1 .はじめに
新小学校学習指導要領(平成29年 3 月告示)において,中学年に外国語活動,高学年に外 国語科が導入された(1)。
これは,平成30,31年の学習指導要領移行期を経て,平成32年度から全面実施されること になる。そこでは,「外国語活動」及び「外国語」を含む,すべての教科等の目標及び内容に おいて,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向かう力,人間性等」の 3 つの柱を,児童の発達段階に応じて,バランスよく育成することが求められている。
⑴ 外国語を通して,言語や文化について体験的に理解を深め,日本語と外国語との音声の 違い等に気付くとともに,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。
「体験的に理解を深め」,「外国語の知識・技能に慣れ親しむ」との言及は,コミュニケー ションの体験の重要性に繋がろう。
⑵ 身近で簡単な事柄について,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを 伝え合う力の素地を養う。
ここでは,特に,「思考力,判断力,表現力等」が力説されている。「自分の考えや気持 ち」を伝え合うことになるため,当然「思考力・判断力」が求められる。ただし,「伝え合 う力の素地」とあることから,正確性にこだわるよりも,むしろ,できるだけ多くの活動 を体験させることにより,伝え合う力を養うことが大切だと示唆している。
⑶ 外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め,相手に配慮しながら,
主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養うとある。
このことは,「学びに向かう力,人間性等」に関するものであり,「相手に配慮しながら」
という具体的な達成目標が示されている。高学年で「他者に配慮しながら」と記述されて いることを考えると,中学年で示されている「相手」という記述は,いつも周りにいる友
*立正大学社会福祉研究所客員研究員
児童の主体的学びを促す英語教材開発とその活用法研究
―パネルシアターを使用しての英語表現活動―
Development and Use of English Materials to Promote Children’s Active Learning
―Production Activities with Panel Theater―
根岸衣美子*
Emiko Negishi
〈論文〉
達や指導者(ALT を含む)などを指しているとみられる。相手に理解し易くするには,ど のように話したらよいのかなどを考えることが大切であるとともに,主体的にコミュニケー ションを図ろうとする態度を重視していることも大切なポイントである。
ここで言われている, 3 つの柱は,個別に育成されるものではなく一体的に育成されるこ とが大切である。その結果,コミュニケーションを図る素地となる資質・能力が育成される のである。
以上の事を踏まえ,児童の主体的学びを促す教材として,パネルシアターを使用しての指 導を模索検討する。
2 .研究の目的
本研究は,児童の知的好奇心を刺激し,「小学校英語」の授業の中で主体的な学びを通し,
児童の表現力を高め,更に児童の自己肯定感を得られるような授業ができるような教材開発 を目的としている。これまで群馬県I市内のA小学校,B小学校,C小学校で JTE(英語活 動支援助手)として「英語」の授業を行った中で,児童に必要不可欠と思われる自己表現,
主体的学びに繋げられる教材としてパネルシアターを制作し,考察する。
3 .パネルシアターの学校教育における意義
パネルシアターとは,パネル布を貼った舞台に絵(または文字)を貼ったり外したりして 展開する,おはなし,歌あそび,ゲームをはじめとする教育法,表現法である。現在,舞台 には付着力のよいパネル布(日本不織布3150番等)を,絵(文字)にはPペーパー(MBS テック130番,180番等)や和紙等が用いられている。1973年に浄土宗西光寺の住職,古宇田 亮順によって創案され,以来,保育園・幼稚園・小学校などの保育・教育現場を中心に,実 演が広まった。(ja.wikipedia.org/wiki/ パネルシアター)
田中正代は,パネルシアターの教育的意義について,以下のように述べている(2)。
① ストーリーへ『没入』させる……こどもはお話の世界が好きである。そして,お話の世 界に入り込みやすい。教師の演じるパネルシアターの世界に没入し学習していくことがで きる。
没入することでいつの間にか学習したり考えたりする。
② こどもが操作することによる『思考の補助』としての役割……パネルシアターは動かし たりする事が容易である。
よって,パネルシアターを動かしながら自ら考えたり友達に自分の考えを説明したりす ることができる。
③ 『学び合い』の媒介としての役割……パネルシアターという共通の画面を通し友だちの考 えを共有したり新しい考えを受け入れ考えたりできる。
『対話の相互性』を生む……パネルシアターは立ち位置が教師と子どもが対面の形(黒板
での授業と同じ)になる。
また,視線を交わしながら,パネルシアターに動きを加えながら授業が進められる。
その位置関係は対話の相互性を活発にし,子どものストーリーへの没入や思考の活性化 を促していることにもなっている。
4 .自主制作したパネルシアターとその特徴
3 章の視点を踏まえて制作・出版した「パネルシアター The North Wind and The Sun
(北風と太陽)(4)」の紹介とその特徴を以下に述べる。
場面構成: 7 場面
The North Wind and The Sun
(枯れ草を貼る)
Put three patches of grass
(brown side up).
