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痛 いの 日常化 という視点か らみた対処過程

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痛 いの 日常化 という視点か らみた対処過程

一乳幼児期ア トピーの子 どもをもつ母親の事例か ら‑

CopingBehaviorasFamiliarizationofSickness:CaseStudyinMothersHavingAtoロic Childtren

弘前大学人文学部 作道 信介

は じめに

1.背景 ‑ tア トピー"とは 1. 【ァ トピー"の普及 2.日本の けァ トピー"

Ⅰ.課題 と枠組

1,クライマ ンの主要概念 2.本論の枠組

皿.医学的デ ィスコース 1.ア レルギーの隠愉 2.ア トピーの隠愉

〟.マス ・メデ ィアのデ ィスコース V.母業晃のデ ィスコースー全体傾向

1.対象 と方法 2.全般的特色

Ⅵ.母親のデ ィスコース(2)一対処過程の事例 1.除去食中心

2.民間療法転換

Ⅶ.考察 と展望

1.病 いの 日常化,2つの方法 2.対症療法 ・除去食療法 ・民間療法 補論 :ア トピーか 日本で注 目される背景

は じめ に

近年,乳幼児をもつ母親の心配のひとつに,什ア トピー"があるO【ァ トピー" という病名, 什ア トピっこ" という名称がマス ・メデ ィアに頻繁に登場す るようになったのは,1987年頃か らである が,現在ではごく一般に知 られるところとなっている。1993年のア トピー性疾患実態調査 (厚生省 調べ)では,3歳児の8%がア トピー性皮膚炎であるという。ア トピー性皮膚炎 とは,病 因と症状 か 1対 1で対応 しにくいこと,生理的指標かあてにな らないこと,慢性的経過をたどることか ら考

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えて,現代医学か苦手 とす る領域の 「病気」 といってよい。 【ァ トピー"の子 どもをもつ母親たち はどのように してこの病気に対処 しているのだろうか。

とくに素人であるわれわれにとって,病 いへの対処 とは,病いという非 日常的エ ピソー ドをなん とか して 日常的エ ピソー ドに吸収 しようと試みる過程 ということかできる。そこでは手持 ちのス ト ックを用 いて 自家治療かおこなわれさまざまなエージェン トか ら知識か収集 され,専門家の判断が あおかれ る この過程でわれわれがおこなうのは,家族 ・類族,友人など身近な素人か ら医師や民 間療法家 といった専門家 までさまざまなエージェン トか らの ア ドバイス,さらにはマス ・メデ ィア といった不特定多数を対象 と したメディアか らの知識を 日常生活の言語を使 って翻訳す ることであ る。痛いの現実を 日常化す るために,われわれはどのような翻訳をおこなっているのか。翻訳によ る日常化 とは,個人にふ りかか った病いをひとつのエ ピソー ドと して語 ることができるよ うになる ことである しか し,われわれは徒手空拳翻訳をす るわけではない。翻訳には多 くのエージェン ト がかかわ り,われわれの現実の見方 (version)に影響を与えている。また,現実の見方への影響は, 単なる 「理論」や 「説明」による論理的な説得ではない。病 いという非 日常的な事態を治めようと 病者に働 きかける,その実践であるたとえば,現代医療における入院と伝統医療における儀礼 と を考えれば,病者の 日常生活への働きかけの違いが よくわかるだろう。 もちろんわれわれ もその働 きかけにさまざまに反応す る。対処過程 とは,各エージェン トが非 日常的事態を利用 して,われわ れの 日常生活にある種の 什力"を及ぼす一制度化の一場 とみ ることができるわれわれは対処過程 を制度か らの働きかけと個人の翻訳によるせめぎあいと考え,次の2点に着 目して検討す る。各エ ージェン トが提示す る病 いの現実の意味的な特質 とその語 りか実現 しようとす る現実の操作方法 と である。本論では,ア トピーの子 どもをもつ母親の対処過程をとりあげる したが って,本論はア

トピーについての臨床的知見を扱 うものではない。

本論の構成は次の通 りである まず,「1.背景」では 【ァ トピー"の特徴や一般に知 られるよう にな った経緯を中心に若干の整理をする。 「Ⅱ.課題 と枠組」では,医療人類学者 クライマ ンの諸 概念を検討 し,本論の立場をより詳 しく明 らかにす る。 「皿.医学的デ ィスコース」では,ア トピ ーについての医学的啓蒙書のデ ィスコースを, Ⅳ.マス ・メデ ィアのデ ィスコース」では,新聞 報道のデ ィスコースを把握 し, Ⅴ ・Ⅵ.母親のデ ィスコース」では, 什ア トピー"をもつ母親の デ ィスコースの特色をまとめる。

Ⅰ.背景一 冊ァ トピー" とは

1. 什ア トピー"の普汲

医学的な けア トピー" とは, 「ア トピー性皮膚炎」のことでア レルギー性疾患のひとつ と考え ら れている厚生省によれば 「ア トピー素因 (気管支ぜんそ くやア レルギー性鼻炎などの病歴,家族 磨)のあるものに生 じる,主 として慢性の皮膚の湿疹病変」であ り,症状 とかゆみか6か月以上続 いていることか診断の 目安 とな っている正確な患者数は把握 されてはいないものの,病院など医 療機関に通院する患者は約3万人前後 と見 られている。より包括的な解説をあげておこう

