︿論説﹀
多 国 籍 銀 行 の 国 際 的 協 調 監 督 に 関 す る 比 較 法 的 考 察
i中国における立法化に向けて
李国安
(厘門大学法学部助教授)
1︑はじめに
多国籍銀行の国際的協調監督を必要とする理由には次の四点が考えられる︒
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↓多国籍銀行の増加・発展と単一国による監督の不能(
多国籍銀行とは︑多国籍企業の一種で︑二つまたは二つ以上の国に支店または子会社を持っている銀行のことであ
る︒一九七〇年代は多国籍銀行の全面的な発展と迅速なる拡大の年だと言われている︒銀行は規模を拡大するために︑
多数の国で支店や子会社を沢山創設したので︑母国当局とも現地当局とも︑このような多国籍銀行を全面的に監督す
ることができなくなった︒そこで︑国際社会は多国籍銀行の監督が国際的に協調せざるを得ないと呼びかけ出した︒
その契機となったのが一九七四年に西ドイッのヘルシュタット銀行(}幽Φ円目oαけ9けけuσ9]P昇)とアメリカのフランクリン
国民銀行(岡冨導ぎZ鉾δ昌巴切き評)が相次いで倒産した事件であった︒囎
⇒多国籍銀行業務に特有な堕スク(
銀行業務の基本的なリスクは信用リスク︑流動リスクおよび利率リスクであるが︑多国籍銀行業務のリスクはこれ
らのリスクに限られず︑国家リスクと外国為替リスクもよく直面するリスクである︒特に︑一九八二年にメキシコ政
府が債務の返還ができないと宣言したこととその影響を受けて発生した世界的な債務危機を切っ掛けとして︑国家リ
スクは注目を集めた︒また︑多国籍銀行が外貨を中心に業務を展開しているため︑外国為替リスクも勿論重要なリス
クの一つである︒このように︑国内の銀行業務よりももっと複雑なリスクに直面するため︑多国籍銀行業務にもっと
綿密な管理と監督をするのが当然であろう︒
⇒多国籍銀行による国の監督規制の回避(
激しい競争のため︑銀行は経営のコストを下げて収益率を上げなければ生き残っていくことができない︒また︑高
収益に伴い︑リスクも高くなる︒一方︑金融監督当局は一般大衆の預金者を保護することおよび政府の通貨政策を実
現するために︑銀行側に低いリスクの事業項目を選択させ安定経営するよう指導している︒それゆえ︑銀行側は政府
の政策に違反しない範囲で︑できるだけ高収益事業項目を達成しようという経営理念を強く持つようになった︒した
がって︑金融法にいまだ定められていない新しい金融商品を開発しようとすることはその経営理念の一つの表われで
ある︒多国籍銀行はこれらの新しい金融商品のグローバル化が進んでいる国際金融市場を利用して︑高い利益を獲得
することができるが︑高いリスクが付いている高収益の金融新商品は国の通貨政策を実現する目的と預金者を保護す
る目的とは一致しないため︑国際的な協力を通じて︑これらの金融新商品とその取引が監督されければならない︒
多国籍銀行の国際的協調監督に関する比較法的考察 119
四監督責任の不明確性と監督基準の不統﹁性(
多国籍銀行では︑本店のほか︑支店(ゆ蜜昌魯)︑子会社(oQ暮訟&㊤曼)︑合弁会社(q9暮<Φ暮霞Φ)︑代表事務所
(閑①育8Φ暮暮才ΦOh臣8)と代理店(﹀㈹o暮)などがある︒それで︑銀行の母国と現地国との間に︑このような色々
な形で存在している銀行に対する監督の責任をどのように分担させるのかは問題の一つであるが︑監督と規制の基準
が統一していないので︑様々な国の銀行は別・々の基準に従っていて︑不平等な競争条件が与えられている︒これらの
弊害を防ぐために︑国家間の監督の責任を明確にした上で︑監督の基準を統一する努力をしていくべきである︒
H︑多国籍銀行の監督の国際的規制
↓一九七五年の﹃バーゼル協議﹄(
先に述べたように︑多国籍銀行業務が特にある潜在的なリスクとその影響の広範さ及び多国籍銀行業務に対する各
国の伝統的な監督規制の不足などに鑑みて︑特に 九七四年にヘルシュタット銀行倒産事件が発生してから︑多国籍
銀行の監督と規制が絶対的に必要だとする考え方が浮上してきた︒それゆえ︑一九七五年二月に︑"先進一〇力国"
の中央銀行を中心として︑国際決済銀行(b口窃)のもとに︑"銀行規制及び監督慣行に関する委員会"(日ぴ①
ユ Oo8含詳88bσ9昆ぎσq切Φαq三p怠o暴きαG︒暮零く冨o蔓℃窮o江o舘)︑即ちバーゼル委員会が結成された︒バーゼル
