ドイツにおける解除制度の発展に関する考察 : 催告を中心として(3)
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(2) 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). 62 (62). 1882 年 10 月の第 124 回会議から部分草案 22. についてヴィントシャイトは,部分草案 19 号. 号 3 条が議題となった.まず,1 文は給付の全. 「契約 の 強化手段」11 条8)で 次 の よ う な 提案. 部不能の場合に解除権の行使を認めているが,. を行っている9).「解除の意思表示がされると,. 第一委員会もこれを承認した.給付の全部不能. 契約当事者は,あたかも契約が締結されなかっ. の場合,債権者(解除権者)にとって給付が無. たかのような状態にする義務を負う.これにつ. 4). 利益になることを理由としている .2 文では. いて瑕疵担保解除の規定が準用されている.契. 給付の部分不能の場合も解除権の行使を認めて. 約によって生じる効果は,解除条件の法に従い. いた.この点が問題となって様々な提案が出さ. 停止する.また,疑わしい場合,契約当事者間. れたが,最終的には給付可能な部分では債権者. で契約の履行のためになされた法律行為も,契. (解除権者)にとって無益になることを理由と. 約を解除する解除条件の下でなされたものとみ. して解除権の行使が認められた5).. なされる.」.. し か し,第 125 回会議 で は,部分草案 22 号. まず,提案の第一文では,解除は,当事者間. 3 条に対して次のような提案がなされた.す. の債務法上の法定関係を考慮して契約が締結さ. な わ ち,部分草案 22 号 3 条 は,解除 に お い. れなかったかのように遡る(rückwärts)と見. て 既 に 発生 し て い る 損害 に 関 す る 損害賠償. なされる,というのがその意義である.そして,. 請求権 と 並存 す る も の と し て 規定 さ れ て い. それは,解除権の本質および当事者の通常の意. た.第一委員会 は,こ の 並存関係 に 対 し て,. 思にも合致するとの考慮の下で承認された10).. 一 般 ド イ ツ 商 法 典( Allgemeines Deutsches. ここでは,解除の意思表示は,債務上の法定関. Handelsgesetzbuch,以下, 「ADHGB」とする. ). 係のみにかかわる.そこで,解除の意思表示に. 354 条,355 条 の よ う に,債権者(解除権者). よる物権的効力の否定が,取引の安全を考慮し. に損害賠償を請求するか,あるいは,解除を行. て決定され,解除の法的効果を解除条件的構成. 使するかの二者択一の選択権を与えるべきとの. にしようとする提案の第三文(第四文)は拒絶. 提案がなされ,賛成を得るに至ったのである .. された11).このような議論を経て,債務法編集. その理由として議事録(Protokolle)には次の. 委員会決議暫定集成 57 条は,「解除は,契約が. 6). 7). ような説明がある .部分草案の前提として, 「解除は損害填補の一つの手段であり,その手. 締結されなかったかのように契約当事者が権利 義務を有する,という効力を有する.」と定め. 段によって補われない損害賠償請求権を存続さ. られた12).. せるだけである.…しかし…,解除権と契約か. このような議事が進行すると,法定解除の効. ら生じる損害賠償請求権との間に内在的な矛盾. 果は,約定解除を前提として規定されているか. を認めなければならない.というのは,解除権. のように考えられる.実際,部分草案 22 号 4. は損害賠償請求権と対立するものであり,解除. 条の意思表示による解除に関して,4 月 21 日. 権が選択される場合,損害賠償に関するすべて. の決議の参照で十分であるとしている13).しか. の請求権が排除され,このようにして解除は,. し,この決議は,失権約款の留保に関するもの. 関係人をあたかも契約が締結されなかったかの. で あ り,債務法編集委員会決議暫定集成 54 条. ような状態にする….すなわち,せいぜい消極. は,解除権が留保されている場合は意思表示に. 的な契約利益に関する請求権と両立するのであ. よって解除が実行される旨の規定である14).. り,契約から生じる契約の履行請求権──現実. ところが,契約当事者双方が,「契約が締結. の履行,あるいは,損賠賠償による給付にかか. されなかったかのような権利を有し,義務を負. わらず──とは両立しないのである. 」 .. う.」と定めた部分草案 22 号 6 条では,異なる. この解除が損害賠償と両立しないという理由. 解除制度が念頭に置かれている.すなわち,部.
