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小児がんを持つ子どもの家族に対する移行支援

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小児がんを持つ子どもの家族に対する移行支援

― 国内における文献レビュー ―

鈴木 智子,鈴木 麻友,谷本 公重 香川大学医学部看護学科

Transitional Cares to Families Having Children with Cancer : A Review of the Japanese Medical Literature

Tomiko Suzuki, Mayu Suzuki, Kimie Tanimoto School of Nursing, Faculty of Medicine, Kagawa University

要旨

 小児がんは医療によって治癒できる病気となってきている.その一方で,厳しい治療や長期入院後の生活は小児がんの子 どもにとどまらず,その家族へも影響を及ぼすとされる.そこで,今後の患児と家族支援のあり方を検討することを目的に 2007 年から 10 年間で検索を行い,小児がんを持つ子どもの家族支援に関する研究動向を概観し,原著論文による文献研究 を行った.

 33 件の国内における原著論文を対象に,小児がんの子どもの家族支援について内容分析の結果,【治療で生じる問題に対 する家族の思い】,【終末期の家族の思いと支援】,【退院後治療に関連した生活支援と移行支援】,【医療ケアの模索】の 4 カ テゴリーが抽出された.治療中から,多職種連携による教育支援と移行支援という二つの側面を踏まえた上での継続的な包 括支援ケアシステムが必要と考えられた.

キーワード:小児がん,家族支援,成人移行支援

Summary

 Childhood cancer is becoming curable thanks to newly developed medical treatments. However, the intensive treatment and long-term hospitalization required to achieve positive outcomes has multiple effects on both the patients and their families.

 The purposes of this study are 1) to provide an overview of the current research on support for families of children with cancer and 2) to consider how nurses can best support children and their families in the future. The study was conducted by reviewing multiple articles which have been published since 2007 focusing on the trends regarding support for such families.

 After analyzing the content of 33 domestic articles, we extracted four categories: “family concerns about side effects from medications”, “family concerns regarding end-of-life care”, “life support and transitional care related to therapy after leaving hospital”, and “exploring for a solution about medical care”. In our view, these four categories were important and deserve further study.

 Ultimately, we concluded that a continuous, comprehensive support care system based on the two aspects of educational support and transitional support is necessary.

Keywords: childhood cancer, family support, transitional support

連絡先:〒 761-0793 香川県木田郡三木町池戸 1750-1 香川大学医学部看護学科 鈴木 智子

Correspondence to: Tomiko Suzuki, School of Nursing, Faculty of Medicine, Kagawa University, 1750-1 Ikenobe, Miki-cho, Kita-gun, Kagawa 761-0793, Japan

(2)

はじめに

 近年,医療の進歩や社会環境の変化に伴い,小児が んを治療して家庭や地域で生活している子どもたち が増加してきた1).日本では,悪性新生物,慢性腎疾 患,内分泌疾患などの 14 疾患群が小児慢性特定疾患 治療研究事業制度の対象となり,悪性新生物の受給者 数は増加している2).小児がんによる死亡者数,死亡 率ともに制度施行時期(1975 年)と比較し大きく低 下し,医療の進歩に伴い多くの命が救われ,成人への 移行期医療が重要となっていることは確かである3) 慢性疾患をもつ子どもは,療養行動を日々の生活の中 に組み入れて実施していくことが必要であるが,乳幼 児の場合は,自分自身で療養行動を実施することは困 難であることが多いため,周囲のサポートが重要と なってくる.また,疾患に起因する身体状況を的確に 訴えることは難しく,親が状態の観察を行い,状態変 化に早期に対処することが必要となる.悪性新生物で ある小児がんは,乳幼児期から年間 2,000 人弱発症す るといわれ,現在,約 8 割の小児がんが治癒するよう になってきている3).一方で,厳しい治療や長期入院 後の社会復帰が困難とも指摘され,家族は,子どもの 就園,就学,就職,結婚,出産と次々に起こる課題を 子どもの治療を優先にしながら生活している現状があ 4)

 そこで,今回,小児がんを持つ子どもの家族支援に 焦点をあてた研究の動向を把握し,概観することで,

小児がんを持つ子どもの家族に対して必要な支援を検 討することを目的として文献研究を行った.小児がん を持つ子どもの家族に対する家族支援に関して 1998 年から 10 年間の文献分析を行った下山の研究結果5)

と比較することで近年の家族支援に関する研究動向を 分析した.

