香 川 大 学 経 済 論 叢
第
7 5
巻 第1
号2 0 0 2
年6
月69‑109
バリューアライアンス戦略
― ― ‑SCM
革 命 ー 一保 勝 也
田 田 原
山
I
は じ め にサプライチェーン管理の目的はサプライチェーンを最適化し,最小の在庫と 費用で顧客満足を実現する製品・サービスを提供することにある。現代の消費 者は個々に嗜好が明確であり,商品情報へ能動的にアクセスして購入の最終判 断を行う。賢く能動的な消費者の要求を満たすために,企業は高品質な商品・
サービスを提供しつつ,多品種少量生産,開発サイクル短縮,注文から商品・
サービスが手元に届くまでの納期短縮などの一連の課題を課される。
多くの企業は,社内ビジネスプロセス間のサプライチェーン管理の最適化で 上記—-連の課題を解決できない。そこで外部業者も含めた「供給業者→製造業 者→販売業者→物流業者」の
4
業態を包含するサプライチェーン全体の最適化 を図ることによって,多種多様で困難な顧客の要求に応えることになる。その 際に,サプライチェーン構成員のコア・コンピタンスを結合させ,個々の企業 の垣根を越えたサプライチェーンの競争力を担保するのが企業間のコラボレーション(協働)である。
本稿「バリューアライアンス戦略――‑SCM革命ー一ー」では,サプライチェ ーンを最適化するアライアンス(提携) ・コラボレーションにつき資源ベース の視点から現在までの研究を整理し検討を加え,半導体・電子部品業界の実務 および実例と突合を試みたものである。本節「
I.
はじめに」に続く「I I.
サ プライチェーンコラボレーション」で,コラボレーション,コア・コンピタン‑70‑
香川大学経済論叢7 0
ス,価値ネットワークとダイナミック市場などの概念とサプライチェーンとの 基本的関連について論じ,ベンチャー企業,大手企業のそれぞれのコラボレー シ ョ ン の 相 違 を 検 討 し , ま たVMI, CPFR, I T , c
ーコマース,CALS, E D I ,
ウェブE D I ,
企 業 間 電r
取引等とSCM
及 び コ ラ ボ レ ー シ ョ ン と の 関 連 に つ い て述べている。また,r m .
半 導 体 ・ 電f
部品業界とe
ービジネス」では,サプ ラ イ チ ェ ー ン 最 適 化 に 貢 献 す るI T
の 展 間 導 人 が 比 較 的 早 い 業 界 で あ る 半 導 休 ・ 電f
部品業界を取り上げ,前節I I.
サプライチェーンコラボレーションで 者察した概念がどのように展開しているかを検証する。最後にr w .
おわりにー一ー将来の展望」でサプライチェーン
1 ‑ ̲
のコラボレーションに関連する将来展 望を論じている。I I
サ プ ラ イ チ ェ ー ン コ ラ ボ レ ー シ ョ ンサプライチェーンが最適化されるのは,サプライチェーンの構成員が協働す ることで,サプライチェーン全体にわたる効果的なネットワークを構築できた 場合である。バーチャルカンパニーがその究極の例である。それぞれの構成員 が 持 つ コ ア ・ コ ン ピ タ ン ス が コ ラ ボ レ ー シ ョ ン に よ り 連 携 し
I T
が触媒の役割 を果たすことで,バーチャルカンパニーでば情報・戦略• 利益を共有し,高品 質な商品を迅速に市場に送り出すことにより最高の顧客満足を得るのである。スポーツシューズのナイキは年間
90
億 ド ル の 商 品 を 自 社 工 場 な し で 製 造 販 売 しているが,知的資産(ブランド・技術・新製品開発・新規販路の戦略)と大 胆にアウトソーシングされたオペレーションからなるバーチャル組織の例である。
1. コラボレーション
コラボレーションとは,商取引・情報交換を行い,または戦略・事業計圃を 共同策定し,相圧利益を実現する提携関係のことである。競合同士で商品やサ
(1) David B o v e t and Y o s s i S h e f f i , "The Brave New World ( ) l S u p p l y Chain Management",
S u p p l y C h a i n Management R e v i e w , S p r i n g 1 . 9 9 8
嶋CohnersB u s i n e s s I n f o r m a t i o n
7 1
バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略‑71‑
ービスを融通し合うといった商取引は当事者間の
1
言頼関係が希薄であっても可 能であるが,業務L
の機密情報,戦略や事業計圃などを共有するとなると,そ れ相応の信頼関係が前提となる。商取引を重ねるうちにデファクトで情報交換 が進み,信頓関係がつちかわれ,資本関係や通常の取引関係より深い梁務提携 などが成{Lする場合が多い。また,特に近年著しく観察されるのが,サプライ チェーン・L今の大手同業者のコラボレーションであり,製造・販売・物流の各分 野の水平的な統合が進んでいる。それら大手同業者のコラボレーションにぱ必 ずしもJ :
記のような信頼関係が生成されていないのが特徴である。(本節4 .
B2Bとサプライコラボレーションおよび 5.e —アライアンス参照)提携先を選択する要件は,①業界で生き残る可能性の高い企業であること,
②市場を支配する企慇③収益を大きく伸ばす企業,④コンセプト,アイデア,
戦略が適合する企業,⑤協働関係に前向きな経営哲学を持つ企業,⑥リソース の共有から相互利益を見つけられる企業,⑦最適化されたサプライチェーン
t
の利得を分け合う信頼関係が構築できる企業といったものであり,これらの要 件を満たす企業と協働するのである。いったん協調関係が成立すると,納入側 と仕人側はそれぞれの購買・販売戦略を同期化
(synchronization)
させるよう努 力することになる。これらの協働は,サプライチェーン最適化から得られる利 益に裏打ちされた信頓に依存している。一般に,製造業者同卜のコラボレーションは統合度が高く安定的で長期間に 及ぶものになるが,流通槃者間のそれは統合度が低く流動的で短期間で終了す るものが多い。また,コラボレーションのカバーするビジネスプロセスの範囲 は,ー企業の内部プロセスに重点を置いたものからサプライチェーン全休に視 座を置:くものまでが存在する。最終製品を構成する・部品のメーカーを例に取 ると,部品メーカー企業がその製造コスト等の費用を削減するという,製品全 体からみればサプライチェーンの一部分ないし企業単体に視点を置いたコラボ (2) 松浦春樹監訳,山田勝也+尾西克治十平田智也ボ (2001), 「サプライチェーンコラボ レーション・.原材料調逹• 生産・物流・販売システム最適化の追求」,中央経済社,
p p .
