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農村社会・村議会・議員の意識と行動(上)
一茨城県北浦村を対象にして一
田 村 武 夫
一.問題の所在と課題 「議員の出番が少なくなった」,「林道整備と 二.調査の概要と北浦村議会および村会議員 か,下水とか,4〜5年前までは,住民が地区の
(1>調査の概要 要望を持ち込んできた。いまは,市役所に直接
(2)北浦村の位置゜社会経済概況 行ってしまう」,「議員は地域の役に立っていな
(3)村議会および議員 い」。
(4)嵐社会基蜘織(以上本号) 脇ように,銀の内に獺の存在感がなく
三.農村議員の意識と行動
@ なってきているという現実は,住民の行政直訴四.議会・議員と住民
(〈直接民主主義〉の進展?)による結果なのか,
それとも,住民をして直訴行為をやむをえなくさ
一.問題の所在と課題 せている原因なのか,論議のあるところだが,確
周知のように,昭和58年前半期の重要な政治ド 実にいえることは,住民をして,議会・議員・選 キュメントは,統一地方選挙および拘束名簿式 挙に対する不信を問断なく蓄積させ,現にみられ 比例代表制を新機軸とする参議院議員選挙であっ るように議員定数削減に容易に同意させる心情に た。選挙を集中的形態とする民主主義のリアリテ し,そして,議会不要論に組みする意識を形成せ イないしは生命力が両選挙を通じて確証せられた しめずにはおかないということである。勿論,そ か否かという問題では,否定的な論調が目立った れは,地方だけでなく,中央に関してもやはり進 ように思われる。とくに,前段の地方選挙に関し 行している事態であり,<制度における政治》の
ては,そのような論調が支配的であったといえる。 崩壊という危険性を内包している。 (1)
サの要因として,民主主義にとってもつ選挙の意 そこで,議会・議員不信の構造把握および克服 味や可能性がそれ自体制度的に保障完備されてい の方法探求が重要課題となるわけだが,その際に,
ないこと 例えば,小選挙区制・定数不均衡等 次のような経験則への考慮がなされてしかるべき による投票価値の不平等,情報非公開・非供給に ではないだろうか。すなわち,国民代表議会が住 よる住民の判断材料不足,等々一による選挙へ 民と共同して,住民の労働・生活諸条件をいかに の関心,投票意欲の減退を指摘する声も聞かれる 改善しうるかは議員の活動の質,その活動力およ が,より重要な指摘は 日常的に経験し,不信 び住民との信頼関係に大いに依存しているという が蓄積されているという意味で ,選挙の機能 こと,あるいは,議員の存在価値(有用性)およ 効果を左右する決定的な主体,したがって,究極 び権威は,住民が自分らの提案や考え方,また,
的に選挙の意味や可能性を体現するものとして期 批判や問題指摘を議員が誠実に受けとめ理解して 待されている住民代表=議員がその活動実態にお くれていると得心し,さらにすすんで,議会や議 いて,住民のそのような期待を充足しえていない 員の諸活動によって何らかのものが改善されたと というものである。 か,議会によってなされた決定が地域社会や住民
52 茨:城大学政経学会雑誌 第48号
個々人に役立ったと納得する程度に応じて,上昇 統化にのみ役立つことがないよう,地方議会 しているという経験則である。 は自律的な政治機関として活動することによ
かかる経験則に留意して課題設定を試みると り,地方自治体の最高の意思が,特定の統治 き,議員の意識構造・行動様式,そこにおける主 機関でなく全体としての住民に,さらには理
体性の存否という問鵯グ具体的な分析の土表に浮 念的な市民にあることを常に気づかせる役割上してくるであろう。勿論,代議制国家機関の成 を担っている。議会は制度上,専制を防止す
員=議員の社会的地位および役割,また,その活 るための機構であり,その意義は今なお軽視 動内容は,彼らが活動する国家そのものの性格に しえないのである。
よって決定的に刻印されているという意味で・上 (中川剛「地方議会の現段階と展望」,『自 にのべたく議員主体性〉論的問題把握の基礎論と 治研究』59巻8号,昭和58年8月)
