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礫 床 河 川 の 粗 度 と ゼ ロ 面 修 正 量

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長野工業高等専門学校紀要 ・第18(1987) 115

礫 床 河 川 の 粗 度 と ゼ ロ 面 修 正 量

松 岡 保 正*

The velocity profiles over a gravel river bed Yasumasa MATSUOKA

Themonin・Qbukhov typevelocity pro丘lesoveragravelriver bed are repre・

sentedbythelogarithmiclaw,i.e., 請 ln ,

where〟,U*,Zo,andZlhavetheirusualmeaningsrespectively. Zliscalledthe zerodisplacementordisplacementheigh t(by analogytotheconceptofthedispla‑

cementthicknessinboundarylayertheory). Zoiscalledtheroughnessparameter, roughnesslength,orsimplyroughness.

Whenthisformulaisappliedtotheverticalvelocity pro丘1esina・river,apreli・

minaryestimationofthevalueofthosefactorsbecomesnecessary.

Inthispaper,theyareestimated from theobservationdata,andtheadvantage ofusingthisformulaisalsoshown.

1. ま え が

戦後の我が国に於ける水害の変遷をみ ると,19599月の伊勢湾台風に至 るまでの15年間 紘,破堤を伴 う壊滅的な災害が主体であった.その後は大型台風 も以前程来襲せず,国力の 回復 と共に治水水準 も徐々に向上 した.1960年代後半 よ りの高度経済成長に伴 う人 口の都市 集中 と,その結果 としての都市周辺での大規模且つ急敢な開発は,水害の形を大 きく変 えた.

その代表的なものは内水災書であるが,流出率の増大や流出の早期化に伴い,多 くの河川で 洪水流量の再検討が行なわれている.流域の土地利用環境に着 日す ると,以前は湿地或いは 水田 として利用 していた所を,宅地或いは工業用地 として利用す る様に変 って来てお り,安 全且つ合理的,経済的な総合治水対策を講 じるためには,流れを高精度で把握す る必要が有

る.

河川における平均流速公式 としては,Manningの式に代表 される半実験的な ものが;長 い歴史を重ねているが,山地の中小河川等ではこれを凌駕す る様なものは現在の ところ無い.

実験水路に於いては,我が国では足立1)の表面粗度に関す る一連の研究に代表 され る様に, 数多 くの研究者によ り様 々の角皮か ら検討されている. また,直接に流速分布を扱 ってい る

* 土木工学科 助教授 原稿受付 昭和629月29

(2)

116 松 ・同 株 正

わけでは無いが,宇民 ・上野2)らの可視化法による大スケ‑ル乱れの研究は,開水路流れの 物理的イメージと乱れの理論を結びつける上での,大 きな可能性を示 している.

本文では,千曲川或高 ま犀川 クラスの実河川に於ける鉛直方向流速分布について,近年の 乱流研究の成果を活か しつつ,物理的イメージのより明瞭な理論式を適用 し,粗度の特性量 を評価する.また,現地河川に適用する際の問題点についても言及する.

2.平 均 流 速 分 布

平均流速分布 としては,粗度要素の大 きい場合のMonin・Obkhov式を適用する3). 固定 床水路の場合 とは異な り,移動床それ も実河川に於いては,高い精度で河床を特定するのは 大変に難 しい.平均河床をどうす るかは別の機会に譲 り,砂横河床上の鉛直方向平均流速分 布を模式的に図1に示す.Monin・Obkhov式は

‑妄 ln筈 ・・・・・・・・・・・‑・‑・・・‑(1)

で表わされる.Zoま平均流速分布に 対数則を適用 した場合に平均流速が Oになる様な水理学由な基準面,請 ゆるゼロ面か らの高さで,粗度のパ

ラメ.Tタ或いは単に匹度 と呼ばれる・

Zlはゼロ面修正量を表れ している。

ロ(Z)は河床か らZの位置に於ける 時間平均流速,U*は摩擦速度,K はカルマン定数を表わ している.

良 く知 られているManningの式

紘(2)式で表わされる.更に,砂粒相 図l 砂授河床上の流速分布 当粗度をk8として対数分布別を適用 したものが(3)式である.

O‑nRili‑・:‑・:∴・:・・(2)

普 請 .ln意 ・・・・・・.‑・・・・・・・・i・・・・‑‑(3)

(2)式に於いてUは断面平均流速,Ⅰは水面勾配,Rは径深で川幅が水深Hと比較 して十分大 きい場合には,近似的に水深Hとする.(3)式に於い七摩擦速度U*は,重力加速度gとして U*‑ノ亘戻Tで求める.

