UDLガイドラインに基づく授業実践の考察
-特別支援学級に在籍する児童が交流学級に参加する場面において-
安里 健志
奈良教育大学大学院教育学研究科教職開発専攻
In “Exchange and Collaborative Learning” Consideration of lesson practice based on UDL guidelines
-In the scene where a child enrolled in a special support class participates in an exchange class-
Takeshi Yasuzato
School of Professional Development in Education, Nara University of Education
<あらまし> 交流及び共同学習には「交流の側面」と「共同学習の側面」の 2 つの側面が ある。両側面は分かちがたいものとして推進しなければならないが、学校現場では「交流の 側面」で捉えられることが多い。そこで、「共同学習の側面」に焦点を当てた際に生じる授 業設計の難しさに着目し、 CAST の UDL ガイドラインに基づく授業実践を行うことで児童の
「交流の側面」と「共同学習の側面」に関する変容を考察することとした。小学校 4 年国語 科での交流及び共同学習において UDL ガイドラインに基づく授業実践を行った結果、「交流 の側面」では交流学級児童と特別支援学級児童双方に対人的な適応感の向上が見られ、「共 同学習の側面」においてもそれぞれに設定した教科のねらいをおおむね達成することができ た。これらから、 UDL ガイドラインに基づく授業を行うことで「交流の側面」と「共同学 習の側面」の両側面の目標を達成することができる可能性が示唆された。
<キーワード> UDL ガイドライン 交流及び共同学習 共同学習の側面 インクルーシブ教育 特別支援学級
1.はじめに 1. 1.本研究の背景
交流及び共同学習とは、「障害のある子どもと障 害のない子どもが、運動会や文化祭などの学校行事 や、児童会・生徒会活動、総合的な学習の時間のほ か、国語や算数などの教科の学習において活動を共 にすること」(文部科学省 , 2010 )である。文部科学 省( 2019 )は交流及び共同学習について、「相互の 触れ合いを通じて豊かな人間性を育むことを目的と する交流の側面と、教科等のねらいの達成を目的と する共同学習の側面があり、この二つの側面を分か ちがたいものとして捉え、推進していく」必要があ
るとしている。
そもそも教育施策として「交流及び共同学習」と いう用語が使われるようになったのは 2004 年であ る。 2004 年以前は交流教育として、特殊学級や特殊 教育諸学校に在籍する児童生徒と通常の学級や学校、
地域社会の人々が学校教育の一環として活動を共に することとされていた。 2004 年に障害者基本法が 一部改正され、第 16 条に「国及び地方公共団体は、
障害者である児童及び生徒と障害者でない児童及び 生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることに よって、その相互理解を促進しなければならない。」
と明記されたことにより、 「交流及び共同学習」が法
的に規定された。そのことにより、これまで行われ てきた交流教育の名称が交流及び共同学習に変更さ れた。越野 ( 2007 )はこれらの背景に、文部科学省 を中心とした議論において、 「共同学習」という語を 新たに用いることで従来の交流だけにとどまらない という意味が付与されたことを指摘している。
障害のある児童生徒との交流及び共同学習等実施 状況調査結果(文部科学省 , 2017a )では、特別支 援学級と通常の学級の間の交流及び共同学習を行っ ている小学校及び中学校は 80 %を超えている。特 別支援学級を設置されている小・中学校の数を踏ま えると、特別支援学級を設置している学校のほとん どにおいて交流及び共同学習が実施されていると考 えられる。金丸・片岡( 2016 ) は交流及び共同学習 について、「障害のある子どもと障害のない子ども の関係を形成し、ひいては障害の有無に関係のない 共生社会の構築に重要であり、インクルージョン時 代に至ろうとしているわが国においても、推進する 必要性は否定できない」としており、今後さらなる 充実がもとめられていると考える。