(3) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). (63). 63. 分草案 22 号 6 条 の 審議 で は,部分草案 20 号. ように当事者が相互に権利を有し義務を負う.. 30 条の参照が指示されているが15),これは瑕. とりわけ,各々の当事者が契約にしたがって与. 疵担保に関する規定である.議事録によれば,. えられる給付を請求できず,そして,受領され. 権利の瑕疵と物の瑕疵の区別をなくし,原則. た給付を相手方に返還する義務を相互に負うと. 規定として,契約当事者は,あたかも契約が締. いう効力を有する.. 結されなかったかのように権利を有し義務を負. ⑵ 受領した金銭は,受領の時からの利子とと. う,と規定することで一致している16).そして,. もに,他の目的物は,増加分及び全利益ともに. 債務法編集委員会決議暫定集成 87 条では, 「契. 返還される.正当な管理者の細心の注意を払っ. 約が瑕疵担保解除の結果として取り消されると. た利用で利益が生じ,また,悪化が回避された. き,契約当事者は,法律上異なる規定のない限. 限りにおいて,利益の不発生による,または,. り,契約が締結されなかったかのように権利を. 悪化による補償がなされる.. 17). 有し,義務を負う. 」と定めた .. ⑶ 利用により,返還物の義務者は,所有者に. このように,第一委員会は,債務不履行の効. 対する占有者の権利を有する.. 果として規定された部分草案 22 号の解除制度. ⑷ 受領者は,次の場合,目的物を返還するこ. に,約定解除及び瑕疵担保解除に関する規律を. とはできない.すなわち,受領者が故意,過失. 組み合わせた.そして,次のような第一草案が. の責任を負わないとき,彼に補償給付の責任は. 起草された18).. ないのである.. 第一草案 369 条. まず,要件面から検討すると,第一草案 369. ⑴ 双務契約において債務者の責めに帰すべき. 条 1 項 は,双務契約 に お い て,給付 が 債務者. 事由により給付が不能となったとき, 債権者は,. の責めに帰すべき理由により不能となる場合. 不履行による損害賠償を請求するか,契約を解. に,債権者に解除権を与えた.理由書(Motive). 除するかを選択することができる.給付が部分. では,「履行された給付が偶然の不能となると. 的に不能になったとき,不能を生じていない給. き,債権者のため反対給付からの解放が必然の. 付部分が債権者にとって何らの利益を有しない. 結果となる.債務者の責めに帰すべき不能によ. 場合のみ,債権者に解除権が与えられる.. り反対給付を拒絶する場合も同様である.さら. ⑵ 給付が債務者の遅滞により債権者に何らの. に一方で,債務者は,偶然の不能の場合として. 利益がなくなったかぎりで,243 条19)で示され. 生じた不能にあるとき,権利を有する.しか. た事案にも妥当する.. し,368 条の場合のような場合のみ債権者の法. ⑶ 解除に関しては,426 条ないし 431 条,433. 的地位に従う.債務者の負担行為(obliegende. 条の規定が準用される20).. Vertretung)は,他 の 形式 で 正当化 さ れ る.」 と述べており21),給付が債権者にとって無利益. 第一草案 426 条. になったときに解除を認める部分草案と理論的. ⑴ 契約締結者が契約により解除権を留保する. な基礎を同じくするものである.. 場合,権利者が他方に対して解除の意思表示を. 遅滞が給付の無利益性をもたらすかについ. したとき,解除がなされる.. ては,「普通法(gemeines Recht)の理論と実. ⑵ 意思表示は撤回することができない.. 践 に お い て,債権者 は,双務契約 の 際,遅滞 により債権者に何らの利益をもたらさないと. 第一草案 427 条. き,債務者の遅滞により契約を解除することが. ⑴ 解除は,あたかも契約が締結されなかった. できることについて承認していた….現在の立.