して・国家性格の認識論が重視されねばならな さて,以上のような課題意識のもとに,地方議 い。しかし・本稿では・かかる認識論の分野は他 会一とくに,前述したように,1983年前半期の の論稿に委ねたい。いわゆる現代資本主義国家論 選挙の実態に関して否定的な評価論調が一段とつ から「三割自治」に象徴される現代日本の中央集 よかった市町村議会一の議員の意識構造・行動 権化構造論・行政国家論・あるいは・国家社会総 様式,そこにおける主体性の存否について,実証 体の新たな統合主義的再編成構想としての第二臨 的な方法で探求を試みた一事例が本稿である。市 調「行政改革」論に至るまで・現代日本国家の基 町村議会の議員を対象としたのは,住民の議会 本性格を究明する論稿は枚挙にいとまがないとい 像・議員像および評価意識の形成にとって市町村 えるからである。比喩的にいえば・国家論・政治 議会。議員の直接的な契機性あるいは実物教育的 機構論(議会論もふくむ)はあっても,議員論は 存在という一般的な意味に加えて,現在「行政改 ● o ● o ネし・ということである。とはいっても,議員不 革」論のなかで打出されている「地方自治体の単 信を問題にすることは・それと同時存在の議会不 一化」構想(都道府県の非自治体化=中央省庁の 信をも問題にしなければならず,したがって議員 地方出先機関化構想)にみられる市町村重点主義 主体性論を検討する行程において当然に,少なく 的「地方自治制再編成」が実体性を有するかどう
とも議会機能の現状分析は欠かせない。必要に応 か吟味するという意味で,また,市町村議会が住 じて行論中で言及していくつもりだが・本稿の 民の自治能力の反映態として,その自治能力水準
ミはじめに魯にあたり,以下の実証分析のモティ をはかる標識になるという意味からである。
一フと対象(仮説)的意味合いを奇しくも示唆し 本研究は,57〜8年度文部省科学研究費の補助 ている簡潔な摘示を見い出したので・ここに紹介 金交付をうけて行われたものであることを記して しておきたい。 おく。
行政国家現象のもと,議会が政策形成機能
(1)昭和58年4月26日付『朝日新聞』の社説は,かかを独占することができなくなり,さらには政
る論調の例示といえる。策形成の主導権を首長にとられがちな現状で
(2)同年4月5日付『朝日新聞』「『選挙』が危ない」,は,行政部門が政策の形成・執行を一手に掌 同年9月24日付同夕刊「地方の目」
握しようとする形勢は不可避である。けれど (3)議員の主体性の存否を問題にして,以前,「議会・
も住民が挙げて行政依存に陥り,地方自治の 議員の地位回復を」と題する次のような拙文を発表
行方を行政部門に握られてしまっては・市民 した。私の問題関心がそこに述べられており,現在 自治の理念さえ行政権の手に落ちるだろう。 も基本的に変っていないのでここに掲げておく。
首長や執行諸機関の施政が絶対化することの 「一.行政改革の射程と議会
ないよう,自治の理念が行政部門の行動の正 現在,『小さな政府』を標榜して行政改革を促進
田 村:農村社会・村議会・議員の意識と行動(上) 53
すべしとする見解が様々に出されている。そのなか 注意すべきは,このような危機の進行は,止むを で,1行政改革を必要ならしめた源因であるとして 得ないもの,不可避のものでは決してなく,議員の 議会制民主主義を指摘する見解が注目される。それ 主体性の喪失によってもたらされたものであるとい は,議会制民主主義の中核的な制度といえる選挙制 うことである。そもそも,『行政までの民主制』の が議員をして有権者・住民からの過剰な行政ニーズ 導入は,住民主体の自治の確立を目的としつつ,そ を行政部門に持ち込ませ,結果的に行政事務と機構 の一環として,伝統的な『議会までの民主制』の弱 の肥大化を促進せしめたというのである。この見解 点を補足し,行政部門との緊張関係の下に議会の機 は,さらにすすんで,伝統的に議会の独占的機能と 能を活性化することをも意図していた。そして,住 いわれてきた政策決定機能が実質的にはすでに行政 民代表という地位に由来する住民の意志(利害)の 部門の掌管するところとなったという既成事実に 統合,政策形成,条例制定(立法)などの機能を実 立って,行政部門による政策の体系的,合理的な策 現するために,議会・議員の調査権審議・発言権,
定と執行にとって議会・議員は阻害因であり,不要 証人尋問権など,必要な権限の拡大も法定されてき 物であるとまで論断するにいたっている。 た。この議会(員)権限の拡大は,自治権(自主立 この見解によれば,議会は,いまや,『行政にた 法権・財政権)拡大の一環として,戦後一貫して試 いする法治主義の形式』,すなわち,『法律・条例 みられてきており,住民代表議会の地位の復権,そ による行政』の型づくり機関という消極的,形式主 の機能の活性化として表象されている。
