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〈判例研究〉信用状取引に伴う譲渡担保権における占有改定による引渡しと直接占有の要否―最高裁平成29年5月10日第2小法廷決定―

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Ⅰ 問題の所在

譲渡担保権に基づく物上代位が認められるかが問題となるが,最高裁は,動 産の譲渡担保及び集合動産譲渡担保について,物上代位を認めている(最二小 決平成11年5月17日民集53巻5号863頁, 最一小決平成22年12月2日民集64巻 8号1990頁)。 最二小決平成29年5月10日民集71巻5号789頁(以下,「本決定」という。)1) は,これまでの判例と同様に,動産譲渡担保権に基づく物上代位を認めるもの であるが,譲渡担保権設定者につき,再生手続が開始したことから,本決定で は,再生手続開始時に,譲渡担保権者が占有改定により引渡しを受けていたと いえるか否かが問題とされた。本決定は,事例決定ではあるが,本決定のよう な取引における占有取得の方法を明らかにしたものとして実務上,重要な意義 を有し,また,動産譲渡担保に基づく物上代位や占有改定につき理論的な問題 を提起するものとして注目される最高裁決定であると思われる2)

1) 本決定は,金判1518号8頁,金判1525号8頁,金法2075号64頁, 判タ1440号112頁に掲載されて いる。 2) 本決定の評釈等として, 粟田口太郎・金法2068号5頁, 水野信次・銀法817号67頁, 森田修・金 法2075号10頁,藤澤治奈・法教446号49頁(以上,2017年)がある。

信用状取引に伴う譲渡担保権における

占有改定による引渡しと直接占有の要否

―最高裁平成2

9年5月1

0日第2小法廷決定―

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Ⅱ 本決定の事案

【事案】  X銀行とY会社(紳士,婦人,子供服,それに伴う服飾雑貨の輸入及び 販売等を目的とする株式会社)は,平成24年9月5日,銀行取引約定,信用状 取引に係る基本約定及び輸入担保荷物保管に関する約定を締結した。その中で, ①YがXから信用状の発行を受けて輸入する商品につき,Xは,信用状条件に 従って輸出業者の取引銀行等に対して補償債務を負担し,Yは,Xに対して償 還債務等を負うこと,②Yは,上記償還債務等を担保するため,Xに対し上記 の輸入商品に譲渡担保権を設定すること,③Xは,Yに対し上記輸入商品の貸 渡しを行い,Yにその受領,通関手続,運搬及び処分等を行う権限を与えるこ とを合意した。  Xは,平成26年12月25日から平成27年1月29日までの間に,中国企業 B1,B2 から,Yが,商品(以下「本件商品」という。)を輸入するについて信 用状3通を発行し,同月22日から同年2月19日までの間に,これらの信用状に 基づく補償債務を弁済して,Yに対し,償還債務履行請求権等を取得した。  Yは,本件商品の売主Bらとの間でこれに関する輸入契約を締結し,本 件商品は,同輸入契約に基づいて,船舶により中国から大阪南港へ輸送され, 平成27年1月5日から同年2月5日までの間に,同港に到着した。Yは,その 頃,海運貨物取扱業者(以下「海貨業者」という。)C1,C2 に対して,本件商 品の受領,通関手続及び転売先への運搬を委託した。  Yは,遅くとも平成27年2月6日までに,A株式会社又はその承継会社 である第三債務者Z(以下, これらを併せて「本件買主」という。)に対し, 本件商品の一部(以下「本件転売商品」という。)を売り渡した。  Yの上記の委託を受けた海貨業者Cらは,平成27年1月5日から同年

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2月6日までの間に,本件商品を大阪南港で受領し,通関手続を行った上で3) 自ら又はその再委託を受けた運送業者によって,本件転売商品を本件買主の指 定先(物流センターD)まで運搬した。Yは,本件商品を直接占有したことは なかった。 なお,輸入取引においては,輸入業者から委託を受けた海貨業者によって輸 入商品の受領及び通関手続が行われ,輸入業者が目的物を直接占有することな く転売を行うことは,一般的であった。また,信用状取引においては,信用状 を発行した金融機関が輸入商品につき譲渡担保権の設定を受けることが一般的 であり,Yの上記委託を受けた海貨業者には,本件商品が信用状取引によって 輸入されたものであることが明らかにされていた4)  Yは,平成27年2月9日,再生手続開始の申立てをし,同月20日,再生 手続開始の決定を受けた。Yは,上記申立てをしたことにより,前記の銀行 取引約定に基づき,前記の償還債務履行請求権等に係る債務について期限の 利益を失った。  Xは,平成27年3月11日,大阪地方裁判所に対し,前記の償還債務履 行請求権等のうち,本件転売商品の輸入のためにXが負担した輸入代金に対応 する部分を請求債権とし,前記の譲渡担保権設定の合意に基づき本件商品に 設定された譲渡担保権(以下「本件譲渡担保権」という。)に基づく物上代位 権の行使として,YのZに対する本件転売商品の各売買代金債権(以下「本件 3) 原審の事実認定によると, 本件商品の輸入取引について,「サレンダードB/L」と呼ばれる取 引の方式が用いられており,Yは,B/L(船荷証券)の原本なしに本件商品を受領することがで きた。日本貿易振興機構(JETRO)のウェブサイト(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010716. html)では,「サレンダードB/Lは,元地(船積地)で Surrendered(回収されてしまった)B /Lであり,元地回収された時点で有価証券としてのB/Lの機能は失われ」ると説明されている。 このような方式の取引につき,動産債権譲渡特例法3条1項かっこ書により動産譲渡登記ができな くなるのかは分からないが,本件において特例法登記を利用することが困難であることが,森田・ 前掲注2)18,19頁に指摘されている。 4) 原審によると,本件取引においては,Cらに対して,信用状番号が記載されている「商業送り状」 が交付されており,金融機関によって信用状が発行された取引であることが明らかにされていた。

