、
ゥ閉症児の短期記憶における感覚モダリティと時間的コード化の関係について
加藤智恵札相馬 壽明**
(1987年9月12日受理)
The Relationships between Sensory Modalities and Temporal Coding on the Short−term Memory of an Autistic Child
* **
bhie KATo and Toshiaki SoMA
(Received September 12,1987)
問 題
自閉症に関してはこれまでに多くの研究者たちが原因。症状・治療について種々の方法により研 究を進めてきたが,現在もなお原因論的にはその原因をつきとめるにはいたらず,従って治療法も 確立されていない。しかし,症状論的には,認知の障害に基づく言語の障害を主症状とする症候群 であることは大方の意見の一致をみているといってよい。
自閉症の認知の障害についても様々な研究がなされているが,Hermelin(1970,1971,1976)は自閉 症児に種々の実験を行った結果から,自閉症を認知の中枢障害に基盤をもった状態とみなしている。
さらにHermelinは,自閉症児のより基本的な障害は特定の感覚モダリティの入力障害にあるのでは なく,入力後の刺激の情報処理過程におけるコード化(coding)にあると考えている。つまり,自閉 症児には特定の感覚モダリティでの機能的異常は認められないので,特定の感覚モダリティの刺激
に対して選んで反応するといった選択的な知覚障害を仮定することには正当性がないと述べ(Her一 melin and O Connor,1970),自閉症児における中核的な問題は,モダリティとは独立したある特定 のコードへの刺激情報の構成過程にあるとしている(Hermelin,1976)。
人間の情報処理能力は限られているので,環境からの情報を効果的に処理するためには情報を構 造化し,削減することが必要である。刺激のコード化とは,次々と入力される刺激情報からルール や冗長度(redundancy)といったその情報の持つ特徴を抽出したり,要約や範疇化による入力情報 の削減を行うことである。このようなコード化によって,われわれは適切な刺激を統合したり,環境 を適切に理解することができる。しかし,自閉症児の場合,この刺激のコード化に問題があるため,
これらの処理過程に障害をきたしており,それが自閉症児の認知の障害の基礎になっている,とい うのがHermelinの考えである。
*石岡市立国府中学校
**茨城大学教育学部障害児教育学科
このようなHermelinの仮説を実証するために, Frith(1970 a, b)は自閉症児を対象として2要素 の系列を用いた刺激パターン(刺激の持つ規則性)発見に関する実験を行った。この実験は,連続し て項目(item9を提示した場合,提示された材料の連続的特性(連続を支配しているルール,冗長度)
を抽出する能力にモダリティによる差があるかどうかを検討するため,視覚と聴覚の2つのモダリ ティについて実施された。
まず,視覚的パターンによる実験は,赤と青のおはじきを用いた2要素の系列を提示して行われた。
この実験で健常児が不規則なパターンよりも規則的なパターンの方をより速く学習したのに対し,
自閉症児では課題のタイプによる差は認められなかった。また,誤りの分析の結果,健常児が刺激 パターンの優位な特徴と一致した誤りをより多く示したのに対し,自閉症児では刺激パターンの特 徴と一致した誤りと,パターンの特徴とは無関係な誤りが同じ位の頻度であるという結果が得られた。
次に,聴覚一言語系列(auditory−verbal sequences)の実験では,2種の単語で構成された系列が 提示された。被験児は自閉症児,発達遅滞児,健常児で,各被験児は数字の短期記憶の範囲によっ てマッチングされていた。実験において直後再生させる語のリストは,被験児の記憶範囲を越える長 さであった。実験の結果は,健常児と発達遅滞児は提示された刺激パターンの優位なルールを抽出 できるが,自閉症児は入力(刺激パターンのルール)にかかわらず,1つのルール(反復性)のみ で反応するという歪んだ傾向を持つというものであった。