義的な存在理由しか与えられないことになる。なか しかし,法制度的にも裏打ちされた議会・議員の でも,『三割自治』といわれているように,そもそ 広範囲な可能性が未だ可能性の域に止まっている現 も政策選択がきわめて制約されており,かつまた, 状にある。その原因でもある議員の主体性の喪失と 住民との直接的な結合関係にあるところから上述の は,議員自体の行政依存という体質と構造に象徴さ 評価(住民の過剰な行政依存の促進・合理的行政の れている。
阻害因)がストレートに投げつけられるであろう地 議員の質問・意見表明が行政スタッフの作成にな 方議会・議員については,一体どれだけの考慮がな る質問文・意見書の棒読み。行政計画などの情報を されるであろう。 公表以前に入手し操作して利害関係住民との結合関
ともあれ,地方議会が行政改革の射程内に入って 係を維持する。他面で地位を利用して行政支配・行 いることは,右のような見解からだけでなく,道州 政私物化を意図する。等々。
制導入の議論が再開始されたことによっても,疑問 三・議員の主体性の確立
の余地のないところである。 行政依存の体質と構造が住民の行政ニーズを迅速 二.議会と『行政までの民主制』 に充足する便宜となっていることは事実である・そ このような地方議会・議員の危機状況は,いま出 のことが常に次の選挙を意識している議員にとっ 現したというより,地方自治体に特有の『行政まで て,行政依存の体質と構造を問題視させない理由で の民主制』によって形成促進されてきているという あろう・
一面もある。自治行政の首長の直接選挙制を頂点と しかし・先述したように・この体質と構造が議会 して,陳清,各種の直接請求制度により,住民は, 議員を行政改革の射程内に取り入れる論理の提供原 議会・議員を経由しないで直接に行政過程に自己の 因となっているのである。
意志を持ち込んでいる。さらに,近時,行政側の提 『行政までの民主制』が行部門による住民の意志 起にかかる『参加』『対話』の方式によって,行政 (利害)の統合,したがって1行政による利害の選択
と住民の直結傾向が加速化している。このような, 的操作を通じての住民支配をもたらす可能性は確実
『行政への住民の直接関与』の発展現象は,民主主 に予見される。
義の実質化として一般的に評価されているが,反面 議会による住民の意志(利害)の統合が公開の討 で議会・議員の代表機能の喪失あるいは変質,つま 論,採決という手続きにより,公平・平等さを確保 りその地位そのものの危機が同時に進行している過 するという点で勝れている。さらに重要なことは,
程でもある。 各層各地域の放置されているニーズを収集し統合し
54 茨城大学政経学会雑誌 第48号
ていく役割が議員のよくなしうるものとしてそれに (1)調査の概要
属するであろう・ 北浦村議会の議員(定数22名,欠員2名,現員 住民の個別利害と地域社会全体の利害との調整機 20名)に対する面接調査は,昭和58年7月25〜28
能を議会が果たし得るためには,政策の体系性,合 日に実施された。面接の場所は1人を除いてすべ
長)および区長会長にも面接した。行政部側と地これらのことは,基本的に,議員の主体1生の確立
ということにつきる。」 域(町内会)側からみた議会・議員の役割・行動
(昭和56年11月30日付r新いはらき新聞』掲載) 様式についての見解をも折々に紹介してみようと
思う。
二,調査の概要と北浦村議会および 質問項目は・前掲の『都市政治家の行動と意見』
る「市会議員に関する意識調査」を参照しつつ,
今回は・対象として茨城県行方郡北浦村を選定 北浦村に固有の問題に沿った独自項目を軸に設定 し・昭和58年7月現在における同村議会議員に対 した。それをグルーピングすると4つの群に区分 して行なった面接調査についての分析を報告す される。第1は,議員個人の属性にかかわる質問 る。 群,第2は,議員の選出環境・支持基盤に関する 北浦村の位置・社会経済構造の特徴等について もの,第3は,議員の職責観ならびに活動と政策 は後述することにして・ここでは・本県でも有数 の視点や領域に関するもの,第4は,議会内外に の農村地域にある当該村を選択した理由について おける実際の活動内容にかかわるもの,である。
述べておく。第一に・これまで各研究者により・ 以上の各群と群内の各項目を相互に関係づけ 本稿にのべたのと同趣旨の市町村議会議員調査が て,議員の現実の諸姿態を明らかにすることに焦
行なわれて貴軌縮が出誉れているカ1もそのほ 点をおいて分析をすすめて・・きたい。とんどが都市地域に対象(市議会)を選定してお
り・したがって都市と農村の両地域の議会(員)比 (2)北浦村の位置・社会経済概況
較を行なう必要一議員選出の二重構造分析の必 はじめに,北浦村の位置,社会経済構造の特徴
