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The Japanese Journal of Experimental Social Psychology. 2017, Vol. 56, No. 2, DOI: /jjesp.si3-7 原著 受稿日 :2015 年 12 月 31 日受理日 :2016 年 11

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受 理 日:2016 年 11 月 28 日 Social Psychology. 2017, Vol. 56, No. 2, 175–186

DOI: 10.2130/jjesp.si3-7

〔原   著〕

大学新入生の自己高揚的自己呈示が

友人関係の形成と自尊心に及ぼす影響

APIM を用いたペア縦断データの分析―

1)

谷 口 淳 一       清 水 裕 士

帝塚山大学心理学部 関西学院大学社会学部 要   約 本研究では,大学新入生の友人に対する自己高揚的自己呈示が,その後の友人からの評価,関係満足感, 及び自尊心に与える影響を検討した。調査参加者は4 度の縦断的調査(4 月,5 月,6 月,7 月)に同性の友 人とペアとなり,質問紙への回答を行った。232 名(116 組,男性 134 名,女性 98 名)を分析対象者とした。 Actor-Partner Interdependence Model(APIM)を用いて,5 月に友人に対して自己高揚的自己呈示を行うこ とが,6 月の相手からの実際の評価やその評価の推測を介して,7 月の関係満足感や自尊心に与える影響を 検討した。分析の結果,友人に対して有能さと親しみやすさの自己呈示を行っているほど,友人からポジティ ブな評価を得ていると認知し,関係満足感および自尊心が高いというActor 効果がみられた。また,親しみ やすさの自己呈示を行っているほど,実際に友人からポジティブな評価を得ており,その後の友人の関係満 足感も高いというPartner 効果もみられた。つまり,親しみやすさの自己呈示は,自己呈示を行った本人と 友人の双方の関係満足感の高さに影響していた。大学新入生が友人に対して自己高揚的自己呈示を行うこと の有益さについて議論を行った。 キーワード: 自己高揚的自己呈示,APIM,友人関係の形成,自尊心,友人からの評価 問   題 本研究では,同性の友人に対して自己高揚的自己呈示 を行うことが,友人関係の形成,及び自尊心の高さに寄 与するプロセスについて,大学新入生を対象として検討 する。 大学新入生にとって大学内の友人と良好な関係を築け ていることはwell-being,そして大学適応に大きな影響 を及ぼす。また,良好な友人関係を形成していることに 加えて,高い自尊心を維持できていることも個人の well-being にとって重要な要因となる。友人関係が良好であっ ても,自尊心が低く,自己不全感を経験するような状態 は過剰適応とも呼ばれ(e.g.,石津・安保,2008),個人 の健康状態を害する可能性もある。 友人と良好な関係を形成し,かつ高い自尊心を維持す るために考慮に入れなければならないのは,友人に対し てどのような自己呈示をするのかということである。自 己呈示とは,何らかの目標のために,他者が形成する自 らの印象をコントロールしようと試みることである (Leary & Kowalski, 1990)。

第1 著者連絡先 e-mail: [email protected]

1)本研究は日本学術振興会科学研究費補助金(若手研究(B)課題番号 18730395)の助成を受け実施しました。 また,本研究の一部は日本社会心理学会第49 回大会で発表されました。加えて,主査・副査の先生から重 要かつ貴重なコメントと改稿を行う上でのご提案を頂きました。ここに記して感謝いたします。

