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3. 3 ワイヤレスネットワーク研究所

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3. 3. 2 ワイヤレスネットワーク研究所 ディペンダブルワイヤレス研究室 

室長  三浦 龍 ほか 14名

障害に強い頼りになる自律分散ワイヤレス技術の研究開発

【概 要】

無線ネットワークにおける基幹網の負荷軽減、カバーエリアの拡大、高信頼化、耐災害性などの高機能化を 実現するため、特定の基地局、アクセスポイント、あるいは経路に依存せず、多数の端末やノード(中継点)同 士が自律的かつ多元的に接続する自律分散ワイヤレスネットワーク技術ならびに人体の周辺や建物等の内部な ど電波が伝わりにくい領域での高信頼な無線ネットワーク技術を確立することを目指す。平成 25年度は、耐災 害 ICT研究センターと連携し、災害に強い分散型アーキテクチャによるワイヤレスメッシュネットワークと小 型無人飛行機(以下、無人機)による災害時無線中継技術の実証実験を北海道大樹町、仙台の東北大学キャンパ ス、及び和歌山県白浜町において実施し、その定量的な性能評価や自治体への実用展開に向けた評価を行った。

無人機中継システムについては、外部予算を活用し、大学や他の研究機関、民間企業と連携した周波数有効利 用に関する研究開発にも着手し、これを主導した。また、これまで IEEE802委員会において NICTが国際標準 化を主導してきた、インフラを必要としない端末間通信方式を実証評価するためのテストベッドを都内及び京 都府でのフィールドにおいて実装を行った。電波の伝わりにくい領域での無線ネットワークについては、超広 帯域(UWB)無線通信技術を応用した建物内での高精度測位方式のテストベッド実装を商業施設や物流倉庫で のフィールドにおいて行った。UWB方式については、12月に終了した総務省による国内での法制化へも寄与 した。また、シート状の電磁波伝送媒体により位置の固定したコネクタを用いずにエバネッセント波を活用し て情報・電力の同時伝送を可能とするシート媒体通信方式について、これまでの研究成果を生かし、ウェアラ ブルセンサへの適用を目指した布状シートにも適用可能な高効率カプラの開発と評価を進めた。

【平成 25年度の成果】

(1) 自律分散ワイヤレスネットワーク

メッシュ型自営網による災害時にも壊れにくい耐災害ワイヤレスメッシュネットワークと無人機による 災害時中継システムを連携させ、災害時の孤立地域との間で通信確保を迅速に行うフィールド実証実験に 北海道大樹町、宮城県仙台市の東北大学キャンパス及び南海トラフ地震のリスクを抱える和歌山県白浜町 にて成功し、その定量的な性能評価や自治体への実用展開に向けた評価を行った(図 1)。大樹町での実験 では無人機中継によるルーラル環境での長距離伝送性能の評価を行い、高度 300m を飛行する無人機と最 大 15㎞までの伝送が可能との結果を得た。東北大学での実験では、東北大学が開発した「スマホ deリ レー」システムを無人機中継により離れた 2地点間でブリッジする実証と、仙台市内の東日本大震災被災 地区に分布する複数の指定避難所と青葉山上空を飛行させた無人機の間のスループットデータ及び伝搬 データの取得と評価を行った。また白浜町では、地元自治体や消防本部のサポートを得て将来の実用を想 定した公開実験を実施し、今後の実用化展開に向けた具体的な検討開始のキックオフとした。これらの成 果は、TV番組や多くの新聞等に報道された(4番組、19紙)。また地方での講演や展示を積極的に行い、

札幌、高知、金沢において延べ 500人以上の地方関係者にアピールした。

インフラ不要な端末間での通信システムの技術開発に関し、昨年立ち上げた IEEE802.15.8の標準化会合 において副議長の役職を得て審議を主導し、30件以上の寄与文書を提出して提案方式の標準規格化を目 指した活動を行った。また並行して、都内お台場地区及び京都府精華町けいはんな地区において、自治体

(港区と精華町)や公共交通機関(各地区のバス会社)の協力を得て、バス路線周辺の公共施設や商業施設及 びバス内等にサイネージ一体型の通信端末(920MHz帯使用)を実装したテストベッドを構築し、その機能 評価を開始した。このネットワークは地域コミュニティ内における小容量ローカル通信に適した革新的 な自律分散型の通信方式を採用している。すなわち、IEEE802.15.4gの規格に準拠した無線デバイスに、独 自に開発したブロードキャスト型のインフラ不要な MACプロトコルを搭載し、所定のグループに登録さ れた端末同士で情報を拡散・収集・蓄積し、バス等の移動体が情報を保持したまま移動し運搬する「時間 差通信」の機能をもつ。今後、両地区において本格的な実証評価実験を実施し、技術の改善を図っていく 予定である。

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(2) 電波の伝わりにくい領域での無線ネットワーク

これまで蓄積してきたインパルス型 UWB(Ultra Wide Band)技術を活用し、GPS信号が届かない屋内に おいて高精度な測位を実現するシステムとそれによるビッグデータ収集への応用を目指した屋内測位テ ストベッドを大型商業施設及び物流倉庫の一部に構築し、評価を開始した(図 2)。このシステムでは、測 位に用いる固定局数やその設置方法を最適化することにより、他の屋内測位システム(IMES、Wi-Fi測位、

ビーコン測位等)での実現が困難な位置精度 30㎝以内を達成できることを確認した。またこの測位技術 を活用した店内ナビゲーション(携帯端末上での地図表示のほか、視覚障がい者を想定した音声案内を含 む)、商品棚の場所で欲しい商品をオーダするスマートオーダ、位置情報と連動したクレジットカードの モバイル決済、ならびに店舗側での客の動線把握の各アプリケーションを開発し、一般の客を対象として モニタ実験を実施した。また、物流倉庫内における作業員やフォークリフトの動線把握によるピッキング 作業の効率化を目指した評価実験を開始した。これらの活動と並行して国内審議会での UWBに関する 法制化活動にも副主査やワーキンググループ主査として貢献し、12月に新基準が施行された。

シート媒体通信方式については、電波の伝わりにくい人体周辺に応用し、ヘルスケア等のためのウェアラ ブルセンサへの適用を目指した伸縮性を有する布状シート媒体のための小型カプラの試作を行い、基本的 な性能評価を行った。シート媒体通信による伝送では、センサごとにケーブル接続を行う必要がないため、

多数のセンサを体表面に配置する場合にシンプルに構成することができ、かつセンサ位置の変更が可能で あるなど、柔軟性の高いウェアラブルセンサシステムが構成できると期待されている。一例として、妊婦 の腹帯に多数の心電センサを配置し、胎児の心電を検知してその健康状態をモニタするシステムが想定さ れる。また、並行してブロードバンドワイヤレスフォーラムのワイヤレス電力伝送ワーキンググループに おいて、ワイヤレス電力伝送のための一方式としてエバネッセント波を利用するシート媒体通信方式が取 り上げられ、その標準規格化のための技術データ提供に寄与した。

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