• 検索結果がありません。

子どもに対する親の認知と対処行動及び虐待的行為の関連の検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "子どもに対する親の認知と対処行動及び虐待的行為の関連の検討"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)子どもに対する親の認知と対処行動及び虐待的行為の関連の検討                           学校教育研究科 学校教育学専攻                                   臨床心理学コース.                                  学籍番号 M090641                                    氏名 橋野 聡 【問題】近年,子どもの養育に関わる問題が社会の注  の困難さへの対処行動(以下,対処行動)」といった個人 目を集めている.児童虐待は,子どもに将来的に精神  内変数を決定し,それらが「育児ストレス」の生成に 発達の歪みや身体症状に影響を与える(西澤1994),そ  影響を及ぼすといったr先行要因→認知的要因(対処行. のため,虐待問題の解決は社会的にきわめて重要な問   動)→育児ストレス」という因果関係モデルが成り立つ 題であり,早期の支援と適切なケアが求められている.  ことを仮説とし、そのようにして生成されたr育児ス.  虐待の生起においては親自身が抱える問題に注目す   トレス」が「虐待的行為」に及ぼす影響を検討した. べきであり(本間2002),さらに児童虐待の加害者の要  Fi読皿eに示した因果関係モデルを構築し,共分散構造. 因の中でも最も注目すべきは「認知の歪み」であると   分析(豊田1992)によって因果関係の検討を行った. 指摘されている(坂井2002).そのため虐待発生のメカ   峻用尺度】本来感伊藤・児玉(2005a)の7項目/育. ニズムを考える上で,子どもに対する親の認知的特徴  児ストレス水野(1998)の5項目/ソーシャルサポー をとらえることは大変重要である..    ト田中(1997)の6項自/夫婦関係笠井・河原・杉本.  中谷・中谷(2006)は,「虐待的行為」に影響を及ぼす  (2006)の16項目/被養育態度 染谷・高橋・門脇・. 母親の認知特性は,母親のr育児ストレス」からもた   Reist・Ta㎎(ユ996)のEMBU尺度(養育体験認知に関する らされる被害的認知であること,また「育児ストレス」   自己記入式調査票)37項目/教師との関わり経験中. は認知のゆがみをもたらすだけでなく,r虐待的行為」  井・庄司(2009)の24項目/子どもの世話経験寺見・ に直接正の影響を及ぼすことを明らかにした..   別府・西垣・山田・水野・金田・南(2008)の成育経験.  しかし,中谷・中谷(2006)においては「育児ストレ  尺度の子どもの世話因子3項目/子どもの反抗に対す. ス」が認知的要因を生じさせる先行要因であるという   る親の認知(親の認知)中谷・中谷(2006)の23項目/. 晴児ストレス→認知的要因→虐待的行為」という因  虐待的行為 中谷・本城・村瀬・金子(2007)の13項目 果関係モデルが検討されているが,これ以外を模索す  /対処行動(育児の困難さへの対処行動)尾関(王993). る試みとして,本研究では心理的ストレス理論  の14項目/フェイスシート項目 年齢、最終学歴、就 (Lazams&Folkman1984)の枠組みに基づき,咽人  業状況、同居家族構成、子どもの人数・性別・年齢、 的要因」やr環境的要因」といった先行要因が,r子ど  経済状況 もの反抗に対する親の認知(以下,親の認知)」と「育児    【方法】兵庫県内の私立幼稚園3園に通う3歳から5.              歳の子を持つ両親865組 。’. F鰯鰍雄霧醐    鰯. 1国国 教師との関わり経験. 蔦の篶[/. 子どもの蹴こ. 対す醐鰯知. 彪慕  \        1730名に協力を依頼した.      、.      1       質問紙は2010年7月に担任      :       から園児を通して各家庭へ. 被害的認知 否定的認知. ⇒育児ス1レー⇒匹. 肯定的認知. 筒に,さらに世帯ごとに大封 筒に厳封していただき,回収. ソーシャルサポート. 夫婦関係. 配布し,父親母親を別に小封. @〔重コ:…一一一一一一一一L一一1. 箱もしくは園児を介して回.                  1心理的ストレス理論の枠組み  .. 収するという方法をとった.. Fig皿e先行要因・認知的要因・対処行動が育児ストレスに、. 配布した用紙のうち758名.         そして虐待的行為に影響を及ぼす因果関係モデル. 一/30一.