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転売代金債権」という。)の差押えの申立て(以下「本件申立て」という。)を した。大阪地方裁判所は,同月26日,本件申立てに基づき,債権差押命令を発 付した。  Yは,本件譲渡担保権に基づく物上代位権を行使するためには,再生手 続開始の時点で本件譲渡担保権につき対抗要件を具備している必要があるとこ ろ,Yが本件商品を直接占有していない以上,XがYから占有改定の方法によ り本件商品の引渡しを受けることはできず,Xは対抗要件を具備していないか ら,上記物上代位権を行使することはできないなどとして,上記の命令の取 消しを求める執行抗告をした。 【第1審】(大阪地決平成27年7月9日金判1518号21頁,金法2075号75頁) 第1審は,Yの主張を認め,債権差押命令を取り消した。 その理由は,Xが再生手続によらずに別除権を行使するためには,Xにつき 再生手続開始決定がされた平成27年2月20日午前10時の時点で,譲渡担保権に ついて対抗要件を具備している必要があるところ,Yが本件商品を直接占有し ていないことから,Xへの占有改定による引渡しは認められず,また,YがC らに対してXのために占有することを明示的に命じたとは認められないから, 指図による占有移転による引渡しも認められないことである。 【原審】(大阪高決平成28年3月30日金判1518号16頁,金法2075号69頁) 原審は,Xの主張を認め,第1審決定を取り消して,債権差押命令を発付す べきものとした。 原審も,再生手続によらずに別除権である本件譲渡担保権を行使するために は,Yにつき再生手続開始決定がされた時点で,本件譲渡担保権について,対 抗要件を具備している必要があるとするが,本件では,海貨業者であるCらが Yのために本件商品を受領し,直接占有を取得した時点で,XはYを介してC

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らから本件商品の占有(間接占有)を取得し,占有改定により譲渡担保権につ いて対抗要件を具備したものと認められるとした。 そこで,Yが抗告した。Yの抗告理由は,原決定が,占有改定が動産を現実 に所持する者からされるものであると判示した大審院大正4年9月29日判決に 反することなどであある。

Ⅲ 決定要旨

抗告棄却。 「上記の経緯によれば, Yは本件譲渡担保権の目的物である本件商品につい て直接占有したことはないものの,輸入取引においては,輸入業者から委託を 受けた海貨業者によって輸入商品の受領等が行われ,輸入業者が目的物を直接 占有することなく転売を行うことは,一般的であったというのであり,YとX との間においては,このような輸入取引の実情の下,Xが, 信用状の発行に よって補償債務を負担することとされる商品について譲渡担保権の設定を受け るに当たり,Yに対し当該商品の貸渡しを行い,その受領,通関手続,運搬及 び処分等の権限を与える旨の合意がされている。一方,Yの海貨業者に対する 本件商品の受領等に関する委託も,本件商品の輸入につき信用状が発行され, 同信用状を発行した金融機関が譲渡担保権者として本件商品の引渡しを占有改 定の方法により受けることとされていることを当然の前提とするものであった といえる。そして,海貨業者は,上記の委託に基づいて本件商品を受領するな どしたものである。 以上の事実関係の下においては,本件商品の輸入について信用状を発行した 銀行であるXは,Yから占有改定の方法により本件商品の引渡しを受けたもの と解するのが相当である。そうすると,Xは,Yにつき再生手続が開始した場 合において本件譲渡担保権を別除権として行使することができるというべきで

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あるから,本件譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,本件転売代金債 権を差し押さえることができる。」 「原審の判断は,以上と同旨をいうものとして是認することができる。 所論 引用の大審院判例は,事案を異にし,本件に適切でない。論旨は採用すること ができない。」

