象 とす る 質 問 紙 調 査 を行 っ た(1999年12月 。 有 効 回 答 者 数1824:87.3%〉 。 そ の 他 適 宜 文 書 収 集 を行 い 、 各 年 度 末 にA町 で 調 査 の 報 告 会 を行 い 、 参 加 者 と の 意 見 交 換 を 行 っ た 。 調 査 結 果 は 、 ア ン ケー ト調 査 の概 要 版 を回 答 者 全 員 に 配 布 した ほ か 、 最 終 報 告 書 を役 場 は じめ 関 係 諸 機潤 に提 出 した(東 京 大 学 教 養 学 部 総 合 社 会 科 学 科/東 京 大 学 大 学 院 総 合 文 化 研 究 科 ・国 際 社 会 科 学 専 攻(編)2000a・
2000b>o
3
「 高 齢 者 福 祉 」 問題 の位 置
婦 人 会 会 員 に 対 す る ア ンケ ー ト調 査 で は 、 住 民 のA町 で の 生 活 につ い て の 問 題 認 識 や 展 望 につ い て 、 生 の 声 を広 く収 集 す る 目的 で 「A町 で の 生 活 、A町 の 将 来 につ い て 、 あ な た が 日頃 考 え て お ら れ る こ と を 自 由 に お 書 き くだ さ い 。 」 と い う 自由 回 答 欄 を最 後 に設 け た 。 全 部 で 回 答 者 は538人 。 住 民 の なか で 、 ど の よ う な 問 題 が 相 対 的 に よ り重 要 な もの と認 識 さ れ て い る か 、 そ の 概 要 を 把 握 す る た め 、 回答 中 に 「分 野 を示 す 語 彙 」 「世代 ・集 団 を 示 す 語 彙 」 の 出 現 し た 回 数 を カ ウ ン ト した(表4)。
こ の 表 か ら は 、A町 が 抱 え て い る 困 難 の 多 様 性 、 重 層 性 が 伺 え る 。 住 民 に と っ て福 祉 、 高 齢 者 対 策 が 重 要 な 課 題 で あ る こ と は 、 「高 齢 化 」 「高 齢 者 」
「福 祉 」 「介 護 」 と い っ た 関 連 す る 語 彙 の 出 現 回 数 の 多 さか ら も明 ら か で あ る。 しか し、 そ れ は農 業 、林 業 、 商 業 な どの 地 域 経 済 や 環 境 とい っ た 他 分 野 、 お よ び 、 若 者 ・こ ど も ・女 性 とい っ た他 世 代 ・集 団 に存 在 す る 課 題 と、 そ の 重 み に お い て 優 劣 つ け が た い もの と な っ て い る 。 各 分 野 、 各 世 代 ・集 団 が そ れ ぞ れ に抱 え る 問 題 は 深 刻 で あ り、 な か で も、 子 ど もの 減 少 や 若 年 層 の 流 出 ・地 元 で の 雇 用 問 題 は 、 世 代 横 断 的 に多 くの 住 民 が 強 い 問 題 意 識 を も っ て い る こ と が 伺 え る。
こ の よ う な 中 で 、 高 齢 者 福 祉 とい う カ テ ゴ リー を特 権 的 に扱 い 、 限 られ た 資
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(表4)自 由 回 答(「 最 後 に 、A町 で の 生 活 、A町 の 将 来 につ い て 、 あ な た が 日 頃 考 え て お ら れ る こ と を 自 由 にお 書 き くだ さ い 。」)の 分 野 別 、 世 代 ・集 団 別 の 語 彙 の 出 現 回 数。
(全 回 答 者538人)。
① 分野別
人 口(39)・ 少 子 化(9)・ 高 齢 化(34)
自 然(92)・ 環 境(51)・ 景 観(9)・ ご み(17)
教 育(21)・ 学 習1勉 強(24)・ 小 学 校(7)・ 中 学(8)・ 高 校(16) 福 祉(24)・ 介 護(27)・ 病 院(36)・ 障 害(3)
子 育 て(8)・ 保 育 ノ育 児(13)
仕 事(】21)・ 職 働 め1雇 用(64)・ 事 業(18)・ 失 業(1)
農 業1畑 ノ田(約75)・ 林 業1山1杉(83)・ 商 業 ノ商 店(34)・ 観 光(32) 参 加(73)・ 交 流(14)
② 世 代 ・集 団 別
子 ど も(196)・ 小 さ い 子1幼 児!赤 ち ゃ ん(12) 若 者1若 い 人(182)
中年仲 高 年(5)
高 齢 者!年 寄1老 人1じ い ち ゃ ん1ば あ ち ゃ ん(140) 障 害 者(1)
女 性(59)・ 嫁(36)・ 母(19)・ 主 婦(5)・ 妻(2)・ 娘(4) 男 性(11)・ 婿(1>・ 父(8)・ 夫(0)・ 息 子(2)
農 家(33)
源 の 「高 齢 者福 祉 カ テ ゴ リー」 へ の投 入 拡 大 の み を 主張 す る こ とは 困難 で あ る。 高齢 者福 祉 の充実 は、若 年 者 の地 域 での雇 用 問 題 、農 家 の高 齢 化 に伴 った 農 業 」農 家 の支援 策 な ど、一 連 の 問題解 決 ・施 策 の体 系 と有 機 的 に結 び付 け ら れ て提 示 され た と き、広 範 な住 民 の協 力 、参 加 を期 待 で きる とい え る。
4住 民 参 加 の 「回路 」 形 成
A町 で は 、 多 様 な住 民 が 高 齢 者 福 祉 分 野 に 参 加 す る う え で 、 一 般 コ ミュ ニ テ ィ と福 祉 コ ミュ ニ テ ィ との 問 に どの よ う な 回 路 が 形 成 さ れ た の だ ろ うか
。 調 査 か ら は ・3タ イ プ の 回路 の 形 成 が 観 察 され た 。 す な わ ち 、 住 民 の(1)計 画 主 体 と して の 参 加 、(2)非 経 済 主 体 と して の 参 加 、(3)地 域 経 済 の 主 体 と
して の 参 加 、 の 回路 形 成 で あ る(森 川2000)。 以 下 、 各 タ イ プ につ い て み て い こ う。
地 域福 祉 におけ る 「地域 市場」 指 向の住民 参加 を支 え る ネ ッ トワー ク105
4‑1非 経 済 主 体 と し て の 参 加 の 回 路 形 成
も と も と 、 地 域 の 高 齢 支 援 サ ー ビ ス に お い て 住 民 組 織 ・住 民 活 動 は 一 定 の 役 割 を 果 た し て き た 。 そ れ らの 企 画 は 、 町 の 社 会 福 祉 協 議 会 に よ る こ とが 多 い が 、 実 行 の 上 で は 、 地 域 全 体 に ネ ッ トワ ー ク を も っ た 住 民 組 織 の協 力 が 不 可 欠 な 役 割 を 果 た して い る 。 例 え ば 、 町 の 社 会 福 祉 協 議 会(社 協)で は 、 小 区 域 (字 、 校 区 な ど〉 単 位 で 、 独 り暮 ら し高 齢 者 を 対 象 に した 年 に1〜2度 の 会 食 サ ー ビス とい っ た イベ ン ト型 の 事 業 を実 施 して きた が 、 そ れ は 、 婦 人 会 の 全 面 的 協 力 の も と で行 わ れ て い るz。 また 、 地 域 単 位 で は ない グ ル ー プ に つ い て も、
