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目 次 1問 題 の 所 在

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〈論 説〉

相場i操縦 に関す る会社役員 の責任

一 企業の社会的責任 に関す る試論[2]一

加 賀 譲 治

目 次 1問 題 の 所 在

2相 場 操 縦 に 関 す る会社 役 員の 民 事貴 任 規 定 (1)役 員等 の会 社 に 対 す る責 任 (2)役 員等 の第 三 者 に対 す る責任 (3)相 場操 縦 者 の 損 害賠 償 責 任 3関 連 す るい くつか の 判例

(D丸 八証 券 相 場 操縦 事件 (2)ハ ザ マ株 主 代 表 訴訟 事 件 (3)野 村謹 券 損 失 補 填 責任 追 及 廓件 (4)判 例 の分 析

4相 場 操 縦 に関 す る会 社 役 員 の民 事 責 任

1問 題 の 所 在

相 場 操 縦 を め ぐる過 去 の 裁 判 例 は す べ て刑 事 事 件 で あ り、 民 衷 責 任 が 問 わ れ た の は 、 過 去 一 件 だ け しか な い。 そ の 唯 一 の 民 事 事 件 も、 投 資 家 が 相 場 操 縦 者 に損 害 賠 償 を請 求 した事 案 で は な く、 証 券 会 社 の 相 場 操 縦 に よ り損 失 が 発 生 し た と主 張 す る一 般 投 資 家 が 、 監 視 義 務 を解 怠 した 証 券 取 引 所 に対 して 不 法 行 為

q

に基 づ く損 害 賠 償 請 求 を した とい う事 件 で あ り、 そ の請 求 は棄 却 され て い る。

した が って 、過 去 、 相 場 操 縦 に 関 して 民 事 責 任 が 認 め られ た 事 例 も、 相 場 操縦 者 に 損 害 賠 償 責 任 を追 及 した 事 例 も、 存 在 しな い。

金 融 商 品 取 引 法(以 下 、 「金 商 法 」 と略 称 す る)上 、 も っ と も悪 性 が 強 い と位 置 づ け られ て い る相 場 操 縦 で あ るの に、 これ は一 体 ど う した こ とで あ ろ うか 。

2)

以 前 、 筆 者 は 、 相 場 操 縦 の害 悪 生 を指 摘 した 。 相 場 操 縦 は 、 証券 市 場 の 公 正 性 ・

(2)

健 全 性 を破 壊 し、 ひ い て は 市 場 参 加 者 で あ る投 資 者 に経 済 的 な損 失 を与 え る行 為 で あ る。 金 商 法 が そ の罰 則 の 中 で 、 も っ と も重 い刑 罰 を 課 して い る の も、 そ の 悪 質 性 の 認 識 の表 れ で あ る。 しか しな が ら、従 来 相 場 操 縦 に 関 して 刑 事 責 任 の 追 及 は か な り行 わ れ て きた とい え よ うが 、 投 資 家 が 相 場 操 縦 者 に 対 して損 害 賠 償 責 任 を追 及 して こ な か っ た の は なぜ で あ ろ うか 。

過 去 の 相 場 操 縦 の 刑 事 判 例 を見 て も、 会 社 役 員 等 に よ る 自社 株 に 関 す る相 場 操 縦 の事 案 が きわ めて 多 い 。 日本 熱 学 工 業 事 件 は 同 社 の役 員 に よ る 自社 株 の 安 定 操 作 の 事 件 、東 京 時 計 製 造 事 件 は 同 社 の 代 表 取 締 役 に よ る 自社 株 の 安 定 操 作 の 事 件 、 テ ー エ ス デ ー事 件 は 同 社 の代 表 取 締 役 に よ る 自社 株 に 関 す る風 説 流 布 の 事 件 、 協 同飼 料 事 件 は 同 社 の 役 員 等 に よ る 自社 株 の株 価 操 作 の事 件 とい う よ うに 、過 去 わ が 国 で 生 起 した 相 場 操 縦 の 刑 事 事 件 の 大 半 が 、 会 社 役 員 等 に よ る 自社 株 に 関 す る相 場 操 縦 の 事 案 で あ る。 投 資 家 が 相 場 操 縦 者 で あ る会 社 役 員 等 に対 して 損 害 賠 償 請 求 訴 訟 を 提 起 す る とか 、 株 主 が 相 場 操 縦 者 で あ る会 社 役 員 等 に対 して 会 社 に生 じた 損 害 を賠 償 させ る代 表 訴 訟 を提 起 す る とか の 事 例 が あ っ て も不 思 議 で は な い と思 わ れ るが 、実 際 上 は皆 無 で あ る。 損 失 を被 っ た投 資 家 は そ の 損 失 を取 り戻 そ う と して 別 の証 券 取 引 に 忙 し く、 訴 訟 を して い る 暇 は な い の か 、 ま た は証 券 取 引 の 自 己責 任 原 則 に よ り取 引 の損 失 は投 資 家 も ち で あ る とい う認 識 のせ い な の か 、 ま た は会 社 は却 っ て 利 益 を得 た か ら特 に 問 題 は な い とい う こ とな の か 。 ア メ リカ で は 、相 場 操 縦 を め ぐっ て 刑 事 判 決 や 行 政 上 の 審 決 も多 く存 在 す るが 、 民 事 事 件 もお び た だ し く存 在 す る し、 イ ギ リス で は す で

3)

に19世 紀 末 に相 場 操 縦 に 関 す る民 事 事 件 が 起 きて い る。 わ が 国 で も、相 場 操 縦 事 件 の ほ とん どが 会 社 役 員 に よ る相 場 操 縦 行 為 で あ る こ とを鑑 み る と き、 過 去 は と もか く、 今 後 は会 社 役 員 等 に 対 す る損 害 賠 償 責 任 を追 及 す る事 案 が 生 起 す

る可 能 性 が 大 い に あ る。

会 社 法 と金 商 法 に は 、 会 社 役 員 等 の 損 害 賠 償 責 任 や相 場 操 縦 者 の 損 害 賠 償 責 任 を 明 らか に した 規 定 が あ るが 、 これ らの規 定 が 相 場 操 縦 に 関 して どの よ うに 適 用 され るか につ い て は 、 こ れ まで ほ とん ど言 及 さ れ て こ な か った 。 そ こで 、 諸 規 定 の 相 場 操 縦 へ の 適 用 の 可 能 性 を探 り、 参 照 す べ き い くつ か の 判 例 の 知 見 に学 び な が ら、 会 社 役 員 等 の 相 場 操 縦 の 民 事 責 任 に つ いて 考 え る こ とは 無 益 で は な いだ ろ う。 た だ し、 相 場 操 縦 を行 っ た 取 締 役 等 の 民 事 責 任 につ い て 、 こ こ

(3)

相場操縦 に関す る会社役員の責任

27

で は ご く基 本 的 な考 察 を行 い 、 そ の整 理 を試 み るに す ぎ な い こ とを お 断 り して お き た い 。

な お 、併 せ て企 業 の 社 会 的 責 任 と会 社 役 員 の 民 事 責 任 が どの よ うに 関 係 す る の か とい う点 も多 少 の 考 慮 に 入 れ た い と思 う。

2相 場 操 縦 に 関 す る会 社 役 員の 民 事 責 任 規 定

まず 、 会 社 の取 締 役 が 自社 株 の相 場 操 縦 を行 っ た 場 合 に お いて 、今 後 民 聚 責 任 が 問 わ れ う る と考 え られ る規 定 に つ き検 討 す る。 役 員 等 の 会 社 に対 す る責 任 (会423①)、 役 員 等 の 第三 者 に対 す る責 任(会429①)お よび 相 場 操 縦 者 の 損害 賠 償 責 任(金 商160)が それ で あ る。

(1)役 員 等 の会 社 に 対 す る 貴 任

まず 、 役 員 等 の会 社 に対 す る責 任 で あ る。 会 社 法423条1項 に よる と、役 員 等 が 会 社 に 対 して 損 害 賠 償 責 任 を負 う要 件 は、 役 員 等 の 任 務 慨 怠 な らび に会 社 が 役 員 等 の 任 務 慨 怠 と因 果 関 係 の あ る損 害 を被 っ た こ とで あ り、 ま た 同 法428条1 項 の解 釈 か ら、 役 員 等 の任 務 解 怠 に つ い て は帰 責 事 由が 必 要 とな る。 した が っ て 、 役 員 等 の会 社 に対 す る損 害 賠 償 責 任 の 要 件 は 、① 任 務 解 怠 、 ② 帰 責 事 由 、

③ 因 果 関係 の あ る損 害 とな る。 役 員 等 の 任 務 解 怠 の 前 提 に は 、 会 社 法 に お い て 役 員 等 は会 社 に対 して 善 管 注 意 義 務(会330、 民644)を 負 って い る こ とが あ る。