Ⅳ 検 討

1 譲渡担保権に基づく物上代位  譲渡担保権に基づく物上代位権行使の可否 本決定は,譲渡担保の目的動産の転売代金債権に対する譲渡担保権に基づく 物上代位権行使を認めている。譲渡担保に基づく物上代位が認められるか否か については,譲渡担保の法的性質論や物上代位の本質論にも関連する問題とし て論じられてきた。学説では,譲渡担保権の性質について担保権的構成にたち, また,物上代位の本質論について価値権説を採ることを前提として物上代位を 肯定する見解が多数である状況において5),最二小決平成11年5月17日民集5 巻5号863頁(以下,「平成11年決定」という。)は, 動産の譲渡担保権に基づ く物上代位権行使を認めた。平成11年決定は,本決定の事案と同様に信用状取 引に係る譲渡担保に関するものである。銀行Xが,輸入業者Aが行う商品の輸 入について信用状を発行し,約束手形の振出しを受ける方法によりAに輸入代 金決済資金相当額を貸し付けるとともに,Aから約束手形金債権の担保として 輸入商品に譲渡担保権の設定を受けた上,Aに商品の貸渡しを行ってその処分 権限を与えたところ,Aが,右商品を第三者Bに転売した後,破産の申立てを したことにより約束手形金債務につき期限の利益を失ったという事案において, 5) 最二小決平成11年5月17日民集53巻5号863頁以前の学説の状況については, 河邉義典『最高裁 判所判例解説民事篇平成11年度(上)』439頁以下を参照。

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最高裁は,このような「事実関係の下においては,信用状発行銀行であるXは, 輸入商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,転売された輸 入商品の売買代金債権を差し押さえることができ,このことは債務者であるA が破産宣告を受けた後に右差押えがされる場合であっても異なるところはない と解するのが相当である。」とした。 平成11年決定は事例決定であり,一般的 に譲渡担保に基づく物上代位を肯定したものとは解されていないが,その後, 最一小決平成22年12月2日民集64巻8号1990頁6)(以下,「平成22年12月決定」 という。)は,「構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権は, 譲渡担保権者において譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産 (以下「目的動産」という。)の価値を担保として把握するものであるから,そ の効力は,目的動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権 設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶと解するのが相当で ある」と判示した。ただし, 流動集合動産譲渡担保の性質から,「構成部分の 変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約は,譲渡担保権設定者が目 的動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから,譲渡担保 権設定者が通常の営業を継続している場合には,目的動産の滅失により上記請 求権が発生したとしても,これに対して直ちに物上代位権を行使することがで きる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り,譲渡担保権者が当該請 求権に対して物上代位権を行使することは許されない」とした。平成22年12月 決定は,集合物譲渡担保権が目的動産の価値を担保として把握していることを 理由に,損害保険金請求権に対する物上代位を認めており,譲渡担保権に基づ く物上代位が一般論として認められるようにもみえる。しかし,学説において は, 一般的に, 譲渡担保に基づく物上代位(民法304条の類推適用)を認める べきかについては,議論がある。 物上代位性は,担保目的物の交換価値を把握し,優先弁済的効力が認められ 6) 本件解説として,柴田義明『最高裁判所判例解説民事篇平成22年度』722頁以下がある。

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る担保物権に認められる性質であり(民法304条,350条,372条)7),譲渡担保 は,非典型担保ではあるが,優先弁済的効力を有する物的担保であることから, 譲渡担保権に基づく物上代位も認められるとも考えられる。先述のとおり,学 説の多数は,譲渡担保権に基づく物上代位を認めているが,それらは,譲渡担 保の法的性質について担保権的構成に立つことを前提としており,そうすると, 抵当権等と同様に,物上代位を肯定できるからであると思われる。近時の学説 は,抵当権の物上代位について論じる際に,物上代位には,代替的物上代位と 付加的物上代位の2種類のものがあるとする8)。代替的物上代位は,抵当不動 産の滅失・損傷の場合の価値代替物に対する物上代位であり,付加的物上代位 は,抵当不動産から派生的に生じる債権(賃料債権)に対する物上代位であり, 要件等が異なるとされる9)。そこで,譲渡担保権についても,物上代位の目的 債権の種類ごとに,物上代位の可否が検討されることが多い。賃料債権につい ては,譲渡担保の目的物の占有態様に基づき,果実収取権の問題として処理す ることが適切であるとする説が多い10)。また,保険金請求権についても,譲渡 担保権に基づく物上代位を認める見解が多く見られる11) 本決定の事案で問題とされているのは,平成11年決定の事案と同様に,特定 動産を目的とする譲渡担保権であり,平成11年決定が,事例決定とはいえ,一 7) この点については,争いのないところであるが,例えば, 安永正昭『講義 物権・担保物権法 〔第2版〕』(有斐閣,2014年)237,238頁を参照。 8) 2種類の物上代位の区別については, 松岡久和『担保物権法』(日本評論社,2017年)56頁以下 に詳しい。なお,代償的物上代位,派生的物上代位という用語が用いられることがあるが,本稿で は,代替的物上代位,付加的物上代位を用いる。 9) 松岡・前掲注8)56頁。 10) 河上正二『担保物権法講義』(日本評論社,2015年)340,341頁, 道垣内弘人『担保物権法[第 4版]』(有斐閣,2017年)314頁,松井宏興『担保物権法(補訂第2版)』(成文堂,2015年)193頁。 11) 安永・前掲注7)399頁, 生熊長幸『担保物権法』(三省堂,2013年)284頁,松井・前掲注10) 193頁,山野目章夫「譲渡担保権に基づく物上代位(平成11年決定の判批)」『民法判例百選(第5 版補正板)』203頁。 橋眞『担保物権法(第2版)』(成文堂,2010年)295頁は,不動産の滅失の 場合の損害保険金請求権への物上代位を認める。なお,河上・前掲注10)341頁は,物上代位の問 題というよりも被保険利益の支配・帰属の問題とする。

