〈実践報告〉英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み--スポーツ推薦入学生クラスの事例報告
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(2) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 教育である(辻野, 2 0 0 9) 。 近年,大学生の英語力低下が問題とされ,英 語リメディアル教育を実施している大学は少なくなし 1。 リメディアル教育 を必要とする英語習熟度の低い学生は,中学校初期の頃に英語に蹟いてい. 9 9 0 ; 岡田・嶋林, 2 0 0 0 ;加賀田ら, 2 0 0 7 ),その ることが多く(雑賀, 1 ような学生は授業参加に消極的な傾向が見られ,英語に対する苦手意識が, 彼らを英語学習から遠ざけていることが考えられる O 佐野 ( 2 0 0 5 ) は,生 徒が英語を嫌いになる理由は「わからない」からで,やる気があっても 「わからな Lリと感じてしまうと,急速に意欲を失うとしている O 清田. ( 2 0 1 0 )は ,. リメディアル教育の難しさを「学習動機を失ったものを相手. にすること」とし,彼らの学習意欲を刺激し,動機を高める方法を考案す る必要があるとしている O 酒井ら ( 2 0 1 0 )は ,. リメディアル教育において. は学習者自らが学習意欲を取り戻し,学習に主体性を持つことができるよ うな学習支援の必要性を述べている O そのためには,英語が苦手な学生が 「 英語を学びたい」と学習意欲を高める授業を教師がデザインすることが 必要ではないか。. 2 . 2 リメディアル教育対象クラスにおける多様な取り組み 英語リメディアル教育を, I 英語のやり直し」ではなく, I 様々なアプ ローチで学習意欲を高め,英語の知識を深める」と考えれば,教師は授業 をデザインしやすくなる(牧野, 2 0 1 3 a )。その実践例であるが,牧野 ( 2 0 1 2 a ) では,英語を読むことが苦手な学生たちに英語絵本の読書を行わせ,語葉 力を有意に向上させた。 また,牧野 ( 2 0 1 3b ) では,協同学習でスピーチ のトレーニングを行い,互いのパフォーマンスにフィードバックを与え 合った結果,学生は仲間との学習を楽しい活動ととらえ,スピーチ技術を 大いに向上させた。 さらに,牧野 ( 2 0 1 2b ) では,. リスニングに苦手意識. を持つ学生たちに週に l度 7か月にわたり学生に人気のある洋楽の聞き取.
(3) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み りを行わせたところ,. リスニング力が有意に向上した。 このように,これ. までの英語授業ではあまり行われなかったアプローチにより,学生は授業 に興味を持つようになり,積極的に英語学習に取り組むことが示差される O. 2 . 3 リメディアル教育対象クラスにおける授業改善 2 0 1 3 c ) では, リメディアル教育対象の 1年生クラスにおいて,高 牧野 ( 校英語授業について学生にアンケートを行い,その結果をもとに高校英語 授業のスタイルとは異なる授業づくりを試みた。(1)学ぶ環境をつくる,. ( 2 ). 授業内容の理解を深める, ( 3 )授業に参加させる,任)英語への興味を高める, という 4点に注目し,. I 大学の授業でも,やはり英語は不安」から, I この. 授業なら英語力が伸びるかもしれない」と学生が感じるよう,英語授業の イメージが変わる取り組みを検討した。 その結果,学生の英語に対する好 感度,英語力,英語学習に対する自己効力感が有意に向上した。 ここでい う自己効力感とは,ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うま くおこなうことができるかという個人の確信であり ( Bandura,1 9 7 7 ),松 沼 ( 2 0 0 6 ) は,与えられた課題や行動をうまく遂行できるかという自信を. 20 0 4)は,自分は語学学習ができると思っ 意味するとしている O 奥間ら ( ている学習者は,語学学習ができないと思っている学習者より語学がうま く学習できるとし, 自己効力感の高まりが英語力の向上に寄与することを 示唆している O. 3 . スポーツ推薦入学生英語クラスにおける取組 筆者は 2 0 0 9年度にスポーツ推薦入学生で構成された英語授業を担当した. 0 1 0 )。一部の学生を除き英語に対して苦手意識が強い,差し迫っ (牧野, 2 0分の授業時間 て英語を学ぶ目的がない,練習の疲れで授業に集中できず 9.
