「日米経済摩擦 と包括経済 協議の問題点」
中 村
敏
夫
Japan-US
Economic
Relation
under
the
New Framework
Negotiations
Toshio Nakamura
This reserch paper is to make study on the new framework for Japan-US economic relation in the context of bilateral economic and trade issues between Japan and US. The Clinton Administration is putting a high priolity on this new scheme in order to solve hugh trade imbalance with Japan. Therefore, though US govemment negotiators are proposing both result-oriented and benchmark type solution to the bureacratic counterpart in Japan On this regard, this paper examines what kind of problems are caused by this bilateral negotiation as well as their implications to Japanese economic policy.
1.は じ め に 日米 経 済 関 係 は 米 国 で の ク リン トン政 権 誕 生 並 び に 日本 の細 川 連 立 政 権 の樹 立 に 象 徴 さ れ る ご と く、1993年 に 入 って 大 きな 政 治 的 変 革 を迎 え た。 日米 貿 易 不 均 衡 も1993年 は 五 百 億 ドル の 大 台 に乗 る こ とに よっ て 、 米 国側 の不 満 は募 る ば か り で あ る。 そ こ で 、 宮 沢 前 政 権 との 間 で 包 括 経 済 協 議 の 設 立 が合 意 され て い るわ け だ が 、 前 回 の 日 米 構 造 協 議(SII)と 対 比 し な が ら、 そ の 目的 と問 題 点 を考 察 す る こ とに した 。 協 議 の 進 展 具 合 で は 当初 の 目標 と駆 け離 れ たSIIの 二 の 舞 に な る恐 れ が あ る と考 え られ る。 2.日 米 経 済 摩 擦 案 件 の拡 大 1993年7月 に東 京 サ ミッ ト並 び に総 選 挙 が 終 わ り、8月 中 旬 に は細 川 新 総 理 が 誕 生 した 。1994 年 は政 治 的 に もホ ッ ト ・イヤ ー を迎 えて い る。 そ の 点 、 日米 経 済 関 係 は新 段 階 に入 っ た と見 るべ き で あ ろ う。 現 在 日米 間 で抱 え て い る課 題 は 経 済 通 商 分 野 に 限 っ て も、 本 稿 の 中心 をな す ① 「日米 包 括 経 済 協 議 」 をは じめ 、 ② 公 共 事 業 、 建 設分 野 の米 企 業 参 入 と透 明 性 問 題 、 ③ 自動 車 ・同部 品分 野(ミ ニ バ ン 関 税 引 上 げ、 ダ ン ピ ン グ提 訴 、 調 達 拡 大 、 輸 入 車 購 入 の 継 続 な ど)、 ④ 半 導 体 の20%シ ェ
ア 目標 値 達 成 の 継 続 、 ⑤ スー パ ー コ ン ピ ュー タの 政 府 調 達 増 、 ⑥ 日米 金 融協 議(投 資顧 問 会 社 の 年 金 運 用 拡 大 、社 債 引 受 け幹 事 の 開 放)、 ⑦ 鉄 鋼 ダ ン ピ ン グ、 ⑧ 対 日内 需 拡 大 要 請(所 得 減 税 な ど)、 ⑨ ウ ル グア イ ・ラ ウ ン ド(コ メ)、 ⑩ 外 国 企 業 課 税 強化 な ど 多岐 に わ た る。 日米 包 括 経 済 協 議 が7月10日 に ク リン トン大 統領 と宮 沢 首相 の 第2回 会 談 で合 意 され た。 しか し、 そ の合 意 内容 は整 合 性 に乏 しい 諸 項 目が少 な くな い。7月11日 か ら ク リー ブ ラ ン ドで 開 か れ た 第30回 日米 財 界 人会 談 で 双 方 の 認 識 の 違 いが 浮 き彫 り一に さ れ た 。 