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定の事実関係のもとで,動産譲渡担保権に基づく転売代金債権に対する物上代 位権行使を認めたのは,先にみたとおりである。 しかし,動産譲渡担保の目的動産が第三者に売却された場合に,この売買代 金債権に対する物上代位については,これを全面的に否定する見解も見られる。 まず,「譲渡担保権者はあくまで所有権を取得する旨の約束を行っているので あって,いくら実質的には担保であっても,当事者のとった法形式以上の権利 を認める必要はない」とする見解がある12)。また,「所有権的構成という形式 を重視した法的処理をするのであれば,むしろ646条2項の類推適用によるべ きである」とする見解も見られる13) もっとも,特定動産の譲渡担保においては,目的動産の転売代金債権に対す る物上代位を肯定する見解が少なくない。これらの見解においては,平成11年 決定の事案に着目し,動産売買先取特権との類似性を根拠として,動産譲渡担 保権に基づく物上代位が認められるとの主張がされている。そこで,かかる類 似性について,確認しておくこととする。  動産売買先取特権との類似性 動産売買先取特権については,転売代金債権に対する物上代位が認められる が,その理由としては,被担保債権と目的物との牽連性が強いことや目的動産 が第三取得者に引き渡されると目的動産について先取特権を行使することがで きない(追及力がない)ため(民法333条),物上代位を認めないと先取特権者 が害されることがあげられる14) 平成11年決定は,動産譲渡担保権に基づく物上代位が問題となっているが, 平成11年決定の事案では,特定動産を目的とする譲渡担保であること,譲渡担 12) 道垣内弘人『担保物権法[第4版]』(有斐閣,2017年)315頁。 譲渡担保権者には,所有者とし ての優先権(所有物の価値代替物に対する優先権)を認めれば十分であるとされる。 13) 平野裕之『民法総合3 担保物権法〔第2版〕』(信山社,2009年)270頁。 14) 内田貴『民法Ⅲ[第3版]』(東京大学出版会,2005年)528,529頁,安永・前掲注7)487,488 頁等。

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保の目的動産と被担保債権との間に相当程度の牽連性が存在すること,貸渡し により譲渡担保権設定者が譲渡担保の目的動産について処分権限を有する結果, 第三者が目的動産の所有権を取得し,譲渡担保権者が追及力を有しないことが 先取特権に類似しており,転売代金債権に対する物上代位権行使を肯定しやす い事情があったことが指摘されている15)。平成11年決定に関する判例評釈や基 本書等においては,先取特権との対比や追及力がないことを理由に,平成11年 決定を支持する見解が多い16)  本決定の事案 本決定の事案でも,銀行であるXが,輸入業者であるYの輸入する商品に関 して信用状を発行し,これによりYの負担する償還債務等に係る債権の担保と して当該商品につき譲渡担保の設定を受けたものであること,譲渡担保権の設 定に当たり,XがYに輸入商品の貸渡しを行っていたことが認められている。 本決定の事案における信用状取引も平成11年決定における取引と同様のもので あると解される。 本決定の事案におけるXの譲渡担保権の被担保債権は,YのXに対する償還 債務であるが,実質的には,Yの売主Bに対する代金債務であるとみることの できるものである17)。また,本件のXY間の貸渡しの合意により,Xは,Yに よる第三者への商品の売却があれば,当該商品に対する追及力を失うことにな る。これらの点において,動産売買先取特権への類似性が認められ,平成11年 決定の事案において,譲渡担保権に基づく物上代位権行使が認められることを 肯定する場合には,本決定の事案においても譲渡担保権に基づく物上代位が認 15) 河邉・前掲注5)462頁を参照。 16) 平成11年決定に関する文献は数多く,全てをあげることができないが,例えば,椿寿夫・私法判 例リマークス21号22頁以下,松岡久和・法学教室232号112頁以下を参照。また,譲渡担保権に基づ く物上代位の問題について検討するものとして, 生熊長幸『物上代位と収益管理』(有斐閣,2003 年)91頁以下がある。 17) 森田・前掲注2)15頁は,仮にXが直接に売主に代位弁済をすれば取得することになるYの売主 に対する代金債務と本質を同じくするものであるとする。