2要素の系列に関するこの2つの実験は,材料の提示が視覚的に行われたものと,聴覚的に言語に より行われたものであったが,非常に類似した結果を示した。すなわち,健常児や発達遅滞児が与 えられた情報からルールを抽出し,その冗長度を用いて情報の削減をし,記憶の負荷を減らしたの に対し,自閉症児は提示された材料を機械的な記憶によって保持しなくてはならない別々の項目の 連続として取り扱ったといえる。これらの結果から,入力されるモダリティよりも入力後の刺激の コード化過程に重要な問題があるというHermelinの仮説が検証された。
ところで,事物や出来事は空間的のみならず時間的にも位置づけられるものであるが,刺激が空 間的に提示された場合と,時間的に提示された場合とでは,その処理に違いが見られるのであろう か。刺激の入力段階で感覚モダリティによる違いがないとはいえ,刺激の構造のもつ空間的あるい は時間的特徴は,感覚モダリティに特有なコード化をもたらさないのであろうか。一般に空間的系 列についての情報は視覚や運動のフィードバックにより得られ,時間的系列の処理は主として聴覚
一言語系の機能であるとされている。とするならば,提示される刺激の構造や感覚モダリティによ っては,コード化に違いがみられるのではないだろうか。このことについてHermelin(1976)は,
自閉症児は時間的に連続した構造(temporal−sequentia1.structure)に比べて,空間的枠組や空間 的にどの位置にあるかを示す情報については比較的効果的な処理ができること,また空間的手がか りが視覚あるいは筋運動感覚のいずれを通して与えられても効果的に情報を処理することができる と述べている。
自閉症児が時間的に構造化された課題に困難を示すことは,例えばWISCの絵画配列(村田・
名和・大隈,1田4,太田・栗田・清水・武藤,1978)や標準失語症検査の4コマ漫画の説明のよう
な課題の成績が良くない(小林,1脂2,1985)という結果にも示されている。小林は,自閉症児が状
況を継時的に理解するということが自然にはできず,時間系列の認知障害を強く示唆する結果であ
ると指摘している。
このように,自閉症児は空間的枠組や位置を示す情報は比較的効果的に処理できるのに対して,
状況の継時的理解といった時間概念の把握には障害を持っているとするなら,自閉症児に連続した 刺激の項目を提示する場合には,刺激の系列が時間的な構造を持っか空間的な構造を持っかを考慮 しなければならない。この点から先に述べたFrithの実験を再検討してみると,以下のような問題 点があげられる。
①聴覚系列は時間的に構造化されているので時間的系列である。しかし,視覚系列はある1つ の項目が時間的系列内(順序)にあり,かつ空間での1つの場所を占める(位置)ので,視覚系列 においては時間的,空間的といった区別は曖昧になる。従って,視覚系列で刺激を時間的に連続し て提示した場合には,空間的構造(位置関係)が反応の手がかりとなりうることも考えられる。
② それぞれのモダリティ(聴覚と視覚)で提示した刺激は,2要素から構成されているという 点では共通しているが,一方はことば,他方はおはじきというように,課題に用いられた刺激がま
ったく違った性質のものである。
③聴覚系列では聴覚一言語パターンを直後再生させているのに対し,視覚系列では視覚パターン を学習させている。つまり,反応の指標が異なるという問題点がある。
そこで,本研究では,以上のようなFrithの実験の問題点を考慮して,自閉症児の短期記憶におけ る感覚モダリティと時間的コード化の関係について検討する。
目 的
自閉症の認知障害の基礎となっているのは感覚モダリティからの入力レベルでの問題ではなく,
入力後のコード化過程における処理の問題である,とHermelinは指摘した。また, Frithは視覚と 聴覚による2つの実験でこの仮説を検証したが,他のモダリティからの入力については検討してい ない。そこで,本研究においては視覚,聴覚の他に,更に触覚,筋運動感覚の2つのモダリティを 設定し,感覚モダリティと刺激のコード化との関係について検討することを目的とする。その際,