 用語の定義として,本研究では「家族」を小児がん の子ども,そのきょうだい,両親,祖父母までと操作 的に定義した.また,「移行支援」を成人への移行期 医療における支援である成人移行支援と操作的に定義 した.

研究目的

 小児がんを持つ子どもの家族支援に関する研究動向 を概観し,その現状と課題を明らかにする.さらに,

子どもと家族を取り巻く社会の現状を踏まえて,看護 者が担う家族支援のあり方を検討する.

研究方法

1 .文献の検索方法

 文献の検索には,データベース(医学中央雑誌 Web)を使用し,2017 年 9 月 5 日時点の検索結果と した.過去 10 年間(2007 年 1 月~2016 年 12 月)の 文献を原著論文に絞り,「小児がん」,「家族支援」の キーワードを用いて検索した結果,55 件の論文が該 当し,それらをリスト化した.そのうち,表題と要旨 を読み,小児がんの子どもの家族支援を対象とした論 文に絞り込み対象文献とし,再リスト化した.重複論 文を除き,倫理的配慮がなされている論文に絞って原 著論文 33 件を分析対象とした(表 1).

2 .分析方法

1 )研究の動向についての分析

 対象文献を年次推移に沿って,「研究デザイン」,

「調査対象」,「研究内容」,「筆頭著者の職種」に整理 した.研究デザイン,調査対象,子どもの発達段階に ついての項目は記述統計値を表し,先行研究との比較 を行った.研究内容に関しては,Berelson B6)の内容 分析の手法を参考にして手順を作成した.この分析の 特徴は,テキストのある特定の属性を客観的・体系的 に同定し,推論を行うための方法である.手順とし ては,①各論文を精読し,②その研究内容から忠実 に「家族支援」に該当する語句を抽出し,③語句の前 後を要約しコードとする方法で行った.1 論文に対し て結果を示す内容に絞り,1 コードのコード名をつけ た.倫理的配慮として,意味内容が変化することのな いように著者の表現方法を採用し,分析を進めた.

2 )家族支援に関する内容の分析

 分析は,家族への支援に着目して行った.対象文献 の主張を捉え,文献の内容を精読し得られた文字デー タをもとに,家族支援を記述している部分を単純化 し,コードとして抽出した.次に,それぞれの抽出 コードを比較整理しながら,類似した内容にまとめ,

サブカテゴリー化した.サブカテゴリーを適確に表す 表現へと置き換えカテゴリー化した.カテゴリー名 は,先行研究5)結果との比較が容易となるよう,そ れと近い表現方法とした.

研究結果

1 .研究の動向:年次別推移と研究方法に関する概観  2007 年から 10 年間に,わが国において発表された 家族支援に関する対象文献は 33 件であった.年次別

(3)

表 1.分析対象とした論文(発行年順)

文献番号 発行年 タイトル 筆頭著者名 雑誌名

1 2016 幼児期の小児がん患児の父親役割 患者家族滞在施設で過ご

した症例からの一考察 上土居 由佳 小児がん看護 11 巻 1 号 P44-51 2 2016 ビーズ・オブ・カレッジプログラムを用いた遺族へのビリー

ブメントケア バタフライビーズの導入を試みた 6 例の報告 小島 綾子 小児がん看護 11 巻 1 号 P38-43 3 2016 臍帯血移植・生体肝移植・骨髄移植の 3 種の移植後再発しそ

の後寛解を得られた乳児 ALL 患児の両親の思い 重光 史恵 小児がん看護 11 巻 1 号 P29-37 4 2016 幼児・学童期に脳腫瘍を発症した思春期患者の学校生活と親

の思い・関わり 鈴木 さと美 小児がん看護 11 巻 1 号 P17-28

5 2016 転院をして陽子線治療を受ける子どもの母親の体験 小澤 典子 小児がん看護 11 巻 1 号 P7-16 6 2016 救急・集中治療における小児終末期医療の家族看護 小沼 睦代 脳死・脳蘇生 28 巻 2 号 P123-128 7 2015 小児がんの子どもをもつ母親の不安軽減につながった看護師

