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雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

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(1)

奈良教育大学学術リポジトリNEAR

高機能自閉症児における対人関係・コミュニケーシ ョン機能の発達 −対人関係・コミュニケーション 機能における問題の改善にむけての取り組み−

著者 田辺 正友, 田村 浩子

雑誌名 教育実践総合センター研究紀要

巻 11

ページ 1‑8

発行年 2002‑03‑31

その他のタイトル Development of Interpersonal relationship in a High‑functioning Autistic Child

URL http://hdl.handle.net/10105/4074

(2)

高機能自閉症児における対人関係・コミュニケーション機能の発達

一対人関係・コミュニケーション機能における問題の改善にむけての取り組み‑

田 辺 正 友・田 村 浩 子 (奈良教育大学障害児教育教室)

Development of Interpersonal relationship in a High‑functioning Autistic Chi一d

Masatomo TANABE・Hiroko TAMURA

(Department of Education for Handicapped Children, Nara University of Education)

Abstract:This study is one of a series of studies attempting to clarify the developmental problems and to seek for the appropriate educational care in autistic children. In this study, we attempted to clarify the developmental process of cognitive functions from the infantile period to the childhood in a high‑functioning autistic child, and to analyze his interpersonal problems in relation to the developmental process. The subject was a 15‑year‑

old autistic boy with the high‑functioning in terms of his language and intellectual skills. Theresults indicated that there is the cognitive deficits such as conceptual problem solving and reasoning on results of the intellectual tests in the case with a high‑functioning autistic child, and that he was still problems with the interpersonal relationship and communication functions.

Key words:education for autistic child, Interpersonal relationship, high‑functioning autistic child

1.はじめに

本研究は、自閉症児の発達と障害の問題を明らかに し、そこから彼らの発達を援助する教育的活動のあり 方を探ろうとして計画された一連の研究のひとつであ る。本稿では、ひとりの高機能自閉症児の幼児期から 児童期の発達経過の縦断的分析をとおして、まず、 ① 高機能自閉症児の認知機能の発達過程と発達特徴を明

らかにするとともに、その発達過程・特徴と関連させ て対人関係・コミュニケ‑ション機能の問題について 分析し、 ②それらの問題・特徴をふまえて、教育的活 動の問題について検討することを目的としたものであ

る。

自閉症の中核的な症状は、対人関係およびコミュニ ケーションの障害にあるが、その背景に何らかの認知 障害を想定したRutter (1983)の研究以来、その障 害‑の認知論的究明が精力的に行われている現状にあ るといえよう。そして、どのような認知障害が自閉症 の基本障害かについても、いくつかの仮説が提唱され てきている。しかし、これらの仮説のいずれに対して

も反論があり、自閉症における広範な多様性および自 閉症にみられる対人関係障害、コミュニケーション障

* 本学非常勤講師

害、想像力の障害、儀式的・脅迫的行動や同一性保持 行動など強度にパターン化した「固執」行動といった 症状・行動特徴、認知機能のバラツキ、サバンのスキ ルといったすべての症状を単一の基本障害で説明でき

るかといった問題も含めてさらなる検討が必要であろ

つo

その検討に際して大切にしておきたい研究上の視点 についてふれておきたい。筆者らは療育や教育相談活 動で関わりをもってきた自閉症児の対人関係やコミュ

ニケ‑ション上の問題や特異な行動といわれる問題は、

それ自体が障害に固有で不変的なものではなく、加齢 や発達過程のなかで変容していくことを、そして、こ

うした行動特徴が、認知発達レベルや対人関係・コミュ ニケーション機能と関連してその質をかえていくこと を確認してきた(田辺ら, 1990・1997;田村ら, 1991)。

さらに、こうした結果をふまえて、筆者らは、教育的 な関わりの問題の検討に際しては、自閉症児の示す一 つひとつの行動を単発的な結果としてとらえるなかで

「特異」な行動とみて、それを直接的に消去してしま おうとする対症療法的なアプローチを性急に行うので

はなく、発達段階、発達特徴やコミュニケーション意 図・文脈などとも関連させて把握することの重要性を

(3)

田辺 正友・田村 浩子

強調しておきたい。

療育・教育の場で、自閉症といわれる子どもたちと 関わるわれわれ指導者にとって、子どもたちの外に現 われた症状や行動の直接的対応に追われるのではなく、

その症状・行動の背景にある基本的障害はなにか、さ らには、その症状・行動が発達に向かいっつある本人 にとってどういう意味をもっかを明らかにすることは 極めて重要な課題である。そして、そうした症状形成 の内的機序を発達過程と関連させて把握し、そこに療 育・教育の果たしている意味・役割を検討してみるこ

