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量子色力学の低エネルギー有効理論

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Academic year: 2021

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量子色力学の低エネルギー有効理論

著者 前段 眞治

雑誌名 博士学位論文要旨 論文内容の要旨および論文審査

結果の要旨/金沢大学大学院自然科学研究科

号 平成2年6月

ページ 47‑51

発行年 1990‑02‑01

URL http://hdl.handle.net/2297/33152

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氏 名 前 段 眞 治

学 位 の 種 類 学 位 番 号 学位授与の日付 学位授与の要件 学位授与の題目 論 文 審 査 委 員

学術博士 学博甲第18号 平成2年3月25日

博士課程修了(学位規則第5条第1項)

量子色力学の低エネルギー有効理論 ( 主 査 ) 山 田 英 二

( 副 査 ) 岩 尾 秀 嶺 ( 副 査 ) 久 保 治 輔 ( 副 査 ) 木 村 實 ( 副 査 ) 鈴 木 恒 雄

学 位 論 文 要 旨

ABSTRACT

Weproposeaninfraredeffectivetheoryofquarkconfinementonthebasis ofabelianmonopolecondensation.QCDisregardedasaU(1)×U(1)abelian gaugetheorywithmagneticmonopoles・Theeffectivetheorycontainesdual abelianvectorfieldsandcomplexscalarmonopolefieldsinadditiontoquarks andgluons.Astaticpotentialbetweenquarksorgluonsiscomposedmainely oflinearandYukawainteractions・TheslopeofthePomeranchukandtheP trajectoriesisevaluatedtobeingoodagreementwiththedata.TheLipkin's relationisderived.QCDissimilartothetype‑Idualsuperconductorornear theborderbetweenbothtypes,dependingonthevalueofthegluoncondensate.

Wepredicttheexistenceofaxial‑vectorandscalarmesonscomposedofgluons.

ThefOrmerhasamass(0.9‑2.4GeV),whereasthelatteramass(0.5‑3.5GeV).

量子色力学が強い相互作用を記述する理論であることは,摂動論的QCDの成功や,こ れまでの計算機による数値シュミレーションの結果などから,ほぼ間違いない。しかし,

量子色力学でクォークやグルオンが何故,そしてどのようにして閉じ込められるのかと いう疑問に対しては,数値シュミレーションは何も答えることができない。そこで,量 子色力学を真に理解するために,また,低エネルギー・ハドロン物理を解析的に予言す ること力ざできるためにも,クォークが閉じ込められる機構を解明することは大変,重要 である。量子色力学は量子電磁気学と異なり,グルオン同士が相互作用するので取り扱

− 4 7 −

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いが非常に困難になり,また,相互作用の強さを表す結合定数が大きい値を取るので,

摂動法が使えない。従って,閉じ込めを実現する際に,どのような力学変数が重要な役 割を果たしているかを見定める必要がある。量子色力学のケージ群SU(3)はコンパクト であるので,一般にモノポールが存在する。我々は,このモノポールが閉じ込めに重要 な役割をすると考えた。

以下では,量子色力学に於けるモノポールの定式化を行い,そしてそのモノポールを 含む有効理論を提案する。また,最初はあらい近似を使った解析的な計算で,クォーク と反クォーク間の静的ポテンシャルを求める。更に実験データを用いて我々の理論に含 まれる任意パラメータを決め,これまでに知られていない新しい粒子の存在を予言する。

次に,より正確な結果を得るために,数値計算によって静的ポテンシャルを求める。そ して,QCDの真空の性質について議論する。

1981年にオランダの物理学者トフーフトは,ハドロン質量スケールの低エネルギー領 域で,量子色力学の中で重要な役割をする力学変数を分離するために,アーベリアン・

プロジェクションと呼ばれる特殊なケージ固定化を提案した。それによると,ケージ群 SU(3)のうち,非アーベリアン的な部分のみをケージ固定化する。すると,群SU(3)は,