1. 2.交流及び共同学習における課題
先述の通り、交流及び共同学習は「交流の側面」
と「共同学習の側面」の二面を併せもつが、 「交流の 側面」に着目した先行研究は、 2004 年以前の交流教 育においても行われている。溝上( 1991 ) は、特殊 学級に在籍する小・中学生の 60 %以上が、交流学 級へ行く際に「喜んでいく」とされている。徳田
( 1995 )は、障害理解教育を 5 つの段階に分類し、障 害理解教育の側面からその重要性を示している。さ らに、楠見( 2016 ) によって、障害児と健常児の交 流教育に関してレビューされており、「交流の側面」
に関する実践の報告や実践事例が整理されている。
一方、 「共同学習の側面」に着目された研究は少な い。富永( 2011 )は、交流及び共同学習の目標が曖 昧であり、交流そのものが目的になる実践が多いこ とを指摘している。また、齊藤・小澤( 2019 )は学 校現場において、これまでの交流及び共同学習は前 者の「交流の側面」の意味に捉えられることが多く、
教科等のねらいの達成に関わる「共同学習の側面」
にはあまり注目されてこなかった実情があることを 指摘している。これらの現状から、「共同学習の側 面」に関する研究が蓄積されていないことが課題で あると言える。
交流及び共同学習における「共同学習の側面」に 着目した数少ない先行研究において、陸川( 2015 ) は交流及び共同学習を行う際に授業進度の違いや 個々の障害への配慮を十分に行うことの難しさを挙 げている。三澤ほか( 2018 )は、「共同学習の側面」
を重視した実践が極めて少ない要因として、教育課
程や学習内容を修正することが必要となることを挙 げている。国立特別支援教育総合研究所( 2008 )は 交流及び共同学習に関する調査を行い、小中学校の 特別支援学級に在籍する 96% の児童生徒が行って おり、実技系の各教科では 70% 前後の児童生徒が 行っている一方、国語科では 24.9% 、算数・数学科 では 12.7 %しか行われておらず、系統的・理論的な 学習は日常的に行われにくい実態であることを指摘 している。また、細谷( 2020 )は北海道内において 小学生の知的障害特別支援学級に対象を絞った教科 交流の実態調査を実施し、国立特別支援教育総合研 究所( 2008 )の調査結果と同様に、教科交流におい て主要教科での実施率が低く、実技系の教科におい て高い実施率であることを明らかにしている。これ らから、主要教科の教科等のねらいの達成を目的と した授業の実施、つまり「共同学習の側面」に着目 した授業が困難であることが伺える。
筆者は、 A 市小学校教員を対象に、独自に交流及 び共同学習における難しさについての質問紙調査
( 205 部配布し、 30 名から web 上にて回答)を実施 し、記述での回答を求めた。その結果、交流及び共 同学習における「共同学習の側面」に関する難しさ に関して、対象児童へのアプローチだけでなく、障 害のある児童と共に学習する一斉授業の進め方や授 業設計について難しさを抱える教員が多くいること が明らかになった(表1) 。
表1 交流及び共同学習に関する意識調査
交流及び共同学習において感じた難しさ【交流の側面の主な回答】
・ 順番や勝ち負けにこだわったり、ボールをなかなか他に渡せな かったりして、見自己中心的な行動が目立ちやすかったから
・ 音に敏感だったり、楽器演奏をする際に時間がかかったりして いたため
・ 一緒に活動するメンバーが変わることへの抵抗があるように感 じたため
交流及び共同学習において感じた難しさ【共同学習の側面の主な回答】
・ 当該児童の特性をふまえて、中心に据えた授業を行う必要があ ること
・学習理解の面で個別に対応した方が良いと感じた
・ 話す、聞く、読む、書くの能力に加え、本人の意欲やコンディ ションによって、学習へ取り組む姿勢が左右される
・ 作品内の登場人物の気持ち等を考えることが困難な児童であっ たため
・学力差に関する部分
・ 一斉指導でわかりづらい。その子に合わせていると授業が成立 しない
これらのことから、これまで「共同学習の側面」
に焦点をあてた交流及び共同学習が行われない背景
には、教育課程や学習内容の違いから教科等のねら
いの達成を目的とすることが困難であり、その中で
授業を設計していくことの難しさが背景にあると考