(4) 近畿大学法学. 第6 1巻第 2・3号. を非常に長く感じる,など学生の学習意欲の低さが感じられた。 そこで, 授業改善を試み,教師と学生,および,学生聞のラポール構築を目指し, さらにアクティビティを取り入れた授業法で学生の授業参加を図った。 そ れまでの英語授業と異なる授業をデザインしたことで,学生たちは英語学 習に興味を持ち,授業を楽しみにするとともに,学習意欲が大いに高まる 結果となった。. 2 0 1 1 ) が担当したスポーツ推薦入学生英語クラスでは,学 また,牧野 ( 生の英語学習意欲が低い上に,英語が難しくてわからないといった声も多 数聞かれた。そこで,アクション・リサーチを行い,筆者が授業を内省し, 学生の英語力やクラスの特性に合う指導方法を検討し,授業を見直した。. 1) 授業における問題点を整理する,. 2) 指導の中で学. 生が自ら授業に参加したいと思うような工夫を凝らす,. 3) 授業を理解す. その取り組みは,. るためのプリントを作成する,. 4 ) 課題や小テストに動機づけを高める励. ましのフィード、バックを与える,などである O 結果,授業の理解度が深ま り,学生が自主的に授業に参加する姿が見られ,学習姿勢が大きく改善さ れた。. 4 . 研究の目的 第 3章のスポーツ推薦入学生英語クラスにおける取り組みは,学生の英 語力向上については検証しておらず,その点を今後の課題としている O そ こで,本研究においては,スポーツ推薦入学生で構成された英語リメディ アル教育対象クラスにおいて授業改善を行い,学生の英語に対する好感度, 英語学習に対する自己効力感,英語力に変化が見られるかを検証すること を目的とする 。.
(5) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み. 5 . 研究の方法 5 . 1 対象クラス 本研究は,入学式直後に実施したプレースメントテストの結果により, リメディアル教育対象となった私立大学. 1年生 2 3名を対象とする 学生は O. 全員がスポーツ推薦入試制度で入学しており,学業とクラブ活動を両立し ている O 学生の英語力は中学校学習内容の復習を必要とするレベルであり, 第 l回目授業で行ったアンケートより,大半の学生が英語学習に対して強 く不安を感じていることが確認された。研究対象となった授業は,英語 4 技能を向上させることを目的としており,筆者が 9 0分授業を週に 2凪,前 期,後期合わせて 6 0回を担当した。. 5 . 2 授業実践 本研究では,牧野. ( 2 0 1 0,2 0 1 , 1 2 0 1 3 c ) を参考に,英語が苦手な学生が. 学習意欲を高め,学習姿勢を構築するよう以下のように目標設定を行い, 授業をデザインした。. 取り組みの目標. ①. 英語が苦手な学生が,英語に興味を持ち,積極的に授業に参加する ようになる. ②. 英語が苦手な学生が,学習意欲を高め, I やればできる Jを実感す る. ③. 英語が苦手な学生が,英語力を向上させる. まず,事前調査として第 1回目の授業で自由記述式のアンケートを実施.