その最大のアーベリアン・トーラス群であるU(1)×U(1)へと自由度がおちる。アーベ リアン・プロジェクションは,時空内のある点においては,ケージ変換の関数が定義で きないようなケージ固定化なので,一般に四次元時空の中に特異点が現れる。その特異 点を調べてみると,この点は残ったU(1)×U(1)対称性に対する磁荷を持ったモノポー ルであると同定できる。このようにして,低エネルギー領域で重要となるモノポールを 抜き出すことができた。アーベリアン・プロジェクションによって,始めに8つあった グルオンのうち,アーベリアン・トーラス群U(1)×U(1)に対応する2つのグルオンの みが,U(1)×U(1)ケージ変換の自由度をもつ。この2つのグルオン同志は相互作用し ないので,以下ではアーベリアン・ケージ場と呼ぼう。残った6つのグルオンは,U(1)x U(1)対称性について電荷を持ち,物質場のような振舞いをするので,チャージド・グル オンと呼ぶことにする。アーベリアン・ケージ場は,アーベリアン・プロジェクション によってストリング状の特異点を持ってしまうので,ラグランジュアンは非局所的になっ てしまう。取り扱いの楽な局所的ラグランジュアンに書き換えてやるため,アーベリア ン・ケージ場にデュアルな別のケージ場(以下,デュアル・アーベリアン・ケージ場と 呼ぶ)を導入しよう。すると,ラグランジュアンは局所的な形に書くことができる。今 までのことをまとめると,量子色力学でアーベリアン・プロジェクションを行うと,ラ グランジュアンはアーベリアン・ケージ場,デュアル・アーベリアン・ケージ場,チャー

ジド・グルオン,クォーク,そして点状のモノポールで書き表される。

さて,モノポールは点状であるが,系の分配関数を得るためにはあらゆる状態のモノ ポールを足し上げなければならない。バルダキーとサムエルの2人は,点状のソリトン のトラジェクトリーを無数に加え合わせると,ソリトンを「場」で置き直せることを示

した。彼らの議論を応用すると,我々の場合も,点状のモノポールを,「モノポール場」

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で置き換えることができ,場の理論として扱うことが可能になる。さて,量子色力学の 低エネルギー有効理論を構成するために,次の2つのことを仮定した。まず,モノポー ルが凝縮を起こすこと。2つ目は,チャージド・グルオンは低エネルギー領域では無視 できること。これらを仮定した後のラグランジュアンは,アーベリアン・ケージ場につ いてガウス型になっているので,アーベリアン・ケージ場について汎関数積分ができて しまう。こうして,最終的な低エネルギー有効理論が得られる。我々の提案した有効理 論は,超電導体を記述するギンツブルク・ランダウ・ラグランジュアンをちょうどデュ アルな形にしたものである。そこで,我々の有効理論を,デュアル・ギンツブルク・ラ ン ダ ウ ・ ラ グ ラ ン ジ ュ ア ン と 呼 ぶ こ と に し よ う 。

この節では,クォークと反クォーク間の静的ポテンシャルを,ある近似をすることに よって解析的に求めよう。前節で述べたように,デュアル・ギンツブルク・ランダウ理 論は,超電導体の理論の電場と磁場をひっくり返したようなものであるから,超電導体 のアナロジーで考察することは理解を助ける。超電導体ではマイスナー効果が起こるの に対して,デュアル・ギンツブルク・ランダウ理論ではデュアル・マイスナー効果が起 こる。つまり,電場は真空状態にある媒質中に侵入できない。従って,クォークと反クォー ク間にはしる電場はチューブ状にしぼられて,その結果,線形ポテンシャルになるので ある。我々は,チャージド・グルオンを無視し,かつ,真空が極端な第2種のデュアル 超電導体(ギンツブルク・ランダウ・パラメータカざ無限大)であると仮定して,クォー クと反クォーク間のポテンシャルを解析的に計算した結果,湯川型の項と線形の項の和 になることがわかった。これはクォークの閉じ込めを直接,説明したことになる。一方,

モノポールが凝縮しないとしてポテンシャルを計算すると,クーロン引力型となりこの 場合は閉じ込めは起こらない。我々のモデルでは,モノポールの凝縮力訂原因となってデュ アル・マイスナー効果が起こり,その結果,クォークが閉じ込もるのである。

我々の提案したデュアル・ギンツブルク・ランダウ理論が現象をどれだけ説明できる かをここで検討してみよう。まず,前節で求めた,電荷を持つ2粒子間の静的ポテンシャ ルのストリング・テンションは,粒子の電荷の2乗に比例している。このことから,クォー ク間のストリング・テンションと,チャージド.グルオン間のストリング.テンション の比が3分の になることがわかる。これは,ポメランチュクという粒子のレッジェ・

スロープが約0.3GeV‑2であるという実験事実をよく説明する。同様にして,クォークと 反クォーク間のストリング・テンションと,クォークとクォーク間のストリング.テン ションの比が2分の1になること力釘,我々の有効理論から言える。この関係式は,従来 のクォーク・ポテンシャルモデルで仮定として使われてきたリプキンの関係式そのもの であり,デュアル・ギンツブルク・ランダウ理論の正しさを示している。ところで,デュ アル・ギンツブルク・ランダウ理論のもつ,マグネティックなU(1)×U(1)対称性が,

