1 問題設定
本稿の目的は、平成18年度に静岡大学生涯学習教育研究センターと静岡県生涯学習振興財団によって実施された
「県民カレッジおよび生涯学習に関するアンケート」(1)において収集された調査データを再分析し、生涯学習講座へ の継続的受講者(リピーター)のニーズ及び生涯学習への考え方にかかわる要因を検討することにある。
「しずおか県民カレッジ」は、生涯学習社会実現に向け、静岡県教育委員会が平成8年度に開設した生涯学習支援 プログラムである。平成15年度からは財団法人静岡県生涯学習振興財団の運営となり、主催講座・連携講座を軸に 展開した。主催講座は「専門的知識・技術を持ちボランティア活動等に参加する人材を養成するとともに、地域教育 推進リーダーを育成し、住民主体の地域づくりを推進する」もので、連携講座は「市町村、大学、民間教育業者、専 修学校・各種学校等と連携して広域的・体系的な学習機会を提供する」ための連携プログラムである。
平成17年度では、主催講座のボランティア養成講座・地域教育推進リーダー養成講座合わせて13講座開設され、
計218名の参加者を集めた。連携講座は139機関が参加し、5,450講座が開設された。県民カレッジでは主催講座・連 携講座受講生に対し単位認定をしさらに称号の付与も行っている。原則1時間1単位とし、100単位−ふるさと学士、
300単位−ふるさと修士、500単位−ふるさと博士となる。称号授与者ののべ人数は、それぞれ1,434名、279名、177
名で、計1,890名であった(平成18年3月現在)。なお、静岡県生涯学習振興財団は平成19年度末で解散し、平成20
年度からしずおか県民カレッジは、開始当初と同じく再び静岡県教育委員会が実施することとなった。
静岡大学生涯学習教育研究センターは、静岡大学が連携講座の実施機関として参加するにあたり連携の窓口となっ ており、合わせて主催講座の講師や県民カレッジ推進委員会に委員を派遣するなど県民カレッジとの連携をはかって きた。平成18年度の調査は、そうした連携の一環として、静岡県生涯学習振興財団と共同で称号授与者に対し企画・
実施することとなったものである。
静岡県民の生涯学習ニーズに関しては県教育委員会を中心に幾度か調査がされてきた。ただ、県内で展開されてい る生涯学習講座への継続的受講者(リピーター)に絞った調査はほとんど実施されたことがなかった。調査では、前 述したふるさと学士・修士・博士の称号授与者を主な対象とし、数多くの講座・学習機会に継続的に参加してきたリ ピーターがどのような学習ニーズを持っているか、生涯学習を進めるにあたりどのような課題を持っているのか、学 習の成果をどのように活かしたいと考えているのかといった事柄を探った。
前回調査の結果は、平成18年度に『しずおか県民カレッジ受講者における生涯学習ニーズに関する調査報告書』
としてまとめられたが、今回の論考では報告書で積み残された課題を扱い、称号授与者となっている継続的受講者が もつニーズ及び生涯学習への意識に関わる諸要因を検討する。
2 しずおか県民カレッジの概要
前回調査時におけるしずおか県民カレッジの概要をまとめておく。
(1)趣旨
「しずおか県民カレッジ」は、生涯学習社会実現に向け、静岡県教育委員会が平成8年度に開設した生涯学習支援
生涯学習講座継続的受講者のニーズに関する要因分析の試み
──しずおか県民カレッジ受講者へのアンケート調査を手がかりに──
阿部 耕也
*論文
プログラムである。平成15年度からは財団法人静岡県生涯学習振興財団の運営となり、主催講座・連携講座を軸に 展開してきた。主催講座は、静岡県生涯学習振興財団が実施し、専門的知識・技術を持ちボランティア活動等に参加 する人材を養成するとともに、地域教育推進リーダーを育成し、住民主体の地域づくりを推進するものである。
