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食べすぎ現象と食環境

食べすぎ現象と食環境

―社会科学的アプローチによる可能性の検討―

真 間 大 地

(社会学専攻博士後期課程1年)

1.食べすぎ現象への社会科学的視点

⑴ 本論文の構成

 本論文では、まず肥満の問題から議論を開始する。次に、食べすぎを社会科学の観点から 考察する方針について述べる。そして、さまざまな社会科学の分野における研究事例を紹介 する。そのうえで、社会科学のなかでも、社会という広大なエリアをカバーできる利点があ る社会学による説明の可能性について探る。ここでは、「新しい個人主義」という比較的新し い社会学理論を使用して、食べすぎについての検討を進める。

⑵ 肥満の基本問題

 古くから肥満は社会的な問題として考えられている。実際に、医学や健康科学などの肥満 を専門に扱う分野では、肥満の世界的流行が言及されてきた。たとえば、ロスらによると、

さまざまな遺伝的な要因が肥満のなりやすさへ重要な影響があることを述べる一方、肥満改 善のために適度のカロリー制限と運動が有効とも述べている(Roth et al:2004)。これは、

個人の努力や専門家の助言で肥満改善が可能という、前向きなメッセージである。

 日本でも、メタボリックシンドロームという専門用語の普及や、健康そのものへの関心の 増大で数々のダイエットブームが訪れた。たとえば、河原によると、フィットネスの流行で ジム新設の増加もあったとしている(河原:2005)。これらが契機となり、肥満の改善や回避 のために努力する人は多い。むしろ、過度なダイエットは摂食障害などを発症しかねないと いう、逆に痩せすぎることも、かえって健康にわるい場合もあるほどである。

⑶ 食べすぎへの着目の理由

 それでは、本人の主体的な取り組みによる肥満改善が可能であり、また健康への高い関心 にもかかわらず、肥満の人が一定数いるのかはなぜなのか。そこで、本論文では、この問い への新しい視野開拓のために、肥満関連研究ではおなじみの医学や健康科学などの分野では なく、社会学をはじめとした社会科学的アプローチについて検討する。

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しかし、「食べすぎ→太る→肥満になる」という経路は、多くの人が容易に想起可能であると 思われる。そこで、社会科学は人間行動に焦点をあてるアプローチのため、食べすぎという 社会的な現象をこの方法で考察する。

2.食べすぎ現象へのマーケティングによる影響の検討

⑴ 食産業におけるマーケティングについての議論

 肥満になりやすいかを決定づけるのは、最終的には個人である。しかし、大きなマーケッ トのなかでは、どの個人も一消費者という小さな存在にすぎないため、間接的には個人を超 えた大きな存在である食に関する企業からの影響が考えられる。

 シャンドンとワンシンクは、食産業のマーケティング活動で、より高い収益の追究の結果、

より安くて、より大きくて、よりカロリーの高い食品がマーケットのなかで多くを占めるよ うになり、製品と環境の肥満への影響が増大することを示している(Chandon and Wansink:

2012)。これには、「広告(Advertisement)」、「プロモーション(Promotion)」、「ブランディ ング(Blanding)」、「パッケージング(Packaging)」までの「マーケティング ・ コミュニケー ション(Marketing Communication)」のさまざまな要因からの効果も、あわせて影響がある としている。そして、こうした結果は研究者の予想以上としている。

 このことから、食産業でのさまざまなマーケティングの手法によっては、個人の食べすぎ を誘発する可能性がわかる。もちろん、健康によい食品では、過剰摂取などを除けば、肥満 の改善や回避のために、おおむね望ましいと思われる方向へ導くのであろう。しかし、健康 にわるい食品では、個人と社会にとって、より都合のわるい方向につながりかねない。

 また、マーケットのなかで、安価で大量で高カロリーの商品がより多くの割合を占めると いうのは、おもに欧米での知見が中心なので、日本における一般的な文脈ではあてはまらな いと考えられても不思議ではない。このように、食品の量的な側面に着目すれば、大きなサ イズの商品がマーケットのなかであふれかえり、食べすぎを即座に誘発するほどの食環境は 日本では観察されにくい。この点ではおおむね影響は限定的であると考えられる。