モノポールの凝縮によって自発的対称性の破れを起こし,その結果,デュアル.アーベ リアン・ケージ場とモノポール場の両方が,マグネティックなヒグス機構により質量を 持つ。この2種の粒子(場)は共にエレクトリックなU(1)×U(1)電荷を持たないので,

− 4 9 −

(5)

SrATIcENERGYASAFUNCrlONOFR

デュアル・マイスナー効果によって閉じ 篭もることはない。即ち,外へ出て来る 可能性がある。それぞれの質量を計算す ると,約1.5GeVと5.0GeVである。

15

10

先ほどの,静的ポテンシャルの解析的 な計算の時に,ギンツブルク・ランダウ・

パラメータが非常に大きい値であると仮 定した。ところが,計算の結果は約2.4と さほど大きくなく,解析的な計算の結果 はそれほど信用できない。そこで,より 正確な結果を出すために,数値計算を行 なった。クォークと反クォークを置いた 糸の運動方程式を,デュアル・ギンツブ ル ク . ラ ン ダ ウ ・ ラ グ ラ ン ジ ュ ア ン か ら 計算する。それを,数値的に解き,求め た解をエネルギーの表式へ代入して,静 的ポテンシャルを求めた。結果を図1に 示す。図から分かるように,ポテンシャ 有効理論で,モノポールの凝縮により,

5

︵唾︶ン

0

− 5

−10

0.0 0.5 1.0 1 . 5 脾 U ラ ザ ー フ ‐ ◎ L 旬 し ← 9 基 へ L ー 脾 J U − ダ J ‑ r ヒ ー ワ ウ 』 、 ー =

た解をエネルギーの表式へ代入して,静

R

E=1.84 MBDA=4.9

的ポテンシャルを求めた。結果を図1に

図 1 示す。図から分かるように,ポテンシャ

ルは湯川型と線形の項から成っている。我々の有効理論で,モノポールの凝縮により,

真空のエネルギーは減少する。それと,グルオン凝縮の実験値とを等しいと置いて,有 効理論の中のパラメータの値を決めた。図2は,デュアル・アーベリアン・ケージ場の 質量nlCと,中性モノポール場の質量rns力ざ,グルオン凝縮の実験値(2本の縦線の間の 領域)にどう依存するかをグラフであらわしたものである。クラブより,QCDの真空は,

第1種か,あるいは,第1種と第2種の境目あたりのデュアル超電導体であることが結 論される。

10,0

以上のようにして,我々 は量子色力学の低エネルギー 有効理論(デュアル・ギン ツブルク・ランダウ理論)

を構成した。これから研究 すべき問題をいくつかあげ てみよう。まず,何故,閉 じ込め相でチャージド・グ ルオンが無視できるのかを 説明すること。我々の有効 理論で,カイラル・シンメ トリーカ計自発的に破れるこ

言︒所盟至

0.1

1 0

0 . 1 0 . 0 1 0 0 . 1 0 0

くALPHvPI心C,(GEV 4〉

SU(3)MASSESVERSUSGLUON‑CONDENSATION

図 2

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とを証明すること。量子色力学のモノポールカボどうやって凝縮を起こすのかを説明する こと等。

論文審査の結果の要旨

当該学位論文に関し,平成2年2月2日に審査方針の打ち合わせを行い,更に口頭発 表の後2月14日論文内容について協議した結果以下の通り判定した。

現在強い相互作用を有する素粒子群,ハドロンはクォークと呼ばれる構成要素から成 り,量子色力学(QCD)に従うと一般に考えられている。しかし,QCDは高エネルギー 領域ではハドロン現象を良く説明するが,低エネルギー領域においては,構成要素であ るハドロンが独立の粒子としては存在しないという閉じこめ等の基本的性質を説明する ことにまだ成功していない。これに関して超伝導のBCS理論の類推から,クォークが独 立に存在する相と異なる閉じ込め相を想定する模型が提唱されている。特に 色電場 がしぼられるdualMaissner効果によって閉じ込めを説明する模型が有望視されている。

本論文はその様な模型の中で,ケージ群のアーベル射影に基づく単極子の凝縮によっ て相転移が生ずるという観点に立って,QCDの低エネルギー有効理論を与えるdual Ginzburg‑Landau方程式を構成し,それを用いてQCDの真空及びクォーク,反クォー ク間の力などを論じ,それがハドロンの諸現象を原理的に説明しうるものであることを 示している。

この模型は参考論文の共著者鈴木によるものであるが,申請者はその初期の段階から この研究グループに加わり,特にクォーク,反クォーク間の力の解析的導出や,数値計 算のある部分については独自の寄与をしている。

以上の理由から申請者は学術博士の学位を授与するに値するものと判定する。

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参照

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