連携講座は市町、市町教育委員会、大学、高等学校、専修学校・各種学校、民間教育事業団体、NPO等が実施す る社会教育関係の講座のうち、「しずおか県民カレッジ」に登録された講座である。平成17年度では、主催講座のボ ランティア養成講座・地域教育推進リーダー養成講座合わせて13講座開設され、計218名の参加者を集めた。連携講 座は139機関が参加し、5,450講座が開設された。
(2)称号について
県民カレッジでは、主催講座・連携講座受講者に対し、原則1時間1単位として単位認定をし、さらに希望者には 下記のようなかたちで称号の付与も行っている。称号授与者ののべ人数は、ふるさと学士が1,434名、ふるさと修士 が279名、ふるさと博士が177名で、計1,890名である(平成18年3月現在)。
(3) 講座の分類について
しずおか県民カレッジの講座は、次の8部門に分類されている。
部門別分類
1.ふるさと生活学 2.ふるさと社会学 3.ふるさと文化学 4.ふるさと地域学
家庭教育をはじめ、健康 づくりや福祉・ボランテ ィアに関する学習など、
生活の在り方を学ぶ講座
政治・経済・法律から男 女共同参画形成の問題ま で、社会の様々な問題を 見つめ考える講座
文学、レクリエーション、
スポーツ、芸術など文化 的・芸術的なことから趣 味まで幅広く学ぶ講座
地域の歴史、文化、自然 などを見つめ直したり、
まちづくりを考えたりす る講座
5.ふるさと国際学 6.ふるさと情報学 7.ふるさと環境学 8.ふるさと総合学 外国語の学習や国際交流
に関する学習など、国際 理解・国際感覚を養う講 座
情報化社会に的確に対応 する考え方、技術などを 学ぶ講座
環境問題について様々な 角度から見つめ考え合う 講座
総合的に、いくつかの分 野・領域にまたがり学習 する講座
(4) 組織
県民カレッジの組織は下表のようになっている。
学 長 静岡県知事 副学長 静岡県教育委員会教育長
推進委員会 (構成)学識経験者・実施機関代表・学習者代表および行政の代表
(役割)県民カレッジの運営に関する専門的事項を審議・決定
事務局 財団法人静岡県生涯学習振興財団
(5) しずおか県民カレッジの仕組み
県民カレッジの仕組みは以下の図の通りである。
(6) しずおか県民カレッジの称号付与者の推移
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(7) 連携機関・連携講座数
(8)部門別講座数
3 前回調査の概要
平成16年度末に行われた前回調査の概要を述べておく。
(1) 調査方法と調査対象
調査は平成17年2月に、ふるさと学士・修士・博士の称号授与者(345名)と静岡大学公開講座受講者(117名)
の計462名に調査票を郵送し、3月末日までに263通の回答が寄せられた(回収率約57%)[アンケート用紙は章末資 料として添付]。
(2) 調査内容
調査では以下のような項目を尋ねた。
・回答者の属性に関する基礎項目
[住所、性別、年齢、職業・生活形態、学歴]
・県民カレッジについて
[講座ののべ履修時間、認定学位、受講歴、受講希望、受講動機、その他県民カレッジに関する希望]
・生涯学習への取り組みについて
[取り組み状況、必要条件、問題点、成果の活かし方、その他学習に関する種々のニーズ]
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(3) 回答者の属性
性別は、男性が58.9%、女性が40.
