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自己統制型と社会的スキルの関係
著者 藤田 正
雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要
巻 33
ページ 125‑129
発行年 1997‑03‑01
その他のタイトル A Study of Relation between Self Control and Social Skills
URL http://hdl.handle.net/10105/6959
自己統制型と社会的スキルの関係*
藤 田 正**
(心理学教室)
要旨 自己統制型と社会的スキルの関係について検討するために、大学生、
専門学校生137名を対象に、「一般性Locus ofControl尺度」と「社会的スキ ル尺度」を実施した。その結果、自己統制型と社会的スキルには正の相関が みられ、内的統制型の方が外的統制型よりも社会的スキル得点が高かった。
この結果は、内的統制型の方が外的統制型よりも社会的スキルが優れている ことを示している。
キーワード:自己統制塑(内的・外的統制塑)、社会的スキル
問 題
それぞれの人間は、その人の社会的経験を通して学習してきた固有の問題解決の仕方、ある いは原則を何にでも適用しようとし、それが通用すると痢待する。Rotter(1966)は、このよう にして形成された一般化期待を汎化期待(generalizedexpectancy)とよんだ。この汎化期待をパ ーソナリティ変数としてみたのが、内的統制(internalcontrol)−外的統制(externalcontrol)型 である。
内的統制型の人は、自分に起こることは、自分の能力や努力によって統制された結果である という信念をもつ人である。それに対して、外的統制塾の人は、自分に起こることは、運や偶 然、有力な他者によって統制された結果であるという信念をもつ人である。内的統制型の人は 外的統制型の人に比べて、成功・失敗を自分の行動や特性に随伴しているものとしてとらえ、
周囲の環境に対して統制可能感を抱いている。そのため、何らかの事象や行為に続く行動に対 する意欲や期待が生じやすいといわれている。
内的統制塾と外的統制型のパーソナリティ特性の違いに関して幾つかの研究が行われてい る。内的統制型の人は、外的統制型の人に比べて優越感、耐久力、他者に好感を与える態度、
知的能力、社会的適応能力の得点が高かった。さらに、内的統制型の人は他者への好ましい態 度と同時に、自己に対しても自信があり、自尊心が高いという結果であった(Hersh&
Scheibi,1967)。
藤田・笹川(1990)は、専門学校学生を対象に自己統制尺度(RotterITE尺度)とY−G性格検 査を実施し、内的統制塾と外的統制型の性格特性について検討した。結果は、Y−G惟格検査
*A StudyofRelationbetween SelfControlandSocialSkills
**TadashiFUJITA(DQartmentqfPgchology.mra th4iversiO,dEducation,Nara)
の性格特性の内、情緒の安定性の因子では抑うつ性と神経質の2つの特性において内的統制型 の方が外的統制型よりも情緒の安定傾向が強かった。さらに社会適応性の因子では客観性、協 調性の特性において内的統制型の方が外的統制型よりも社会的適応性の傾向が強かった。′しか し、向性の因子に関しては、内的統制型と外的統制型の間には大きな違いがみられなかったと いう結果であった。
パーソナリティ特性のひとつである不安については、次郎丸(1985)が高校生を対象にして、
外的統制型の人は内的統制型の人よりも、学習不安、対人的不安、孤独傾向、過敏傾向、衝動 傾向が強いことを兄いだしている。また、藤田(1987)は小学6年を対象に状態一特性不安尺度 を実施して、外的統制の子どもは内的統制の子どもよりも、不安が高いことを兄いだしてい る。
以上の結果が示すように、内的統制者は外的統制者に比べて統制可能感を強くもっているた め、日常生活のあらゆる場面において望ましい性格特性や社会的適応行動を示すものと解釈で きる。したがって、社会的スキルが強く要求される対人関係的場面においても、それを適用す る可能性が大きい。
