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思春期・成熟期前期の母性保健 公開講座の企画と評価

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Academic year: 2021

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(1)

公開講座の企画と評価

藤尾ミッ子

要 旨  母性保健をテーマとして一般の若い女性を対象に講座を公開する機会を得 た.ほとんどの受講生がこのようなテーマの講座を受けるのは初めてであり生き生き とした受講後感想が寄せられた.内容は自己の母性の認識に関するもの,母性保健の 考え方に関するもの,具体的な知識や方法に関するものに分類された.

      長大医短紀要1:139−143,1987

Key Words:母性保健,保健教育,若年婦人,自由感想文

母性の:Life cycleにおいて成熟期初期は,

母性機能の発達充実とともに心身の躍動感に 溢れ,何事にも喜びを見出して人生が楽しく

まさに 青春している 観もあり,又それと 裏腹に人生に悩む姿も多く見受げられる.母 性機能の発達に伴って,その保健の知識と方 法の獲得が現実の自由な交友関係や性にっい ての行動に伴わず,中絶など心身の不健康を 自ら招くケrスも年毎に増加している」)2)他 方一見健康的にみえる若い女性の中にも母性 貧血3)4)が潜行しているといわれるが,この 時期の貧血や鉄欠乏はその後に起こってくる 妊娠,分娩,出生児へなど母性として最大に その力を発揮する時期に影響を及ぼすことが 注目されている.

今回 一女性の健康 から 次代の子を生み 育てていく母体の健康 へと視点を拡げ 母性・

として自覚のある保健生活を志向する ことを めざして講座を企画し実施したのでここにそ の概要と受講生の反応による評価をのべる.

1.母性保健講座の概要

テーマ:思春期から婚前期への母性保健 対象:一般の若い女性

時間:5時闇

場所:長崎大学医療技術短期大学部第1講

  義室(写真1)

教材:受講用テキスト   人体模型・標本

写真1 昭和62年長崎大学公開講座風景

看護学科:長崎大学医療技術短期大学部

(2)

  カラーパネル   医療器具   保健薬品類

  VTR

講義の展開に応じて適宣使用し,受講生に供

覧した.

内容項目:1.母性の視点の重要性にっいて    2.統計にみる若年妊娠と問題点     1)母性の保健統計の示すもの     2)思春期妊娠の現状と母性性

    について

    3)思春期妊娠の社会的・精神

    的問題と対応

   3.思春期から成熟期への生理的     側面の理解

   4.Family planing

   5.STDと思春期の母性保健     1〉STDの感染経路

    2)STDと垂直感染と母性保

    健

    3)AIDSにっいて

なお,若い女性の鉄欠乏性貧血と母1生保健 にっいては別に5時聞を充てて講義を中島規 子氏(当時本学小児看護学講師)が担当して

下さり貧血の治療食調理を共同で行ない効果 を得たので別の機会に報告する.

2.受講生のプロフィールと受講反応 受講生に対して講座の中間と終了時点でア ンケートによる把握を行ない37名の回答を 得たものを図1に示した.

 1)年  令

17才から19才のものが19%,20才台が 70%,30才以上は4名であり教室は企画側

で期待したように一見して若い人が多かった.

30才以上の人では高校生の娘とその友人を 連れて来ていたり,10代で姉妹での参加も みられ講座に対する積極性が感じられた.

 2)職  業

10代の若い人はすべて高校生と大学生で あって全体の24%をしめ,夏休みの帰省中 を利用して参加した東京の大学在学中の学生 の姿もあり10代では学生が最も多かった.

会社員と公務員を合わせると約46%であり 友人同志で参加したり,職場の代表として来

たという人もいた.養護教諭及び教師は 10%で中には短大教員で学内の母性教育を

担当する関係で役立ちますと熱心に聴講し,

終了後も懇談して行った人もあり,また学校

図1 受講生のプロフィール(n=37)

%   

20       40      60      80

年     令 10代 20代 30〜

職     業 高・大学生 OL。公務員 養・教 看・保・栄

な  し

異 性 友 人

Sexaproch C B   A な  し

避  妊  法 スキン 膣外 BBTなし他 N。A

人工妊娠中絶 な  し

性  教  育   有中・高校      看・保 な  し

母 性 教 育 必要有り

なし

(3)

保健の現場での指導のあり方について実践の 参考にといった養護教諭もあった.っづいて 看護婦が8%いたが中で,福江市から参加し

たナースは若い未婚婦人の中絶希望患者への 対応や指導を課題として参加し講義終了後も 残って現状を話していた.ほかには保母や栄 養士をしている人達であった.