Put the North Wind and the Sun.
One day, the North Wind and the Sun had an argument. The North Wind said to the Sun,“I am stronger than you.”
“No! I am stronger than you, Mr. Wind,” said the Sun.
(太陽と北風を貼る)
ある時,北風と太陽が力自慢をしていまし た。「おれさまは,おまえより強いんだぞ。」
「いいえ。北風さん,私の方が強いわよ。」
Just then, a man with a long coat was walking down the street.
Bring out the walking man from behind the board and show him walking on the board.
The North Wind looked down and said,
“Watch ! I’ll make him take his coat off.” ちょうどその時,ぶあついコートを着た一 人の旅人が通りを歩いてきました。
(旅人を歩いているように出す)
北風は,旅人を見下ろしながら,
「見ていろ!今から,おれさまがあの男の コートをぬがせてみせる。」
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〔Put the small wind.〕
“Blow, blow, blow, blow! I’ll make him take his coat off.” He huffed and puffed.
The man said, “The wind is very cold today.”
〔Put the big wind.〕
He wrapped his coat and scarf around himself tightly. “Oh, I’m very cold.”
“Blow, blow, blow, blow!”
Bend the man’s body to the front.
Take off his hat quickly.
(小さい風を貼る)
「ビュー,ビュー,ビュー,ビュー!それ,
脱げ,脱ぐんだ。」北風はそう言うと,これ でもか,これでもかと吹きつけました。
(大きい風を貼る)
風が吹けば吹くほど旅人は寒くなり,「きょ うはなんて寒いんだ。」と言うと,コートと マフラーを体にしっかりと巻き付けました。
(旅人の上体を前かがみにする)
(帽子を飛ばす)
「うー,なんて寒いんだ。」
The North Wind blew and blew on the man.“I’m cold, I’m very cold,” said the man.
He couldn’t walk anymore.
The North Wind couldn’t make the man take his coat off.
Take away two winds.
Put a sad face on the North Wind.
そして,北風が頑張れば頑張るほど,
「寒くて,寒くてどうにもならない。」
旅人は,そう言うと,一歩も歩けなくなり ました。北風は,どうやっても旅人のコートをぬが せることができませんでした。
(大・小の風をとる)
(北風の悲しい顔を貼る)
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“Now it’s my turn,” said the Sun gently.
The Sun smiled and shined on the man.
Move the Sun above the man, and move it from side to side.
“Shine, shine, shine, shine, I’ll make him take his coat off,” said the Sun.
「では,今度は,私の番ですよ。私が旅人 のコートをぬがせてみせましょう。」太陽 は,そう言うと,寒さでふるえる男をあた たかな光でつつみこみました。「ギラギラ,
ギラギラ!」
(太陽を旅人の真上に動かし,太陽の重な り部分を揺らすように動かす)
The Sun shined and shined over his head.
“Oh, the Sun is very warm today.” the man said.
“Sun shine, sun shine, sun shine!”
“I’m very hot. I’ll take my coat off.” Take away the man’s coat.
Show the Sun’s smile face, and move it from side to side.
Flip the half of the smiling face, and show the Sun’s happy face.
Finally the man wiped his face and he took his thick coat off.
太陽は,旅人の真上で,ギラギラと照り付 けました。
「ああ,太陽の光はとても暖かいなあ!」
太陽は,力の限り,旅人を照り付けました。
「もう暑くて,暑くて,コートなんか着て られない。」と旅人は,言いました。そして 顔の汗をぬぐい,分厚いコートを脱いでし まいました。
(旅人のコートをとる)
(太陽を笑顔にし,太陽の回転部分を動か す)
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Turn the three patches of grass to the green side.