(4) 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). 64 (64). 法においても,フランス民法 1184 条だけでな. ることである.しかし,利益喪失は,現在のた. く,他でも債権者の解除権には遅滞を用いるよ. めに定める.というのは,法は現在の状況によっ. う に 定 め て い る(ADHGB354 条,355 条,ス. て不利に扱われる債権者を保護することを目的. イス民法 122 条,バイエルン草案 138 条,ドレ. とするからである.」と述べて23),これも,給. スデン草案 305 条) .たしかに,プロイセン法. 付が債権者にとって無利益になったことを根拠. は,ある面において,状況の変化,または,履. に解除権の行使を認めている.. 行の瑕疵により固有に形成される解除権の予定. 次 に,解除権 の 行使方法 と し て,第一草案. を一般的に行わなかった.すなわち,双務契約. 426 条は,相手方に対する意思表示が要件とさ. の際,他方当事者の遅滞により,給付が価値の. れ,この意思表示は撤回することができない,. 無いものとなり,契約を破棄する場合の面であ. としている.これは,部分草案 22 号 4 条と内. る.しかし,個別の規定を準用しているので. 容が同じである.. あ る(ALR. I 章 11 部 129 条,130 条,207 条,. 効果として,解除と損害賠償はいずれかを選. 938 条,1001 条) .草案においても,双務契約. 択するものとなっている.理由書では,部分草. の際,債権者に他の当事者の遅滞による契約を. 案は,「債権者の解除権を損害賠償請求権と同. 解除する権利を与えるが,絶対的なものではな. 列の選択のみで規定する.HGB(354 条,355. い( HGB354 条,355 条(筆 者 注;ADHGB) ;. 条)との一致において,損害賠償請求権は同列. 草案 361 条を参照せよ) .給付が遅滞により債. の解除権を排除する(スイス民法 122 条,124. 権者にとって利益を失わせるという条件に基づ. 条,バ イ エ ル ン 草案 138 条,ド レ ス デ ン 草案. く場合のみ,具体的に(in concreto)債権者の. 305 条;ALR. I 部 第 5 章 384 条,398 条,410. 利益によって解除権が与えられる(第 369 条 2. 条を参照せよ).解除と契約より生じた損害賠. 22). 項) . 」と述べて ,遅滞により給付が無利益に. 償請求は排斥するのである.というのは,解除. なることを肯定した.つまり,普通法(gemeines. は,関係者をあたかも契約がなかったかのよう. Recht) ,プロイセン一般ラント法(ALR)や. な状態に戻す(versetzen)べきだからである. ADHGB と同様の理由付けにより,遅滞によっ. (427 条).これとともに,履行利益の請求は合. て給付が無利益になることを理由とする解除を. 致しない.債権者の利益は選択権により守られ. 肯定したのである.. る.」と述べている24).つまり,「解除は,関係. 部分的不能を理由とする解除も認めている. 者をあたかも契約がなかったかのような状態に. が,理由書では, 「他方当事者の給付が責めに. 戻すべき」ことを理由として,損害賠償の並存. 帰すべき事情で部分的不能を生じたとき,とい. を認めないのである.. う条件に基づいて,契約の相手方に解除権が与. しかし,第一草案は,一般に解除の性質を,. えら れ る.と い うのは,遅滞は,給付の時期. 解除によって契約あるいはそれに基づく債権債. の見通しにおいて,部分的不能を含むからであ. 務関係が直接的・遡及的に消滅しない間接効果. る.つまり,部分的不能以外の場合は,問題の. 説の立場を採っていたとされる25).そうだとす. 関連において,同じく取り扱われるべきではな. ると,解除と損害賠償が選択的関係となる必要. いのである.理論と実践において,同権化(平. 性はないのである.. 等化)もまた何度も認められた(369 条 1 項 2. 部分草案では解除と損害賠償の並存が認めら. 文) .以下の両方の場合において,債権者は解. れていた.キューベルは,解除の目的である契. 除条件を有する.すなわち,給付が遅滞の結果. 約が締結されなかったような状態の回復は,簡. ないし給付の不能を生じていない部分では債権. 易な損害の填補の特殊な形態であるとしてい. 者にとって何らの利益を有しないことを証明す. る.このことを理由として解除と損害賠償の並.