とが重要である。

2.方 法

対象児1986年7月生まれ、現在15歳の中学校障害 児学級に在籍(3年生)する男児。家族構成は、父・

母・姉・本児の4人家族。生下時体重3×××g、満期産、

自然分娩、始歩11カ月。 10カ月に「マンマ(食べ物)」

と初語があってから1歳6カ月頃までは語嚢数の増加 (10語程度)がみられたが、その後、徐々に消失して いる。再び発語が見られたのは2歳10カ月であった。

脳波異常、てんかん発作等の問題は現在までみられて いない。

2歳9カ月から奈良県K市の障害児通園事業での療 育に過2回通園。 2歳時に筆者らが実施しているN教 育大学障害児教育教室の教育相談に来室し、その後2 歳9か月から就学前障害児療育教室での過1回の療育

に参加、 N大学附属小学校(障害児学級)入学と共に 月1回の療育活動「ペンギン教室」 (通称)に参加し 現在に至っている。療育教室に参加し始めた2歳後半 頃には、現在用いられているDSM‑Ⅳの自閉症の診 断基準のA(l)‑(a)(b)(c)(d)、 (2ト(b)(d)、 (3ト(a)の診断項 目に合致する臨床症状・特徴を有していた。

分析資料・手続き 本稿での分析資料は主として以 下によった。

1)認知機能の発達過程・発達特徴 2歳時から12歳 8か月の間に適宜実施してきた新版K式発達検査(以 下、 K式発達検査)およびwise‑R (CAll: 8, C A13: 0, CAM: 0)の結果。

2)対人関係・コミュニケーション機能の問題 ①2 歳9か月時から現在までの療育教室・療育活動をとお して得られた行動観察記録およびVTR記録。療育場 面での行動特徴記録は記述法により、 2名の担当者 (主任担当者と学生担当者)が個別に行った。 ②母親 による本児の歩みの記録、家庭での様子の聴取。 ③小 学校での様子については定期的に実施した授業場面に おける観察記録。 ④小学校および中学校での様子につ いては、担当教師への聴取、実践記録等の資料。 ⑤小 学校4年から現在に至る間の家庭教師(ボランティア)

への聴取資料。

2:0  3:0  4:0  5:0  6:0  7:0  8:0  9:0 10:0 11:0 12:0 13:0 CA

図1 K児の克行版K式罪瀞余査轟き異の発遍匡描数(DQ)の変イヒ

(4)

高機能自閉症児における対人関係・コミュニケ‑ション機能の発達

3.結 果

(1)認知機能の発達過程・発達特徴と対人関係・コミュ ニケーション機能の発達変容

①K式発達検査からみた発達過程・発達特徴 CA2 : 0からCA12: 8の間に適宜実施したK式 発達検査結果の発達指数(DQ)の変化を図1に示し m

また、 K式発達検査主要項目の通過年齢を表1に示 した。 「認知・適応」領域では4歳後半から、 「言語・

社会」領域および「全領域」では7歳中頃からDQ85 以上、つまり知的には正常範囲に入っている。また、

主要項目の通過年齢をみると、積木構成課題や図形摸 写課題は幼児期から暦年齢相応の時期に、模様構成課 題ではK式発達検査における基準年齢よりも早い時期 に通過しており特に問題を有していなかった。

しかし、 「バイバイ」 「チョウダイで渡す」 「検者と のボール遊び」や「指さし行動」 「予期的追視」 「2個 のコップ」および「了解問題」 「語の定義」 「語の差異」

「語の類似」 「財布探しI」の項目の通過年齢はかなり mm.

表1 新版K式発達検査主要項目通過年齢

通過年 齢 (C A )