えられる。しかし、そのような状況にあるにも関わ らず、 「効果的な実践方法の開発は進んでおらず、具 体的な方法の提案を行っている研究や交流の効果と 実践過程の分析がなされている研究がほとんどな い」(楠見 , 2016 )ことも課題であると言える。
1. 3.学びのユニバーサルデザイン
国立特別支援教育総合研究所( 2018 )において、
「今後は、通常の学級に籍を置く発達障害のある子 どもだけでなく、特別支援学級・学校に在籍する障 害のある子どもと共に学ぶ場面における研究や実践 へとの適用範囲を拡げて、授業のユニバーサルデザ イン化に関する研究を進めていくことが必要」だと されていることから、筆者は学びのユニバーサルデ ザ イ ン( Universal Design for Learning 以 下 UDL )における UDL ガイドラインに着目した。
UDL は、教育に関する応用テクノロジーの研究機 関である Center for Applied Special Technology
(以下 CAST )が中心に提唱する、学習科学に基づい た三原則をめぐって構造化された指導のフレーム ワークであり、 UDL ガイドライン は 9 つのガイド ライン (図1)から成り立っている( CAST, 2018 )。
図1 CAST ( 2018 )を基に作成 ユニバーサルデザイン(以下 UD )の授業につい ては複数の考え方が存在している(佐藤 , 2018 )が、
多くが通常学級の授業改善を主としており、定義も 確立されていない。しかし、 UDL の考え方について トレイシー・ E ・ホールほか( 2018 )は、 「従来型の 教室では、成果を出せなかった子どもにカリキュラ ムの側が『障害者』とか『学力不振』とかいうレッ テルを貼り、その子どもたちを『修正』しようとし ていたが、 UDL では、むしろカリキュラムの方にこ そ『障害』があり、すべての子どもたちの学習ニー ズに応えることができず、修正が必要なものであ る」( CAST, 2018 )としている。こうした「障害」
の捉え方は ICF (国際生活機能分類)の考え方とも 一致し、 UDL は他の「授業の UD 化」と比較して障
害のある児童をも包括する意味合いが強く含まれて いるように筆者は考える。
内田ら( 2015 )は、 UDL ガイドラインに基づく 中学校国語科の授業実践を行い、「特別な教育的支 援が必要な生徒の学習意欲の向上と学業達成、学級 全体の学習意欲の向上、学業達成率が低い学級にお ける学業達成に有効であることが示された」として いる。交流及び共同学習においてなされた研究では ないが、 UDL ガイドラインに基づく授業を行うこ とが、教科等のねらいの達成を目的とした「共同学 習の側面」に資すると考えられる。
1. 4.本研究の位置と目的
交流及び共同学習における UDL ガイドラインに 基づく授業としては、中原・豊岡( 2018 )が、特別 支援学校の児童と付属小学校の児童との図画工作科 の交流及び共同学習において UDL ガイドラインを 基にした「 UDL ぐんまモデル」を活用し、「共通の 課題に取り組むことで、交流を子どもたちのめあて に置いた授業で見られがちな『やってあげる - やってもらう』という関係の固定化が見られず、 『共 に学ぶ』関係が構築できた。」と分析しているが、 「共 同学習の側面」に関する言及はない。
交流及び共同学習において、本来分かちがたいも のとして捉え、推進する必要があるはずの「交流の 側面」と「共同学習の側面」だが、その両側面がど のような変容を見せたかについて言及されている研 究は筆者管見の限り見当たらない。そのため、 「共同 学習の側面」に焦点をあてた授業を行い、両側面の 変容を明らかにするような研究がもとめられている のではないかと考える。
そこで本研究の目的は、 「共同学習の側面」に着目 した UDL ガイドラインに基づく交流及び共同学習 の授業実践を行い、教科目標への達成度や対人的な 適応感に関する評価尺度の変容、交流場面における 授業記録の分析から、特別支援学級児童と交流学級 児童双方の、 「交流の側面」と「共同学習の側面」の 両側面について考察することとする。
3.方法 3. 1.対象
筆者は教職 10 年目であり、実践年度は奈良教育 大学教職大学院に派遣中であるため、置籍校(公立 小学校)である X 市立 Y 小学校 4 年生 2 学級、特別 支援学級に在籍する 2 名を含む 73 名の児童を対象 に、授業実践を行った。