とい うの は、米 国側 の 主 張 は 、 東 京 で の 交 渉 結 果 に対 す る 日本 側 の 認 識 とは か な りか け離 れ た 内容 に な って い た。 た と え ば、 ゲ ス ト ・ス ピー カ ー と して 演 説 した 交 渉 責 任 者 の ブ ル ー ス ・カ ッ ター 国家 経 済 会 議(NEC)担 当 次 席 補 佐 官 は 、 「この 協 議 の 結 果 が 我 々 の 期 待 に 達 しな け れ ば 、 対 日制 裁 もあ りえ る」 と、 一 方 的 制 裁 主 義(ユ ニ ラ テ ラ リズ ム)容 認 の 見 解 を披 露 した。 ロ イ ド ・ベ ン ツ ェ ン財 務 長 官 もカ ッ ター 補 佐 官 の 見 解 を支 持 した。 さ ら に、 マ ク ロ経 済 分 野 の 経 常 収 支 の 対 国 内総 生 産 比 の 数 量 目標 設 定 は合 意 文 書 に書 か れ なか っ た 。 な の に、 ベ ン ツ ェ ン 長 官 は、 「国 内 総 生 産 の2%以 下 と理 解 して い る」(注1)と、 米 国 側 要 求 が 首 脳 会 談 で の 暗 黙 の 了解 の ご と くの 発 言 を行 な っ た。 日本 の 対 米 国 際収 支(1980-1990年)の 推 移 に関 して は 第 一 表 に ま とめ て あ る。90年 まで は 多少 の減 少傾 向が 見 られ た のが 特 徴 とい え る。 米 国側 の 合 意 付 属 文 書 に 記 載 され た 「制 裁 有 りき」 は ゼ ス チ ャー の域 を越 え て個 別 分 野 で は 実 行 さ れ る 可 能 性 が 大 きい と読 む の が 賢 明 で あ る。 日本 で も対 日強 硬 派 ナ ンバ ー ワ ン と し て有 名 な ミッ キー ・カ ン ター 通 商 代 表 は、記 者 会 見 で 「対 日制 裁 を ため らわ ず 、 成 果 を迫 る」 と発 言 した。 も う一 人 の対 日強 硬 派 ロ ン ・ブ ラ ウ ン商 務 長 官 は 、 「市 場 シ ェ ア 目標 の 設 定 は 日本 市場 を こ じ開 け る に は有 効 」 と強硬 姿 勢 が あ た か も閣 内統 一 の 見 解 で あ るか の 印象 を与 え て い る。 対 日交 渉 の 責 任 者 た ち の 認 識 だ け に、 対 日政 策 の 主 流 が 少 な くて も"結 果 主 義"に 傾 注 して い る こ と を立 証 して い る。 恐 ら く、 日米 首 脳 会 談 の 合 意 文 書 の 大 枠 合 意 内容 を米 国 ペ ー ス で実 行 に 移 させ るた め に、 マ ス コ ミを最 大 限 利 用 して推 進 を計 る独 自の シ ナ リオが 有 る よ うに 思 え る。 第1表 日本 の対 米国 際収 支の推 移 (単 位:100、 万 ドル,%) 1980年 1985年 1988年 1989年 1990年 対米国 対米国 対米国 対米国 対米国 経 常 収 支 X10,746 49,169 49,169 41,727 79>631 51,320 57,157 47,483 35,761 37,653 貿 易 収 支 2,125 9,816 55,986 42,988 95,012 52,448 76,917 49,404 63,528 41,869 輸 出 126,736 31,351 174,015 65,617 259,765 89,146 269,570 92,741 280,374 89>223 (対前年同期比) (25.4) (20.6) (3.4) (8.5) (15.7) (7.4) (3.8) (4.0) (4.0) (▲3.8) 輸 入 124,611 21,505 118,029 22,629 164,753 36,698 192,653 43,337 216,846 47,354 (対前年同期比) (25.4) (17.1) (▲4.8) (▲4。