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これまで,他者に対して自己呈示をすることが,その 他者との親密な関係の形成や,自尊心に影響することに ついては,そもそも自己呈示が何のためになされるのか, つまり,自己呈示にはどのような効果があるのかといっ た文脈で語られてきた。安藤(1994)は,自己呈示の機 能を,1)報酬の獲得と損失の回避,2)自尊心の高揚と 維持,3)アイデンティティの確立という 3 つに整理し ている。友人関係を含む他者との親密な関係の形成は1) に,自尊心については文字通り2)に該当する。友人に 対して自己呈示を効果的に行うことができれば,親密な 関係が形成され,自尊心も高まると考えられる。 ただし,自己呈示に関するこれまでの研究はその規定 因や動機づけに関する研究が多く,自己呈示が実際に他 者に対してどのような効果を与えるかを検討した研究は それほど多くは行われていない(沼崎・工藤,2003)。 本邦では,文化的規範に注目した自己高揚的自己呈示や 自己卑下的自己呈示の他者に対する効果については比較 的多くの研究がなされている(e.g.,沼崎・工藤,2003; 吉田・古城・加来,1982;吉田・浦,2003)。一方,そ のような自己高揚的自己呈示や自己卑下的自己呈示が友 人関係の形成に果たす役割や,友人関係満足感や自尊心 に与える影響を検討した研究は僅少である。栗林(1995) によれば,自己高揚的自己呈示とは自分の能力や遂行水 準などが優れていることを表明するような自己呈示であ り,逆に自己卑下的自己呈示とは自分の能力や遂行水準 について否定あるいは非難するような自己呈示である。 自らをポジティブに呈示するのが自己高揚的自己呈示で あり,ネガティブに呈示するのが自己卑下的自己呈示と 言い換えることもできる。本研究では,このうち自己高 揚的自己呈示2)に注目し,その効果について検討を行う。 さて,自己呈示が友人関係の形成や,高い自尊心に与 える影響を検討する上で注目しなければならないのは, 自己呈示に対する他者からのフィードバック,つまり他 者からの評価である。他者が形成する自らの印象や評価 をコントロールしようと試みること(Leary & Kowalski, 1990)である自己呈示の効果とは,直接的には自己呈示 によって呈示しようとした印象や評価を他者が実際に抱 いたのかどうかを指すことになる。呈示しようとした印 象や評価を実際に他者が抱けば,良好な関係を形成でき たり,自尊心を高く維持できるという自己呈示の目標が 達成できることになる。他者に対して自己呈示を行うこ とで,好感が持てる,あるいは,有能であるという評価 を他者が抱けば,その他者との関係も良好になり,まさ に関係の質という報酬を得ることができる。また,他者 から望ましい評価を得ることが自尊心の高揚と維持に有 効であることはソシオメーター理論(Leary, 1999)から 説明することができる。ソシオメーター理論では,自尊 心を自分と他者との関係を監視するシステムであり,他 者からの受容の程度を示す計器である(Leary, 1999)と 説明している。自己呈示を行うことで他者からポジティ ブな評価を得ることができれば,その他者から受容され ていると思え,自尊心が高まると考えられる。 ただし,他者からの評価といっても,他者からの“実 際の評価”と,他者からどのような評価を得ているのか についての本人の認知である“評価の認知”があり,こ れらは必ずしも一致するわけではない。そして,自己呈 示が友人関係の形成や自尊心に与える影響過程におい て,“実際の評価”と“評価の認知”はそれぞれに別の 機能を有すると考えられる。しかし,これまでの自己呈 示研究では,この2 つの機能的な相違について十分に区 別されてきたとは言い難い。本研究では,“実際の評価” と“評価の認知”という2 つの他者からの評価を区別し て,自己呈示がそれらに与える影響を検討する。自己呈 示が友人からの実際の評価に与える影響は,自己呈示者 と友人との個人間影響過程といえ,自己呈示が友人から の評価に対する呈示者の認知に与える影響は,自己呈示 者の個人内影響過程といえる。 他者に自己高揚的自己呈示を行うことは,そのような 自己呈示を行わなかった場合に比べて,他者から実際に 望ましい評価を得られることがいくつかの研究で示され ている(e.g., Human, Biesanz, Parisotto, & Dunn, 2012; 沼崎・工藤,2003;Swann, Bosson, & Pelham, 2002)。た とえば,Swann et al.(2002)では,身体的魅力につい て恋人に自己高揚的自己呈示を行っているほど,実際に 恋人から望ましい評価を得ていることが示されている。 また,Human et al.(2012)では,自己高揚的自己呈示 として,自分の良い部分を表明するように指示された人 は,統制群の人よりも,好意的な印象で見られていた。 これらの先行研究の結果から,友人に対して自己高揚的 自己呈示を行うことは,友人からの望ましい評価を導く ことが予測される。 そして,他者に自己呈示を行うことは,他者からどの 2)自己高揚的自己呈示という表現を用いる場合,本来の自分よりもポジティブに自己呈示をすることとして, 自己認知との差異を指標とする場合もあるが,本研究では自己呈示の内容のポジティブさを自己高揚的自己 呈示として,自己認知との差異は問題としない。