先に述べたFrithの実験の問題点を考慮して,以下の修正を行った。
①提示する刺激の系列を時間的系列と空間的系列のうち,自閉症児がより大きな困難を示す時間 的系列について検討する。時間的系列を提示されることで,被験児は刺激を時間的にコード化する
ことを要求される。
②感覚モダリティごとの刺激と課題を統一する。刺激については,感覚モダリティの違いを除け ば,他の刺激の特性は同一となるよう工夫した。課題については,2要素から構成されるパターン
(詳しくは方法で述べる)を用いる。この2要素パターンを時間的系列として提示する場合に,パ ターン全体が見えるような視覚的手がかりを除くために,連続して提示する刺激を1つ1つ視野の 外へ隠してしまうという方法をとる。
③反応の指標としては直後再生を用いる。直後再生をとりあげる理由は,視覚的手がかりを排除 した場合(視野の外へ隠す),Frithの視覚系列で用いられたような学習課題は被験児にとって遂行 が困難であると考えられるからである。
自閉症児は一般に記憶の領域についてはあまり障害を受けておらず,直接記憶については比較的
障害が軽いことが指摘されている(Hemlelin and O℃onnor,1田0,中根1978)。機械的な記憶が良 好であるとされている自閉症児の場合,系列の長さが記憶可能な範囲内におさまるものであれば良 い成績を示すであろう。そこで,本研究では被験児の記憶範囲内において,それぞれの感覚モダリ ティからの入力情報がどのように処理されるかを検討する。その際,項目を記憶する手がかりとし て「ことば」を付与する。課題(系列)の長さは被験児の記憶可能な範囲であるから,手がかりの ことばを適切に利用することができれば,課題は処理されやすくなる。もし,手がかり(ことば)
がない場合に極端に遂行成績が悪くなるとすれば,それはその感覚系列(そのモダリティからの入 力情報)処理に特有の問題があることになる。なお,本実験の課題は,時間的順序づけの記憶課題 であるから,課題によって被験児は刺激を時間的にコード化することを要求されることになる(時 間的にコード化するか空間的にコード化するかという選択の余地は残されていない)。従って,結果
は時間的コード化の処理が可能か否かとして示されることになる。
また,Hermelinは,自閉症児が言語に障害を持つため時間的順序づけや時間系列の理解に困難を 示すことを指摘し,言語材料を連続的に提示した場合には時間系列としての特性を持つこと,更に 言語材料の時間的順序づけを行うためには貯蔵コードとしての言語(入力された刺激をコード化し,
言語コードという形で貯蔵したもの)を適切に使用できることが重要であることを仮定している
(Hermelin,1田6)。
以上の理由から,次の点についても検討を試みる。
④自閉症児において一般に障害が軽い(むしろ良好である)とされる直接記憶に着目し,課題にお ける手がかり(ことばの付与の有無)を変数として,刺激のコード化と感覚モダリティの関係につ いて検討する。
⑤対象児としてことばのある自閉症児を選択し、手がかりとしてのことばを適切に利用できるか どうかという観点から健常児との比較を試みる。
方 法
対象児 被験児は自閉症児1名(A}と健常児5名(M,N,0, P,Q)である,自閉症児Aの1 Qは,8歳10ヶ月時のWISCで90(言語性75,動作性108),9歳4ヶ月時の田中・ビネーで94で ある。初語は2歳6ヶ月ころであり,二語文は4歳になってからである。ことばの遅れを主訴とし て2歳9ヶ月に児童相談所を訪れ,自閉的傾向が強いと診断される。以後,数カ所の医療機関で自 閉症と診断される。幼児期にはエコラリア,クレーン・シンプトンによる要求,同一性保持の行動 がみられた。現在も順序や場所へのこだわりがみられ,予告なしに変更されると混乱をきたし.不 安定になる。教師や友人の働きかけがあれば集団参加は可能であり,保有していることばは比較的 多く,簡単な読み書き計算もできる。脳波に異常が認められ,現在も定期的に検査を受け,服薬し ている。健常児はいずれも同じ小学校の2年に在籍する児童であり,特別な障害はない。自閉症児