善 管 注 意 義 務 の違 反 が 認 め られ る な らば 、 任 務 解 怠 と共 に帰 責 事 由 も認 め られ る場 合 が 多 い。 とい う の も、 帰 責 事 由 と評 価 さ れ る過 失 は 、 善 管 注 意 義 務 違 反 を意 味 す る こ とに な るか らで あ る。 つ ま り、 善 管 注 意 義 務 違 反 も過 失 も、 役 員 等 に要 求 され る注 意 義 務 を尽 くさ な か っ た こ とに あ るか らで あ る。

こ の よ う な役 員 等 の 会 社 に 対 す る責 任 を厳 格 に 問 う とな る と、 過 酷 な 責 任 の 脅 威 に よ り、 取 締 役 が 会 社 経 営 に過 度 に 委 縮 す る こ とに な りか ね な い 。 取 締 役 に経 営 の結 果 責 任 を 負 わせ る と、 積 極 的 な 経 営 判 断 を委 縮 させ 、 か え って 株 主 利 益 に反 す る こ とに な る。 そ の よ うな役 員 等 の責 任 緩 和 の判 断 準 則 が 、 経 営 判

4)

断 の 原 則 で あ る。 後 述 す る野 村 謹 券 損 失 補 填 責 任 追 及 事 件 の 第 一 審 判 決 冒 頭 の 取 締 役 の任 務 に関 す る判 示 は 、 これ を簡 潔 に述 べ た もの で あ る。

(4)

さて 、 役 員 等 の 会 社 に対 す る責 任 を 明 示 した 、 この 会 社 法423条 に基 づ い て 、 株 主 が 相 場 操 縦 を 行 っ た取 締 役 の 会 社 に対 す る損 害 賠 償 責 任 を 追 及 した 事 例 は

な い 。 で は 、 理 論 的 に は可 能 か 不 可 能 か 。 取 締 役 が 自社 の 株 式 につ い て 会 社 の 計 算 に お い て 相 場 操 縦 を行 っ た と仮 定 しよ う。 この よ うな 場 合 、 取 締 役 は 会 社 の 資 金 を 使 っ て相 場 操 縦 を して い る こ とが 多 い 。 相 場 操 縦 に要 す る金 額 は 、 到 底 個 人 で 負 担 で き る も の で は な く、 非 常 に高 額 で あ る こ とが ほ とん どだ か らで あ る。 この 場 合 、 株 主 は、 代 表 訴 訟 を 提 起 して 、 会 社 の 資 金 に よっ て 相 場 操 縦 を した取 締 役 の会 社 に対 す る損 害 賠 償 責 任 を追 及 す る こ と は可 能 だ ろ うか 。 ま ず 、 取 締 役 は、 金 商 法 違 反 の 相 場 操 縦 を行 っ て い る の だ か ら、 任 務 解 怠 で あ る こ とは明 らか で あ る。 つ ぎ に、 取 締 役 が 会社 の 資 金 を使 っ て相 場 操 縦 を行 う と、

会 社 の資 金 を流 出 させ て い る こ とに な るの で 、 そ の 資 金 額 は会 社 の 損 失 とな ろ う。 しか も こ の場 合 、 経 営 判 断 の 原 則 が 適 用 さ れ る余 地 は な い。 な ぜ な らば 、 経 済 犯 罪 を構 成 す る違 法 行 為 を行 っ た 取 締 役 が 、 これ を 経 営 上 必 要 で あ っ た 行 為 と主 張 す る こ とは で き な い か ら で あ る。 した が って 、 理 論 的 に は 、 相 場 操 縦 を 行 っ た取 締 役 等 の 会 社 役 員 等 は、 会 社 に対 して 損 害 賠 償 責 任 を 負 わ な け れ ば な ら な い こ と とな ろ う。

(2)役 員 等 の 第 三 者 に 対 す る 責 任

っ ぎ に、 役 員 等 の 第 三 者 に対 す る責 任 で あ る。 会 社 法429条1項 お よび430条 は 、 役 員 等 が そ の職 務 を行 う につ き悪 意 ま た は 重 過 失 が あ った と き は、 連 帯 し て 、 これ に よ っ て 第 三 者 に 生 じた 損 害 を賠 償 す る責 任 を 負 う 旨 を定 め て い る。

前 述 した よ う に、 役 員 等 が そ の 任 務 に違 反 した場 合 に は 、 本 来 は会 社 に対 す る 関 係 で 責 任 を負 うに す ぎ な い 。 しか し、 そ の結 果 、 株 主 や 会 社 債 権 者 が 損 害 を 受 け る場 合 を想 定 し、 会 社 法 は、 役 員 等 に会 社 以 外 の第 三 者 に対 す る特 別 の 責

v)

任 を認 め た の で あ る。 こ の責 任 規 定 に 関 して は 、① 特 別 法 定 責 任 か 特 殊 不 法 行 為 責 任 か 、② 第 三 者 の 被 っ た 損 害 は直 接 損 害 ま た は間 接 損 害 に 限 るか 、 あ るい は 両 方 を含 む の か 、③ 本 条 の 「悪 意 又 は 重 過 失 」 は取 締 役 ・執 行 役 の 任 務 解 怠 に つ い て い う のか 、 それ と も取 締 役 ・執 行 役 の 対 外 関 係 に つ い て い うの か 、④ 本 条 の責 任 と競 合 して 民 法 の 不 法 行 為 責 任 を認 め るか 、 ⑤ 第 三 者 」 の 中 に 株 主 は 含 ま れ るか な どの 論 点 が あ り、 諸 説 が 存 在 す る領 域 で あ る。 無 論 こ こで こ

(5)

相場操縦に関する会社役員の責任

29

れ らの 論 点 す べ て に つ い て 検 討 は しな い が 、 第 三 者 の被 った 損 害 は直 接 損 害 ・ 間 接 損 害 の どち ら を含 む の か 、 お よ び 「第 三 者 」 の 中 に 株 主 が含 まれ るか につ

い て は 、 後 述 との 関 連 で 明 らか に して お く必 要 が あ る。 前 者 に つ いて は 、 最 高 裁 が大 法 廷 判 決 で 示 した よ うに 、取 締 役 の任 務 慨 怠 と第 三 者 の損 害 との 間 に相 当 因果 関 係 が あ る限 り、 会 社 が 損 害 を被 っ た 結 果 ひ い て 第 三 者 に 損 害 が生 じた 場 合(間 接 損 害)、 直 接 第 三 者 が 損 害 を被 っ た場 合(直 接 損 害)を 問 わ ず 、 取 締

c)

役 は そ の賠 償 責 任 を負 う とい う見 解 が 正 当 と思 われ る。 後 者 に つ いて は、 「第 三 者 」 と は会 社 以 外 の 者 を い うの で 、 株 主 も含 まれ る もの と解 さ れ る。

で は、 会 社 法429条1項 に い う第 三 者 の立 場 に 、取 締 役 の相 場 操縦 に よ って 損 害 を被 った 投 資 家 を あ て は め た 場 合 、 ど うな るで あ ろ うか 。 投 資 家 の 中 に は 株 主 も含 まれ るの で 、 「第 三者 」 に株 主 を含 め た投 資 家 と とら え られ る。 取 締 役 に よ り相 場 操 縦 が 行 わ れ 、 株 価 が 高 騰 した とき に 当 該 会 社 の 株 式 を購 入 した 投 資 家 は、 相 場 操 縦 後 に株 価 が 下 落 す れ ば 損 失 を被 るが 、 ま ず この 損 害 は 直 接 損 害 か 間 接 損 害 か が 問題 とな る。 間 接 損 害 とは、 た と え ば取 締 役 が 放 漫 経 営 を した 末 に会 社 に損 害 が 発 生 し、 結 果 的 に他 の 取 引会 社 に も損 害 が 及 ん だ場 合 な どで あ る。 取 締 役 が 会 社 の資 金 を使 っ て相 場 操 縦 を す れ ば 、 そ の 分 会 社 に 損 失 が発 生 す る。 しか し、 そ の 結 果 投 資 家 に 損 害 が 出 る と い うの で は な く、株 価 の乱 高 下 に よ っ て 投 資 家 に 損 害 が 出 るの だ か ら、 相 場 操 縦 に よ る投 資 家 の 損 害 は 、 間 接 損 害 で は な い 。 む しろ 金 商 法159条2項 が い うよ うに 、 「取 引 を誘 引 す る 目的 を も っ て」 取 締 役 が 株 価 操 作 を す る こ とが 相 場 操 縦 とな るの で 、 一 般 投 資 家 に お け る相 場 操 縦 に よ る損 害 は 、 直 接 損 害 と解 す るの が 正 当 で あ り、 そ の 解 釈 こ そ が 法 文 と も合 う。

結 局 、 以 上 の よ うに、 相 場 操 縦 に よ り損 害 を被 っ た投 資 家 は、 会 社 法429条1 項 に基 づ き 、 会 社 役 員 等 に お け る職 務 執 行 の 悪 意 また は重 過 失 を立 証 して 、 損 害賠 償 責 任 を問 う こ と は可 能 で あ ろ う。