相 当 数 が 社 会 福 祉 協 議 会 に ボ ラ ンテ ィア 団 体 と して 登 録 さ れ 、活 動 を 続 け て い る。 さ ら に 「老 人 保 健 福 祉 計 画 及 び 介 護i保険 事 業 計 画 」(案)で は 、 「介 護 保 険 で もれ た 部 分 を コ ミュ ニ テ ィ ・住 民 で 支 え る体 制 」 が 目指 され 、 近 隣 ベ ー ス の 住 民 活 動 と して の 高 齢 者 の 見 守 り ・声 か け体 制 の 強 化 や 、 ボ ラ ン テ ィア ・セ ン タ ー の 設 置 、 有 償 ボ ラ ン テ ィ ア 制 度 の 実 施 が 盛 り込 ま れ て い る(A町 2000)。 ボ ラ ン テ ィア ・セ ン ター の 設 置 は 、 よ り 自 由 な個 人 と して住 民 が 自発
的 ・柔 軟 に福 祉 活 動 に 参 加 で きる た め の 制 度 と して 、 住 民 側 か ら福 祉 行 政 や 福 祉 専 門 機 関 に提 案 され 、福 祉 行 政 に採 用 さ れ た もの で あ っ た 。
しか し、 近 年 の 新 た な動 き と して 特 に注 目 す べ き は 、 こ れ らの 活 動 に 加 え 、 従 来 は 活 動 主 旨 や 設 立 経 緯 か らい っ て 「福 祉 」 「高 齢 者 支 援 」 と は縁 遠 か っ た グ ル ー プ が 、 新 た に福 祉 との 間 に接 点 を見 出 し、 高 齢 者 支 援 とい う観 点 か らの 活 動 を 開 始 し始 め て い る 点 で あ る。
そ の も っ と も顕 著 な例 は 、2000年 度 か ら公 立 老 人 保 健 施 設 の リハ ビ リ テ ー シ ョ ン ・プ ロ グ ラ ム と し て 開 始 予 定 の ガ ー デ ンセ ラ ピ ー 事 業 にお け る 、 「A町 ハ ー ブ を 楽 し む 会 」 の ボ ラ ン テ ィ ア と して の 参 加 で あ る 。 「ハ ー ブ を 楽 し む 会 」 は1995年 に設 立 され た 。 当 時 は ボ ラ ンテ ィ ア 団 体 と して 組 織 化 され た わ け で は な く、 「ハ ー ブ に よ る農 村(中 山 間 地 域)の 活 性 化 活 動 」 の …環 と して 、 農 林 課 主 導 の も と、 ハ ー ブ の 産 業 化 ・商 品 化 を念 頭 に お い た 活 動 を 中心 と して い た。 しか し、 需 要 の 低 迷 な ど、 産 業 と して の 発 展 は短 期 的 に 困 難 で あ る こ と が 判 明 し、 会 の 活 動 は 商 品 化 ・産 業 化 へ の 志 向 を弱 め 、 農 村 女 性 が 生 活 を楽 し む 機 会 を拡 大 す る 方 向 に傾 斜 す る。 そ の 過 程 で 、 活 動 も会 員 に よ る 自 主 運 営 に
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転 換 し、 「自分 達 の 手 で グ ル ー プ を結 成 して 、研 究 活 動 を続 け 、 農 村 生 活 に潤 い を与 え る ハ ー ブ の 普 及 活 動 を続 け る 」 こ と と な っ た 。1999年8月 時 点 で の メ ンバ ー は44名 、 会 員 の 多 くが 、 自宅 で ハ ー ブ を栽 培 して い る 。 月1回 の 例 会 を開 き、 ハ ー ブ に つ い て の知 識 を深 め る ほ か 、 町 内 の お 祭 りや バ ザ ー な どの 限 られ た場 で 、 会 員 が 栽 培 ・加 工 した ハ ー ブ 製 品 を販 売 し、 そ の 収 入 を会 の 運 営 費 用 に 充 当 して い る。
ガ ー デ ンセ ラ ピー 事 業 へ の 会 の 参 加 は 、 事 業 の 計 画段 階 か ら始 ま っ て い た 。 す な わ ち 、 行 政 主 導 で 事 業 の プ ラ ンニ ン グ チ ー ム が 結 成 され た が 、 そ こ に は 、 老 人 保 健 施 設 の 職 員 や 医 療 関 係 者 、 行 政 職 員 に 加 え 、 「ハ ー ブ を楽 しむ 会 」 の 会 長 と役 員 に 、 メ ンバ ー と して の 参 加 要 請 が 行 政 か ら行 わ れ た。 行 政 側 は 、 事 業 の 発 案 の 時 か ら 、 こ の 会 の 存 在 を知 っ て お り、事 業 へ の 会 の 協 力 体 制 を確 保 す る見 込 み を た て て 、 事 業 計 画 に乗 りだ した の で あ る3。 プ ラ ンニ ン グチ ー ム の な か で は 、 事 業 に対 す る 「ハ ー ブ を 楽 しむ 会 」 の ボ ラ ンテ ィ ア と して の協 力 体 制 につ い て 、検 討 が 行 わ れ た。 そ の 後 、 会 の 活 動 内 容 が 大 き く変 化 した わ け で は な い が 、 ボ ラ ンテ ィア 活 動 が 会 の 活 動 と して 意 識 され 始 め た4。 最 近 で は 、 養 護 老 人 ホ ー ム で ア ロ マ テ ラ ピー の ボ ラ ンテ ィ ア 活 動 な ど を実 施 して い る 。 こ の よ う に 、 会 は 自主 活 動 に 転 じた後 、 「個 人 の 趣 味 の 追 求 と 、 ハ ー ブ の 楽 しみ の 地 域 へ の 普 及 」 を ベ ー ス と した上 で 、 高 齢 者 ケ ア 事 業 へ の ボ ラ ン テ ィア参 加 と い う側 面 を新 た に 加 え る に至 っ た 。1999年 夏 の 時 点 で は 、 ガ ー デ ンセ ラ ピ ー事 業 へ の 参 加 の 具 体 的 内 容 に つ い て 、 会 員 相 互 で 議 論 が 詰 め ら れ て い る わ け で は な い 。 しか し、 会 員 の 問 に は 、 「自分 達 が い ず れ お 世 話 され る か も しれ な い と こ ろ な の だ か ら」1自 分 達 の 活 動 が 地 域 に役 立 つ の で あ れ ば 」 と い う意 見 と と も に 、 で き る 限 り協 力3噂 る とい う合 意 が 出 束 上 が 一・て い る 、
「ハ ー ブ を 楽 し む 会!は 最 初 か ら高 齢 者 ケ ア 事 業 に 関 わ る 必 然 性 の あ る グ ル ー プ で は な く、 ガ ー デ ンセ ラ ピー 事 業 で の 行 政 側 との 協働 計 画 が な け れ ば コ ミ ッ トメ ン トが 生 ま れ る こ と は な か っ た で あ ろ う 。 しか し、 計 画 段 階 か らの
「ハ ー ブ を 楽 しむ 会 」 と行 政 との協 働 関 係 に よ り、 会 の メ ンバ ー の な か に事 業 へ の 信 頼 や 役 割 意 識 が 生 ま れ(「 プ ラ ンニ ン グ チ ー ム の メ ンバ ー に加 わ っ た か ら に は」 「自分 た ち もお 世 話 に な る と こ ろ だ し」)、 事 業 参 加 の 意 志 が 形 成 さ