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ように自分は評価されているのかについての認知にも影 響を与えると考えられる。Dunn and Finn(2007)の研 究では,他者に自己高揚的自己呈示を行った場合に,呈 示者の感情がポジティブになることが示されている。こ の結果についてDunn and Finn(2007)は,自己高揚的 自己呈示を行おうとすると,その前に感情をポジティブ にしようとする調節が働くことに加え,実際に自己高揚 的自己呈示を行っている自分を振り返ってポジティブな 感情を経験するのだと説明している。この結果は,自己 高揚的自己呈示を行うこと自体が,他者から望ましい評 価を得ているという認知を生じさせ,結果としてポジ ティブな感情を経験すると言い換えることもできよう。 以上より本研究では,友人に対して自己高揚的自己呈 示を行うほど,友人から実際に望ましい評価を得ること ができ,また望ましい評価を得ていると呈示者自身が認 知し,そのことが友人関係の形成や高い自尊心に繋がる と予測し,検討を行う。その際,さらに考慮に入れなけ ればならないのは,友人関係の形成の捉え方である。本 研究では,友人関係の形成の指標として関係満足感を扱 う。つまり,自己高揚的自己呈示を行うことがその後の 友人関係満足感に与える影響を検討する。ただし,呈示 者のみの関係満足感について扱っても,それは友人関係 の形成の十分な指標とはいえないだろう。呈示者本人の 関係満足感だけでなく,自己呈示の対象となる友人の関 係満足感も併せて検討する必要がある。本研究では,友 人に対する自己高揚的自己呈示が呈示者の関係満足感, 友人の関係満足感の双方に与える影響について検討す る。自らを望ましく評価してくれる友人との関係は心地 よく,そのような友人との関係満足感は高くなると考え られる。また,望ましい特性を有した友人との関係は価 値が高く,そのような友人との関係満足感も高くなると 考えられる。つまり,友人に対して自己高揚的自己呈示 を行うことで,友人から望ましい評価を得ていると認知 していれば,結果として呈示者の関係満足感は高いと予 測される。また,友人に対する自己呈示によって,友人 が実際に呈示者に対して望ましい評価をしていれば,そ の友人の呈示者との関係満足感も高いと考えられる。 以上のように,友人への自己高揚的自己呈示は,友人 からの“評価の認知”という個人内影響過程を通じて, 呈示者の関係満足感の高さに繋がると同時に,友人から の“実際の評価”という個人間影響過程を通じて,友人 の関係満足感の高さに繋がると考えられる。一方,対人 的変数である関係満足感に対し,個人的変数である自尊 心については,友人への自己高揚的自己呈示が,友人か らの望ましい“評価の認知”をもたらすという個人内影 響過程を通じて,呈示者の自尊心の高さに繋がることの みが予測できる。友人が呈示者に対して望ましい評価を していても,そのことが友人の自尊心の高さに繋がると は限らないからである。自己評価維持モデル(Tesser, 1988)によれば,優秀な他者と心理的に近い場合,その 他者が優れている領域が自分にとって重要ではない場 合,その他者との結びつきを強調することで,自分と他 者を同一視し,自己評価が高まる。ただし,重要な領域 の場合,自分と他者とを比較してしまい,自分が相対的 に劣っていることを認識し,自己評価が低下してしまう。 つまり,友人が優れた特性を有していると認識すること は,自己評価を高めることにも,低めることにも繋がる 可能性がある。以上より,友人が呈示者に実際に望まし い評価をしていると,その友人の自尊心も高まるという 個人間影響過程についてはみられないと考えられる。 以上のような自己高揚的自己呈示の関係満足感および 自尊心に対する,他者からの評価の個人内,個人間の媒 介過程を検討するにあたり,本研究では大学新入生の同 性友人関係を対象としたペアデータを収集し,友人関係 ペア双方の自己呈示が,相手への評価やその評価の推測, および双方の関係満足感や自尊心に与える影響過程につ いて検討する。本研究において大学新入生を対象とする のは以下のような理由からである。自己呈示については 関係の初期だけでなく,継続的な関係においてもなされ, 重要な役割を果たしているとする議論(Leary & Miller, 2000;谷口,2012)もあるものの,自己高揚的自己呈示 を行うことが関係の質や自尊心の高さに及ぼす影響は, 関係の初期の方がより明確に観察されると考えられる。 このことは,関係初期の相互作用がその後の関係の進展 を決定づけるとする関係の初期分化現象(Berg & Clark, 1986;山中,1994)からも予測される。また,大学新入 生は,好むと好まざるとに関わらず,大学内の友人との 相互作用が多く,自己呈示を行う機会も多いため,本研 究の目的に照らして,検討対象とするのに適切であると 考えられる。 また本研究では,大学新入生の友人関係の形成過程を 検討するという目的から,時系列データの収集を行う。 ペ ア デ ー タ の 分 析 に はActor-Partner Interdependence Model(APIM: Kenny, 1996)を用いる。APIM は二者関 係における変数の関係性をActor 効果と Partner 効果に 分離させる方法である(清水,2014)。Actor 効果は個 人の説明変数が自身の結果変数に与える効果であり, Partner 効果は個人の説明変数がペアの相手の結果変数 に与える効果である(浅野・五十嵐,2015)。Actor 効 果は個人内過程を意味する効果であり,Partner 効果は

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個人間過程を意味する効果である(清水,2014)。本研 究では,APIM を用いて Figure 1 のモデルを検討する。

さらに本研究では,友人に対して自己高揚的自己呈示 を行う領域として,「有能さ」と「親しみやすさ」の2 つ の領域を扱う。Paulhus and Trapnell(2008)は,自己呈 示の領域をAgency と Communion に分類している。また, Swann and Bosson(2010)は,自己確証動機や自己高揚 動機に先行する,Agency,Communion,Coherence とい う3 つの自己関連動機を挙げている。このうち,Agency は自律性や有能さに関する領域,Communion は他者と の繋がりに関する領域を指している。本研究で扱う「有 能さ」はAgency に,「親しみやすさ」は Communion に 対応している。そして,これらの領域でポジティブな評 価を他者から得ることを望むとされている3) 以上より,本研究では以下の2 つの仮説について検討 する。 仮説1:友人に対して自己高揚的自己呈示を行うこと が,自己呈示者の友人との関係満足感及び自尊心の高さ に正の影響を与え,その影響を友人からの評価の認知が 媒介するだろう(自己呈示のActor 効果)。 仮説2:友人に対して自己高揚的自己呈示を行うこと が,友人の関係満足感の高さに正の影響を与え,その影 響を友人からの実際の評価が媒介するだろう(自己呈示 のPartner 効果)。 方   法 調査実施方法と調査参加者 2007 年に大阪府内の 2 つの大学の新入生を対象とし て1 か月間隔で 4 回(4 月,5 月,6 月,7 月)のパネル 調査を行った。調査は心理学関連の授業時間中に実施し た。4 月の最初の調査において,授業に参加している同 性の友人とペアになるように求め,その友人について, あるいはその友人との関係について回答するように求め た。それぞれの回答がお互いに影響を与えないように, ペアとなった友人同士はなるべく距離を離して個別に質 問紙に回答するように求めた。具体的には,教室を前後 で半分に分け,ペアの一方は前の席に,もう一方は後の 席に移動させた。2 回目以降は,1 回目と同じ人とペア になるように指示し,同様にその友人について,および その友人との関係について回答するように求めた。調査 に参加したのは383 人だったが,そのうち,① 2 回以上 の調査に同じ友人とペアとなり参加しており,②ペアの 両方が1 回生で,③大学に入学後に知り合った,という 条件をすべて満たしている232 名(116 組,男性 134 名, 女性98 名)を分析対象者とした。平均年齢は 4 月の 1 回目の調査の時点で18. 12 歳(SD=0. 35)だった。 Figure 1 本研究で検討する APIM のモデル図 Note.同じアルファベットのパスは等値制約を行った.残差変数および,共分散の表記は省略した。 3)Coherence は自己確証動機に対応しており,継続的で安定した自己概念を求める動機である。本研究では, 自己高揚的な自己呈示の影響に焦点を当てているため,Coherence の動機については扱わない。