委員会は一九七五年一二月に﹃海外銀行拠点の監督についての原則﹄(℃昌昌9冨①ωh霞夢①OQロbΦ寒邑80h
切9昌冨,国自鉱σqロ国ω鼠げ嵩︒・プヨ窪$)︑即ち﹃バーゼル協議﹄を公表した︒﹃バーゼル協議﹄に従って︑まず︑多国籍銀
行の海外拠点を海外支店と海外子会社に分けて︑いかなる銀行拠点も監督を逃れることはできないと宣言した︒その
上で︑海外銀行拠点の監督責任については︑原則として︑母国当局と現地当局の共同の責任と定めているが︑母国当
局が主に海外支店の支払能力と海外子会社の流動性に監督の責任があり︑現地当局が主に外国支店の流動性と外国子
会社の支払能力に監督の責任があると強調した︒﹃バーゼル協議﹄は銀行監督の国際的協力についての初めての国際
協議だと言われている︒
⇒一九八三年の﹃改訂バーゼル協議﹄(
一九七五年に発表した﹃バーゼル協議﹄の主旨は多国籍銀行に対する監督責任を分担することであるが︑数年で実
際に施行して︑監督の責任を区分することが不明確であることを始め︑監督を国際的に協力するのに必要な基準が統
一していないし︑各国の金融監督当局による監督の責任についての理解も一致していないので︑母国と現地国は互い
に責任逃れをすることが頻繁になされていた︒これらの弊害を取り除くために︑一九八一年にバーゼル委員会は﹃母
国責任原則に実際的効果を与える手段としての総合監督﹄(OO霧○一建讐巴o︒唇零証のご昌ρ︒ω9︒ζ$崩ohOぞ猷σq
℃冨9甘巴国森Φoσ8夢①勺巨毯甘一①oh勺錠①暮巴国Φ︒︒b8巴げ厳身)︑即ち﹃総合監督原則﹄を出した︒この原則は監
督当局が多国籍銀行を監督するときに︑必ず銀行の本店及び海外支店と子会社などの資本比率︑流動性︑支払能力︑
為替リスクなどを全体として総合的に検査すべきであると言うものである︒
一九八二年にイタリアのアンブロシアーノ銀行(切きoo>日訂o︒・冨昌o)の倒産の原因を究明した上で︑バーゼル委
員会は一九八三年五月に﹃バーゼル協議﹄を改訂して︑﹃総合監督原則﹄にある"総合監督法"(︒o霧o嵩ら暮Φ画
霊竃署邑8)を導入して︑改めて母国と現地国の監督責任をもっと合理的に区分した︒﹃改訂バーゼル協議﹄(日冨
国Φ<冨巴しb霧冨0800巳暮一℃昌昌9冨霧h霞爵①c︒暮霞く邑o⇔oh切き冨.聞自①茜昌国ω冨巨溢ゲ5Φ旨ω)の主な内容は次
の通りである︒
ω多国籍銀行の支払能力に対する監督責任について︒①支店の支払能力の監督は専ら母国の責任である︒その理
多国籍銀行の国際的協調監督に関する比較法的考察 121
由は︑支店が本店の一部でしかないので︑現地国には法人の資格がないからである︒②子会社の支払能力に対する監
督は母国と現地国の共同責任である︒その理由は︑子会社が現地国に法人資格があり︑現地国が銀行の支払能力に対
して監督責任があるのは当然であるが︑銀行の子会社と本社との全体性を考えると︑母国が子会社に対して監督責任
が全然なければ︑銀行全体に対する監督が不十分だと思われている︒③合弁銀行の支払能力に対する監督は原則とし
て現地国の責任である︒その理由は︑合弁銀行は現地国の法人であるからである︒だが︑もしある株主が合弁銀行に
多数の株式を持っていれば︑その株主の母国は現地国と共同に監督の責任がある︒
②多国籍銀行の流動性の監督責任について︒銀行の流動性が現地の金融市場と緊密な関係があるので︑その監督
責任が主に現地国に委ねるのは妥当だと言われているが︑母国は多国籍銀行の全体に監督責任を負うことも強調され
なければならない︒一方︑銀行の海外支店の本店との一体性を考えると︑母国は現地国と共同に支店の流動性を監督
するのも当然である︒
㈹多国籍銀行の為替ポジションの監督責任について︒銀行の海外支店や子会社などの為替ポジションの監督は母
国と現地国の共同の責任であるが︑母国は主に多国籍銀行の全体(海外支店や子会社などを含めて)の為替ポジショ
ンを監督する一方︑現地国は当該国にある外国銀行の支店や子会社などの外国為替取引と為替ポジションを監督すべ
きである︒
⇒一九八八年の﹃バーゼル規制﹄(
1︑一九八三年の﹃改訂バーゼル協議﹄の欠陥
一九八三年の﹃改訂バーゼル協議﹄は銀行監督責任を比較的に明確に区分したし︑もっと有効な監督方法(総合監
督法)も導入した︒これは多国籍銀行の監督を国際的に協力する道に積極的な一歩を踏み出したと評価されている︒