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められることに異論はないだろう。 本決定においては,譲渡担保権に基づく物上代位の可否が直接の争点となっ たのではなく,Xの物上代位権行使が,Yの民事再生手続開始決定後であった ため,Xの譲渡担保権が公示を具備していたか否かが争点とされている。 2 民事再生手続と譲渡担保に基づく物上代位 判例は,民事再生手続に関し,担保の実質から,譲渡担保権を別除権として 扱う18)。最二小判平成22年6月4日民集64巻4号17頁19)(以下,「平成22年6 月判決」という。)は,「再生手続が開始した場合において再生債務者の財産に ついて特定の担保権を有する者の別除権の行使が認められるためには,個別の 権利行使が禁止される一般債権者と再生手続によらないで別除権を行使するこ とができる債権者との衡平を図るなどの趣旨から,原則として再生手続開始の 時点で当該特定の担保権につき登記,登録等を具備している必要がある」と判 示している。平成22年6月判決は,自動車の所有権留保について,留保所有権 者が再生手続が開始した時点で,自動車の所有者としての登録名義なしに留保 した所有権を別除権として行使することができるかが問題となった事案に関し, 上記のように判示したものである。民事再生法45条の定める公示の具備につい ては,これが対抗要件として必要とされるのか20),権利保護要件として捉える べきであるか21),見解が分かれているとされる。平成22年6月判決は,別除権 行使のためには,登記,登録等が必要であるとするが,いずれの見解によるも のであるかは明らかではない22) 18) 集合動産譲渡担保に関する判例であるが,最判平成18年7月20日民集60巻6号2499頁,最判平成 18年7月20日判タ1220号94頁。 19) 本件解説として,山田真紀『最高裁判所判例解説民事篇平成22年度(上)』376頁以下がある。 20) 福永有利監修『詳解 民事再生法(第2版)』(民事法研究会,2009年)309頁以下〈山本和彦〉等。 21) 甲斐哲彦「対抗要件を具備していない担保権の破産・民事再生手続上の地位」司法研修所論集116 号119頁以下(2006年)。 22) 山田・前掲注19)389頁。

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本決定の第1審決定及び原審決定は,いずれも,「再生手続開始の時点で担 保権につき登記,登録等の対抗要件を具備している必要がある」として,平成 22年6月判決を引用している。 しかし, 平成22年6月判決は,「登記,登録等 を具備している必要がある」と判示しており,対抗要件という用語は用いてい ない。本決定も「占有改定の方法により本件商品の引渡しを受けた」と述べて いるだけであり,また,平成22年6月判決を引用していない。本決定は,譲渡 担保権の目的物である動産の引渡しを受けていれば別除権行使が認められると するものである。対抗要件であるか,権利保護要件であるかといった民事再生 における問題をいかに考えるかの問題は残っているかもしれないが,いずれに しても,本決定は,動産譲渡担保権の対抗要件が引渡しであることを前提とし, その引渡しの方法が問題とされた事例であるといえる。 3 動産譲渡担保の対抗要件 動産の譲渡担保においては,設定者に現実の占有がとどめられることが多い ため,占有改定(民法183条)による引渡しにより対抗要件が具備されること になる23)。占有改定では,外観に変化が生じないが,判例24)は,動産譲渡担保 の対抗要件であることを認めている。そして,動産譲渡担保においては,譲渡 担保契約がされ,債務者が引き続き目的動産を占有する場合には占有改定が認 められるとされる25) 占有改定が成立するには,①占有代理人の物の所持と②占有移転の合意が必 要であるとされている26)。そして,代理占有(間接占有)が成立するためには, 23) 安永・前掲注7)397頁,道垣内・前掲注12)311,312頁,河上正二『担保物権法講義』(日本評 論社,2015年)337,338頁等。 24) 大判大正5年7月12日民録22輯1507頁,最一小判昭和30年6月2日民集9巻7号855頁。 25) 前記最一小判昭和30年6月2日。なお,昭和30年判決については,石綿はる美・民法判例百選Ⅰ (第7版)124頁以下を参照。 26) 遠藤浩=水本浩=北川善太郎=伊藤滋夫監修『民法注解 財産法第2巻 物権法』(青林書院, 1997年)289頁〈佐藤歳二〉。