の関わり 自由記述回答の分析 園田 悦代 京都府立医科大学看護学科紀要 25 巻 P27-34 8 2015 終末期にある小児がん病児の同胞への支援の検討 斉藤 正恵 小児がん看護 10 巻 1 号 P14-22 9 2014 外来化学療法室開設に伴う場づくりとして、外来で治療を受

ける子どもと家族の QOL 向上を目指した取り組み 竹之内 直子 こども医療センター医学誌 43 巻 4 号 P224-227 10 2015 終末期患児の思いを尊重した母親への支援 安東 淑真 大分県立病院医学雑誌 42 巻 P55-58 11 2014 小児がんの子どもを看る母親が療養体験中にセルフ・エンパ

ワメントを生成するプロセス 横森 愛子 日本小児看護学会誌 23 巻 3 号 P34-41 12 2014 幼児期に小児固形悪性腫瘍で手術を行った小児がん経験者へ

の疾患既往の告知に対する母親の長期的な関わり 下山 京子 小児がん看護 9 巻 1 号 P55-62 13 2014 小児がんの子どもの学校の転籍に関わった母親の体験や思い

の調査 庄司 靖枝 小児がん看護 9 巻 1 号 P29-37

14 2014 小児慢性疾患親の会と専門職のパートナーシップの現状と課題 井上 玲子 東海大学健康科学部紀要 19 号 P79-81 15 2013 終末期の子どもの在宅看護 家族とともにある看護 皿海 麻依子 福岡赤十字看護研究会集録 27 号 P59-61 16 2012 終末期における難治性小児がんの子どもをもつ母親への看護

師の関わり 窮地に陥った母親を支えた関わりを検討して 有森 葉子 日本がん看護学会誌 26 巻 2 号 P93-97 17 2012 小児がん患児の父親が患児とのかかわりに抱く思い 小児が

ん患児の父親とその他の長期入院を要する患児の父親の比較 入江 亘 小児がん看護 7 巻 P28-38 18 2011 小児がんにより長期入院している小児の母親が認識する父親

の役割と変化と思い 江里 文 保健学研究 23 巻 2 号 P15-21

19 2011 小児がん患児の父親が困難な状況を受け止めていくプロセス 納富 史恵 日本小児看護学会誌 20 巻 3 号 P59-66 20 2011 小児逝去後の親の思い(第 2 報) 子どもの逝去後に行った

母親との面接を通して 吉本 雅美 小児がん看護 6 巻 P26-33

21 2009 子ども・家族の痛みへの主体性を引き出す取り組みと看護師

の痛みの捉え方の変化を通して 田村 恵美 看護研究 42 巻 6 号 P425-432 22 2009 小児がんの子どもの死を受容できた事例からみた看護支援の

特質 ケアされる母親からケアする母親への変容 実藤 基子 保健医療社会学論集 20 巻 1 号 P28-40 23 2009 小児がんの子どもの End-of-Life ケア 乳児期の End-of-Life

ケア 家族への看護を中心に 油谷 和子 小児看護 32 巻 4 号 P497-503 24 2008 多変量解析による日本の小児がん患児の親の闘病生活状況分析 森 美智子 小児がん看護 3 巻 P30-36 25 2008 小児がん患児の親の状況危機と援助に関する研究 日本と

オーストラリアの比較 森 美智子 小児がん看護 3 巻 P13-29

26 2008 小児がんで化学療法を受けた幼児の食事の実態と家族の関わり 船木 康子 日本看護学会論文集: 小児看護 38 号 P128-130 27 2007 小児がん患児の闘病体制形成・維持段階における母親の心理

的プロセス 服部 淳子 愛知県立看護大学紀要 13 巻 P1-8

28 2007 外来通院している思春期小児がん患者の自己効力感と健康行動 岩瀬 貴美子 日本小児看護学会誌 16 巻 2 号 P33-40 29 2007 小児がんを克服し青年後期を迎えた小児がん経験者の社会生

活に対する母親の願いと関わり 石井 佳世子 日本小児看護学会誌 16 巻 2 号 P1-8 30 2007 長期入院・隔離を余儀なくされた患児・母親のストレス軽減

への援助 川村 明美 小児がん看護 2 巻 P115-121

31 2007 小児がんと診断されてから現在までの家族関係の変化 山下 早苗 小児がん看護 2 巻 P40-48 32 2007 小児がん患児の親の状況危機と援助に関する研究(その 2) 

闘病過程における状況危機と援助ニーズ 森 美智子 小児がん看護 2 巻 P27-39 33 2007 小児がん患児の親の状況危機と援助に関する研究(その 1) 

闘病生活により発生する状況危機要因 森 美智子 小児がん看護 2 巻 P11-26

(4)

推移は表 2 に示す.2007 年~2016 年までの 33 件の研 究論文の動向から見えたこととして,筆頭著者が研究 者から実践者へと増える傾向にあった.そのため,カ テゴリー毎に筆頭著者の別も把握した.