「ア トピー素因の個体 に発生 しやすい湿疹様変化である。乳児期では参出傾 向の強い鮮紅色斑で姶

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ま り,頭,顔,頚などか ら躯幹, 四肢へ と拡大す る (中略)掻痔は常に著 しく, しば しば発作的 である.皮疹 は季節的消長を示す ことが多い.また他のア トピー性疾患 と一定の関連をもって増悪, 軽快を くりかえす ことかある 多 くは思春期前 に軽快す るか,10‑20%の症例は成人後に持 ちこす

ことになる発生機序 と しては食物ア レルギー,家塵,ダニな どに対す る即時型反応および遅延型 反応 などが注 目されている。脂漏性湿疹,神経皮膚炎,手の湿疹などとの鑑別が問題 となるか,異 同もあき らかではない。副腎皮質ホルモ ン剤の外用,抗 ヒスタ ミン剤,化学伝達物質遊離抑制剤の 内服 な どにより治療 され る。 しか し成長期の子供 に長期 間使用す ることになるため,副作用に対す る細心の注意が必要である。卵,牛乳,大豆などを除去す る食事療法の効果 も小児科医によ り指摘 されている (F医学大事典』,南 山堂,1992,op) O

什ア トピー"か一般 に知 られ るようにな ったのは,マスコ ミ報道 ・関連書の 出版 によるたとえ ば,現在 ,関連書籍 は入手可能な一般書だけでも150タイ トル以上あ り.いわゆる 「健康雑誌」で紹 介 され るさまざまな健康法にも 「ア トピーにも効 く」 とい うキ ャッチフ レーズがつけ られ るのかあ た りまえの ようにな っている。また,ア トピー予防 と銘打 った商品は 「売れ筋」 と して続 々と開発 されているtEl. しか し, もともと 【ァ トピー"を普及 させたのは,朝 日新聞を中心 と した一連の新 聞報道である データ ・ベース

検索でさかのぼれ る最 も古い記 事は,198552日の 「加工 食品への依存警告 (ニ ュースラ イ ン) (著作の紹介)である が,本格 的にとりあげ られ るよ うにな ったのは1987年以降であ る (図1) 当初朝 日新 聞によ って現代社会の環境 問題 とくに 衣食住の問題 との関連で報道 さ れた。原 因がは っき りせず,見 た 目にひ どい湿疹かできること,

1992 1991 1990 1989 1988

19 87

0 20 40 60 80 100

1.ア トピー関連記事の推移 (朝 日新聞) 原因のひ とつに衣食住環境, とくに食物かあげ られていることか ら子供の養育 と家内の衣食住を担 当す る母親たちの注 目す るところとなった。また,医師によって対応か異なることか母親 たちの不

Zfl 日経流 通 19921010 6 「防ダニグッズ‑ 発生元断つ」に人気 ぜんそくやア トピー予防 (売れ茄 )

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安 を大 き く した。 これ は小 児科 医 と皮膚科 医の対 立 と して報 道 され注2,原 因 は 「小児科 医が原 因 は 何 なのか に注 目 し, あの 手 この手 で offendingfoodを みつ け る努 力 をす るの に対 し,大 半 の皮 膚 科 の 医 師 ば 'こ うす れ ば 治 る" と治療 面 か らの病 気 に対す る アプ ロー チ」注3を とる ことにあ るか , 現在 は 「余 り考 えか ちか って いな い」 とい う。 しか し,食物 とスキ ンケ アの どち らに ウエ ー トを置 くか とい うこ とに関 して依 然 違 いか あ る 。新 聞の 【ァ トピー" 記事 のエ ー ジ ェ ン トと して多 いの は生 協 な どの 市 民 団体 で あ り, 什ア トピー" か一般 的 にな る には,対症療 法 だ けで は って おか れ た 母親 が市 民 団体 と結 ん で組 織 を作 って い った ことも大 き い注5。 その背景 に医師 間の対立 とい う問題 か あ った の で あ る

最近 で は, スキ ンケ アを励行 し,湿疹 か ひ どい場 合 には ス テ ロイ ド剤 ・抗 ア レル ギ ー剤 な ど各種 外 用薬 を用 いか ゆ み な どの症状 の緩 和 を はか る一方 で , ダ二 ・か び な どの ア レル ゲ ンに注 目 し住 環 境 の整備 な ど生 活療 法 を 中心 に行 い,食 事療 法 (除去食 療 法 ) は湿 疹 との 関連 か 明確 な場 合 に実施 す る とい うや り方 か主 流 とな って い る。 ア トピー性 皮 膚炎 に は まだ未 解 明 な と ころか多 く,治療 に 長 い時 間か か か る。 育児雑 誌 な どで 情報 が あふれ て い るか ,食 物 制 限な どは 医 師の 指示 を受 け る こ

2 朝 日新聞199266日付記事は 「医師と相談 し慎重な対応をア トピーの食事療法で小児ア レルギー学会」

と以下のように伝えている。

日本小児ア レルギー学会の運営委員3人が,ア トピー性皮膚炎の食事療法について 「慎重に対応すること が望ましい」とする私見を 日本小児科学会雑誌にこのほど発表 した。ア トピー性皮膚炎への食事制限に医師の 間で見解に違いがあるため,同小児科学会の広報委員会が 日本小児ア レルギー学会に意見をまとめるよう依頼。