9 カ 月 バ イバ イ チ ョ ウ ダ イで 渡 す

3 : 6 2 : 4 I

12 カ 月

指 き しに ⊥吏応 検 者 と ポ ール 遊 び

2 3

0 6

l

予 期 的 追 祝 3 6

2 個 の コ ッ プ 2 10

3 コの コ ップ 3 9

rlj錯 画 模 倣 3 6

指 さ し行 動 3 6

語隻 3 語 2 10

身 体 各 部 3 6

絵 指 示 3 6

:' *

積 木 の 模 倣 5 2 4

形 の 弁 別 I 3 / 5 3 6 形 の 弁 別 a 8/ 10 4 10

トラ ッ ク模 倣 2 10

* ・蝣蝣サ サ 3 こ6

円 模 写 3 6

絵 の F ]称 I 5 / 6 4 n 絵 の 名 称 n 5 / 6 4 1 0

大 小 比 較 4 1 0

k >u lt> . 4 10

性 の 区 別 4 10

3

十 字 模 写 3 9

例 前 正 方 形 模 写 4 】0

門 の 模 倣 例 前 4 2

重 さ の 比 較 例 前 5 8

T サ I 5 ニ2

&

階 段 再 生 4 こ10

模 様 構 成 I 3/ 5 4 こ10 横 ノ村 叩 き 6 / 12 7 7

了 解 7 1

5 了 解 7 7

語 の 定 義 7 7

5 以 下 の 加 算 3 / 3 7 7

絵 の 叙 述 8 7

;: tt 通過牛 齢 (C A )

6

模 様 構 成 n 2 / 3 6 = 8

菱 形 模 写 7 ニ 7

5 個 の お も り 8 こ 7

7 :h 10 : 3

釣 銭 9 : 0

8

模 様 構 成 n 3/ 3 6 8

図 形 記 憶 1/ 2 9 0

財 布 撫 L I 1 2 0

語 の 規 似 12 0

9 三 語 一 文 10 3

文 章 整 理 2 / 2 9 : 0

6 数 復 唱 9 : 0

10 K t titt i 帰 納 H i , I

図 形 記 憶 2 / 2 1 1 こ0

11

横 木 叩 き 9 / 12 1 2 : 0

8 つ の 記 憶 10 ・3

5 数 逆 唱 0

60 語 列 挙 l l 0

ー2

算 数 的 推 理 1 2 8

時 計 の 針 】0 3

閉 ざ され た 箱 12 ニ8

13

記 憶 の玉 つ なぎ 2/ 2 紙 片

1 2 こ8 三 角 置換

反 対 語 4 / 5 12 ニ0

.& ォ 蝣>

方 位 .蝣(v i% ォ i‑ st iサォn

12 : 8

注) ‑は、 12: 8時不通過項目

②WISC‑Rの結果からみた発達過程・発達特徴 CAll:より実施した検査結果は表2および図2に 示すとおりである。全IQは100前後であり、加齢と ともに高くなる傾向を示している.言語性IQ ((VIQ) と動作性IQ (PIQ)を比較すると3回ともVIQ<PIQ であるが、その差は自閉症にあって一般的に指摘され るほど大きくはない。下位検査の評価点(SS)のプ ロフィール特徴は、動作性検査では、高SSと低SS の差が大きく、 3回とも低SSは「符号」、高SSは

「絵画完成」でCAM:0時は「絵画配列」も高SSで ある。言語性検査ではそのSSの差は大きくないが、

高SSは「類似」‑「知識」、低SSは「算数」 ・ 「理 解」 ‑ 「算数」 ‑ 「算数」 ・ 「単語」 ・ 「理解」と変動 がみられる。

表2 K児のWISC‑Rの結果

C A 全 IQ V IQ PIQ 言語性検査 動作性検査 SS 課題 低 SS課題 高 SS課題 低 SS課題 ll:8 97 95 01 類似⑫ 算数⑧ 絵画完成⑱ 符号⑤

(数唱⑲) 理解⑧

13こ0 102 100 105 類似⑬ 算数⑥ 絵画完成⑰ 符号④ (数唱⑬)

14こ 107 101 113

知識⑬ 算数⑨ 絵画完成⑭ 符号⑦ (数唱⑭) 理解⑨ 絵画配列⑭

単語⑨

耳re tt坤軍

S3 1 2 3 4 5 0 7 0 D JO ll U IJ.'K 15 19 17 19 10

1知  陀 3餌  t臥 63t  故

EZTJ d

93a  鱒

11 (鄭;唱)

動作1生検軍

SS 1 2 3 4 S 6 7 8 9 10 JJ It 13 M15 18 17 】8le

as由旺∃

蝣n& m駐印 JIIESiJ匹ヨ a in.会と〉・せ りBin  旨j 12 (適】嶋)

CAll:8 "

C▲13:o蝣 H

CAUIO 図2 ICiCのVyエsc ‑ n.プロ74°一一ゾレtlg

上記の2歳から現在までの発達過程を、認知発達水 準に着目して「乳児期後半から幼児期前期への移行期」

(発達年齢1歳前半頃)から「児童期前期」 (発達年齢 10‑11歳頃)の8つの発達段階に大まかに時期区分し、

それぞれの時期の対人関係・コミュニケーション機能 についてまとめたものが表3である。発達段階の高次 化や加齢に伴って、対人関係・コミュニケーションも その対象が広がり、関わり方の質や表現内容・様式の 変容が示されている。乳児期後半から幼児期前期への 移行期の発達段階(CA2歳後半から3歳)で母親を 愛着対象(特定の第二者)として形成し、その母親と の関係を土台に、それ以降の段階で療育教室の指導者 や担任教師、ペンギン教室ボランティアといった特定 のおとな‑、さらには年下の児や小学校クラスメート、