要臨「からも,選択される意味があるというこ について素描しておこう。と,第二に,第一の理由と関連するが,議会・議 北浦村は,茨城県東南部に位置し,霞ケ浦と北
員論にとって重要な分析枠組ともいえる「議員 浦に挾まれた貴重な自然資源をもつ地域で,標高 の政党所属」論が実際上機能しない農村地域の議 30〃前後の台地(畑地・山林),北浦にそそぐ山 会(員)分析には別の枠組を考えなければならず, 田川,武田川の2河川に沿う低地(水田)および
その素材を得る必要があるということ,第三に, 北浦沿岸に帯状につながる低湿地(水田,蓮根栽 地域社会全体にかかわる重要な政策的問題につい 培)よりなり,総面積58.49㎞2の内,農耕地が て,現実に,議会・議員が解決を求められている 28.40伽2(48.5%)を占める(表1参照)純農村 ところほど,上述してきたような課題の調査では 地区である。昭和30年4月1日,旧3村が合併し より明瞭なデータが得られるのではないかという て現在の北浦村が発足した。人口総数の増減率を
仮定に立って,北浦村が「し尿処理施設問題」で みると,最近の15年間は毎年度減少を示し,昭和 (3)全村的に激しい緊張状態にあることから選択した 55年にやっと増加に転じたものの,その実情は,
ということである。 64才以下の層は依然として減少しているのであっ て,65才以上の層の増加が押し上げの原因である
田 村:農村社会・村議会・議員の意識と行動(上) 55
表1 北浦村土地面積・土地利用の推移
山林・ 雑種地・
年次 総面積 田 構成比 畑 構成比 宅 地 構成比 原野 構成比 その他構成比 面積・土地利用
田〜雑種地・その 40 8.90 15.2 18ユ9 31.1 196 3.4 14.18 24.2 10.44 17.8 他は固定資産地積 45
58.49
8.87 15.2 18.19 31.1 1.98 3.4 14.19 243 15.00 25.6
(構成比は総面積=100) 50 T6
8.83 X.65
15.1 P6.5
17.87 P8.75
30.6 R2ユ
2.11 Q.65
3.6 S.5
14.23 P9.00
24.3 R2.5
15.45 W.44
26.4 P4.4
(kml%)
常陽産業開発センター「茨城県経済総覧』昭和55年版,昭和55年9月,同57年版,昭和57年8月。なお,1980年度農林業 センサスによると,北浦村の経営耕地面積の構成比は,総数2,415んαの内,田837肋,畑1,510んα樹園地6翫αとなって
いる。
表2 北浦村の人ロ
人口と世帯 人口総数 増加率 世 帯 人口 密度 集中地区人口 昼間人口 対夜間l口比 国調人口 40 11,611 (40/35)△6.4 2,230 188.5 一 11,198 96.4
10月1日
iん馳帯念
45 T0 T5
10,949 P0,921 P0,954
(45/40)△5.7 i50/45)△0.3 i55/50) 0.3
2,269 Q,369 Q,385
187.2 P86.7 P87.3
:一 10,347 Xβ55
@ 一
94.5 X0.2
@一 0〜14才 15〜64才 65才以上 就業人口 一次産業 構成比 農 業 構成比
年齢別人口 40 3,729 6,983 899 6ユ74 5,028 81.4 5,010 81.1
就 業 人 口 45 T0
2,764 Q,399
7,202 V,415
983
P,107
6β65 U,314
4,793 S,231
75.3 U7.0
4,760 S,194
74.8 U6.4 55 2,346 7,338 1,270 6,447 4,037 63.0 4,009 62.2 各年とも国調人口
産業は主なもの 二次産業 構成比 建設業 構成比 製造業 構成比三次産業 構成比卸・小売業構成比 サービス業構成比 40 319 5.2 115 L9 200 3.2 822 13.4 376 6.1 279 4.5
(人,%) 45 T0
595 V68
9.3 P2.2
208 R12
3.3 S.9
387 S54
6.1 V.2
977
P,305 15.4 Q0.8
440 S85
6.9 V.7
319 S15
5.0 U.6
55 863 13.0 355 5.5 507 7.9 1,544 239 581 9.0 521 8.1 上掲『茨城県経済総覧』昭和55年版.同57年版
ことを知る。人口の動態面からみたばあい,北浦 15.3%,ほぼ12%台で推移しているように,「三割 村は,その周辺地域(鹿島町筑波学園都市)にみ 自治」どころか「一割自治」といっても差支えな