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ア 占有代理人が物を所持していること,イ占有代理人と本人との間に占有代理 関係が存在すること,ウ占有代理人が本人のためにする意思を有することが必 要となる(民法181条)27) 従前,動産譲渡担保権の対抗要件が占有改定であるとの説明において,「設 定者に占有がある」ことを理由とする場合には,設定者の直接占有を想定して いたように思われる。 この場合には,民法183条の占有代理人は,直接占有者 であると理解されていたことになる。これに対して,本決定の事案においては, 譲渡担保権の設定者であるYは,譲渡担保権の目的動産を直接占有しておらず, 直接占有していないYから占有改定によって,譲渡担保権者であるXが引渡し を受けて対抗要件を具備したと言えるかが本件の争点となっている。なお,設 定者が法人である場合には,動産債権譲渡特例法の動産譲渡登記ファイルに登 記することにより,動産譲渡担保権の対抗要件を具備することもできるが(動 産債権譲渡特例法3条1項), 本決定の事案では,この登記による公示はされ ていない28) 4 間接占有者からの占有改定による引渡し 本決定は,間接占有者Yから占有改定の方法により譲渡担保権者Xが引渡し を受けたものとされたものであり,この点について,本決定の意義があると考 えられる。 民法183条は,「代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表 示したとき」は,本人が占有権を取得する旨を定めている。占有改定とは,「他 人の自主・間接占有を承認し,自己占有を他主・直接占有に改めること」29) 27) 代理占有(間接占有)の要件については,平野裕之『物権法』(日本評論社,2016年)223頁以下 を参照。 28) 森田・前掲注2)18,19頁では,本決定の事案のような信用状取引において特例法登記を利用す ることの困難さが指摘されている。 29) 川島武宜=川井健編『新版注釈民法物権』(有斐閣,2007年)36,37頁〈稲本洋之助〉。

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あるとされている30)。このように,これまでは,前記のとおり(「3」参照) 占有改定は,直接占有者からの占有の移転を認める方法であると理解されてい たと思われる。 第1審決定は,「他人が直接占有を有する物に対して,本人に占有権がある と認められるためには,①直接占有を有する当該他人と本人との間に占有代理 関係,すなわち当該他人の占有がその性質上,本人の自主占有から直接的に又 は派生的に引き出され,かつ,終局的に占有物が自主占有者である本人に返還 されるべき関係があると認められること,②当該他人において本人のために占 有する意思を有すると認められることの各要件を充足し,もって,占有物に対 して本人の事実的支配が及んでいると認められることが必要である」とし,「債 権者が本件各商品の間接占有を取得するためには,直接占有者であるCら等と の間で上記各要件を充足する必要がある」と判示した。第1審決定は,従前の 考え方のとおり,占有改定の方法による引渡しは直接占有者によってされるも のであるという理解に立つものと解される。本決定の事案においては,XY間 の合意に関与していないから,Cらが占有物の返還義務をXに負うことになる と考えること(①)やCらがXのために占有する意思を有すること(②)を肯 定することは難しいことになる。 大判大正4年9月29日民録21輯1532頁(以下,「大正4年判決」という。)は, 「占有改定ハ甲権利ニ基キテ物ヲ占有スル改定者カ其権利ヲ本人ニ譲渡スルト 同時ニ其譲渡シタル権利ニ伝来スル乙権利ヲ本人ヨリ取得シ乙権利ニ基キテ物 ノ所持ヲ継続シ乙権利ノ為メニスル直接占有者トナリ本人ハ同一物ニ付キ返還 請求権ニ基キテ甲権利ノ為メニスル間接占有権ヲ取得スル場合ヲ指スモノナリ」 と判示しており,占有改定における改定者が直接占有者であることを判示して いるようにみえる。しかし,大正4年判決の事案では,改定者が直接占有をし 30) 同様の理解を示すものとして,松岡久和『物権法』(成文堂,2017年)265頁,河上正二『物権法 講義』(日本評論社,2012年)151頁等。

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ており,間接占有者が占有改定をすることができるかが問題となった事例では なく,183条の代理人が占有改定に先立ってあらかじめその代理人であること を要しないとの判断がされたものであった31) 民法183条にいう「占有物」が占有代理人(間接占有者)が直接に占有する 物に限られるか否かは,条文上は必ずしも明らかではない32)。大正4年判決は, この問題に関する先例ではなく,この問題を争点とする判例は存在しないよう である。学説としては,間接占有者からの占有改定が可能であると見解33)や間 接占有者が占有改定の方法で占有を移転することを否定する見解34)がある。 本件において,Xは,民法183条にいう「代理人」は,直接占有者に限られ ず,間接占有者も含まれ,間接占有者であるYからXに対する占有改定による 引渡しによって,Yの本件商品に対する間接占有を維持しつつ,Xも同商品に 対する間接占有を取得できる旨を主張している。本件における譲渡担保権の設 定においては,譲渡担保権の設定後もYは本件各商品の管理支配を継続し続け, 自らの商品として売却していくことを予定しており,Y自身が間接占有をして いる状態は引渡し後も維持されなければならず,このことを前提として,譲渡 担保権者についても間接占有を取得させるのが目的であるという35)。原決定は, まず,海貨業者Cらが本件各商品の直接占有を取得した時点で,YがCらを介 して,本件各商品の事実的支配を獲得し,間接占有を取得するとし,次に,X Y間の法律関係から,YはXのために,本件各商品の事実的支配を獲得するも 31) 遠藤浩=水本浩=北川善太郎=伊藤滋夫監修『民法注解 財産法第2巻 物権法』(青林書院, 1997年)289頁〈佐藤歳二〉。 32) 本決定の掲載誌のコメント(金法2075号66頁)を参照。 33) 井口牧郎「判解」『最高裁判所判例解説民事篇昭和34年度』211頁。差押中の有体動産の占有改定 による引渡しを問題とする最二小判昭和34年8月28日民集13巻10号1336頁の解説において,ドイツ 法を参照し,間接占有者からの占有改定が可能であることが論じられている。 34) 小山昇「判批(最二小判昭和34年8月28日判決の判批)」判例時報211号(判例評論24号)15頁。 占有改定は直接占有者が自己の占有物を本人のために占有する意思を表示することにより占有を本 人に移転する方法であることをその理由とする。 ただし,「間接占有の改定は理論的に不可能では ない。」とする。 35) 原審におけるXの主張(金法2075号72頁)を参照。