ペンギン教室の仲間、中学校クラスメート、クラブ活 動の仲間へとコミュニケーションの対象を広げている。

表現内容・様式も自分の要求を一方的に「クレーン

(5)

表3 対人関係・コミュニケーション機能の変容

年齢   3:0 4 : 0      5 : 0 6 : 0      7 : 0

◆乳児期後半 ◆幼児期前期 ◆幼児期中期 ◆幼児期中期(発達年齢4歳 から幼児期前(発達年齢1 への移行期 なか頃)

発達段階  期への移行期 歳なか頃) (発達年齢2 (発達年齢1        ‑4歳頃) 歳前半頃)

ォ2.& *t>ア

f! '、l・.】i*

コミュニケー ション機能

・再び、有意 ・可逆の指さ ・視覚的手が 昧語出現   し獲得「身体 かりのある

・定位の指さ 各部」 「絵指「対の関係概 し獲得    示」     念」把握が可 能(「大小・

長短比較」)

・視覚世界といった外界だけ でなく自分の内面でも「対の 関係概念」把握が展開する (「重さの比較」)

・一定の意味のある世界を相 手とことばで共有することが 可能となる

8 : 0     9 : 0 10: 0    11: 0

◆幼児期後期への移 ◆幼児期後期(発達年齢7歳 行期(発達年齢5‑ 頃)

6歳U'l、

・空間的、時間的、 ・個々の要素を関連づけ系列 価値的3次元の世界 化させて全体にまとめあげる

を形成し、中間的世 力の獲得(「絵の叙述」 「5個 界が位置づく     のおもり」 「釣銭問題」 「囲形

・文脈形成力が確立 記憶」) し始める

13: 0     14:     15: 0

◆児童期前期への移 ◆児童期前期(発達年齢10歳すぎ頃) 行期(発達年齢9歳

頃)

・具体的な諸関係か ・ことばの概念化、抽象化が一定程度可能 ら一般的な法則性を となる(「3語類似」 「反対語」)

ひき出す力(「時計の 針」 「記憶の玉つなぎ』

の芽生えがみられる が「語の類似」のよ うなことばの概念化、

抽象化に弱さを残す

◆孤立的態度‑◆受身的態度一一     一       一‥一   一一‥‑‑‑      ‥‑      ‥‥‑・◆積極的態度‥一    一      ‥‑   ‥‑‑

・母親を愛着 対象として形 成し始めるが、

「もの」の世 界との結びっ きが強く、人 への志向性の 高まりをみせ るまでには至

らない

・特定のおと な(母親・療 育教室指導者) との関係にお いて活動場面 は限られるが (本児の興味・

関心のある描 画活動)、こ とばを介して 一つの対象を 共有する

・母薫別こは一 ・人、場所、

語発話で要求 場面は限られ 表現する   るが、 「こと ば」がコミュ ニケ「ション 機能として一 定の役割を持 ち始める。し かし、独語様 の発話が多く、

要求が相手に 伝わりにくい

・反響言語 (即時一遅延 反響言語)

・他児のして いる遊び・活 動に興味・関 心を示し時間 的経過を経て

iiiォi‑蝣‑'蝣‑;、

・特定のおと なからの誘い かけでことば での応答を伴っ たふり遊が広 がる

・指導者のリ‑ドによってこ とばでの応答を伴ったみたて・

つもり遊びができる

・受容できる児と拒否する児 が明確になり、拒否する児に 対しては常に視覚的確認をし、

距離をもって位置する

・ことばで要 ・ことばでの要求表現が伝わ 求表現するが、 りやすくなる

対象が明確で ・反響言語が消失する なく伝達性が

乏しい

・反響言語が

ォ・!・>・、

・クラスメートへの

関心が高まる。休ん だ児やお気に入りの 児に電話をかける

・教師や年長の児の リ‑ドで遊びの輪に 入るが長続きしない。

リードがなければひ とり遊びが多い

・教師や年上の児のリードで ゲーム的遊びに参加する

・クラスメートや姉にからか われると母親に解決を求めた り、ものに自分の怒りをぶつ ける(ぬいぐるみを叩く等)