(2) より回収がなされ(父親343名:回収率39.7%,母親. ては,母親において「情動焦点型コーピング」が「育. 415名:回収率48.o%),記入漏れなく回答した524. 児ストレス」を抑制していた.このことは,子どもの. 名(父親237名:回収数に対する有効回答率69,1%,母. 反抗に対する親としての適応の過程上「情動に関わる. 親287名:回収数に対する有効回答率69.2%)を最終的. 対処」を行いながら自分の関わり方や困難な状況を再. な分析に用いた.. 評価しよりよい関わり方を試行錯誤しながら形作って. 【結果・考察】はじめに使用する尺度すべてに対して. いっているという知見(坂上2003)を支持するもので. 探索的因子分析を,さらに尺度構造を検討するために. ある.このように,情動的な対処や援助は母親にとっ. 確認的因子分析を行い,因子構造の再検討や項目の削. て望ましい影響を与えることが示された.. 除等を行った.モデルの評価についての適合度指標と.  本研究において「育児ストレス」との関連は「被害. してはGFI,AGFI,CFI,RMSEAを用いた.各尺度. 的認知」よりも「否定的認知」のほうが強く,先行研. における指標の値はGFI=.985川.835,AGFI=.960川.814,. 究(中谷ら2006)とは異なる結果が得られた.このこと. CFI=.994川.920,RMSEA=.032∼.092であり,以降の分. は,「否定的認知」が強すぎると「育児ストレス」を一. 析に利用しても差し支えないと判断した.. 層促進し,さらにそれがr虐待的行為」に結びっくな.  因果関係モデルの分析にあたっては,父親と母親に. どの悪影響を与えることを示している.ただ,育児を. おける多母集団同時分析を行い,父親と母親間で潜在. する上でr否定的認知」が生じることは不可避である. 変数間について同じ構造を仮定するモデル(配置不変. のかもしれない.それは、育児をすることによって制. モデル,適合度指標:GFI=.588,AGFI=.571,CFI=.780,. 約感が生じるなどの困難を乗り越えて,親となること. RMS瓦A=.034)を採択した.続いて,モデルの妥当性. による成長や発達がさまざまな面で得られているとい. について検討した.父親においては,「対処行動」から. う知見(柏木・若松1994)からも考えられることである. r育児ストレス」へのすべてのパスが有意でなく,就. が,子どもに対する否定的認知は親への悪影響をおよ. 業している父親の育児ストレスの発生(抑制)機序を説. ぼすだけでなく,好ましい影響をも与えている可能性. 明するものとしては不十分であり,本研究の因果関係. があることについてはさらなる検討が必要である.. モデルが妥当であったとは言い難い結果となった.一.  また本研究において,著しく高い育児ストレスは虐. 方,母親においては,「親の認知」「対処行動」から「育. 待的行為につながっていた.本研究では,情動焦点型. 児ストレス」への有意なパスがいくつか存在し,モデ. コーピングを増やし,否定的認知を和らげることで,. ルとしても適合を示していたことから,ある程度のモ. 育児ストレスを低減させることができることを示して. デルの妥当性が確認された.. おり,今後臨床上における介入の際に留意する点とし.  父親,母親両方において,「本来感」が「否定的認知」. て生かすことができるものと考えられる.. を低め,r情動焦点型コーピング」を高めており,それ. 【今後検討すべき課題】本研究において,「虐待的行. らを介して「育児ストレス」を低減させていた.本研. 為」など対象者によって回答に著しい抵抗が生じるこ. 究においては,「本来感」に正の影響を及ぼす要因とし. とが予測される項目があり,現状とは歪められた結果. て,父親において「親の情緒的温かさ」,父親母親両方. が得られていると想定されること,また回収率が低い. においてr教師との肯定的経験」が見出されたが,虐. ことなどを考慮すると,結果については慎重な解釈が. 待防止の観拒でこの「本来感」を高める働きかけが欠. 必要である、最後に,虐待に至る親は極端な認知を持. かせないと考えられるため,このr本来感」を高める. っているかどうか,親の」認知や対処行動の時間による. 他の要因についての検討が今後必要である.. 変化は充分に考えられることを考慮すると,臨床群と.  「夫婦関係」や「ソーシャルサポート」に関しては. の比較や縦断的な調査などを含めた研究デザインの工. 日々の苦労をねぎらうといった情緒的な支援が,子ど. 夫が,より深い知見を得るには必要であると思われる.. もに対する晴定的認知を高め,r否定的認知」やr被.           (主任指導教員  市井 雅哉). 害的認知」を抑制していた.またr対処行動」につい.           (指導教員    市井 雅哉). 131.

(3)

参照

関連したドキュメント

学生部と保健管理センターは,1月13日に,医療技術短 期大学部 (鶴間) で本年も,エイズとその感染予防に関す

主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開

 

層の項目 MaaS 提供にあたっての目的 データ連携を行う上でのルール MaaS に関連するプレイヤー ビジネスとしての MaaS MaaS

あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ

「海洋の管理」を主たる目的として、海洋に関する人間の活動を律する原則へ転換したと

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

※ 本欄を入力して報告すること により、 「項番 14 」のマスター B/L番号の積荷情報との関