だが. 「研究の途上」という理由か ら 「私見」にな った。 この私見では,食物ア レルギーが増えていることは 認めている。だが家の中のダニなどが原因の例も多 く,食べ物が原因と決める方法も確立 していない,というO 除去食の強制がもとで 自信をな くし,い じめにあったり,不登校になる子どもの問題 も起きているC小児科医 は半年に1回 くらいは原因について再検討を加えるべきだ,としている。 私見を発表 した 1人.京都大学医 学部の三河春樹教授 (61)は 「食べない品目も2つや3つな らいいが,徹底的にやるのはどうか。あまり神経 質にな らないで」とア ドバイスする。 ただ し,タマゴな どで全身性 ショックなどを引き起こす可能性のある 場合は別。私見では厳格な指導を し,学校の給食関係者に連絡をとる必要を訴えている。三河教授も 「一概に いえないのがア トピーの難 しいところ」と話す。 三河教授は,食事療法をする場合でも医師とよ く相談 して 行 うことを強調.ア トピーの本を読んだだけでお母さんが勝手に判断するのは危険,とも言 うC身長や体重が 増えなか った り,極端な食事制限で栄養状態が悪 くなると腸炎や肺炎など感染症を引き起 こす心配もある。

3 飯倉洋治 ・早川浩 (編著),1991 『小児のア レルギー (改訂2版)』医歯薬出版.

同じ本のなかで,皮膚科医は, 「本症に対する根治的な治療法は存在 しない。したがって,対症療法と して の外用軟膏療法を基軸に種々の補助療法を組み合わせて皮膚炎の悪化 と反復を抑制 しなが ら,naturaloutgrow へと導 くのが治療の基本(阿南貞夫, 「ア トピー性皮膚炎」,馬場実監修, 『ア レルギーマーチの臨床』所 収,メデ ィカル レビュー社.1992,130)と述べ,小児科医は 「免疫学的に不明な点の多いア トピー性皮膚炎に おける食物抗原の関与に関 しては低年酪 特に乳児に関 してはその関与の大きいことは小児科医,皮膚科医と もにコンセ ンサスとして認めるところである(同書,赤揮晃他 「食物ア レルゲ ンとア トピー性皮膚炎」,51) としている。医師の間でも,食物重視派とスキンケア派に分かれていることは留意 してお く必要がある。 この 対立は,いいかえると,原因追究 (体質の究明)対対症療法 とい う.病気に対す る取 り組みの違いでもある.

食物重視派は,母親に食物 日誌をつけてもらい,どの食べ物が湿疹 と関連 しているかをみつけ関連のある食物 を除去する。 「体力がついて」その食物への反応がでな くなるまで,摂取を控え る対応をとる。また,"ァ ト

ピー"は対象が乳幼児であるため,食物重視派は,母乳重視派でもあるD まった くの異種蛋白である人工栄養 はとらないように,異物である離乳食の摂取はできるだけ遅 らせ,母乳をのませ る。母乳は母親の体内でつ く られるため,授乳時期をつ うじて母親 自身食事制限が必要 とされる。

5 拙論 (「医療化社会における病いをめ ぐる 「わた しの知識」の形成」,弘前大学保健管理研究133,1993) を参照。

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とが肝心 といわれている。新聞報道ではおもに食物 との関連か指摘されたこともあ り,また同 じ時 期ステロイ ド剤の副作用について も体験記か出版 された り報 じられた りしたため, 什ア トピー"の 治療イコール食事療法 と印象づけ られる結果 とな った。ア トピー性疾患実態調査によれば,妊娠中 にア トピーの原因になるといわれている卵や牛乳などの食事制限を していた母親は12%。制限 した 理由は医師か らの指示によるものは14%と少な く,残 りは育児書や仲間の 口コ ミなどによるものだ った。 このような経緯か ら,医療専門家か ら 「マスコ ミの興味本位の記事」,母親の勝手な判断」

という批判かおこなわれた。また,各種民間療法か喧伝 されてお り,その指導者の もとには多 くの 病者か集 まっているため,安易な利用を警戒する声tE6もあが っているO

このように見て くると, .'7 トピー"に関する知識は,専門家だけではな く,マス ・メデ ィア, 民間療法家など複数のチ ャンネルをとお して流布 してお り, しば しば病気‑の対応をめ ぐって鮎酷 をきた しているということができよう。

2.日本の 【ァ トピー"

けァ トピー"か これほ ど社会的に注 目され 母親の心酉己になっているのは, 日本独 自の現象 とい ってよいようである。新 聞記事検索によれば,アメ リカ合衆国の代表的な新聞であるワシン トンポ ス ト,ニ ューヨークタイムズ,

大衆紙のUSAトゥデイ,またイギ リスのタイムズでは,atopic, atopyという用語か用い られた 記事を発見す ることかできなか った7(̀1)。ア レルギーに ついても日本の各 紙 と比較す る

轟 1.各新聞におけるア トピー ・アレルギー関連記事 朝 日 毎 日 壬コ亮冗 プロ ワシントン.ポス ト 対 象 期 間1985‑19921987‑19921986‑1992 1983‑1992 ア トピ‑ 224 57 56 0

と非常に控えめである。また,一般化できるかは不 明であるか,筆者は全米最大手のパ ソコン通信 ネ ッ トワーク compuservehealthファーラムにおいて,ア トピーについての情報を募 ったところ, 知 っているとい う返事は皆無で,かわ りに 「アメ リカでは,子 どものエイズの問題か一番重要だ。

なぜ 日本でそのような (軽い)病気か話題や心配の種になるのか」 という返答が寄せ られた。西洋 諸国でももちろん 「ア トピー性皮膚炎」は存在するが,母親の一般的な関心をひ くほど注 目されて はいない

また, 什ア トピー"の特色のひとつは,病者 自身か症状を訴えるわけではないことにある.病者 は言語表現のできない乳幼児であるか ら,母親か湿疹の推移を観察 し撞痔感を推 し量 り,対応をと るOつま り,母業削ま病いの当人ではな く,観察者 と して治療に参加す るO症状の認知 ・治療 ・対応 を方向づけるうえで,母親の態度や価値観,母親をとりま く社会的環境の重みははか りしれない。