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調査項目 質問紙には様々な尺度や項目が含まれていたが,ここ では本研究の分析に使用した項目のみについて説明す る。いずれの項目も4 回すべての調査で回答するように 求めた。ただし,分析に使用したのは後述するようにそ れぞれ1 回分のデータのみであった。また 1 回目(4 月) の調査結果については本研究では用いず,以下ではそれ ぞれ2 回目(5 月)は T1,3 回目(6 月)は T2,4 回目 (7 月)は T3 と記述する。すべての尺度について,「1:まっ たくあてはまらない」から「5:非常にあてはまる」ま での5 件法で回答するように求めた。また,合計得点を 項目数で除した値を分析に用いた。 (1)友人に対する自己呈示 谷口・大坊(2005)の 自己呈示尺度から「有能さ」因子に含まれる3 項目(能 力のある人,(物事を)ある程度うまくこなせる人,知 的である人)と「個人的親しみやすさ」因子に含まれる 2 項目(親しみやすい人,好感が持てる人)に 1 項目(愛 想のよい人)を加えた3 項目を使用した。各項目につ いて,普段の日常生活の中でペアの友人にどのような人 として見られるように実際にふるまっているかを尋ね た。T1 の調査結果を分析に用いた。尺度の信頼性は, 有能さ(a=.89),親しみやすさ(a=.88)であり,平均 値は有能さ=2. 99(SD=0. 86),親しみやすさ =3. 59SD=0. 84)だった。 (2)友人への評価 (1)の自己呈示について尋ねた 尺度と同じ6 項目を用いた。各項目について,ペアと なった友人はどのような人だと思うのかを尋ねた。T2 の調査結果を分析に用いた。尺度の信頼性は,有能さ (a=.80),親しみやすさ(a=.86)であり,平均値は有能 さ=3. 50(SD=0. 74),親しみやすさ =3. 75(SD=0. 84) だった。 (3)友人からの評価の認知 (1)と(2)と同じ 6 項 目を用いた。各項目について,ペアとなった友人からど のような人として見られていると思うのかを尋ねた。T2 の調査結果を分析に用いた。尺度の信頼性は,有能さ (a=.87),親しみやすさ(a=.91)であり,平均値は有能 さ=2. 91(SD=0. 80),親しみやすさ =3. 35(SD=0. 88) だった。 (4)関係満足感 ペアとなった友人との関係満足感 について「その友人との関係に満足している」,「その友 人との関係はすばらしいものである」の2 項目に回答す るように求めた。T3 の調査結果を分析に用いた。尺度 の信頼性はa=.88 であり,平均値は関係満足感 =3. 53SD=1. 08)だった。 (5)自尊心 Rosenberg(1965)の self-esteem 尺度の 邦訳版である山本・松井・山成(1982)による自尊感情 尺度10 項目を用いた。T3 の調査結果を分析に用いた。 ただし,本尺度を使用した他の研究(e.g.,谷,2001)と 同様に,1 項目(もっと自分自身を尊敬できるようにな りたい)が他の項目との相関が低かったため,この項目 を除外して残りの9 項目を分析に使用した。尺度の信頼 性はa=.87 であり,平均値は自尊心 =3. 22(SD=0. 74) だった。 分析方法 本 研 究 で は, 仮 説 を 検 証 す る た め に,Figure 1 の APIM モデルに従って,構造方程式モデリングによる分 析を行った。具体的には以下に示す手順で分析を実施 した。 (1)ペアワイズデータセットの作成 本研究で分析 するペアデータは同性友人関係であり,ペア内で交換可 能なデータである。APIM を用いた分析を行うにあたっ て,交換可能データの場合はペアワイズデータセットを 作成する必要がある。具体的には,すべての変数につい てペア内で得点を入れ替えた変数を新たに作成する。つ まり,A と B という同性友人ペアにおいて,A の自己呈 示=3,B の自己呈示 =5 という結果が得られていたら, ペア番号=1,自己呈示 X=3,自己呈示 Y=5 というデー タと,ペア番号=1,自己呈示 X=5,自己呈示 Y=3 と いう2 つのデータを作成する。このように,Figure 1 の 各変数のX と Y はそれぞれペア内で得点を入れ替えた データであり,そのようなペアワイズデータセットを分 析に用いた。また,ペアワイズデータセットはサンプル サイズが本来の2 倍となってしまうため,本来のサンプ ルサイズを個別に指定して分析を行った。 (2)等値制約と共分散の仮定 Figure 1 において,あ る変数X(あるいは Y)から別の変数 X(あるいは Y) へのパスがActor 効果,ある変数 X(あるいは Y)から 別の変数Y(あるいは X)へのパスが Partner 効果とな る。同一変数間のX→X,Y→Y のパス係数は等値に制 約し,X→Y,Y→X のパス係数についても等値制約を 行った。また,Figure 1 の自己呈示 X と自己呈示 Y の間 には共分散を仮定し,それ以外の変数についてはX と Y の残差変数間に共分散を仮定した。さらに,評価の認知 と相手への評価のそれぞれの残差変数間,および関係満 足感と自尊心のそれぞれの残差変数間にも共分散を仮定 した。この時,X↔X,Y↔Y,X↔Y すべての組み合わ せについて共分散を仮定した。そして,同じ変数の分散 も等値に制約し,異なる変数の共分散についてもX↔X とY↔Y は等値に制約し,2 つの X↔Y も等値に制約し,