7 3 ‑ 1 0 9 . [ C h a r l e s C . P o i r i e r a n d S t e p h e n E . R e i t e r ( 1 9 9 6 ) , S u p p l y C h a i n O p t i m i z a t i o n :
B u i l d i n g t h e S t r o n g e s t T o t a l B u s i n e s s N e t w o r k , B e r r e t t ‑ K o e h l e r P u b l i s h e r s ]
‑72‑
香 川 大 学 経 済 論 叢72
レーション初期段階から,顧客がその製品を継続購入するような顧客満足を提 供できるようなサプライチェーン全体にわたるネットワークの改善に渡る最も 進んだ段階のものまである。進んだ段階のものになると,部品メーカー企業の 顧客である組立メーカーと最終製品の顧客の及方の視点から自社のサプライ チェーンプロセスを見直してコア・コンピタンスが改善され,価値ネットワー ク全体を外部顧客の視点から見渡し自社プロセスの改善をサプライチェーン全 体の最適化に連動させるのである。
2 . コア・コンピタンス
コア・コンピタンスは企業独自のものであって,①顧客が重要とする価値,
l , : J )
または②コスト削減をもたらす生産プロセスのことである。コア・コンピタン スはいくつかの種類に分類可能である。それは,①供給業者・製造業者・販売 業者などのサプライチェーントの戦略的提携ないし協働の相手と強力な関係が あること,②最高品質の製品を最低コストで製造することができる製造技術や 経験を保持していること,③顧客に関する卓越した知識経験の蓄積があること の
3
つである。コア・コンピタンス経営とは,食業が現状の事業内容にとらわれることな く,自社の本質的な強みである現在および将来の競争力の源泉を特定・選択 し,そこへ企業のリソースを結集して事業運党する経営スタイルである。コア・
コンピタンス経噛の究極の形はバーチャルカンパニーである。企業間電
f
取引( B u s i n e s s ‑ t o ‑ B u s i n e s s )
ベンチャーがバーチャルカンパニーのように運営される ためには,コア・コンピタンスに注力しつつアウトソース(特に技術分野)もIii
同時に推進することが必須とされる。
卓越したサプライチェーンを自前で全て構築するのは難しい。情報システム をはじめとした資産投資が必要で,また優秀な人材を集めるのも困難である。
(3)
一 條 和 生 訳( 1 9 9 5 ) ,
「 コ ア ・ コ ン ピ タ ン ス 経 営 : 大 競 争 を 勝 ち 抜 く 戦 略J' 日 本 経 済 新聞社,pp.262
。(4) A r t h u r B . S c u l l e y a n d W. W i l l i a m A Woods ( 1 9 9 9 ) , B2B Exchanges: The K i l l e r
A p p l i c a t i o n i n t h e B u s i n e
ふ1 ・ ‑ t o ‑ B u s i n e s sI n t e r n e t R e v o l u t i o n
、I S IP u b l i c a t i o n s , p p . 175‑181.
7 3
バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略‑73‑
特 に グ ロ ー バ ル レ ベ ル の サ プ ラ イ チ ェ ー ン を 構 築 す る の は 最 も 困 難 で , こ う いった場合に EMS ( e l e c t r o n i c s manufacturing s e r v i c e ) の提供するサプライチェ ーンを利用し,製造アウトソース(バーチャル生産,またはバーチャルサプラ
イチェーン)を行うのである。
企業間のコラボレーションは,自らが得意な領域に特化(コア・コンピタン ス)して,相圧に迅速で低コストかつ高品質の活動を実現する手段である。そ こでは役割分担が明確であり,より利益の高い関係構築をコラボレーション当 事者間の外部に模索し,外部環境の変化のリスクを最小限に抑えるのである。
ここで,製造業者が,アウトソーシングにより販売マーケティング活動や物 流活動と生産活動とを分化して小規模になり,顧客・物流情報をリアルタイム に共有するサプライチェーンを効率化し強化する活動を行った場合,迅速性・
顧客応答度• 生産性•
利 益 性 が 向 上 す る と は 一 概 に 断 言 で き な い と す る 見 解 が ある。自社で行うことの利点である ( a ) 付加価値の取り込み,
(b)業 務 の 流 れ 全 体 の安定性の確保, ( c ) 経営資源の蓄積(情報ルート確保,支配カ・影響力確立,
ノウハウの蓄積など)は,サプライチェーンによる物流と情報の流れの効率化 の程度により留保される。現実には,これらの利点が業界によっては,アウト
ソースー•辺倒の経営判断がなされない十分な理由となるように思われる。例え
ば , 物 流 業 務 は お よ そ 企 業 の コ ア ・ コ ン ピ タ ン ス で な い と し て 3PL 企 業 な ど に ア ウ ト ソ ー ス す る 場 合 が 現 在 多 く な っ て は い る が , 顧 客 と の コ ミ ュ ニ ケ ー ション改善や顧客情報の直接収集のために自前の物流部門を運営する企業も存 在すると思われる。業界によっては,製品の最終顧客とのコミュニケーション か ら 得 ら れ る 情 報 が , 顧 客 満 足 度 を 改 善 す る サ プ ラ イ チ ェ ー ン 最 適 化 を 左 右 す るからである。
(5)
稲垣公火( 2 0 0 1 ) ,
「EMS
戦 略 : 企 業 価 値 を 高 め る 製 造 ア ウ ト ソ ー シ ン グ 」 , ダ イ ヤ モ ンドネL p p . 8‑9 。
(6) 末松千葬+「本倖生 (1997), 「ネットワーク刑ベンチャー経常論J'ダイヤモンド社,
p p . 186‑187 。
(7)
J o h n
S.M c C l e n a h e n , " C o n n e c t i n g w i t h t h e F u t u r e " , l n d u s t l } ' W e e k , A p r i l
17, 2000,P e n t o n M e d i a , I n c .
(8) 伊丹敬之 0984), I沿新・経酋戦略の論埋」, H本経済新聞社,
p p .