したが って, 日本の Rァ トピー"を考えるためには,子供の健康や育児につ いての母親の考え方の

荘 6 たとえば, 「民間療法はどこまで信用できるか上 庄司昭伸,毎日ライフ19937月号,毎日新聞社

荘7 1にはワシントン・・ポス トだけを載せている.新聞記事の検索は,商用パソコン通信,NiftyServeを利 用した。

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文化的 ・社会的特色を考慮に入れなければな らないだろう。

ところで, ここまで 【ァ トピー" とっさで記述 してきたのは,次のような理由か らであるQ

【ァ トピー"は,医学的に見ると,病因は多園的,個別的な傾向か強いO このような痛いはおかれ る文脈 によってさまざまな意味の拡か りをもつ o湿疹 (皮膚炎)かある,かゆみかあるというのか まずア トピーの共通項である ところか現実の 【ァ トピー"は,医学的な診断基準を越えて,湿疹 はあるがかゆみかない子供,湿疹がな くな った子供 さえも含んでいるが実態である。つま り,母親 か 【ァ トピー" と考え,対応 しているのか, 什ア トピー"なのであるOそこには,医師による診断 を うけた "ァ トピー" も,母弟が独 自に判断 した "ァ トピー" も,民間の治療者か判断 した 【ァ ト ピー" もふ くまれることになるO 以後,社会的現象 としての "ァ トピー"を単にア トピ‑ と記す こ とに し,医学的な "ァ トピー"をア トピー性皮膚炎 とよぶ ことにす るQ もっとも,いま社会的な現 象 と してのア トピーと医学的な診断を うけたア トピーとか別 々のものであるかのように記述 したか, 両者に本質的な差異はない。医師による診断,母額の判断,民間治療者の断定,これ らは病気への 対処過程での とりあえずの リア リテ ィを構成するための素材であるという点では同 じなのである。

Ⅲ.課題 と枠組

ア トピーのような原因 ・治療法か確立 していない痛いの場合,病者 とその家族はとりあえずの解 決をめざ してさまざまなエージェン トに頼 ることになる多元的な治療資源か存在する台湾で, ど のような対処行動か選択 され,どのような治療かお こなわれているのかを調査 したのか,医療人類 学者 クライマ ン法8であるO ここでは,クライマ ンを手かか りに,本論で依拠す る枠組を明 らかに し た い。

1.クライマンの主要概念

まず, クライマ ンの主要概念である,ヘルス ・ケア ・システム,臨床 リア リテ ィ,説明モデルを 紹介 し,検討を加えてみよう。

ヘルス ・ケア ・システムは,病気に関連 した社会的な諸要素を統合す る文化 システムである こには, 「病気の原因をめ ぐる信念のパター ン,治療法の選択や評価を支配 している規範,さらに 社会的に是認 された地位,役割,権力関係,相互作用場面,諸制度(25)か含まれている クラ イマンは地域のヘルス ・ケア ・システムを,民間セクター,専門職セクター,民俗セクターの3 か複合 したシステムと考え,人 々がそれぞれの領域のエージェン トとの相互作用のなかで, 自らの 病気を同定 し意味づけ対処 している実態をあさらかに している(図2)Qわれわれは,病気への対応 を通 じてヘルス ・ケア ・システムを構成 し,また構成 されたヘルス ・ケア ・システムのなかで病気 への対応 を果た しているのである ヘルス ・ケア ・システムは,医療民族誌の構成を通 じて 「特定 のヘルス ・ケア ・システムのなかで人びとが どのように行動 し,そのシステムの構成要素をどのよ

注 a r臨床人類学一文化のなかの病者 と治療 , 大橋英寿他乱 弘文堂,1992年.文中の引用は図も含めて すべて訳書か らである。引用は」でかこみ, ( )内の数字はページ数を表す。

‑60‑

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うに利用 しているのかを研 究す」 (27)ることで得 ら れ る

社会的 リア リテ ィの うち の 「健康 にかかわ る側面, とりわけ病気 についての態 度や規範,臨床の場面での 人間関係,治療活動(41) 臨床 リア リテ ィである 床 リア リテ ィは,先の3 のセクターを構成す るさま ざまな治療者 との交渉を通 して形成 され る。交渉の現 場 こそか この種の リア リテ ィの形成の重要 な瞬間なの である。治療者 と病者の 間 でや りと りされ るのは,読 明モデル (別)とよばれ,

専Fll稚セ クターと民俗セクターか 一部重 な って いるか どうか は地域l の事情で異な るQ

民間 セクター : a.個人 に拠 る b.家族に拠 る C,社会関係 に拠 る d.地竣社会 に拠 る

2.地域のヘルス ・ケア ・システムーその内部構造 ‑

「臨床過程 にかかわ る人すべてかそれぞれにいだいている病気エ ピソー ドとその治療についての考 」(114)であ り,病気やヘルス ・ケアについての一般的信念 とは違 って特定の病気エ ピソー ドに応 じて まとめあげ られ る。ENには.病い体験を表現す るための病気 ラベル と文化的イデ ィオ ム(用語 ), メタフ ァー,病因論か含 まれている。臨床 リア リテ ィは,専門的な治療者 との直接的な相互作用で形 成 される.臨床場面では,患者 と治療者か互いのEKをや りとりす る。EXのや りとりの結果,患者 と医 者,両者のモデルをあわせ もつモデル,患者独 自のゆがみかあるモデル,患者独 自のモデルか医学 モデルかのいずれか一方,あるいは全 く新 しいモデルな ど多彩なモデルか産 出される(図3)0

民衆文化 EM

家族のEM EM.