、.平均流速式 としてほ上記のものについて .検討するが, ここで,平均流速分布の形成 について,.模式図を混えてその概念を要約 しておく.1河川乱流場に於ける平均流速分 布61形成プ盲右京lb概略iLtら(,I‑t圧奈越4)

r= ㌻

が易 しく解説 しているが,鉛直流速分布を示 した ものが図2,渦管の断面を示 したものが図

(3)

瞭床河川の粗度とゼロ面修正量 3である.図 2に於いて,河床近傍に生 じ

た平均流の歪 (ツアー)が増大するにつれ 渦度 も増加 し,遂にはそれがカルマ ソ渦 と して一定速度で放出され,歪が解消 された 状態を示 しているのが‑の右辺最初 の図で ある. こうして,歪 の大 きい河床近傍では 常に渦管が生成放出されている.放 出され

̲耳‑ 一軍一一

一一

′′′//′/ ′//////I

図3 河床からの渦の生成

た渦管は水面に向って移動 し,やがて消滅するとい うプロセスを繰 P返す・渦管は上昇に際 して湧昇流を発生させ るため,渦管 自体の断面積は小さ くなっても平均流速を減少 させ る影 響範囲は広がる.図3ではそれを太 い白抜 きの欠印で表わ した. こ うした渦管の生成,政 弘 伸長 (上昇),消滅 とい う一連のプロセスが幾つ も繰 り返 され,それ らの平均的な結果 として 対数分布が形成 され ると考えるわけである.実際には,それは3次元的に行なわれ る為, ち

っと複雑な過程を伴 っているが,その検討は別の機会に譲 る.

3.現 地 観 測

現地観測は,長野市内の千曲川及び犀川に於いて行なった・観測埠点を図4こ示す.

A地点の水面幅は約90mで,上流部 より水面幅が狭 くなってお り,勾配 も他ゐ 2地点 よ り は急で,流速が大 きい. 河床は20cm

内外の礁及び砂が厚 く,掘れ易い.求 面では大小強弱無数のボイルが間断無 く発生 し,速い速度で流下 している.

B地点の水面幅は約100mであ り,水 深は深い所でも1m以下の為,徒歩で の渡河が可能な断面形状を している.

河床はA地点同様20cm内外の蝶か ら 成っているが,掘れ易 くは無い.

C地点は3地点の中で も最 も勾配が 緩やかである.水面幅は約110mで, 河床は10cm内外の磯か ら成っている。

硬の表面はB地点同様に,かな り滑 り 易い.水面は静かで,ボイルは弱 く小

さい.水深はB地点同様に深い所で も 1m内外で,徒歩での渡河が可能な断 面形状をしている.

前述のように,平均流速の対数分布 形成の主役が河床近傍で生成されるカ ルマン渦であるとすれば,対数剤を適 用する場合その事を考慮に入れ る必要 が有る.そ こで,鉛直流速分布 の測定

4 観 測 地 点

図5 水面のボイル列

(4)

118 岡 保

l羊,そ うしたカルマソ渦が水面に達 して生 じさせ るボイルの,普遍的に観察され る所 で行な う事に した.そのイメージを図5に示す.

流速変動の測定は,計測技研製のVM 201とアレック電子製のACM‑200P 2台を用いて 行なった.河道内に設置する為,外径25mmの鋼管をポール クラソプで固定 した専用取付台 を作成 した.

観測時間については,最大乱子の発想か らすると,それが10個程度通過す る時間以上 と言 う事で,各水深15分か ら25分の間で行なった.電磁流速計か らのアナ ログ出力は,テ ィアッ ク製R210Bに収録 した.

4.

現地観測に よって得 られた3地点の平均流速分布の うちの代表的なものを図6に示す.(1) 式 の適用に当って,平滑化された流速分布を設定する際に,最大流速点の降下位置や個々の 粗度要素の効果が一様になる高さ等については,細かい検討を行なっていない. これ までの スべ ク t/レ解析で‑5/3乗別が普遍的に成立 していると見供され る範囲で設定 した.

1 3地点の粗度諸元

÷ 0 OO Blも eAlO

elC,J

U(I) (CA/See) 6 3地点の平均流速分布

AlA地点の岸か ら6mのもの,BlはB地点の岸か ら9mのもの,ClはC地点の岸か ら 10mのものである.単位は,Manningの粗度係数nのみがMKSで算定 されてお り,他は CGSで表わされている.表1中のU*は,(1)式 を適用 して 平滑化された流速分布か ら求め

られた ものである.砂粒相当皮 ksは U*をノ亘豆Fで計算 し,(3)式を適用 して求めた.

水面勾配 Ⅰについては計画洪水時の勾配 と相互 の比較か ら定めているため,多少の誤差が 含 まれている.