39‑44。‑74‑
香 川 大 学 経 済 論 叢7 4 ア ウ ト ソ ー ス が 必 ず し も よ い 結 果 を 牛 成 す る と は 限 ら な い 場 合 も 多 い 。 企 業 や 組 織 の 中 で 現 在 ま で に 培 わ れ た 文 化 や 価 値 が 杜 内 業 務 を ア ウ ト ソ ー ス す る 際 の 障 害 に な る こ と も 多 い こ と や , 白 杜 製 造 で な い 場 合 に は 最 終 製 品 の 品 質 管 理 が 困 難 と な り , 企 業 に よ っ て は ア ウ ト ソ ー ス が そ の 製 品 や 企 業 の 親 争 力 を 減 じ
る場合があることを否定できない。
こ の 論 点 の 現 在 で の 結 論 と し て , コ ア ・ コ ン ピ タ ン ス で な い サ プ ラ イ チ ェ ー ン上の活動をアウトソースするのが必ずしも最良の選択というわけではないと い う 見 解 は 現 状 で は 否 定 し が た い 。 し か し , 今 後 の IT の 進 歩 に よ り サ プ ラ イ チ ェ ー ン ト の 構 成 員 が 戦 略 的 情 報 を 適 時 に 共 打 で き る イ ン フ ラ が 整 備 さ れ , 厳
しいグローバル競争による企業文化や価値の変化により,相互信頼に基づいた 前 向 き な コ ラ ボ レ ー シ ョ ン が 企 業 間 に 成 立 す れ ば , ア ウ ト ソ ー ス が 徹 底 さ れ た バーチャルカンパニーが数多く出現するのも遠い将来のことではないと考える。
3 . 価 値 ネ ッ ト ワ ー ク と ダ イ ナ ミ ッ ク 市 場
協働関係はその特徴から「価値ネットワーク ( v a l u enetwork) 」と「ダイナミッ ク市場 (dynamicmarket c o n f i g u r a t i o n ) に分類でき(表 2‑ 1 参照),これら価値 ネ ッ ト ワ ー ク と ダ イ ナ ミ ッ ク 市 場 が 交 じ り 合 う こ と で , サ プ ラ イ チ ェ ー ン な い
しサプライネットワークが構成されている。
表
2‑1 価値ネットワークとダイナミック市場の特徴
構 成 員 の 意 図 時間軸 構成員相圧の関係 閏係に対する間心 構 成 員 数
価値ネットワーク
内部での関係に中期一長期
強し 強し 少なし( V a l u e n e t w o r k )
より{耐直を増加ダイナミック市場
外邸との関係に短期ー 1 J i t t J J
加' I、し 切 ―I I し 多い( D y n a m i c m a r k e t )
よりf i f f i
イ直を増加P a u l T i m m e r s , E l e c t r o n i c Commerce p . 1 8 4
(1)
価 値 ネ ッ ト ワ ー ク
「 価 値 ネ ッ ト ワ ー ク 」 と は ビ ジ ネ ス 上 の 情 報 や 知 識 を 統 合 し , 戦 略 上 の 利 用
を 図 る 複 数 の 企 業 か ら な る 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク で あ る 。 価 値 ネ ッ ト ワ ー ク は 必 ず
しも情報通信技術 ( i n f o r m a t i o nand communication technology) を駆使したものと
7 5
バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略75‑
は限らない。例えば,必ずしも卓越しだ情報通信技術を伴わない既存の協働関 係(例えば,製造業者
v s .
販 売 栗 者 ) は 価 値 ネ ッ ト ワ ー ク の 定 義 を 満 た し て い る。価値ネットワークという関係は,少数の企業間で成立し,そのネットワー クの構成員の関係を深めることがそのn
的である。特定の企業の複数のビジネ スプロセスからなる価値連鎖( v a l u e c h a i n )
全 体 が そ の 構 成 員 と な る こ と も あ る。また,構成員の人れ替りはゆっくりと時間をかけて行われる。現在,PC
サプライチェーン(PCメーカーと販売会社,小売店で構成)の業界で,ロゼッ
タネット
( R o s e t t a N e t )という価値ネットワーク実験が行われている。それは,
PCメーカーの製造計圃を改善し,小売店への製品情報提供にかかる手間と費
用を削減し,小売店への返品を簡略化し,企業のPC
購 入 実 務 を 効 率 化 す る た めに,PCと周辺機描に CBL(common b u s i n e s s l i b r a r y )という定義づけをしたも
のである。(2) ダイナミック市場
「ダイナミック市場」とは,市場原理を利用して取引の弾
} J
性 と 機 会 の 増 加 を戦略的にH
指す仕組みのことである。外部との関係から価値を最大化すると いう意図を持った集団からなる大規模な仕組みである。通信情報技術を駆使し て,多くのビジネストの業者(買い手,部品供給業者,サービス提供業者など)から最適の相手を見つけ出すものである。これは,インターネットや情報通信 技術と親和性の高いものである。ダイナミック市場では,買い手はいくつもの 企槃(あるいは価値ネットワーク)と交渉可能である。特定の企業(あるいは 価値ネットワーク)に発注することで,ダイナミック市場を通じて最適化され
た結果を得ることになる。
4. 828とサプライチェーンコラボレーション (1) ベンチャー企業とサプライチェーン
1990
年 代 後 半 に 起 業 さ れ たB2B ( b u s i n e s s ‑ t o ‑ b u s i n e s s ,
企 業 間 電f
商取引)ベンチャー企業の数多くが,サプライチェーン上のコラボレーションサービス
‑76‑
香 川 大 学 経 済 論 叢7 6
図2‑1
価 値 連 鎖 ・ 価 値 ネ ッ ト ワ ー ク ・ ダ イ ナ ミ ッ ク 市 場ビジネスプロセス 価値連鎖
( V a l u eC h a i n )
会社・企業価値ネットワーク
( V a l u en e t w o r k )
P a u l Timmers, E l e c t r o n i c Commerce p . 1 8 4
を 提 供 す る ビ ジ ネ ス モ デ ル を 掲 げ て い た 。 プ ラ イ ス ラ イ ン ・ ド ッ ト コ ム
(www.p r i c e l i n e . com) の ウ ェ ブ サ イ ト が 協 働 で き る プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を 提 供 す る こ と で , 旅 行 ・ 車 ・ 金 融 サ ー ビ ス な ど の 大 手 販 売 企 業 が 自 社 の 未 販 売 余 剰 在 庫 を 販 売 し て い る 。 顧 客 範 囲 が 広 が る ば か り で な く , 顧 客 の 興 味 を 引 き 続 き 惹 き 付 け る こ と が で き る 。 こ の プ ラ イ ス ラ イ ン ・ ド ッ ト コ ム を 介 し た 業 界 コ ラ ボ レ ー ションで,年間 2 百万件以上のオンライン取引が毎:年成立している。顧客メー カーにサービスする H 的で,同^業界の複数の企業群をネット上に形成しネッ ト上での共同事業を行うコラボレーションの効果により,参加企業群による共 同 研 究 , 共 同 購 買 , 共 同 受 注 , さ ら に は 顧 客 向 け の 情 報 提 供 が な さ れ る 。 こ の コ ラ ボ レ ー シ ョ ン 形 態 は イ ン タ ー ネ ッ ト を 利 用 し た 水 平 統 合 刑 ビ ジ ネ ス モ デ ル
( l O )
と呼ぶこともでき,新発想や新商品を生成する原動力となりうるものである。
(9)
K a t h l e e n S i n d e l l
(2000), L< , y a l t y M a r k e t i n g f o r t h e I n t e r n e t Age: How t o I d e n t i f y , A t t r a c t , S e r v e , and R e t a i n Customers i n an E‑commerce E n v i r o n m e n t , D e a r b o r n F i n a n c i a l P u b l i s h i n g , I n c . , p . 6 1 .