(3)相 場 操 縦 者 の 損 害 賠 償 貴 任

さ らに 、 相 場 操 縦 者 の 損 害 賠 償 責 任 を定 め た 金 商 法160条 で あ る。 相 場 操 縦 を 禁止 す る金 商 法159条 に違 反 す る行 為 を 行 っ た者 は 、 その 行為 の 結 果形 成 され た 相 場 に よ り売 買 また は委 託 した者 が 売 買 等 や 委 託 に よ って 被 っ た 損 害 に つ い て

(6)

賠 償 しな け れ ば な らな い と規 定 され て お り、 この よ うに相 場 操 縦 に つ い て 明 文 の 民 事 責 任 を 定 め て い る の は 、 相 場 操 縦 に対 す る規 制 の 厳 格 さ を 示 す もの と考

フ 

え られ て い る。 本 条 の 趣 旨 は、 不 法 行為 の 場 合 の 損 害 賠 償 責 任 に関 す る民 法709 条 と同様 の趣 旨 を 有 す る もの で あ り、 因 果 関 係 に つ い て 民 法 よ り も広 範 な責 任

8)

を負 わせ て い る とい う見 解 が あ り、 これ が 通 説 で あ る。 これ に対 して 、 金 商 法 1条 の 目的 に鑑 み る とき、 本 条 を本 法 違 反 の行 為 に よ っ て 有 価 証 券 市 場 に お け る有 価 証 券 の 売 買 取 引 等 を し、 ま た は その 委 託 を な した 投 資 家 の個 別 的 財 産 保 護 の た め の 一 般 私 法 的 な救 済 を提 供 す る こ とを 目的 と した もの と考 え る の は 妥 当 で は な く、 本 条 は、 市 場 阻 害 性 の高 い 行 為 に よ っ て市 場 にお け る不 当 な資 源 配 分 が 行 わ れ た こ と を原 告 が 立 証 す れ ば 損 害 賠 償 請 求 が 可 能 で あ る と規 定 した もの で あ り、 そ の趣 旨 は 、 他 の 開 示 規 制 の 場 合 の 損 害 賠 償 規 定 と同 様 に 、 法 益 の 阻 害 され た 市 場 に よ る誤 っ た 資 源 配 分 を原 状 復 帰 させ る こ とで あ る と解 す る

9)

立 場 が あ る。 す な わ ち、 証 券 市 場 に お いて 不 当 に資 金 が 配 分 さ れ た 場 合 に 、 事 後 的 に資 金 を一 度 供 給 者 の 手 に戻 す制 度 を設 け る こ とに よ り、 再 び 証 券 市 場 に 当 該 資 金 が 供 給 され 、 最 終 的 に は証 券 市 場 の適 正 な資 源 配 分 機 能 が 維 持 され る

io)

こ とを 目的 とす る と解 す る もの で あ り、 金 商 法 に よ る規 制 を証 券 市 場 の健 全 性 確 保 とい う視 点 に 立 っ た 立 場 と思 わ れ る。 相 場 操 縦 は 市 場 の 公 正 性 な い し健 全 性 を破 壊 す る行 為 と と らえ られ るの で 、 この説 が 正 当 と思 われ る。

しか しなが ら、 本 条 に基 づ き損 害賠 償 請 求 をす る こ とは、 立 証 の 問 題 が 大 き な壁 とな る。 損 害 賠 償 の 請 求 を行 う者 は、 相 場 操 縦 が 行 わ れ た 事 実 と相 場 操 縦 に よ って 影 響 を受 け た証 券 価 格 で 取 引 を行 っ た こ とを 立 証 しな けれ ば な ら な い が 、 証 券 価 格 は様 々 な 要 因 に よ り決 定 され る とい う複 雑 な性 格 を もっ て い る の で 、 相 場 操 縦 の み に よっ て 損 害 が 発 生 した こ とを証 明 す る こ と は、 相 場 操 縦 の

n)

規 模 の 大 小 を 問 わ ず 、 容 易 な こ とで は な い 。 唯 一 の 、 それ も直 接 相 場 操 縦 者 の 損 害 賠 償 責 任 を問 う案 件 で は な い 一 件 の事 例 を 除 き、 相 場 操 縦 の 民 事 責 任 に 関 す る判 例 が存 在 しな い こ とが そ れ を物 語 っ て い る 。

さて 、 金 商 法 の本 条 に よれ ば 、 相 場 操 縦 者 は 、相 場 操 縦 に よ る損 害 を受 け た 投 資 家 が 相 場 操 縦 に つ き受 け た 損 害 を賠 償 しな け れ ば な らな い 。 相 場 操 縦 者 と な る者 に は、 い わ ゆ る相場 師 や 投 資 フ ァ ン ドな ど さ ま ざ ま な者 が考 え られ るが 、 相 場 操 縦 者 が 取 締 役 等 の 会 社 役 員 で あ る場 合 、 自社 株 に 関 して 相 場 操 縦 を行 っ

(7)

相 場操 縦 に関 す る会 社 役 員 のi'.i任 3/

た 役 員 等 は 、 それ に よ り損 害 を被 っ た投 資 家 に対 して 賠 償 しな けれ ば な ら な い とい う こ と に な る。 投 資 家 側 か らす る と、 か な り困 難 で は あ る に して も、 当 該 会 社 の取 締 役 が 相 場 操 縦 を した 事 実 お よび それ に よっ て 影 響 を 受 け た価 格 で 証 券 取 引 を した 事 実 を 立 証 して 、 相 場 操 縦 者 た る取 締 役 に損 害 賠 償 責 任 を 追 及 す

る必 要 が あ る。

この よ うに して 、相 場 操 縦 者 が会 社役 員 等 で あ る場 合 に適 用 され る金 商 法160 条 は、 損 害 を受 け た 第 三 者 と して の投 資 家 が 相 場 操 縦 を した会 社 役 員 等 の 責 任

を追 及 す る場 合 の 会 社 法429条1項 と同 じ構 造 で あ る。 「投 資 家 か ら会 社 役 員 等 へ の請 求 」 とい う当事 者 の構 造 は、 ま っ た く変 わ らな い 。 異 な るの は要 件 で あ っ て 、 会 社 法429条1項 の場 合 は 、 「会 社 役 員 等 に お け る職 務 執 行 の悪 意 又 は重 過 失 」 を立 証 す べ き で あ るの に 対 し、 金 商 法160条 の 場 合 は 、 「相 場 操 縦 を した事 実 お よ び それ に よっ て 影 響 を 受 け た価 格 で 証 券 取 引 を した事 実 」 を立 証 す る こ

とに な る。

3関 連 す るい くつ か の判 例

(1)丸 八 証 券 相 場 操 縦 事 件

事 実 の 概 要 】

本 件 は 、 丸 八 証 券 が 主 幹 事 を務 め た ケ イ エ ス の 新 規 上 場 案件 で 、 丸八 証 券 の 取 締 役 会 長 で あ っ た 被 告 人 が 同 証 券 の取 締 役 リテ ー ル 本 部 長 ら と共 謀 し、 そ の 実 績 を得 るた め に ケ イ エ ス株 を公 募 価 格 以 上 で推 移 させ よ う と意 図 し、 相 場 固 定 の 目的 を もっ て 、顧 客 を勧 誘 し、 ケ イ エ ス 株 の 買 付 注 文 を公 募 価 格 で 受 託 し、

執 行 した 事 件 で あ る。

13)

第 一 審 判 決 】

判 決 に よ る と、 被 告 人 は 、 丸 八 証 券 が 主 幹 事 で あ っ た ケ イ エ ス株 の株 価 を公 募 価 格 で あ る1850円 以 上 に維 持 す るた め に、 元 社 員 ら に指 示 し、複 数 回 に わ た り各 部 支 店 に お い て営 業 部 員 が 勧 誘 す る な ど して合 計104名 の個 人 顧 客 か らケ イ エ ス 株 の 買 付 注 文 を受 託 した 。 そ の結 果 、 買 付 注 文 が執 行 され た 回数 は307回 、

その 株 数 は6万800株 に上 り、 平成18年4月6日 か ら5月23日 まで の 間 、 株 価

(8)

は1850円 か ら1898円 の 間 に 固 定 され た 。

本 件 は 、証券会社 の実質 的 トップの立場 にあった被告人が、部下 に指示 して、

一 般 投 資 家 を も巻 き込 み、 組 織 的 に 証 券 取 引 法 違 反 に及 ん だ とい う点 で 異 例 で あ り、 投 資 者 の 利 益 、 証 券 取 引 の公 正 を蔑 ろ した 極 め て 悪 質 な 犯 行 」、 「本 件 犯 行 の首 謀 者 で あ り、 主 犯 で あ る に もか か わ らず 、 部 下 に全 て の 責 任 を押 し付 け よ う と して お り、 反 省 の情 を認 め る こ とが で きな い」、 「被 告 人 の た め に斜 酌 す べ き事 情 を最 大 限 に考 慮 して も、 そ の 刑 事 責 任 の 重 さ に 照 らせ ば 、 懲 役 刑 の 実 刑 が 相 当 で あ る」 と判 示 して 、 名 古 屋 地 裁 刑 事 第 六 部 は、 平 成20年9月9日 丸 八 証 券 元 会 長 に 対 し、 懲 役1年4月 の 実 刑 判 決(求 刑 懲 役2年6月 、 罰 金200 万 円)を 言 い渡 した 。

