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時系列変動の分析と予測について (シリーズユ)

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(1)

時系列変動の分析と予測について

(シリーズユ)

富 田 信 昭es 多 賀 善 也ee

(昭和45年9月30日受理)

Analysis and Forecasting of Time−Series Variable.

       (Series 1)

Nobuaki ToMiTA and Yoshiya TAGA

(Received Septernber 3.0, 1970)

 This report discusses a systematic approch about a method of computation for problems of Time−Series forecasting by dint of the seience of statistics.

 The characters of this method are the description of difference time−average from space−average, and what endeavored to elevate forecast accuracy by distinguishing time−average from space−average.

 In this series 1 of articles,we descrived mainly the logic.

1 ま え が き

 ここでいう時系列における予測とは,不確定な要因を持 つ将来を科学的に追求し,ある程度の確からしさで推測す ることをいう。この予測に関しては色々な方法があるが,

決定的なものが得られないのが現状である。

 このことは予測対象の持つ要因があまりにも多数で,量 的にあいまいなものが多く,それらの把握が不可能に近い

からである。

 したがって,予測問題の解決には,要因の解析とその要 因変動のパターンをブラックボックスからの出力として,

量的にとらえる必要がある。しかし,このブラックボック スの入力も正体不明と考えねばならないために,より細い 観察をしいられる場合が多い。

 この報文は,参考文献1)および2)において発表した 経営システム内の計算式に,定数として扱われた時定数

・むだ時間などが,現実には時系列データなる値であるこ とから,それらの計算法の解決策として懸案されていたこ とへの対策の一つである。従来のままでは,システムの特 性を知る必要が出現する度に,その時点でのデータを定数 として,近い将来のか動のあり方を検討せざるを得ないと

していたが,実用に危険性が多かったことは明らかであ

る。

 したがって,ここでは,これらの危険性を伴う定数の

決定法に予測法を導入し,計算への実用性を増すように考 えたことから発想された。

 しかし,ここで述べる方法は,文献1)および2)の単

なる補足ではなく,より一般性をもった形を作るように努

めて述べてある。

* 電気工学科

2論理的モデル

 確率過程の変動を,不規則な連続信号のフーリエ解析の ように,ある次数を持った確定的な形で分析してゆく事は 予測問題では非常に困難であり,無意味なものになりかね ない。したがって,ある程度のあいまいさを含めた形で表 わすならば,それらは大別して三つの波形変動のかさなり 合ったものと見ることもできる。

 その一つは,傾向あるいは動向と呼ばれるもので,変動 する波形の中で最も周期の長いものと考えられる。

 第2は,周期変動であり,これは傾向(上昇,下降,平

行移動など)変動を基準として,振動を繰り返しているも のといえる。しかし,その振幅は確定的でなく,時系列を 一つの時点に集合させると,ある種の分布をもったものと 考えられ,その周期についても同様のことが連想される。

すなわち,周期変動と見なせるパターンは数個以上が混在

している場合が多い。

 第3は,偶然変動といわれる変動であり,多数の時点で

一17一

(2)

の集合では,ランダムなものと考えられ,n種の周期変動

のまわりに,それぞれ存在する。

      ti

Dotted line:Time Series

of mean average

・ptk 一..ll

z t

1 7

1

1

1

t4

− ﹂−

5

f 6

γ

N, X,,

 x.

  ・, Solid line:Time−Series

 xX  \      DQ才α  _

 t2   xO

り効b;ド鰯・・

Fig.1 Time−series of distribution curves

 一括して表現すれば,Fig.1に示すように時系列の論理 的モデルは,時間の推移とともに変化してゆく多数の母集 団であり,各時点において,おのおの母集団があり,現実 に出現したデータは,その母集団の中のただ一つの標本が 偶然に観測されたものである。したがって,各時点でのデ ータの平均を計算(仮定)すると,時閥平均が得られる。