(10) 原
f t l
保 編 (2001), 「EMSビジネス革命:グローハル製造企業への戦略シナリオ J , f 1
科技連出版社,p p . 74‑76 。
7 7
バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略‑77‑
このようなサプライチェーン上のコラボレーション形態を核とするビジネス モデルがベンチャー企業によって主導されたのは理由がある。伝統的な部品メ
ーカーなどの既存企業が e —マーケットプレースに代表されるダイナミック市 場を運党し,特に売り手として参加することに躊躇していた。それは e —マーケットプレースは,①短期的には商品やサービスの価格が適正価格レベルより も低ドし,中長期的には価格が適正利潤の取れる価格で均衡するといわれてい る こ と , ② 中 立 性 が 確 保 さ れ な い マ ー ケ ッ ト プ レ ー ス は 長 期 的 に は 規 模 拡 大 が
望めず,他の e —マーケットプレースに代わられる危険が大きいこと,③ e —マーケットプレース経由の販売と既存の販路とが価格その他の条件等で食い違い がおき,人肉食い(カニバリゼーション)が生じて結果として売上が減少する と推測されることの 3 つ の リ ス ク が 考 え ら れ , 大 手 企 業 は 積 極 的 な 態 度 を と れ
( I I )
な か っ た か ら で あ る 。 現 在 で は , こ の 3 つのリスクよりも, e ‑ビジネスに参 加 し な い リ ス ク の 力 が 大 き い と い わ れ , 大 手 企 業 は 既 存 の 販 路 を 補 完 す る 役 割
を果たすものとして eービジネスが見直されるに至った。
(2)
大手企業の参加一一ー業界コンソーシアム
既 存 企 架 は 独 立 系 の e‑マーケットプレースに対抗するために,何社かまと まって e ーマーケットプレースを創造し,または独立系のマーケットプレース に 投 資 を 行 っ て 参 加 し , さ ら に は 1 9 9 0 年 代 後 半 か ら 欧 米 に お い て コ ン ソ ー シ ア ム と い う 名 前 の 既 存 企 業 連 合 が 数 々 設 立 さ れ た ( 表 2‑2) 。 大 手 の 既 存 企 業 が , 相 圧 利 益 の た め に 団 結 し た も の で あ る 。 設 立 の き っ か け と し て 独 立 系 の e ‑マーケットプレースに対抗するという意味があったにせよ,コンソーシア
( 1 2 )
ムにはコラボレーションの者え方がその底流に流れている。このような水平展 開 型 の ビ ジ ネ ス モ デ ル が 成 立 す る た め に は , 自 社 製 品 を モ ジ ュ ー ル 化 し て 提 供
( ! J I
で き る こ と に 加 え , 水 平 展 開 を 行 う ニ ー ズ が 高 い こ と が 必 要 で あ る 。 表 2‑2
( 1 1 ) L i l
田勝也( 2 0 0 1 ) ,
「828
の実践J ,
中央経済社,p p . 1 4 0 ‑ ‑ 1 4 7 。 ( 1 2 )
山田勝也( 2 0 0 1 ) ,
前出p p . 174‑175
。( 1 3 )
国領次郎( 1 9 9 9 ) ,
「 オ ー プ ン ・ ア ー キ テ ク チ ャ 戦 略 : ネ ッ ト ワ ー ク 時 代 の 協 働 モ デ)レ」,ダイヤモンド社,
p p . 115‑117 。
‑78‑
香 川 大 学 経 済 論 叢 78 表2‑2 業界コンソーシアム
Consortium
(コンソーシアム名)I n d u s t r y P a r t i c i p a n t s
(業界での参加会社)1 A e r o s p a c e Consortium B o e i n g , Lockheed M a r t i n , BAE S y s t e m s , Raytheon
2 A i r l i n e s Consortium A i r F r a n c e , American A i r l i n e s , B r i t i s h A i r w a y s , C o n t i n e n t a l , D e l t a , U n i t e d A i r l i n e s
3
Auto Exchange GM, F o r d , Daimler C h r y s l e r
4 Consumer P r o d u c t s Consortium G e n e r a l M i l l s , H e i n z , K e l l o g g s , N e s t l e , P&G, (GMA) S a r a Lee
5 e2open.com IBM, T o s h i b a , N o r t e l N e t w o r k s , S o l e c t r o n , M a t s u s h i t a E l e c t r i c I n d u s t r i a l , H i t a c h i E l e c t r o n i c s , S e a g a t e T e c h n o l o g y , LG E l e c t r o n i c s
6 GlobalNetXchange S e a r s , C a r r e f o u r
7 H e a l t h C a r e S u p p l i e r s C o n s o r t i u m Johnson & J o h n s o n , GE M e d i c a l S y s t e m s , B a x t e r I n t e r n a t i o n a l , A b b o t t L a b o r a t o r i e s , M e d t r o n i c
8
High‑Technology Exchange Compaq, Gateway, AMD, H e w l e t t P a c k a r d , H i t a c h i , NEC, I n f i n e o n , Quantum, Samsung, SEI S y s t e m s , Western D i g i t a l , a n d S o l e c t r o n
, H o s p i t a l i t y C o n s o r t i u m H y a t t , M a r r i o t t
1 0 H o s p i t a l i t y Exchange H i l t o n ( H i l t o n
、D o u b l e t r e e , Embassy S u i t e s , and 7 o t h e r b r a n d s )
資 料
Goldman S a c h s
が示す業界コンソーシアムは水平展開の例であり,独立系ベンチャーによる e‑
マーケットプレースが少数の適者へ淘汰された現在では,業界コンソーシアム の水平展開刑ビジネスモデルがサプライチェーンの再編への影響力は大となっ た 。