民間のEMの決定要因(社会階層.

民族性.宗乱 鼓育.畿美.

ヘルス .ケアの過去麓験など)

専門噴 EM (現代的EM.土着的EM.

民族的EM)

(' と

治療者のEM EM.. (理論的)

7‑1 バック

MEl .,E

MIEM

E

圧床塘面でのコ ミュニケーション

治療者0)EM 説明モデルくEM)帰結

EM,[+EMH.あるいはEM..>EM.;.EM..<EM".

あるいはEM,I.EM.,のみ あるいはEM.(新たなEM)

\ \ 、 丁 二 一 ・

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\ 一 、

I,:{ i /P

EM

・VE!・←EI}E

M‥ (珪床的) ンEM.

(病者との交流による 治療者のEMの変化)

3.治療者‑病者関係における説明モデルEM)間の 相互作用のダイナ ミックス

(8)

ク ライ マ ンか 重 視 す るの は , 治 療 場 面 で のの や り と りで あ る。 そ れ は対 話 に も とづ く検 討 で あ o しか し,実 際 の と こ ろ,理 論 的 検 討 は専 門家 と西 洋 医 で あ る ク ライ マ ンとの 間 で は しば しば お こ な わ れ た が ・ 患 者 と治 療 者 の 間で は め った に お こな わ れ て い な いOまた,対 処 過 程 は さ ま ざ ま な ラベ

1.身体化 ‑ラー に よ る ラベ リ

豊 吉JOtrqL竺 : 芸芸誓 言孟誓 言鑑 三jot芸這苧霊芝芳志三豊 oI孟宗霊室芸芸三言三三。 ング過 程 と して継 時 的 に把 握 され ,

ラ‑ ベ ル 病 因の帰 属 治療 の選 択 治 療結 果 の評価 者 ‑ 熟/袷の不‑ 一 差諾 霊遥嘉ヂ一 望賢 しto症状は変

家庭治療(食事

族 一 虚軒 ‑ 豊丘詣 畠ない一 芸芸去豊富禦;一 望誓書Lto症状は変 ッサージ・売薬)

薬草店で、土地

の特別な薬草を 効果なし。西洋医に 族→ ̀虚弱"‑→ 熱/冷の不均衡→ 処方 して もら→ かかることに家族が

う。家庭凍法も 決断。

推泉。

効果なし。 2回通 っ 西洋医1 炎→ 菌→ 抗生物質の注射→ たあと、家族が医者

を替える。

効果なし。発疹が出 たので、家族は注射 国医への依存を家族 が決断。

ビタミンと造血

lVJヽヽ宍lJL:;dht⊥Z) 西洋医2 神‑ 弱‑ 豊丘冨芸孟ない一 芸告諾 完孟芸‑ が原配 考えた。中R司rE̲^LJ一Jレ■..

隠/脚 の不均

中 国 医→ 神蓮衰弱→ 衝・†五度Iの横→ 能的不調和

効果なし。週1‑2 回の治療を1か月つ 薬→ づけたが、症状は変 わ らない。家族は占 い師へ連れて行った。

3度通 ったあと、家 族は、一家の運命は 好転させたかもしれ かないと判断。私の 勧めで、本人か精神 科へ出向いた。

占 い 師→

運→ 祖先が犯 した罪→ 壷壷遠いの儀礼→ ないが、病気には効⊥.l̲tヽLrJILLrl 1∫〈

タンキーによる

病者の家系のせ 抗菅剤の投与お

身体化を 病歴による遭伝 よぴソー シャ 効果あり。症状は消

qrTILJL JrTII‑ヽJヽVで‑1 T

精神科医→ ともなう‑→ 的負囲および夫→ ル ・ワーカーに→ 失iLll聖空ヱ享子学 った感 じがする」と 自己報告。

婦間・家庭内の よる夫婦関係の ストレス カウンセリング

4.台 湾 入 の健康 希 求 過 程 (3ケー ス 中 の1例 )

効 果 が あ った か ど うか か 関 心 の 的 で あ る (図4)。 ラ ベ リングの 過 程 で , わ れ わ れ は あ た か も玉 突 の 球 の よ う に さま ざ ま なエ ー ジ ェ ン トに お もむ き ラベ ル を も らい 効 果 か あ る まで 遍 歴 を お こな う。 治 療 法 は と りあ げ ら れ て い るか , 他 の 方 法 と比 べ て 効 果 か あ った か ど うか に焦 点 か あ て られ て いて . 説 明 モ デ ル と治 療 法 (処 方 ) との 関連 には 関心 か 薄 い よ うで あ る。

印象 的 な の は , 臨床 場 面 と対 処 過 荏 ( 「健 康 希 求 過 程 」 ) に共 通 して み られ る図式 性 で あ る。 臨 床 場 面 の 図 式 性 は2つ の源 泉 を もつ 。 ひ とつ は 「説 明 モ デ ル 」 の 図式 性 で あ るo た とえ ば , 熱一 冷 理 論 に よ って 熱 か 足 りな い と して , ス ー プ を 処 方 した 中国 医 は ・ その 診 断 を下 す まで に よ り複 雑 な知 識 を 必 要 と した はず で あ るO しか し, そ こ で 伝 達 され た の は , せ いぜ い病 気 や 病 因 につ い て の 【中心 的 イ メ ー ジ" とい うべ き ほ どの もの で , 普 通 は 断 片 的 な知 識 で あ るo 形 式 的 な理 論 の 融 合 ・変 形 で あ れ ば ・ 一 種 の シ ンク レテ ィズ ム と して