8) (28.5) (41.7) (16.9) (la.i> (12.6) (9.3) 貿 易 外 収 支 X11,343 ▲3,376 ▲5,165 ▲1,012 X11,263 115 X15,526 ▲1,198 X22,292 ▲3,387 移 転 収 支 ▲1,528 219 ▲1,652 ▲249 ▲4,118 ▲1,243 ▲4,234 ▲723 ▲5,475 ▲829 長 期 資 本 収 支 2,394 1,654 X64;562 X33,163 X130,930 X59,260 X89,246 X53,861 X43,586 X11,719 本 邦 資 本 X10,817 309 X81,815 X35,384 X35,384 ▲149,883 X192,118 X57,145 X120,766 X16,437 外 国 資 本 13,211 1,345 17,273 2,221 2,221 18,953 102,872 3,284 77,180 4,718 基 礎 収 支 ▲8,352 7,905 X15,373 8,564 X51,299 X7,940 X32,089 ▲6,378 ▲7,825 X25,934
米 国側 は政 府 交 渉 を議 会 や 経 済 界 が援 護 射 撃 す る官 民 一 体 の 通 商 姿 勢 が特 徴 に な っ て い る。 議 会 で は、M・ ボー カス 上 院 国 際 貿 易 小 委 員 長 の 発 言 が 代 表 的 な対 日不 満 の代 弁 で あ ろ う。ス ーパ ー 301条 復 活 法 案 の 推 進 役 で 対 日通 商 問題 の 議 会 責 任 者 で あ る彼 は、 「合 意 が で き なけ れ ば 、対 日制 裁 す べ きだ 。今 回 の協 議 こ そ最 後 の機 会 」 と、 安 易 な妥 協 に 走 らぬ よ う米行 政 府 に圧 力 をか け る。 前 述 の 日米 財 界 人 会 議 に お い て 、 ロバ ー ト ・ガ ル ビ ン ・モ トロー ラ会 長 の よ うに、 「数 字 を挙 げ ず に 貿 易 を議 論 す る の は 現 実 で な い。 野球 をす る際 に ス コア をつ け な い の と一 緒 」 とい っ た間 違 った 引 用 を平 気 で す る大 物 財 界 人 もい る。 3.結 果 主 義 志 向の ベ ンチ マ ー ク(目 標 値) 日米 首 脳 会 談 に 向 け て 宮 沢 首 相(当 時)は 協 議 の 妥 協 案 と して 「客 観 的 基 準(オ ブ ジ ェ ク テ ィ ブ ・ク ラ イ テ リア)」(注2)を提 案 し た。 この 中 味 は あ い ま い で理 解 は 容 易 で な い。 米 国 が 要 求 し て き た 「ベ ン チマ ー ク(数 値 目標)」 を宮 沢 提 案 へ 歩 み寄 っ た米 国側 の 努 力 も大 事 だ が 、 個 別 分 野 の 交 渉 で は 、 結 局 目標 値 が 一 人 歩 きす る危 険 性 が 存 在 す る。 一 応 、 日本 側 は客 観 的 基 準 の 定 義 と して 、 「過 去 の 参 考 デ ー タ」 と説 明 し、 「わ が 国 は 計 画 経 済 を採 用 して い な い 以 上 、 客 観 的 基 準 を 目標 達 成 に ス イ ッチ させ て は な らな い 」 と釘 を さす 。 そ れ に対 し て米 国 サ イ ドは、 「諸 外 国 で の 参 入 拡 大 を計 測 し、 日本 に達 成 を求 め る物 差 しで あ る」 と説 明 して い る。 しか し、 こ れ か らの協 議 で の モ ニ ター の結 果 を改 善 要 求 の テ コ に数 値 的 実 績 を要 求 して くる狙 い は 否 定 で きな い。 した が っ て 、 日米 両 首 脳 が会 談 後 そ の 危惧 を一 時 的 に せ よ否 定 して も、 こ の客 観 的 基 準 の 活 用 の仕 方 次 第 で は 管 理 貿 易 へ の 危 険 性 を多分 に は らん で い こ う。 日米 包 括 経 済 協 議 は 第2表 の リス トの5分 野16項 目 を作 業 部 会 に分 か れ て協pす る もの だ が 、 こ の協 議 で あ い ま い な 第2点 は 「双 方 向協 議 」 と謳 って い る点 で あ る。 米 国側 の 厳 しい対 日外 圧 に 比 して 、 日本 側 の 米 国 に 対 す る改 善 要 求 の 展 開 シ ナ リオ は不 明 で あ る。 先 の 日米 構造 協 議 も入 口は"双 方 向"が 前 提 で も、 最 終 案 の 出 口 で は 一 方 的 な 対 日成 果 要 求 の大 攻 勢 で 閉 幕 し た。 