しかし,多くの予測問題では,近い将来の時点での空間の 分布から平均を見出すことと等価である。換言すれば,時 間平均で空間平均を推定し,平然としていたこともある。

ただし,無限に近い時間平均はエルゴード性を持つことに なるために,空間平均に近似することはエルゴード原理か ら証明され,大きな閥違いは生起しない場合も皆無ではな

い。

 これらのことから多くの場合,時系例データからの予測 は,前述の傾向の時間的パターンおよび数値的オーダ(単 位)を標準化した後に始める。まず予測の単位(年,月,

旬,週など)が決定すれば,問題を複雑にする変動を時系 列データ(統計量でもよい)から消去し,純粋に対象単位

のみを時系列データから後述する予測を行なうべきであ

る。

 さて,三つのパターンを持つ変動のうち,傾向変動を:「,

周期変動をC・(n=1,2,3,……,11で単純なものは,フ ーリエ展開可能であろう。),偶然変動をRとすれば,時系 列データF(t)は(1)式で表わすことができる。

       ロ

    F(t)=rlC・ T・R      (1)

.また,予測の期間あるいは時系列の分割単位(年,季,

月,旬,週,日,時問など)をそろえて,これを∫とし,

P(Ii)を現時点での分布と考えると,現時点で推定され る分布は(2)式で表わせる。

        ロ

    P(∫i)=IIEn(Cn)・E(Ti)・E(R)      (2)

 ただし,E(Ci), E(Ti), E(R)は, C,T, Rのそれぞ

れの分布であり, は現時点ゴを意味し,πは数年単位の 周期変動とか,年単位,季節単位,月単位などの任意の期 間単位に該当し,∬にはなんの拘束も受けないで周期のこ となる周期変動である。

 このように,分布の時系列は将来の予測のデータを与え るとはいえ,時系列をなす標本は,それぞれの時点におけ る母集団分布の申の一つ一つが時間的に一列にならんでい るにすぎず,これらの標本を使用して予測するには,(1)

および(2)式のC,T, Rの一つずつについて行なうべき であろう。それには,まずTを水平に変換して消去し,C,

Rのみの時系列とし,次にCnを消去してランダム変動の Rを推定する。最後にTを元の形に戻し(逆変換とでも言

うべきかもしれない。),このTを基準に元に戻したC・を 合成し(ここは(1)式からわかるように,指数変換されて

いる合成も指数のまま行なう),指数のままで復元され たCnの上に統計的に処理されたRの値を合成する。そこ

ではじめて,過去の時系列から将来の予測が行なわれたこ

とになる。

 たとえば,Tを消去するには(1)式から(3)式で表現で

きよう右

       ロ

    Tを消去した時系列F(t−T)二(HC・・T・R)/T       (3)

 また,C・のうちのCm(n>m)

なる。

F(t−Cm)=F(t)ICm

を消去するには次式と

(4)

 一般化すれば(5)式で定義できよう。

         ロ      エ

    F(t−Cx)=1工Cn 。 T・R/IICx      (5)

 ただし,x≦n, x=1,2……nの消去対象周期をもつ

Cである。

 よって,記号的にT→λ・,C・→λ・, R→λ・+1と書くと

すれば,性質の異なる変動を任意に消去するための一般式

(3)

時系列変動の分析と予測について(シリーズ1) 富田・多賀

は(6)式となる。

    F(t−Nx)=Xo  Xn  Nn+1/Xx (6)

       x==O, 1, 2・・・・・・…n, n十1        n=1, 2, 3・一t・・一一n

 一方,予測値を最終的に決定する段階では,計算のため に(6)式で消去した量(この場合は次節で述べる。)を元 の(1)式のような形に戻すことは当然である。

3計算手順

 前節までに述べたことは,時系列の予測には,一般的に いえることで,3種類の変動を考慮して予測精度を上げる ならば,実際は次の手順にしたがって計算するとよい。

手順1.傾向変動Tを求める。

例.移動平均一回帰直線法4)の応用

 知れる限りの過去のデータを「単位期間の時系列に

したがって並べ,ある時点tの前後m個(m=±1〜

3程度)ずつの時点の平均を次式によって求める。

      1

        (Xl+X2+・一+Xm+Xm+1

烹(tm+1)=

     2m十1

       +Xm+2+...+X2m+1)

      1

        (x2+x3+…一FX.+1

X(tm+2)富

     2m十1

       +Xm+2+・・.+X2m+2)