地 域 福 祉 に お け る 「地 域 市 場1指 向 の 住 民 参 加 を 支 え る ネ ッ トワ ー ク107
れ た 。 こ れ は 、 コ ミュ ニ テ ィの 中 で 高 齢 者 ケ ア に住 民 が 関 わ る 環 境 を、 住 民 と の 協 働 を基 本 に しな が ら、 行 政 が 積 極 的 に 開 拓 した 成 果 で あ る 。 す な わ ち 、 福 祉 コ ミ ュ ニ テ ィ と一 般 コ ミュ ニ テ ィ と の ネ ッ トワ ー クが 福 祉 担 当 行 政 の 主 導 に よ っ て 広 範 囲 に 拡 大 さ れ 、 そ の ネ ッ トワ ー ク を 通 じ、 「サ ー ビ ス 提 供 ボ ラ ン テ ィア」 とい う福 祉 コ ミュ ニ テ ィ資 源 が 、 新 規 に 一 般 住 民 か ら獲 得 され た の で あ る 。
こ の よ う に 、 「サ ー ビス 提 供 ボ ラ ン テ ィア」 とい う福 祉 コ ミュ ニ テ ィ資 源 を 新 規 に一 般 住 民 か ら獲 得 す る 回路 は 、 行 政 と住 民 双 向 か ら の積 極 的 な働 きか け
に よ り拡 大 して きて い る 。
4‑2計 画 主 体 と し て の 参 加 の 回 路 形 成
「地域 づ くり」 か らの広 が り
高齢 者 支援 につ なが る地域 経営 の必 要性 は、 各地域 の地 域経 営 に積 極 的 に関 わ る住 民 の 間 に浸 透 しつ つ あ る。先 駆 的 な取 り組 み と して は、1997年 、C地 区 の土地 利用 計 画 チー ム(「1舎 」 に名 称 変 更)が 主 催 した 、集 落福祉 に関す る シ ンポ ジウム が挙 げ られ る。 また 、最 近 で は、 中心 市街 地 活性 化 法 の モ デ ル事 業 と して進 め られ てい るM地 区 の商 店街 活 性 化計 画(1998年 秋 〜)、2001年 発 刊 予 定 の 町 の新 総 合計 画(新 シナ リオ)の 準 備 と して開催 された大 字単 位 の話 し 合 い 「地 域 別(大 字 別)わ い わい 懇」(1999年 秋)等 、地 域 住民 が地域 の取 り 組 み を議 論 す る場 で は、高 齢者福 祉 とい う観 点 か ら施 策 を展 開 しよ う とい う意 見 もか な り定 着 して きた(地 域 別 わい わい 懇 実行 委 員会 ・A町 ・地域 総 合研 究 所1999>。
こ こで注 目すべ きは、 これ まで のA町 の地 域 づ く りにお い て 、地 域 住 民 の 主 体 的 な地域 構 想 へ の参 加 とい う経 験 が 蓄積 され て きた こ とが 、地 域 の福 祉 に関 す る計画 や構 想 に もプ ラスの効 果 を もた ら してい る点 で あ る5。す なわ ち、従 来 の地域 づ く りの積 み重 ね に よ り、地 域 住民 が 主体 的 に 自 らの 地域 を考 え、直接 的 に 自分 の利 益 だ けで は な く、地域 の将来 の利益 を考 えなが ら地 域経 営 の構 想 をたて る とい うプ ロセ スが 、 あ る程 度 定着 して きてい る。 そ して 、住 民 の なか で 、 これ まで 主 に福 祉 以外 の分 野 で地 域づ く りに主体 的 に取 り組 んで きた人 々
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が 、高 齢化 や福 祉 の 問題 に 目を向 け 、地域経 営 の一 環 と して福祉 に関す る構 想 や活 動 に も積 極 的 に関 わ る ように な って きて い る ので あ る。
そ れ を よ く表 して い る のが 、例 え ば、C地 区 で土 地 利用 計画 に関 わ り、 その 後 も住 民 主体 の地域 づ くりに積 極 的 に取 り組 ん で きた住民 組 織 「1舎 」 の メ ン バ ーの 次 の よ うな言 葉 で あ ろ う。
「 『1舎 』 の 前 身 で あ る 土 地 利 用 計 画 チ ー ム の 時 代 に も、C地 区 の構 想 の 中 の 一 つ に福 祉 とい う もの が あ っ て 、 地 域 の 人 は 地 域 で み よ う と い うの が あ り
ま した 。 町 の 計 画 も あ る が 、C地 区 に も小 さ な福 祉 セ ン タ ー み た い な もの が 必 要 じゃ な い か と。 そ れ と私 達 は こ ど も を追 い 出 して い る ん で す よね 。 何 も ア プ ロ ー チ して い な い 。 … 当 時 、 地 域 福 祉 セ ン タ ー とい う もの を考 え て い た ん だ け ど、 そ こ の 職 員 が 必 要 に な っ て く る で し ょ。 そ れ を 地 元 の 子 ど も達 に 、 福 祉 の 学 校 に 行 っ て経 験 を積 ん で 戻 っ て こ い よ、 と。 そ うい う と き に 自 分 た ち で 受 け皿 を作 ろ う じ ゃ な い か と 。 追 い 出 す だ け で な く戻 す こ と を考 え た と き 、 一 つ の雇 用 の 場 と して 地 域 の 産 業 に な る ん じ ゃ な い か 。 地 域 にサ ー ビス を提 供 して い く こ とで 自 ら を成 り立 た せ て い く。 …5、6年 経 っ て そ れ を検 証 して み る と 、 何 も手 を つ け て い な か っ た の は そ の(福 祉 の)部 分 。 … 5、6年 前 に 置 き去 り に して い た もの を み ん な で 考 え て み よ う 、 そ れ は コ ミュ ニ テ ィプ ラ ン(各 字 ご との 住 民 に よ る 土 地 利 用 計 画)が 取 り組 ん で い か な け れ ば な ら な い 。 コ ミュ ニ テ ィ プ ラ ン の 次 の 展 開 と して 福 祉 とい う もの を 、 とい う 話 が あ っ て 、 … 福 祉 をC地 区 の テ ー マ に して も っ て い こ う と、 よ
うや くそ の 取 り組 み を は じめ た と こ ろ で す 。 」(聞 き取 り、1997年8月)
「高齢 者福 祉 」 か らの 広 が り
「高齢 者福 祉」 の 業 務 、活 動 の主 体 か ら も、 幅広 い 分 野 との接 点 や ネ ッ ト ワー ク を形 成 す る動 きは少 しず つ 出 始 め て い る 。行 政 の福 祉 担 当 職員 の 中 に は、 ケ ア事業 の展 開 が地域 の新 た な事 業 展 開 を誘 発 す る よ うな事 業 戦略 に関心 を持 つ もの もい る。 例 えば 、ハ ー ブ を取 り入 れ た ガー デ ンセ ラ ピー事 業 の推 進 は、高 齢者 ケ ア と しての成 果 のみ な らず 、 「新 しい取 り組 み」 に対 す る町外 の