KPMG コ ン サ ル テ ィ ン グ は , 現 在 ま で の B2B ビ ジ ネ ス を ビ ジ ネ ス 設 立 時 期
に よ り 第 1 但 代 か ら 第 3 世 代 に 分 煩 し た 。 第 1 軋 代 は , い わ ゆ る 独 立 系 B2B
で , EDI の よ う に 高 価 な 仕 組 み で な く , ウ ェ ブ サ イ ト で 展 開 で き る B2B のマ
ー ケ ッ ト プ レ ー ス 構 築 や 接 続 が 比 較 的 廉 価 と な り 成 立 し た 独 立 系 B2B ベン
チャーである。標準化された商品(ウェブサイト上の情報で欲しい商品やサー
ビスが特定可能であること)と先進技術を盛り込んだ手作りの調達システムを
79 バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略
‑79‑
使 っ て い る こ と が 特 徴 で あ る 。 鋼 材 で は メ タ ル ・ サ イ ト 杜
( M e t a lS i t e ) ,
電力 販売ではアルトラ・エナジーネ士( A l t r a E n e r g y )
がその例である。第2
世代は,上記の第
l
槻代が業界大手企業と資本提携した企業体である。第2
肌代の特徴 は,第l
懺代が大手企業と資本関係を持ち,仕入や販売などの取引を確保するも の で あ る 。 化 学 品 販 売
B2B
の ベ ン ト ロ 社( V e n t r o )
が 大 手 販 売 業 者 のVWR
と資本提携したのは第2世代の例である。第3世代は,業界の大手企業が中心 となった協働連合体でコンソーシアムと呼ばれる。架界大手企業が構成員であ るため,仕人や販売などの取引量が大きい。買い手と売り手の大手同士が構成 員 に な っ て い る 場 合 ( 電f
部品のe 2 o p e n )
と , 大 手 の 競 合 会 社 複 数 が 構 成 員になっている場合(医薬品の
H e a l t hC a r e S u p p l i e r s C o n s o r t i u m )
とがある。第
l
桐代が第2
戦代への変遷は,資本提携による畢直的統合(サプライチェ ーンの卜油流またはド流との協働)で価値ネットワークを強化する動きである。また,第
3 t t t
代では垂直統合に大手同士の価値ネットワーク創設と水平的統合 による共同購買・共同受注・顧客向げ情報提供の試みが見られる。5 .
e —アライアンス特に,
e
‑ビジネス関連で成立するコラボレーションは,比較的短期間で成 立し,e
‑アライアンスと呼ばれ,短期間で終了,またはそれが予定されてい る場合も多い。e ‑アライアンスはいわゆる従来の提携と違った
2
つの特徴を持っている。1
つ は , 提 携 は も と も と 競 合 関 係 に あ る 企 業 が 提 携 す る こ と が 多 い こ と で あ る。e
ービジネスは最終的には1
つの分野で2‑3
社 し か 残 れ な い た め , 敵 味 方の選別自体よりもその提携による損得勘定を優先するのである。競合他社に 吸収されて「名を捨てて実を取る」あるいは競合を吸収して「名も取り実も取 る」という資本提携さえ行われる。また,2‑3
年と期限を区切る大手競合同 士の戦略的提携も珍しくない。 2000年 3月にIT
関連株中心の米国ナスダック 市場が崩落してインターネットとI T
を駆使したB2B
のビジネスに適者生存の 風潮が強まった。前項で挙げたコンソーシアム(表 2‑ 2) の中にもe
コラボ‑80‑
香川大学経済論叢8 0
レーションが基本となっているものが多いが,架界や最終顧客の期待に反してIJ4)
既に有名無実化しているものもある。
6. コラボレーションで効率化した SCM
( 1 )
VMIVMI(
ベンダー主導型店舗在庫管理,vendor‑managedi n v e n t o r y )
は,店頭POS
情報をメーカーにリアルタイム送付により製造側の過剰製造を防止し,小売側は補充の発注作業や検品作業がなくなり省力化される製販協働が前提となるシ ステムである。ただし,
POS
情 報 だ け で は 需 要 予 測 精 度 に 限 界 が あ り , 需 要 に影響を与える関連情報の共有度を上げることが必須となる。(2)
CPFR
CPFR ( c o l l a b o r a t i v e p l a n n i n g , f o r e c a s t i n g , a n d r e p l e n i s h m e n t )
はVMI
の弱点を カバーする。価値ネットワークに属する複数の企業が牛産計画,需要予測と製 品補充を協働して行うものである。米国VI C S ( V o l u n t a r yI n t e r ‑ I n d u s t r y Commerce S t a n d a r d )と UCC( U n i f o r m Code C o u n c i l )
により認証され,売じ増大と管理及び 運 営 効 率 の 向 上 , キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー と 投 資 効 率 の 向 上 を 導 く 手 法 と さ れ て い る。ワーナーランバート社( W a r n e r ‑ L a m b e r t )とウォルマート社 ( W a l ‑ M a r t )
間で 実験プログラムが行われた。製品供給を市場粛要に阿期化するために重要な情 報交換などを目的としたビジネス上の協働関係の構築のガイドラインが,VICS
によって作成された。牛産プロセスやシステムの中に協働前には発見しにくく サプライチェーンの最適化を阻んだボトルネックを特定でき,解決法が見つか
るというものである。
CPFR
により,従来のサプライチェーンの上流ー下流間 では共有されなかった需要変動の因r ( c a u s i n g f a c t o r )
情報を共有し,需要予測 をすることで予測誤差が減少する。例えば,メーカーや小売店が独自で行う広 告宣伝・販売促進活動などは,共有すべき需要変動因子の例である。( 1 4 )
山田勝也 (2001), 前出pp.148‑1490
8 1
バリューアライアンス戦略‑81‑
ただし,需要情報の共有で得られるインセンティブがサプライチェーンの上 下 流 双 方 に な い た め に , 協 働 し て の 需 要 予 測 活 動 が 実 務 に ほ と ん ど の 場 合 導 入
されないのが実情である。サプライチェーンの全体最適による利益のために,
( 1 5 )
企 業 の 境 界 を 超 え た 信 頼 関 係 が 成 立 す る こ と が CPFR 導 人 の 前 提 と な る 。 現 実 には,その程度の信頼関係で連携したサプライチェーンはほとんど存在しない と い わ ざ る を 得 な い 。 い っ た ん CPFR が 定 着 す れ ば VMI と比較して,要求さ れ る 相 互 信 頼 の 程 度 が 高い CPFR は,バーチャルカンパニーにより近いサプラ イチェーンを構成する。
7 .