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さらに同じ変数のX と Y の平均値と切片も等値に制約 した。 結   果 分析はHAD14. 602(清水,2016)を用いて行った。 まず,ペア関係を区別せずに分析対象者全体で,変数 間の相関分析を行った(Table 1)。有能さと親しみやす さとの間に,自己呈示,友人への評価,友人からの評価 の推測のいずれにおいても有意な正の相関関係がみられ た。親しみやすさについては,自己呈示,友人への評価, 友人からの評価の推測のいずれの間にも有意な正の相関 関係がみられた。有能さについては,自己呈示と友人か らの評価の推測の間には有意な正の相関関係がみられた ものの,友人への評価と自己呈示および友人からの評価 の推測の間には有意な相関関係はみられなかった。関係 満足感は,有能さと親しみやすさの友人への評価,親し みやすさの自己呈示と友人からの評価の推測との間に有 意な正の相関関係がみられたものの,有能さの自己呈示 および友人からの評価の推測との間には有意な相関関係 はみられなかった。自尊心は,有能さと親しみやすさの 自己呈示および友人からの評価の推測の間に有意な正の 相関関係がみられたものの,有能さと親しみやすさの友 人への評価との間には有意な相関関係はみられなかっ た。また,関係満足感と自尊心の間には有意な正の相関 関係がみられた。 次に各変数についてペア内での級内相関係数を算出し た(Table 1)。親しみやすさの自己呈示および友人への 評価,関係満足感については級内相関が有意になってい たが,それ以外の変数については有意な相関関係を示さ なかった。 続いて,仮説を検証するために,Figure 1 の APIM の 影響モデルに従って,2 つの自己呈示領域(有能さと親 しみやすさ)のそれぞれについて個別に構造方程式モデ リングによる分析を行った。つまり,有能さの自己呈示 →有能さの友人への評価・友人からの評価の推測→関係 満足感・自尊心というモデルと,親しみやすさの自己呈 示→親しみやすさの友人への評価・友人からの評価の推 測→関係満足感・自尊心というモデルについて検討を 行った。なお,欠損値については完全情報最尤法による 推定を行った。分析の結果,有能さ,親しみやすさ,い ずれのモデルについても適合度指標は十分に高い値を示 していた(有能さ:c2=3. 621,df=34,p=1. 00,CFI= 1. 000,RMSEA=.000,SRMR=.012;親しみやすさ:c2= 8. 098,df=34,p=1. 00,CFI=1. 000,RMSEA=.000, SRMR=.021)。それぞれのモデルに含まれるパスの非標

準化係数と標準誤差をTable 2 と Table 4 に Actor 効果と Partner 効果に分けて示した。 有能さの自己呈示は友人からの評価の推測に対して Actor 効果は有意になっていたものの(b=.54, p<.001), Partner 効果は有意にならなかった(b=–.01, ns)。また, 友人への評価に対してはActor 効果も Partner 効果もと もに有意にならなかった(順にb=.00,b=.07,ns)。つ まり,5 月に友人に対して有能さの自己呈示を行うこと で,6 月に友人から有能さにおいて高い評価を得ている と認知するが,実際に友人から高い評価を得るわけでは ないという結果だった。関係満足感に対する友人への評 価および友人からの評価の推測の影響をみると,友人へ の評価,友人からの評価の推測ともにActor 効果のみが 有意となっていた(順にb=.24,b=.21,ps<.01)。また, 自尊心に対する友人への評価および友人からの評価の推 測の影響をみると,友人からの評価の推測のActor 効果 のみが有意となっていた(b=.38, p<.001)。つまり,6 月に友人から有能であると評価されていると認知してい るほど,7 月の関係満足感および自尊心が高かった。加 Table 1 各変数のペア級内相関と変数間の単相関関係 ペア級内相関 1 2 3 4 5 6 7 1.有能さの自己呈示(T1) .00 ― 2.親しみやすさの自己呈示(T1) .20* .48*** ― 3.有能さの友人への評価(T2) .04 –.03 .06 ― 4.親しみやすさの友人への評価(T2) .18* .07 .27*** .50*** ― 5.有能さの友人からの評価の推測(T2) .01 .56*** .36*** .12 .15* ― 6.親しみやすさの友人からの評価の推測(T2) .06 .16* .39*** .23*** .28*** .48*** ― 7.関係満足感(T3) .26* .09 .18* .17* .39*** .13 .24** ― 8.自尊心(T3) .02 .31*** .20* –.03 .12 .41*** .25*** .15* Note. *p<.05, **p<.01, ***p<.001