7%である。講座の受講者は女性の方 がむしろ多い印象があるが、称号授 与者に限ると男性がかなり多い。
年齢別では、70代がほぼ半数で最 も多く、次いで60代が32.4%で、50 代・80代が7%ほどで、他の年代(20
代〜40代と90代)を合計しても4%
弱とごく少数である。
職業・生活形態では、無職が圧倒 的に多く、専業主婦(主夫)が続く。
年代と合わせて考えると、称号授与 者の中心は、退職後の70代前後の高 齢者が占めているといえる。
学歴をみると、高校卒業程度が5割 弱で最も多く、短大・専門学校卒業 程度、大学卒業程度と続く。
4 前回調査で見出された論点
前回調査では、県民カレッジにおける学習状況、生涯学習への取り組み状況等をまとめ、さらに各項目について受 講者の年齢別および県民カレッジの受講歴別に分析した。詳細については『しずおか県民カレッジ受講者における生 涯学習ニーズに関する調査報告書』にゆずるが、生涯学習講座や学習機会に数多く参加した受講者たちがどのような ニーズ・意識を持つのかを探り、その要因を分析するという今回の課題設定に合わせ、前回調査において見られた全 体的な傾向、ならびに受講歴別のクロス集計結果から得られた論点をあげておく。
(1) 県民カレッジにおける学習状況から A 県民カレッジの学習分野
受講歴と受講希望と比較すると、「介護・福祉」「パソコンやインターネット」、「語学」の項目で、希望の方が受講 経験を大きく上回っている。これらの学習分野は実習・体験型で、また教養を身につける座学というより受講者の生 活課題に直結したものが多い。こうした学習分野では県民(特に継続的学習者)のニーズに講座開設が追いついてい ない現状がうかがえる。
B 受講動機
「趣味・教養」「能力や知識の向上」「生きがいづくり」が上位を占め、自分自身の教養・知識を高め生きがいにつ なげるという動機が強い。「他の人との交流」「ボランティア・地域活動」など他者志向を持つ項目はそれよりだいぶ 下がる。
称号付与者が主な調査対象であり、経験を活かして教える側になりたいという動機が増えてくるのではと思われた が、「指導者・講師になる」は5%に過ぎない。また、「資格取得」「仕事をする上で必要」「就職や転職」はいずれも 数%に過ぎず、多くの時間を費やした受講の主な動機は、キャリア・アップではないことが示された。
(2) 生涯学習への取り組み状況から A 学習を進める上で必要な条件
「広報、講座情報提供の充実」が第一にあげられ、様々な講座を継続的に受講している受講者にとっても、まだま だ情報が足りないと感じられているようだ。「広報、講座情報提供」は県民カレッジの主な業務でもあり、充実させ る必要がある。
B 学習を進める上で問題点
「受講したい講座が近くで開かれない」「受講したい講座の時間・時期が不適当」などが問題点としてあげられ、受 講者が受けたいと思う講座をみつけながら、場所や時間の問題で受講できないという不満をかなりもっていることが 確認できる。
C 学習のためほしい情報
「講座の開催日時」「講師や指導者の情報」という回答が多く、「ボランティア活動に参加するための情報」は3割 強、「講師や指導者になるための情報」は1割に満たない。ふるさと学士・修士・博士などの称号を得たからといって、
そこからすぐ教える側に回ろうとする人はそれほど多くない。
D ほしい場や機会
「余暇を有意義に過ごせる学ぶ場や機会」という回答がもっとも多いが、「人助け、地域社会に役立つための学びの 場」という回答も半数を超え、社会や地域への貢献の欲求は旺盛である。注目すべきは「いろいろな人々との交流の場」
を求める声が強いことで、講座や教室を学習の場としてとらえるのではなく、学びを通しての交流の場として考える 必要がありそうだ。
E 望ましい学習の場所
「公民館」という回答が圧倒的に多い。受講者が望む学習形態である講座・教室が数多く開かれ、かつ交流の場と もなっているという点が公民館の強みだろう。公民館のあり方についての議論や再検討が進められているが、物理的 にも心理的にも身近な学習の場であり、かつ交流の場でもある公民館に対する県民のニーズは依然として高い。自治 体が公民館の制度改変を進めようとするならば、学習支援機能だけでなく交流支援機能をどう継承し、発展させるか