地域福 祉 にお け る 「地域 市場」指 向の住民 参加 を支 える ネ ッ トワー ク109
関 心 を獲 得 し、 他 地 域 と の 交 流 を生 む可 能 性 を持 っ て い る。 さ ら に は 、 地 域 で の ハ ー ブ の 需 要 や 栽 培 技 術 の 高 ま り、 ハ ー ブ 産 業 や ハ ー ブ を 活 用 した環 境 づ く りな ど 、様 々 な地 域 経 営 上 の 可 能 性 を は ら ん で い る 。 こ の よ う に 、 高 齢 者 の 生 活 支 援 事 業 が 様 々 な分 野 の 取 り組 み と結 び つ くこ と は 、 新 た な 地 域 経 済 の 土 壌 を増 や す こ と に も な る 。 福 祉 担 当 課(住 民 課)の あ る職 員 は 、 この よ う な 可 能 性 に つ い て も既 に視 野 に い れ て お り、 近 隣 商 店 街 の 景 観 形 成 や ッ ー リ ズ ム政 策
にお け る ガ ー デ ンセ ラ ピー や ハ ー ブ の 活 用 を 今 後 の 課 題 と して あ げ て い る(老 人保 健 施 設 に お け る 園 芸 療 法 に 関 す る プ ラ ンニ ン グ チ ー ム1998;職 員 か らの 聞 き取 り、1999年10月)。
しか し、 こ れ ら は 、 ・・部 の 担 当 者 の 思 考 レベ ル で の 課 題 に と ど ま っ て お り、
福 祉 部 門 の 組 織 的行 動 に は結 び つ い て い な い の が 現 状 で あ る 。 起 業 、NPO事 業 とい っ た様hな 地 域 住 民 の 活 躍 の あ り方 や 、 地 域 経 済 ・雇 用 との 関 連 につ い て は 、 高 齢 者 福 祉 ・介 護iの行 政 計 画 レベ ル で は 自覚 的 に議 論 ・構 想 さ れ て い な
いo
A町 で は町 単 位 お よび小 地 域単 位 で の地 域福 祉 活動計 画 を民 間 ベ ー スで策 定 し、 そ の中で 地域 経 営 と福 祉 活動 との 関 わ りを住 民 が 主体 的 に見 い だす 契機 を 増 や しつ つ 、 さ らにそれ を行 政 が最 大 限 にサ ポ ー トす る こ とが 必 要 な時 期 に き て い る と もい え る。
4‑3地 域 経 済 の 主 体 と し て の 参 加 の 回 路 形 成
A町 で は90年 代 後半 以 降 、経 済 主 体 お よび経 済 活動 と して の福 祉 へ の か か わ りとい う視 点 や 意識 が 、地 域住 民 にあ る程 度浸 透 して きて い る。農 協 が 介護 ・ 家事 援 助サ … ビス事 業 に参 入 して きた。 また、 中心市街 地活 性 化 法 のモ デ ル事 業 と して進 め られ て い るM地 区 の商 店街 活 性 化計 画(1998年 秋 〜)で は、福 祉 機 能 を備 えた 商店 街 づ く りが計 画 の柱 の ひ とつ に位 置 付 け られ た。
婦 人会 会 員 へ の ア ンケ ー ト調 査 で は、 地 域 住 民(女 性)の 起 業 意 向 の な か に、高 齢者 へ の生 活 支援 と結 びつ い た ものが あ る程度存 在 す る こ と も明 らか に され た(表5)。IV一 問11で は 、回答 者 の うち6%(87人)が な ん らか の事 業 を始 め よ う と考 えてお り、 そ の うちの8名 は 「公 共 ・福 祉 関連」 の事 業 を今 後
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予 定 してい た。 具体 的 には 、託児 兼 託 老施 設 の経 営 、老 人 い こい の場 と して の 喫茶店 と宿 泊施 設 の経 営 、介 護i等とい った起業 意 向がみ られ た。 さ らに、地 域 状 況 の改 善 の戦 略 と して、地 域 の野 菜 を高 齢者 の食事 サ ー ビスの材 料 と して加 工 ・販売 とい っ た ア イデ ィア も出 され て い る(IV一 問4)。
(表5)地 域 の 女 性 の 起 業 意 向(1999年12月 ア ン ケ ー ト調 査N一 問4・ 問11)
n1一 間11ど こ で 、 ど の よ う な 華 業 を 始 め る お っ も り で す か 。
・地 域 で そ の ま ま 生 活 し た い 高 齢 者 を 地 域 で 支 え る 事 が で き る拠 点 づ く り。 具 体 化 して い な い が 、 少 子 化 … 子 育 て 支 援 も 可 能 な 福 祉 施 設 が あ れ ば と思 い つ づ け て い る と こ ろ
(託 児 ・託 老 、 同 時 に 可 能 な 施 設)地 域 に 最 も 必 要 な もの
・介 護 の 仕 事
カ ゆ 」 、 ・'"笠 ノー響"「 ロ 「'γa
い け る の か を 具 体 的 に お 書二き くだ さ いn
・自家 製 の 加 丁 品 を 多 く作 り、 又 野 菜 等 も種 類 多 く作 り、 そ れ を 利 用 した(旬 の 野 菜) 昔 の 料 理 や 健 康 食 作 りを す る 。
・野 菜 は 野 菜 の ま ま で は な か な か 日 持 ち も せ ず 売 れ な い の で 福 祉 サ ー ビ ス の 一 っ と して 給 食 サ ー ビ ス の 材 料 と して 売 り出 す 。
サ ー ビス 利 用 者 側 の 意 識 をみ て も、 民 間 お よ び有 料 サ ー ビス に 対 す る利 用 意 向 は 、 食 事 づ く り、 食 事 配 達 、 掃 除 ・洗 濯 、外 出 付 添 な どで 高 い(表6)。
こ う した サ ー ビス の 需 要 と供 給 の 意 識 を み る 限 り、A町 で は 、 近 い う ち に経 済 主 体 が 高 齢 者 福 祉 の 資 源 と な り、 同 時 に 、福 祉 が 地 域 経 済 活 性 化 の資 源 と な る こ とが 、 予 測 で き そ うで あ る 。
但 し、 こ の よ う な 「福 祉 」 と 「経 済 」 との 調 和 的 発 展 が 、 果 た して順 調 に実 現 す る か ど うか に つ い て は 、 不 安 な 要 素 も 多 い 、,不安 の 第 の 要 素 は 、 「需 要 の潜 在 化 」 で あ る。 介 護 保 険 の 利 用 料 が 介 護 サ ー ビス 需 要 を抑 制 す る とい う議 論 は 盛 ん だ が 、 町 で は 、 これ まで に も同 様 の 事 態 が お こ っ て い る 。 農協 が99年 か ら 開 始 した 有 料 の 介 護 ・家 事 援 助 サ ー ビ ス は 、利 用 料 が 比 較 的 低 額(1時 間 600円 程 度 〉 で あ っ た に もか か わ らず 、 利 用 が 非 常 に伸 び悩 ん だ。 利 用 の 希 望 や 意 識 は あ る に もか か わ らず 、 実 際 の 利 用 に結 び つ か な い 点 に つ い て 、 サ ー ビス 担 当 者 や 行 政 ・社 協 で は そ の 理 由 を 「地 域 の 目が 気 に な る」 とい っ た 家 族 内 介