本研究では、内的統制型一外的統制型の人における社会的スキルの違いについて、社会的ス キルの下位スキルとの関係についても検討することにした。亨想として、社会的スキルにおい ても内的統制型の人の方が外的統制型の人よりも優れていることが考えられる。
方 法
調査対象 調査対象は、大学生及び専門学校生137名であった。
調査内容1.自己統制型の調査−樋口ら(1982)の作成した「一般性Locus of Control尺 度」を用いた。この尺度は、「あなたは、努力すれば、どんなことでも自分の力でできると思 いますか。」のような18項目から構成されている。現在の自分について、4件法で回答させた。
得点範囲は18−72点で、得点が高い程内的統制傾向が強くなっている。内的統制傾向とは、何 事も自分の努力などの内的要因によってその結果が決定されるという信念を持つ程度であり、
外的統制傾向とは、運などの外的要因によって結果が決定されるという信念を持つ程度であ る。
2.社会的スキルの調査−菊地(1988)の作成した「社会的スキル尺度」を用いた。この 尺度は、以下に示すような6つの下位スキルから構成され、18項目を含んでいる。
(》初歩的なスキル [初対面の人とでもすぐ会話が始められ、会話を途切れないようにす る、自己紹介が上手にできるなどの3項目]
②高度なスキル [やってもらいたいことをうまく指示できる、自分の失敗をすぐに謝る、
他者の会話に気軽に参加できるなどの3項目]
③感情処理のスキル [怒っている相手をうまくなだめる、恐怖感をうまく処理できる、自 分の感情をうまく表現できる自分の感情に気づき、その感情を表現するなどの3項目]
(り調整のスキル [他人を助ける、周囲の人とのトラブルを上手に処理する、気まずいこと
のあった相手と上手に和解できるなどの3項目]
⑤ストレスを処理するスキル [相手から非難された時の対処、周囲の矛盾する話に対する 処理、自分と違う意見を持った人との付き合いなどを上手にやっていけるなどの3項
目]
⑥計画のスキル [仕事の目標を立てる、仕事の手順を決定する、仕事の上での問題点の発 見などについてを困難を感じることなくできるなどの3項目]
回答は、それぞれの項目に対して「1いつもそうでない」から「5 いつもそうだ」の5 件法で回答するようになっている。得点の範囲は18点−90点で、得点が高い程社会的スキルが 高くなっている。
手続き 講義の時間を利用して実施した。自己統制型の調査と社会的スキルの調査を別の日 に実施した。調査者がそれぞれの項目を読み上げて、一斉に回答させた。なお、回答の仕方に ついては、それぞれの調査の紹介の部分に述べている。
結 果 と 考 察
(》自己統制塑尺度と社会的スキル得点の相関
表1は、調査対象全員についての自己統制尺度得点と社会的スキル得点の総点及び6つの下 位スキル得点との相関係数を示したものである。自己統制得点と社会的スキルの総点との相関
は、低いが有意であった(γ=.27,♪<.05)。また、自己統制得点と下位スキルについては、初 歩的スキル(γ=.22,ク<.05)、高度スキル(γ=.22,♪<.05)、調整スキル(γ=.25,タ<.05)のそれ
ぞれにおいて低いが有意な相関が得られた。これらの下位尺度においては、自己兢制得点が高 い、つまり内的統制傾向が強いほど社会的スキルの得点も高くなる傾向があることを示してい る。
表1 自己統制尺度得点と社会的スキル得点の相関係数(N=137)
社会的 ス キ ル
総点 初歩 高度 感情処理 調整 ストレス処理 計画
自己統制 .267** .208* .221串 .192 .251串 .083 .144*タ<.05,**♪<.01
(参内的統制型・外的統制型と社会的スキルの比較
自己統制尺度得点の上位45名(54−64点)と下位45名(31−49点)を抽出し、それぞれを内
的統制型と外的統制型とした。両群の自己統制得点の平均値についてt検定を行った結果、有
意差(f(88)=18.51,♪<.001)がみられた。したがって、両群は異なる2つの許であるといえ
る。表2は、内的統制型と外的統制型のそれぞれにおける社会的スキルの総点と6つの下位ス
キル得点の平均値と標準偏差(SD)を示したものである。内的統制型と外的統制型の社会的
スキルの総点と6つの下位スキル得点の平均値についてt検定を行った。その結果、総点(f