が重要な検討課題となるだろう。
ついで「図書館」「美術館・博物館」と続くが、次にくるのが「大学」で、三分の一強の支持率である。社会教育 施設が県民のための学習の場であるのは当然だが、大学も県民(特に継続的生涯学習者)の学びの場として意外に高 い期待を集めている。
F 学習成果の活用・貢献のための条件
「活動できる場」についての情報提供を求める声がもっとも多く、「県や市町村の地域づくりへの参加」という回答 も多い。
学習成果の活用・地域づくり人材の養成については、県・市町村ともいろいろなプログラムを開設しているが、課 題は養成そのものより活用の場づくりとその情報提供にあると思われる。アンケート結果をみるかぎり、活躍できる 場を用意し、広報に工夫をすれば学習成果を活かしたいという人を取り込む余地はありそうだ。
G 活動分野と希望活動分野
「自然保護など環境をよくする活動」「図書館や学校での読み聞かせボランティア」「美術館・博物館・観光名所な どの案内」「国際協力・援助」については、<やったことがある>を<今度取り組みたい>が大きく上回る。これら の分野に関しては、県民の潜在的なニーズに対応が追いついていないと考えられるが、逆にいえば、対応次第では今 後大きく展開する可能性をもった分野であるといえる。
H 県民カレッジへの希望
「学習機会の情報収集・提供」を求める声が圧倒的に多く、「交流できる場をつくる」「知識・経験を積んだ人材を 地域づくりに活用」が続く。県民カレッジは「情報収集・提供」についてはすでに一定の実績を積んできているが、
潜在的な学習者・利用者により効率的に情報が届くサービスとシステムづくりにつとめる必要がある。
また、示されたニーズからすれば、情報提供にとどまらず「交流の場づくり」「地域づくりへの活用」に焦点を当 てたサポートも望まれる。
(3) 県民カレッジ受講歴別の分析から A 受講動機
「資格の取得」「他の人々との交流を求めて」の2項目は、受講歴が高いグループの方が高い支持率を示している。「生 きがいづくり」については、受講歴・中グループの支持率が高い。
B 学習をする上での問題点
「同好の仲間がいない」「学習の仕方について相談できるところがない」については受講歴が少ないグループで回答 が多かった。
C 学習のためほしい情報・場や機会
「資格や免許の種類や取得方法」については受講歴・高で回答率が多かった。受講を通しこれまでに得た知識や経 験を、目に見えるかたちにしたいという欲求が強まると考えられる。「いろいろな人々との交流の場」についても、
受講歴・高のグループで回答が多い。
D 学習したい場所
明確な傾向は、受講歴が上がるほど大学等で学びたいという欲求が高まることだ。大学にとってはこうした欲求に 応えていけば、大学開放をさらに進める余地がありそうだ。県民一般向けの講座だけでなく、称号を持っている人向 けのより高度の講座の開設、あるいは公開授業(市民開放授業)など、一般の学生対象の授業へ参加を認める取り組 みなどを検討し、県民の多様なニーズに応じたきめ細かな大学開放を進めることが必要だろう。
E 活用・貢献のための条件
「指導者や講師として登録してほしい」「修了証や認定証がほしい」の2項目は受講歴が上がるほど条件としてあが る傾向があるようだ。「活動できる場などの情報提供をしてほしい」に関しては、逆に受講歴が浅いグループほど条 件にあげている。「企業などが学習成果を積極的に評価してほしい」は、主に受講歴が高いグループで支持されてい る項目である。
F 今後取り組みたいこと
「自分の知識や特技を他人の学習に役立てる」「美術館・図書館・観光名所を案内する」の2項目は受講歴が上がる ほど強まる傾向がありそうだ。逆に「地域を住みよくする」に関しては、受講歴が浅いグループほど取り組みたい活 動としてあげている。
「読み聞かせボランティア」において、受講歴が高いグループで人気が高い。
G 県民カレッジに望むこと