     1

       (Xi−m+Xi−m+ユ+…+Xi

E it,) =,

    2m−R

       +Xi+1+・・t+Xi+m)

(7)

 ただし,ここでもデータは指数で(たとえば,ある

時点の標本値を1として,他の時点の標本を指数また は率で表わす。)計算する。

 ついで,回帰直線の方程式を変形すると,指数表示 の直線は次のようになる。

 まず,回帰直線方程式を示すとそれは(8)式のよう

である。り

・一了一下輩(・一・・)  (・)

 yを(7)式で求めた時系列の移動平均値と考え,x を各時点として考えるが,計算を簡単化するために,

時点の数を奇数個にとり,中央の時点を0とおき,中 央の時点より前は負号をもたせて一iとする。このよ

うにとると時点合計が(9)式で示すように0となり,

したがって,時点tの平均として(9)式が成り立つ。

 一. 1

 t=÷2ti=e (9)

   n

一19一

 回帰直線方程式を書きなおすと(10)式となる。3)

・一アー乱tl、1 t    (・・)

 ここで求める直線はyが標本を意味しているから,

y→xに対応させて,(10)式を変形し,本法の計算 式になおすと,

・一

ハ、モ t+・    (・・)

となる。ただし,ηは実際の時系列の標本平均値Xを 指数諸100とするための定数であり,この場合は,

η=x/100である。

 これで傾向変動が求められ,(6)式で各時点tiの

データをTiで消去すると, T・=const.(水平の直線)

となり,その水準が100である水平線の上下の時系列

データ(指数表示の分)をプロットして行けば,丁以 外の変動分のみの時系列となる。

手順2.変動の周期が,データ収集の全期間内に表わ

    れないが,長大な期間では周期変動らしい傾

    向があるものCユ(半周期以下)の有無を調     べる。

例.n次階差の算出による方法

 各時点の移動平均値の階差をn次までとって行けば

 よい。(12)式において,階差が△1,△2,…△・と  なり,プロットするとほぼ直線になるならば,その

鴛調1撫餓: 沖)

直線の式は,α+btのように表わされるから,ここ であげたC1は無いと断定できる。また,直線になら ない場合は(12)式の△1 ,△2 ……△・ の階差をとり,

△1 ,△2 ……△・一・ (2次階差)を求めて,直線にな るまで階差を繰り返す。n回目の階差すなわちn次階 差で直線になったとすれば,C1は次のn次曲線の形  f (t) ==: a十bt 十ct2十…  十nttt (13)

をとると判断できる。この場合の次数は,手順1でT

を算出しているから,あまり高くはならないはずであ

り,a, b, cなどの一項に近い項の係数は負号を持 つ場合も少なくなり。m次で直線になったとすれば,

各時点のTiとCliの積を(6)式のλとして計算し,

m次曲線の指数による数値を記入して,指数で表わさ

れたm次方程式そのものも記録しておく。ただし,t

は実際の時点表示ではなく,負号をも含む5表示でTi

と対応させる。求めた直線はTと重なったと考えれば

C1の消去に成功したわけである。

(4)

手順3.周期変動C2, c3……C・の消去を可能な限り     nに近いところまで消去する。

  手順2までにより傾向Tおよび周期変動玄では行

 かないが,曲線的変動が消去できた。したがって,

 この唐門では,周期変動Cn(n=2,3…n)と偶

 然変動が残留している。ただし,この段階での変動

 は,前の手順のm次曲線を基準として振動している

 ことを忘れてはならない。

例.系列相関分析による方法

 定常な形に変換された時系列の二つの時点間の関係 は,その時点の距離のみで決まると考えられる。

 この例では,二つの時点の聞隔kを任意に(システ

ィマティックに)変えて系列相関係数を計算し,コレ ログラムを作り,周期の概約を把握するのである。C1 の時系列データX1, X2一・・をXtiで表わすと計算式

は次のように書ける。5)

       Σ・ti・ti+・ 一聖書

rk ==

〆{Σ・←(響}{Σ・t、2+k一(…農ア}

      (14)

 このようにして求めたコレログラムによって,その 相OU rk(k== 1,2…6)が1÷rk>0の時,その場 合の周期の概約はkと見なし,0>rk÷一・1のkは逆位 相のものと考えることができよう。コレログラムの相 関値のちらばりがひどければ,C3, C4としてtk−ti