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のであり,これにより,XもYを介して,本件各商品の事実的支配を獲得する として,Xが,Cらの直接占有取得によりYを介して,Cらから間接占有を取 得するとする。そして,他人のために占有を取得する法律関係が複数牽連する 場合において,中間者(双方の法律関係の当事者である間接占有者)を介して 直接占有者からの占有(間接占有)を認めることは間接占有(民法181条)の 性質に反するものではないと判示する。このように解する場合には,目的物の 「事実的支配」の獲得が重視されることになろう。原決定は,このように,間 接占有者からの占有改定が一定の場合には肯定されることを判示した後に,本 件事案における信用状を利用した輸入取引の実態を詳細に述べる。信用状取引 に関する取引慣行や取引関係者の認識は,間接占有者からの占有改定を肯定す る一般論を補強するものとして述べられているものと思われる36) 原決定とは異なり,本決定は,一般論として間接占有者からの占有改定を認 めるのではなく,まず,本決定の事案のような輸入取引が一般的であることを 示す事実を適示し,輸入取引の実情から,Xが占有改定の方法により本件商品 の引渡しを受けたことを認めた。 決定要旨においては,「XとYとの間にお いては,輸入業者から委託を受けた海運貨物取扱業者によって輸入商品の受領 等が行われ,輸入業者が目的物を直接占有することなく転売を行うことが一般 的であったという輸入取引の実情の下,上記譲渡担保権の設定に当たり,Xが Yに対し輸入商品の貸渡しを行ってその受領等の権限を与える旨の合意がされ ていた。海運貨物取扱業者は,金融機関が譲渡担保権者として当該商品の引 渡しを占有改定の方法により受けることとされていることを当然の前提として, Yから当該商品の受領等の委託を受け,当該商品を受領するなどした。」こと が事実としてあげられており,これらの事情が重視されたと思われる。は, 本件の事案でいえば,Cらが金融機関が譲渡担保権者として占有改定によって 本件商品の引渡しがされることを認識している,しかも,そのことを「当然の 36) 藤澤・前掲注2)54頁。

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前提」としているということにより,Cらが金融機関のために占有していると いう意思を有している場合に類似した状態にあるということであるように思わ れる37)。ただし,ここでいう「金融機関」が特定の金融機関(本件でいえばX 銀行)を意味するのか否かは明らかではないといえよう38) 重複する間接占有が認められる場合がありうることを認める見解39)もあり, 間接占有者からの占有改定を認めることが可能であるように思われる。もっと も,本決定は,事例決定であるとされており,信用状による輸入取引の場合に は,間接占有者からの占有改定が認められるとしても,他にどのような場合に 認められるのかは1個の問題であろう。 ところで,第1審においては, 指図による占有移転(民法184条)がされた か否かも争点とされていた40)。 第1審決定は,「譲渡人から直接占有者に対す る指図は明示的になされることを要する」とし,本件では,本件各商業送り状 には, 本件各信用状の番号が記載されているにすぎず, 商業送り状の送付を もってYがCらに対し,Xのために占有することを明示的に命じたとは認めら れないなどとして,指図による占有移転の成立を否定した。本件において「指 図」があったと認定されるのは難しかったのではないかとの指摘がある41)。本 件においては,指図による占有移転の方法によりXがYから動産の引渡しを受 37) 森田・前掲注2)16頁は,XとCらの意思的連絡にかかわるものとする。 38) 森田・前掲注2)17頁・注5は,個別具体的な譲渡担保権者たるXの存在の認識ではないと評し うるとする。 39) 末川博『占有と所有』(法律文化社,1962年)81頁, 船橋諄一『物権法』(有斐閣,1960年)294 頁。