地域福 祉 にお け る 「地 域市場 」指 向の住民 参加 を支え るネ ッ トワー ク111
(表6)サ ー ビ ス の 利 用 意 向(1999年12月 ア ン ケ ー ト 調 査III‑一 間3)
III一 問3
あ な た 自身 が高 齢で か らだ が弱 り、 日常 の 身の まわ りの こ とをす るのが 困難 に な った時 、 親 族 以外 か らの 支援 を積極 的 に受 け入れ よ うと思 い ますか。 ア 〜 クの それ ぞれ にっ いて 、 積極 的 に受 け入 れ たい 人 ・団体 の番 号 に鵬 ○ をつ けて くだ さい。
1.と な り近 所2.民 生 委 員3.ボ ラ ン テ ィ ア 団 体
4,社 会 福 祉 協 議会 や 民 間 の有 料
サ ー ビス ア 掃 除 ・洗 濯 199人(16.4%)57人(4.7%)593人(48.8%) 644人(53.0%) イ 買 い 物 563人(44.6%)58人(4.6%)513人(40.6%) 514人(40.7%) ウ 食 事 づ く り 238人(19.7%)48人(4。0%)528人(43.7%) 677人(56.0%)
工 食事の配 達 146人(12.:3%)51人(4,3%)519人(43.S%) 706人(59.7%)
オ 外 出の付 添い 271人(23.1%)65人(5.5%)602人(51.3%) 550人(46。8%)
力 農作業 の手伝い 388人(40.9%)18人 く1.9%)401人(42.3%) 35】 人(37.0%)
キ 友愛訪 問 5i6人(46.1%)205人(18.3%)478人(42。7%) 302人(27.0%)
ク 安否確認 751人{sz.s%>271人(22.7%)305人(25.5%) 345人(28.8%)
護 規 範 や、措 置制 度 のサ ー ビス(対 象 者 は無 料 の場 合 が 多い)と 比較 した際 の 負 担 感 、実 際 の経 済負 担等 に よ り説 明 して い た。今 後 、 これ らの理 由の是 非 や そ の他 の理 由、 お よび 、解 決 法 が 見 出 され な けれ ば 、支援 サ ー ビスの 需 要 は増 えず 、経 済 主体 の参 入や経 済 活 性化 の効 果 につ い て あ ま り期待 で きない こ とに なる。 これ は町 に限 らない全 国共通 の重 要 な論 点 と して 、今後 深 め てい く必 要 が あ ろ う。
不 安 の 第 二 の要 素 は 、A町 にお け る積 極 的 な新 規 ネ ッ トワ ー ク形 成 の視 点 や 戦略 の不 在 、 とい う問題 で あ る。 そ の典 型 的 な例 が 、配食 サ ー ビス の民 間委 託 交 渉 の失 敗 で あ る。従 来 、行 政 で は特 別養 護 老 人 ホ ーム に配 食サ ー ビス を委 託 してい たが 、施 設 の 職員 の み で調理 可 能 な食事 数 には限度 が あ り、サ ー ビス 規 模 は週1回25食 程 度 に抑 え られ て きた。利用 希 望者 の増 加 や配 食 回数 の増加計 画 な どか ら、99年 度 には行 政 は 町内 の商 店街 にサ ー ビス委 託 を もち か けた。 し か し、老 人食 と しての献 立 の 配慮 や栄 養 士免 許 取得 にか か る コス トとい っ た理
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由 か ら、 打 診 は 断 られ 、 委 託 交 渉 は 失 敗 に お わ っ た とい う(住 民 課 担 当 者 か ら の 聞 き取 り)。 こ の 「失 敗 の プ ロ セ ス 」 は 、 福 祉 と地 域 の 経 済 主 体 と の 関 係 が 、 本 来 的 に相 互 発 展 とい う発 想 に 馴 染 ま な い こ と を表 して い る の で は な い 。 こ れ は む しろ 、 両 者 の ネ ッ トワ ー クが 十 分 で な い こ との あ らわ れ で あ る。 なぜ な ら、 先 述 した よ う に 、 地 元 ・自家 製 の 食 材 や 、 食 品 加 工 ・調 理 技 能 を活 用 し た 起 業 へ の期 待 、小 地 域 規 模 で の ミニ デ イサ ー ビ ス 運 営 の 意 向 が 、 地 域 の 女 性 に は あ る程 度 存 在 して い る 。 こ の よ う な点 を 踏 ま え る な ら ば 、 食 事 サ ー ビス に つ い て も、単 に 既 存 の 商店 街 に打 診 す る事 に 加 え 、 新 た な 戦 略 を とる こ とが で き る 。 す な わ ち 、 募 集 や 企 画 の 立 て 方 を工 夫 し、 新 た な 女 性 グ ル ー プ や 住 民 グ ル ー プ と の協 働 プ ラ ンニ ン グ方 式 で 、 配 食 サ ー ビ ス や 、 会 食 つ き ミニ デ イ サ ー ビ ス サ ー ビス の 展 開 を図 り、福 祉 サ ー ビ ス 充 実 と あ わ せ て 新 しい 地 域 事 業 ・雇 用 を創 出 す る とい う戦 略 で あ る 。 こ うい っ た 、 潜 在 的 な経 済 主 体 お よび 活 動 主 体 との ネ ッ トワ ー ク形 成 と い う 戦 略 は 、 町 の 高 齢 者 福 祉 の 専 門 機 関(福 祉 行 政 や 社 会 福 祉 協 議 会 等)に よ っ て 積 極 的 ・自覚 的 に は 活 用 され て い な い 。
他 方 、 も と も と社 会 参 加 と就 業 の 融 合 的 な活 動 体 と して 発 展 し、 定 評 を勝 ち 得 て き た女 性 グ ル ー プ(常 勤 とパ ー トで 構 成)の 場 合 、 行 政 側 も 「活 用 す る 組 織 」 と して 認 知 し、 介 護 保 険 制 度 の 枠 外 で の ミニ デ イ サ ー ビス や 食 事 サ ー ビス の 委 託 が 実 現 して い る。 住 民 グ ル ー プ の 行 政 委 託 を通 じて の 福 祉 サ ー ビ ス 市 場 へ の 参 入 は 、 行 政 の グ ル ー プ へ の 「信 頼 」 、 す な わ ち住 み や す い ま ちづ く りへ の モ チ ベ ー シ ョ ンの 高 い 組 織 と して の 認 知 が カ ギ と な っ て い た 。
5地 域福 祉 にお け る住 民 参 加 の課 題
以 上 、 地 域 福 祉 に お け る コ ミュ ニ テ ィの 「内 発 的 発 展 」 と関 連 付 け られ た 多 分 野 ・多 世 代 相 乗 的 な ア プ ロー チ に よ る 住 民 参 加 の推 進 とい う観 点 か ら、A町
に お け る福 祉 コ ミュ ニ テ ィへ の 参 加 の 回 路 形 成 を 、(1)計 画 主 体 と して の 参 加 、(2)非 経 済 主 体 と して の 参 加 、(3)地 域 経 済 の 主 体 と して の 参 加 の3