日本 国 民へ の リ ップ ・サ ー ビス で は な く、 対 等 な 日米 関係 を推 進 す る意 味 で的 確 な対 米 要 求 が 可 能 な らば 、 前 共 和 党 政 権 以 来 結 果 的 に膨 張 し続 け る米 財 政 赤 字 の解 消 並 び に経 常 収 支 赤 字 の 元 凶 とい え る低 貯 蓄 率 の 改 善 、 さ らに 外 国製 スー パ ー コ ン ピュ ー タ を国 策 で購 入 させ な い 米 政 府 の調 達 政 策 な ど に対 して 、 日本 が要 求 され る期 限付 目標 値 達 成 と同 じ要 領 で具 体 的 に合 意 文 書 に書 き込 ま させ るの が 交 渉 とい う もの で は な い か。 第2表 包括 経 済協 議の 交渉別 分野 5分 野16項 目 ● 政 府 調 達 コ ン ピ ュ ー タ、 ス ー パ ー コ ン ピ ュ ー タ、 衛 星 、 医 療 技 術 、 通 信 、 ヘ リ コプ タ ー ● 規 制 緩 和 と競 争 一 金 融 サ ー ビ ス 、 保 険 、 輸 出促 進 、 競 争 政 策 と透 明 手 続 き ● 個 別 分 野 自動 車 ・部 品 ● 経 済 的 調 和 一 一 一 知 的 所 有 権 、 直 接 投 資 、 技 術 ア ク セ ス 、 長 期 的 需 給 関 係 ● 既 存 の協 定 日米 貿 易 委 員 会 、 日米 構 造 協 議
第3の 問 題 点 は、 協 議 の 対 象 が 政 府 に よ る対 応 が 可 能 で責 任 に 及 ぶ 項 目に 限定 、 と記 載 され て い る点 だ。 つ ま り、 民 間 の ビ ジ ネ ス に 対 す る政 府 干 渉 はす べ きで な く、 実 際 コ ン トロー ル で き る もの で は な い とい う視 点 に 立 っ た 日本 側 の 主 張 で あ る。 と こ ろ が 、 大 蔵 省 が マ ク ロ経 済分 野 の 目標 値 を拒 否 す る代 償 と して 、 自動 車 ・同 部 品 に 協 議 の 優 先 順 位 を シ フ トさせ て 妥 協 を計 って しま っ た 。 換 言 す れ ば 、 自動 車 分 野 が 貿易 不 均 衡 是 正 の 切 札 と して 浮 上 した 訳 で あ る。 こ の よ う に、 個 別 分 野 の 切 り札 に 祭 り上 げ られ た 自動 車 ・同 部 品や 保 険 ・金 融 サ ー ビス に 対 す る市 場 ア ク セ ス の数 量 的 改 善 措 置 の モ ニ ター は 民 間 ビ ジ ネ ス に 対 す る 行 政 の過 剰 介 入 を招 く。 しか も、 政 府 介 入 を肯 定 す る こ とは 、他 の 対 日要 求 対 象 で あ る政 府 の 規 制 緩 和 及 び 行 政 改革 、 市 場 メ カ ニ ズム の健 全 化 に 逆 行 す る 矛 盾 し た行 為 に な る。 と くに 、 自動 車 部 品 の 場 合 、94年 の 米 国 製 部 品購 入 努 力 目標190億 ドル(注3)に加 え て、95年 以 降 の 部 品 購 入 金 額 の 目標 値 設 定 に発 展 しか ね な い。 す で に、 ク リン トン政 権 と米 自動 車 業 界 の 一 枚 岩 的結 果 主 義 ア プ ロー チ が 議 会 の"自 動 車 族"を 含 め て 「鉄 の 三 角 形 」 を形 成 して い る。 た とえ ば 、 ク リン トン 大 統 領 の 訪 日直 前 に 、 米 議 会 の リー グル 、 レ ビ ン両 上 院 議 貝 らの 自動 車 議 員 族(注4)は大 統 領 に書 簡 を送 り、 「行 政 府 が 一 定 の 数 量 基 準 を設 定 す る交 渉 に 失 敗 し た場 合 、 議 会 が 独 自 で立 法 措 置 を 実施 す る旨 」を伝 えて い る。議会=自 動 車 業 界 に よ る行 政 府 の対 日交 渉 に 際す る典 型 的 プ レ ッ シャー で あ る。 も ち ろ ん 、 協 議 は前 述 の5分 野 とは 別 に 第3表 の よ うな協 力案 件 に つ い て も審 議 す る。 日米 構 造 協 議(SII)や 半 導 体 協 定 の 苦 い 経 験 か ら して、 あ い まい な合 意 が 次 な る火 種 とな る こ とは 誰 の 目に も明 らか で あ る。 