(kくi)なる時点を徐々に小さくし,同様のコレログ

ラムを作って行く。ついで,相関が1あるいは一1の 近辺に存在しなくなったら,次の手順4に移り偶然変

動として取りあつかう。

 ここでx・iは次のようになる。

 TおよびC・を消去したデータ(指数データ)は次 のように書こう。

  ロ

T・nCn・1〜/T・IIC・=x(t)

x t. == asin−2−zt11!ti

 蓋

     7n

(15)

 ただし,TnはC・における相関を持つkである。

また,αは図上で手がきによっても求まる。ここでも

時点はiで表示し,量は指数で論議することはいうま

でもなく,各時点ごとに求まった指数は(6)式によっ

てCnの消去に利用する。

手順4.偶然変動の処理(レンジの利用)

 ここまでの手順で計算可能な突発的変動以外はすべ

て消去された。したがって,手順3で得られたC・の

データの不揃いは偶然変動と考え,次の方法で将来の 予測をたてる。偶然変動は規則性のないランダムなも

のと考えることができる。しかし,手順3までで見の

がした規則性が絶対にないという保障はない。

(16)

 また,ここでは時系列変動が一応ランダムに変動し ている。したがって,時点を一点に集中させた単なる

分布を持った母集団であって,その平均値Xを空間平 均とする。

 時点t三に対応したC・におけるデータをXiとして,

X1, X2…X・を考えすぐに予測にかかる。すなわち,

X・を現時点の値とすれば,Xl, X2…X・からX叶・を予 測するわけである。この時与えられたデータ(各時点

のC・)が正規分布をしないならば,わずかながら規 則性らしきものが残留していることになる。これは

C1の次数を低くとった時に起こる場合がある。も

し,データが正規分布をしないならば,なんらかの方法 で正規分布をなす関数形を見出すことが必要である。

現実には与えられた多数の標本は,R以外を消去した

はずだから正規分布を形づくることが多い。

 ここでは,正規分布をとらない場合を主に考えてみ

よう。まず,データから2点の移動平均arを(17)式 によって求める。

ar=XiNXinl (17)

 ここで,ar(r=1,2……n)のge AがN(m,

σ2)分布をするならば,4によって母集団の推定は後 述のように,あるレンジで決定することができる。し

たがって,ここでの将来の予測はAからa・+・==xn+・

〜x・を推定することと等価と考えてよい。

 一方,正規分布が考えられない場合はar(2)== a・一・

〜a・のように,移動平均の繰り返しをすればよいが,

このようなことはほとんどない。

 さて,そこで群Aの中から無作為にデータarを抜 き取れば,そのデータarはある確率(100−P)%

で(18)式の範囲に存在することは明らかである。

m一 qa f11: ar K m十qa (18)

 ただし,qはN(0,1)なる関数をg(x)で表わ

すとき(19)式

q=2 f: q (x) dx == P/100 (19)

となり,この値は正規分布表により求められる。しか し,データの分布はある範囲内でσが確定的な形をと らないのがここでの問題の特徴ともいえる。したがっ

て,(18)式のσはAから直接算出することは危険率

を非常に大きくすることになる。ここで確定的になし

(5)

時系列変動の分析と予測について(シリーズ1) 富田・多賀

得るのは,レンジRであることに着目する。Rとσの 関係はTippetにより求められ,その係数をTとすれ

ば,母集団のレンジの期待値E (R⊃は,E〔R〕=T,σ という関係があるから,これを(18)式に代入すれば

(20)式となる。7)

  m−q・一E{i/IS2R)s;ar s{m+q・一Eii(19R) (20)

 ここで,m÷a・, E(R〕÷Rとすればa・は予測す べき時点のデータa・+・をも含むから(20)式は

a,一dR :;1 am+i sll ar+dR

(21)