(6) 近畿大学法学. 第6 1巻第 2・3号. し,大学入学以前に受けた英語授業方法について学生に尋ね,その感想、も 書かせた。 それによると,それまでの英語授業は,. 2)教師が中心で,生徒は受け身,. 1) 文法学習が中心,. 3) 生徒同士の交流がない,. 4)英語. を話す機会が少ない,などの意見が聞かれた。 そこで, 学生たちの英語授 業のイメージを変えるために,指導方法を検討した。以下にその具体的な 指導内容を挙げる 。. 5 . 2. 1 不安軽減のための心理面的アプローチ 英語学習では学習者が自立していることが理想的であるが,習熟度の低 いクラスにおいては,教師の手助けが必要となる O 加賀田ら. ( 2 0 0 9)はス. ローラーナーの指導について,内なる声を察し,傾聴・受容・共感により 学習者と教師との信頼関係の構築を図るものとしている O 田遺. ( 2 0 0 3 )は ,. 生徒にとって教師はよき支援者であるとの感情が生じるような関係づくり を強調している O そのような関係の構築には励ましの言葉だけではなく, 学習者の心を聞かせる仕掛けをすることも効果的である O そこで,まず学 生をニックネームで呼び,筆者に親近感を持たせることを試みた。そして, 提出物や小テストには学生が好むキャラクターのスタンプを押したり,ス テ ッカーを貼ったりすることで学生の取り組みを励ました。 また,課題に は「つぶやき欄」を設け,授業に対する意見や近況報告などを自由に書か せ,返却時には筆者がそれに返信することで,授業以外のコミュニケー ションの場を作った。 さらに, I 間違 L可から学ぶ」をクラスのルールとし, わからないことはいつでも質問できるよう筆者は常に教室を回り積極的に 声をかけ,学生とのコミュニケーションを図った。 クラスメートとの協同学習は,意見の交換や協力により仲間意識が生ま れ,英語学習の楽しさを共有できる O また,教えることは学ぶことであり, 同時に自信にもつながる O 従って,授業では毎週グループワークを取り入.
(7) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み れ,仲間と 一緒に学ぶ機会を作った。間違うことに対する不安軽減のため, 学生を当てる場合も,個人ではなくグループとし,問題の解答時にも互い の答えを確認させ,グループで解答を出させた。. 5 . 2. 2 アクティビティを導入し,楽しく英語を学ぶ 授業には,学習内容に合わせ毎回アクティビティを取り入れた。 その目 的は,. 1)学生が積極的に授業に参加することを促す,. 構文などの定着を図る, の集中力を高める,. 2) 語葉の意味や. 3) 単調になりがちな授業にメリハリをつけ学生. 4)英語授業に楽しさを感じ学習意欲を高める,など. をあげるが, I アクティビティを通して英語に触れることで,授業がわか りやすくなり,学生が自己の成長を実感する 」 ことを第一の目的とした。 リメディアル教育対象クラスにおいてアクティビティを行うことは,. I 遊. んでいる」ととらえられがちであるが,学習目標を明確にし,それに向け て学生を積極的に授業に参加させることで,学習効果に期待できる(牧野,. 2 0 1 3 a;牧野ら, 2 0 1 3 )。本研究における授業でも,他のクラスと同様に, 学生を文法学習やリーディングなどに取り組ませた。 その場合,学生の集 中力などを考慮、し, 9 0分をいくつかのパートに分け,ウォーミングアップ, 課題に集中する時間,アクティビティを行う時間など,その日の学習の テーマに応じて授業デザインした(牧野, 2 0 1 3 a )。 とりわけスポーツ学生 は,競争することに興味を持つ傾向があるため(牧野, 2 0 1 0) ,個人やグ ループ対抗で競いながら英語を学ぶというアクティビティを多く取り入れ た。筆者の考案したリメディアル教育対象の学生に向けたアクティビティ は多数あるが,紙面の都合上全てを紹介することはできない。従って,本 節では学習テーマ別に数例を紹介する O.