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えて,6 月に友人が自己呈示者のことを有能であると実 際に評価しているほど,7 月の友人の関係満足感が高 かった。次に,有能さの自己呈示→有能さの友人への評 価・友人からの評価の推測→関係満足感・自尊心の間接 効果についてSobel test を用いて検討した。間接効果の 分析は,Table 2 において有意となっていたパスの組み 合わせについてのみ行った。結果をTable 3 に示す。有 能さの自己呈示→友人からの評価の推測→関係満足感お よび自尊心(いずれもActor 効果)の間接効果が有意と なっていた(関係満足感:b=.11,z=2. 84,p<.05;自 尊 心:b=.21,z=7. 05,p<.001)。つまり,5 月に有能 さの自己呈示を行うことで6 月に友人から高い評価を得 ていると認知し,そのことが7 月の関係満足感や自尊心 の高さに繋がるという結果だった。以上より,有能さの 自己呈示については,仮説1 の Actor 効果については支 持されたが,仮説2 の Partner 効果については支持され なかった。 親しみやすさの自己呈示は友人からの評価の推測に対 し てActor 効 果 は 有 意 に な っ て い た も の の(b=.39, p<.001),Partner 効果は有意にならなかった(b=.10, ns)。 ま た, 友 人 へ の 評 価 に 対 し て は Actor 効 果 も Partner 効果もともに有意になっていた(順にb=.26, p<.001;b=.12,p<.05)。つまり,5 月に友人に対して 親しみやすさの自己呈示を行うことで,6 月に友人から 親しみやすさにおいて高い評価を得ていると認知し,し かも実際に友人から高い評価を得ていた。また,親しみ やすさの自己呈示を行うことで,友人のことを親しみや すさにおいて高く評価するという結果も得られた。関係 満足感に対する友人への評価および友人からの評価の推 測の影響をみると,友人への評価,友人からの評価の推 測 と も にActor 効 果 の み が 有 意 と な っ て い た( 順 に b=.44,p<.001;b=.21,p<.01)。また,自尊心に対す る友人への評価および友人からの評価の推測の影響をみ ると,友人からの評価の推測のActor 効果のみが有意と なっていた(b=.22, p<.001)。つまり,6 月に友人から 親しみやすいと評価されていると認知しているほど,7 月の関係満足感および自尊心が高かった。加えて,6 月 に友人が呈示者のことを親しみやすいと実際に評価して いるほど,7 月の友人の関係満足感が高かった。次に, 親しみやすさの自己呈示→親しみやすさの友人への評 価・友人からの評価の推測→関係満足感・自尊心の間接 効果についてSobel test を用いて検討した。間接効果の 分析は,Table 4 において有意となっていたパスの組み 合わせについてのみ行った。結果をTable 5 に示す。親 Table 2 有能さ領域における APIM の推定結果 目的変数 友人への評価(T2) 友人からの評価 の推測(T2) 関係満足感(T3) 自尊心(T3) Actor 効果 自己呈示(T1) .00(.05) .54(.04)*** 友人への評価(T2) .24(.08)** –.06(.05) 友人からの評価の推測(T2) .21(.07)** .38(.05)*** Partner 効果 自己呈示(T1) .07(.05) –.01(.04) 友人への評価(T2) .01(.08) .09(.05) 友人からの評価の推測(T2) –.02(.07) .02(.05) Note.数値は非標準化係数であり,括弧内は標準誤差である。*p<.05,**p<.01,***p<.001

Table 3 有能さ領域における間接効果の結果(Sobel test)

b(SE) z

自己呈示→友人からの評価の推測(Actor)→自尊心(Actor) .21(.03) 7. 05*** 自己呈示→友人からの評価の推測(Actor)→関係満足感(Actor) .11(.04) 2. 84* Note. *p<.05, ***p<.001