特別支援学級の児童は、 2 名とも自閉スペクトラ
ム症(以下 ASD )の診断を受けており、普段の国語
科の授業では特別支援学級内で漢字などの文字習得
を主な学習活動としている。個人情報保護の観点か
ら、その他心理検査のデータ等の公表は見合わせた。
3. 2.検証方法
3. 2. 1.「共同学習の側面」に関する検証
本研究における特別支援学級児童の国語科の評価 規準の設定を行うにあたり、普段の国語科の様子な どから交流学級児童と同じ目標の到達度を設定して 判断することが困難だと判断した。そこで、小学校 学習指導要領解説(文部科学省 , 2017b )の国語科 に関する目標項目を 2 つの段階(低学年と中学年)
から取り上げ、交流学級児童は中学年の項目から、
特別支援学級児童については低学年の項目から、そ れぞれの評価規準を定めて評価することとした。
① 交流学級児童の評価
本単元では、学習のはじめに「お話の続き」を表 す活動を行い、学習のまとめに再度「お話の続き」
を表す活動を設定し、 2 回目の作品を評価対象とす る。評価規準は小学校国語科学習指導要領の中学年 読むこと「エ」「登場人物の気持ちの変化や性格,情 景について,場面の移り変わりと結び付けて具体的 に想像すること」の項目から、交流学級担任と筆者 が相談して決定した(表2) 。
表2 交流学級児童における評価規準
評価 評価規準(交流学級児童)
十分 満足
・ 作品の主題を捉えた上で、ごんや兵十の気持ちの 変化について、1~5場面での出来事と関連させな がら、表現の効果を考えて物語の続きを書くこと ができる。
おおむね 満足
・ ごんや兵十の気持ちの変化について、1~5場面で の出来事と関連させながら、物語の続きを書き表 すことができる。
② 特別支援学級児童の評価
交流学級児童と同様に、学習のはじめに「お話の 続き」を表す活動と学習のまとめに再度「お話の続 き」に表す活動を設定し、 2 回目の作品を評価対象と する。評価規準は小学校国語科学習指導要領の低学 年読むこと「エ」「場面の様子に着目して,登場人物 の行動を具体的に想像すること」の項目から、特別 支援学級担任と筆者が相談した上で決定した (表3) 。
表3 特別支援学級児童における評価規準
評価 評価規準(特別支援学級児童)
十分 満足
・ 6場面に着目し、兵十が後悔したり悲しい気持ちに なったりしていることを想像し、ごんの気持ちも想 像してお話に表すことができる。
おおむね 満足
・ 6場面に着目し、兵十が後悔したり悲しい気持ちに なったりしていることを想像してお話に表すことが できる。
2. 3. 2.「交流の側面」に関する検証
本実践では、交流学級児童と特別支援学級児童の 双方に、栗原・井上( 2019 )の「学校環境適応感尺 度」(以下アセス)における「対人的適応」因子の変 容から、「交流の側面」を検証することとした。
アセスは、本人の主観的な適応感を測定するもの である。「対人的適応」は「教師サポート」「友人サ ポート」「向社会的スキル」「非侵害的関係」の 4 因 子による「サポート面」(友人や教師から支援が あったり認められたりしているなど、関係が良好で あると感じている程度)と「スキル面」(友達との関 係をつくるスキルをもっていると感じている程度)
から構成されているため、 「交流の側面」における一 側面を測定することができると考えた。授業開始前
(以下 pre )と授業終了後(以下 post )にアセスを実 施し、対応のある t 検定により変容を検証すること とした。統計処理に当たっては Excel 統計を用いて いる。
また、交流学級児童と特別支援学級児童が 2 回目 の「お話の続き」の作品を交流する場面における授 業記録の分析を行うこととする。
2. 3. 3.UDLガイドラインに基づく学習の効果検証 UDL ガイドラインに基づいた学習活動が自身の 学習に役に立ったかどうかについて、単元終了後に 4 件法で児童に回答をもとめ、効果について検証する。
3.実践デザイン 3. 1.授業計画
小学校 4 年生国語科「ごんぎつね」の単元を、 ASD 児が交流学級に参加する形態の交流及び共同学習に おいて、 UDL ガイドラインに基づく授業実践を 行った。また、特別支援学級児童には個別の支援を 別途用意することとする。実践計画表を表4に示す。
表4 実践計画表
時数 「ごんぎつね」実践計画表 1 物語の読み聞かせを聞き、お話の続きを書く。