14)

控 訴 審 判 決 】

控 訴 審 で は 、 被 告 人 の 刑 事 責 任 を軽 くみ る こ とは で きな い と しつ つ も、 「しか しな が ら、 …本 件 に係 る買 付 顧 客 以 外 に一 般 投 資 家 に よ り売 買 され た 株 数 が 多 い とは い えず 、 本 件 犯 行 が 一 般 投 資 家 の 投 資 判 断 に影 響 を与 え た に して も、 そ の程 度 や 被 らせ た 経 済 的 不 利 益 は そ れ ほ ど大 き くは な か っ た と考 え られ る こ と、

被 告 人 は個 人 的 な 利 欲 目的 で 本 件 犯 行 に及 ん だ も の で は な い こ と、 … 具 体 的 な 犯 行 態様 の 選 択 につ い て は 被 告 人 は 関 与 して い な い こ との ほ か 、 本 件 に係 る買 付 顧 客 の 損 害 は 丸 八 証 券 が 補 填 した こ と、 前 科 が な い こ と、 健 康 状 態 が す ぐれ な い こ とな ど、被 告 人 の た め に酌 む べ き事 情 も認 め られ る。 これ らの 事 情 を も 併 せ 考 慮 す る と、 … 実 刑 に処 す るの は、 や や 厳 に過 ぎ 刑 の 執 行 を 猶 予 す るの が 相 当 とい うべ きで あ る。 原 判 決 の 量 刑 は、 この 点 に お い て 重 過 ぎ て 不 当 で あ る とい わ ざ る を得 な い。」 と判 示 し、 原 判 決 を破 棄 して 、 懲 役2年 ・執 行 猶 予4年 の判 決 を言 い渡 した 。

(2)八 ザ マ 株 主 代 表 訴 訟 事 件

15)

事 実 の概 要 】

本 件 は、 土 木 建 築 工 菓 の 設 計 、施 工 等 の請 負 、 受 託 等 を 目 的 とす る株 式 会 社 で あ る間 組 の 株 主 で あ る原 告 らが 、 茨 城 県 三 和 町 長 に1400万 円 を交 付 した 被 告 の行 為 は 、 刑 法 上 の 贈 賄 罪 及 び政 治 資 金 規 正 法 上 の い わ ゆ るヤ ミ献 金 に該 当 し、

(9)

相場操縦に関する会社 役員の貴任

33

取 締 役 の 任 務 に 違 反 す る行為 で あ り、 間 組 に 対 し同額 の 損 害 を生 じ させ た と し て、 株 主 代 表 訴 訟 に よ り損 害 賠 償 の 請 求 を した 専 案 で あ る。

原 告 ら は、 い ず れ も間 組 の株 式2000株 を 、 同 社 に対 し被 告 の 責 任 を追 及 す る 訴 え を提 起 した 日 よ り6ヵ 月 前 か ら保 有 す る株 主 で あ る。

被 告 は 、平 成3年6月27日 か ら同5年8月25日 ま で 間組 の 取 締 役 で あ っ た 。 被 告 は 、 間 組 東 関 東 支 店 水 戸 営 業 所 の江 草 豊 所 長(当 時)と 共 謀 の上 、 茨 城 県三 和 町 の大 山貞 弘 町 長(当 時)に 対 し、 三 和 町健 康 ふ れ あ い ス ポ ー ツ セ ン タ ー の新 築 工 事 を 間 組 が 受 注 で き る よ う に 、 同 町 の 指 名 競 争 入 札 に お い て 間 組 を指 名業 者 に指 定 し、 さ ら に工 事 の発 注 予 定 価 格 を教 示 す る よ う請 託 し、 そ の 謝 礼 と して 、 平 成3年8月1日 こ ろ大 山町 長 に 対 し、 同 人 が 住 職 を 勤 め る永 光 寺 内 に お い て 、 間 組 の資 金 で あ る現 金1400万 円 を賄 賂 と して供 与 した。

被 告 は 、贈 賄 罪 で 懲 役2年 、執 行 猶 予4年 の有 罪判 決 を受 け、 右 判 決 は確 定 した 。

判 旨】

「1 .本 件行為 が代表訴 訟の対象 とな るか否 か

商 法266条1項5号 に い う 『行 為 』 は 、 それ が 法 令 又 は定 款 に違 反 す る行 為 で あ る こ とか ら して も、 取 締 役 の 固 有 の権 限 に基 づ く行 為 に 限 られ る もの で は な く、 取 締 役 の地 位 に あ る者 が 会 社 の業 務 に関 して した 行 為 で あ れ ば 足 りる と解 す べ き で あ る。 そ して 、 本 件 贈 賄 は 、 共 謀 行 為 こ そ被 告 の 取 締 役 就 任 前 に行 わ れ て い る も の の 、 そ の共 謀 に基 づ く賄 賂 交 付 行 為 は被 告 の 取 締 役 就 任 後 に実 行 され た の で あ るか ら、 取 締 役 と して の 行 為 とい うべ き で あ って 、 そ の 責 任 の追 及 は代 表 訴 訟 の 対 象 とな る。

2.本 件 行 為 が 商 法266条1項5号 の 法 令 ・定 款 違 反 行 為 とな るか 否 か 会 社 が そ の企 業 活 動 を 行 う に 当 た って 法 令 を遵 守 す べ きで あ る こ とは い う ま で もな い が 、 と りわ け贈 賄 の よ うな 反 社 会 性 の 強 い刑 法 上 の 犯 罪 を 営 業 の 手段

とす る よ うな こ とが お よ そ許 さ れ るべ き で な い の は 当 然 で あ る。 そ れ に よ り会 社 に 利 益 が もた ら され る とか 、 慣 習 化 し同業 者 が や っ て い る た め贈 賄 を しな い と仕 事 を とれ な い お そ れ が あ る とい った 理 由 で 、 営 業 活 動 と して の 贈 賄 行 為 を 正 当化 し得 る もの で は な い 。 した が って 、 贈 賄 行 為 は 、 た とえ会 社 の 業 績 の 向

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上 に 役 立 ち 、 会 社 の た め の 営 業 活 動 の 一 環 で あ る との 意 識 の 下 に行 わ れ た もの で あ っ た と して も、 定 款 の 目的 の 範 囲 内 の 行 為 と認 め る余 地 は な く、 取 締 役 の 正 当 な業 務 執 行 権 限 を逸 脱 す る もの で あ り、 か つ 、 贈 賄 行 為 を禁 ず る刑 法 規 範 は 、 取 締 役 が 業 務 を執 行 す るに 当 た り従 うべ き法 規 の 一 環 を な す もの と して 、 商 法266条1項5号 の 『法 令 』 に 当 た る とい うべ き で あ る。

そ うす る と、 被 告 の本 件 贈 賄 行 為 は 、 そ れ が 同 時 に 政 治 資 金 規 正 法 に違 反 す るか ど うか に か か わ らず 、 法 令 及 び 定 款 に 違 反 す る行 為 と して 、 会 社 に 対 す る 損 害 賠 償 責 任 を 生 じ させ る こ とに な る。

3.本 件 行 為 に よ り会 社 に損 害 が 生 じた か 否 か

取 締 役 が そ の 任 務 に違 反 して会 社 の 出掴 に よ り贈 与 を行 っ た 場 合 は 、 そ れ だ け で 会 社 に右 出 掴 額 の損 害 が 生 じた も の と して よ い と解 され るが 、 と くに 贈 賄 の場 合 は公 序 良 俗 に反 す る行 為 で あ り、 交 付 した 賄 賂 は 不 法 原 因 給 付 と して 返 還 を 求 め る こ とが で きな い も の で あ るか ら、本 件 に お い て 賄 賂 と して供 与 した

1400万 円が 会 社 の 損 害 と な る こ とは 明 らか で あ る。

本 件 贈 賄 行 為 に よ り三 和 町 か ら工 事 を受 注 す る こ とが で き た 結 果 、 間 組 が 利 益 を得 た 事実 が あ る と して も、 右利 益 は 、工 事 を施 行 した こ とに よ る利 益 で あ っ て 、 例 え ば賄 賂 が 返 還 さ れ た 場 合 の よ う に 、贈 賄 に よ る損 害 を 直 接 に填 補 す る 目的 、機 能 を有 す る もの で は な い か ら、 損 害 の 原 因 行 為 との 間 に 法 律 上 相 当 な 因 果 関係 が あ る とは い え ず 、 損 益 相 殺 の 対 象 とす る こ とは で き な い と解 す べ き で あ る。 した が っ て 、 被 告 は 供 与 した 賄 賂 相 当 額 全 額 に つ い て会 社 に対 す る損

ic)

害 賠 償 義 務 を負 う。

(3)野 村 讃券損 失補填責任追 及事件

ロわ

事 実 の 概 要 】

本 件 は 、 野 村 謹 券 株 式 会 社 の 株 主 で あ る原 告 が 、 取 締 役 の 責 任 を 追 及 した 株 主 代 表 訴 訟 で あ る。