 そうとはいえ、こうした知識があるだけでも、買物時になるべくよく考えてから購買する という習慣が定着する可能性があるため、肥満の改善や回避のためのよい参考にはなる。

⑵ 食産業における広告についての議論

 今や食産業にかぎらず、多くの日本企業で、マーケティング ・ コミュニケーションの重視 傾向は顕著であり、すでに標準的な行動様式である。さまざまなマーケティング ・ コミュニ

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食べすぎ現象と食環境

ケーションの方法のなかでも、広告は多くの人々の購買意欲をより高められる、信頼される 効果的な施策の一つとして、これまでも多くの企業が積極的に利用している。

 一般的に、現代の営利企業は、古典的な看板や新聞、テレビなどからネット広告まで、さ まざまな媒体を使用して広告を出している。そして、多種にわたる媒体について、同時かつ 効果的な組み合わせを考えながら、企業は膨大な量の広告を発信する。そのため、都会や地 方あるいは年代などの差異はあるとはいえ、ほとんどの人が何らかの媒体を通して、日常的 に広告にふれている環境で生活している。このなかには食産業の広告も含まれる。

 ビュクミロビックによると、現代の食行動はさまざまな要因が複雑に絡まりあい決定され るため、単一要因のみの影響は考えにくいとはいえ、実際に人々が食品広告やメディアから の影響を受けることは事実であるとしている(Vukmirovic:2015)。

 そのため、食広告認知で、本当は必要せずとも、食欲が刺激され、その商品の購買意欲や 購入確率が高まるなど態度変容に結びつき、さらに食べすぎの誘発可能性が高まるという推 論が容易にできる。つまり、食広告の内容や種類では、食べすぎの誘発可能性がある。

⑶ 外食行動についての議論

 仕事や勉強などで多忙な人は、食事のために割ける時間は限定的になりやすい。こうした 傾向のある人は、自宅での調理を経ての食事よりも、外食や中食の利用という食の外部化と 呼ばれる選択をしやすい。食の外部化傾向は集団によって、その程度が異なる可能性がある。

たとえば、長谷川によると、日本では団塊ジュニア世代以降に食の外部化が顕著になったと している(長谷川:2017)。また、小林によると、教育集団による差異の可能性があるとして いる(小林:2011)。しかし、一日の食事のなかの外食割合の高い人は実際にいるため、個人 の外食行動のさらなる理解が必要である。これにより、食べすぎをしやすいかの判断の手が かりを得ることができる。

 個人が外食を考えた場合、人々はどのような基準で入店するレストランを選択するのか。

高度な消費社会が進む現代には多数のレストランがある。多くのレストランが集積した都市 では、まるでレストランに囲まれたような環境で日常生活を営む人が多い。また、レストラ ン選択の方法には個性が反映されやすくなると考えられる。

 外食などの食についての意思決定は、進学や就職、結婚といった大きな意思決定ではない。

しかし、日々の意思決定の積み重ねで、個人のその後のライフスタイルを決定する可能性が ある。また、食の選好は集団間で異なる可能性がある。たとえば、小林によると、何を食べ るかと何を食べないかについて、教育集団ごとに明確な傾向があることを明らかにしている

(小林:2017)。そして、集団内の個人間でも、さらに個人内でも、価格の高低あるいは時間

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果が生じる、複雑な意思決定問題になる。

 複数の属性情報があるなかから、そのうちの一つを選択する場面の人間の意思決定には、

おもに二つの「ヒューリスティック(Heuristic)」が考えられる。一つの考え方は、それぞ れの属性情報の長所と短所を総合的に判断するという「補償型意思決定(Compensatory Deci- sion Making)」である。この方針を採用した場合には、複雑な属性情報の分析のための時間 が多くなるなど、見込まれるコストは大きい。もう一つの考え方は、個人が重視する、ある 属性情報が一定の条件を満たさない場合には、ほかの属性情報を勘案せずに、候補から除外 される「非補償型意思決定(Non-Compensatory Decision Making)」である。