「学習者が交流できる場をつくってほしい」については、受講歴・高のグループで特に望まれている。
5 高度継続的受講者のニーズ及び学習意識の要因分析
前回調査では、県民カレッジにおける学習状況・生涯学習への取り組み状況を分析し、前節であげたような論点を まとめたが、受講者の年齢別および県民カレッジの受講歴別のクロス集計の結果に注目した分析にとどまった。また、
前述したように調査開始時には、「受講歴が高まれば、学習成果を発表したい、学ぶ側から教える側になりたい、地 域や社会に貢献したい、という欲求が高まるのではないか」と仮定したが、受講歴別のクロス分析からは必ずしも明 確な傾向として確認できなかった。これには大きく2つの要因が絡んでいると思われる。
(1) 調査対象の問題
一つは調査対象にかかわる問題で、仮説検証に適合したサンプリング(標本化)がなされていなかったのではない か、ということである。仮説検証のためには、受講歴がほとんどない一般の県民(称号授与者と受講歴以外には条件 がそれほど変わらない県民)から、受講歴が非常に高い継続的学習者としての県民までを対象とし、受講歴が上がる につれて生涯学習へのニーズや意識がどのように変わるのかを追う必要があった。前回調査では、比較の対象とな る受講歴が低い層から調査対象を得ることができず、代替として大学公開講座受講者に回答を依頼するかたちになっ た。しかしながら、もちろんこれは本来の意図で比較分析をするには問題がある。実際、前節でみたように受講歴別 に分けた3分類の中で、受講歴に比例してニーズや関心が上がるという傾向はそれほどみられず、受講時間が最も少 ないグループ(大学公開講座受講者)が特徴的な傾向を示したり、中間グループを飛ばして、最も受講時間が多いグ ループと似通った傾向を示したりした。
この問題を解消するため、今回は標本から祖父号授与者以外の大学公開講座受講者(ならびに受講時間無記入の ケース)を除いた回答者(N=149)を母集団として集計・分析を行う。末尾に添付した単純集計結果は、前回と異なり、
この新たな母集団のデータを集計したものである。
(2) 分析手法の問題
もう一点は分析手法の問題で、おおざっぱな受講歴3分類に基づくクロス集計による比較ではなく、量的尺度とし ての受講歴を様々な変数が絡んだものとして分析するため多変量解析手法の一つである数量化Ⅰ類を、また、学習 ニーズ・受講動機・関心・成果の活用に関する希望などの様々な質問項目間の関連に注目し、軸となる要因を分析す るため、数量化Ⅲ類をそれぞれ用いて分析を進める。
(3) 受講歴の説明要因
数百単位の生涯学習講座を受講し、ふるさと学士・修士・博士といった称号を授与された学習者の受講歴には、ど のような要因が絡んでいるのか。ここでは、受講歴を、種々の質問項目を説明変数として分析していく。受講歴を示 す「連携講座受講時間」という量的変数を、調査票にみるように質問形式により質的データとして収集された項目を 説明変数として分析するため、ここでは数量化Ⅰ類を分析手法とした。
数量化Ⅰ類を進めるにあたっては、各項目のカテゴリーの中に度数が著しく小さい項目が含まれていると分析結果 が歪められる可能性があるため、新たな母集団について単純集計を行い、こうした項目を除いた。また多重共線性の 問題を避けるため、説明変数として用いる変数(質問項目)間の関連性が強すぎるものについても、クロス集計の結 果をみながら除いた。その上で、受講歴に関連しそうな質問項目を選び、またプロフィール項目の中で影響があると
思われる年齢を2分類とし カテゴリーデータにした上 で、分析を行った。
まず、取り上げた説明変 数間の関連性を確認するた め、クロス集計を行った(表 5-1参照)。
次いで、受講歴(連携講 座受講時間数)を外的基準 変数とし、「年齢」「受講動 機(人々との交流)」「知識・
経験を伝える場の希望」「地 域づくりへの参加希望」を 説明変数とする数量化Ⅰ類 の分析を行った。
表5-2がその結果で、グラ
フ 化 し た も の が 図5-1で あ る。