第3表 包括 経済協 議 で取 り上 げ る協 力案件 スー パ ー301条 の ・落 し子 ・と も 項 目 主 なテー マ 称 され る 日米 構 造 協 議 は、 日本 ① 環 境 ○環境 対話 ○海 洋 ○森 林 o地 球観 測 ○環境 ・エ ネル ギー ○環境保 全 ○環境 開発 援 助 ② 技 術 ○運 輸 ○電 気通信 ○民 需産業 技 術 ○建 設技術 ・防 災 ③ 人 的資 源 の開発 ○労働 交 流 ○製 造技術 者 の交 流 ④ 人 口 ⑤ エ イ ズ 日米環 境政 策協 議 の新 設 ロシア の核 廃棄 物 の海洋 投棄 ア ジア、 南米 の熱 帯雨林 の破 壊 人工衛 星 に よ る情 報交換 フロ ンガス関 連技術 湿地 帯 の保 全 開発 に よ る環 境へ の影響 高速 鉄道 ア ジア の高度 通信 網 生産 技術 の 強化 次世 代 交通 シ ステム 労使 を加 えた二 国間 シンポ ジウム開催 相互 交 流プ ログラム の実施 途上 国 の人 口計 画へ の協 力 ワ クチ ン共 同研 究 が対 象 国 に名 指 され た スー パ ー 301条 の 枠 外 の 協 議 方 式 と して 登 場 し た経 緯 を持 つ 。 スー パ ー 301条 の 原 型 は88年 に 成 立 し た 「包 括 通 商 法 」 で あ る。 第4表 に 「74年通 商 法301条 」 の 仕 組 み を ま とめ て お い た。 90年6月 に最 終 報 告 、 そ の 後 フ ォ ロー ア ップ 会 合 が 引 続 き実 施 され て きた 。 この 協 議 は 従 来 の 政 府 間 交渉 よ り一 歩 踏 み 込 ん で、 内政 干 渉 ス タ イ ル 及 び 日米 双 方 向 の 問題 協 議 と して 当時 注 目 さ れ た 。 昨 秋 か ら協 議 が 本 格 化 して95年 秋 ま で の2年 間続 く 現 在 の新 包 括 経 済 協 議 は、 先 述 の 日米 構 造 協 議 に市 場 分 野 別 協 議(MOSS)(注5)、 そ れ に シ ェ ア 目標 値 設 定 の 日米 半 導 体 協 定 協 議 が合 体 され た よ う なパ ワ フ
ル な政 府 間 交渉 に 発 展 して い く。 日米 首 脳会 談 は 9月27日 ニ ュー ヨー クで の 第1回 ク リン トン ・細 川 会 談 後 、11月 のAPEC総 会 で 第2回 、 さ ら に94 年7月 の ナ ポ リ ・サ ミ ッ トで の 日米 首脳 会 談 の 前 に も う一 回(94年2月11日)の 首 脳 会 談 が 開 催 さ れ て 途 中経 過 を レ ビ ュ ー す る予 定 で あ る。合 意 事 項 と して、 年2回 首 脳 会 談 を催 して モ ニ ター す る 旨 とな っ て お り、 か な り高 度 な政 治 的決 断 が 要 求 され る場 面 も出 て くる と思 われ る。 日米 政 治 レベ ル の コ ミュニ ケー シ ョン を別 の 次 元 で 捉 え る と、 首 脳 会 談 は グ ロー バ ル な 地球 規 模 の 国 際 課 題 を率 先 して 議 論 す べ きで あ る(注6)。そ の 貴 重 な舞 台 が 、 い く ら大 幅 とい え ど も 日米 貿 易 不 均 衡 是 正 及 び 日本 市 場 へ の米 ビ ジ ネ ス 売 込 み の 政 治 交 渉 の機 会 へ 集 中 す る こ とは好 ま しい 方 向 と は 思 わ な い 。 た とえ、 両 首 脳 間 で対 ロ支 援 や 国連 問 題 を話 し合 っ た と して も、 米 マ ス コ ミの 関 心 は 対 日輸 出拡 大 に ど れ だ け 圧 力 を か け た か 、 ク リ ン トン政 権 は対 日強 硬 策 を展 開 した か 、 な どに 集 ま るだ ろ う。 米 国側 に ポ ス ト冷 戦 時 代 の 日米 関係 、と くに ジャ パ ン ・プ ロ ブ レ ム を経 済 通 商 分 野 に 限 定 す る新 潮 流 が 見 られ る こ とは要 注 意 だ。 そ の 集 大 成 が 本 稿 の 中心 テー マ で あ る新 包 括 経 済 協 議 な の で あ る。 マ ク ロ、 個 別 両 分 野 を広 範 囲 に カ バ ー す る協 議 は 今 ま で と異 な り首 脳 会 談 の 最 重 要 課題 に 格 上 げ さ れ て い る。 この 点 か ら も今 後 の 日米 関係 の行 方 を 左 右 す る重 要 度 が 理 解 され よ う。 第4表 ■ (調 査 を開始す ・か どうか 、USTRが 判断)