 こうした考え方は、豊富な選択肢があるなかで、どのレストランへ入店するのか、あるい はスーパーやコンビニなどでどの食品を選択するのかといった、人々が頻繁に経験する意思 決定の場面で、誰しも必ず頭のなかで考えを巡らしていること、そのものなのである。その ため、この考え方に沿って議論を進めることは重要である。

 ヤンらは、ディナータイムに複数の候補となるカジュアルレストランがある場合の意思決 定の方法を分析した(Jung et al:2015)。この研究では、提供される食のクオリティがわる いと考えられる場合では、価格やサービスなどほかの属性情報からの影響をほとんど及ぼさ ずに、そのレストランの選択確率が低くなることを明らかにしている。また、食のクオリティ という、ただ一つの属性情報に対して、それを支配的に判断する非補償型意思決定を行う割 合が全体の約4分の1であることも明らかにしている。

 この知見は、一般的な人々の感覚に照らし合わせたとしても理解しやすい。本質的には、

食事は体内に異物を取り込むという営みである。たとえば、摂取した食品が肥満を誘発する 不健康なものである可能性など、食事はさまざまなリスクを伴う行動である。そのため、多 くの人が食のクオリティの重視という意思決定をするのは当然である。翻って考えるのなら ば、食のクオリティの部分が問題ない場合には、景気や流行、競合の状況など考慮すべきほ かの要因はあるとはいえ、レストラン側の創意工夫や努力次第で、新規顧客やリピーター数 の増加などの変化も可能である。たとえば、ブライマンによると、現代では、テーマ化した レストランが多くあるとしている(Bryman:2004=2008)。これは、レストランが食のクオ リティ以外の部分でも、顧客獲得のためにさまざまな個性を打ち出そうと努力する事例であ る。再度、消費者側から考えると、クオリティがわるいレストランは最初から入店候補から 除外されるにしても、一定のクオリティを満たすレストランならば、そのほかの属性情報の 優位性では、入店可能性があることがわかる。

 食のクオリティの高さと健康によいことは、必ずしも一致しない。人々が認識する食のク

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食べすぎ現象と食環境

オリティについて、それが具体的にどのような特徴を意味するのかは明白ではない。たとえ ば、新鮮さや味付け、あるいは盛り付けセンスのよさかもしれない。そのため、人々が満足 感を得ることができる食のクオリティを満たしたとしても、それが健康の観点からあらため て考えたとしても、なおクオリティが高いかどうかは保証できない。

 健康かどうかではない観点で、食のクオリティが問題ないと人々が十分に考えられるレベ ルにまで達する場合は、レストランの顧客増加も可能となる。たとえば、味がおいしいなど 魅力的な要素がある場合には、不健康であっても、食べすぎを誘発しかねないことや、その レストランへの再訪が考えられる。健康とりわけ肥満の改善や回避のために、レストラン選 択の意思決定のさらなる考慮が必要になる。

3.「新しい個人主義」による食べすぎ現象への社会学的考察

⑴ 社会学的アプローチの理由

 これまで、現代の食べすぎと食環境の関係を、医学や健康科学ではなく社会科学による視 点から検討を進めた。社会学は細分化した社会科学のなかでも、社会という広大なエリアを 全面的に担当可能である。この点がほかの社会科学と異なる社会学の利点である。そこで、

社会学の考え方の使用により、食べすぎと食環境の関係をあらためて考える。

⑵ 社会学における「新しい個人主義」の重要性

 これまで、広く社会を分析するために、社会学ではさまざまな社会学理論が考案された経 緯がある。これらは、具体的なテーマの分析で実際に利用される。今回、食べすぎと食環境 の分析のために使用する社会学理論は、アンソニー ・ エリオットが考案した「新しい個人主 義(New Individualization)」(Elliott:2007=2008)である。この理論は、多数の社会学理論 があるなかでも比較的新しいほうに分類可能である。そのため、現代の特徴を分析する場合 には、古典理論よりも対象とする社会現象により適用できる可能性が高い。