野 村'uSi券は、 平 成2年3月 、 東 京 放 送 株 式 会 社 に対 して 有 価 証 券 の 売 買 に よ る損 失 約3億6000万 円 を補 填 した が 、 原 告 は 、 この 損 失 補 填 は 野 村 讃 券 の 当 時 の 代 表 取 締 役 で あ っ た 被 告 らが 取 締 役 と して の 義 務 に違 反 して 会 社 に補 填 額 相 当 の 損 害 を被 らせ た もの で あ る と主 張 して 、 そ の う ち1億 円 を会 社 に賠 償 す る

(11)

相場操縦に関する会社役員 の責任

35

よ う求 め た。

東 京 放 送 は 、 平 成 元 年4月 、住 友 信 託 銀 行 株 式 会 社 との 間 で 東 京 放 送 を 委 託 者 、 住 友 信 託 銀 行 を受 託 者 と し、 期 間 を平 成2年3月 まで とす る特 定 金 銭 信 託 契約 を締 結 して10億 円 を信 託 し、 こ れ に基 づ き住 友 信 託 銀 行 が 野 村 讃 券 に取 引 口座 を開 設 して 、 有 価 証 券 の売 買 に よ る東 京 放 送 の た め の 資 金 運 用 が 開 始 され た。

この 特 定 金 銭 信 託 契約 に基 づ く勘 定 を利 用 した 取 引(特 金 勘 定 取 引)に お い て は 、 東 京 放 送 は、 投 資 顧 問 会 社 との 間 で 投 資 顧 問 契 約 を締 結 して お らず 、 野 村讃 券 か ら有 価 証 券 の 売 買 に 関 す る情 報 の 提 供 を受 け て 、 住 友 信 託 銀 行 に 対 し 売 買 の 指 図 を し、 この 指 図 に基 づ いて 住 友 信 託 銀 行 が 野 村 謹 券 に有 価 証 券 の 売 買 を 発 注 す る とい う関係 に あ った(い わ ゆ る営 業 特 金)。 東 京 放 送 の た め の 特 金 勘 定 取 引 口座 に は、 平 成 元 年 末 こ ろ、 約2億7000万 円 の 損 失 が 生 じて いた 。

平 成 元 年12月 上 旬 こ ろ、 大 和 謹 券 株 式 会 社 が大 口顧 客 の 損 失 約100億 円 を肩 代 わ り して い た な ど と報 道 され る 中で 、 大 蔵 省 証 券 局 は 、 同 月26日 、 社 団 法 人 日本 証 券 業 協 会 に対 し 「証 券 会 社 の 営 業 姿 勢 の 適 正 化 及 び証 券 事 故 の未 然 防 止 に つ い て 」 と題 す る局 長 通 達 を 行 い、 ま た 、 そ の趣 旨 を徹 底 す るた め の 業 務 課 長 蛮 務 連 絡 を 行 っ た 。

その 内容 は 、 証 券 会 社 の大 口顧 客 に対 す る損 失 補 填 は、 一 般 投 資 者 の 証 券 取 引 に つ い て の 公 平 感 や 証 券 市 場 に 対 す る信 頼 感 を損 な う もの で あ り、証 券 取 引 の公 正 性 や証 券 市 場 の 透 明 性 の確 保 の観 点 か ら,証 券 会 社 の 営 業 姿 勢 の 適 正 化 が 強 く要 請 され る と した うえ 、 証 券 会 社 に 対 し、 法令 上 の 禁 止 行 為 で あ る損 失 保 証 に よ る勧 誘 や 特 別 の 利 益 提 供 に よ る勧 誘 は もち ろん の こ と、 事 後 的 な 損 失 の補 填 や 特 別 の 利 益 提 供 も厳 に これ を慎 む こ とを 求 め る と と も に、 特 金 勘 定 取 引 に つ い て は 、 原 則 と して 顧 客 と投 資 顧 問 業 者 との 間 に投 資 顧 問 契 約 が 締 結 さ れ た も の とす る こ と、 具 体 的 に は 、 顧 客 が 投 資 顧 問 契 約 を締 結 して い る こ とを 確 認 す る か 、 あ る い は 、 顧 客 との 間 で 運 用 に 当 た り売 買 一 任 勘 定 取 引 、 利 回 り 保 証 、 特 別 の 利 益 提 供 な どの行 為 は行 わ な い 旨の 書 面 を取 り交 わ す か の 措 置 を

と って 取 引 を 開 始 し、 又 は継 続 す る こ とを 求 め る もの で あ っ た 。

平 成2年1月 ころ か ら株 式 市 況 が 急 落 し、 この 急 落 に よ っ て 、 東 京 放 送 の た め の 特 金 勘 定 取 引 口座 に は更 に 損 失 が 生 じ、 期 間 満 了 を待 た ず に取 引 を 終 了 さ

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せ た 同 年2月 末 ころ に は損 失 額 は約3億6000万 円 とな っ た 。

平 成 元 年12月26日 付 け大 蔵省 証券 局 長 通 達(そ の徹 底 の た め の事 務 連 絡 を含 む 。 以下 同 じ)を 受 け、 野 村 謹 券 で は 、 専 務 取 締 役 で管 理 部 門 の 最 高 責 任 者 で あ っ た被 告 水 内 が 担 当 者 とな っ て 、 営 業 特 金 の 総 点 検 を 行 う こ と と し、 平 成2年1 月 か ら2月 に か け て 、各 営 業 部 店 の 担 当者 が 顧 客 との 間 で 営業 特 金 解 消 の た め の交 渉 を 開始 した 。

そ の 過 程 で 、 顧 客 か ら運 用 実 績 に対 す る不 満 と営業 特 金 の解 消 に よ る評 価 損 の発 生 に つ い て の 苦 情 が 寄 せ られ た た め 、 各 営 業 部 店 長 が 調 査 して 損 失 補 填 が 必 要 と判 断 した も の に つ い て 、 同 年3月 上 旬 、 被 告 水 内 に報 告 が さ れ た 。 同 月 13日 、 被 告 らが 出 席 して 野 村 謹 券 の専 務 会 が 開催 され た。 専務 会 で は 、 被 告 水 内か ら東 京 放 送 ほ か の顧 客 に生 じた 損 失 につ いて 総 額 約161億 円の 補 填 を す る こ とが 提 案 さ れ 、 了 承 され た 。

野 村謹 券 は 、平 成2年3月14日 、 東 京 放 送 にル クセ ン ブル ク証 券 取 引 所 に上 場 の大 成 建 設 ワ ラ ン ト(1ワ ラ ン ト額 面5000ド ル)1225ワ ラ ン トを 代 金 合 計61 万2500ド ル(当 時 の 為 替 相 場 で9126万2500円)で 売 り、 同 日直 ち に、 東 京 放 送

は、 これ を野 村謹 券 に代 金 合 計304万7187.5ド ル(同4億5281万2063円 。 ただ し、 国 内 取 引税135万8436円 を含 む)で 売 り戻 した。 この 結 果 、 東 京 放 送 は3 億6019万ll27円 の 利 益 を得 、 これ に よっ て 営 業 特 金 の運 用 に よ る損 失 が 補 填 さ れ た 。

公 正 取 引委 員 会 は、 平 成3年ll月20日 、野 村 謹 券 ほか3社 の証 券 会 社 に対 し、

顧 客 との 取 引 関 係 を維 持 し、 又 は 拡 大 す るた め に損 失 補 填 を行 う こ とは 、 不 公 正 な取 引 方 法 の 一 般 指 定9項(正 常 な商 慣 習 に照 ら して 不 当 な 利 益 を も って 、 競 争 者 の 顧 客 を 自 己 と取 引 す る よ う に誘 引 す る こ と)に 該 当 し、 私 的独 占 の禁 止 及 び公 正 取 引 の 確 保 に 関 す る法 律(独 占禁 止 法)19条 に違 反 す る と して 、 同 法48条2項 の 規 定 に基 づ き勧 告 を行 い、4社 と も勧 告 を応 諾 した。

原 告 は、 平 成4年3月4日 、 野 村 謹 券 に 対 し被 告 らの 損 失 補 填 に よ る損 害 賠 償 責 任 を追 及 す る訴 訟 の提 起 を請 求 した が 、 野 村 讃 券 が 訴 え を提 起 しな い の で 、

同年4月10日 、 本 件 訴 訟 を提 起 した 。

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相 場 操 縦 に関 す る会社 役 員 の 責 任37

IB)

争 点 】

野 村Q券 の 取 締 役 で あ る被 告 らが 、顧 客 との取 引 関 係 の 維 持 、 拡 大 を図 る 目 的 で 、 有価 証 券 市場 に お け る取 引 に よっ て 顧 客 の 被 っ た損 失 を会 社 の 資 金 で補 填 した こ と は、 取 締 役 の 善 管 注 意 義 務 、 忠 実 義 務 に違 反 し、 あ る い は 証 券 取 引 法 、 独 占 禁 止 法 に 違 反 す る か ど うか 。 違 反 す る と した 場 合 に は、 損 失 補 填 と し て 支 出 され た 約3億6000万 円 を 会 社 の損 害 とみ るべ き か ど うか 。