・ "恥ずかしい"を理由に 家庭での出来事を日記や連絡 帳に記すことを拒否すること

蝣>aa園

・母親や特定のおと ・母親、特定のおとなとの会 な(教師やボランティ 話はスムーズになるが、クラ ア)とは、多語文的 スメートやペンギン教室の仲 発話で会話する    間のとは義務的に話しをする

・劇遊びでは身体表現、言語 表現に硬さが目立つ

・教師が参加してい るゲ‑ム的遊びには 参加しt楽しむ

・ペンギン教室にお いてはボランティア

、,柁二Ii'"、1,1 I‑ I:‑

的役割を果たす

・自分からお気に入

りのクラスメートに

電話をかけ、遊びに 行く約束をする

・自分の失敗や都合 の悪いこについては、

自分にとって肯定的 になるように言い訳 をする

・話題が自分にとっ て都合の悪いことに 及んでいくと"ソレ ハヒミツヤネン"と

言ったり、意識的に 話題を変更したりす

・獲得した知識を母 親に何度も繰り返し 伝えようとする

・ペンギン教室ではリーグ‑的役割を遂行 するが、命令的なことば「〜しなさい」が 多い

・同性の兄貴的存在のボランティアとの関 わりを求め、積極的に話したり、一緒に活 動することを楽しむ

・クラスメートと給食を食べながら会話を 楽しむ

・特定のおとなのリードによって、自分の 恩いや感情を交えて会話することを楽しむ

・会話のなかで、ことばの意味を取り違え たり、話しを自分のイメ‑ジで自己展開さ せとんちんかんな返答をすることがある

・書きことばでのコミュニケーションが確 かとなる。文章の構成・表現力が広がり、

伝達性を高めている。 FAXで用件のやり とりができる

圃 m m i W M J   m s ¥   配 劃

(6)

高機能自閉症児における対人関係・コミュニケーション機能の発達

現象」で、 「指さし」で、といった前言語的コミュニ ケ‑ションから言語的コミュニケ‑ションへの移行過 程を経て一言吾発話で「表現」する、そして、ことばが

コミュニケ‑ション機能としての一定の役割をもち始 め、二語発話で「伝え」たり、ことばで「応答」するこ

とが可能となる。さらには、特定のおとなとの間で自 分が熟知している場所、自分の興味・関心のある活動 でといったように、人、場所、場面等に限定されるが、

H常的な会話が可能となっている。現在では、特定の おとなのリ‑ドによって、一つの話題で自分の思い、

感情を交えながら会話することを楽しむ姿がみられる ようになる。そして、書きことばにおいて、構成力、

表現力が広がりをもち、筆者らとFAXで用件のやり とりができるようになっている。

しかし、現在でも表3中にあるような対人関係やコ ミュニケーション機能、とくに表現機能における問題 を有しており、高機能自閉症児にあっても対人関係・

コミュニケーションの問題は、中核的な問題として残 るようである。

4.考 察

(1)高機能自閉症児の認知機能の発達特徴と対人関係・

コミュニケーション機能の発達

本児の発達経過から明らかなように、知的・認知機 能に顕著な発達的変化がみられる時期があることがわ かる。しかし、 K式発達検査項目の通過年齢および WISC‑Rの結果から高機能自閉症児においても自閉 症一般に特徴的な認知障害がみられることが示唆され る。これまでに、 Wechsler知能検査は、次のような 自閉症に特有な認知パターンを指摘してきた。大多数 の自閉症において、言語性知能(VIQ)が動作性知能 (PIQ)よりも低い傾向にあり、下位検査のプロフィー ルの特徴に関しても、言語性領域においては「数唱」

課題に優れ、 「理解」に劣り、動作性領域においては、

「積木模様」に優れ、 「絵画配列」に劣るといった、特 徴的なパターンがみられる。しかし、最近の高機能自 閉症を対象とした研究では、こうした自閉症の特徴と されてきたVIQ<PIQパターンとは異なるパターン がみられ、全IQが85を超えるに従ってVIQとPIQ の差が小さくなり、さらに、全IQが100以上になる とVIQ>PIQの傾向がみられると報告されている。

また、下位検査のプロフイ‑ルの特徴も、自閉症に典 型的とされているバク‑ンと異なることが指摘され、

VIQの上昇に伴い高い評価点を獲得していく下位検 査項目と向上しない項目、つまりVIQ水準に影響を 受けにくい項目があることが報告されている(神尾ら, 2000 ; Rumseyら, 1988 ; Siegelら, 1996 ; Szatmari