コラボレーションと
IT( 1 )
ITとサプライチェーン管理
1 9 8 9 年 に ワ ー ル ド ・ ワ イ ド ・ ウ ェ ブ と い う ハ イ パ ー テ キ ス ト ・ シ ス テ ム が 発表され, h t t pと い う す べ て の コ ン ピ ュ ー タ で 情 報 交 換 が 可 能 な 記 録 機 能 を 付 与する標準的な通信制御の仕様である h t t p( h y p e r t e x t t r a n s f e r p r o t o c o l ) , 郵便に 使用されるアドレス(例えば, www.chiplstop.com) の よ う に 人 力 し た も の を 検索するための標準規格である URL( u n i f o r m r e s o u r c e l o c a t o r ) , ワープロのよ うに文書に特別なコードを付加することを可能にした HTML ( h y p e r t e x t markup l a n g u a g e )がインターネットに取り入れられて, e ‑ビジネスの基礎となる標準
( 1 6 )
が築かれた。ここでは,インターネットをはじめとした IT は,コラボレーショ ンやサプライチェーンの最適化にどのように関係するのかを検証する。
信頼が基礎にある協働関係がサプライチェーン上の構成員間にある場合, IT はサプライチェーン管理をさらに効率化する手段として有効である。インター ネットをネットワーキングの標準とすることで,複数のコア・コンピタンスを 持 っ た 提 携 先 と 最 高 の 商 品 や サ ー ビ ス を 提 供 可 能 な バ ー チ ャ ル 組 織 を 構 築 で き,受注処理や在庫確認及び管理,商品発送やジャストインタイム生産,顧客
(15) 藤野直明 (2001),「サプライチェーン経営人門」,u
本経済新聞社,p p .
151‑154。
(16) 江 藤 潔 監 修 , 廣 庭 修 訳 (1998),「ウェブサイト・ビジネス・マネジメント」,七賢出版
p p .
22‑23。[ E v a n I . S c h w a r t z
0997),W e b o n o m i c s , S a n f o r d J . G r e e n b u r g e r A s s o c i a t e s ,
I n c . ]
‑82‑
香川大学経済論叢 82 管理などが現状よりも迅速に正確になるからである。供給業者や製造業者,卸売業者間で毎日行われるコミュニケーションを改善
することが,最適なサプライチェーンを構築することの第—月歩であり, IT に
よる自動化や正確な消費情報を利用することで大贔在庫を持たずに需要に対応 できるようになる。小売業者のデータベースの既存情報に加え,販売促進や季 節 変 動 に よ る デ ー タ の 調 整 が 可 能 で あ る デ イ リ ー
POSシステムが稼動するに
つれて,倉庫スペースや安全在庫は最小となる。ただし,製販同盟によるサプ ライチェーン最適化には限界があり,さらに大きな範囲である「供給業者→製 造業者→販売業者→物流業者」4
モデルサプライチェーンでの最適化を志向することになる。
サプライチェーンが効果的であることは,企業の成長と顧客の満足度を決定 する菫要事項であり,売り手支援は布効なサプライチェーンを構築するための ウェブサイト利用を増加させている分野である。資材調達活動の改善,商品配
( 1 7 )
送や新製品紹介の迅速化を目指している。ただし,それらの改善や迅速化が顧 客満足に直結して顧客に対する付加価値を増加させることが重要である。例を 挙げると,配送時間を短縮する体制を準備しても顧客がそれを望まない場合は,
( 1 8 1
無駄な改善活動となる。
( 2 ) C
‑コマース1999
年 ガ ー ト ナ ー グ ル ー プ( G a r t n e r Group)
は, C‑コマース( c o l l a b o r a t i v e commerce,
e-commerce) という概念を創造して,今後の e —ビジネスはインターネ ッ ト を 利 用 し た 複 数 の 企 業 か ら 構 成 さ れ る 協 働 的 な バ ー チ ャ ル 組 織 を 目 指 し , 現 在 は 商 取 引 に 対 応 す る 基 幹 業 務 に 対 応 し た
ERP( E n t e r p r i s e R e s o u r c e P l a n n i n g ) + 自 社 内 の プ ロ セ ス と 特 定 の 買 い 手 や 売 り 手 と の サ プ ラ イ チ ェ ー ン
(17) 上原征彦監訳,長谷川真実訳(2001),
I
インターネットマーケティングの原理と戦略」,日本経済新聞社,
p p .
173‑174。 [Ward Hanson
(2000),P r i n c i p l e s <~{ I n t e r n e t M a r k e t i n g , Th omson L e a r n 1 . n g ]
( 1 8 ) Jim Thomas, "Why Your S u p p l y Chain D o e s n ' t W o r k " , u , g i s t i c s Management &
D i s t r i b u t i o n R e p o r t , June 30, 1 9 9 9 , C a h n e r s Busmcss I n f o r m a t i o n
8 3
バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略‑83‑
の最適化を対象としたサプライチェーン管理ソフトウェアから,非常に流動的
( 1 9 )
なN対Nのダイナミック市場に対応したソフトウェアに進化すると予測した。
cーコマースは,ウェブサイトをハブとして利用することで売り手と買い手の 双方向のコミュニケーションが可能となり,商取引を行う売り手や買い手との
間のサイクルタイムを短縮し,商品・価格・在庫• 発送・与
1
言などに関する情⑳
報を共有するものである。また,情報共有がインターネット経由で行われて顧 客 情 報 が 蓄 積 さ れ れ ば ,
GroupLens
の よ う な 協 働 選 好 ソ フ ト( c o l l a b o r a t i v e f i l t e r i n g s o f t w a r e )
が活用され,顧客の購買嗜好や選好度の高い購買提案が可能( 2 1 )
となるというものである。
この cーコマースが実現するには,供給・製造・販売・物流を行う業者の業 務遂行速度がインターネットと最新のサプライチェーンソフトウェアの業務処 理 速 度 に 追 い つ け る か ど う か が 問 題 で あ る 。 上 記 ソ フ ト ウ ェ ア の 導 入 は バ ー チャルカンパニーを成立させる必要条件にはなるかもしれないが,必要十分条 件ではないのである。
(3)
CALS
CALS
(企業及び企業内部門間で製品の設計・開発・製造・流通・サービス が,デジタルデータを用いて,共通のデータベースの下でリアルタイムに行え るネットワーキング)の究極の目的は企業統合( e n t e r p r i s e i n t e g r a t i o n )
である。そこで統合される企業群は,供給業者,製造業者,販売業者,物流業者および 顧客である。戦略的提携により水平統合された企業群の持つ高い専門的技術お よび製造能力などの経営資源を融合し,顧客需要に最も適合した高品質製品を 市場へ迅速に送り出して究極の顧客満足を得る。そこでは,製造コスト・技術 特許・事業計画などの極秘情報までもが提携企業間で共有されるのである。情
( 1 9 ) B r i a n O ' C o n n e l l ( 2 0 0 0 ) , B 2 B . com: C a s h i n g ‑ i n on t h e B u s i n e s s ‑ t o ‑ B u s i n e s s £ ‑ C o m m e r c e B o n a n z a , Adams Media C o r p o r a t i o n , p p . 242‑243.