第 一 審 判 決 】

取 締 役 は会 社 の 経 営 に関 し善 良 な 管 理 者 の 注 意 を もっ て 忠 実 に その 任 務 を果 た す べ き もの で あ るが 、、企 業 の 経 営 に 関 す る判 断 は 、 不 確 実 か つ 流 動 的 で 複 雑 多様 な諸 要 素 を対 象 に した専 門 的 、 予 測 的 、 政 策 的 な 判 断 能 力 を必 要 とす る総 合 的 判 断 で あ る か ら、 そ の裁 量 の 幅 は お の ず と広 い も の とな り、 取 締 役 の 経 営 判 断 が 結 果 的 に会 社 に 損 失 を もた ら した と して も、 それ だ け で 取 締 役 が 必 要 な 注 意 を怠 っ た と断 定 す る こ とは で き な い 。 会 社 は 、株 主 総 会 で 選 任 さ れ た 取 締 役 に 経 営 を 委 ね て利 益 を追 及 し よ う とす るの で あ るか ら、 適 法 に 選 任 され た取 締 役 が そ の権 限 の範 囲 内 で 会 社 の た め に最 良 で あ る と判 断 した 場 合 に は 、 基 本 的 に は そ の判 断 を尊 重 して結 果 を受 容 す べ きで あ り、 この よ うに 考 え る こ とに よ っ て 、 初 め て 、 取 締 役 を萎 縮 させ る こ とな く経 営 に 専 念 させ る こ とが で き、

そ の 結 果 、 会 社 は利 益 を得 る こ とが 期 待 で き るの で あ る。

本 件 損 失 補 填 は、 証 券 市 場 の担 い 手 で あ る証 券 会 社 が 、 そ の 自覚 を 欠 き、 証 券 取 引 の 基 本 原 則 で あ る 自 己責 任 原 則 に 背反 して 行 っ た も の で あ り、 証 券 取 引 に つ い て の 公 平 感 や 証 券 市 場 に 対 す る信 頼 感 を損 な う もの で あ っ て 、 当 時 これ を禁 止 す る 法令 は な か っ た もの の 、 ま さ に不 祥 事 と して 社 会 的 に 非 難 され るべ き行 為 で あ っ た 。

しか し、 営 利 を 目 的 とす る会 社 と その 取 締 役 との関 係 で これ を み る と き は、

当時 の 諸 状 況 を 考 慮 す る と、 被 告 ら取 締 役 が 東 京 放 送 との 取 引 関 係 を維 持 、 拡 大 す る 目的 で本 件 損 失 補 填 を決 定 し、 実 施 した こ とは経 営 判 断 の 裁 量 の範 囲 を 逸 脱 した も の とは い え ず 、 これ を も って 、 取 締 役 と して の 義 務 に違 反 した もの とい う こ とは で きな い。 また 、 本 件 損 失 補 填 は 、 損 失 補 填 を行 う こ と に よ っ て 競 争 者 の顧 客 を 自己 と取 引 す る よ うに 誘 引 した と い う意 味 で 独 占 禁 止 法 に違 反

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す る も の で は あ るが 、 会 社 との 関 係 に お い て は 、 これ に よ っ て 会 社 に損 害 が 発 生 した もの と認 め る こ とは で き な い。 よ って 、原 告 の請 求 は い ず れ も理 由 が な

zm い 。」

控 訴 審 判 決 】

株 式 会 社 と取 締 役 との 法 律 関 係 に は委 任 の規 定 が 適 用 され る(商 法254条3 項)。 した が って 、 取 締 役 が そ の 職務 を行 うに あ た っ て は 、 善 管 注 意 義 務 を 負 う (民法644条)。 これ を 敷 術 す れ ば、 取 締 役 は、 法 令 及 び定 款 の定 め並 び に総 会 の 決議 を守 り会 社 の た め忠 実 に職 務 を遂 行 す る義 務 を負 う こ とに な る(商 法254条 ノ3)。 更 に、 商 法266条1項 は、 取 締 役 の 職 務 の 重 要 性 に鑑 み 、 取 締 役 の会 社 に対 す る責 任 を一 般 原 則 以上 に明 確 化 か つ 厳 格 化 す る た め に特 別 の 規 定 を 置 い て い る。 この うち 、 同 条1項5号 は 、取 締 役 の法 令 定 款 違 反 に基 づ く責 任 を定 め て お り、 同 号 の 『法 令 』 は 、 具 体 的 な 職 務 を定 め る法 令 の み な らず 、 一 般 的 な 善 管 注 意 義 務 な い し忠 実 義 務 を定 め る抽 象 的法 令 を も含 む も の と解 され る。

した が っ て、 取 締 役 が 具 体 的 な法 令 又 は定 款 の 規 定 に違 反 した場 合 は も ち ろ ん 、 一 般 的 な 善 管 注 意 義 務 な い し忠 実 義 務 を 怠 っ た場 合 に も、 これ に よって会社 に 損 害 を生 じ させ た と き は、 法 令 違 反 行 為 を した もの と して 、 会 祉 に 対 し損 害 賠

zq

償 義 務 を 負 うべ き で あ る。」

以 上 に よれ ば、 当 時 大 蔵 省 は 、 い わ ば二 律 背 反 的 な 、 事 後 的 な損 失 補 填 を慎 む こ と と営 業 特 金 の 廃 止 の双 方 につ き行政 指 導 を 行 い、 また 日本 証 券 業 協 会 は 業 界 の 自主 規 制 と して 公 正 慣 習 規 則9号 に よ り事 後 的 な損 失 補 填 を 慎 む こ とを 要 請 して い た が 、 これ ら は い ず れ も証 券 取 引 法 上 の 禁 止 行 為 で は な く、 証 券 会 社 の 取締 役 に対 し、 『公 の秩 序 』 を示 す もの と もい え な い。 また 、 独 占禁 止 法19 条 は 競 争 者 保 護 の規 定 で あ るか ら、 同条 違 反 行 為 が 直 ち に 証 券 会 社 の 取 締 役 の

当 該 会 社 に 対 す る 関 係 に お い て 違 法 とな る も の で は な い。 そ うす る と、 野 村 諮 券 の 取 締 役 で あ る被 控 訴 人 らが 当 時 の証 券 取 引法 の 規 制 、 独 占禁 止 法 違 反 の認 識 を もつ まで に は至 らな か っ た 事 情 、 株 式 市 況 の 暴 落 等 前 認 定 の状 況 の も とに お い て、 営 業 特 金 を 解 消 し、 か つ 、 東 京 放 送 との 取 引 関 係 を維 持 し、 ひ い て は 野 村 謹 券 の 利 益 の維 持 を図 る こ とが 急 務 で あ る との 方 針 を 決 定 し,そ の 手 段 と して 結 果 的 に は取 引 関 係 の維 持 に よ り実 損 害 を生 ず る お そ れ の な い 本 件 損 失 補

(15)

相場操縦 に関す る会社役員の責任

39

填 を決 定 ・実 施 した こ とは 、 経 営 上 の判 断 と して 裁 量 のiを 逸 脱 した も の と は い え ず 、 野 村 謹 券 に対 す る関 係 に お い て 善 管 注 意 義 務 、 思 実 義 務 に 違 反 す る よ うな 違 法 行 為 とは い え な い もの と認 め るの が相 当 で あ る。

したが っ て 、被 控 訴 人 らが本 件 損 失補 填 を行 っ た こ とに つ き商 法266条1項5 号 の 法令 違 反(商 法254条3項 、 民 法644条 、 商 法254条 ノ3の 違 反)が あ っ た

zz)

と い う こ と は で き な い 。」

上 告 審 判 決 】

原 審 は 、(一)本 件損失補 てん は、平成3年 法律 第96号 に よる改正前 の証 券 取 引 法(以 下 『旧証 券 取 引 法 』 とい う。)50条1項3号 、4号 、58条1号 に違 反 しな い 、(二)本 件 損 失 補 て ん は、 私 的独 占 の 禁 止 及 び公 正 取 引 の確 保 に 関 す る 法律(以 下 『独 占禁 止 法 』 と い う。)2条9項3号 に基 づ き公 正 取 引委 員 会 が 指 定 した 不 公 正 な取 引方 法(昭 和57年 同委 員 会 告 示 第15号 。 以 下 『一 般 指 定 』 と い う。)の9(不 当 な 利益 に よ る顧 客 誘 引)に 該 当 し、同 法19条 に違 反 す る、(三)

しか し、 同 条 は競 争 者 の 利 益 を保 護 す る こ とを意 図 した 規 定 で あ っ て 、 同 条 違 反 の 行 為 に よ り損 害 を被 る の は 当 該 会 社 で は な い か ら、 同条 違 反 が 本 規 定 に い う法 令 違 反 に含 ま れ る と解 す るの は相 当 で な い な ど と して 、 上 告 人 らの 本 訴 請

'23)