6 2

(9)

理解可能であるoたとえば,藻方を西洋医学で理解するという試みかそれにあたる注90 しか し,わ れわれは学者ではない。 クライマ ン自身 「一般人のいだいている説明モデルの特徴は,む しろ,啄 味さ,意味の多義性,融通無碍,そ して観念 と経験の境界の不明確 さである(117)といい,治療者 の説明モデルにも理論的なタイプと臨床的なタイプかあ り,後者は科学的説明モデル とは異なるとい

う (118119)。また,や りとりは明示されるよ り,暗黙の部分か多いという 。ではや りとりされる のは何だろうか。

図式性のもうひとつの源は,臨床場面を社会的文脈か ら切 り離 して理解 している点,臨床場面の 脱社会化 にある。臨床場面は,説明モデルの合成がおこなわれる実験室ではない。治療者 と病者は 平等な立場でバーゲニ ングをおこな っているのではない。臨床場面を口実に,入院を命 じる医師, 湊方をすすめる薬草売 り,先祖供養 をおこなう民間治療者は,それぞれの仕方で病気についての現 実を実現 しようとする。臨床場面はそれ ら勢力の闘争の場とみるのか適切である。たとえば,入院 はわれわれの 日常生活を全面的に闘病生活へ変えるや り方であ り,われわれはそこに現代医療の現 実操作の手腕をは っき り理解することかできる。クライマンか実践を軽視 したのは,臨床場面をた んなるモデルのや りとりと考えたことを表 している実践は説明モデルをいかに実現 させ るか とい う,説明モデルを発す るエージェン トかもっている病者の 日常生活に対する姿勢を表す。働きかけ の姿勢の違いは,説明モデルの 【思想的"違いよりはるかに大き く,それは同時に,背景 となって いる社会的制度 との関連を示すのである。

対処過程の図式性は,効果の有無 ・回復 したか どうか という評価によって過程か進展す るように 措かれている点による 治療のエージェン トによっては他のエージェン トへの関与を禁 じる力を行 使す ることもある。つま りある治療を選択することによって次の対処過程か影響を うける点が見落 とされている。 これは,前述の脱社会化 と同 じ傾向である。また,対処過程のモデルでは,原因の 帰属‑治療‑実際の効果 という結 びつきか重視 され,その場その場の効果で病者か一喜一憂 してい るかのように措かれている。 しか し,われわれは対処過程全体を傭轍す る視点もあわせ もつ どう や らクライマ ンは, 「細菌」による説明も 「祖先の犯 した罪」による説明もおな じ問いに対する答 えと考えているようである.両者はそれぞれ 「どうして(how), 「なぜ(why)への答えであ り,後者は個 々b蓮韓を超えて病気エ ピソー ド全体の色合いを決定す るもので,対処過程では病者 とは異なる意味をもつはずである。対処過程では実際に症状か消えた り病気 自体か治 った りす るこ とことか重要なのはいうまでもない。 しか し,われわれは,必ず しも症状か消えたか ら治 ったと考 えるわけでもな く,症状かあ っても治 ったとみなす ことさえある。われわれか病気のエ ピソー ドを 日常化す るにあた っては. 病気および対処過程のエ ピソー ド全体を意味づけることの大事 さを認識 す る必要かある。 この認識は,先に指摘 した 「説明モデル」の図式性に関連する。すなわち, クラ イマンか臨床場面でや りとりされ る 「説明モデル」 として主に想定 していたのは,実体的理論 とし て提示可能な 「どのように」原因であったといえる

したが って,われわれは,対処過程を社会的制度か浸透す る場 と考えること,分析的に抽象 され る理論やその場その場の意味けだけではな く,対処過程全体の 【説明モデル"を分析の対象 とす ることを要請 されるのである。われわれは,病者の 日常生活を中心に病い体験の構成を検討す るこ

9 細谷英吉 r漢方の科学」,講談社 (プル‑バ ックス),1992年.

(10)

とに導かれることになる。

2.本論 の枠範

病 いへの対処過程を社会的制度の浸透の場 と考え るうえで, クライマ ンの依拠す るバ ーガーは重 要な示唆をあたえて くれ る。

1) 「翻訳」 と 「波及」

病 いを体験す る個人 ・当事者側か ら見れば,病気体験か非 日常的であるとすれば,手 当 ・治療な ど病気をめ ぐる諸経験 もまた非 日常的世界の 出来事 である。つ ま りシュッツのい う 「限定 された意 味領域」注10(4041)での ことである。個人の側か ら見れば,臨床 リア リテ ィは この 「限定 された意 味領域」 と して現れ る。 日常生活の リア リテ ィの至上性は 「限定 された意味領域」‑の跳躍にもか かわ らず,揺 る ぐことがない。とはいえ 「非 日常的経験を 日常生活の至上の現実のなか‑ <翻訳 > し なおす」注目 (43‑44)ことかは じまる。

この過程は,ときに無意識の うちに,日常生活の現実を全面 的に変えて しま うことかある。家庭内 に予定を記入す るホ ワイ トボー ドか設置 されるのは,官僚制度 についての意識構造が 日常生活 に持 ち込 まれた結果であ る。仕事にたいす る意識構造が休息であ る食事 にまで及んで, ビジネスラ ンチ とい う形式の食事荘 12(122)が生 まれる。 この ように 「意識の構造がその本来の制度的担 い手か ら 他の文脈へ伝播拡散す ること」荘13(16)を 「波及」 とい う。 われわれの関心にとって重要なのは,