(88)=3.92,ク<.001)、初歩的スキル(£(88)=2.93,♪<.01)、高度なスキル(自88)=3.39,♪
<.m)、感情処理のスキル(自88)=2.50,♪<.05)、調整のスキル(∫(88)=3.78,ク<.001)、計 画のスキル(〜(88)=2.81,ク<.01)にそれぞれ有意な差がみられた。
表2 内的統制型と外的統制型の社会的スキル得点の平均とSD 社会的ス キ ル
総点 初歩 高度 感情処理 調整 ストレス処理 計画 内的統制 60.8 10.10 11.00 9.71 9.82 9.82 10.40
(45名) (8.11)(2.29)(2.19)(1.37)(1.50)(1.42)(1.90)
外的統制 53.7 8.64 9.58 8.69 8.40 9.22 9.18
(45名) (8.38)(2.39)(1.71)(1.96)(1.99)(2.21)(2.17)
f 値 3.92*** 2.93** 3.39** 2.50* 3.78*** 1.52 2.81**
()内の数値はSD *l<.05,**♪<.01,***♪<.001
以上の結果より、内的統制型は外的統制型に比べて社会的スキルが高いことが明らかになっ た。特に下位スキルの中では、知らない人にでもすぐに会話が始められ、あまり途切れること なく会話が続けられる、自己紹介を上手にできるといった初歩的な社会的スキル、自分のやっ てもらいたいことをうまく人に指示したり、他人が話している場に気軽に参加する、自分の失 敗はすぐに謝ることができるなどの高度な社会的スキル、怒っている相手をうまくなだめる、
恐怖心をうまく処理できる、自分の感情や気持ちを素直に表現できるといった感情処理のスキ ル、他人を上手に助ける、周囲の人とのトラブルを上手に処理できる、気まずいことがあった 相手と上手に和解できるといった調整のスキル、仕事の目標を立てる、仕事の手順を決める、
仕事上の問題点を発見するなどのことを困難を感じることなくできるといった計画のスキルに おいて、内的統制型の人の方が外的統制型の人よりも優れていた。
これまでの研究で、内的統制型は外的統制型よりも情緒的な安定や社会的適応が良好である こと、また内的統制型の方が対人的不安傾向や孤独傾向が低いことが見出されている(次郎 九,1985:藤田,1987)。さらに、本研究の結果からは、内的統制型の方が外的統制塾よりも社会 的スキルが高く、より望ましい対人関係を作って行きやすいことが明かになった。
内的統制型の人は自分の努力や能力によって、周囲の環境に働きかけることにより事態を変
えることができるという統制可能感を強くもっている(Rotter,1966)。したがって、初歩的ス
キル、高度なスキル、感情処理のスキル、調整のスキル、計画のスキルが外的統制型の人より
も高かったという本研究の結果は、内的統制者におけるより強い統制可能感が、さまざまな対
人関係場面における社会的適応能力をよりよく発揮させていると結論できる。
引 用 文 献
藤田 正1987 児童の自己統制型と不安に関する研究 奈良教育大学教育研究所紀 要,23,71−79.
藤田 正・笹川宏樹1990 内的・外的統制型の性格特性に関する研究 奈良教育大学教育研 究所紀要,26,67−70.
Hersch.P.D.,& Scheibe,K且1967 Reliability and validity ofinternal−eXternal control as a personality dimension.joumaldCounselingP邸Chol0gy31,609−613.
次郎丸睦子1985 高校生におけるlocusofcontrolと不安傾向および学業成績 筑波大学医療 技術短期大学部研究報告,6,69−75.
鎌原雅彦・樋ロー辰・清水直治1982 Locus of control尺度の作成と、信頼性、妥当性の検 討 教育心理学研究,30,302−307.
菊地章夫1988 思いやりを科学する一向社会的行動の心理とスキルー 川島書店
RotterJ.B.1966Generalized expectancies forinternalversus externalcontrolof reinfor Cement.
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