Put three flower parts on them.
Now you know……Which is stronger, the North Wind or the Sun?
Who made the man take his coat off?
(枯れ草を裏返す)
(緑の葉っぱの上に花のパーツをのせる)
さあ,北風と太陽のどちらが強かったので しょうか?
特徴:
① 北風と太陽に台詞があるので擬人化し,顔の表情も喜怒哀楽を表せるよう工夫した。
② 旅人は外国人をイメージし,青色の瞳,金髪とした。
③ パネル人形の動きがある仕掛け(ギラギラと光る太陽,取り外し可能な旅人の帽子とコー ト,歩いているように動かせる旅人)により,子どもが臨場感に浸りながら容易にそれら を操作できるようにした。
④ ストーリーの最後の場面は,旅人の安堵の気持ちを表現するため,また子ども達にとっ ても平穏な余韻を残したい為に,野の花を咲かせることにした。
5 .小学校英語教育の中でのパネルシアター活用の可能性
田中らの先行研究には,授業にパネルシアターを取り入れることにより,学習者のストー リーへの没入がより可能になり,その没入から授業への意欲や集中に繋がるとある(3)。 そこで,英語学習において,パネルシアターの活用の可能性を検証することにした。
① 筆者が主催するA英会話教室に通う小学生18人に対し,自作のパネルシアター「The North Wind and The Sun」(北風と太陽)を英語で演じる。
② その後,子ども達自身がパネル人形を動かして話の内容を思い出してみる。
③ 更に,子ども達自身がそれぞれの話の続きを考えて,ワークシートに絵を描き,その内 容を日本語で記入する。
④ 子ども達が考えた,それぞれの話の展開や考えを聞きあい,それを演じてみる。
⑤ その際,子ども達自身が自ら言いたいと思う英語表現を使うことで,自己表現力を身に つけることができるとともに,達成感や自己肯定感の獲得へと導く。
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6 .実践の結果
① 続きの話をすぐに考えられる子どもは,ワークシートに絵を描き,その話を自らの言葉 で書きだした。すぐに取り掛かれない子どもは,絵のほうからでも文章からでもどちらで も自分のできそうなほうから始めるよう指示した。20~40分位の時間内でのワークシート 作成だったが,ほぼ全員が書くことが楽しかったという感想であった。自己表現を自由な 発想でできるということに子どもたちの創造性が刺激され,開放感が得られたと思われる。
児童のレポートに番号①~⑱をつけて,児童が表現,記述したものを分析する。
設問は 1 から 4 までで,主役である北風と太陽についての思いを問うものである。
その後,話の続きがどうなったかを自分で考え,絵,または文字で,あるいは絵と文字で表 現や記述をすることを指示した。
設問 1 :北風と太陽のどちらがつよかったと思いますか。
北風 0 人 太陽 17人 どちらともいえない 1 人 どうしてそう思いましたか。(記述あり 16人 記述無し 2 人)
【太陽が強かった】
① きた風がコートをぬがせられなかったから。( 7 歳)
② きた風がコートをぬがせようとしたから,太陽がつよくなった。( 7 歳)
③ ― 記述無し ( 8 歳)
④ 太陽はあったかいからコートがぬげた。( 8 歳)
⑤ 太陽ならあついから。( 9 歳)
⑥ 北風が風をおこしても,そうかんたんにコートはぬげないから。( 9 歳)
⑦ おとこの人のコートをぬがせたから。
⑧ ― 記述無し ( 9 歳)
⑨ 太陽が男のコートをぬがせたから。( 9 歳)
⑩ この話ではたいようのほうがつよいからです。( 9 歳)
⑪ 最後に男性がコートをぬいだから。(10歳)
⑫ 太陽がコートをぬがせたから。(10歳)
⑬ 最後にコートをぬがせたし,花もさかせたから。(11歳)
⑭ 暑くていつもまぶしいから。(11歳)
⑮ 旅人のコートをぬがせたから。(11歳)
⑯ 最後は男の人がコートをぬいだから。(12歳)
⑰ コートをぬがせたから。(12歳)
