子どもに対する親の認知と対処行動及び虐待的行為の関連の検討
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(2) より回収がなされ(父親343名:回収率39.7%,母親. ては,母親において「情動焦点型コーピング」が「育. 415名:回収率48.o%),記入漏れなく回答した524. 児ストレス」を抑制していた.このことは,子どもの. 名(父親237名:回収数に対する有効回答率69,1%,母. 反抗に対する親としての適応の過程上「情動に関わる. 親287名:回収数に対する有効回答率69.2%)を最終的. 対処」を行いながら自分の関わり方や困難な状況を再. な分析に用いた.. 評価しよりよい関わり方を試行錯誤しながら形作って. 【結果・考察】はじめに使用する尺度すべてに対して. いっているという知見(坂上2003)を支持するもので. 探索的因子分析を,さらに尺度構造を検討するために. ある.このように,情動的な対処や援助は母親にとっ. 確認的因子分析を行い,因子構造の再検討や項目の削. て望ましい影響を与えることが示された.. 除等を行った.モデルの評価についての適合度指標と. 本研究において「育児ストレス」との関連は「被害. してはGFI,AGFI,CFI,RMSEAを用いた.各尺度. 的認知」よりも「否定的認知」のほうが強く,先行研. における指標の値はGFI=.985川.835,AGFI=.960川.814,. 究(中谷ら2006)とは異なる結果が得られた.このこと. CFI=.994川.920,RMSEA=.032∼.092であり,以降の分. は,「否定的認知」が強すぎると「育児ストレス」を一. 析に利用しても差し支えないと判断した.. 層促進し,さらにそれがr虐待的行為」に結びっくな. 因果関係モデルの分析にあたっては,父親と母親に. どの悪影響を与えることを示している.ただ,育児を. おける多母集団同時分析を行い,父親と母親間で潜在. する上でr否定的認知」が生じることは不可避である. 変数間について同じ構造を仮定するモデル(配置不変. のかもしれない.それは、育児をすることによって制. モデル,適合度指標:GFI=.588,AGFI=.571,CFI=.780,. 約感が生じるなどの困難を乗り越えて,親となること. RMS瓦A=.034)を採択した.続いて,モデルの妥当性. による成長や発達がさまざまな面で得られているとい. について検討した.父親においては,「対処行動」から. う知見(柏木・若松1994)からも考えられることである. r育児ストレス」へのすべてのパスが有意でなく,就. が,子どもに対する否定的認知は親への悪影響をおよ. 業している父親の育児ストレスの発生(抑制)機序を説. ぼすだけでなく,好ましい影響をも与えている可能性. 明するものとしては不十分であり,本研究の因果関係. があることについてはさらなる検討が必要である.. モデルが妥当であったとは言い難い結果となった.一. また本研究において,著しく高い育児ストレスは虐. 方,母親においては,「親の認知」「対処行動」から「育. 待的行為につながっていた.本研究では,情動焦点型. 児ストレス」への有意なパスがいくつか存在し,モデ. コーピングを増やし,否定的認知を和らげることで,. ルとしても適合を示していたことから,ある程度のモ. 育児ストレスを低減させることができることを示して. デルの妥当性が確認された.. おり,今後臨床上における介入の際に留意する点とし. 父親,母親両方において,「本来感」が「否定的認知」. て生かすことができるものと考えられる.. を低め,r情動焦点型コーピング」を高めており,それ. 【今後検討すべき課題】本研究において,「虐待的行. らを介して「育児ストレス」を低減させていた.本研. 為」など対象者によって回答に著しい抵抗が生じるこ. 究においては,「本来感」に正の影響を及ぼす要因とし. とが予測される項目があり,現状とは歪められた結果. て,父親において「親の情緒的温かさ」,父親母親両方. が得られていると想定されること,また回収率が低い. においてr教師との肯定的経験」が見出されたが,虐. ことなどを考慮すると,結果については慎重な解釈が. 待防止の観拒でこの「本来感」を高める働きかけが欠. 必要である、最後に,虐待に至る親は極端な認知を持. かせないと考えられるため,このr本来感」を高める. っているかどうか,親の」認知や対処行動の時間による. 他の要因についての検討が今後必要である.. 変化は充分に考えられることを考慮すると,臨床群と. 「夫婦関係」や「ソーシャルサポート」に関しては. の比較や縦断的な調査などを含めた研究デザインの工. 日々の苦労をねぎらうといった情緒的な支援が,子ど. 夫が,より深い知見を得るには必要であると思われる.. もに対する晴定的認知を高め,r否定的認知」やr被. (主任指導教員 市井 雅哉). 害的認知」を抑制していた.またr対処行動」につい. (指導教員 市井 雅哉). 131.
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