( 2 0 ) W a r r e n D . R a i s c h ( 2 0 0 1 ) , T h e e M a r k e t p l a c e S t r a t e g i e s f o r S u c c e s s i n B2B eCommerce, M c G r a w ‑ H i l l , p p . 1 3 3 .
( 2 1 ) C h a r l e s C . P o i r i e r a n d M i c h a e l J . B a u e r ( 2 0 0 0 ) , e t a l . , p p . 126‑127.
‑84‑
香川大学経済論叢8 4 報 共 有 に よ り , 同 時 並 行 ( c o n c u r r e n t ) 作 業 や 意 思 決 定 が 可 能 に な る 。 バ ー チ ャ
ル カ ン パ ニ ー は , 従 来 は 企 業 秘 密 と さ れ た 情 報 を 積 極 的 に 提 携 企 菓 間 で 開 ホ
( : ! 2 1
し,迅速な外部調達を極限まで進めた企業形態である。
バーチャルカンパニーによるアジル ( a g i l e ) 生産ないしアジリテイ ( a g i l i t y ) と は,個客(異なるニーズを持つ顧客)に対して高品質・高性能の製品やサービ スを提供して利益を上げるイノベーション継続力である。その本質は,①市場 の細片化,②任意の注文量に対応できる生産,③大量顧客を個人個人として扱 える情報技術,④製品寿命の短命化,⑤製品とサービスの渾然一体化,⑥グロ ーバルな生産ネットワーク,⑦企菓間の競争と協調の併存,⑧マス・カスタマ イゼーションヘの流通インフラ,⑨企業革新熱,⑩社会の価値観変化からの圧
( 2 3 1
カの 1 0 項目であるとされる。
CALS では,文書の標準化→電—f データ交換の標準化→設計データの標準化
を行うものであり,商品化企画から市場投入までを迅速に行うコンカレント・
エンジニアリング (CE, c o n c u r r e n t e n g i n e e r i n g ) の前提条件となる。設計データ 管理には PDM ( p r o d u c t d a t a management) が使われる。従来の垂直統合では,標 準化の遅れから発生する内部コストの増大を回避できず,情報伝達の遅れから 市場への素早い対応が困難である。 [こ記の標準化を行うことで円滑迅速なアウ トソースを可能にすれば,市場競争力の高いコア・コンピタンスを持った複数 の企業が協働してバーチャルカンパニーが構成される。バーチャルカンパニー の環境では,コスト上優位でありながら素早い市場対応が可能な組織が構築可
( 2 4 )
能である。 CALS の 一 連 の 考 え 方 は , 現 在 の サ プ ラ イ チ ェ ー ン 管 理 が 最 適 化 さ れたダイナミック市場を志向するのと方向が同一である。
( 2 2 )
後 藤 龍 男( 1 9 9 5 ) ,
「CALS
がわかる本」,H
本能率協会マネジメントセンター,p p .1 4 0
‑149 。
( 2 3 ) S . L . G o l d m a n , R . N . N a g e l , a n d K . P r e i s s ( 1 9 9 5 ) , A g i l e C o m p e t i t o r s and V i r t u a l O r g a n i z a t i o n s , Yan N o r s t r a n d R e i n h o l d
( 2 4 )
後藤龍男( 1 9 9 5 ) ,
前出p p .131‑134 。
85
バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略‑85‑
8 . E D I ,
ウェブEDIとサプライチェーン
サプライチェーンネットワークが成功する基盤は運用効率の優位性にある。
ネットベースのサプライネットワークが成功といわれる理由は主に効率性の問 題がその観点となっており,売上増加や購入価格低減が2番目, 3番目の観点 となる。現在は, 20年 程 前 か ら サ プ ラ イ チ ェ ー ン の ネ ッ ト ワ ー ク 構 築 に 貢 献 してきた
EDI
に代わりウェブEDI
が 企 業 間 の デ ー タ 通 信 手 段 に な る と い わ れ ている。EDI
及 び ウ ェ ブEDI
が サ プ ラ イ チ ェ ー ン 最 適 化 に 与 え る 影 響 を こ こ では考察する。( 1 ) EDI
[ = J
本 の 卸 売 業 で は1980
年 代 , 製 造 業 で は1990
年代から,VAN
(専用の付 加価値通1
言網,v a l u e ‑ a d d e d n e t w o r k )
経由での業界ごとに取り決めた標準フォ ーマットを基にEDI
(電~f式データ交換システム, electronicd a t a i n t e r c h a n g e )
を利用して,受発注,納品,出荷案内,請求・支払など商取引→般のデータ交 換を行い業務の合理化を図っている。EDI
の導人コスト(表2‑ 3)
は,シス テム規模と内容などによって大幅に異なるシステム購入費と社内や取引先との 調整・連絡・説明・教育・個別導入テストなどにかかる人的なユーザー導入費1 2 5 )
用に分別される。買い手企業によってデータの種類や内容が異なるため,取引 先別に個別対応する手間は売り手側には相当な負担であった。
大手企業でユーザー数が多い場合には,買い手側の人的費用に加え,売り手 側 の 買 い 手 に 個 別 対 応 す る 手 間 を 考 慮 に 入 れ る と
EDI
の導人費用は莫大なも のになる可能性がある。加えて無視できない運用費がかかるため, ド記列挙の 費用対費用削減効果を数値化して比較することは,EDI
導人の否定につながる ことが多かった。したがって,金額に算定が難しいデータの手入力による入力 ミ ス の 防 止 に よ り , 在 庫 ・ 出 荷 管 理 の 精 度 が 高 く な る こ と やEDI
の導入によ り導人できるQR
(クイックリスポンス,q u i c kr e s p o n s e )
やECR
(効果的市場( 2 5 )
流 通 シ ス テ ム 開 発 セ ン タ ー( 1 9 9 7 ) ,
「EDI
の知識J ,
日本経済新聞社,p p . 123‑126
。‑86‑
香川大学経済論叢8 6
表2 ‑3 E D I