(5) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). (65). 65. 存を認めているのである.これに対して,第一. にも内容的にも類似性を有することになった.. 草案では, 解除と損害賠償の並存が否定される.. 解除と損害賠償を選択的関係にすることになる. すなわち,契約が締結されなかったような状態. と,既に発生している損害を充分に填補できな. を回復することが解除の目的であり,契約が履. い場合が生じるのにもかかわらず,理由書が「債. 行されたならばあったであろう状態を目指すの. 権者の利益は選択権により守られる.」と述べ. が損害賠償(損害の填補)の目的と把握するの. ている27)のは,解除権を簡易に行使できるこ. である.このようにして,第一草案では,解除. とにすることによって,債権者(解除権者)が,. と損害賠償は債務不履行の効果の局面で相互に. そのような解除権の行使か,損害賠償の請求か,. 対立する関係になったのである.. を選択できることに念頭に置いたものと思われ. 一方で,解除と損害賠償との選択的関係を認. る.. めた ADHGB と同様にした理由は何であろう. 本稿の主題である催告については,第一草案. か.第一草案 427 条 1 項の前身である編集委員. の段階ではまだ要件として現れていない.第一. 会宛て編集原案 55 条(第一草案 427 条と同旨). 草案は,給付の無利益性を要件に解除権の行使. 26). では,次のような注釈がある . 「依然として. を認めている.第一草案 243 条で,債務者が,. 履行されない,というしばしばある事案では,. 既判力ある判決がなされた後,債権者に設定期. 解除 は,契約 が 崩壊 す る(zerfallen) ,契約 が. 間内に給付をなさなかったとき,240 条ないし. 締結されなかった,と見なされる.すなわち,. 242 条の規定が準用され,損害賠償等を請求す. 単に以前の状態が回復され,それに従って当事. ることができると規定されているが,これは,. 者は履行を要求することができず,履行を求め. 既判力ある判決の後での設定期間であり,また,. る場合でも抗弁が置かれ,時効にかかる利得返. 設定期間経過後は,損害賠償等が請求できるの. 還請求が問題とならずに契約が崩壊する,とい. みなので,解除権行使のための催告による設定. うように作用する. 」 「完全に履行がなされると. 期間ではない.したがって,第一草案では,解. き,各当事者が自己の給付に関する請求権を有. 除権行使のための催告という要件はないという. するようにして,以前の状態が回復される.債. ことになる.. 務法上 の 原状回復(restitutio in integrum)が. このように,第一草案の解除制度は,要件と. 問題となるのみである. 」 .. しては,無利益性をメルクマールとして,解除. この注釈から,第一草案 427 条 1 項は,既履. 権の行使を認めた.この点は,普通法の無利益. 行の場合は返還請求権の発生,未履行の場合は. 性を要件として例外的に解除を認めていたこと. 履行請求の否定, をその目的としている. キュー. と共通する.その一方で,解除と損害賠償は選. ベルの考えによると,解除の目的である契約が. 択的関係となり,解除は,契約が締結されなかっ. 締結されなかったような状態を回復という目的. たような状態を回復することが目的となり,ま. 達成の手段として,簡易な損害の填補の特殊な. た,損害を填補する手段から離れることになっ. 形態をその手段として理由付けている. しかし,. た.つまり,解除は,普通法の立法・学説の損. 既履行の場合の返還請求権が常に簡易な手段と. 害賠償によって解除したのと同様の効果をもた. はいえない.簡易さが現れるのは,未履行の場. らそうとする考えから乖離することになったの. 合である.そして,解除が一方的な意思表示に. である.この点において,ADHGB の解除制度. かからしめることになると,解除権行使が法的. に近づくことになった.しかし,その一方で,. 手段としての簡易さを増すのである. こうして,. 解除権行使の要件として,催告は必要とされず,. 第一草案の解除制度は,契約関係からの離脱を. あくまで無利益性を要件としているのみに過ぎ. 主な 目的 と す る ADHGB の解除制度と形式的. ない.第二草案で初めて催告(設定期間経過後.