「医療化」荘 14である. それは以下の 2つの側面 をもっているといわれ る.ひとつの側面は,「専門 家の権力が生活の広範な領域 にと くに逸脱行動 に広が ってい くこと。宗教 ・法律の専門家やそれ ら が もって いた社会的統制の様式にとってかわ ってい く」過程で,それには特権を擁護 し,技術的な 事柄を越えて専門性 を一般化す る専門職集 団の傾向か関わ っている。 もう一つは,健康 と病気 とい う概念によって伝達 され る社会的現象の範囲か拡張す る過程で, とくに医学的な物の見方が 日常生 活に浸透す ることであるたとえば,病気の予防とい う概念か飲食,仕事,余 暇の一般的な規準に な って しま うとい うことがあげ られ る。 「医療化」 こそ 日常生活‑の 「波及」の好例であ る。現代 社会 における病 いへの対処過程は このような 「波及」の場 と考え うる側面を もっている つま り, われわれか翻訳 とい う意識的な 日常化をおこな う間もな く,現実 についてのある翻訳が浸透 して し ま うことも生 じるのであ る。む しろ医療化社会にいるわれわれは, ご く自然 に医療制度の提示す る 翻訳を受 け入れ,病 いを体験 しているようにみえる。 しか し,病気 には,な った著 しかわか らない

荘10シュッツ,rアルフレッド・シュッツ著作集 第2」,渡部光他乱 マルジュ社.1985年 .

バーガー,ルックマン,r日常生活の構成‑アイデンティティと社会の弁証法J,山口節郎訳,新曜社, 1980年.

荘12 バル ト, 「現代における食品摂取の社会心理学のために」,r物語の構造分析」,花輪光軋 みすず書 房,1992 (12刷).

荘13 バーガー,P,バーガー,B,ケルナ‑,r故郷喪失者近代化と日常意識」,高山真知子他訳,新曜杜 1980年.

荘14 cravford,R.1980Healthis皿andtheXedicalizationofEverydayLife.InternationalJoumalof HealthServices.Vol.10.No.3,367.

‑64‑

(11)

朝訳を受 け入れ,病 いを体験 しているようにみえる しか し,病気には,な った者 しかわか らない という私的な部分かある。この私的な体験 と公的な体験の間をうめるべ く,対処行動か とられる

対処行動は 「翻訳」 と 「波及」のせめぎあいなのであるO後 にわれわれはせめぎあいの実際を沖縄 の例 にみることになる。

ところで,この 「波及」の担い手 とはどのようなものだろう ここまで,筆者は便宜的に,それ ぞれのセクターのエージェン トをそれと して話をすすめてきた。 しか し, 「波及」は,眼に見える 特定の個人や行為者か らのみ生 じるものではないことに留意す る必要かある たとえば,1か月検 諺,3歳 時検診などの保健行政や学校教育などか らのファーマルな働きかけはいうまでもな く, 日

々のマス ・メデ ィアか らの情報,うわ さ,世間話などイ ンファーマルな働きかけにが考え られるOこ のような視点か らの研究は,デ ィスコース研究とよばれる領域でおこなわれている。ヤ ング注15は, 社会的に重要な事実や意味か形成 され,価値づけ られ 流通 し,蓄え られる過程をイデオ ロギー, そ していまや社会的に重要な行為を個人か選択するのに影響を与えるべ く特定の個人の意識に入 っ た事実や意識をイデオロギー的な知識とよび,イデオロギー的知識を特定の方向に抽象化 ・統合 し たものをデ ィスコース注16として,知識の形成過程を整理 している デ ィスコースは,内部的には矛 盾 ・対立 しなか らも,特定のイデオ ロギー的知識の妥当性を支え続ける デ ィスコース研究のため には, 「その人にか くか くしか じかのことを言わせ, ・・・その発言の内容を蓄積 し流通 させ る制 度」注17(3)の解明か必要とされる これは,単なる具体的で 目に見える相互作用に還元 されえな い構造的関係を把握 しなければな らないことを意味する しか し,広大な 日常生活に働 きかける面 のデ ィスコースをとらえ る術かみつかるまで,当面,われわれは主要なエー ジェン トか らの眼に見 える働きかけを主 に点の把握をめざす。

2)「いかに」 と 「なぜ」

大橋 ら注18は,沖縄の精神病院での調査で,入院患者の多 くか家族や親族 ぐるみでシャーマニズム による信仰治療に依存 してお り,入院中であ りなが ら,現代医療をまった く頼 りにせず信仰治療の みに依存 している病者 さえいることを兄いだ した。調査結果は, 「波及」か一方向的な過程ではな く,現代医療 という制度 と伝統医療が提示す る 「翻訳」をめ ぐって病者 とその家族が主体 的な 「 訳」の過程一少な くとも主体的な選択一 に関与することを示 している つま り,病気に際 して,わ れわれは複数の 「翻訳」を参照 している。病者 とその家族は現代医療の 「翻訳」のどこに物足 りな さを感 じているのだろうか 大橋 らは現代精神医療 と伝統的シャーマニズムとを表 2に対比 してい ここで重要なのは病気の意味づけ (病因論)である。 「なぜ よりによって病気にな ったのか」

を知 り,その意味を 「祖先か ら選ばれたため」 とい った外在 的な要因に帰属 し病気の意味をプラス へ と転換する論理が ジャーマニズムにはある。それに対 して現代医学は病気の経過を示 し,最終的 には病者個人へ と責任を帰属する 伝統医療は 「なぜ(why)にこたえ,現代医学 「いかに ・どう

15 young,A.1983RethinkingIdeology InternationalJoumalofHealthServices,Yol.13,No.2

削 6 young,A.前掲書.