【どちらとも言えない】
⑱ それぞれの個性で他のものにはないものを分かっているから。
設問 2 :北風はどんな性格だと思いますか。
① いやな人
② こわい
③ おこっている性格
④ すぐ,しょうぶをしようとする人
⑤ ― 記述無し
⑥ おっちょこちょい。
⑦ いばっている。
⑧ わる
⑨ 自分が強いと思っている。
⑩ いつもかぜをふいて楽しそうにしてそう
⑪ ワル
⑫ 負けずきらい
⑬ 少しいたずら好き
⑭ おこりんぼう
⑮ 力で解決しようとする性格
⑯ 自分の思い通りにしたい。
⑰ 冷たい
⑱ みんなをむりやり引っ張っていく性格
設問 3 :太陽はどんな性格だと思いますか。
① やさしい人
② つよい
③ いつも元気なせいかく
④ やさしい,むりやりコートをぬがせない人
⑤ ― 記述無し
⑥ やさしい
⑦ ハッピー
⑧ ハッピー
⑨ 自分は別に強くないと思っていて,やさしい。
⑩ いつもにこにことみんなをえがおにする
⑪ やさしい
⑫ やさしい
⑬ やさしい
⑭ いつも笑っていて,顔がやさしそう。
⑮ 知恵をつかい物事を解決する性格
⑯ 自分の思い通りにしたい。
⑰ 温かい
⑱ みんなを明るくする性格,ちえがある
設問 4 :このお話のつづきを考えてみましょう。
① そのあと,きた風と太ようは,なかよくなりました。でも村びとさんが,のどが からからです。きたかぜが水をもってきてくれました。村びとさんがお花にちょっ と水をやりました。お花がいっぱいさきました。めでたし,めでたし。
② ― 記述無し
③ ― 記述無し
④ きた風と太陽がなかよくなって,そのあと花がたくさんさいて,くもともなかよ くなって 3 人でりょこうなどにもいった。
⑤ ― 記述無し
⑥ 男は暑いなあといって歩いていきました。すると北風が,まけおしみで「直せつ 対決しよう」と言い出しました。太陽もさんせいすると対決が始まりました。こ の対決は北風が勝ち,二人は勝ち負けをくりかえし,いまだってずっと対決をし ているかもしれません。
⑦ 太陽と北風はなかよくなって,いつもいっしょに遊ぶようになりました。
⑧ きた風はくやしくなってにげていった。
⑨ 男は暑くて死にそうで,とうとう北風の風が入っているふくろの中に入りました。
男は「はぁー。涼しいー。」と,言いました。太陽と北風は,おどろきました。太 陽と北風は「また,勝負しよう。」と言って仲良くなりました。
⑩ さいごにおとこの人をとばして,たいようもとばした。そしてきたかぜがかった。
⑪ 太陽が強くなったけど,風が来て,強くなる。男性がコートを着るが,ボウシが なくなって大変なことになる。また太陽が強くなってボウシは必要なく,すむ。
⑫ そのあと北風はいなくなって,あたたかくなった。たび人は日なたぼっこをして いた。
⑬ 北風はとても悲しみました。それを見た太陽は,「じゃあ,交代でしよう。」と言 いました。それを聞いた北風はとてもよろこびました。そして二人は仲良くなり ました。だから日差しが暖かい日と北風が冷たい日ができました。
せて,ねむります。
⑮ もういちど力くらべをしてみることにしました。まず太陽が暖かくしました。し かし旅人はコートを脱ぎませんでした。つぎに北風がありったけの力を使い風を ふかせました。すると,コートが風の力で飛ばされてしまいました。それからは 知恵では太陽が強く,力では北風が強いということにしました。
⑯ ― 記述無し
⑰ 次はどちらがコートを着させるか,たいけつをする。北風が勝利。引き分けにさ せる。
⑱ ですが,太陽はつかれてしまって,急に冬のように寒くなりました。男の人はま たコートを着てぼうしをかぶりました。そして,「今日はなんでこんなに天気が変 わるんだ」と言って家にもどってしまいました。けっきょく太陽と北風はどちら も同じ強さだったのです。そして,,,。その横では,月が,「いいなあ,北風と太 陽は」と言いながら空にのぼっていきました。
女児(11歳)
北風はとても悲しみました。
それを見た太陽は,「じゃあ,交代で しよう。」と,言いました。それを聞 いた北風はとてもよろこびました。そ して二人は仲良くなりました。だから 日差しが暖かい日と北風が冷たい日が できました。