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∠〈協 定 違 反 〉 丶 調 査開 始 日か ら、協 定 に盛 られた紛 争期 限後 30日 、ま た は18か 月 k以 内の いずれ か早 い方ノ t r丶〈そ の 他 〉 調 査 開 始 日 か ら 、12' か 月 以 内k 、 ノ (調 査 に基づ くUSTRの 瀧) ■ 万 一 、 協 議 の 対 象 分 野 が 米 国 の期 待 す る成 果 へ 進 ん で い な い と ど うな るの だ ろ うか。 現在 議 会 に 上 程 中 の 「ス ー パ ー301条 復 活 」 法 案 が成 立 して 、 日本 が 不 公 正 貿 易 慣 行 国 に指 名 さ れ る リス クは 高 い。そ もそ も、スー パ ー-301条復 活 は ク リ ン トン大 統 領 の 選 挙 公 約 で あ り、 担 当 の カ ン ター 通 商 代 表 も支 持 を表 明 して い る。最 大 の タ'T.ッ トは 日本 だ が、外 国 の不 公 正 貿易 慣 行 を特 定 し、 期 限 内 の解 決 が 見 られ な け れ ば一 方 的 に 報 復 措 置 を とる か ら手 に負 え な い 。 類 似 の法 案 が複 数 議 会 に上 程 され て い るが 、 財 政 赤 字 削 減 策 の 審 議 後 に取 り上 げ られ て今 年 央 ま で に成 立 の 可 能 性 が 高 い(注6)。米 議 会 は 対 日経 済 案 件 を法 案 化 す る が、 第5表 の よ うに通 商代 表 部 外 国 貿 易 障壁 報 告 が 例 年 対 日項 目 を指 摘 して い る。 4.貿 易 不 均 衡 是 正 ア プ ロ ー チ の 問 題 点 米 国 内 の 対 日強硬 派 とい っ て も一 枚 岩 で は な い、 ロー ラ ・タ イ ソ ン大 統 領 経 済 諮 問委 員 長 の 主'第5表 通 商代 表 部外 国貿易 障壁 報告 に よる対 日指摘 項 目の変化(○=指 摘 な し、 ×=指 摘 あ り) 部 門 項 目 87年 報 告 89年 報告 90年 報 告 91年 報 告 輸 入 対 策 関税 0 X X X 木材 X X X X ア ル ミニ ウ ム X X X O 数 量 規 制 農 産 品 X X X X 飼料穀物 0 X X X コ メ 0 X X X 水 産物(魚 介 類) X X X X 表 基 示 準 識 騨 医薬品医療機器 X X X X 食 品添加 物 X X X X 生鮮 農 産 品 な ど 0 0 X X 政 府 調 達 ス ー パ ー コン ピ ュー タ X X X X コ ン ピ ュ ー タ 0 0 0 X 人工 衛星 X X X X 保 知 護 的 財 産 権 調 達 の規定 運用 X X X X 特許 X X X X 商標 X X X X 著作権 X X X X 障 サ 壁1
妄
建設・建築 エンジニアリング X X X X 弁 護士業 X X X X 保 険 X X X X 金 投 鬲虫章 直接投資 0 X X X 金 融 サ ー ビ ス 0 X X X そ の 他 の 障 壁 半導体 X X X X 自動車 X X X X 自動 車部 品 X X X X 大規模店舗法 X X X 0 流通 システ ム 0 X X X 関 税 アルコール飲 料 ・ワイン X 0 0 0 グ レー プ フ ル ー ツ X 0 0 0 キ ヤ ンデ ー 等 菓 子 X 0 0 0 基 表 準T 日本 工業規 格 X O 0 0 日本 農林規 格 X 0 0 X 政 輸 策 入 タバ コ 同 製 品 X X O 0 項 付 目属 自動車 市場 0 X 0 0 対 日指 摘総数 33 34 35 33 (出所)日 米 経 済 問 題100の キ ー ワ ー ド 張 す る 「ハ イテ ク戦 略 管 理 貿易 」論 やJ・ フ ァ ロー ズ、 プ レ ス トウ ィ ッ ツ た ち の リビ ジ ョニ ス トが 主 張 す る 「日本 異 質 論 」 「日本 封 じ込 め 論 」(注7)をは じめ 多様 な見 解 を持 つ 。 