17 マク ドネル, Fディスク‑ルの理論』,里麻静夫乱 新曜払 1990年.

18 大橋芙寿 ・作道信介 ・堀毛裕子, 「二重治療システムをめぐる病者と家族の対処行動‑シャーマニズムと 精神医療の機能関連」,社会心理学研究,1985年,第1巻 1号,1524.

(12)

義2.両治療 システムの対照比較

シャーマニズム 現 代柵神 医学 事例性への感度 (円債) 鈍い (い) 執 、(低い)

心理的距離 近い 遠い

生活世界との関係 連 続 非連 続

病因の説明 ・帰属

足 自然的 W hyに答える 歴史関連的 外 在化

の場 I1還 ≡L:与 i

治‑ 修復 1

agent間の関係,役割 l一非粗放的 I.付 随的

自然的 Howに答える 機能関連的

内在 化 施設中心 拘束的 親 族か らの分離 心身的 技術 的 疾患の除去

「姐紙的 1専門的 相手 システ 容 認 黙認

文化 との関係 culture‑bound culture‑free(?)

し て 」 (how)に 答 え る と い わ れ る . 2 つ の 病 因 論 は 大 橋 ら か そ う で あ る よ う に し ば し ば 伝 統 医 学 と 現 代 医 学 の 違 い と し て 対 比 し て 用 い ら れ る琵 19。 そ し て ,こ の 現 代 社 会 に お い て も 病 者 と そ の 家 族 か シ ャ ー マ ニ ズ ム に 依 存 す る 理 由 の ひ と つ と し て あ げ ら れ る の で あ る 。

浜 本 琵20に よ れ ば も と も と 「い か に ・ど う し て 」 原 因 と 「な ぜ 」原 因 か 別 々 に 存 在 す る わ け で は な い 。 浜 本 は , わ れ わ れ か 出 来 事 の 原 因 を 語 る さ い 用 い る 奇 妙 な 説 明 , た と え ば 「つ き がな か っ た か ら 」 と い う 説 明 に 着 目 し て い る 。 ふ つ う ,出 来 事 の 原 園 と し て 語 ら れ る の は , つ ね に 出 来 事 の 経緯 (い か に ・ ど う し て ) と し て語 ら れ る も の で あ る 。 し し , わ れ わ れ は , 場 合 に よ っ 「つ き 」 の よ う な 出 来 事 の 経 緯 と し て は 語 り得 な い も の を 「原 因 」 指 定 (吃 ぜ ) し て し ま う 。 れ は 「出 来 事 の 経 緯 そ の も の の 個 別 性 , 独 特 性 ,異 常性 を 他 の 可 能 な 事 の 成 り ゆ き と 対 比 さ せ る こと に よ っ て き わ だ た せ る 」 表 情 を 示 す の だ と い う 。 出 来 事 の纏 韓 の 「物 象 化 」 と い え る 。 し た が っ て, 「な ぜ 」 と 「ど う し て 」 の 問 い に 対 応 し た 2 つ の 原 因 が あ る わけ で は な い 。

「ふ つ う , 人 は 「い かに 」 の 問 い で 物 語 り , 「な ぜ 」 の 問 い を 通 じ て 人 々 を そ の 物 語 に い ざ な (90)。 シ ャ ー マ ニ ズ ムと 現 代 精 神 医 寮 に つ い て い え ば , 前 者 か こ と さ ら 病 気 エ ピ ソ ー ド の特 異 性 を 指 摘 し , 「物 象 化 」 す るこ と で 日 常 化 し よ う と す る の に , 後 者 は , エ ピ ソ ー ド の 物象化 」 を 拒 み , 少 な く と も 表 面 上 は 偽 装 し て 非 人 称 に 事 実 の 経 緯 だ け を 述 べ る こ と で 日常 化 を はかると い う こ と で あ ろ う 。 つ ま り , 病 気 の ピ ソ ー ド を 非 人 称 化 し て , 非 常 に 一般 的 な見 地 か ら語ろうとす る 。 現 代 医 療 の よ う な 制 度 は , 出事 の経 過 を 語 こ とで 「原 因」 を指摘 した とす る。 「なぜ」 ・ 「ど う

し て 」 原 因 を備 え た 日常 の語 りと比べれば,これ は かな り異 常 な こ とで あ る。 このような 異 常 な 説

明 を 可 能 にす る には , わ れ わ れ と世 界との間 に特 殊 な関係 を 強 要 しな けれ ば成 立 しない。 つ ま り,

制 度 の 働 きか け を分 析 す るた め に は,指定され るわ れわ れ と世 界 との 関係 の違 いを握 す る必 要 か

あ る 。

次 に , 制 度 や エ ー ジ ェ ン トか らの働きかけ は , どのよ うに お こなわ れ るの か , 「説明モ デ ル 」 と

し て 適切 な もの は何 か につ いて検 討 してみた い 。

19 たとえば, フォスター,アンダーソン,『医療人類 .中川米造監訳, リブロポー ト,1987年.

20 「不幸の 出来事一不幸の語 りにおける「原因」と 「非 ・原因」 . 「異文化の解読」,吉田禎書(蘇),平河 出版,1989年.

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表 3. 「引 き 算」 表 過 剰 (プ ラ ス ) 除 去 (マイナス) 手 を 加 え な い(プラス .マイナス) 環 境 い じめ,登校拒否,校則,環境汚染,原発,酸性雨, 外遊び, の びのび,がさ大 森林破壊,オゾン層 .熱雨林の破艶 飽食の時代 帯 将,故郷,虫採り ラ イ フ

参照

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