ら, 1990)。

本児のwise‑R プロフィール特徴の結果からも、

ド位検査課題のSSの高低は、自閉症にあって典型的 とされているパターンとは異なる点がいくつかみられ る。今後も検査対象時の年齢、教育環境、個人差等の 要因を考慮しながらさらなる検討を試みたい。

Wing (1992)も指摘するように、対人関係、コミュ ニケーションの問題は、高機能自閉症にあっても中心 症状をなすものである。 K児の対人関係は、発達段階 の高次化および加齢に伴って、 Wing & Attwood (1987)の「孤立型(aloof)」から「受動型(passive)」

(幼児期前期への移行期の発達段階CA3歳6カ月頃) へと移行し、さらには、児童期前期への移行期の発達 段階(CA11歳頃)から、 「積極・奇妙(active‑but‑

odd)」の傾向を呈しっつある。

本児は幼児期後期への移行期の発達段階(CA 7歳 後半〜8歳)と児童期前期の発達段階(CA12歳後半

〜)において、表3中に示すように、コミュニケーショ ンの対象に変化がみられている。幼児期後期への移行 期の発達段階になると小学校クラスメートへの関心が 高まり、電話を媒介として"アシタガッコウへクルカ?"

とたずねコミュニケーションをとるようになる。直接 話しをしたり遊ぶという姿はみられていないが、子ど もの世界、友だちとの世界に関心を示し始めている姿 と推察される。また、ペンギン教室では、本児にとっ て動きの激しい、行動の予測のつき難いといった苦手 な児についても、直接的な拒否的態度をとることはな

くなり、一定程度受容することも可能となる。

そして、児童期前期の発達段階に入ると、中学校ク ラスメート、クラブ活動の仲間といった同世代の児と 一緒に学習し、クラブ活動をするなかで、必要に応じ て日常的な会話を交わすようになる。しかし、対等に 語り合い、遊ぶといった姿はみられていない。また、

ペンギン教室ではリ‑ダ‑的役割を担うが、命令的な ことばでの指示が多く、その関わりは一方的になりや すいといった問題を残している。さらに、ボランティ ア(学生・社会人)との関係においては、女性ボラン ティアたちに受容、援助されることから、同性の兄貴 的存在のボランティアとの関わりを求めるようになる。

パソコン操作が上手である、ギターが上手である、ス キーが上手である、おしゃれである等それぞれのボラ ンティアがもっている特質、特技に憧れ、自分もその ようになりたいという願いをもって積極的に会話を求 め、一緒に行動することを楽しみ始める。その際、母 親や特定のおとなに対してみられている、その時の相 手の状況とは関係なく一方的に自分の獲得した知識を 何度も繰り返したり、相手がすでに聞いたことがある かどうかにかまわず自分の関心ごとを話すといった傾 向はみられている。しかし、相手が本児に質問を投げ かけると、児童期前期への移行期の発達段階の時期 (CAll‑12歳)では、 "ワカリマセン"という返答で 終わっていたが、現在は、自分の興味・関心事に限ら

(7)

田辺 正友・田村 浩子

れるが、自分で考えて答えたり、わからないことはパ ソコンやバンプレット、本で調べて答えを相手に返す 姿が多くみられる。

コミュニケーション機能も発達段階の高次化・加齢 に伴って一定程度改善されてきている。自閉症のコミュ ニケーションの一つの問題としての反響言言吾も、本児 の場合、表3中に示したように、それが目立ったのは 限られた時期であり、ことばでの要求表現が伝わりや すくなった幼児期中期の発達段階ではほとんどみられ なくなる。そして、日常生活においては、必要に応じ て会話することは可能となっている。しかし、ことば の意味を取り違えて「とんちんかんな」返答になった り、話しを自分のイメージで自己展開させ結果的に

「とんちんかんな」返答になったるといったように、

その場の状況判断のしかた、ことばの意味の理解、使 い方に問題を残している。また、ことばが相手に向か いにくい問題や表情、手の動き、身振りが硬いといっ た表現機能にかかわる問題は依然としてみられている。

(2)対人関係・コミュニケーション機能における問題 点の改善にむけての取り組み

①療育・教育活動をとおして一愛着対象としての特 定の第二者の形成から活動場面におけるリ‑ダー

シップへの取り組み

療育教室に通室し始めた当初は、新しい場所、器具 への興味・関心が強く、ウロウロ行動が顕著であり、

また、もの(「カンキセン」)への固執が強く、人への 志向性の高まりをみせるまでには至らなかった。この 時期は、本児の「もの」との関係のなかに指導者が共 感を示しながら寄りそうことを基本にしつつ、本児の 自己感覚的な遊び、活動を他者と共有する関係へと高 めることを大切に関わりをもった。本児は教室に参加 し母親と離れて活動するなかで、母親の存在を求め、

