読者主体の比べ読み学習指導の研究
教科・領域教育専攻 言語系(国語)コース 船 津 啓 治
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研究の目的と方法本研究の目的は、小学校における比べ読みの 学習指導が、子どもの読みの力を高めるために どうかかわるのか、子どもが文章をどのように 比べて読んでいくのかを明らかにすることであ る。子どもは文章を比べて読んでどう思うか、
どう考えるのか、つまりは、どう感想、をもつの かを明らかにしたい。そして、子どもが文章を どう理解していくのか、その理解に比べ読みは どうかかわるのか。その際の子どもの中に何が 起こっているのかを明確にしていくo
そのために、先達の現代文学理論や比べ読み の実践を考察し、子どもの読みを診る物差しを 持つようにする。
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論文の構成本論文は序章・結章の他、次の5章で構成する。
第1章 各 調 査 に お け る 比 べ 読 み の 実 態 把 握 第2章 読 者 主 体 の 比 べ 読 み
第3章 比 べ 読 み の 反 応 の 実 態 調 査 第4章 比 べ 読 み の 先 行 授 業 実 践 の 考 察 第5章 表 現 者 意 識 を 育 て る 比 べ 読 み の 授 業
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論文の概要第 1章においては、先般行われた全国学力・
学習状況調査やP I S A国際調査における比べ 読みには、どのような問題が使われていたのか、
指導教員 村 井 万 里 子
子どもはどの程度比べ読みができるのか、分析 していった。
圏内の2つの調査からは、比べ読みという読 書行為を、子ども読者だけではなく、教師もが 距離をおいていることが克明になった。
P I S A調 査(2000・2003)においては、書く ことまで含めた読解カと日常の読書生活との相 関関係が生徒の実態に応じて、総合読解力の点 数が変化することを見ることができた。
第
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章では、比べ読みを通した読書行為を比 較していった。井上一郎の場合、比べて読むこ とを指導過程に明確に位置付け、比べ読みの対 象や観点が詳細である。大村はまは学習の手引 きを開発して、比べて読むことの学習を効果的 に進めた。読む技術だけでなく、批判的に読む 態度を身に付けたり、発見したり、テクスト同 士をつないだりする力の育成にもつながった。比べ読みの前提となる読者の権利や楽しみを 授業でも使える読者の権利や楽しみとして再構 成して整理することもできた。テクストが2つ になり、比べて読む場合には、読者とテクスト の相互作用は幾通りにも増大し、読書行為は多 様になり、豊かさを増すことが分かつた。
様々な読書行為に直接関わる比べ読みは、読 む目的や状況に応じて言語能力の育成に多彩に 働きかける機能を明らかにすることができた。
第3章においては、比べ読みの反応の実態調
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査を小学
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年生までを対象として文学と説 明的文章の大きく 2つに分けて行った。第1節では、調査テクストそのものがどのよ うな作用を持っているのか、分析していった。
筆者が一読者となって読み、主観的にかつ客観 的に読みの可能性に気付く手がかりを得た。
第
2
節では、2
つの文学テクスト『ガンピー さんのふなあそび~Wガンピーさんのドライブ』を、第
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節では、2
つの説明的文章『あめんぼ がとんだ~Wみすのうえでくらすむしあめんぼ』を対象として、調査し考察した。
2
つの調査を 通して共通する結果としては、登場人物と対象 に着目して読むことは、学年に関係なく断然多 いということである。一方、展開構造や作者・筆者の表現の仕方への反応は、第3学年以上で 表れ、第
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学年になり大幅に割合が増加する。両者とも、学年に関係なく気付くことと学年の 発達段階に影響されることとが明確になった。
第 4章においては、比べ読みの先行授業実践 を文学、説明的文章、伝記文の文種で分けて取
り上げ、考察していった。
第1節では、時間を追って雑誌や図書を読む ことで、比べ読みがどのように行われてきたの か、どうしづ授業で比べ読みは活用されている のか、時代の流れに沿って整理した口
文学の2つの実践を見ていくことを通して、
比べ読みの功罪を考えることができた。シリー ズを通して人物像を考える際、比べて読むこと で主人公の成長が明確になり、テクスト同士の 違いも分かりやすくなった。一方、同一作者で あってもテクストがずい分違う場合には、教師 が観点を設定するなど、工夫が必要で、ある。
説明的文章の授業実践を通して、指導計画の 流れを尊重しつつ、その中で自然に比べ読みを 位置付けることの効果を考えることができた。
伝記文の授業実践を通して、批判する力を育 成するために、比べ読みの有効性が検証できた。
第5章においては、自身の授業実践を、読者 が主体と成り得ていたのかを中心に省察した。
最後の節では、これまでの研究を踏襲して単 元開発、授業構想を立てることができた。これ は、実際に授業をしてみないと成果としては言 えないが、計画段階では、メディア・リテラシ ーの育成も含めて構想することができた。
4 今後の課題
今後の課題を大きく 3点に絞り残しておく。
[課題1]各調査の分析後、比べ読みが子ども にも教師にも遠ざけられている理由を、①日常 の学習で行われていない、②比べ読みの方法の 無理解、③複数テクストの開発の困難さ、など 10点に整理した。これらが向かうベクトルは、
私自身にも向けられ、それらを解決していく。
[課題2]第2章で取り上げた井上一郎や大村 はまの理論と実践を参考に、自分自身の授業に 結合していくことが、実践に向けての重要課題 である。また、未読の現代文学理論を読み考察 するなど、井上の考えの基盤である読者論の研 究を進める。さらに、大村の単元学習の中で使 われた学習の手引きに焦点を当て、実践に生き るような学習資料の作成を推進する。
[課題3]第3章で紹介したような比べ読みの 発達調査研究を今後も継続する。調査内容は、
対象が
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つ以上の場合の比べ読みの調査や、1
つのテクストを読んだときと 2つ以上のテクストを読んだときとの反応の差異、などである。
今後の課題を追究するとともに、新たに生ず る問題にも取り組む姿勢を持ち続けていたい 参考文献:井上一郎『読むカの基礎・基本』
大村はま『大村はま国語教室第8巻』
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