 3)夫・異性友人等

 結婚については未婚者が92%と圧倒的に 多かった.異性の友人関係では同様に有りと 答えたものが多く関わり度については過半数 の人がCレベルの交友関係と答えており,

講義に対して非常に積極的な態度を示してい たことも肯ずけるものであった.交友レベル についてのABCの表現は注釈なしに通用す

るところがいかにも現代の若人らしい.

 4)人口妊娠中絶の体験

 14%の人が有りと回答した.生理の不順 や遅れを妊娠に結びっけて 落っかない,心 と訴えているものもあり,避妊に不安を もっている様子がうかがえた.避妊の方法に っいては図1に示した順位で回答がよせられ 不確実性が危惧される方法であったりまた未 婚であり乍ら何も使用しないというようなケー スもあり,多くの入が妊娠の可能性と不安が 常にあると答えている.Cレベルの数より頻 度が高いのは複数回答を延べ数で表記したか

らである.性教育にっいての受講の有無はほ ぼ半々であった.有りと答えたものでは中学 校高等学校において保健の授業として受けて いるものが殆んどで あくまでも生徒に教え ることとして受けたような気がします と表 現していたようにいわゆる純潔教育の範疇の ものであろう.従って母性保健を真向にすえ た今回の講義とは焦的が異なっており,今回 の試みのような母性保健に関するカウセリン グルームにっいては殆んどのものが必要性が あると答えていた.

 5)受講後のアンケートとして母性保健へ の認識と受講感想を問うたところ,多くの人

がぺ一パー狭しと小さな字でビッシリ書いて いた.そのいくっかを原文のま㌧紹介しよう.

 ①(学生18才)「私はよく献血に行きます が,いっても比重が低くて採血してもらえま せん.今日のお話の中で貧血のことが出まし たが,子供にも影響があることを聞きたかが 貧血だと思っていましたがとても大切なこと だなあと思いました.」一(評)自分の位置づ けを女性としての視点から,母性として見よ うとする視野の拡がりが確立されっっある.

 ②(学生19才)「今までは避妊にっいてちょ っといいかげんな態度でありましたが今から は彼まかせにせず,自分でも積極的に取りく んでいきたいと思います.」一(評)結果への 自覚や責任を考え対処法を自分のこととして 考えはじめている、

 ③(学生21才)「高校の保健や大学の特別 な講義などである程度の知識はありましたが,

実物をみたりなどしてくわしく学ぶことがで きよかったと思います.またエイズについて も学ぶことができ参加してよかったと思って

ます.」

④(会社員22才)「人工妊娠中絶術につい て雑誌などで読んだことはあったが実際の手 術器具をみてゾッとしてしまいました.もう 少し簡単なものだと思っていたのでショック でした.もっと多くの人にこの様な講義が必 要だと思います.」一一(評)若い女性もそして その相手も中絶を簡単なものと思っている所 に筆者はゾッとする.

 ⑤(会社員23才)「望まない妊娠をするこ とは本当に心身に問題を残すことだというこ とを痛感しました.中学校や高校でこのよう な授業があったら10代の中絶数も減るので

はないかと思う.」

⑥(会社員22才)「何が大切かわかったと いうか,常に自分の行動に責任を持って行動 しなければならないこと.自分一人の問題で はなく,女性に生れたからには子供を生むと いう大きな仕事が残っていて,それに常日頃

(4)

から結婚する前から気をっけていなければな らないこと.先生のお話を伺って悩んでいた 心が少し軽くなりました.」

 ⑦(OL22才)「今日は本当によかったと 思います.もっともっとたくさんの女性に聞

いて欲しいと強く感じました.又女性ばかり でなく男性にも知ってほしいと思います.男 性も聞けるのなら彼も受講したいといってい ました.又ぜひこういう機会をもうけていた

だけたら大変嬉しく思います.本日はどうも ありがとうございました.」

 その他にも表1に示したように各々受講後 得るものがあったと記しており,講座で意図

した大要はとらえられていた.即ち一っには 自らを一女性の視点から意識的に母性として とらえる認識のし方がなされており,また 具体的な知識の獲得に役立ったと評価したも

のもあった.

母性および母性保健の考え方等に関するもの

◎まず「来てよかった」と思いました.本当に坂  がっらくて『次ぎは行かない』と母に言いまし  たが,話を聞いているうちに聞くのと聞かない  のでは「やはりちがうのでは……」と思いまし  た.(17歳学生)

◎とても勉強になった(18歳学生)

◎正しい知識が得られた(20歳学生)

◎今までこの問題に関する情報を避けていたので,

 全くといっていいほど知らなかったのですが思  い切って来てよかったと思いました.