母親を愛着対象として形成し、その後、母親以外の特 定の第二者の形成も広がりをみせた。療育場面では、

本児の遊び、活動を目的のあるものへ、人との意味性 をもったものへ、そして、本児の動作やことばでの要 求をていねいに受けとめ、 「やりとり」関係へと高め、

活動そのものや活動の結果を人と共有させていくこと を大切にした。さらには、自ら新しい遊び、活動をつ くり出させ、イメージの世界を広げていくことを課題 として関わりを積み重ねていった。

小学校入学後の月1回のペンギン教室では、本児は ボランティアたちの援助のもと、様々な活動(‑イキ ング、クッキング、絵画・陶芸・木工・はがき作り等 の創作活動、夏のキャンプ、スキーキャンプ等)を繰 り返し経験している。そのなかで、活動内容を理解し、

活動に主体的に参加できることを課題として関わりを もった。そして、中学生になってからは、ジュニアリ‑

ダーとして、リーダー的役割を担って活動に参加する

ことを課題としている。現在は、リーダーの役割を意 識し、他の3人のジュニアリーダー(ペンギン教室中 学生)と共にボランティアの援助のもと、プログラム 運営を部分的に担う(クリスマス会の司会・進行役、

キャンプファイヤー・ファイヤーマスター等)までに 至っている。

②学校・家庭ににおけるおける日常生活をとおして

‑本児の興味・関心事を他者と展開・共有すると ともに専門的力量の獲得をめざした取り組み 本児の家庭においては、小学校時代は、家族との関 係のなかで生活世界を広げる基盤づくりがていねいに なされている。本児も役割をもって手伝いをする、本 児を巻き込んで日常的な行事をする、毎年家族で旅行 をすること等を大切に生活をし、父親とは、本児が興 味・関心を示している乗り物を利用して山登りに出か ける、自転車に乗って出かける、マラソンをするといっ たことを繰り返し積み重ねている。そして、本児は、

姉が習っていたピアノに興味を示し低学年から習い始 めている。また、小学校では、からだと心を揺り動か す貝体的生活経験をとおした学習が大切にされている。

中学校は、本人の「知っている友だちがたくさんい るから行きたい」という希望により、地域の公立中学 校障害児学級に在籍する。学校では、主要5教科は障 害児学級で、他の教科は通常学級で学び、定期試験で は、主要5教科のうち数学、英語、社会は通常学級で クラスメートと同じ試験を受けている。そして、皆と 同じように、高校進学をしたいという願いをもって学 んでいる。クラブ活動は、陸上部に所属し中距離を得 意として3年生まで活動している。この頃になると家 庭では、親より姉との会話を楽しむようになったり、

乗り物への興味・関心がますます広がり、時刻表を調 べたり、ひとりで乗り物に乗って出かけたがるように なる。そこで、本児の興味・関心事、願いをひとりで はなく他者と展開、共有することを目標とし、この時 期本児がペンギン教室で関わりを求め始めた同性の兄 貴的存在のボランティアたちの協力も得て、いくつか

の取り組みを開始した。

その一つとして、ボランティアA (会社員)と月1 回「Aデー」と名づけた一緒に活動する日を設け、 1 年生の4月から3年生の7月まで活動を続けた。最初

の1年間は、本児の要求のまま毎月様々な場所に出か けていたが、 2年目からは、計画月と実行月を交互に 設定した。計画月は、実行月の計画を立て、行き先、

日時を決め、パソコンで交通手段や料金をアクセスし、

新しい交通手段を開発し、次の月に実行することを繰 り返し経験していった。そして、 2年目の夏は、一人 旅の計画を立て、ボランティアB (養護学校教諭)の 広島の実家へ行く。往路はボランティアAと行き宮島 を観光して、ボランティアB宅で一泊し、復路はひと りで広島から新幹線と在来線を使って奈良まで帰って

(8)

高機能自閉症児における対人関係・コミュニケーション機能の発達

くることを実行した。 『新幹線乗車前、すごくきんちょ うしましたが、乗った時はきんちょうは止まりました。

そのままの状態で、京都駅について、はっとしました。

初めての一人旅とても良かったです。』 (原文のまま) と、その時の感想をFAXで筆者に寄せている。また、

このAデーをとおして、パソコン操作も上達し、ペン ギン教室に必要なパンフレットを作成する役割も担っ ている。

二つ目の取り組みとして、本児の高校進学をしたい という願いを現実のものにしていくために、基礎学力 をより確かなものとしていくことを目的として、 2年 生よりボランティアC (専門学校生・元大学生)に家 庭教師を依頼する。ボランティアCとは、勉強をする ことはもちろんだが、それ以外にも、音楽、ファッショ ン、異性のこと等、様々な分野の話しをしたり、パソ コンでCD‑R作成することなどを教えてもらってい る。それをきっかけに、テーマ、イメージをもって、