図表にみるように、取り 上げた「受講動機(人々と の交流)」「知識・経験を伝 える場の希望」「地域づくり への参加希望」はいずれも 正の方向で受講歴に強く影 響を及ぼしている。特に「地 域づくりへの参加希望」( 学 習成果を生かすために、自 治体の地域づくりに参加さ せてほしい )という項目は
「有」という回答をしたグ ループは、受講時間を大き くプラス側にずらし、逆に、
「受講動機(人々との交流)」
に「無」と回答したグルー プは受講時間を大きくマイ ナス側にずらす傾向を示し た。「知識・経験を伝える場
の希望」についても変動幅は小さいが、同傾向である。これら3変数に比べると、「年齢」の影響力はそれほど大き くない。
受講歴を高めているものは、「地域づくりへの参加希望」「受講動機(人々との交流)」「知識・経験を伝える場の希望」
であるということができ、他者や地域との関わり・貢献への意欲が継続的に生涯学習講座に参加する要因となってい る。(ただここで、受講歴が「結果」で3要因が「原因」と断言することはできない。様々な講座を受講し学習を継 続することで、そうした意識・意欲が高まってきたという分析も可能であり、両者の因果関係を測るにはさらなる分
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表5‑1 説明変数のクロス集計結果
表5‑2 数量化Ⅰ類の結果
外的基準変数:Q6̲1 受講歴(連携講座受講時間数)
図5‑1 数量化Ⅰ類の結果(カテゴリースコア)
(4) 生涯学習講座への受講に関わる諸要因の分析 調査においては、県民カレッジ関連講座への受講動 機、学習において希望する場や機会、学習成果を生か すための条件、県民カレッジへの要望等の項目を尋ね たが、それらの項目間にはどのような関連がみられる か、生涯学習講座への継続的受講者の回答傾向から示 される軸となる要因を探る。それらの項目は、いずれ も「あてはまるか否か」といった質的データとして集 められたので、ここでは数量化Ⅲ類を分析手法とした。
先ほどの数量化Ⅰ類の場合と同様、各項目のカテゴ リーの中に度数が著しく小さい項目が含まれている質 問は除いてアイテムを選んで分析を行い、以下のよう な結果を得た(表5-3参照)。
分析で得られた2つの相関軸をそれぞれX軸Y軸と し、各アイテムのカテゴリースコアを2次元上にプロッ トしたものが、図5-2である。
表5-3および図5-2から相関軸の解釈を行うと、「学 習成果を生かすため、地域づくりへ参加」「県民カレッ ジへの要望:知識・経験を積んだ人材を地域づくりに
活用」「これまで得た知識・経験を伝える場の希望」の各項目でⅠ軸の+側に近く、また「学習成果を生かすため、
活動できる場の情報がほしい」「学習成果を生かすため、修了証・認定証がほしい」についてもプラス側で、かつ第
Ⅰ軸上に近いこと、また、それらの項目に関し、希望・意欲を示していない場合、軸のマイナス側となっていること などから判断すると、「学習成果の社会活用に関する積極性−消極性」を示す軸と解釈できる(固有値は0.24)。
第Ⅱ軸については0.15と固有値が低くそれほど有意な相関軸とはいえないが、「受講動機:生きがいのため」「受講 動機:自己の知識・能力の向上のため」「健康・体力増進のための学びの機会」の項目を選んだ方は第Ⅱ軸の−側に 近く、選ばない方はプラス
側に近くなっていること、
ま た、「 知 識・ 経 験 を 積 ん だ 人 材 を 地 域 づ く り に 活 用」「得た知識・経験を伝え る場の希望」を選んだ方が 第Ⅱ軸のプラス側に位置す ることなどから判断すると
(「いろいろな人々との交流 の場」に関しては逆の傾向 のように思えるものの)「学 習の方向づけに関する他者 志向−自己志向」と解釈し ておきたい。
プロット図において隣接 するカテゴリーは、類似性 の高い項目と考えられる。
位 置 が 比 較 的 近 い カ テ ゴ リー同士を線で囲んだもの
表5‑3 数量化Ⅲ類の結果
図5‑2 カテゴリースコアのプロット図
を図5-3に示した。
「学習成果生かす場」「地 域づくりへ参加」「地域人 材」「知識・経験を伝える場」