と健常児は数唱および語再生(「赤」,「青」の単語からなる)における記憶範囲でマッチングされて いる。なお,被験児のリストを表1に示した。
刺 激
(1)2要素パターン: 2要素パターンはFrithが自 表1 被験児のリスト
欝糠謙繋鷺難ll誓被験児性別CA MA魏灘
は・項目間の関係によって示され・構造を容易に変化 A 男 10:98:9 5 5 させ得るので種々のレベルの複雑さをうみだすことが M 男 7:10 5 5 できるという利点がある。また・こうした項目間の組 N 女 7:10 4 5 み合わせは・どの感覚系についても提示することが可 0 女 7:10 5 4 能である。例えば・ことば(ネコーイヌ)についても可 P 女 7:10 4 4 能なら・視覚系(赤一青)を通じても提示できる・ Q 女 7:10 4 4
②刺激材料: 刺激を決定する際に,刺激情報を提
示する感覚モダリティが問題となるが,本実験では4つの感覚系一1)視覚系列2)聴覚系列3)触 覚系列4)筋運動感覚系列一を設けた。これらの感覚系列として用いられる刺激が,果して感覚の
レベルでそれぞれのモダリティに厳密に対応しているかどうかという点については,問題がないわけ ではない。しかし,ここでは一応それぞれの感覚モダリティに対応しているものとして分類されて
いる。
刺激はサテン地で作られたお手玉を用い,これらはすべて大きさと形は同じであり,色(赤一青),
音(あり一なし),感触(やわらかい一かたい),重さ(重い一軽い)が各系列によって異なる。例えば 視覚系列では赤と青の刺激が提示され,聴覚系列では音のある刺激とない刺激が提示される。なお,
実験に使用されるすべての刺激は,予備実験で被験児全員が正しく弁別できることが確認されている。
手続き 実験はExp.1, H,皿の3つからなり,それぞれには 1)視覚系列,2)聴覚系列,
3)触覚系列,4)筋運動感覚系列の4系列がすべて含まれている。Exp.1, H,皿は刺激が提 示される際の手がかりがそれぞれ異なっている。なお,ここでいう手がかりとは,刺激の特性を指 すのではなく,刺激の弁別のために被験児が利用できる「動作」(刺激を弁別しながら記憶していく ための動作)あるいは「ことば」を指している。
(1)各実験における手がかりと手続き
Exp.1(P+V): 被験児は,実験者の手渡す刺激を1つずつ受け取り, Box(19.5 c皿×19.5 cm×
21.Ocm)の中へ入れていくことで,刺激を弁別しながら提示される順序を記憶しなければならない。
Exp.1における手がかりは,刺激をBoxに入れるという動作(P}と実験者から与えられる刺激を表す ことば(V}である。つまり,被験児は刺激を提示される際に,例えば「赤」とか「音がする」という ように言語による手がかりが与えられる。
Exp』(P): Exp. HではExp.1で示された手がかりのうち,刺激をBoxへ入れる動作(Dの みが手がかりとなり,ことばは付与されない。
Exp.皿(V): Exp.皿ではExp.1で示された手がかりのうち,ことば(V)のみが手がかりとなα
被験児はことばで提示されるパターンを聴いて記憶するだけで,刺激をBoxに入れることはしな嬬
以上,Exp.1, II,皿いずれの場合においても,被験児の直後再生による反応は,提示されたもの
と同じ刺激を再度Boxへ入れることによってなされる。なお,すべての実験において刺激は1つず
つBoxに入れられて隠されてしまうため,提示された刺激のパターンも,反応によって生起するパ
ターンも,そのパターン全体が視覚的にとらえられることはない。従って,パターン全体の視覚的
手がかりは排除されることになる。 表2 刺激パターン
(2)教 示
Exp.1: 実験は各感覚系ごとに行われるが,各系列の課題遂 aabb
行前に,被験児にその系列に使用する刺激を確認させる。次に, AABB bbaa
刺激パターンを提示する際に「これを1つずつ箱の中に入れても abab
らうんだけど,まず最初はいっしょにやってみましょう。入れる ABAB baba