CD‑Rを作成し、 CDジャケットもパソコンを使っ てデザインし、ボランティアCや結婚のお祝いとして ボランティアD (障害者施設指導員)にプレゼントす ることを楽しんでいる。また、ボランティアCのひと り住まいのマンションに遊びに行くようになり、ベッ トがある、電化製品がそろっている、掃除をきちんと してあり、きれいである、そして、おしゃれであると いうことが理由でボランティアCのようになりたいと し',う憧れをもっようになり、ボランティアCが家庭教 師で来る日は自分の部屋を掃除するといった姿もみら れている。さらには、ボランティアCがよく通ったと 話しをした電気店に興味をもち、本児の乗り物への興 味・関心と重なり合って、奈良県下の電気店のチェー ン店すべてに行き、大阪にまで行き始めているといっ たエピソードもある。

本児は小学校低学年からピアノを習っている。ペン ギン教室のクリスマス会では、 4年前から自己表現の 場とて、自分の得意とすることを家族や学校の教師の 前で発表することを積み重ねている。 1年目、本児は ピアノの独奏をした。 2年目からは、ボランティアと して参加している筆者と連弾演奏をすることに取り組 んだ。そして、 4年目である今年は、ギターが上手な ボランティアE (養護学校教諭)と一緒に演奏したい という本児の願いをきっかけに、秋にボランティアD の結婚式で連弾した曲を、ジュニアリーダー3人とボ ランティア4人を交えて9人でバンド形式で演奏をし た。連弾を始めた当初は、当日筆者が本児の演奏に合 わせて弾いていたが、最近は、一緒に練習する時間を 設けるなかで、曲想を共通のものとして感じ、相手の 手の動きをみて、リズムを合わせようとしながら弾く 姿がみられている。また、バンド演奏の時には、自分 で感じて、ボーカルを引き立たせるために、ピアノの 音を控えるといったことをしている。そして、その時

の感想を『大きな拍手が響いてとてもよかったです』

とFAXで寄せているように、みんなとともに感動し 合う喜びの心が文面から感じとられる。

本児にとってピアノは、自己表現するひとっのコミュ ニケーション機能であり、それを媒介に人との関係を 広げ、本児の生活世界を広げていくものとなっている。

本児は高校進学にあたって、ピアノの世界を広げ、高 めることができる高校を選択し、現在、受験にむけて 音楽の基礎学習をして、その願いを現実のものにする ために努力している。

(診まとめにかえて

発達段階の高次化や加齢に伴って、対人関係・コミュ ニケーション機能もその対象が広がり、かかわり方の 質や表現内容・様式の変容が示された。現在では、特 定のおとなのリードによって、一つの話題で自分の恩 いや感情を交えながら会話することが可能である。し かし、その場の状況判断のしかた、ことばの意味の理 解・使い方といった、対人関係コミュニケ‑ション機 能にかかわる問題を残している。こうした問題をふま えて、中学生になってからの対人関係における問題の 改善にむけての様々な取り組みのなかで、現在、本児 は、様々な事象や人間関係のとらえ方に変化がみられ ている。例えば、兄貴的な存在のボランティアに対し て、憧れの対象であり、様々な事柄を教えてくれる人 であるとともに、 「自分の仲間」として自分の中に位 置づけているように恩われる。それゆえに、母親が援 助のつもりでことばかけをすると、 "オカアサンニハ、

カンケイナイ!ポクガキメル!"と言い、葛藤しなが らも自分で解決していこうとする場面もみられている。

そして、自分自身のとらえ方も変化し始め、そのなか で、こんな自分になりたいと思っている自分に気づき、

と同時に、こんな自分は嫌だと思っている自分にも気 づき始めているのではないだろうか。自分の「障害」

と自分で向き合っていく時期でもあると考えられる。

今後は、本児が新しい自分を発見し、自分自身で生活 を切り開いていけるような援助が望まれる。ペンギン 教室や個人的な関わりをとおして、本児の興味・関心 事を手ががりに生活世界をより広げながら、高校生活 等、社会生活する自由度を増していく取り組みをして

いくことが重要である。

引用文献

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参照

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