となる。ここで,d=q/Tで品質管理における管理

限界係数6)といわれるものと等質のものである。もち

ろんTはデータの大きさに対して,統計数値表のt分 布表から,qは正規分布表から任意の危険率(この場 合C・までの消去によってかなり小さくとれる。)に

対して求めておき,dを計算する。また, C・までが

うまく消去されていれば,(21)式はランダム変動のみ

の予測に利用できる。ちょうど,x−R管理7)の方法

に類するものと考えることもできる。

 一方,いままでの消去に不安があれば次のような形

で行なうべきであろう。これはC・の消去において実 際に計算したnの最大のもの(周期の最も短かかった

もの)の最近短期間のデータの動きを考慮に入れたも のであり,次章で述べるように,ある問題に対しては T,C・などを無視して単独で利用できる形に変形した

ものである。

 すなわち, a叶・=X・+・〜XnであるからX叶・は

(2ユ)式から類推iして(22)式

  xn   (ar+dR) S xn+i :!{ xn H (ar 一dR) (22)

あるいは,(23)式

xn + (ar 一 dR) $xn+i :i{1 xn + (ar +dR) (23)

でx・+・の存在範囲が推定できる。(22)式および(23)

式は,ちょうど傾向変動をも考慮に入れた計算式と考 えられ,最も短かく近い期間をさらに詳細に区分けし て計算するために有用であり,詳細に区分けした時系

列データの単調増加あるいは減少のどちらかによっ て,(22)式あるいは(23)式の使いわけをすればよい。

手順5.データ復元のたあの注意

 以上によって,偶然変動の分析と予測が行なわれ

た。しかし,予測されたデータは,ここでは指数表示 で,しかもC・に対して混入している変動を予測した

わけであるから,将来のCnの偶然変動を特定の危険

率のもとで,ある幅(レンジ)をもって表現したこと

になる。

 したがって,予測のために指数データを実際の値に 復元するには,傾向変動Tの積を(6)式の逆算によっ て求めるように,(1)式の形に戻るまで運算する方が

堅実であろう。

4 (22),(23)式による予測手順

 前章で述べたような手順4における方法は,問題の種類

によっては,(22)式あるいは(23)式の単独計算で解決でき る場合も少なくないと思われる。したがって,この方法に よる実際の予測実験を試みたので,これらの計算手順をお ってより詳細に述べよう。ただし各記号は前章と関係なく

使用している。

 この方法は,データにある操作を加えることによって,

正規分布が得られるという性質を仮定して導き出されるも のであるから,対象の性質を正規分布に変換する手法が見 つからない場合は予測に利用できない場合がある。

 すなわち,現実に予測しようとする対象の標本を見て,

正規分布をする形の関係を作り出すことは,対象とする標 本集団の変換によらなければならないことが多い。しかし 一般的には,経験から正規分布という形がいかに多くの場 合に発生するかについても,前述のように,時間的あるい は空間的に隣接する標本の差を求あるだけで,この方法が 使える場合も少なくない。

 したがって,この場合にも品質管理における,X−R管

理図と同様,正規分布に近い形を見つけ出すことに成功す れば,この予測法は有効となろう。

 すなわち,具体的には与えられた標本X1, X2……X・か ら,その量的変化X2〜X1・X3〜X2……・・X・〜X・一1を求 めたとき,その値が正規乱数的に変化していれば,相当高 い確からしさでこの手法が適用できる。

 ここでもっと具体的に問題を考えよう。

 4.1 レンジRについて

 ここでの既知の量は標本そのものの数値と,レンジRで ある。したがって,Rとσの関係を考えると,前章で述べ た係数TはTippetが多くの標本抽出実験によって求めた

値であることから,標本数がなるべく大きくなるような方 法が望ましいことがわかる。

 以上のような理由により,a・系列の隣り合わせの値2個

の差をレンジR・として考える。すなわち,Rtは時系列

R3 ・= a3〜a2・R4=σ4〜a3・……・・R。==an〜a・一1として,

標本を代表する。

 4.2標本の大きさnについて

 理論的にはより多くの標本をとる程,予測は正確になる

一21一

(6)

はずであるが,実際問題として標本を多くとるということ は,その計算などの取り扱いを複雑にし,必ずしも有利と

はならない9)。

 それではどのくらいの大きさが最適であるかということ になるが,これが最適だという数字は具体的には与えられ ない。統計学的方法論では,最低3個あれば予測できるとさ れている場合もあるが,一般には,X−R管理図と同様,

