バスケットボーノ1‑)窒手のイッフ。スに対する認知行動療法
人間教育専攻
臨床心理士養成コース 小 原 彩
1. 問題と目的
イップスとは「スポーツ場面において,身体 的原因がないにもかかわらず,習得していたは ずのプレーが思いどおりにできない状態が続く 運動障害」と定義されている(佐藤, 2013)。イ ッフ。スはゴルフから生まれた用語で、あるが,最 近では里問tならびにその他のスポーツにおいて も用いられるようになっている(賀川@深江 2013)。ゴ、/レフ選手を支橡としたイッフ。スに関 するインターネットによる疫学調査の結果,対 象者の 22.4%がイッブロスを組験していたこと が報告されていると同時に,ゴ、/レフのパッティ ングを行うスクリーニングテストの結果では,
対象者の 16.7%がイッフ。スを経験していたこ とが明らかにされている(阻amp乱Philippen,
&Lob
血
ger,2015)。また,バスケットボーノレ 選手を対象とした調査では,対象者の6.3%がイ ッブρスを経験していたことが報告されている CSato, 2017)。イッブρスをはじめとしたスポ ーツ競技における運動障害は,競技生活からの ドロップアウトならびにパーンアウわへと競技 者を追い込むリスクを強めるだけでなく,競技 者のパーンアウトは,自殺へと結びつくリスク を強める可能性が指摘されている(田中,2016; 大隈@西村, 2003)。したがって,イップスは公 衆衛生上の問題へとつながる可能性があるため,スポーツ競技者が抱えるイッブρスを改善するた めの方策を立案することは意義があるといえる。
指導教員
古)11 洋和イップスに関する従来の研究において3 パフ ォーマンスの向上を目的とした介入研究の対象 となったのはゴ、ノレフ選手のみで、あり(曾田,
2016) ,さまざまなスポーツ選手を対象として パフォーマンスの向上を目的とした介入研究を 行なう必要があるといえる。ところで,1¥直lne&
Morrison (2015)によるPPRを用いた認知行 動療法による介入では?動作を行う際の注意配 分(認知的処理)ならびに集中力を妨害する情 動@身体即お1ゴルフ選手のイッフ。スに影響を 与えることを仮定した介入プロトコノレが提案さ れている。バスケットボールにおけるフリース ロー場面は,ゴルフにおいてイップスが呈しや すい状況と類似しており,バスケットボーノレ選 手のフリースロー動作時に生じるイッブロスに対 して,PPRを用いることによってパフォーマン スの向上が期待できる。
そこで本研究では,バスケットボール選手の イップスに対する心理学的介入の効果をスポー ツ現場にて明らかにすることを目的とした。
2.方法
研究デザイン:シング、ノレケース実験デザインに よって, PPRを用いた認知行動療法の効果を 才員言すした。
対象者:四国地区に在住するバスケットボーノレ 競技者1名を対象とした。
調査材料:①フェイスシートにより I名前J, 円拐rJJ,
r
年齢J,I利き手J,I競技歴J,Iポジ‑ 107‑
ションJ,Iチーム内での立場J,および「競技成 績」について囲答を求めた。②野球選手におけ るイッフ。ス尺度(内田ヲ 2007)を参考にしたう えで、バスケットボール選手におけるイップスの チェックリストを作成し9 回答を求めたぺ。③フ リースロー成功率記入シート9④IPPRのチェッ クリストヲ信若君、知行動療法の効果に関する含有面 シート部位lne
&
Morrison 包015)において 用いられた介入要素を参考)により,r
自動思考J
,「注意のコントローノレJ,
r
対鮒子動J,および「生 理的反応J
の変容について対象者に回答を求め た。分析方法:介入効果の評価については目視およ U効果量の算出によって行なった。自視による 介入効果の基準については, Busk & Serlin
(1992)を参考として,以下の評価項目を設定 した。
(1) 一般的なフリースローの成功率と考
えられる 5 割~6 割より高い成功率になった
(2) 対象者がイッブρスを抱える以前のフ リースロー成功率へ上昇した
効果量については, PND (Percentage of Nonoverlappmg Data)を算出した。
3,結果
ベースライン期における対象者のフリースロ ー成功率を平均すると, 70本中36本 (51%) であった。また,研究の開始以前に記録されて いたフリースロー成功率を平均すると, 36本中
16
本(44%)
で、あった。べ一久ライン期におい てアセスメントを行い3 介入を実施した結果,対象者のフリースロー成功率の平均率は190本 中121本
(64%)
となった。設定していた判断 基準の (1)は満たしていると判断可能で、あっ たが,対象者のイップス以前のフリースロー成 功率は把握できなかったため (2) については検言すで、きなかった。また, PNDは r42%J とな り
, PNDは90弘以上の値で「非常に効果的で あったjと判断することが推奨されているため (Scruggs晶Mastropieri,1998),本研究にお ける介入効果は「非常に効果的で、あった」と判 断できるまでには至らないことが示された。
4 考察
本研究の自的は,バスケットボーノレ選手の イッフ。スに対する認知行動療法の効果について 検討することで、あった。本研究の結果,以下の
ことが明らかになった。
①ベースラインから介入期にかけて,フリー スローの成功率が
13%
増加した。② フ リ ー ス ロ ー の 成 功 率 に つ い て 効 果 量 PNDを算出した結果,
53%
で、あった。したがってP 認知行動療法はイップス症状の低 減に影響を与えるが3 非常に高い効果を有する
とは言及できないことが示唆された。
本研究において,具体的な介入方法は,①動 作のイメージの促し,②肯定的なフィードパッ ク,③PPRの遵守であった。さらに,映像によ るフィード、パック@成功率の変動の視覚化・自 己トークの促しなどを対象者の様子を観察しな がらプロトコノレへ追加した。また,対象者の不 安を感じる場面と考えられた練習前のシュート 練習時に肯定的なフィードパックを行い,不安
に1'貫れていくことで,シュート練習という不安 へのエクスポージャーを追加した。イップスは,
既に習得している動作に過度な注意を配分させ たことによるものと考えられるが,この注意配 分へのアプローチが必要であることが明らかに なったといえる。しかしながら,具体的な介入 要素について本研究では明らかにできなかった ため,具備句かつ,効果的な介入方法を明らか にするために研究を重ねる必要があるだろう。
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