への意欲・希望を示す項目 は1つのグループとなって いるが、「修了証・希望」も ここに入っていることから 判断すると、継続的受講者 にとって「修了証」は「学 習成果の社会活用」に密接 に関連するものととらえら れているようだ。
第Ⅰ軸のスコアはそれほ ど高くないものの+側で、
かつⅡ軸のスコアがマイナ ス側でまとまっている「生 きがい」「能力向上」「健康 づくり」の受講動機・有の
グループは、自らの学習の方向づけに関して自己志向(自分の能力・体力・生きがいを追求しようとする傾向)が高 いと考えられるが、この近くに「人々との交流」動機・有があることを考慮すると、他者への働きかけを重視すると いうより人々との交流によって自己を高めたい・楽しみたいと考えていると想定されそうである。
ここでふれた2つのグループは性格を異にしながらもそれぞれに意欲的である。それに対し、Ⅰ軸のマイナス側に
位置する2つの群は、いろいろな面で学習成果の活用にしては消極的なグループで、サポートが必要な領域であると
考えられる。
さて、項目に対するカテゴリースコアとともに、個々の回答者ごとに2つの相関軸についてのサンプルスコアを算 出し、変数として付与したので、こ
ちらについても若干の分析をしてお く。
Ⅰ軸・Ⅱ軸に対応した2つの変数 と、性別、年齢、講座の受講時間数 といったプロフィール項目ならびに
「学習をする上での必要事項(Q14)
と問題点(Q15)」との相関係数を算 出した(表5-4)。
表5-4において特に統計的有意差 がある項目に注目すれば、次のよ うなことがいえるだろう。成果活用 や地域づくりに積極的な(「学習成 果の社会活用に関する積極性−消極 性」のスコアが高い)受講者は、「学 習方法の多様化」「広報・講座情報」
「受講料の低減」の条件があれば学
表5‑4 学習における必要事項・問題点と2軸との相関 図5‑3 カテゴリースコアによるグループ分け
䊠 䊡
Q2 ᛶู -0.001 -0.103
Q3 ᖺ㱋 -0.137 -.270(**)
Q6_1 㐃ᦠㅮᗙཷㅮ㛫ᩘ .165(*) -0.074
Q6_2 ദㅮᗙཷㅮ㛫ᩘ 0.014 -0.089
Q14_1 ົඛࡢ⌮ゎ .175(*) .236(**)
Q14_2 ኪ㛫㛤ㅮࡸಟᴗᖺ㝈ࡢ⦆ 0.077 .173(*)
Q14_3 Ꮫ⩦᪉ἲࡢከᵝ .368(**) 0.125
Q14_4 クඣไᗘ࡞ࡢ㓄៖ 0.051 0.047
Q14_5 ᗈሗ࣭ㅮᗙሗᥦ౪ .250(**) -.361(**)
Q14_6 ཷㅮᩱࡢపῶ .375(**) -0.103
Q15_1 ཷㅮࡋࡓ࠸ㅮᗙࡀ㏆ࡃ࡞࠸ .240(**) -0.109
Q15_2 ㅮᗙࡢ㛫࣭ᮇࡀ㐺ᙜ .274(**) -0.056
Q15_3 ᛁࡋࡃ࡚㛫ࡀ࡞࠸ -0.006 -0.003
Q15_4 タࡸሙᡤࡀ࡞࠸ 0.141 0.023
Q15_5 ㅮᗙ㛵ࡍࡿሗࡀᑡ࡞࠸ 0.150 -0.056
Q15_6 ⤒῭ⓗࡺࡾࡀ࡞࠸ .211(**) 0.068
Q15_7 ㅮᖌࡸᣦᑟ⪅ࡀᑡ࡞࠸ .201(*) 0.017
Q15_8 ྠዲࡢ௰㛫ࡀ࠸࡞࠸ 0.076 0.114
Q15_9 ࿘ᅖࡢ⌮ゎࡀ࡞࠸ 0.040 -0.136
Q15_10 ㆤࡸクඣࢆࡋ࡚ࡃࢀࡿேࡀ࠸࡞࠸ -0.104 -0.034
Q15_11 Ꮫ⩦ࡢ᪉ࢆ┦ㄯ࡛ࡁ࡞࠸ 0.064 0.105
講したい講座が近くにない」「時間・時期が不適当」「経済的ゆとりが少ない」といった事柄を問題点として強く意識 していると考えられる。
これらの項目は、自らの学習成果を他者へ、地域社会へと活用しようという意欲がとりわけ高いグループが特に強く 意識する学習に関する条件であり、生涯学習講座の継続的受講者がどんなテーマ・内容の講座を求めているかといっ た単純なニーズとは別に、政策としてサポートを考える必要のある条件であるといえる。
−注−
(1) 静岡大学生涯学習教育研究センター『しずおか県民カレッジ受講者における生涯学習ニーズに関する調査報告書』2006年3月。
(同センターWebサイトにも掲載)http://www.shizuoka.ac.jp/~cerll/kenmin_college_report2006.pdf