求 を棄 却 す べ き もの と判 断 した 。

株 式 会 社 の 取 締 役 は 、取締役 会の構成員 として会社 の業務執 行 を決定 し、あ る い は代 表 取 締 役 と して 業 務 の執 行 に 当 た るな どの 職 務 を有 す る もの で あ って 、 商 法266条 は、 その 職 責 の 重 要 性 に か ん がみ 、 取 締 役 が 会 社 に対 して負 うべ き責 任 の明 確 化 と厳 格 化 を図 る もの で あ る。 本 規 定 は 、 右 の趣 旨 に基 づ き、 法 令 に 違 反 す る行 為 を した 取 締 役 は それ に よっ て 会 社 の 被 っ た損 害 を賠 償 す る責 め に 任 じ る 旨 を定 め る も の で あ る と ころ 、取 締 役 を 名 あて 人 と し、 取 締 役 の 受 任 者 と して の義 務 を一 般 的 に定 め る商 法254条3項(民 法644条)、 商 法254条 ノ3の 規 定(以 下 、併 せ て 『一 般 規 定 』 とい う。)及 び これ を具 体 化 す る形 で 取 締 役 が

そ の職 務 遂 行 に 際 して遵 守 す べ き義 務 を個 別 的 に 定 め る規 定 が 、 本 規 定 に い う

法 令 』 に含 ま れ る こ とは 明 らか で あ るが 、 さ らに、商法 その他の法令 中の、会 社 を名 あ て 人 と し、 会 社 が その 業 務 を行 うに 際 して 遵 守 す べ き す べ て の 規 定 も これ に 含 まれ る もの と解 す るの が相 当 で あ る。 けだ し、 会 社 が 法 令 を遵 守 す べ

(16)

き こ とは 当 然 で あ る と こ ろ、 取 締 役 が 、会 社 の 業 務 執 行 を 決 定 し、 その 執 行 に 当 た る立 場 に あ る もの で あ る こ とか らす れ ば、 会 社 を して 法 令 に違 反 させ る こ との な い よ う に す る た め 、 そ の 職 務 遂 行 に 際 して会 社 を名 あ て 人 とす る右 の 規 定 を 遵 守 す る こ と も また 、 取 締 役 の 会 社 に 対 す る職 務 上 の義 務 に属 す る とい う べ きだ か らで あ る。 した が っ て 、 取 締 役 が 右 義 務 に 違 反 し、会 社 を して 右 の規 定 に 違 反 させ る こ と とな る行 為 を した と き に は、 取 締 役 の 右 行 為 が 一 般 規 定 の 定 め る義 務 に 違 反 す る こ とに な るか 否 か を 問 うま で も な く、本 規 定 に い う法 令 に違 反 す る行 為 を した と き に該 当 す る こ と に な る もの と解 す べ きで あ る。

これ を本 件 につ い て 見 る と、証 券 会 社 が 、 一 部 の顧 客 に対 し、 有 価 証 券 の 売 買 等 の 取 引 に よ り生 じた 損 失 を補 て ん す る行 為 は、 証 券 業 界 に お け る正 常 な商 慣 習 に照 ら して 不 当 な 利 益 の 供 与 とい うべ きで あ るか ら、 野 村 謹 券 が東 京 放 送 との 取 引 関 係 の 維 持 拡 大 を 目 的 と して 同社 に対 し本 件 損 失 補 て ん を実 施 した こ とは 、 一 般 指 定 の9(不 当 な利 益 に よ る顧 客 誘 引)に 該 当 し、 独 占禁 止 法19条 に違 反 す る もの と解 す べ き で あ る。 そ して 、独 占禁 止 法19条 の 規 定 は 、 同法1 条 所 定 の 目 的 達 成 の た め 、 事 業 者 に対 して 不 公 正 な 取 引 方 法 を 用 い る こ とを禁 止 す る も の で あ っ て 、 衷 業 者 た る会 社 が そ の 業 務 を 行 う に際 して 遵 守 す べ き規 定 に ほ か な らな いか ら、 本 規 定 に い う法 令 に 含 ま れ る こ とが 明 らか で あ る。 し た が って 、 被 上 告 人 らが 本 件 損 失 補 て ん を 決 定 し、 実 施 した行 為 は、 本 規 定 に

za)

い う法 令 に違 反 す る行 為 に当 た る と解 すべ き も の で あ る。」

原 審 の適 法 に確 定 した と こ ろ に よ れ ば 、(一)被 上告人 らは、本件損 失補 て ん が 旧 証 券 取 引 法 あ るい は本 件 通 達 に違 反 す る も の で な い か ど うか に つ いて は 重 大 な 関 心 を 有 して い た が 、 そ れ が 一 般 の 投 資 家 に 対 して 取 引 を勧 誘 す る よ う な性 質 の もの で は な か っ た こ とか ら、 独 占禁 止 法19条 に違 反 す るか 否 か の 問 題 につ い て は 思 い至 らな か っ た 、(二)被 上 告 人 らの み な らず 、 関 係 当 局 に お い て も、 証 券 取 引 に つ い て は所 管 の大 蔵 省 に よ っ て 証 券 取 引 法 及 び その 関連 法 令 を 通 じて 規 制 が 行 わ れ るべ きで あ る との 基 本 的 理 解 か ら、 証 券 取 引 に伴 う損 失 補 て ん が 独 占禁 止 法 に違 反 す る か ど うか とい う問 題 は 、 本 件 損 失 補 て ん が 行 わ れ た後1年 半 余 にわ た って 取 上 げ られ る こ とが な か った 、(三)公 正 取 引 委 員 会 は、

第121回 衆 議 院 証 券 及 び金 融 問題 に 関 す る特別 委 員 会 が 開 催 され た 平 成3年8月 31日 の時 点 に お いて も、 な お損 失 補 てん が 独 占禁 止 法 に違 反 す る との 見解 を採 っ

(17)

相場操縦に関する会社役員の責任

4/

て お らず 、 公 正 取 引 委 員 会 が 、 本 件 損 失 補 て ん を含 む証 券 会 社 の 一 連 の損 失 補 て ん が不 公 正 な 取 引 方 法 に該 当 し独 占禁 止 法19条 に違 反 す る と して 、 同法48条 2項 に 基 づ く勧 告 を行 っ た の は、 同 年11月20日 で あ っ た、 とい う の で あ る。

右 事 実 関 係 の 下 に お い て は、 被 上 告 人 らが 、本 件 損 失 補 て ん を 決 定 し、 実施 した平 成2年3月 の 時 点 に お い て 、 その 行 為 が独 占禁 止 法 に 違 反 す る との 認 識 を有 す る に至 らな か っ た こ とに はや む を得 な い 事 情 が あ っ た とい うべ きで あ っ て 、 右 認 識 を 欠 い た こ とに つ き過 失 が あ っ た とす る こ と もで き な い か ら、 本 件 損 失 補 て ん が 独 占禁 止 法19条 に違 反 す る行 為 で あ る こ とを もっ て 、被 上 告 人 ら

につ き本 規 定 に基 づ く損 害 賠 償 責 任 を肯 認 す る こ と は で きな い。

以 上 の と お りで あ るか ら、 被 上 告 人 らが 本 件 損 失 補 て ん を 決 定 し、 実 施 した こ とに っ き、 本 規 定 に基 づ く損 害 賠 償 責 任 を否 定 す べ き もの と した原 審 の 判 断 は 、 結 論 に お い て是 認 す る こ とが で き る。 論 旨 は 、 原 判 決 の 結 論 に影 響 しな い

事 項 に つ い て の 違 法 を い う もの に帰 し、採 用 す る こ とが で きな い 。」

(4)判 例 の 分 析

以 上3つ の事 件 は 、取 締 役 の 責 任 が 間 わ れ た とい う共 通 性 を有 す る。 しか し、

丸八 証 券 相 場 操 縦 事 件 は刑 事 事 件 、 ハ ザ マ株 主 代 表 訴 訟 衷 件 と野 村 諦 券 損 失 補 填 責 任 追 及 事 件 は民 事 事 件 で あ り、 さ らに後 者2つ は 同 じ株 主 代 表 訴 訟 癖 件 で あ る もの の 、 ハ ザ マ株 主 代 表 訴 訟 事 件 は賄 賂 に関 す る璽 件 で あ り、 野 村 謹 券 損 失 補 填 責 任 追 及 事 件 は 損 失 補 填 行 為 が 問 わ れ た とい う事 件 で あ っ た 。 そ の よ う に各 事 件 の 性 質 はか な りの 差 異 が あ るが 、 相 場 操 縦 に 関 す る会 社 役 員 の責 任 を 考 え る上 で 、 そ れ ぞ れ の 判 決 か ら示 唆 を得 る こ とが で き る と思 わ れ る ので 、 以 下 に3判 例 ご と に分 析 を加 え た い 。