 (20歳O:L)

◎知らないことばかりだった.(21歳公務員)

◎女性の身体の大切さ,性に対する知識の大切さ.

 (24歳0:L)

◎普段深く考えずにすごしてしまうあるいはさけ  てしまう問題について真剣に考えることができ  てよかったと思う.男性を対象にするというの  はできないのでしょうか.(24歳公務員)

◎自分の身体についての知識を正しく得る機会を  持てたこと,(25歳O:L)

◎性について口にすることはタブーというような  環境に育ってきて,何となくしか理解していな  かったことがよくわかりました.まだ心の中に  は恥ずかしさみたいなものが残っていますが,

 勇気をもって話すようになりたいし男女交際に  おいてもお互いに何でも話せるような関係であ  りたいと思います.(25歳保母)

◎自分ではわかっているっもりのことが,あらた  めて聞いているとなるとなるほどなあと思える  ことが多く自分なりにためになったと思う.

 (25歳公務員)

◎ぼんやりとした知識が今日の講義ではっきりし  た.(27)

◎知識の再確認ができた.学校保健の現場での性  指導のあり方について考えさせられ,実践の参  考になった.(26歳養護教諭)

◎女性の保健にっいてわりとおぼろげな知識だっ  たのが具体的でよくわかりました.今後この知  識を生かして行きたい.(27歳)

◎私の職場は若い女性が多いのですが,これから  は低年令を対象に今日のような講義は必要だと  思う.このような話題が自然に出来るような職  場のふんいきを作っていきたい.今日はどうも  ありがとうございました.(31歳OL)

◎中学・高校生に聞かせた帆母親同伴でもよかっ  たのではないか.自分の身体は自分で守らなけ  ればならないのだから.(32歳ナース)

◎もっと気軽に多くの人が参加できるように地区  の会場を借りて講座を聞かれるとよいのではと  思います.母親が娘のために出すのなら¥3,000一  は安いのではと思いました.全部の時間がたい  くっをしない時間でとても短かったように思い  ます.ありがとうございました.(42歳会社  員)

具体的な知識や方法に関するもの

☆今まで軽く考えていた中絶というものの恐ろし  さを実感した.(19歳学生)

☆受胎調節の方法が今までよりよくわかった.

 (20歳学生)

☆避妊もしくは中絶に関して彼ともう一度真剣に  考えてみようξ思いました(23歳OL)

☆本などである程度の事は知っているつもりでい  ましたが,実際にお話を聞いたり実物をみたり  してより正確に認識できました.(23歳O:L)

☆実物を見ることができたりエイズに関して短識  を得てよかった.(24歳養護教諭)

☆避妊の種類,基礎体温について.(26歳教員〉

☆妊娠,避妊について楽な気持ちになれた.

 (32歳栄養士)

表1 受講後の感想(原文のま、)

(5)

3. ま と め

 価値観が多様化している現代において若い 女性のそれも個別化し,追求する方向も多彩 である.女性として精いっぱいに生きるため に自らの責任を具体的手段でどう表現するか が常に彼女らの課題であり乍ら母性をどのよ うに据えるかの教育が希簿なように思われる.

将来は優しい母 となりたいといいっっ現 在の日々の異性交際でCレベルに居て避妊

は彼まかせという態度が多い. 子供が出来 たからといってする結婚は幸せがまっている とは限りませんもんね.学生19才(原文の ま㌧) と書きっっも方法論はなおざりとな りぼかされてしまう.女性が将来優しい母と なることを目ざすために思春期後期から成熟 期前期の未婚の時期に母性としての視点を認 識して行動することが大切であろう.今回は 母性としての自覚を促し健康的な生活を目ざ すことをテーマに進めたところ,左のような 結果を得た.受講生各人が母性保健にっいて

意識を新たにしたものと考えられる.いま,

この公開講座を通して,更に多くの若い女性 にこゐような機会を作ることは母性保健にた ずさわる者の現在の責務の一っであろうと考

えている.

1 厚生省児童家庭局母子衛生課監修,母子  衛生の主なる統計 1987

2 吉田茂子,:青少年とSTD  女性,

 周産期医学Vo117No31987−3 P397

 〜401

3 植田 穣,守田利貞,山本正生,宮田昭  三,寿円梅子:貧血,小児科MOOK No31   1983 学校保健 P240〜P251

4 宮崎 保,倉根理一,水谷良子:思春期

 貧血,産婦人科の実際Vol29No31980   P175〜180

5 森山 豊:周産期に備える健康管理,周

 産期医学 Vol8No61987〜6

        (1987年12月28日受理)

参照

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