40) 三菱総合研究所「『動産債権担保融資(Asset-based Lending : ABL)普及のためのモデル契約等 の作成と制度的課題等の調査』報告書」参考資料1「集合動産譲渡担保権設定契約書及び債権譲渡 担保権設定契約書(参考例)」 における「集合動産譲渡担保権設定契約書(参考例)解説書」4頁 では,「倉庫業者等設定者以外の者が担保目的物を直接占有している場合には,『占有改定』ではな く,『指図による占有移転』の方法を用いることになる」との説明がある。本件のような信用状取 引に係る動産譲渡担保権設定を前提とするものではないが,実務においては,設定者が担保目的物 を直接占有していない場合には,指図による占有移転の方法によって,動産譲渡担保権の民法上の 対抗要件を具備するものと考えられてきていることを示しているように思われる。 41) 森田・前掲注2)12,13頁。

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けたとは考えられなかったため,占有改定による方法による引渡しが認められ るか否かが問題となり,本件の事案のもとで,間接占有者からの占有改定が認 められたことになる。 5 動産譲渡担保における物上代位権の公示 本決定は,譲渡担保権者が,間接占有者(譲渡担保設定者)からの占有改定 による引渡しを受けていたことを認め,民事再生手続開始後であっても,動産 譲渡担保権に基づく転売代金債権に対する物上代位権行使を認めたものであり, 本件の事案のもとでは,このような結論となることについては首肯しうるもの と思われる。 ところで,平成11年決定,平成22年12月決定及び本決定においても,物上代 位の差押えの趣旨については問題とされていない。動産売買先取特権の物上代 位に関する判例42)によれば,34条1項ただし書の差押えの趣旨・目的は,「抵 当権とは異なり公示方法が存在しない動産売買の先取特権については,物上代 位の目的債権の譲受人等の第三者の利益を保護する趣旨を含む」43)ものとされ ている。他方,抵当権に基づく賃料債権に対する物上代位の場合には,判例44) は,372条の準用する304条1項ただし書の差押えの趣旨目的は,主として,第 三債務者を保護するためであるとし,「抵当権の効力が物上代位の目的債権に ついて及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ」る と判示する。それでは,動産譲渡担保権に基づく物上代位の場合には,差押え の趣旨目的をどのように解することになるのだろうか。本決定のように,特定 動産の譲渡担保に基づく物上代位が肯定される理由として,動産売買先取特権 との類似性があるのであれば,ここでの差押えについて,動産売買先取特権と 同様の解釈をする可能性が生じよう。動産の譲渡担保には,動産先取特権と異 42) 最判昭和59年2月2日民集38巻3号431頁,最判昭和60年7月19日民集39巻5号1326頁。 43) 最三小判平成17年2月22日民集59巻2号314頁。 44) 最二小判平成10年1月30日民集52巻1号1頁。

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なり,公示方法が存在するが,占有改定による公示は,外形に変化が生じない こともあり,動産売買先取特権と同様の目的を差押えに認める必要があるかも しれない。他方で,動産の譲渡担保については,動産譲渡登記によって公示す ることが可能であり,この場合には,抵当権に基づく物上代位と同様に考える ことになると思われる。動産譲渡担保の約定担保権としての性質に着目し,ま た,動産譲渡登記によって権利の公示が可能である点に鑑みて,抵当権に類す る解釈を採ることが整合性を有する解釈であるとの見解がある45)。しかし,一 般論として,動産譲渡担保権を動産譲渡登記で公示することが可能であるから といって,動産譲渡担保権に基づく物上代位における差押えの趣旨目的につい て抵当権に基づく物上代位の場合と同様に解することになるとは言えないよう に思われる。動産譲渡担保の場合には,確かに,動産先取特権と異なり対抗要 件が存在していない訳ではなく,占有改定という対抗要件が存在するので,約 定担保である抵当権と同様に考えることも可能かもしれないが,占有改定は公 示としては十分とは言えず,また,動産譲渡登記を利用できない場合もあるこ とを考慮すれば,譲渡担保権者による差押えの趣旨につき,動産売買先取特権 の場合と同様に解釈する余地があるのではないかと思われる。この点について は,今度,どのような場合に問題が生じるかなど,もう少し詳細に検討してい きたい。 〔付 記〕 本稿の作成にあたり,X代理人である濱田雄久弁護士より資料の提供や本件取引に関 する数々のご教示を頂いた。本稿の内容に誤り等があれば,すべて筆者の能力不足によ るものであるが, お忙しい時間の合間にご協力頂いたことにつき, ここに記して, 濱田 弁護士には,あらためて,感謝申し上げる。 45) 後藤巻則=滝沢昌彦=片山直也編『プロセス講義民法Ⅲ担保物権』(信山社,2015年)181頁。な お, 平野裕之『民法総合3 担保物権法〔第2版〕』(信山社,2009年)271頁は,動産譲渡登記が あれば,抵当権同様にその登記で第三者への対抗を認めてよいが,占有改定では十分ではなく譲渡 担保権者による差押えを必要とするということになる可能性を指摘する。

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