(8) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. (1)語葉 英語が苦手な学生は簡単な単語でもローマ字読みをする O 従って,まず 教師が正しい発音を聞かせ,それをリピートさせることから始める O 正し い発音で読めるようになれば,辞書で意味を調べさせるが,なかなか覚え ようとしな ~ì 。. そこで,. グループの中で単語ゲームを行う O まず,. ゲットとする単語を 5語程度選ぶ。グループで 1名は英語,. ター. もう 1名は意. 味を,“Readyg o . " で同時に発話する O この場合事前にどれを選ぶかを相 談していなし 1。偶然に英語と意味が合った場合は発話者それぞれに 1ポイ ント入り,別の単語であればポイントは入らない。 クラスで,ポイント数 が最も高い学生が勝ちとなる O これを何度も繰り返すことにより,英語と 意味が一致し,楽しく自然に語葉の意味を覚える O ( 2 ) 英語構文. 英語構文については,解説とともに例文をアクティビティで暗記させる ことが効果的と考えられる O 牧野 ( 2 0 1 0a ) では,. その一例として,. タイ. マーゲームを紹介した。一通りの文法解説が終わった後,まず学生を 4 -. 5人のグループに分け,円になって立たせる. O. ぺンをバトンとし,文法解. 説に使用した例文を発話すると隣の学生にぺンを回して~. i. くO 次の学生も. 同じように発話しぺンを回し,ぺンが回ってくれば例文を発話する O 教員 はタイマーを 4 0秒にセットし,アラームがなった時点でぺンを持っていた 学生が 1ポイント得る O これを,例文を変えて数回行い,ポイント数が最 も高い学生がチャンピオンとなり,クラスメートの前で英語を発表したり 次の問題を解答したりする O 実際これはチャンピオンとは言えないが,教 育的に「英語を学ぶ機会を得る」と学生には理解させ,ゲームを行うこと で英語力を向上させるとする O このゲームでは,ぺンが回ってくれば何度 も同じ文を発話するので,短時間で例文を暗記することができ,ゲーム毎 に文を変えることにより,ターゲットの英語構文の理解を深めることがで.
(9) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み きる O ( 3 ) 英作文. 習熟度の低い学生にとって,英作文は難易度が高 L、 。 そこでグループ ワークでアイデアを出しながら,教科書の英文を参考に英作させる O その 場合,主語を学生がよく知っている人物,例えば自分たちが尊敬するス ポーツ選手や映画のヒーローなどと指示すれば,非常に興味を持って文章 を考える O その主語にあった内容の英文を書くこともあれば,自分たちの オリジナルになることもある O それをクラスメートの前で発表させると, スピーキングの練習になり,主語がよく知る人物であればクラスメートも 興味を持って英語に耳を傾ける O さらに,チームで決められた時間内にど れだけ多く英作文ができるかを競わせると,学生は大いに集中して課題に 取り組む。 ( 4 ) リスニング. 2 0 1 2b ) では, 牧野 (. リスニングのウォーミングアップとして洋楽を聞. かせたところ,学生のリスニングに対する苦手意識が軽減された。 そして 洋楽に興味を持ち,それを聞くことにより,英語を聞こうという意欲が向 上し,. リスニング力が向上するという結果を得た。 教材の会話やナレー. ションといった英語には興味を示さない学生が,英語の歌には熱心に耳を 傾け,歌詞を聞き取ろうとしたことより,洋楽は意欲面でリスニングに非 常に有益な教材となり得る O そこで,筆者が作成したリスニングシート. 0 1 2 b参照) を使用し,どのチームが一番たくさん英語の歌調を聞 (牧野, 2 き取ったかをチーム対抗で競う O. ( 5 ) スピーキング 人前で英語を話すことを恥ずかしがる学生は少なくないが,せっかく学 んだ英語を話すのであるから,. i 誰かに何かを伝えたい J ,また「聞きたい」. といったコミュニケーションを目的としたスピーキング活動にしたい。 そ.