 この理論は、個人から企業まで広く分析可能という特徴をもつ。社会学はおもに個人間相 互作用を扱うため、個人が分析単位の社会学理論が多い。個人を超えた大きな意思決定主体 である企業レベルまで適用可能など、高い汎用性があることはメリットである。そして、既 に日本の社会学研究での適用実績を有する(Elliott et al:2012)。このことは、日本を対象に した研究を進める場合の魅力的の一つになる。そのため、今回はこの新しい個人主義を本論 文の結論部分へと導くための分析ツールとして、実際に使用する。

 この新しい個人主義は、「再創造(reinvention)」、「即座の変化(instant  change)」、「ス ピード(speed)」、「短期主義(short-termism)」という、4つの構成要素から成り立つ。そ

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自らが自らを積極的に作り変える営みを絶えず続けるという、社会の動的過程である。なお、

この特徴は、グローバル化と新自由主義を前提条件としている。

 まず、個人レベルでは、美容整形のサービスや化粧品産業の商品利用の増加や、セラピー 文化の流行などを具体例としている。ここでは、現在の自分では不十分であるとして、今後 の新しい自分の模索を試みる個人が考えられる。なお、セラピー文化については、社会の心 理学化と呼ばれる、日常生活への心理学の知見を活用する人の増加という近年の現象と関連 すると考えられる。さらに、日本では一般向けの自己啓発本が人気である。たとえば、牧野 によると、こうした自己啓発本はさまざまな年代や職位が対象の多くの種類があり、扱うテー マもライフスタイルのさまざまな側面にわたるとしている(牧野:2015)。

 そして、企業レベルでは、ダウンサイジングをはじめとする大規模な事業再編の動きがよ く繰り返される事象などを具体例としている。現在の事業内容では不十分であるとして、今 後の新しい事業計画を模索する企業が考えられる。

⑶ 食べすぎ現象への「新しい個人主義」の適用可能性

 それでは、食べすぎ現象と新しい個人主義をどのような関連での考察が適切なのか。現代 の食環境を考えた場合、さまざまな種類の食品やサービスがあり、また消費行動をするため の空間であるコンビニ、スーパー、レストランなどがあり、その選択肢が豊富に揃っている ことがわかる。たとえば、藤本によると、コンビニには中食や嗜好品が揃っているため、移 動が多い現代の人々の生活に合っているとしている(藤本:2013)。また、佐藤によると、現 在の大学では、コンビニや飲食チェーンの出店が多くあり、こうした傾向は2000年代半ば以 降に一般的になったとしている(佐藤:2017a)。実際に、大学生の食堂利用が減少して、コ ンビニ利用が増加したとしている(佐藤:2017b)。このように、教育機関でも消費社会化の 傾向があるなど、現代の食環境はまさに商業の大きな影響がある。

 一般的に、食以外でもさまざまな商品やサービスの購買は、個人のなかの経験値上昇を意 味する。多くの人はなるべく多くの経験を積みたいと思う。今まで、購買経験が乏しい未開 拓なジャンルの商品やサービスでも、機会があれば試したいと思うのは自然である。

 実際に、個人の購買経験を広く一般公開した口コミのレビューサイトやグルメブログなど の多さから、商品やサービスの消費という経験値上昇を志向する人が多いことがわかる。こ れらには、食品やレストランの詳細な記述も膨大に含まれている。近年では、SNS 上に食事 光景の写真をアップする行動様式が若者を中心に一般的になり、こうした傾向に拍車をかけ ている。この行動は、外山によると、孤食が増加した現代でも、まだ共食の志向性があると

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している(外山:2017)。このように利点はあるが、もちろん、そうではない側面も考える必 要がある。

