解析 I ・講義ノート
第1回
(2020
年5
月19
日(
火)
配信分)
第1回本題
(第0回が未読の人は、本題に入る前に、まずそちらに一通り目 を通しておいて下さい。)
まずこの講義で扱う内容ですが、第0回の最後でも触れたよう に、一言で言うと高校で学んだ微積分の復習とその続きです。
教科書では数列の極限からお話が始まっていますが、皆さんよ
くご存知の内容でしょうから、その辺りは各自で復習しておいて
いただくとして、今回この講義ノートでは、教科書だけでは補足
が必要な「関数や写像の概念」についてお話しながら、この講義
の目的についてお伝えしたいと思います。
まずは、この講義でよく出て来る数の集合について、記号の約 束から始めましょう。自然数全体の集合を N, 実数全体の集合を R でそれぞれ表します。他にも Z( 整数全体 ), Q( 有理数全体 ), C( 複素数全体 ) などがあります ( 教科書 2 頁参照 ) 。
また、不等式の表す範囲を表す記号もあります。教科書では 30
頁と 126 頁に分かれて、一部やや遅い登場になるので、ここでま とめてご紹介しておきましょう。不等式
a < x < b, a ≤ x ≤ b, a < x ≤ b, a ≤ x < b
を満たす実数 x 全体の集合をそれぞれ
(a, b), [a, b], (a, b], [a, b)
で表します。最初の二つをそれぞれ開区間、閉区間と呼びます。
片方だけの不等式
a < x, a ≤ x, x ≤ b, x < b
の場合は、それぞれ
(a, + ∞ ), [a, + ∞ ), ( −∞ , b], ( −∞ , b)
で表します ( 詳しい名称については教科書参照 ) 。
大学の数学では、海外での表記に合わせて、不等号
≤ , ≥
を、それぞれ≦ ,
≧
の意味で用います。ただし分野によっては別の意味に用いていることもあ りますから、本や文献毎に一応確認はするようにして下さい。また、開区間を表す記号が平面の座標やベクトルと同じで紛らわしいのです が、慣例なので仕方ありません。前後の文脈で判断するようにして下さい。ま た、無限大
+ ∞ , −∞
自身は実数ではありませんので、x
との等号成立はあり えないと言うことで丸かっこになっています。ちなみに( −∞ , + ∞ )
とあればR
つまり実数全体のことです。さて、皆さんは高校までに、いろいろな関数について学んで来 たと思います。
そもそも関数とは何だったかと言うと、実数 x に対しそれぞれ
一つずつ、何らかのルール ( 意味不明なルールも込み ) に従って、
実数 y を与える対応であって、これを y = f (x) と表したわけで
すが、ここで x としては、全ての実数を考えるとは限りませんで した。
そこで、今考える x の範囲を定義域 ( または始集合 ) と呼び、一
方 y をどの範囲から選ぶか、その範囲を終集合、実際に y として
選ばれた実数全体の集合を値域と呼ぶことにしましょう。
0 - x y 6
y = f(x) f(a)
a b
f(b)
定義域
値域
高校までに扱って来た関数について言えば、定義域は関数に よって様々でしたが、いずれにせよ実数全体の集合 R か、または
その部分集合を考え、終集合としては、実数全体の集合 R を考え
ていたと言ってよいでしょう。
定義域と終集合を明記して関数を表すときは
f : (R ⊃ )D → R x 7→ f (x)
のように書いたりもします。 D が定義域ですが、ここには具体的 な集合、また二行目の f (x) にも具体的な式が入ります。
(R ⊃ )
は、普通はわざわざ書いたりしません。また、元どうしの対応には7→
を用います。一つの式で書けない時は、 x について場合分けが必要になりま す。例えば
f (x) =
x (x ≥ 0)
− x (x < 0)
のように。もちろん、この f (x) は絶対値 | x | のことです。この f
の定義域は R, 値域は [0, + ∞ ) になります。
これを前頁のようにていねいに書くと
f : R → R x 7→
x (x ≥ 0)
− x (x < 0)
となりますが、定義域も終集合も R のときなどは、上の簡単な表 し方で十分でしょう。
0
x- y 6 y = f(x)
@@
@@
@@ 定義域
値域
皆さんが高校までに学んだ主な関数 ( まとめて初等関数と呼ば れています ) 、例えば
x 2 , x 3 , e x , log x, sin x, cos x, tan x, √ x
などについて、それぞれ定義域と値域は何か、復習しておきま
しょう。
さて、大学に入って皆さんは、この関数の定義域と終集合を もっと広い範囲で考えることになります。つまり y = f (x) にお
いて、 x や y は別に実数でなくてもよいのではないかとして、考 える範囲を拡げて行くわけです。このように一般的に考えた対応 を写像と呼びます。
定義域、値域、終集合など、上で定義した用語は、写像でも同
じように用います。
ただし y の方が実数である限りは関数と呼ぶことが多く、たと えば x として実数ではなく座標平面 ( R 2 と書きます ) 上の点