(10) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. の一例として, Yes/ Noクイズを挙げる 。例えば,その日の学習内容が比. i k ehamburgersb e t t e rthans a n d w i c h e s . " のように, 較級であれば,“ Il 下線部に自分の好きなものを書いて英文を作る O ただし,それは本当のこ とではなくても良し、。全員が文章を作れば,一人ずつ自分の英文を発表し, クラスメートはそれを聞いて,本当だと思えば 0,嘘だと思えば ×をノー トに書く. O. 全員の発表が終わった時点で正誤を確認し,正解数が最も多い. 学生の勝ちになる O この場合,発表者はクラス全員に大きな声で伝えなけ ればならず,聞き手もしっかり発表者の英語に耳を傾けなければ解答でき な し 1。 また,このアクティビティは,個人の自己紹介になるので,何度も クイズを出題するうちに互いのことを知弘親近感を持つようになる O ま た全員で行うので,クラスのつながりを強めるのに効果的である O. ( 6 ) 異文化理解 英語が苦手でも外国に興味を持つ学生は少なくはな~, 。 外国への興味は,. 学生の英語学習動機づけになる O 筆者は授業で, 自分の外国での体験を学 生に聞かせる O その場合,クイズ形式にし,学生が自分たちで答えを考え ることによって,より一層異文化理解を深めさせる O その一例であるが, 「 台湾のレストランで飲んだアイス烏龍茶はどのような味だったか。」と問 題を出し,. 1) 辛い,. する O 正解は. 2) 甘い,. 3) どろどろしている,と答えを三択に. 2)甘いであるが,そこから台湾の食文化について話が進み,. 学生たちは非常に興味深く筆者の話に聞き入る O. 5 . 2 . 3 英語を話す機会を増やす これまでの英語授業で受ける機会が少なかった英語発音やスピーチのト レーニングをシラパスに組み込み,英語を話すことに興味を持たせた。 前期に発音トレーニングを,後期にスピーチトレーニングをそれぞれ 6 回程度実施し,ともにカメラ付携帯電話を活用した。毎回のトレーニング.
(11) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み で,練習中に自身のパフォーマンスを友達に携帯電話で撮影してもらい, 映像を見ながら自分はどこがどのようにできていな L、かを分析させる O そ れをもとに,改善策を検討し,さらに練習する O 練習後その日の成果を確 認するために,再度パフォーマンスを携帯電話で撮影する O 練習前後の映 像を比較することで,学生は自身の発音やスピーチ技術の上達を確認し, 「やればできる」を実感する O これまでの英語授業で指導を受けたことが ない発音やスピーチのトレーニングについて,学生からは, I 新鮮な取り ,I 英語は文法だけを学ぶものではないとわかった。」と 組みであった。 J いった意見が聞かれた。. 5 . 2 . 4 学生指導 学生が授業に集中するよう,教室でのルールを以下のように取り決めた。 まず,授業内での飲食,私語,居眠り,授業に関係ないこと(落書き,他 科目の宿題など),携帯電話操作などは減点する O 注意の回数が増えるご とに減点は増加する O 携帯電話に関しては原則として授業中はかぱんから 出さないことを指示し,携帯電話を触っている場面を目撃した場合は本人 に通知せずに大幅に減点することも伝えた。また,. トイレに行くふりをし. て喫煙や電話をすることがないよう,授業中にトイレに行く場合は必ず筆 者に声をかけ,携帯電話・タバコを机の上に置いてから席を立つこととし. f こO 授業で居眠りが見られた場合は,学生を起こすことを徹底し,私語も止 むまで注意した。欠席が多い学生には授業後に面談を行い,授業を休んだ 理由を尋ね,今後どのようにすべきかを話し合った。 学生は学業とクラブ活動を両立するため,体力的に疲れた様子を見せる ことがあった。 さらに,スポーツの成績が伸び悩む,あるいは,先輩学生 との関係などで悩みを持つことも少なくなかった。 そのような場合は,学.
(12) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 生から筆者に相談が持ちかけられることがあり,また,元気がない学生に は筆者のほうから声をかけ,時間の許す限り学生の話を聞き,アド、バイス を与えた。. 5 . 3 分析 本研究では,牧野. ( 2 0 1 3 c ) を参考に,まず,自己効力感と英語に対する. 好感度の変化を調べるため ついては,. 4月と 1 2月にそれぞれを測定した。英語力に. 4月と 1 2月に市販の TOEICB r i d g e問題集を使用して事前・事. 後テストを行った。 それらの結果を量的に分析する O. 6 .結 果 6 . 1 英語に対する好感度 英語に対する好感度を測るため, について,. 4月と 1 2月に, I 英語が好きである 」. リッカートスケール 5件法 (5 :大変そう思う > 1 まったく. そう思わな~ , )で回答させた。結果を表. 1に示す。 4月と 1 2月を比較する. と,英語に対する好感度が上昇したため,ノンパラメトリック検定の W ilcoxon の符号順位検定で分析した。 その結果, Z= -3 . 5 8 3,p<. 0 1となり,これ らの差は 5%水準で有意であり,学生の英語に対する好感度が高まったこ とがわかった。. 表 平均値. 4月. 2 . 4. 1 2月. 3 . 7. 1 英語に対する好感度記述統計量 最小値. 最大値. 標準誤差. . 2 5 8 . 18 0. n=2 3 標準偏差. 1 .2 3 7 . 8 6 4.