7個前後から12個ぐらいとるのが経験的によいといわれ

る。それ以上多くとっても,それほど正確度が増すと思わ

れない。

 ここでの予測は時系列をなす標本の最終時点に存在すべ き未来の標本を算出するのであるから,現時点に対応して いる標本に最も近いものの中から,7〜12個を利用する。

したがって,この方法は,比較的短期の将来予測の方法と 考えることができる。

 4.3 予 測 例

 計算をたやすくするために,その過程についての手順を 標準化すればTable 1のようになる。

 ただし,t:時刻(t=1,2,………n)

     Xt:時刻tにおける標本1値(t=1,2…n)

     a・:tに対応したX・の量的変化

       at=xttvxt−i (t=:2, 3,一・…n)

     Rt:atのレンジをtに対応させたもの

       Rt=atNatnei (t =3, 4,一 一・n)

であり,計算:はTable 1の(1)→(2)→(3)→(4)→(5)

の順で行なう。Table 1の計算手順表より, X n, a・, R・

の値を求め,続いてTable 2に示す限界係数dの値を,

任意の危険率P%のもとで選び,それぞれの値を(22)式あ るいは(23)式へ代入して計算することにより,予測を完成

する。

Table 1 Process of computation.

Item

Time

(1) X,

(2) at

(4) R,

1

X1

2

X2

a2= x 2tv x 1

3

X3

a3=x3一..x2

R3 == a 3N a 2

n

Xn

an=XnevXtt−1

Rn=anNan−1

Average

(3)

(5)

万里

Tabl 2 Sample of dEiq/T.

Size

 of data

2

3

4

 1

O 8865 0 5907 0 4857

Ratio of risk P%ノ(q)

5//(1.654)

1.46 0.97 0.80

10ノ(1.282)

1.14 0.76 0.62

15//(1.035)

O.92 0.61 0.50

 ただし,Table 2における標本の大きさは,前にも述べ たようにレンジを求める際に,何個の標本を使って求めた

かによって決まる。Tは標本の大きさに対して,統計数値 表から,qは正規分布表から危険率P%に対して求めた値

である。

以下に前述のような手順にしたがい,Table 3のT市

の交通事故件数をもとに,「交通事故に関する予測」を行

う。

Table 3 Numbers of traffic accidents        Time Point

blassification 32

33

34 35 36 37 38 39 40

41

Nu皿ber of cases Death

c

Serious

Slight injury Total

123

7

120

219

6

176 323

13

41

219 260

433

9

58 287 345

377 13 45 254 299

485 14 37 334 371

591 18 70 352 422

581

13 62 428 490

562 14 101 420 521

460 18 88 444 532

(7)

時系列変動の分析と予測について(シリーズ1) 富田・多賀

Table 4 Quantitative changes a t.j at Table 3.

X・・.xxs:Time Point(t)

   ×

ciassificati6n)?(i} ×一s一.])

Number of cases(1)・

Death , (2)

 Serious (3)

c

 Slight injury (4)

 Total (5)

35

(35)

110  4

17

68 85

36

(36)

64336

5 噌⊥34

37

(37)

108

 1

 8 80 72

38

(38)

106  4 33 18 51

39

(39)

05868 ﹁占   7・︷b

40

(40)

91nロ8ー

イ⊥ Qり ∩δ

41

(41)

102  4 13 24

11

Average

αt

73.0 3.3

18.7 43.8 52.0

it 」

68.0 3.2 19.6 42.2 58.8

Table 5 Rt.j of a t.j at Table 4.

   Time Point(t)

Classification(j)

Number of cases(1)

Death (2)

 Serious (3)

t

 Slight injury (4)

 Total (5)

35

(35)

36

(36)

40451

5  

33

37

(37)

23576 5   42

38

(38)

23

rDワ臼1

9飼62

39

(39)

61587

9 

251

40

(40)

94187   Qリハ03

41

(41)

33660

8 

212

Average

R.j 1 Rt,.j

49.3 2.3 19.3 47.6 26.6

42.6 2.2

18.0 54.0 28.0

 Table 1の計算手順表との対応を考えると, Table 3の 件数,死者…という分類項目は,その一つ一つがTable 1 の標本Xtの系列に対応している。すなわち, Table 3は