タ イ プ に つ い て 検 討 した 。 こ こで は 、A町 の 事 例 か ら明 らか に され た 地 域 福 祉 に お け る住 民 参 加 の 課 題 を示 す 。 第 一 は 、 概 念 ・理 論 上 の 課 題 、 す な わ ち 「地
地域福 祉 にお け る 「地域 市場」 指 向の住 民参加 を支 え るネ ッ トワー ク113
域 市場 」指 向 とい う範 疇 を加 えた 「住民 参 加」 概 念 ・理 論 の再 構 築 、 で あ る。
第二 の課題 は 、第 一 に付 随 す る実践 上 の課 題 で あ り、 「地域 市 場」 指 向 の住 民 参 加 を支 え る ネ ッ トワー ク構築 の戦 略形 成 、 であ る。
5‑1「 地 域 市 場 」 指 向 と い う範 躊 を 加 え た 「住 民 参 加 」 概 念 ・ 理 論 の 再 構 築
福 祉 の供 給 体 制 に関 す る議論 は、 従来 の 「政府(に よる福 祉)か(政 府 に よ る福 祉 の否 定 と しての)市 場(へ の信 頼 か)」 とい う二 分法 か ら、 「福 祉 国 家 を前 提 し、そ の弊 害 を除去 した上 で の、 多元 主 義 的 な福 祉 体 制」 につ い ての議 論 へ 展 開 しつつ あ る。 そ して、 自助 ・公 助 と並 ぶ 「共助 」 圏 の意 義 が再 発 見 さ れ、 そ の活用 と育 成が模 索 され て い る。 この よ うな方 向性 は 「コ ミュ ニ テ ィ ・ 地域 社 会 の主体 的 かつ適 正 な参加」 の確 保 ・整備 ・発 展 と定 義 され 、社 会福 祉 にお い て も 「参 加 型福 祉 」 とい う用 語 で盛 ん に主張 、議 論 され て きた。
武 川(1996)に よれ ば、 日本 にお け る 「参 加 」 は、2つ の時期 に、そ れ ぞれ 異 な る文脈 で議論 され て きた。 ひ とつ は 、1960年 代70年 代 にお け る 「人 々 を拘 束 す る こ と に な る政 治 的 な意 思 決 定 」 との 関 わ り と して の 「政 治 参 加 」 で あ り、 もうひ とつ は 、80年 代90年 代 にお け る 「人 々 の交互 の交 わ りを意味 す る社 会 的 な活 動」 との 関 わ りと して の 「社会 参加 」 で ある。 「参加」 を議 論 す る場 合 には(1)「 政 治 参加 」 と(2>「 社 会 参加 」 は分 離 して扱 わ れ るべ きもの で は な く、 「広義 の社 会参 加」 とい う視 点 で統 合 されて議 論 され るべ き と して い る。
社 会福 祉 分 野で90年 代 に盛 ん に なっ た 「参 加 型福 祉 」論 で力 点 が置 か れ たの は(2)の 「社 会参 加 」 で あ り、 と りわけ注 目を集 めた の は個 人 の ボ ラ ンテ ィ
ア活動 や非営 利 団体 の活動 と して の社 会 サ ー ビス の供給 へ の貢献 であ った。 政 治的 プ ロパ ガ ンダ、 中央政 府 にお け る社 会福 祉 の政 策設 計 、 多 くの社会 福祉 に お ける住民 参 加 論 で は、 「参 加型 福祉 」 論 の 「参 加 す る住民 」 像 には 、 「ボ ラ ンテ ィア」 「非 営利 」 とい う ラベ ルが貼 られ た6。 そ して、 「参加 」 とい う概 念 に込 め られ る 「コ ミュニ テ ィへ の コ ミッ トメ ン ト」 、 「実践 にお け る経 済 的要 素以外 の活動 原 理 の重 視」 とい う価 値 は、 「参 加型 福祉 」 の担 い手 た るボ ラ ン
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テ ィア 、 非 営 利 活 動 の担 い 手 に 備 わ っ た 特 質 と さ れ た 。
しか し、A町 の 事 例 で は 、 実 際 に地 域 の な か で福 祉 を住 民 参 加 で 進 め よ う と す る と き、 「地 域 市 場 」 指 向 の 住 民 参 加 とで も言 え る よ うな 、 地 域 で の 経 済 活 動 とい う要 素 を多 分 に 持 ち 合 わ せ な が ら福 祉 充 実 を 進 め よ う とす る理 念 、 期 待 、 意 向 、 計 画 が み ら れ た 。 こ の と き、 住 民 の 活 動 は 、 「NPO・ ボ ラ ン テ ィ ア 」 活 動 と い う範 囲 の 内 部 に割 り切 っ て 議 論 す る こ とが で き な い 。 こ の よ う な 、 営 利 活 動 、 非 営 利 活 動 とい う形 態 に こ だ わ らず 、 コ ミュ ニ テ ィへ の 参 加 と い う価 値 ・動 機iを持 ち な が ら、 コ ミュ ニ テ ィの 生 活 ニ ー ズ に貢 献 す る よ う な住 民 に よ る経 済 活 動 は 、 近 年 「コ ミュ ニ テ ィ ・ビ ジ ネ ス 」 「市 民 起 業 」 とい う
タ ー ム で 概 念 化 され は じめ て い る。 「コ ミュ ニ テ ィ ・ビ ジ ネ ス 」 概 念 で は 、 コ ミュ ニ テ ィへ の コ ミ ッ トメ ン トや 経 済 活 動 以 外 の 価 値 の 重 視 は 、 非 営 利 主 体 に 限 定 され る特 質 で は な く、 む しろ営 利 ・非 営 利 とい う活 動 形 態 を 問 わ ず 、 そ の 担 い 手 に備 わ り、 醸 成 さ れ う る もの と され て い る(細 内1999)。 地 域 福 祉 の 住 民 参 加 論 に お い て も、 こ の よ う な 「コ ミュ ニ テ ィ ・ビ ジ ネ ス 」 概 念 を 取 り込 み 、 市 場 ・雇 用 とい っ た 経 済 的 な 動 機 づ け を高 く もち な が ら 、 「ま ちづ く り」
に非 経 済 的 な視 点 か ら もコ ミ ッ トす る よ う な 、 部 門 横 断 的 な 主 体 と して の住 民 像 をふ ま え て議 論 を再 構 成 す る必 要 が あ ろ う。 そ こ で は 、 「経 済 参 加 」 も し く
は 「 『地 域 市 場 』 指 向 の 住 民 参 加 」 が 、 参 加 の 形 態 お よ び概 念 と して 明 確 に位 置 付 け られ る7。 「地 域 市 場 」 指 向 の 参 加 の 主 体 は 、 一一定 の 「経 済 動 機 」 に 裏 づ け られ て 活 動 し、 そ こ に 「人 々 の 交 互 の 交 わ り」 と い う価 値 を 見 出 す 場 合 に は