順番をよく覚えていてね。その後で同じ順番で入れてもらうから abba
ね。」と教示する。更に,「今度は○○君が,今入れたのと同じ ABBA baab
順番で箱に入れてみてね。」と教示し,課題を遂行させる。これ abaa
らの教示は原則として最初の試行にのみ与えられる。 ABAA babb
Exp. H:Exh Iと同様である。
Exp.皿:Exp.皿では刺激パターン提示がことば(V応なされる AABA aaba bbab
ので,次のような教示を与えた。「これ(刺激)を1つずつ箱の 中に入れてもらうんだけど,入れる順番をことばで言うからよく 覚えていてね。その後で同じ順番で入れてもらうか
らね。」更に, 「今度は○○君が,今言ったのと同 表3 2要素a,bと各感覚系列の刺激 じ順番で箱に入れてみてね。」という教示により課 要素との対応
題を遂行させた。 刺激要素
③ 刺激項目数(パターンの長さ) 感覚系列 a b Exp.1, H,皿のいずれの場合も,1つの試行に
視 覚提示される刺激項目数は4つである。すなわち刺激 赤 青
パターンは4項目で構成されている。例えば視覚系 聴 覚 音がある 音がない
列でいうと,赤一青一赤一青のようになる。これは 触 覚
やわらかい かたい 対象とした被験児全員の記憶範囲内におさまる項目
筋運動感覚数である。
重い 軽い
(4)刺激パターン
刺激パターンは先に述べたように2要素パターンという形で提示される。2要素パターンの要素 をa,bとすると,2要素で構成される4項目のパターンは16通りの組み合わせが可能であるが,
そのうち同一要素が3つ以上続くもの(例えば,abbb,aaabのようなパターン)を除いたため,
表2に示すような10パターンが提示された。要素a,bと各感覚系列の刺激要素との対応は表3の 通りである。各感覚系列においてこの10パターンが2回提示されるので,1つの系列の試行数は合 計20試行となる。なお,この10パターンは,それぞれの要素が逆転したもの,すなわちababとbaba のような2種のパターンを1つにまとめて,ABABというパターンで表わすことができる(表2参照)。
刺激提示と課題の遂行に用いられる刺激材料は同一であり,刺激パターンの構成に使用されたa,
b2つの要素の数は限定されているので,例えば, ababという刺激パターンに対して, aaabとい うような反応が起こることはない。
実験期日・場所 実験は昭和6ユ年12月から62年1月にかけて行われ,被験児1名に対して1回に
2系列の実験が行われた。自閉症児(被験児A)についてはK市立H小学校情緒教室において,健常
児5名については1市Y宅の一室にて実施された。
結果の処理 結果の分析は,誤反応を指標として誤反応数を分析することにより行う。それぞれ の反応は,刺激項目のうち1つでも違えば誤反応として分類される。次に分析の観点を示す。
(1)誤反応数の分析
各実験(1,皿,皿)の各感覚系列(視覚,聴覚,触覚,筋運動感覚)ごとの誤反応数を相互比 較する。
② パターンの分析
①誤反応を示した刺激パターンによる比較: どの刺激パターンにおいて誤反応が見られたか という点に着目し検討を行う。
②誤反応パターンの比較: 刺激パターンとは関係なく,被験児の示した誤反応パターンだけ に注目して,その特徴を比較検討する。
結 果
口感覚系列ごとの誤反応数 表4は各実験1,皿,皿における感覚系列ごとの誤反応数を被験児 別に示したものである。まず被験児ごとにその特徴を見ていくことにする。被験児AはExp.五で の筋運動感覚系列の誤反応数が多いのが特徴的で,Exp. H内の系列間において統計的に有意差が認 められた(κ2=23.78,df−3,p<.01)。また,筋運動感覚系列についてExp.1〜皿を比較した結 果,Exp.1で統計的に有意に誤反応が多く見られた(∬2=13.59, df=2, p〈.01)。更に,各感覚系 列をまとめてExp.1,皿,皿で比較してみると,1・Hでの誤反応数が皿よりも有意に多く見られ た(が=14.28,df−2,P・(01)。健常児M, N,0, P, Qはいずれも各感覚系列およびExp I,