(13) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み. 6 . 2 自己効力感測定 自己効力感の測定は,松沼 ( 2 0 0 6 ) の英語自己効力感尺度を使用した。 松沼 ( 2 0 0 6 ) の英語自己効力感尺度は, P i n t r i c h& DeG r o o t( 19 9 0 )の 自己効力感尺度を複数名の英語教員で和訳し,英語の自己効力感を測定す るように作成されたものである O それを表 2に示す。尺度は 8項目からな り,本研究での評定は牧野 ( 2 0 1 3 c ) を参考に 5件法 (5 :非常にそう思う. >1. まったくそう思わない) とした。 自己効力感は,宮本ら ( 19 9 6 )を. 参考にスケールを得点化しその合計点を比較した。結果を表 3に示す。 4 月と 1 2月を比較すると,. 自己効力感が高まっているため,. ノンノ fラメト. i l c o x o nの符号順位検定で分析した。その結果, Z=4 . 2 0 0 , リック検定の W pく . 0 1となり,. これらの差は 5% 水準で有意であり,学生の英語自己効力. 感が向上したことを確認できた。. 表 2 英語自己効力感尺度 U 11よ 円 , 白 円 べ. , 門. A FhdnahU. 絹川崎. inxu. 私は英語が得意だと思う 私は英語授業で教えられたことを理解することができる 私は英語で良い成績をとることができると思う 私は英語の授業で与えられた課題に適切に答えることができると思う 私の英語の学力はすぐれていると思う 私は英語の学習内容についてたくさんのことを知っていると思う 私は英語の学習内容を習得できると思う 私は英語の勉強方法を知っていると思う. 表 3 英語に対する自己効力感記述統計量 平均値. 4月 1 2月. 1 6 . 3 9 2 5 . 0 9. 最小値. 最大値. 8. 3 0. 1 3. 3 5. 標準誤差. 1 .0 5 5 1 .3 0 1. n = 2 3 標準偏差. 5 . 0 6 1 6 . 23 7. 6 . 3 英語力の変化 2 0 1 3 c ) で使 本研究では,学生の英語力の伸びを検証するために,牧野 (.
(14) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 用した市販の TOEICBridge問題集付属の模擬試験を用いた。TOEICBridge を使用したのは,学生の英語力が低いため, TOEIC 模擬試験では,難易 度が高すぎると判断したからである O 試験は Listening5 0点 , Reading5 0 点,計1 0 0点である O しかし,問題用紙の part1の写真に鮮明でない箇所 があったため, part1を除外し, Listening は3 5点となった。従って,試 験は 8 5点満点となる O 事前テストは 4月に実施し,事後テストは同じ試験 問題を使用し, 1 2月に実施した。学生の英語力の変化を表 4に示す。 4月 と1 2月を比較すると, Listening ,Reading ,合計点,全てに伸びがみられ. ilcoxonの符号順位検定により た。 そこで,ノンパラメトリック検定の W 試験結果を分析した。その結果を表 5に示す。これより, L i s t e n i n g ,Reading , 合計点,全てにおいて 5% 水準で有意な伸びが確認された。従って,学生 の英語力が向上したことが示差される O. n=23. 表 4 英語テスト結果記述統計量 平均値. 最小値. 最大値. 標準誤差標準偏差. 4月. リスニング リーディング 合計点. 1 2. 5 2 1 8 . 3 9 3 0 . 9 1. 7 7 1 7. 1 9 3 0 4 6. 1 .2 9 6 1 .6 6 8. 1 2月. リスニング リーデイング 合計点. 1 6 . 5 2 2 1 .2 2 3 7. 7 4. 7 8 2 0. 2 2 4 3 6 0. 1 .5 1 7 1 .8 9 0. 3 . 11 7 6 . 2 1 4 8 . 0 0 0. . 6 5 0. . 8 1 7. 3 . 9 1 8 7. 2 7 4 9 . 0 6 7. 表 5 英語力の変化分析結果. Z 漸近有意確率 ( 両側). L i s t e n i n g. Reading. -3 . 10 8 . 0 0 2* *. -2 . 19 3 . 0 2 8 *. 合計点 3 . 2 4 2 . 0 0 1 * *. ヲ<. 0 5. 3 6 4. **pく . 0 1.