られる激しい人口流出入状況にはないが,確実に いような財政状況にあるという点に集約される。
高齢化社会に向かっているといえる(表2参照)。 表3 北浦村の財政
昭和55年現在で,村の産業別就業人口(総数 6,447名)の構成比は,第一次産業63%(その内
̲業99.3%),第二次産業13%,第三次産業33・2
普
財政 i歳入)K模
地方税
禔@入 地 方
付税 投資的 o 費
標準
熕ュ K模
財政力 w 数
%となっている。総世帯(2,387戸)に占める農 会 計
?Z額 45 484 58 197 209 255 021 家の割合は71.5%である。このように,北浦村の 円50 1,049 130 545 263 690 0.19
基幹産業は農業である。 55
T7 2,007 Q,285
253 R50
898 X99
483 T06
1,199 P,403
0.23 O.25
北浦村財政構造の基本特色は,歳入に占める地 上渇『茨城県経済総覧』昭和57年版 方税の構i成比が昭和45〜57年において11・98%〜 「北浦村昭和57年度決算状況』
56 茨城大学攻経学会雑誌 第48号
しかも,自主財源である地方税の伸率が鈍化傾向 園都市の建i設等の地域開発による急変過程に未だ にある。因に・昭和57年度の地方税において法 巻き込まれていず,農業経営を基盤とした伝統的 人村民税の構成比は2・3%・個人村民税のそれは な社会生活を多分に温存している純農村社会であ 3a 6%である。また,地方交付税の伸率も昭和45 るということができる。
年〜50年間を100としたとき51年〜55年間は5a35
と低下している(表3参照)。 (3)村議会および議員
昭和57年度決算状況を少しく解剖してみると, ここでは,次章以降が現職議員の諸姿態を浮き 才入財源のうち,一般財源(地方税,地方交付金 彫りにすることに当てられるのに先立って,過去 等)62.0%,国県支出金・起債等が38.0%の比率 にみられる議会・議員の特徴を少しく考察して,北 にあり,さらに,一一般財源のなかで人件費29.2瓢 浦村における議会・議員の社会的位置のようなも 物件費17.2%,補助費1a 3%,公債費7.7%等経 のを明らかにしておきたい。このような考察のば 常的経費が占める割合は77.7%にのぼり,残りが あい視点は多岐にわたる一例えば, 議会史を内 投資的経費に回わっている。このようにみると, 容論的に把握するとなれば,折々の政策選択と条 北浦村財政は,その運営面における健全化努力が 例制定の歴史分析が欠かせない一が,紙数の制 なされているものの,基盤としては脆弱で,しか 約もあるので以下には住民の議会・議員観すな も短時日にそれを打開する可能性があるものとは わち,議会や議員が住民によってどのような位置,
いえない。 評価づけをされているかについて間接的な手法で 以上にみてきた状況を総合すると,北浦村は, 一住民の意識や見解の統計数値等を媒介とせず 周辺地域が首都80枷圏内にあって急激な都市化に 一探ってみる。手法の一つは,村議会議員選挙の
よる変貌と鹿島臨海工業地帯の開発や筑波研究学 投票率の推移を通じての住民の議員観もう一っ 表4 北浦村議会議員選挙投票率の推移
投 票 日 競争 率 当日有権者 投票者数 投票率(矧 投票率の男女比幽
定数分の候補者数 数(A) (B) (B}/(A}
男 女
昭和31年第1回
31/26=1.19 3月25日
昭和35年第2回 3月23日
29/26=・1.12 6,966 6,587 94.56 95.61 93.65
昭和39年第3回 3月23日
28〆26−1.08 6,911 6,558 94.89 94.74 95.03
昭和43年第4回 3月15日
29/26=1.12 6,701 6,430 95.96 95.78 96.11
昭和47年
第5回@ 3月25日 23/22=1.05 7,325 6,898 94.61 94.29 94.90
昭和51年第6回 3月27日
25/22=1.14 7,789 7,281 93.50 93.23 93.76
昭和55年第7回 3月15日
25/22=1.14 8,015 7,552 94.23 94.19 94.26
(注)第1回村議会議員選挙は,津澄地区(定員9名),武田地区(定員10名),西地区(定員7名)の地区単位で行われ 要地区は無競争他二地区で投票が行なわれた。村全体の投票者数投票率の記録は,県・北浦村選管で見ることが できなかった。
なお,参考までに,他の各級選挙の投票率を示すと,
昭和44年12月27日衆議院議院選挙の投票率は,北浦村73.01%,県全体70.73%