しか し、 総体 と して 政 治 的 影 響 力 を強 め て い る こ とは 否 定 で きな い 。 と こ ろが 、 余 りマ ス コ ミ受 け が しな い た め 少 数 意 見 と見 られ が ち だ が、 米 国 流 管 理 貿易 に対 す る反 対 意 見 に は正 論 が少 な くな い。 た と えば 、20%シ ェ ア の 日米 半 導体 交 渉 の 当事 者 で あ っ た カ ー ラ ・ヒ ル ズ 前 通 商 代 表 は 、 「固 定 的 な 市場 シ ェア 目標 値 に 反 対 す る」 と 唱 え る。 同様 に、 ロ バ ー ト ・ゼ ー リッ ク前 国務 次 官 も、 「貿 易 に 目標 値 を設 定 す る と、 政 治 力 を 持 つ 産 業 グ ル ー プ が 有 利 に な る」 と反対 し、 さ らに 「関係 者 は 目標 値 ばか りに気 を と られ、 肝 心 な経 済 的効 率 性 を軽 視 しが ち」 と批 判 す る良 識 派 の代 表 格 で あ る。 一 方、 シ ン ク タ ン ク も レポ ー トを発 表 し て 警 告 して い る。 た とえ ば 、今 年6月 に カー ネ ギー 平 和 研 究 所 が 「対 日政 策再 考 」 報 告 書 を 作 成 し た。 「管 理 貿 易 的 手 法 に 疑 問 」 と結 論 づ け て 、 「貿 易 不 均 衡 を 日米 関 係 の リ トマ ス 試 験 紙 にす べ き で は な い 」 と主 張 して い る。 つ ま り、 多 面 的 で グ ロー バ ル な 日米 関 係 の 重 要 性 を指 摘 して い る。 日本 企 業 は輸 出 型 か ら 海 外 現 地 生 産 化 に シ フ トして お り、 第6表 に 1995年 の予 測 の よ うに 円 高 も手 伝 っ て3割 台 の 海 外 生 産 比 率 に な る 可 能 性 もあ る。 米 国 内 は も ち ろ ん、 国 際機 関 、ECあ る い は ア ジ ア 諸 国 か ら も米 国 流 ユ ニ ラ テ ラ リズ ム 及 び 目標 管 理 設 定 方 式 に 非 難 の 声 が 上 が っ て い る。 そ の 点 、 最 近 退 任 し たA・ ドン ケ ル 前 ガ ッ ト事 務 局 長 は、 「数 値 目標 を 設 定 す る 管 理 貿 易 は 計 画 経 済 の 国 々 が 導 入 に失 敗 した 方 法 」と こ き下 し、さ らに 日米二 国 間 で 貿易 ルー ル を 勝 手 に 取 り決 め れ ば 、 「す べ て の 貿 易 相 手 国 を平 等 に 扱 うガ ッ トの 最 恵 国待 遇 ルー ル が 機 能 しな くな る」 と警 鐘 を 鳴 らす 。第6表 日本 の 海外現 地生 産化 1995年 予 測 一 自 動 車 (EC)(日 本)(米 国)
轢準;鱒 ≒ 轢
560 現 地 生 産 _._._::150:::::::(ア ジ ア) 内需288 [雛 器 離 の他輸入,2(1)] 海 外生産 比率 31.2% い ず れ に して も、 米EC問 で 起 き る経 済摩 擦 は あ くま で も一 摩 擦 案 件 と し て 淡 々 と処 理 す る "大 人 の付 き合 い"の 域 に あ る 。 だ が、 日米 間 に は 「イ コー ル ・パ ー トナ ー シ ップ 」 「日米 関 係 ほ ど重 要 な関 係 は な い 」 とい っ た外 交 辞 令 は 飛 び 交 うが 、 本 当 に 対 等 な相 互 信 頼 の上 で 成 り立 っ て い る とは 思 え な い 。と くに、 最 近 の 日米 両 政 治 リー ダー シ ップ の 欠 如 と共 に 、 双 方"す れ 違 い" のバ ー セ プ シ ョ ン ・ギ ャ ップ の 深 さ は気 に な る とこ ろ で あ る。 日本 側 は 自国 の 主 張 を 明確 に伝 え る努 力 を よ り一 層 行 な う こ とに よっ て 、 は じめ て"成 熟 した 日米 関係"が 構 築 さ れ る歴 史 の教 訓 を学 ぶ べ きで あ ろ う。' 