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しみやすさの自己呈示→友人からの評価の推測→関係 満足感および自尊心(いずれもActor 効果)の間接効 果が有意となっていた(関係満足感:b=.08,z=2. 85, p<.01; 自 尊 心:b=.09,z=3. 98,p<.001)。 つ ま り, 5 月に親しみやすさの自己呈示を行うことで 6 月に友人 から高い評価を得ていると認知し,そのことが7 月の関 係満足感や自尊心の高さに繋がるという結果だった。ま た,親しみやすさの自己呈示→友人への評価(Partner 効果)→関係満足感(Actor 効果)の間接効果が有意となっ ていた(b=.05, z=2. 07, p<.05)。5 月に親しみやすさの 自己呈示を行うことで6 月に友人から実際に高い評価を 得て,そのことが7 月の友人の関係満足感の高さに繋が るという結果だった。さらに,親しみやすさの自己呈示 →友人への評価(Actor 効果)→関係満足感(Actor 効果) の間接効果も有意となっていた(b=.11, z=3. 90, p<.001)。 5 月に親しみやすさの自己呈示を行うことで 6 月に友人 のことを親しみやすい人物だと評価し,そのことが本人 の関係満足感の高さに繋がっていた。以上より,親しみ やすさの自己呈示については,仮説1 の Actor 効果およ び,仮説2 の Partner 効果についてともに支持された。 考   察 本研究では,同性の友人に対して自己高揚的自己呈示 を行うことが,友人関係の形成,及び自尊心の高さに寄 与するプロセスについて,大学新入生を対象として検討 した。 APIM を用いた分析を行った結果,5 月に友人に対し て自己高揚的自己呈示を行っているほど,6 月に友人か らポジティブな評価を得ていると認知し,そのことが7 月の関係満足感や自尊心に繋がるという仮説1 の Actor 効果が,有能さ領域,親しみやすさ領域においてともに みられた。また,5 月に友人に対して自己高揚的自己呈 示を行っているほど,6 月に実際に友人からポジティブ な評価を得て,そのことが友人の関係満足感に繋がると いう仮説2 の Partner 効果が,親しみやすさ領域のみに おいてみられた。つまり,大学新入生が入学後初期の段 階で,自分が有能であることを友人に自己呈示すること が,その後の自尊心や関係満足感の高さに繋がるといえ る。一方,自分が親しみやすい人物であることを友人に 自己呈示することは,その後の自尊心や関係満足感の高 Table 4 親しみやすさ領域における APIM の推定結果 目的変数 友人への評価(T2) 友人からの評価 の推測(T2) 関係満足感(T3) 自尊心(T3) Actor 効果 自己呈示(T1) .26(.05)*** .39(.05)*** 友人への評価(T2) .44(.07)*** .05(.05) 友人からの評価の推測(T2) .21(.07)** .22(.05)*** Partner 効果 自己呈示(T1) .12(.06)* .10(.06) 友人への評価(T2) .04(.07) –.02(.05) 友人からの評価の推測(T2) .13(.07) .03(.05) Note.数値は非標準化係数であり,括弧内は標準誤差である。*p<.05,**p<.01,***p<.001

Table 5 親しみやすさ領域における間接効果の結果(Sobel test)

b(SE) z 自己呈示→友人への評価(Actor)→関係満足感(Actor) .11(.03) 3. 90*** 自己呈示→友人からの評価の推測(Actor)→自尊心(Actor) .09(.02) 3. 98*** 自己呈示→友人からの評価の推測(Actor)→関係満足感(Actor) .08(.03) 2. 85** 自己呈示→友人への評価(Partner)→関係満足感(Actor) .05(.03) 2. 07* Note. *p<.05, **p<.01, ***p<.001

(9)

さに繋がることに加え,友人の関係満足感の高さも導い ていた。これらの結果は,友人関係の初期段階において 自己高揚的自己呈示を行うことが,友人関係の形成や自 尊心にとって有益であることを示している。以下,本研 究で得られた結果について考察するとともに,自己高揚 的自己呈示の有益性についても議論する。 まず,自己呈示が友人からの評価およびその評価の推 測に与える影響についてみていく。有能さと親しみやす さ,いずれの自己呈示もそれを行っていることが,友人 が有能である,あるいは親しみやすいという評価を自分 にしているという認知に繋がっていた。一方,親しみや すさの自己呈示は友人から実際に高い評価を引き出して いたが,有能さの自己呈示は友人からの実際の高い評価 に有意な影響を与えていなかった。このように有能さと 親しみやすさの自己呈示が友人からの実際の評価に異な る効果を与えたことについては,次のように考えること ができる。友人に対して親しみやすさの自己呈示を行っ ているとは,具体的には相手を援助したり,相手のこと を受容する発言を行ったりといった相手にとって望まし い行動を指す場合が多いと考えられる。そして,このよ うな行動は相手に対する好意を伝えることになる。相手 から好意を伝えられると,その相手に対して好意を返報 する(Berscheid & Walster, 1969)ため,相手も自分に 対して好意を抱くことが予想される。結果として,親し みやすさの次元において自己呈示者に対して好意的な評 価をすることになると考えられる。これに対して,有能 であるとの自己呈示は,具体的には試験で高得点を取っ たことを伝えたり,運動能力の高さを披露するなどが挙 げられる。ただし,そのような自己呈示は,たとえば英 語能力が高いといった個別的な評価に繋がるものの,本 研究で使用した項目である「能力のある人」といった包 括的な評価を高めることには必ずしも繋がらないと考え られる。また,そもそも親密な友人関係においては,直 接的にそのような自らのパフォーマンスを誇示するよう なことはせず,友人との日常的な関わりの中での会話や 振る舞いを通じて,間接的に有能であることを示そうと することが多いのではないだろうか。そして,そのよう な間接的な自己呈示は呈示者の意図や期待に比して,十 分には相手に伝わっていないと考えられる。ただし,関 係の親密化とともに有能さに関する間接的な自己呈示が 実際の評価に影響を与えるようになる可能性もあり,今 後,検討するべき課題である。 次に,友人への評価およびそのような評価の推測が関 係満足感や自尊心に及ぼす影響についてみていく。有能 さについても親しみやすさについても,関係満足感や自 尊心に対して友人への評価のPartner 効果はみられず, 友人からの評価の推測のActor 効果のみがみられた。つ まり,実際に友人に有能である,あるいは,親しみやす い人物であると思われていることは関係満足感や自尊心 に影響を及ぼしておらず,有能である,親しみやすい人 物であると友人は自分のことを評価しているという認知 が関係満足感や自尊心に影響を及ぼしていた。また,関 係満足感は自分が相手にどのように思われているのかだ けでなく,相手をどのように評価しているのかにも規定 されていた。つまり,友人のことを有能であり,親しみ やすい人物であると評価することは,関係満足感の高さ に繋がっていた。これは,そのような評価の高い友人と の関係はそれ自体が価値の高いものであると感じられる ため関係満足感が高いことを反映した結果であると考え られる。 本研究の結果は,友人関係の形成初期において自己高 揚的自己呈示を行うことが,関係の形成や自尊心にとっ て有益であることを示している。それでは,そもそも友 人関係においてはどのような評価をわれわれは望んでい るのだろうか。この問題を考えるにあたって議論となる のが自己高揚動機と自己確証動機という2 つの自己関連 動機の葛藤である。つまり,自己概念と他者からの評価 を一致させたいという自己確証動機と,自己概念に関わ らず,できるだけポジティブに他者に評価して欲しいと いう自己高揚動機の対立である。自己評価が高い人に とって,ポジティブな評価を得ることは自己高揚動機と 自己確証動機をともに満たすことになるが,自己評価が 低い人にとって,ポジティブな評価を得ることは自己高 揚動機を満たすことができるものの,自己確証動機は満 たされないことになる。谷口・大坊(2008)は恋人関係 を対象として研究を行っており,自己評価の高低に関わ らず,恋人からは自己高揚的な評価を望み,また恋人か らはポジティブな評価を得ていると認知していることを 示し,自己高揚動機が優先されることを支持する結果を 得ている。これは本研究と一致する結果である。ただし, この研究では,恋人からの自己高揚的な評価を正確であ ると認知していることも同時に示されており,これは自 己確証動機が恋人関係で満たされているといえる結果で ある。この結果は,Swann et al.(2002)が行った研究 でもみられている。このような傾向について,Bosson and Swann(2001)は,次のような説明を行っている。 われわれは,恋人に見せる自分,親に見せる自分,先生 に見せる自分は程度の差こそあれ,どれも異なる。つま り,異なる他者には異なる自己呈示を行っている。ただ し,偽りの自分を見せていると思っているわけではなく,