その分類表5に等しいだけの予測すべき内容をもってい

る。したがって,分類項目別に番号1をつければ,Table 3の数値は,各jごとの標本値x・.jとして表わせる。

 そこで,各」ごとにTable 1の手順により計算し,その

計算結果をまとめて,計算項目(at.j, R・.j)別に示せば Table 4, Table 5のようになる。

 fだし, at.コ=Xt。j〜x(t_1).j

        れ

     at.j=Σat.j/7         t=35         るむ

     a tt.j=Σa t.j/6         t=35

であり,計算はすべて各jごとに行なう。たとえば,35年 の件数については,

   a351=x351〜x341=433−423=110

である。

 ただし,R・.j=at.」〜σ(t−1),j

        む      Rt.i=ΣR,.j/6

       t串36         る 

     R ,.i=ΣRt.i/5

       t=36

Table 6 Forecasted numbers under ratio of risk 5%

XTimePoint(t)

Classfica−

   tion(j) X.

Nu皿ber  of cases(1)

Death (2)

Serious (3)

c

Slight

  injury (4)

Total (5)

41 Forecasted

 number

432〜5ら6 14・w 20 55一一107 383一 541

438N648

Actual

 number

460 18 88 444 532

42

Forecasted

 number

315rv459 18N 25

78N148

418tv557

496.一705

であり,計算はすべて各jごとに行なう。たとえば,36年 の件数について,

    R36.1 = a 36.1N a 3s.1= 110 一 56 == 54

である。

 そこでTable 3,4,5,からそれぞれx4e.j, x 4・,i,

at.je a t.j, R・.i:R tjの値を求め, Table 2からdの値

を決め, (ここでは5%の危険率をとったので,d=1.46)

それらの値を(22)式あるいは(23)式へ代入して計算すると

Table 6のようになる。

一23一

(8)

 たとえば,41年の件数x4・.・は

   x40,1一(a t.エ士1.46・Rf,.t)=562一(68=ヒ1.46       × 42.6) = 432N556

の範囲となる。

 Table 6で41年の実数と予測値を比較してみると,す

べてがある幅を持って予測されている。そして,すべての 予測値の幅は,その幅の中に実数を含むことがわかる。

 ただし,計(j=5)についての予測は,重傷(j=3)

軽傷(j=4)のそれぞれの予測値を加えた値として示し

た。

5 お わ り に

 第3章までは,試算的裏づけなしに論議が進められた。

しかし,部分的には,多数の文献によって発表され,提論 されている。この報文のシリーズ1では,その理論的応用

として予測方法の対象にかXげたのみであり,試算の段階 に至っていない。

 したがって,工学的には,本報文は完成されたわけでは ないと考え,われわれは次の試算的段階に入り,シリーズ 2では,データおよび時点の取り方,計算機のソフトウェ アが提議の対象となる。

 第4章では,第3章の手順4に利用した方法をもって,

試算対象とし,この方法のみでも短期間の予測には利用可

能であることを述べた。ただし,予測値レンジがかなりひ ろがり幅を持つことは,計算の簡単さからいってやむを得

ないものと考える。

 おわりにあたって,この報文の資料を提供していただい た津山警察署交通課に対し,また,本報の一部を担当した 住友電気工業(株)の佐藤静好氏に謝意を表する。

(1)菊地進・富田信昭他;日本工業経営学会誌,No.30

  (1964) , 66−69

(2)富田信昭他2名;全:国能率大会論文集No。16

  (1964) , 409−413

(3)西田俊夫;経営のための近代統計入門, (昭40),

  197,中央経済

(4)宮武 修・黒崎 達;応用数学ハンドブック,

  (昭39),795,日刊工業

(5)山ロ英治;需要の予測,(昭38),189,培風館

(6)野中敏雄。笹井敏夫;確率統計の演習, (昭38),

  241,森北出版 など

(7) N.L.ENRICK; Mass Production, (1964,

  May) , 70−75

(8)中村慶一;技術者のための統計解析, (昭40)187,

  山海堂

(9)畑村又好他3名;スネデッカー統計的方法(昭35)

  第一章,岩二二店 など

参照

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