(5)

棟床河川の粗度とゼロ面修正量 119 表中のZlについて余 り厳密な検討を加 える意味は少ない.移動床,それ も実河川に於 い ては河床を厳密に特定す るのが難 しい事 と,Zlが河朱か ら流速分布の変曲点までの高 さであ る事がその理由である.U*については同様の河床材料の場合 (本文では硬床),平均流速が 大 きい とU* も大 きくなる慣向が出ている.反面Zoについてみると,その道の傾向が伺 え る. ここで言 う流速が大 きい事が,勾配 Ⅰが大 きいのか,流量Qが大 きいのかは, これだけ の観測か らは決め られない.C地点のksが飛び抜けて大 きな値 となっている.確かにZoも AlとClでは5倍 となってお り,緩勾配低流速の流れのほ うが粗度が大 きく効いて くる傾 向は同 じであるが,27倍強にもなっているのは基準面の位置が妥当でない為であると思われ る.また,水面勾配 Ⅰを精度良 く求める事はかな り難 しく,(3)式の適用に当っては注意を要 す る.

実河川に於ける鉛直流速 分布の測定を,本研究での 様な方法で行な うとす ると, 設置可能な場所或いは水深

が限 られる.川岸か ら離れ る距離に限度が有 る為,鶴 測位置選定には前述のボイ ルに注意 しなが ら,できる だけ川岸の効果の小 さな所 まで出て行 く事になる.計

(Jy3

)Z

g oo

. .

08 0

O o

O

+ 0 0rl4

0 0 ○ 0 083

O O() T12

(Z5 0 0 81

100

7 B地点の鉛直流速分布

U(Z)(cp/scc)

算に用い られ る勾配 Ⅰや河

床材料の粒径は,川岸か ら離れても変 らないが,平均流速は確実に増加す る.そ うした川岸 の効果 (純粋にそれだけでは無いが)に着 目した観測結果を図7に示す.

Bl,B2,B3,B4はそれぞれ岸か ら9m,7m,5m,4m地点の観測結果を表わ している.

水平方向の流速分布を考えた場合,川岸に近 くなる程平均流速は小さ くな り,摩擦速度 U*も小さくなって くる.川岸の効果は想像以上で.この傾向が一定の所 に収 まるか,或いは 更に線型的に続 くのかの判断は下せなかった. これでは,B地点の粗度の平均値を評価す る 事は出来ず,今後の検討課題 としたい.

Manningnを表2でみ ると,粗石空積の石工水路の値に近い5).全体 としては 粗度Zo

程大 きくは変化 していない.

砂粒相当粗度 ksについ ては,前述の様にかな り散 らばって しま うので,B 点では評価 しなかった.オ ーダー的にはks‑ (0.5‑

4.0)dmの間に有 るとも言 われている.

Zoについては30Z0‑9‑

表 2 B地点の阻元諸元

3(cm)で,河床を構成 している攻の高さのオーダことなってお り,その値は妥当なものが

(6)

120 松 岡 保 正 得 られた.

.結局,ゼ ロ面を精度良 く決定 出来 るか ど うか と,水面勾配を精度良 く決定 出来 るか ど うか が重要 な点 となるが,前者につ.いては乱れの構造等 とも関連付けて考 える必要があろ う.

5. と が

河床材料が砂疎 であ る実河川に於いて鉛直流速分布を測定 し,平均流速分布を決定 づける 諸星 の評価を行 な った.その結果,ゼ ロ面修正量 Zlにつ いては代表的粒径 の半分以下,粗 Zoについては30Zoが代表的粒径のオーダーの値が得 られた.U*についてはノgTF とし て求めた もの と比較 して,一定 の傾向は無いが大差無 い値 が得 られた.砂粒相当粗度 につい ては,かな りのバ ラつ きが見 られ,適 正なゼ ロ面修正を行な う必要性がは っき りした.

今回は深 く検討 しなか ったが,(1)式適用に際 しては,先ず第一に個 々の粗度要素の効果が 一様 となる様 な高 さを特定す る必要が有 る.換言すれば,n形渦管 (カルマ ン渦)の生成 さ れ る領域 よ り上 の領域 に(1)式 を適用すべ きであ る と言 う事 にな る. また,水面近傍について も注意を払 う必要が有 る.それ らについては,従来 までの乱れ の解析に加 えて,物理 モデ を想定 した観測 に基づ く研究 が必要 となるが,今後 の課題 としたい.

末筆 なが ら,本研究を進め るにあた り御指導を頂 いた広 島大学余越正一郎教授,計器類 の 便宜 を図 って頂 いた信州大学富所助教授 に感謝 の意を表す る.

考 文

1) 足立昭平 :流れの抵抗則,水工学シリーズ 6702,(1967).

2) 宇民 正 ・上野鉄男 :可視化法による大スケール乱れに関する研究 (2),京大防災研究所年報,第 20%B‑2,pp.331‑354,(1977.4).

3) Monin,A.S.andYaglom,A.M.:StatisticalFluldMechanics.MechanicsofTurbule一 mce,γol1.(MIT press),(1965).

4) 余越正一郎 :河川乱流,水工学シ1)‑ズ 77101,(1977). 5) 書川秀夫 :河川工学,朝倉書店,(1980).

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