ま ず 、 丸 八 証 券 相 場 操 縦 事 件 で あ るが 、 これ は 名 古 屋 の 地 場 証 券 で あ る丸 八 証 券 の 取 締 役 リテ ー ル本 部 長 ほか1名 が 、 そ の業 務 に 関 し、 当 社 が 新 規 上 場 の 際 の 株 式 公 募 に あ た り引 受 主 幹 事 会 社 を務 め た 上 場 会 社 の株 式 の 株価 につ いて 、 上 場 日か ら当 分 の 間 、 公 募 価 格 と同価 格 以 上 に 固 定 させ る 目的 を もっ て 、 本 店 営 業 部 ほ か6営 業 部 店 の 部 店 長 らに対 し、 顧 客 に 公 募 価 格 と同 価 格 の 指 値 で 当 該 株 式 の 買 付 け を行 う こ とを 勧 誘 し、 当 該 買 付 注 文 を受 託 ・執 行 す る よ う指 示

した とさ れ る相 場 操 縦 事 件 で あ る。

(18)

丸 八 証 券 相 場 操 縦 事 件 の 特 徴 と して 、 同 証 券 内 の 第 三 者 委 員 会 に よ る調 査 が 実 施 され て お り、 そ の報 告 書 に よ る と、 丸 八 証 券 の 当 時 の 会 長 で あ っ た 元 相 談 役 が 「(株価 が)公 募 価 格 を割 れ な い よ うに 、 公 募 価 格 を意 識 して 買 い を入 れ て ほ しい 」 な ど と発 言 し、元 リテ ー ル 本 部 長 ら幹 部2人 も 「(前会 長 か ら)公 募 価 格 の 維 持 とい う指 示 を 受 けた と認 識 した」 と な っ て い る こ とが 事 実 認 定 され た 点 で あ る。 証 券 会 社 は 、 証 券 市 場 の 公 正 性 の 重 要 さ を も っ と も認 識 して 、 自然 な需 給 関 係 に よ る株 価 形 成 に寄 与 す べ き使 命 が あ るに もか か わ らず 、 幹 部 み ず か らが 相 場 操 縦 を指 示 した こ とに な る の で 、 きわ め て 悪 質 で あ り、 こ の 点 にお い て 過 去 の相 場 操 縦 事 件 に は な い 事 例 で あ る。 つ ま り本 件 は 、 証 券 会 社 の 幹 部 が犯 罪 を行 っ た 会 社 ぐ るみ の 相 場 操 縦 で あ る こ とが大 き な特 徴 をな して い る。

な お 、 丸 八 証 券 は 、 本 件 にっ い て2007年 秋 に 業 務 停 止 命 令 等 の 行 政 処 分 を 受 け て い る こ と も付 言 して お きた い。

この 判 決 に つ いて 筆 者 が 指 摘 した い の は 、 控 訴 審 判 決 に お い て 「本 件 に 係 る 買 付顧 客 以 外 に 一 般 投 資 家 に よ り売 買 され た 株 数 が 多 い とは い えず 、 本 件 犯 行 が一 般 投 資 家 の 投 資 判 断 に影 響 を 与 え た に して も、 そ の 程 度 や 被 らせ た 経 済 的 不 利 益 は そ れ ほ ど大 き くは な か っ た と考 え られ る こ と、被 告 人 は 個 人 的 な 利 欲 目的 で本 件 犯 行 に及 ん だ もの で は な い こ と」 な どを あ げ て 、 原 判 決 を破 棄 して 、 執 行 猶 予 を言 い 渡 した こ とで あ る。 相 場 操 縦 は 、 市 場 に 人 為 的 な 圧 力 を か けて

自然 な 需 給 関 係 に よ り形 成 され る健 全 な価 格 形 成 の機 能 を破 壊 す る とい う行 為 で あ り、 相 場 操 縦 に対 す る違 法 性 に 関 す る控 訴 審 裁 判 官 の 認 識 は 低 い もの が あ る とい う しか な い。 しか し、 よ り問 題 な の は、 「被 告 人 は個 人 的 な利 欲 目的 で 本 件 犯 行 に及 ん だ もの で は な い こ と」 が 情 状 と して 酌 量 され た こ とで あ る。 相 場 操 縦 の 害 悪 生 は 、 そ の 目的 が 個 人 の た め な の か 会 社 の た め な の か に よ っ て 決 ま る もの で は な い 。 経 済 犯 罪 の 行 為 の 多 くは 、 案 外 そ の 目的 が 「会 社 の た め 」 に あ る こ とが 多 いの で は な い か。 経 済 界 の 人 々 に対 して 、 「会 社 の た め に 」 した 行 為 な らば 情 状 酌 量 され る余 地 が あ る とい う考 え方 を示 唆 す るの は け っ して 望 ま しい こ とで は な い。 会 社 役 員 の 民 事 責 任 の 追 及 に お い て 、 「会 社 の た め 」 とい う 取 締 役 の 園 的 は 、 どの よ う に評 価 す る こ とに な るで あ ろ うか 。

っ ぎ に、 ハ ザ マ 株 主 代 表 訴 訟 事 件 で あ る が 、 本 件 は 、 間 組 の株 主 が 町 長 にヤ ミ献 金 を した取 締 役 に対 し、 間 組 に損 害 を 生 じ させ た と して株 主 代 表 訴 訟 に よ

(19)

相 場 操 縦 に関 す る会社 役 員 の 責任 43

り損 害 賠 償 の請 求 を した衷 件 で あ る 。 被 告 の 取 締 役 は 、贈 賄 罪 で懲 役2年 、執 行 猶 予4年 の有 罪 判 決 を 受 けた 。

本 件 判 決 に つ いて 筆 者 が 指 摘 した い 点 は 、 第1に 、 「取締 役 が そ の任 務 に 違 反 して 会社 の 出摘 に よ り贈 与 を行 っ た場 合 は、 そ れ だ け で会 社 に右 出 摘 額 の 損 害 が 生 じた も の と して よ い と解 され る」 と述 べ て 、 贈 賄 行 為 とい う違 法 行 為 に よ り会 社 に 損 害 が 生 じた こ とを 明確 に した こ とで あ る。 す な わ ち 、 「と くに贈 賄 の 場 合 は 公 序 良俗 に反 す る行 為 で あ り、 交 付 した 賄 賂 は不 法 原 因 給 付 と して返 還 を求 め る こ とが で きな い もの で あ る か ら、本 件 に お いて 賄 賂 と して供 与 した1400 万 円 が 会 社 の損 害 とな る」 と した 。 違 法 行 為 に よ り出 摘 した 金 額 は 、 そ の ま ま 会 社 の損 害 に な る とい う見 解 で あ る。 第2に 、 「本 件 贈 賄 行 為 に よ り三 和 町 か ら 工 事 を 受 注 す る こ とが で きた 結 果 、 間 組 が 利 益 を得 た事 実 が あ る と して も、 右 利 益 は 、 工 事 を施 行 した こ とに よ る利 益 で あ っ て 、 例 え ば 賄 賂 が返 還 さ れ た 場 合 の よ うに、 贈 賄 に よ る損 害 を直 接 に填 補 す る 目的 、 機 能 を有 す る も の で は な い か ら、 損 害 の 原 因 行 為 との 間 に 法 律 上 相 当 な 因 果 関 係 が あ る とは い え ず 、 損 益 相 殺 の 対 象 とす る こ とは で きな い と解 す べ きで あ る。」 と して 、 贈 賄 の効 果 と

して の 利 益 と賄 賂 と して 出 掴 した 損 害 との 間 の 因 果 関 係 を否 定 し、 損 益 相 殺 の 対 象 とす る こ とが で き な い こ とを鮮 明 に した こ とで あ る。 会 社 が 違 法 行 為 に よ っ て利 益 を得 た と して も、 その 利 益 が あ るか ら とい っ て 、 違 法 な会 社 か らの 出 掲 に相 当 させ る こ とは で き な い と した もの で、 この 点 は お よ そ違 法 行 為 全 般 に関 して 妥 当 す る もの と考 え られ 。 結 局 、 供 与 した 賄 賂 相 当 額 全 額 に つ い て 、 取 締 役 が 会 社 に対 す る損 害 賠 償 義 務 を 負 うこ と とな る。

さ ら に、 野 村 謹 券 損 失 補 填 責 任 追 及 衷 件 で あ るが 、 本 件 を契 機 と して損 失 補 填 に 関 して 事 前 お よ び事 後 の 補 填 行 為 全 般 が 証 券 取 引 法 に よ り禁 止 され る とい う改 正 に 向 か っ た 。 改 正 前 の 証 取 法 規 定 が事 後 の 損 失 補 填 行 為 を も禁 止 して い るか ど うか に つ いて 、解 釈 上 、 そ れ は禁 止 され て い る と い う有 力 な 見 解 も存 在 した が 、 本 件 の 判 決 で は 一 貫 して 禁 止 さ れ て い な い との 判 断 とな った 。 また 、 併 せ て平 成 元 年12月26日 付 け大 蔵 省 証 券 局 長 通達 が はた して 法 な の か ど うか と い う点 も 当 時議 論 さ れ た 。 結 局 、 本 件 で は 、 損 失 補 填 を決 定 ・実施 した取 締 役

らの 会 社 に対 す る損 害 賠 償 責 任 は 否 定 さ れ た 。

上 告審 判 決 に お い て 、IE1商法 第266条 にい う 「法令 」 は ど こ まで の もの が 含 ま

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