昭和49年12月15日茨城県議会議員選挙の投票率は,北浦村67.52%,県全体73.5%
昭和55年6月22日参議院議員選挙の投票率は,北浦村67.76%,県全体72.96%
田 村:農村社会・村議会・議員の意識と行動(上) 57
は,議会に対する請願の行動を通しての住民の議 れであろう。他の選挙の投票率が相対的に低く,
会・議員観である。まず,表4.〔北浦村議会議員 また,競争率も高くはないので,[村民の政治意 選挙投票率の推移〕をみると,北浦村発足(昭和 識高低論では説明にならないことはいうまでもな 30年4月1日)以来,一貫して,村会議員選挙の い。 表5・〔北浦村議会歴代議員の地区別および 投票率が高いことを知る。一般に,行政区画の小 新現前別構成〕により一目瞭然だが,議員選出に
さな選挙ほど投票率が高くなるという傾向があ 地域1生の影がきわめて濃く,大選挙区制にもかか り,北浦村も例外でないことを基本的には示して わらずあたかも地区指定ポストの感がする。候補 いる。このように村会議員選挙の投票率が高いと 者個人の個人的欲望,資産,資質が機能する範囲 いうことは,議会における地域代表の必要性が地 を越えた地域ダイナミズムの作動=地元選出議員 域住民によってつよく意識されていることの現わ の実現のための強力な地域共同の存在を推定せし
表5 北浦村議会歴代議員の地区別・新現前別構成
有 権 者 数 選挙年・
@定数 31年 35年 39年 43年、47年・51年 55年
投 票 区 現1S7年2月 在 現56年9月 在 大字名・
@世帯数 26名 26名 26名 26名 22名 22名 !
22名
中 根 89 1① 1① 1① 11(1)P 1① 1①
繁 昌 1,475人 1,579人 繁 昌276 2①
@(1) 3③ 4③
@(1) 4①
@(3)
1R③ 3(3) ・爺
吉 川 100 1① 2② 1① 1① 11① 1〔1)P 山 田 1,111人 1,248人 山 田387 4③
@(1) 4曾i4墜腿
,♂、③ (1)1 (1)
応 5 (3)
南 高 岡 461人 507人 南高岡 144 2② 1①
回11
1(1) [ 1① 1①一
小 幡 807人 904人 小 幡243 3①
@(2} 3①
@{2) 2Hl 3①
@(2)
2①旨(1} (1目
1①
行 戸 537人 601人 行 戸 169 2①
@(1) 2② 2(2) 3③ 1(1)
小 貫 1,100人 1,278人 小 貫327 3②
@(1}
1 ②3(3)i3(1)
2①@1
①13(2)i1(1)1(1)
次 木115 1① 1① 1① 2② 3①@(2) ①1Q (1}
1 2(2)
両 宿 1,183人 1,308人 両 宿131 ③1Q(1−1① 1① 2② 2①
@1 ・忠
3雷 1
内 宿116 1(1) 1① 1① 2② 1(1》 2〔1) 1
三 和148 2②
(1)2 1 3雷 1
2(2) 1(1} 1① 1(1)
三 和 652人 746人 長野江 61 1① 1(1) 1 1 1〔1}
成 田 81 1(1) 1ω 1(1) 1(1) 1① 1①
(注)各選挙年の縦の数字で左側は当選者数右側は当選者の新・現・前別数、○印数は紙{}印数は現、ローマ数字は前 を意味する。
58 茨城大学攻経学会雑誌 第48号
める投票率の高さである。共同体意識を基底とす 組織,いわゆる町内会の組織機能についての分析 る地縁・血縁関係の全面的な作動がく地区推薦・ が重要となる。この点は後でのべることにする。
当選〉へと押し上げ,それが村全体に一定の均衡 さて,他の手法である請願行動を通ずる住民の 状態となって固着しているということであろう。 議会・議員観を次に探ってみる。
● ■ ニころが,表6・〔各選挙年における当選議員 請願は,選挙一一一意志伝達のよりよき担手の選 の新現前構成比〕によると・最近の昭和55年選挙 出行為一にっつく,住民の議会に対する具体 の結果に若干の変化がみられるが・それ以前は常 的,積極的な意志反映行為であり,その行使水準 に・新人当選の割合が半数強を占めていることを は,議会・議員に対する住民の信任のバロメータ 知る。このことは,前述した地元選出議員の実現 一である。