(x 1 , x 2 ) を考えたりするとき、 y = f (x 1 , x 2 ) のことを、平面上の
関数とか、 2 変数関数などと呼びます。
f : (R 2 ⊃ )D → R
(x 1 , x 2 ) 7→ f (x 1 , x 2 )
と言った感じのものです。
皆さんが多分、それとは意識せずに使っている 2 変数関数は結
構たくさんあります。例えば
f (x 1 , x 2 ) =
√x 1 2 + x 2 2
は、座標平面上の各点 (x 1 , x 2 ) から原点 (0, 0) までの距離を与え
る 2 変数関数です。先に挙げた絶対値 | x | の 2 次元版です。
一般に 2 変数関数のグラフを描こうとすると、 3D が必要です。
定義域が 2 次元なので、 x 軸を 2 本 ( つまり x 1 軸と x 2 軸 ) 別の
方向に描かなければならないからです。
0 x1
x-2 6
y
@@
@@
@
AA AA
y = f(x1, x2)
さらにより一般次元の空間 R n 上の点 (x 1 , x 2 , . . . , x n ) を考えれ
ば、 y = f (x 1 , x 2 , . . . , x n ) で、 n 変数関数または n を明記しない
で多変数関数などと呼びます。
これら R n またはその部分集合を定義域とする多変数関数
f : (R n ⊃ )D → R
(x 1 , x 2 , . . . , x n ) 7→ f (x 1 , x 2 , . . . , x n )
については、解析 II で学びます。
実はこれが、この講義ノートで、ここまで座標平面
R
2 上の点を(x, y)
で表 さなかった理由です。別に(x
1, x
2)
を(x, y)
と表しても、その代わりy
を例え ばz
など他の文字に変え、z = f (x, y)
と表せば間違いではないし、実際その ように表している場合は多いのですが、次元が上がり、必要な文字数が増えて くると、何分アルファベットは26
文字しかありませんし、定数と変数を区別 する必要から、それらも全て自由に使えるわけではないので、どうしても無理 になって来るわけです。また、定義域を複素数全体がなす平面 C またはその部分集合に
とり、また終集合、すなわち y を選ぶ範囲も C とする関数のこと
を複素関数と呼び、これは解析 IV で学びます。この場合は通常、
変数を表す文字を変えて、 w = f (z ) などと表すこと方が一般的 です。
f : (C ⊃ )D → C z 7→ f (z )
複素関数は、 z = x + iy を (x, y) と、 w = u + iv を (u, v) と、そ
れぞれ同一視することによって、平面全体またはその部分集合か ら平面への写像とも考えられます。
f : (R 2 ⊃ )D → R 2
(x, y) 7→ f (x, y ) = (u(x, y), v (x, y))
いずれにせよ、写像と言う場合に重要なことは、定義域として 考えている集合の各元 x に対し、終集合の元 y = f (x) を、唯一
つ対応させると言うことです。
従って、これまで恐らく関数としては扱って来なかったでしょ う数列も、例えば無限数列 a 1 , a 2 , . . . , a n , . . . は、自然数全体の集
合 N を定義域とし、その各元 n に対し、実数 a n を対応させる関
数もしくは写像と言えるわけです。
f : N → R n 7→ a n
ここの
f
には深い意味はありません。他の文字でも何でも好きに選んで構い ません。次の図は数列のグラフの例です。
0
-n y 6
1 2 3 4 5 6 7
・・・ ・
・
・
・
y = an解析 II では、平面上の点列
f : N → R 2
n 7→ (a n , b n )
なども出て来ます。
またこのクラスの受講生の皆さんに対し、それぞれの学籍番号 を対応させるのも、受講生全体の集合を定義域とし、英字と数字 のなす文字列全体の集合を終集合とする写像と考えられるわけ です。
f : このクラス → 文字列の集合
Aさん 7→ 学籍番号
地球上の各地点に対して、その瞬間の気温と気圧の組を考えれ ば、これは球面を定義域とし、 R 2 を終集合とする写像
f : 地球の表面 → R 2
杉本 3-3-138 7→ ( 気温 , 気圧 )
と言うわけで、この世の中は写像であふれています。
一般に写像 f が定める対応は一対一とは限らず、別の x に対
して同じ y が対応することは構いませんが、もし、これが一対 一、つまり異なる x に対しては異なる y と言う対応が成り立って いるとき、一対一写像または単射であると言います。
一方、値域が終集合と一致している、つまり想定している全て の値をとる写像を上への写像または全射であると言います。
そして単射かつ全射のとき、全単射であると言います。日本語 での日常会話で一対一と言えば、普通に思い浮かべるのはこの全 単射の方でしょう。
先に挙げた初等関数の内、単射、全射、全単射になるものはど
れか、ここでちょっと考えてみて下さい。
さて、 f が全単射のとき、 f の値域を定義域とし、 f の定義域
を値域として、逆関数同様に、逆写像 f − 1 が定義されます。
今後は