(15) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み. 7 .考 察 授業改善を行い,学生の学習意欲を向上させる英語授業方法を検討する ことにより,英語への好感度が高まり,自己効力感も向上した。 これは, 教師と学生の人間関係構築や,グループワークといった協同学習が功を奏 したのではないか。和気あいあいと学べる環境で,学生はクラスを居心地 の良い空間と感じたのであろう O そして,これまでの英語授業では間違い を恐れていたことも推測できるが,本授業では,わからなくても仲間と教 えあい励ましあうことができる O また,教師の励ましもあり,間違いに対 する不安が軽減されたかもしれなし 1。 さらに,授業にアクティビティを取 り入れたことで,苦手な英語の時間が楽しいものに変わっていったことも 考えられる O また,アクティビティを行う場合には,受け身ではなく自主 的な授業参加が求められる O アクティビティを通して積極的に授業に参加 することで,自分が今何を学んでいるかを理解するとともに,授業の理解 度が深まり,授業が進むにつれ学生が自己の成長を実感したのであろう O そして,これまでの授業では,英語を話す機会がほとんどなかったが,授 業で英語を多く話したことから,. I 新鮮な取り組みであった。J ,I 英語は文. 法だけを学ぶものではないとわかった。 」という意見が聞かれた。 訳読や 文法学習ではない,これまでとは違ったアプローチを行うことで英語学習 に興味を持つようになったことも考えられる O 英語に好感を持つようにな り , I やればできる」を実感することにより,学習意欲が向上し,英語力 を高めたのではないか。.
(16) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 8 . おわりに 学力試験を課さない入試制度により,今後も英語が苦手な学生が大学に 入学してくることが考えられる O そのような学生の授業は,教師中心では なく,学生を主役にするような授業デザインを行うことにより,学生の学 習意欲を高め,積極的に授業に参加させることが可能となるであろう O そ のためには,英語が苦手な学生の指導に対する教師の意欲と情熱が不可欠 だと考える O 英語が苦手な学生をやる気にさせるには,充実したカリキュ ラムとともに,大学における教師教育が今後の課題となるのではないか。 英語リメディアル教育には,英語学習に不安を持つ学生に対する心理面で のアプローチ方法や,英語学習に興味を持たせる指導法を熟知している教 員が携わることが望まし~ ,。そのためには,大学においても,. I 教員の自. ,あるいは, I 指導力を向上させる」ための教員研修 己省察の機会となる J やワークショップなどの開催が必要であろう O 学生を変えるためには,教 師自身が自己の指導や態度を振り返ることから始めなければならないと考 える O. 参考文献. Bandura,A . :S e l f e f f i c a c y :Towardau n i f y i n gt h e o r yo fb e h a v i o r a lc h a n g e . P s y c h o l o g i c a lReview,1 9 7 7,vol .8 4,p. 19 1 2 1 5. P i n t r i c h,P .R .andDeGrootE .V.:Motivationalands e l f r e g u l a t e dl e a r n i n g componentso fc l a s s r o o macademicperformance,Journalo fE d u c a t i o n a l Psychology,1 9 9 0,v ol .8 2,p . 3 0 6 3 1 4. 岡田圭子,嶋林昭治:英語を苦手とする学生の動機づけと指導法,北海道東海大. 0 0 0,第 1 3号 , p. 111 . 学教育開発センタ一所報, 2 加賀田哲也,小磯かをる,前田和彦:英語学習についての調査研究一大学生を対 象に一,大阪商業大学論集, 2 0 0 7,第 1 4 4号 , p. 13 3 2 . 加賀田哲也他:スローラーナーの実態と指導について考える, JACET関西支部.