の導入・運用費用一覧費用の種類 費用分類 内 容
導入費 計画設計経費 マネジメント費用
(導人時のみの費用)
開発経費 (コンピュータ関連費用)ホストコンピュータ,
P C , VAN,
データ通信,データ形式変換,業務処理(ソフト開発費用)伝送制御ソフト,データ形式 変換,業務処坪'}フトウェア開発・カスタマイズ
(マスター格備費用)コードマスター,取引 先マスター,その他
新伝票設計• 印瑚費用
操作・業務マニュアル及び開発及び印刷
(教育費用)人件費,教育設備と器材提供 説明会 札内及び取引先への通知・郵便・説明資料
印刷・説明会場費川 テスト ユーザー毎運ftlテスト
運用費
VAN
及びコンピュータ費用 回線費及びコンピュータ運用費(継続的な費
j : J : j )
システム保守費 ハードウェア保守,ソフトウェアカスタマイズ マスター保守費 商品マスター,取引先マスター,その他流通システム開発センター
EDI
の知識p . 124‑125
対応,
e f f i c i e n t consumer r e s p o n s e )
により収益機会の逸失の皿避という追加的 効用がEDI
導入の補足理由となった。EDI
の活用により,取引コストをF
げることと顧客満足度を上げることを同 時に実現した米国企業の例がある。年間売I:高が1
兆円規模のある家庭用日用 品製造会社は,約1 0 , 0 0 0
社の販売先があり,販売先の取引規模と出荷形態により
3
つに分類可能であった。第
1
の分類は大規模販売会社であり,1 0
社程度ではあるが企業の全取引額 の66%
程度を占める。全取引数の80%
につきEDIを使った取引を行い,残り
の20%
を電話やファクシミリなどで行う。製造工場の倉庫からの大量出荷,少ない在庫単位
(SKU,s t o c k k e e p i n g u n i t )
の種類というのが,典邸的な出荷で ある。第 2の分類は中規模販売会杜で,企業の全取引額の 25%程 度 の 取 引 が87 バ リ ュ ー ア ラ イ ア ン ス 戦 略
‑87‑
ある。第
2
の分類の販売会社はEDI
を そ も そ も 使 っ て い な い 場 合 が 多 い 。 第1
の 大 規 模 販 売 会 社 向 け 出 荷 の 場 合 よ り 少 な い 出 荷 量 で 在 庫 単 位 の 種 類 は 多 く,配送先が複数に渡る場合が多い。第 3の小規模販売会社はわずか全体の 9 % 程度に過ぎないが,第2
の中規模販売会社の場合よりも出荷量は少なく在庫単 位の種類が多い。複雑な梱包指定に対応するために手間がかかる。この企粟は,効率性とコスト削減の効果を狙い,自社の在庫管理システムに アクセス可能にした。販売先がリアルタイムで発注• 発注内容変更• 発注残確 認することを可能にしたこの自動化により,年間
4
百万件の電話間合せに対す るl 口 l
答と2 5 J J
件の注.文につき省力化が実現した。この企業の場合,1
件 の 注 文処理を手作業で行うと 12,000‑30, 0 0 0
円程度の事務経費が必要であるが,電 子 化 す る こ と で
2 ,400‑3, 0 0 0
円程度(通常,10%‑25%
程度に減少)にま で削減することが可能となる。電話回答と注文処理を自動化したことで,第3
の小規模販売会社数千社に対する手間が省けた。さらに,売り手→工場→物流 倉庫→販売チャンネル→顧客の一連のサプライチェーン管理が強固になり,顧 客に対するコミュニケーションが改善した結果,顧客満足度が飛躍的に向上し て自社ブランドヘの顧客ロイヤルティが確固たるものになった。従来の手作業 による受注処理の自動化で人力などの間違いが激減した。さらに,リアルタイ ムでの発注• 発注内容変更• 発注残確認により,顧客の発注処理にかける時間
1 2 6 )
が節減されて大きな顧客満足につながったのである。
(2) ウェブEDI
EDI
がVANを通じて行うデータ交換をウェブサイト上で行おうとするのが
ウェブEDI
であり,買い手を多く抱えるメーカーが買い手に導入するには,ウェブ
EDI
はEDIよりも導人コストについては確かに廉価であるが,この場
合の問題はその運用費用である。ウェブ
EDIの 長 所 は 買 い 手 側 の 容 易 な 参 加 で あ り , イ ン タ ー ネ ッ ト に 接 続
( 2 6 ) C r a i g F e l l e n s t e i n a n d Ron Wood ( 2 0 0 0 ) , E x p l o r i n g E‑commerce: G l o b a l £ ‑ b u s i n e s s , and
£ ‑ s o c i e t i e s , P r e n t i c e H a l l , I n c . , p p . 1 9 3 ‑ 1 9 6 .
‑88‑
香川大学経済論叢88
されたPCとブラウザがあればすぐに利用できることである。短所は,売り手
側 は ウ ェ ブ か ら 社 内 の 販 売 ・ 出 荷 管 理 シ ス テ ム に 人 手 を 介 さ ず に 接 続 で き る が,買い手側は人がPCを操作することになるという点である。 EDI
の理想か らすれば,EDI
の両端がコンピュータであり人手を介さずに社内の購買や販売 のシステムに接続されていることが望ましい。しかし,受発注の頻度が多くな( 2 1 ;
い場合は,ウェブ
EDI
のほうがコストパフォーマンスは良くなる。イ ン タ ー ネ ッ ト の ウ ェ ブ サ イ ト を 経 由 し て
HTML
形 式 で デ ー タ を や り 取 り するEDI
で あ る た め に , 買 い 手 が 商 品 を 発 注 す る 際 に は ウ ェ ブ ブ ラ ウ ザ に 一 つ一つの発注内容を入力しなければならず,入カミスによる危険が生じることと事務処理工数が莫大なものとなった。これは,財務や物流等の基幹系システ ムでは
HTML
を自動処理できないことによる制約である。( 3 ) EDI
とウェブEDI
の今後XML
(エクステンシブル・マークア ッフ ・フ/ケージ,e x t e n s i b l e markup l a n g u a g e )
というHTML
に代わる言語が実用段階に人っている。HTML
の代わりに
XMLを使用することで,受け取ったデータを悲幹系システムで自動処理
をすることができる。したがって,今後,受発注処理の自動化を図り効率をじ げようとするには,XMLを導人することが解決法の 1
つとなる。現在,ロゼッタネットという