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全人教育と労作教育

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Academic year: 2021

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全人教育と労作教育

一小原図芳の教育論を手がかりにして一

学校教育専攻 人間形成基礎コース 野 村 幸 子

1、研究の目的

本研究は、全人教育と労作教育を中心とした 小原圃芳 (1887‑1977) の教育論及び 教育実践を探るものである。

小原圃芳は「全人教育」の主張者として、ま た玉川学園、玉川大学の創立者としてその名を よく知られている。

小原は『学校劇論』において「教育のあらゆ る欠陥、サマザマの暴露が、全人人格を要求す る。知能万能の教育をどうして傍観しておられ よう。功利主義、入学考査準備、比較考査、成 績簿、点数、教師も生徒も汲々としている。 J

と論じ、また『全人教育論』においては「全人 教育、個性尊重、自学自律、労作教育ーこれら によって、世界は浄められ、救われるのだと信

じます。 jと主張している。

小原は、あたかも現代の教育の歪みを、人間 の心の歪みを鋭く予感し、またその解決策を示 唆してくれているかのように思われる。

子供たちの心が、人間の心が病みがちな今こ そ、小原が唱導した全人教育の意味を改めて、

深く考える必要があるのではないだろうか。

よって、自分の人間観、教育観を再考する一 助として、小原の全人教育を探り、その中核で ある労作教育及び労作教育の現代的意義につい て考察することを研究の目的とした。

2、論文の構成と内容

本研究では、小原圃芳の全人教育思想と労作

指 導 教 官 木 内 陽 一

教育の分析、および労作教育の現代的意義に関 する考察が主眼となるが、その前提としてまず 第一章では、小原の生涯と思想を概観した。

第二章では小原の全人教育論とはどういうも ので、あったのか、また小原の全人教育思想、はど のようにして形成されたのかを究明した。

まず、小原の教育史上における位置付けを把 握するために、小原が活躍した大正、昭和初期 を中心に新教育運動について述べた。次に、小 原がどのようにして全人教育思想を形成するに いたったかを、彼に影響を与えたと思われる哲 学思想家(西田幾多郎、朝永三十郎)の思想お よび教育思想家(小西重直、沢柳政太郎)の教 育思想、をとりあげて明らかにしていった。続い て、彼の代表的著作である『教育の根本問題と しての宗教』および『全人教育論』を手がかり に、小原の人間観、教育観を論述した。Ir教育 の根本問題としての宗教』は彼の京都大学の卒 業論文であり、彼の処女作となった。この書の 中では、 「全人」という語は僅か数回しか用い られていない。ところが、書物全体に流れる思 想はまさしく小原全人教育論そのものである。

小原圃芳の教育理念、は、彼自身によって「全 人教育」と名付けられた。それが公表されたの は大正10年 (1 9 2 1年)であった。彼が京 都大学哲学科を卒業して3年後のことである。

『全人教育論』において小原は「教育の内容に は人間文化の全部を盛らねばならぬ。ゆえに、

(2)

教育は絶対に 全人教育"でなければなりませ ぬ。 全人"とは完全人格即ち調和ある人格の 意味です。人間文化には、学問、道徳、芸術、

宗教、身体、生活の6方面があり、教育の理想、

は真、善、美、聖、健、富の6つの価値を創造 することだ。この6つの文化価値がコスモスの 花のように調和的に生長してほしい。」と主張 している。つまり、頭も心も体も調和的に成長 してほしいと主張しているのである。

ところで、この全人教育の中で最も重きをな しているのが労作教育であり、玉川の実践でも 最も重要視されているのが労作教育である。

そこで、第三章では、小原の労作教育とはど のようなもので、あったのか、また小原の労作教 育思想、はどのようにして形成されたのかを究明 した。まず、労作教育とはどういうものであっ たのかを知るために、労作教育の歴史を概観し た。次に、小原の労作教育思想の形成過程を考 察するとともに小原の全人教育と労作教育のか かわりを考察した。小原は『全人教育論』の中 で「ぺスタロッチーが身をもって強調した通り 実に教育の根本は労作教育にある。労作教育は 実に、聖育、知育、徳育、美育、生産教育、健 康教育の総合全一なのである。 jと全人教育に おける労作教育の重要性を主張している。

続いて、玉川学園における労作教育実践を歴 史的に探った。

r

百聞は一見に如かず、百見は 一労作に如かず。全人教育徹底のために絶対欠 くべからざる問題は、霊肉一致、心身一如の活 動である労作教育によらなければならない。 J

と小原は説いた。そして、人の喜び、誇り、義 務として、額に汗すること、汗を流して労しむ ことを教えた。労作の「作Jは作業の作ではな くて創作の作である。労しむ心と創る心との意 味から「労作Jという。玉川学園では創立以来

労作という言葉が大切にされ、その精神が培わ れてきた。武蔵野の丘陵に、道を拓き、池を堀 り、庭を造り、校舎を建て、教材教具に至るま で、教師と生徒が一体となって学園建設に取り 組んできたのである。

最後に、第四章では、小原の労作教育の現代 的意義を考察した。精神科医、上妻善生氏は「

20

年前、小原先生の全人教育の哲学に触れた 時、私は驚嘆しました。その教育思想、が精神分 裂病患者の治療法と全く同じだったからです。

意志が障害された状態の治療として行われる作 業療法は労作です。」と述べ、小原の労作教育 と作業療法がその根拠となる思想、内容ともに 類似していることを指摘している。

そこで、小原の労作教育の現代的意義として は生きる力の育成なども考えられるが、第四章 では小原の労作教育と作業療法の関連に焦点を あてて、検討を行った。まず、両者の類似点、

相違点を調べることにより、小原の労作教育と 作業療法の関連を論述した。次に、現代におけ る不登校などの不適応と作業療法の関連を論述 した。続いて、両者の関連をふまえ、小原の労 作教育の現代的意義を考察した。

3、まとめ

小原圃芳は自らの夢を全人教育を労作教育を 玉川学園において実践してきた。小原はテ、イー ステルヴェークの言葉で「進みつつある教師の み人を教える権利あり」を好み、この言葉を示 しては教師を目指す学生たちを叱時激励し、ま たフレーベルの「さあ来たれ、我らが子らに生 きょうではないか!Jの言葉で学生たちに呼び かけた。そして自らは「神は愛なりJ

r

教育も

愛なりjを実践し、まさに人生を教育の夢に生 きた人であった。

参照

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