(17) 英語リメディアル教育対象クラスにおける授業改善の試み. 2 0 0 9年度秋季大会 コロキアム資料, 2 0 0 9 . 清田洋一:リメディアル教育における自尊感情と英語学習動機,. リメディアル教. 育研究, 2 0 1 0,第 5巻第 l号 , p . 3 7 4 3 . 酒井志延,中西千春,久村研,清田洋一,山内真理,問中和歌江,合田美子,河 内山晶子,森永弘司,浅野亨三,城一道子:大学生の英語学習の意識格差に ついての研究,. リメディアル教育研究, 2 0 1 0,第 5巻第 1号 , p. 9 2 0 .. 雑賀雄策:熊野高専第二学年にみる英語嫌いの実態と対策について,熊野工業高. 9 9 0,第 7号 , p . 6 5 7 6 . 等専門学校紀要, 1 佐野正之:はじめてのアクション・リサーチ,大修館書庖, 2 0 0 5 . 田這義隆:無気力な学生に L、かに授業参加を促すか,近畿大学語学教育部紀要,. 2 0 0 3,第 2巻第 2号 , p. 11 3 1 3 0 . 辻野孝:リメディアル教育における eーラーニングの可能性,京都光華女子大学短 期大学部研究紀要, 2 0 0 9,第 4 7号 , p . 1 6 3 1 7 4 . 牧野員貴:英語苦手意識を克服させる授業デザインースポーツ学生を対象として 一,近畿大学英語研究会紀要, 2 0 1 0,第 6号 , p . 1 2 5 1 3 8 . 牧野員貴:スポーツ推薦入学生クラスにおけるアクション・リサーチ. 授業改善. 0 11,第 7号 , p . 8 7 9 8 . による学習姿勢の変化一,近畿大学英語研究会紀要, 2 牧野異貴:リメディアル教育対象クラスにおける英語絵本読書の実践報告一読書 意欲と語葉に注目して. ,近畿大学教養・外国語教育センタ一紀要(外国語. 編 ) , 2 01 2a,第 2巻 2号 , p . 2 8 1 2 9 3 . 牧野異貴:英語リスニングにおける洋楽聞き取りの効果検証 持つ大学生を対象として一,. 英語に苦手意識を. リメディアル教育研究, 2 0 1 2 b,第 7巻第 2号 ,. p . 7 9 8 9 . 牧野員貴:携帯電話の動画撮影機能を使った英語発音トレーニングの効果検証 英語が苦手な大学生の英語発音に対する意識と自己効力感を高めるために. ,. LET関西支部研究集録, 2 0 1 3 a,第 1 4号 , p. 6 3 71 . 牧野員貴:英語スピーチにおける協同学習の有効性一 リメディアル教育を必要と する大学生を対象として. ,近畿大学教養 ・外国語教育センタ一紀要.外国語. 0 1 3 b,第 4巻第 1号 , 9 9 1 1 6 . 編 , 2 牧野員貴:英語が苦手な大学生の自己効力感を高める授業づくり,. 0 1 3 c,第 8巻 1号 , p. 17 2 1 8 0 . 教育研究, 2 牧野異貴・石井研司・鈴木政浩・平野順也:英語リメディアル教育. リメディアル 私はこう考. える一学習意欲,楽しさの要因,足場作り,そして学力向上一, リメディア ル教育研究, 2 0 1 3,第 8巻 1号 , p. 18 1 1 8 7 . 松沼光泰:英語自己効力感 ( ESE) 尺度の作成,早稲田大学大学院教育学研究科 紀要別冊, 2 0 0 6 .第 1 4巻第 l号 , p . 8 9 9 7 . 宮本正一,今井由紀:自己目標と自己評価による自己効力感の増大,岐阜大学教 科教育学研究, 1 9 9 6,第 4号 , p . 2 0 3 0 .. 3 6 7.
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