 研究デザインに関して質的研究 28 件(84.8%),量 的研究 5 件(15.2%)であった.質的研究が 8 割を占 めていた.調査対象は,母親が 16 件(48.5%),父親 が 2 件(6.1%), 両 親 11 件(33.3%) で 患 児 が 2 件

(6.1%),母親と患児,家族と専門職を対象とした研究 は各 1 件(3.0%)であり,家族支援の対象として,両 親特に母親を対象に研究されていた.子どもの発達 段階は,乳児期 2 件(6.1%),幼児期 8 件(24.2%),

学童期 6 件(18.2%),思春期 2 件(6.1%),青年期 2 件(6.1%),子ども全般 14 件(42.4%),記載なし 1 件

(3.0%)と幼児期の子どもを対象とした研究が最も多 く,次いで学童期の子どもを対象としていた.

2 .研究内容に関する概観(表 3)

 33 件の文献から,研究内容を類似性に基づき分類・

命名しカテゴリー化した結果,【治療で生じる問題に 対する家族の思い】,【終末期の家族の思いと支援】,

【退院後治療に関連した生活支援と移行支援】,【医療 ケアの模索】の 4 カテゴリーが抽出された.以下,カ テゴリー別にその概観を述べる.【 】はカテゴリー,

「 」はサブカテゴリー,[ ]はコードを表す.

1 )【治療で生じる問題に対する家族の思い】

 このカテゴリーは 4 つのサブカテゴリーで構成さ れ,13 コード,コード全体の 39.4% を占めていた.4 サブカテゴリーは,「家族が要望する医療支援」,「治 療過程で生じる母親の不安や思い」,「父親の役割と家 族役割」,「家族のストレスコーピング」であった.治 療過程で生じる問題に対する家族の状況や思いが示さ れており,【治療で生じる問題に対する家族の思い】

とした.[化学療法を受けた子どもの食事に対する要

表 2.年次別・筆頭著者別分類

著者職種 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

実践者 1 1 2 0 2 2 1 1 2 5 17

教員 6 2 1 0 1 0 0 4 1 1 16

年次別計 7 3 3 0 3 2 1 5 3 6 33

表 3.研究内容のカテゴリー分類

文献番号 発行年 コード サブカテゴリー カテゴリー

3 2016 実践者 長期間の治療過程において患児の成長発達を願う行事や遊びによる家族の安堵 家族が要望する 医療支援

治療で生じる問 題に対する家族

の思い 13 コード

(39.4%)

26 2008 実践者 化学療法を受けた子どもの食事に対する要望と医療の改善

7 2015 教員  入院中の小児がん患児の母親に対する言葉かけや関わりの看護の重要性 治療過程で生じる母親の不安や思い 11 2014 教員  子どもの闘病を支える母親の感情変化を捉え,母親の持つ力を発揮できる支援の必要性

17 2012 実践者 長期入院児の父親が一緒に過ごした時間は父親の精神的負担に影響 父親の役割と家族役割 18 2011 実践者 長期入院児の母親が抱く父親の役割変化と存在意義

19 2011 教員  小児がんの父親が困難な状況を受け止め,努力し,自身の成長としていた 24 2008 教員  小児がんの親が抱える家庭崩壊につながる問題として夫婦間の感情的ずれと心身疲労

25 2008 教員  闘病生活における問題点,患児の心身疲労と学業,同胞の問題 家族のストレスコーピング 27 2007 教員  子どもの診断からその子らしい生き方の目標を持てるまでの心理的プロセスの存在

30 2007 実践者 長期入院を余儀なくされた幼児の疾患に対する母親の不安と疲労によるストレス 32 2007 教員  親の家庭崩壊要因として心身の疲労からくる抑うつ・不安傾向と同胞への支援ニーズ 33 2007 教員  親の危機的状況要因として心身の疲労,留守家庭問題,学校問題