女児(12歳)
次はどちらがコートを着させるか,た いけつをする。北風が勝利。引き分け にさせる。
男児( 9 歳)
太陽と北風はなかよくなって,いつも いっしょに遊ぶようになりました。
女児( 9 歳)
男は暑くて死にそうで,とうとう北風 の風が入っているふくろの中に入りま した。
男は「はあー。涼しいー。」と,言い ました。太陽と北風は,おどろきまし た。
太陽と北風は「また,勝負しよう。」
と言って仲良くなりました。
男児( 9 歳)
男は暑いなあと言って歩いていきまし た。すると北風が,まけおしみで「直 せつ対決しよう」と言い出しました。
太陽もさんせいすると対決が始まりま した。この対決は北風が勝ち,二人は 勝ち負けをくりかえし,いまだって ずっと対決をしているかもしれませ ん。
「北風と太陽」のストーリーを知っている児童も,知らない児童も,動きを伴ったパネル人 形の展開をすることにより,英語でのストーリーの内容を理解できていると思われた。
北風と太陽の力自慢の対決は,旅人のコートを脱がせることであったが,児童の思いや考え はその結果だけにとらわれているのではないことが読み取れる。強引な性格の北風であって も,それが単純に悪者とはなっていない。更に,対決という表現を使用していても,それは お互いを尊重した関わりであり,両者がバランスを保っているのである。言い換えれば,ほ とんどの児童が,北風と太陽はどちらも大切な存在であると表現している。
7 .課 題
しかし,現段階では,子ども達が自由に役割を演じ,作品を発展展開できるような時間を 確保できてはおらず,以下の点を踏まえ,引き続きこの研究を推し進め,深めていく必要が ある。
まずは,子ども達自身が,自分たちが作りだしたストーリーの内容の中で,必要と思われ る英語表現を精査する必要がある。
更に,それを子ども達が共有し,コミュニケーションの手段とできるような指導方法を検 討したい。
① 子ども達それぞれが作った続きのストーリーを共有し,いろいろな考えがあることを シェアすることで新しい発想や気付きを得られるような指導をする。
② 子ども達が,自分たちで創造した続きのストーリーを演じる中で,必要な身体的,言 語的表現を自然な形で得られるような指導の方法を探る。
③ パネルシアターを介在することで,自己表現を容易にし,達成感や自己肯定感を得る ことができ,コミュニケーション力や学びへの意欲につながるような指導方法を探る。
8 .おわりに
「北風と太陽」は,イソップ物語の中でもよく知られた話である。イソップ物語は,普遍 の真理や教訓を伝えるものであるが,その解釈は,様々である。一般的には,以下の解釈が ある。
教訓① 手っ取り早く乱暴に物事を片付けてしまおうとするよりも,ゆっくり着実に行う方 が,最終的に大きな効果を得ることができる。また,冷たく厳しい態度で人を動か そうとしても,かえって人は頑なになるが,暖かく優しい言葉を掛け,あるいは優 しい態度を示すことによって,初めて人は自分から行動してくれるという組織行動 学的な視点もうかがえる。
教訓② 何事にも適切な手段が必要である,ということである。一方でうまくいったからと いって,他方でもうまくいくとは限らない。その逆も然り。しっかり,結果を見据
既存の解釈にとらわれず,いろいろな視点で物事を捉えることが大切という気付きを子ど も達の自由な発想から得ることができた。児童の主体的学びを促すためには,指導者の十分 な準備の時間,児童間のコミュニケーション,指導者からの能動的な且つ流動的な児童への 働きかけが必要であると考えられる。児童の表現力を更に伸ばせるような指導方法を研究す るため,パネルシアターを効果的に活用したいと考える。
註
( 1 )文部科学省(2017)「小学校外国語活動,外国語研修ガイドブック」
( 2 )田中正代(2008)「パネルシアターの教材としての可能性:子どもの理解様式に視点を あてて」大妻女子大学家政系研究紀要44.
( 3 )前掲書,45-50
( 4 )根岸衣美子(2017)「パネルシアター The North Wind and The Sun(北風と太陽)」
大東出版社