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そのどれもが本当の自分が反映されたものだと思ってい る。つまり,われわれはカメレオンのように見せる自分 の姿を変化させるが,それを誠実に行っているというわ けである。Bosson and Swann(2001)はこれを“誠実な カメレオン効果(sincere chameleon effect)”と呼んでい る。恋人からはポジティブな評価を望み,実際にそのよ うな評価を得られるように自己呈示を行うことで,恋人 からポジティブな評価を得ていると思うことができてい ても,そのような評価が現実の自分とかけ離れていると は思わないわけである。つまり,自己高揚的自己呈示を 行うことは,自己高揚動機のみならず,自己確証動機も ともに満たすような評価を得ることに繋がるといえ,そ の意味でも有益であるといえる。 最後に本研究の限界について述べておく。第1 は,本 研究の結果は大学新入生を対象としており,友人関係の 初期段階についての検討に限定されていることである。 友人関係の親密さの変化とともに,自己呈示の役割も変 わる可能性がある。今後は関係の親密さも考慮に入れた 検討を行うことが必要だろう。 第2 は,本研究で扱った自己呈示が有能さ,親しみや すさといったイメージに限定されていたことである。実 際にそのようなイメージを友人に呈示する際には,具体 的に行動していると考えられる。そのような具体的な行 動の内容が,友人関係の形成や自尊心に影響を与えてい る可能性もある。今後は,自己呈示の具体的な行動の頻 度を測定する尺度4)を用いて詳細な検討を行うことが 求められる。 引用文献 安藤清志(1994).見せる自分/見せない自分―自己呈 示の社会心理学― サイエンス社 浅野良輔・五十嵐祐(2015).精神的健康・幸福度をめ ぐる新たな二者関係理論とその実証方法 心理学研 究,86, 481–497.

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4)たとえば,「気遣って声をかける」,「知識あるように話す」など,谷口・小林(2005)の 9 因子 31 項目から 構成される自己呈示行動尺度などがある。

(11)

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(12)

Self-enhancing self-presentations on the development of friendships and self-esteem:

An Actor Partner Interdependence Model analysis for longitudinal and dyadic data of freshmen

Junichi Taniguchi (Department of Psychology, Tezukayama University)

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This study examined the effects over time of freshmen’s self-enhancing self-presentation toward their friends on evaluation from friends, and their mutual relational satisfaction and self-esteem. A total of 232 freshmen (116 pairs, 134 males and 98 females) participated in a longitudinal study in which they completed a questionnaire four times (April, May, June, and July, given that the new school year begins in April). Participants were required to pair up with a same-sex friend, and respond to the questionnaire about themselves and their friend. Using the Actor-Partner Interdependence Model, results revealed that the more “competent” and “likeable” participants presented themselves toward their friends in May, the higher their relational satisfaction with their friends and esteem in July. Perceived evaluation from friends in June positively mediated the influence of presentation in May on relational satisfaction, and esteem in July. In addition, when they engaged in self-presentation as a likeable person in May, their friends actually evaluated them as likeable in June, which led to higher perception of the friends’ relational satisfaction in July. The results were discussed in terms of the beneficial consequences of freshmen’s self-enhancing self-presentation toward friends.

Table 3  有能さ領域における間接効果の結果(Sobel test)
Table 5  親しみやすさ領域における間接効果の結果(Sobel test)

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