結 び に代 えて この よ う に 、 包 括 経 済 協 議 は1993年7月 の 東 京 サ ミッ トで の 日米 首 脳 会 談 で 合 意 さ れ た 。 そ し て、同年9月9日 ワ シ ン トン で の全 体 会 合 か らハ ワ イ で の作 業 部 会 な どへ と正 式 に 進 展 し始 め た。 1995年 夏 ま で の2年 間 に両 国 の 貿 易 不 均 衡 の 是 正 及 び 市 場 開 放 とい う二 大 テー マ に大 幅 な前 進 を見 る こ とが 可 能 なの か 、 協 議 の 進 展 具 合 を見 守 りた い 。 と くに、 米 国側 が保 護 主 義 に 流 れ や す い 目標 値 設 定 型 の 管 理 貿 易 主 義 、 結 果 主 義 志 向 を前 提 に 協 議 に 臨 ん で い る'ことは遺 憾 とい わ ざ る をえ な い。 この 二 国 間 経 済 協 議 の結 末 が 国際 経 済 全 体 に与 え る影 響 を十 二 分 に考 慮 すべ き で あ ろ う。 本 協 議 に 欠 け て い るの は、 グ ロー バ ル経 済政 策 ア プ ロー チ の 視 点 で あ る。(93年12月18日 脱稿) 注1「 前 川 レ ポ ー ト」 で は 経 常 収 支 対GDP比 率 の 数 字 明 記 が 議 論 され た が 、 一 応 の 目安 と し て2%と しな が ら も、 結 局 は 見 送 り と な っ て い る。 そ の 点 、 今 回 の 厂平 岩 レ ポー ト」 で の 目標 値 明示 もな さ れ な か っ た。 注2客 観(的)基 準 の解 釈 は 日米 で大 き く食 い違 って い る。 米 国側 は今 後 の 外 国 市場(G7)注3 注4 注5 注6 注7 で の 市 場 シ ェ ア を 目安 と して 日本 の努 力 目標 値 を要 求 す る一 方 、 日本 側 は過 去 の実 績 値 に 対 す るデ ー タ を基 準 と した い 旨 を伝 え て い る。 自動 車 部 品購 入 は1992年1月 ブ ッ シ ュ 前 大 統 領 訪 日の 際 に 、 日本 側 自動 車 メー カ ー が 各 社 の努 力 目標 値 を集 計 して190億 ドル とし た もの 。決 して 、政 府 間 協 議 に よ る 目標 値 で は な い 。 自動 車 議 員 族 は ミ シガ ン州 な ど 自動 車 生 産 州 の 選 出 議 員 らが 「オー ト ・コー カ ス 」(自 動 車 議 員 連 合)を 組 織 して 議 会 内 圧 力 グル ー プ を構 成 し て い る。 他 に 、 「繊 維 」 「鉄 鋼 」 「農 業 」 各 分 野 で 議 員 族 が 活 発 な支 援 活 動 を行 な っ て い る。 戦 後 の 日米 首 脳 会 談 は1951年 の 吉 田=ト ル ー マ ン会 議 を皮 切 りに 開催 され て きた が 、 近 年 は 開 催 頻 度が 増 えて 、首 脳 会 談 自体 が 定 期 性 を帯 び 始 め て きた.圧 倒 的 に 日本 側 の 訪 米 ケー ス が 多 い 。 通 商 法 案 は1993年 度 米 議 会 に30本 以上 上程 され て い る。 対 日関係 で は ゲ フ ァー ト下 院 院 内 総 務 が 中 心 に な っ て練 り上 げ た包 括 通 商 法 案 が 他 法 案 条 項 も組 み 入 れ て最 も強 力 な 内容 と な っ て い る。 リビ ジ ョニ ス トに替 っ て 、 い わ ゆ るネ オ ・リ ビ ジ ョニ ス トとい うべ き対 日グ ル ー プ が 台頭 して い る。 彼 ら は 日本 を封 じ込 め るの で は な く、 逆 に最 大 限 米 国 際 戦 略 に 日本 を活 用 す る 方 法 論 が 脚 光 を浴 び始 め て い る。 〔参 考 文 献 〕 拙 書 「日米 官僚 摩 擦J講 談 社1991年 拙 書 「新 通 商 法 の 脅 威 」 ダ イ ヤ モ ン ド社1990年 今 村 勝 征 との 共 拙 著 「ク リ ン トン の対 日戦 略 」 ダ イ ヤ モ ン ド社1993年 拙 書 監 訳 「ビル ・ク リン トン」 徳 間書 店1992年 行 天 豊雄 ・黒 田眞 編 「日米 経 済 問 題100の キー ワ ー ド」 有 斐 閣1992年 ジ ェ トロ貿 易 編 「世 界 と 日本 の 貿 易 」 ジェ トロ