2 より良いお話の続きを書くために学習計画を立てる。
3 登場人物についてまとめる。
4 ごんの気持ちの変化について考える。
5 兵十の気持ちの変化について考える。
6 最後の場面について考える。
7 お話の続きを書くために大切なことを知る。
8 もう一度、お話の続きを書く。
9 友達の作品を読み合い、意見を交流する。
10 学習のまとめを行う。
3. 2.UDLガイドラインに基づく学習活動表
UDL ガイドラインを用いる際の注意点として、
すべての授業にすべてのガイドラインを入れる必要 はなく、教師が適切だと判断したら適用できると示 されている。本実践でも効果的であると判断した箇 所について適用し、特別支援学級担任と交流学級担 任と相談した上で学習活動を決定した。 UDL ガイ ドラインに基づく学習活動を 図2 に示す。
3. 3.特別支援学級児童への個別の支援
UD の授業に関して佐藤( 2018 )は、「現状では、
その児童生徒にとって最も適したものを選択できる 環境を整えることはむずかしく、最大公約数的に考 えて、多くの児童生徒に必要な環境を整える状態」
であり、「 UD には『可能な限り最大限』 という考え
も付随しており、制限または制約に教育はどう対応 するのか、学びづらい児童生徒の立場に立って方策 を求め続けることも必要」であるとしており、 UDL においても同様の課題が存在すると考える。 UDL ガイドラインは「インクルーシブな教室での実践を 導くガイドであり、問題の個別の処方箋ではない」
としているため、本実践における授業設計において も特別支援学級の児童に個別の支援を講じることが 必要だと考えた。
そこで、本実践においてはパワーポイント教材
(以下 PPT 教材)、 google ドキュメントの音声読み 取りツール(以下音声読み取りツール)、 QR コード 付きワークシート、それぞれを UDL ガイドライン
3原則 9つのガイドライン 学習内容 (ごんぎつね)
感情のネットワーク 興味をもつ
(7.1) 個々人の選択や自主性を最適にする
(7.2) 自分との関連性・価値・真実味を最適にする QRコード付きワークシートを使って、言葉の意味について理解する。
(7.3) 不安要素や気を散らすものを最小限にする 毎回の学習を、事前に準備されたワークシートで行う。
努力やがんばりを続ける
(8.1)目標や目的を目立たせる 学習計画をみんなで作成し、目標をもって学習する。
(8.2) チャレンジのレベルが最適となるような
(課題の)レベルやリソースを変える
(8.3)協働と仲間集団を育む 友達と物語の続きを読み合い、意見交流を行う。
(8.4) 習熟を助けるフィードバックを増大させる 毎時間ワークシートを提出し、先生からコメントをもらう。
自己調整 (9.1) モチベーションを高める期待や信念を持 てるよう促す
毎時間ワークシートを提出し、先生からコメントをもらう。
(9.2)対処のスキルや方略を促進する 物語中でぎ問に思ったことをみんなで考え、理解を深める。
(9.3)自己評価と内省を伸ばす 毎時間ワークシートを提出し、先生からコメントをもらう。
認知のネットワーク 知覚する (1.1) 情報の表し方をカスタマイズする方法を
提供する ごんのマップや絵を書いて、想像したこと表出できるようにする。
(1.2) 聴覚情報を、代替の方法でも提供する
(1.3) 視覚情報を、代替の方法でも提供する ごんの歌を聞いて、お話への理解を深める。
言語・数式・記号
(2.1) 語彙や記号をわかりやすく説明する QRコード付きワークシートを使って、言葉の意味について理解する。
(2.2) 構文や構造をわかりやすく説明する
(2.3) 文字や数式や記号の読み下し方をサポートする
(2.4)別の言語でも理解を促す
(2.5) 様々なメディアを使って図解する ☆個別の支援:PPT教材を使って学習する。
理解
(3.1) 背景となる知識を活性化または提供する 想像力を高めるトレーニング(コグトレ)を行う。
(3.2) パターン、重要事項、全体像、関係を目 立たせる
(3.3) 情報処理、視覚化、操作の過程をガイドする 想像力を高めるトレーニング(コグトレ)を行う。
(3.4) 学習の転移と般化を最大限にする 想像力を高めるトレーニング(コグトレ)を行う。
方略のネットワーク 身体動作
(4.1)応答様式や学習を進める方法を変える
(4.2) 教具や支援テクノロジーへのアクセスを 最適化する