のための強力な地域共同の一方で・特定人の議 北浦村における最近の10年間(昭和47年3月25 員職への長期在職を回避しているということを示 日第5回選挙以降57年度末まで)の請願状況を表 す・現職議員の再選辞退ということも多分に考え 示したのが表7.〔北浦村請願状況〕である。各 られるが・一種の輪番制を採用することで・地域 年一貫して道路改良・舗装整備要求が高い比率を 住民全体が新しい地域リーダーの発堀育成に共同 占めている。大型農業機械化・モータリゼイショ 責任をもつという意識の形成の効果と,ボス的存 ンの急激な進展に伴って,狭い旧農道の拡幅改良 在の防止を図るという効果とをあげてきているよ 要求が間断なく提起されている実情をもの語って うに思われる。政治的熟練者を欠くことにより行 いる。農村における施策選択の苦境の原因を示す 政統制という議会の主要任務が不十分となること 一例である。ここにいう道路改良は,後述する区 は間違いない。だがこれは,巨視的視点,没地域 長扱いの道路補修申請を通ずる道路工事とは異な 的視点に立つ発想であって,逆にいえば,地元代 り,新道建設,既存道路拡幅,側溝,歩道取付等,
表の確保のための地域共同には,まさに地域的制 工事規模が大きなものを指す。
約性が内在しているということになる。いずれに 農業を基幹産業とするこの地域にあっては予想 せよ,このような選出形態方法が地域共同のエネ に反して,農業基盤整備とか農業改良援助等,直 ルギーを再生産する原因であるにしても,根本的 接に農業経営にかかわって村に要求する請願が少 には,候補者個人の思惑を超越した地域利害の担 なく,国の政策改善を促す村議会決議(意見書)採 手確保という強固な共同体的意識が議会・議員の 択の要請 減反政策反対・食糧管理制度維持,
意識,行動に投影しているということができる。 米価値上げ要求,たばこ専売制度維持,等々一 このように考えたばあい,地域共同を支える地域 をもって対処している。それと関連して,請願状
表6 各選挙年における当選議員の新現前の構成比
選挙年・
@ 定数 31年 35年 39年 43年 47年 51年 5 5年
新現前別 26名 26名 26名 26名 22名 22名 22名
新 人 17/26=65.4 15/26=57.7 15/26=57.7 11/26=42.3 11/22=50.0 13/22=59.0 8/22−36.4
現 職 9/26訟34。7 8/26=30.8 6/26=23,1 13/26;50.0 10/22=45.5 9/22=40.9 12/22=54.5
前 ・ 元 3/26;1L5 5/26=19.2 2/26=7.0 1/22=4.5 2/22;0.09
(注)昭和30年4月1日北浦村発足時には,合併前の3村議会議員全員(48名)をもって議会の成員とし,30年12月議会での
定数条例により定数26名を決定した。31年選挙の現職当選者および35年選挙の前・元当選者とは,北浦村発足時の旧3村議会議員48名の中にいた者を指す。
田 村:農村社会・村議会・議員の意識と行動(上) 59
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60 茨城大学政経学会雑誌 第48号
表8 各請願の署名者数と多数者署名の内実
・請願件数 47年 48年 49年 50年 51年 52年 53年 54年 55年 56年 57年
請願受理番号 8件 8件 8件 10件 6件 4件 10件 6件 12件 18件 9件
1 37名 21名 1,486名 60名 2名 25名 1名 1名 1名 16名 146名
2 59 1 1 60 17 1 1,634 1 1 28 2
3 10 1 35 16 81 112 19 1 2 1 1
4 8 4 2 16 444 828 47 1 2 265 1
5 34 4 53 2 468 が四 26 3 1 3 2
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計(署名者数) 568 41 2,346 936 1.794 966 5,161 8 316 1 1,106 2、062一一
(注)4番(郵便貯金制度維持),12番(国民本位の行政改革で農林業再建),17番(減反反対)は地区労を通じて収集さ れている。
※なお,1人署名の者とは,区長が大部分で若干農協組合長のものがある。
況の特徴の一つであるが,議会を媒介とする国政 容的には,区長単独署名の請願が全て道路改良・
への意志反映の制度として請願が活用されはじめ 舗装整備要求であり,農協組合長のそれは食管制 ているということである。昭和55年以降からとく 度維持・米価値上げ要求等国への意見書を求める に顕著である。55年3月に行われた村議会選挙に ものが全てである。極少数連記の請願も同様の内 よって議員構成に変化が生じたこともその要因で 容傾向である。農村にあっては,このように請願 あろう。 が住民組織代表等により代行的に行なわれている