22 2009 教員  小児がん患児が死を迎える際の家族の心情に対する看護介入 終末期の患児や家族の思いに沿った看護支援

終末期の家族の 思いと支援

8 コード

(24.2%)

6 2016 実践者 小児集中治療領域における終末期にある児と家族の体験とニーズ 9 2015 実践者 子どもにとって遊びや夢の実現を目指した終末期支援体制のあり方

23 2009 実践者 最期まで乳児期の家族が看護師と児の成長を共有できたことで強めた信頼関係 家族の意思決定支援 15 2013 実践者 在宅看取りにおいて両親の気持ちの理解と決定に対する肯定的支援

16 2012 実践者 終末期における家族支援として看護師は母親のよき理解者となることの必要性

20 2011 実践者 子どもの逝去後も遺族に対する感情表出の場を提供することの必要性 逝去後の家族支援の取り組み 8 2015 実践者 小児がんで亡くなった児の同胞への支援として,同胞が自らの役割を発揮できる支援

4 2016 実践者 合併症や治療の特徴から学校生活における課題を予測し児に応じた学校環境選択 継続的な治療に関連した生活支援

退院後治療に関 連した生活支援 と移行医療

8 コード

(24.2%)

10 2014 実践者 在宅小児の外来化学療法室に対する要望として安心安全と子どもにとっての快適さ 28 2007 教員  思春期において,感染予防行動と生活リズムに関連する習慣が自己効力感に与える影響

12 2014 教員  幼児期発症した小児がん経験者の母親が抱く告知に対する課題 退院後の親の苦悩と家族の変化 31 2007 教員  小児がんと診断された家族の在宅生活へ至る家族関係の変化

13 2014 教員  復学へ向けた医療者,学校関係者,親の会連携による家族支援 移行医療と専門職連携 14 2014 教員  慢性疾患児の成長に応じた「親の会」の支援役割と専門職の連携

29 2007 教員  青年期後期を迎えた子どもの母親が切望する成人後の自立した人生

21 2009 実践者 「痛みアセスメントツール」導入による看護師のケア変化 積極的ケアによる変化

医療ケアの模索 4 コード

(12.2%)

5 2016 教員  転院して陽子線治療を乗り越える肯定的意味づけの支援の必要性

2 2016 実践者 ビリーブメントケアのツールであるバタフライビーズの効果 新たな医療ケアの模索 1 2016 実践者 患者家族滞在施設での闘病生活に付き添う父親役割の重要性

(5)

望と医療の改善],[入院中の小児がん患児の母親に対 する言葉かけや関わりの看護の重要性], [長期入院児 の母親が抱く父親の役割変化と存在意義],[親の危機 的状況要因として心身の疲労,留守家庭問題,学校問 題]などのコードで構成された.先行文献5)と比較し,

家族の思いには母親のみならず父親を対象とした研究 が含まれるとともに,同胞のストレス介入も家族支援 として調査されていた.筆頭著者が教員である文献 8 件,実践者である文献 5 件であった.

2 )【終末期の家族の思いと支援】

 このカテゴリーは 3 つのサブカテゴリーで構成さ れ,8 コード,コード全体の 24.2% を占めていた.3 サブカテゴリーは「終末期の患児や家族の思いに沿っ た家族支援」,「家族の意思決定支援」,「逝去後の家族 支援の取り組み」であった.終末期に抱く家族支援の 方法と検討が記されていたため,【終末期の家族の思 いと支援】とした.[小児がん患児が死を迎える際の 家族の心情に対する看護介入],[在宅看取りにおいて 両親の気持ちの理解と決定に対する肯定的支援],[小 児がんで亡くなった児の同胞への支援として,同胞が 自らの役割を発揮できる支援]などのコードで構成さ れた.先行研究5)では,家族支援として両親が対象 であったが,今回,同胞と子どもへの支援も必要が あると研究されていた.筆頭著者が教員である文献 1 件,実践者である文献 7 件であった.

3 )【退院後治療に関連した生活支援と移行支援】

 このカテゴリーは 3 つのサブカテゴリーで構成さ れ,8 コード,コード全体の 24.2% を占めていた.3 サブカテゴリーは「継続的な治療に関連した生活支 援」,「退院後の親の苦悩と家族の変化」,「移行医療と 専門職連携」であった.退院後も継続される治療に関 連した生活支援や移行医療支援が記されていたため,

【退院後治療に関連した生活支援と移行支援】とした.