n,皿の間で統計的に有意な差は見られず,誤反応数の違いが散見されるものの,あえて特徴と認 められるものはないといえる。
②刺激パターンごとの誤反応数感覚系列に関係なく,どの刺激パターンに対して被験児が誤反 応を示したかを表わしたのが表5である。表4に示されたように,被験児Aを除いて,系列間およ
び実験間では統計的に有意な差が誤反応数に認められなかったので,各系列および各実験の区別な く全体の結果について検討することにする。
被験児A,MはABABの刺激パターンに対する誤反応が多いが,統計的に有意差は認められな かった。被験児N(4=13.96,df−4,p〈.05)とPα2−17.80,df=4,pく01)はABBAに対する 誤反応が多く,有意な差が認められた。被験児0は統計的に有意ではないがABBAとAABAに 対する誤反応が多く,両パターンに対する誤反応数はほぼ同じである。被験児QはABBAとAB AAに対する誤反応数が同数で,やや多くなっている。被験児全体の結果をみると, ABBAとい う刺激パターンに誤反応が多くみられ,統計的にも有意であった(κ2=31.07,df=4, p〈.01)。従 って,この刺激パターンは他の刺激パターンに比べて,被験児全体において誤反応が生起しやすい パターンであるといえよう。
ところで,ababのように要素aと要素bが同数のパターンとabaaのように要素aとbの
数が異なるパターンでは試行数が異なるので,厳密には各刺激パターンについて誤反応数で比較す
るには問題がある。そこ 表4 系列ごとの誤反応数
で要素a,bが同数の
被験児A刺激パターン(AABB,
手がか 系列 視 聴 触 筋 Total ABAB, ABBA)に限っ Exp I(P+V) 7 4 2 5 18 て検討してみると,被験 Exp.五(P ) 1 0 3 14 18 児Aでは有意な差は認め Exp.皿(V)) 2 1 1 0 4 られなかったが,被験児
MにおいてABABの刺激
被験児Mパターンで有意差が見ら
系列手がか視 聴 触 筋 Tota1
れた(κ2=9.25,df=2, Exp.1(P+V) 0 3 2 3 8
p〈。05)。また,被験児N Exp.皿(P ) 7 2 2 2 13
(娯=11.32,df=2, pくOO
Exp.皿(V) 2 2 4 3 11
とP(κ2=18.25.df=2,
p<(01)においてABBAで
被験児Nの誤反応が有意に多く,
系列手がかり視 聴 触 筋 TotaI
被験児0(κ2=6.74,df= Exp.1(P+V) 3 2 5 5 15
2,pぐ10)とQ(κ2=6.88 Exp.皿(P) 3 6 6 6 21
df=2, Pく10)でABBA
Exp.皿(V ) 0 4 2 2 8 で誤反応が多い傾向が見
られた。
被験児0{3)誤反応パターン 系列手がかり
視 聴 触 筋 Total 表6に各実験で被験児の Exp I(P+V) 5 8 14 6 33 示した誤反応パターンの Exμ皿(P ) 6 10 10 9 35 数を示した。被験児ごと
Exp.皿(V) 8 10 7 7 32
の特徴を全体(Expl{遜D を通して見てみると,被
被験児P験児AではABBAの誤反
系列手がかり視 聴 触 筋 Total 応パターンが有意に多く Exp.1(P+V) 3 4 10 3 20
見られた(∬2r15.91, df Exp、1【(P ) 4 1 6 4 15
お,pぐ05)。被験児Mで
Exp.皿(V) 1 8 3 1 13 はABABのパターンが多
いが,統計的な差は見ら
被験児Qれない。被験児N(∬2=
系列手がかり視 聴 触 筋 Total
17.96,df=6, pく05),0 Exp.1(P+V) 4 4 2 0 10
(κ2=70.66,df=6,p〈 Exp. n(P) 3 2 1 0 6
.01)とP(∬2=53.96,df
Exp。皿(V) 1 7 3 2 13
=6,pく01)はABABの
誤反応パターンが有意に
表5 刺激パターンごとの誤反応数
襯 A M N 0 P Q
st E×Pパiターン