ところで表&〔各請願の署名者数と多数者署 現状にある。地区住民の意を体した区長の請願行 名の内実〕によると・単独署名の請願提出が相当 為は,それがなされた限りでは,地元選出議員と 数あることに気付く。署名者4〜5名以内にまで の連繋のもとに,村の施策の中に地区住民要求を 広げれば5割に達する。そのほとんどが・各区長 確実に組み込ませている。しかも,地区全体で優
または北浦村農業協同組合長による単独署名一 先度の高い要求を,他地区との競合を回避しつ 前者が圧倒的に多い一・ならびに区長と他2〜 つ,かつ,村の予算措置可能な範囲内に収まるよ
3名による極少数連記のものである。そして,内 うに提出するという合理性をももっている。村会
田 村:農村社会・村議会・議員の意識と行動(上) 61
議員間のく実力〉差による村の行政施策・予算措 対・改善意見書採択を求める請願」に関しての村 置の偏頗,ないしは,選挙目当のスタンドプレイ 議会の審議結果く不採択,審議未了〉は,多くが 的「請願」等を回避しうる合理性をももってい 地区労提出の案件である。このような請願行動と
る。しかし,他面における住民個々人の請願権行 村議会での審議を通じて相方共に,次第に政治選 使への事実上の制約も確かなものとして存在する 択の枠組が固定していく傾向にある。それゆえ,
であろう。したがって,地区の住民組織が住民相 「無所属」という装いがそれ自体価値的表象では 互の利害を保障するような共同意志を形成しうる なくて・選挙技術上の必要に由来するものでしか か否かが要諦である。この点は,地区住民組織が ない・ということを相方共に認識してきているよ 上からの支配統制の道具と化さないためにも,重 うである。
要な観点といえるであろう。 さて次に,議員と請願との関係実態をみてみよ 他九多数者署名の請願は,地区労,PTA, う。
農協等の組織を通じての署名取組みにもとつくも 地方自治法124条により,請願は議員の紹介手 のである。そのなか「651年度までは,PTA, 続を経なければならない。したがって,議員と請 父母の会といった非政治的,住民参与型の社会団 願との関係実態は,かかる紹介手続の実清にその 体による請願が普通であったのに比して,それ以 検討素材の多くを見い出すことができる。表9.
降は,主として地区労によるものであり,前者型 〔北浦村会議員の請願紹介状況〕は,昭和47年か が57年度の軟式野球部連盟によるもの1つだけと ら11年間各年の議員の紹介件数分布を示したもの なった。このような変化の背景には,前述した地 である。とくに目立つ傾向は,村会議員選挙が行 区住民組織とりわけ,その代表である区長を通 われた年 47年,51年,55年 の請願紹介比 じての請願に次第にとって代わられた動きがあっ 率が例外なく他の年のそれより高率であるという たのではないかと考える。 ことである。それらの年の3月に選挙が行われ,
労働組合が,企業外において,その利害にかか 翌4月から新議員により議会が構成される。4年 わる要求を議会への請願という形態で表示し実現 任期の開始期で,選挙の洗礼を経た新議員が請願 を目指す行動は,昭和50年代の労働運動の特徴の 促進,積極紹介の姿勢をとるのも通常かもしれな 一つであり,議会(員)と緊張関係をもちうる社 い。しかし,時間の経過とともに・請願紹介比率 会団体が少ない農村地域にあっては,議会(員) が下落していき,選挙の前年ながら54年のように 機能の活性化にとっても,また,組合員の市民的・ 2割台に落込む状況は,請願件数が少ないことと 政治的存在感覚への刺戟・形成にとっても,好ま 相侯って,住民との結合力が弱化した現われでは
しい選択といえる。表7にみられる「国の政策反 ないかと考える。
表9 北浦村会議員の請願紹介状況
年 度 47年 48年 49年 50年 51年 52年 53年 54年 55年 56年 57年 計
請 願 件 数 8 8 8 10 6 4 10 6 12 18 9 98
紹介議員延人数 27名 19 17 31 23 8 21 11 26 33 ll 227
議 1 件 13名 3 11 7 9 6 4 3 9 6 8 79
募 2 件 1名 8 3 7 1 5 1 2 3 31
紹 3 件 4名 8 1 2 1 4 i 21
舞 4 件 1名 1 2
数 5 件 2名 1 3
請願紹介比率(% 81.8 50.0 63.9 68.1 72.7 31.8 50.0 27.3 63.6 68.2 40.9 50.6・
(注)請願紹介比率とは,議員定数(22名)分の各年度紹介議員数である。