表出やコミュニケーション
(5.1)コミュニケーションに多様な媒体を使う ☆個別の支援:音声読み取りツールで表現する。
(5.2)制作や作文に多様なツールを使う ごんのマップや絵を書いて、想像したこと表出できるようにする。
(5.3) 練習や実践での支援のレベルを段階的に 調節して流暢性を伸ばす
実行機能 (6.1) 適切な目標を設定できるようガイドする 学習計画をみんなで作成し、目標をもって学習する。
(6.2) プランニングと方略の向上を支援する 物語中でぎ問に思ったことをみんなで考え、理解を深める。
(6.3) 情報やリソースのマネジメントを促す 「お話の続き」を一度最初にチャレンジして、見通しをもって学習する。
(6.4)進捗をモニターする力を高める 「お話の続き」を一度最初にチャレンジして、見通しをもって学習する。
表5 UDL ガイドラインに基づく活動計画表
における学習活動に取り入れた(表5) 。 4.結果 4. 1.「共同学習の側面」に関する評価 4. 1. 1.交流学級児童について
表 1 から、交流学級担任との相談を経て評価した。
ASD 児 2 名を除く 71 名の児童の 2 回目に書いた作 品について評価規準をもとに評価すると、大半の児 童が「おおむね満足」の規準に達していた。
また、 1 回目の作品で「おおむね満足」に達成し ていない児童の大半が、 2 回目の作品では「おおむ ね満足」や「十分満足」の目標に移行していた。さ らに、 2 回目の作品では、「十分満足」達成していた 児童がより多くなった (図2・3) 。
図2 評価規準におけ
る児童の割合( 1 回目) 図3 評価規準におけ る児童の割合( 2 回目)
4. 1. 2.特別支援学級児童(児童a、児童b)について 児童 a は、 1 回目のお話の続きで「なみだをだし て」という表現をしていたことから、兵十が後悔し たり悲しい気持ちになったりしていることを想像し ていると考えられたため、 「おおむね満足」に達成し ていると判断した。 2 回目のお話の続きでは、 「ごん は『ごめん』って言えなかったんです。」という表記 があることから、兵十の気持ちだけでなくごんの気 持ちも想像することができていると考えられたため、
「十分満足」の規準に達していたと評価した(図4) 。
図4 児童 a の 2 回目の作品
一方、児童 b は 1 回目の活動では お話の続きを書 くことができな かった。しかし、 2 回目のお話にお いて「泣いてい る」という表現を
することができた。泣いているのは誰なのかという ことが表現できず、その後の部分で不明瞭な点も見 うけられるが、特別支援学級の担任が聴き取ったと ころ、死んだのはごんだということを児童 b が述べ たので「おおむね満足」の規準に達していたと評価 した(図5) 。
4. 2.「交流の側面」に関する評価 4. 2. 1.交流学級児童について
実践前後にアセスによる質問紙調査を、特別支援 学級児童 2 人を除く 71 名に行い、「対人的適応」の 比較を行った。事前・事後間で対応のある t 検定を 行った結果を以下に示す(表6) 。 4 因子を包括する
「対人的適応」において、事前・事後間で有意な正の 変容が認められた。また、その中の「教師サポート」、
「向社会的スキル」因子で、平均値が事前・事後間で 有意な正の変容が認められた。
表6 対人的適応の変容(交流学級児童)
アセスの各因子 pre post
t値
M SD M SD
対人的適応 2.61 0.27 3.13 0.34 13.8 **
(教師サポート) 1.86 0.70 3.85 0.59 15.8 **
(友人サポート) 3.85 1.13 4.03 1.03 2.48 *
(向社会的スキル) 3.48 0.80 3.72 0.77 3.60 **
(非侵害関係) 2.13 1.21 1.94 1.58 2.10 *
*:p値<0.05、**:p値<0.01
4. 2. 2.特別支援学級児童について
児童 a 、 b の事前・事後間における「対人的適応」
の比較を行った。児童 b の「友人サポート」の数値に ついては、検討の余地を残した。〈※回答に矛盾や防 衛反応が見られ結果が正確でない可能性があるため〉
しかし、そうしたマイナスの結果を踏まえても、
児童 a 、 b 双方の pre-post 間で「対人的適応」の上昇 が認められた(表7・8) 。
図5 児童bの 2 回目の作品
表7 対人的適応の変容(児童 a )