「社 会 参 加 」 指 向 と重 な る 面 を もつ 。 さ ら に 「地 域 市 場 」 指 向 の 参 加 主 体 は 、 サ ー ビ ス の 供 給 面 に も っ ぱ ら従 事 す る もの で は な く、 「ま ち づ く り」 の な か で コ ミュ ニ テ ィの 今 後 を展 望 し、 構 想 し、 企 画 ・経 営 す る とい う 「司 画 主 体 」 と し て の 側 面 を も もつ 。 従 っ て 、 「地 域 市 場 」 指 向 の 住 民 参 加 な い し 「経 済 参 加 」 は 、 「社 会 参 加 」「政 治 参 加 」 と密 接 に 結 び つ い て い る。 こ の よ う に 、 社 会 福 祉 な い し地 域 福 祉 に お け る住 民 参 加 論 は 、 「社 会 参 加 」 と 「政 治 参 加 」 を統 合 させ た視 点 に留 ま らず 、 「経 済 参 加 」 を加 え た 「三 者 の 関係 」 を ふ ま え た 総 合 的 な視 点 か ら、 議 論 さ れ る 必 要 が あ る8(図1)。
地域福祉 におけ る 「地域市 場」指 向の住民 参加 を支 え るネ ッ トワー ク115
(図1)「 地 域 市場 」指 向 の住 民参 加(「経 済参加 」)の 地 域福 祉 にお け る参加 論へ の統 合
5‑2「 地 域 市 場 」 指 向 の 住 民 参 加 を 支 え る ネ ッ トワ ー ク構 築 の 戦 略 形 成
福 祉 コ ミュニ テ ィへ の 「地 域 市場 」 指 向 の住 民参 加 を促 す 回路 をい か につ く り、拡 げ るか は、国 レベ ル の制 度 設計 の問題 で あ る と同 時 に、 よ り範 囲 の狭 い 地 域 レベ ル にお け る具体 的 な福 祉 実践 の課 題 で もあ る。
「地域 市 場」 指 向 の住民 参加 の促 進 とい う方 向性 は、対 人支援 サ ー ビス の市 場 にお け る流 通 を促 進す る とい う方 向性 と一致 す る。 しか し、そ れ は同 時 に 、 地域 の 市場 を 「当事者 ・住 民 に よ り制 御 可 能 な生 活 ・福 祉活 動 の場 」 と して機 能 させ る とい う、 「福 祉 市 場 の地域 にお け る制御 」 につ い て の諸課 題 を提 出す る。 経 済動 機 を もって福祉 に関 わ って い こ う とす る住 民 が 開拓 され る だ けで な く、彼 ・彼 女 らの 「福 祉 の まちづ くり」 へ の非 経 済面 での モ チベ ー シ ョン ・コ ミ ッ トメ ン トが促 進 され 、 さ らに は福 祉 行 政 ・福 祉専 門機 関 との 間 に信 頼 関係 や ネ ッ トワー クが構 築 され る よ うな、 地域 で の取 り組 みが 不 可欠 で あ る9。
これ らの課 題 を、誰 が 、 どの よ うな組 織 ・団体 が 、 どの よ うに担 えば よい の だ ろ うか。 そ れ には、福 祉 担 当者 ・専 門職 の や る気 ・個 人 的資 質 とい っ た個 人
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レベ ルで の課題 解 決 能力 と、組 織 レベ ルで の 「福 祉 」 と 「地域 市 場」 を結 ぶ仕 組 み の両者 が組 み合 わせ られ た一 定 の シス テ ムが必 要 となろ う。 以 下 で は、大 雑把 で はあ るが 、二 つ の シス テ ムの タ イプ を想定 しよ う。
第 一 の タイ プ は 、社 協 中心 の ネ ッ トワー クづ く りで あ る。 こ の場 合 、 社協 が 、福 祉 の諸 専 門 機 関 ・組 織 と 「地 域市 場 」 指 向 の 組織 ・住 民 との 連 携 や 、
「住 民 起 業」 の支 援 で 、中核 的 な役 割 を担 う10。社 協 職 員 には 、 「福 祉 」 を超 えた広範 な地域 経 営 に対 す る柔 軟 か つ総 合 的 な視 野 や発 想 、福 祉 の専 門機 関以 外 の諸 機 関 との綿 密 な連携 が 要請 され る こ とに なる。社 協 は、従 来 か ら蓄 えて きた地域 の諸組 織 との ネ ッ トワー ク を有効 活用 で きる とい う利 点 を もつ 。 しか し、他 方 で、地 域 にお け る社 協 の職員 体 制 や委託 業務 、 「福 祉 」 に特 化 した活 動 自体 に割 くべ き時 間等 をふ まえ る と、社協 中心 の ネ ッ トワー クづ く りが 困難
な場 合 も多 い と思 わ れ る。
第二 の タイ プは、 「福祉 」 分 野 に特 化 しない よ り一般 的 な 「住民 起 業 支援」
組 織 の 立 ち上 げ 、お よび、 そ の組織 と福 祉 関係 諸 機 関 、 その他 の 地域 組織 との ネ ッ トワー ク構 築 で あ る。 この場 合 、地域 にお い て従 来 「福 祉 」 とは縁 が薄 い と認識 されて きた分 野 ・団体 に よ る活 動(A町 の場 合 は 、例 え ば、ハ ーブの栽 培 、 地元 の食材 を活 か した料 理 ・食 品の加 工販 売 、 ツー リズ ム)と 福 祉 活 動 と の接 点 や、両 者 の ネ ッ トワー ク に も とつ く経済 的 価値 の算 出可 能性 を発 見 ・展 望 ・支 援 す る力量 や 、福 祉 問 題 に対 す る強 い コ ミッ トメ ン トを職員 が備 えて い る こ とが要 請 され る だ ろ う。
お わ り に
2000年 に開始 された介 護保 険 制度 は 、営 利 ・非 営利 を問 わ ず多様 な事 業体 の 社 会福 祉 へ の参 入 を促 してお り、 「経 済主 体 と しての住民 」 を取 り込 んだ地域 福祉 の再 編 とい うテ ーマ を一層 重 要 な もの と してい る。本 稿 は介護 保 険以 前 の 事 例 を扱 っ た が 、介 護 保 険 と 「地域 市 場 」 指 向 の住 民 参 加 との 関連 につ い て
は、後 日あ らた め て議 論 した い。
地 域福 祉 にお け る 「地域 市場 」指 向 の住民 参加 を支 え るネ ッ トワー ク117
[付記]本 稿 は、第48回 日本社 会福 祉学 会全 国大 会(2000年ll月)で の報 告、お よび A町 に提出 した最終調査報告書 の筆者担 当分(森 川2000)を 加筆 修正 した もので ある。調 査 報告書 は複 数 の研 究者 の分担執 筆 だが 、本稿 の記述 の責 はすべ て筆 者が負 ってい る。
最後 に、調査 を支援 して くだ さったA町 の役 場企画班 ・住 民課 、福祉機 関、住民 組織 ・団 体 、そ の他 多 くの関係 者 の皆様 に、厚 く御礼 申 しあげ ます。
注
1社 会 福 祉 の 経 済 効 果 は 、 生 産 額 増 加 、 雇 用 増 加 の 両 面 に お い て み ら れ る こ とが 統 計 デ ー タ か ら実 証 さ れ 、 そ れ が 「地 域 レ ベ ル 」 で もあ て は ま る こ と が 事 例 に よ り提 示 さ れ て い る(小 島2000)。 こ の よ う な 視 点 か ら の 地 方 政 府 の 政 策 論 も 登 場 し て い る 。 地 域 に お け る 対 人 サ ー ビ ス ニ ー ズ の 基 盤 整 備 が 「長 期 的 に 足 腰 の 強 い 地 域 雇 用1を 生 み 出 す こ と に 着 目 し、 地 方 政 府 は 対 人 社 会 サ ー ビ ス と 併 せ て 雇 用 政 策 を 考 え る 時 代 を 迎 え て い る と い う 主 張 も さ れ る(小 倉2000)。 ヨ ー ロ ッパ で はBUが 、 ソ シ ア ル ・エ コ ノ