 次々と新しい商品の発売や新しい形態のサービスの提供開始といった企業行動は、今やあ りふれている。効果的なマーケティング ・ ミックスは、試行錯誤の積み重ねによって、より 洗練された形式になっていく。さらに、期間限定の商品やサービスの販売やクーポン券の発 行など、プレミアム感を醸し出す方法を日常的なマーケティングでの活用でより多くの顧客 獲得を試みることは多い。また、マーケティング活動のグローバル展開でより高い収益をめ ざすことも一般的である。さまざまな企業側の取り組みは、新しい個人主義による部分であ る、つねに新しい経験を求め続ける姿勢として、その多くを説明可能である。

 こうした傾向を新しい個人主義で解釈すると、個人レベルでは、現在の自分の経験では不 十分と考えることが可能であり、企業レベルでは、現在の自社が提供する商品やサービスの 継続だけでは不十分と考えることが可能である。そして、新しい個人主義はさらに加速する と考えられる。このような解釈は、食の側面についても同様に可能である。しかし、こと食 については、より慎重に考える必要がある。個人レベルでは、自分の経験値上昇のために、

次々と販売開始される食品の購買や新規開業したレストランへの訪問、新規メニューを試し てみるなどの行動で、食べすぎの可能性が考えられる。企業レベルでは、たとえ健康によい とはいえない食品でも、これまで扱ってない未開拓のジャンルならば、余計に経験や収益、

シェア拡大のために販売を考える可能性が考えられる。

 こうした個人と企業レベルの行動は、たとえば肥満の流行など、重要な影響のある社会的 問題につながりかねない。そのため、新しい個人主義の展開には、経験値上昇の可能性など 多くの人がそのメリットや快適さを実感できるポジティブな部分ばかりではなく、経験値上 昇と引き換えに、少なからずネガティブな部分の併存可能性を考慮する必要がある。

 さまざまな選択が可能なことは望ましいと多くの人が考える可能性はある。しかし、どの 選択がより適切なのかについては、行動選択以前には不明な場合も多い。また、新しい個人 主義が進む現代では、ますます個人の選好や判断の重要性が高まると考えられる。

4.総括と展望

⑴ 本論文の総括

 本論文では、食べすぎへのさまざまな社会的影響の可能性について、従来からの医学や健 康科学などのアプローチではなく、人間行動をおもに扱う社会科学のさまざまな分野の研究 事例の紹介を通して考察を進めた。それぞれの分野の食べすぎへの影響については、マーケ ティング ・ コミュニケーションのさまざまな側面の影響、食品広告やメディアからの影響、

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ら、食べすぎを誘発する現代の食環境の特徴が見出された。そして、新しい個人主義による 検討から、食べすぎ現象と食環境の社会学的分析の可能性を考えた。現在の経験では不十分 であるとして、経験値上昇を志向する個人や企業が多く、さらに新しい個人主義により拍車 がかかっている。食については、販売実績などの経験値上昇のために、食産業から次々と新 しい商品やサービスが開始され、広告などのさまざまなマーケティング手法の効果により、

やはり経験値上昇を志向する個人がそれに反応しやすくなる。そして、新しい個人主義の進 展に伴い、より食べすぎを誘発しかねない状況になる。

 このように、肥満の改善や回避のためには、医学や健康科学などから提供される知識獲得 以外に、社会学をはじめとした社会科学の理解が重要である。

⑵ 今後の展望

 食べすぎへの影響を詳細に検討するのにあたり、これまで本論文で紹介した社会科学にお いて、どの分野の説明がより適切なのかは、さらなる吟味を重ねる必要がある。また、こう した食がテーマの研究は、社会学という一つの専門分野だけに収まらない広域的な学術分野 を構成するため、引き続き、より多くの社会科学の分野の考察に努めることとする。

 方法については、今回は理論的検討だけであったが、今後は食べすぎに関連する、ウェブ や出版物などに蓄積された社会の実データを使用した研究を進める予定である。

参考文献

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