pre post pre-post差
対人的適応 44 49 +5
(教師サポート) 27 52 +25
(友人サポート) 51 55 +4
(向社会的スキル) 46 42 -4
(非侵害的関係) 50 52 +2
表8 対人的適応の変容(児童 b )
pre post pre-post差
対人的適応 54 67 +13
(教師サポート) 27 83 +56
(友人サポート) 83※ 49※ -34
(向社会的スキル) 44 54 +10
(非侵害的関係) 62 83 +21
4. 3.UDLガイドラインに基づく学習について UDL ガイドラインに基づく 10 種類の学習活動に ついて、自分の学習にとって役に立ったかどうかを 児童に 4 件法( 4 :よくあてはまる、 3 :あてあまる、
2 :あまりあてはまらない、 1 :あてはまらない)で 回答をもとめた( 1 名未回収)ところ、すべての活 動項目において平均 3 ポイントの高い数値を示して いた。また、児童 a 、 b についても複数の項目で自身 の学習に役に立ったと回答していた (表9) 。 5.考察 5. 1.「共同学習の側面」に関する考察
本実践では、交流学級児童と特別支援学級児童が 同じ学習活動を行った上で、それぞれの評価規準に 基づき評価した。その結果、特別支援学級児童にお いては児童 a 、 b 双方が、交流学級児童については大 半の児童が、それぞれに設定した評価規準をおおむ ね達成することができていた。要因として、 UDL ガ イドラインに基づく学習活動を行うことによって交 流学級児童と特別支援学級児童の双方にとって学習 の役に立ったことが考えられる。また、同じ活動で はあるが評価規準をそれぞれに設定したことで、評 価のポイントが明確になり、特別支援学級児童の実 態を捉えた評価を行うことができたことも重要で あったと考える。
これらの結果から、交流学級児童と特別支援学級 児童の双方がそれぞれ設定した教科の目標を達成し ていたため、 UDL ガイドラインに基づく授業を行 うことで、 「共同学習の側面」を達成することができ たと言えるのではないか。
5. 2.「交流の側面」に関する考察
アセスの結果において、交流学級児童における
「対人的適応」の平均値が実践前後では有意に正に
変容していたことから、 UDL ガイドラインに基づ く学習活動を行うことによって「交流の側面」の学 習について一定の効果があったと考える。また、特 別支援学級児童における「対人的適応」についても それぞれポイントの上昇が見られたことから、「交 流の側面」の学習についても一定の効果があったと 考える。
さらに、交流学級児童と特別支援学級児童が 2 回 目の「お話の続き」の作品を交流する場面に着目し て授業記録からの分析を試みた。児童 a の物語の続 き (図4) を読んだ交流学級児童は、「兵十やごんの 気持ちを考えているのでいいと思いました。」、「栗 松たけ松ぼっくりと一緒にうめてあげようというと ころがいいと思いました。」など、お話の続きに対し
学習についてのアンケート 4 3 2 1 平均 1.毎日の学習にワークシートがあっ
たことで、学習への不安が少なく
なった。 40 24 5 3 3.40
2.友達と物語の続きを読み合ったこ とで、自分の良さをみとめてもら
えた。 42 22 6 2 3.44
3.ワークシートに先生がコメントをし ていたことで、学習へのやる気が
高まった。 56 12 2 2 3.69 4.一度最初チャレンジしたことで、
最後に書いたものと比べて自分の
成長を感じることができた。 51 16 2 2 3.63 5.ごんの歌を聞いたことで、お話の
内容がよりわかったり、想像しや
すくなったりした。 33 25 9 4 3.23 6. QRコードを使って動画や写真を見
たことで、言葉の意味やお話につ
いてより理解できた。 46 19 3 4 3.49 7.物語中でぎ問に思ったことをみん
なで考えたことで、お話をより理
解できた。 43 22 6 1 3.49 8.想像力を高めるトレーニング(コ
グトレ)をしたことで、お話の続
きを想像する力がついた。 47 18 6 1 3.54 9.ごんのマップや絵を書いたことで、
自分が考えていることを表すことが
できた。 31 30 9 2 3.25
10.学習計画をみんなで作成し、計画 にそって学習したことで目標を
しっかり持つことができた。 33 31 5 3 3.31