[思春期において,感染予防行動と生活リズムに関連 する習慣が自己効力感に与える影響],[小児がんと診 断された家族の在宅生活へ至る家族関係の変化],[青 年期後期を迎えた子どもの母親が切望する成人後の自 立した人生]で構成された.先行研究5)では,初期 治療期の看護が研究内容として 12.9% を占めていた が,今回,退院後治療に関連した生活支援と移行医療 であった.筆頭著者が教員である文献 6 件,実践者で ある文献 2 件であった.退院後治療に関する文献で は,教員による研究が 6 件と多かった.

4 )【医療ケアの模索】

 このカテゴリーは 2 つのサブカテゴリーで構成さ れ,4 コード,コード全体の 12.2% を占めていた.2

サブカテゴリーは「積極的ケアによる変化」,「新たな 医療ケアの模索」であった.これまでにない医療的ケ アの取り組みが記されていたため,【医療的ケアの模 索】とした.[痛みアセスメントツール導入による看 護師のケア変化],[患者家族滞在施設での闘病生活に 付き添う父親役割の重要性]で構成された.先行研 5)では,がん告知に関する研究があったが,今回,

家族支援として新たな医療ケアの実践研究があった.

筆頭著者が教員である文献 1 件,実践者である文献 3 件であった.

考察

 小児がんを持つ子どもの家族支援に関する概観か ら,見えてきた現状と課題について検討していきた い.

1 .小児がん治療の進歩と長期的な移行医療支援  医療の発展により小児期に発症する慢性疾患患者の 寿命は上昇し続け,近年,小児慢性疾患治療研究事業 に登録されている 18 歳未満の患者は 9~10 万人で推 移し,そのうち毎年約 1,000 人の患者が 20 歳を迎え ている7).小児がんなど悪性新生物も含まれ,20 歳 を超えた成人医療制度の継続が必要となる.今回の文 献研究では,【治療で生じる問題に関する家族の思い】

が最も多く,少ない事例で起こる小児がんの長期治療 による身体的・精神的・社会的な家族への影響に対す る直接的な実践看護のあり方が研究されていた.一 方,小児がんで死亡する割合は 5~14 歳の年代で 1 位 を占める現状7)もあり,小児がんの終末期医療は子 どもとその遺族であるきょうだいも含めた家族の生活 に影響を及ぼしていた.その影響に対して家族支援が 重要であることを臨床実践者によって報告され,きょ うだいの生活に着目する必要性が示唆されていた.

【医療ケアの模索】に含まれる具体的な家族支援とし て,ビリーブメントケアや患者家族滞在施設は家族に とって新たな取り組みが効果的役割を果たしていた.

 順調に治療が進み退院できたとしても,小児がん経 験者の約半数は,長期治療の影響でがんそのものか,

あるいはがん治療による身体的問題,教育的課題を抱 えているといわれ,数十年経過してからの健康障害も 報告されている8).そこで,思春期・青年期をあえて 成人移行期とよび小児がん患者に対して 10 代早期よ り成人になることを前提とした心理的準備を進めてい く「移行支援」が開始されている9).小児がんの子ど もと家族への支援として,退院後も就学し,成長し続

(6)

ける生活を見据えた移行支援に臨床で取り組んでいく ことが,今回の研究結果から課題として挙げられた.

2 .退院後の家族全体への支援と就学支援の視点  本研究で主な研究対象と筆頭著者を分類した結果,

実践者による研究が増えている現状があった.入院治 療中,母親が付き添い者として最も身近で子どもを支 えており,その苦悩と思いを看護師が捉えやすいこと がその要因の一つにあると考えられる.入院中の母親 の心身の苦労が最も強い時期とその内容として,告知 から入院までのショック,無菌室の入室・病状悪化に よる心労と不眠,余命告知による子どもの生命の不安 と学業の遅れが強いことを明らかにしている10).治 療開始と治療期間中において,多くは母親を対象に研 究されていたが,一方で,[患者家族滞在施設での闘 病生活に付き添う父親役割の重要性]にあるように,

母親だけでなく父親ときょうだいも含めた家族を対象 として少なからず研究がされてきたこと,これは先行 研究5)と比較して明らかに家族を看護の対象として きたことがわかる.その父親やきょうだいの苦悩は,

医療者から直接目に見えない家庭や職場で起こってい る場合があり,父親が孤立しやすい立場であるという 研究結果11)もあった.