ミー す な わ ち 公 共 部 門 と 利 潤 追 求 的 民 間 企 業 部 門 の い ず れ に も 属 さ な い 集 団 的 活 動 に よ る 地 域 雇 用 創 出 政 策 に 力 を 入 れ 始 め て い る が 、 福 祉 は そ の 有 力 な 活 動 分 野 の ひ と つ
と さ れ て い る(濱 口2000)。
2婦 人 会 は わ ず か な 事 業 協 力 費 を 受 け 取 りe会 食 の 準 備 、 調 理 、 当 日 の 催 し と い っ た 、 あ ら ゆ る 面 で 労 力 の 提 供 を して い る 。 こ れ ら の 準 備 ・実 施 面 で 要 す る 労 力 は 大 き く、
そ の 頻 度 を 増 や す こ と は 社 協 職 員 お よ び 婦 人 会 メ ン バ ー の 負 担 能 力 か ら し て 難 し い 。 こ の 他 、 婦 人 会 で は 、 有 志 の メ ン バ ー に よ る 「食 生 活 改 善 」 を 目 標 と す る グ ル ー プ 活 動(「 ひ ま わ り会 」)が あ り、 福 祉 関 係 の イ ベ ン トで 食 事 づ く り に 協 力 し て い る 他 、 年 に1〜2回 の 高 齢 男 性 を 対 象 に した 小 規 模 な 料 理 教 室 な ど も行 い 、 高 齢 者 の 「食 」 に お け る 自 立 促 進 に 協 力 し て い る 。
31997年 秋 に は 、 ガ ー デ ン セ ラ ピ ー(園 芸 療 法)の 運 営 ・管 理 に 関 す る 計 画 づ く り を 進 め る た め の プ ラ ン ニ ン グ チ ー ム が 結 成 さ れ た が 、 行 政 や 施 設 の 事 務 局 職 員 の ほ か に 、 「A町 ハ ー ブ を 楽 し む 会 」 か ら2名(会 長1名 、 役 員1名)の 参 加 が 行 政 か ら要 請 さ れ 、 会 の 会 長 が 、 プ ラ ン ニ ン グ チ ー ム の 代 表 に 選 ば れ た 。 プ ラ ン ニ ン グ チ ー ム は 、 メ ン バ ー の ガ ー デ ン セ ラ ピ ー に 関 す る 認 識 ・知 識 を 広 げ る 勉 強 会 、 先 進 地 へ の 研 修 を 経 て 、1998年3月 か ら 報 告 書 の 作 成 作 業 に 入 り 、5月 に 報 告 書 を 町 長 に 提 出 し た(老 人 保
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健 施 設 に お け る 園 芸 両 方 に 関 す る プ ラ ン ニ ン グ チ ー ム1998)。 実 際 の 事 業 実 施 段 階 に お い て も、 「A町 ハ ー ブ を 楽 しむ 会 」 の ボ ラ ン テ ィ ア と し て の 参 加 を 、 行 政 も 、 施 設 職 員 も あ て に し て い る が 、 そ れ に つ い て の 具 体 的 な 詰 め が 行 わ れ る の は2000年 度 の 予 定 (1999年 当 時 の 聞 き 取 り)で あ る 。
4町 の 広 報 の1998年4月 号 で は 、1998年 度 「ハ ー ブ を 楽 し む 会 」 会 員 募 集 の 記 事 が 見 受 け ら れ る 。 記 事 の 見 出 し は 「ハ ー ブ で 学 ぼ う 楽 し い 暮 ら し方 」 で あ り 、 グ ル ー プ の 活 動 内 容 の 柱 に は 、 「1.ハ ー ブ の 基 本 と応 用 」 の ほ か 、 「2,ハ ー ブ を 用 い た ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 」 が 挙 げ ら れ て い る 。 そ れ ま で 、 ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 が 会 の 活 動 の 柱 と して 明 示 化 さ れ た こ と は な か っ た 。
5こ れ は 、 「ソ ー シ ャ ル ・キ ャ ピ タ ル 」 と い う概 念 に よ っ て 理 論 的 に は 説 明 で き る 。 日 本 で の 事 例 を含 め て 検 討 し て い る も の と し て 、 金 子(1999)な ど 参 照 。
6「 参 加 型 福 祉 」 政 策 が は ら む 、 社 会 サ ー ビ ス 供 給 に お け る 介 護 労 働 の 経 済 的 評 価 と ジ ェ ン ダ ー に 関 す る 問 題 に つ い て は 、 森 川(1998)を 参 照 。
7「 経 済 参 加 」 と い う 範 疇 の 設 定 可 能 性 に つ い て は 、 す で に 武 川(1996)も 論 文 脚 注 で 指 摘 し て い る が 、 「社 会 政 策 に お け る 参 加 」 の 射 程 外 と し て そ の 本 論 で は 除 外 さ れ て い る 。
8本 文 で 詳 し く触 れ て い な い 障 害 者 等 の 「当 事 者Jに つ い て も 、 市 場 経 済 活 動 へ の 参 加 機 会 を 地 域 で ど の よ う に確 保 す る か は 重 要 な テ ー マ で あ り、 「地 域 市 場 」 指 向 の 参 加 と い う概 念 は 有 効 で あ る 。
9こ の 他 に も、 従 来 「外 部 経 済 」 と さ れ て き た 生 活 の 諸 領 域 ・必 要 充 足 の 活 動 を 地 域 経 済 の な か に 埋 め 戻 し な が ら 地 域 内 で 財 とサ ー ビ ス を 循 環 さ せ よ う とす る 手 段 と し て
「地 域 通 貨 」 が あ げ ら れ る(丸 山1998)。
10社 協 に よ る 住 民 の 起 業 ・事 業 と 結 び つ い た 地 域 福 祉 の 運 営 に つ い て は 、 す で に 議 論 さ れ て い る 。 例 え ば 、 広 島 県 社 協 で は 、 住 民 や 当 事 者 が 主 体 的 に 生 活 課 題 を 発 見 、 認 識 し、 「こ れ な ら 自 分 達 で も で き る 」 「や っ て み た 」 と い う 提 案 が 出 て く る よ う に 支 援 す る もの を 「住 民 事 業(起 業)型 社 協 」 と 再 定 義 し て い る と い う(柴 田1997:96)。
ま た 、 小 地 域 で の 住 民 組 織 化 を 通 じ て の 宅(託 〉 老 事 業 、 ミニ デ イサ ー ビ ス 、 地 域 デ イ ケ ア 等 と い っ た 「地 域 共 同 ケ ア 事 業 」 の な か で 、 女 性 を 中 心 と し た 新 し い 市 民 事
(起)業 化 の 動 きが 目 指 さ れ る こ と も指 摘 さ れ て い る(平 野1997:165)。