 さらに,小児がんは低年齢に発症し,1 年ほどの入 院のことが多く,今後は外来でのフォローアップ後の 継続的な支援に向けて,教育機関と連携した実態把握 が必要と考えられた.石田は,小児がん治療に携わる 他分野の医療者を含めて連携し,看護師(将来的に はナースプラクティショナーを含めて),ソーシャル ワーカー,臨床心理士などのコメディカルが中心的役 割を担う長期フォローアップシステムの構築が望まれ 12)と述べ,子どもへの医療と教育継続を多職種で 支援することが重要としている.退院後の親の苦悩に ついて,庄司は,子どもの教育・就学問題が大きく生 活に影響を及ぼし,成人してからの就労問題につな がっていると述べている13).これは,小児がんを持 つ子どもだけに限らず,そのきょうだいにも影響を及 ぼしており,退院後の継続した治療に関係する子ども のきょうだいを含めた家族を支援するため,訪問看護 師・保健師は両親にとどまらず家族という一つの集合 体として対象を継続支援していく介入の必要があると 考えられた.今後は,家族支援に向け地域での医療・

福祉・教育現場との包括支援ケアシステムが課題であ ろう.

おわりに

 近年 10 年間の小児がんを持つ子どもの家族支援に 関する 33 件の文献を内容分析した結果,その研究内 容は事例研究から母親だけでなく父親ときょうだいの 思いを調査した研究も報告され,実践者から発信され た医療現場での効果的な取り組みと退院後の子どもと 家族の問題を調査した研究へと広く行われていた.今 後は,多職種連携により,治療の場を問わず,長期治 療を要する小児がんを持った子どもの教育支援と成人 医療移行期支援の二つの側面を踏まえた上で看護する ことが家族支援の手立てになると考える.

文献

1) 高谷恭子:家族の意思決定への支援―子どもと家 族の意思を尊重する看護―,小児看護,へるす出 版,33(1),17-23,2010.

2) 厚生労働省 小児慢性特定疾患治療研究事業登録 データの精度向上に関する研究(平成 29 年 9 月 20 日).http://www.shouman.jp/research/pdf/

20_28/28_02.pdf.

3) 賀藤均:小児慢性疾患患者の移行期医療問題,医 療,70(2),71-77,2016.

4) 東樹京子,吉川久美子,上別府圭子:小児がん患 児の復学支援―感染症に対する看護師からの情報 提供―,小児がん看護,7,7-16,2012.

5) 下山京子:わが国における小児がん患児の家族 への支援に関する文献的考察-近年 10 年間の文 献分析から-,小児保健研究,70(1),68-75,

2011.

6) Berelson B., 稲葉三千男訳:社会心理学講座Ⅶ  内容分析.みすず書房,1-57,1957.

7) 内閣府 27 年度版子ども・若者白書(全体版),

第 1 節(平成 29 年 9 月 20 日).

http://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27 honpen/index.html.

8) 佐藤真穂,清水真理子,安井昌博,他:当セン ターにおける小児がん経験者に対する長期フォ ローアップ外来の取り組み,大阪府立母子保健総 合医療センター雑誌,31(2),80-82,2015.

9) 丸光惠:小児慢性疾患患者へのキャリーオーバー 支援の現況と課題,小児保健研究,71(2),186- 189,2012.

10) 西村あをい:長期治療が必要な疾患の子どもを持 つ母親の育児ストレスと自尊感情との関係―健康

(7)

な子どもを持つ母親との比較から―,小児保健研 究,67(3),478-486,2008.

11) 橋爪永子,杉本陽子:小児がん患児の発症前後で の父親の生活と役割意識の変化,日本小児看護学 会誌,15(2),46-52,2006.

12) 石田也寸志:血液・腫瘍性疾患の成人期移行医 療について “小児慢性疾患の成人期へのトラン ジションを考える”,外来小児科,18(3),323- 329,2015.

13) 庄司靖枝:小児がんの子どもの学校の転籍に関 わった母親の体験や思いの調査,小児がん看護,

9(1),29-37,2014.

参照

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