(6) 66 (66). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). の解除)が要件として現れることになるが,そ. て,解除制度は,普通法における無利益性を要. のことについては⑶で検討する.. 件として例外的に解除を認めることとは決定. ⑶ 第二草案. 的に乖離することになった32).無利益性解除に. ⅰ ドイツ帝国司法庁(Reichsjustizamt)準備. とっては無利益性が本質的な要件であった.と. 委員会. いうのは,債権者(解除を望む者)の給付が無. ここでは,解除の効果についての規定であ. 利益であるとの証明を課して,給付が無利益で. る第一草案 427 条から旧債務法 346 条及び旧債. あるか否かを裁判所の司法的な判断を通じるこ. 28). 務法 347 条となる議論については,先行業績. とによって,解除の正当性を個別に判断するこ. に譲り,本稿では主に要件面の規定である第一. とを目的としていたからである.したがって,. 草案 369 条 か ら 旧債務法 325 条・326 条・327. 解除というのはあくまで例外的な法的手段であ. 条となった経緯について論じることにする.. ると把握されてきたのである.これに対して,. 第二草案は,第一草案を対象に審議が行われ. ADHGB では,実質的には遅滞のみを要件とし. たが,それに先立ち,まず,第一草案はドイツ. て,解除を認めたのである.そして,解除権行. 帝国司法庁(Reichsjustizamt)の 準備委員会. 使による債務者の不利益については,事前の通. で検討された.ここで,第一草案とは異なる特. 知を債権者(解除を望む者)に課すことによっ. 徴が示されることになった.. て回避することにした.司法庁修正案 369a 条. ドイツ帝国司法庁の準備委員会は,解除につ. では,遅滞の場合,設定期間経過後の解除が原. 29). いて次のような規定を設けた .. 則となり,無利益性解除は,「遅滞の結果,給 付が債権者にとって利益を有さないとき,期間. ドイツ帝国司法庁修正案 369a 条. を設定する必要はない.」として,補充的なも. 双務契約において債務者が遅滞にあるとき,. のとなった.. 債権者は,相当な期間を設定する権利を有す. 司法庁修正案 に よって,解除権 は,無利益性. る.その期間内に給付がなされない場合,債権. 解除から乖離するとともに,債権者(解除を望. 者は,不履行による損害賠償を請求するか,ま. む一方当事者)からの債務者遅滞の場合におけ. たは,契約を解除することができる.遅滞の結. る設定期間経過後の解除権の行使を認めること. 果, 給付が債権者にとって利益を有さないとき,. によって,ADHGB の解除制度に近づくことに. 期間を設定する必要はない.期間内に給付が部. なった33).. 分的に行われるに過ぎないとき,247 条 2 項及. ⅱ 第二委員会. び 369 条 1 項 2 文の規定が適用される.. 第二委員会では,司法庁修正案 369a 条と同様 な提案が第一草案 369 条 2 項に関連してなされ. この規定では,双務契約において債務者が遅. た.すなわち,以下のような提案である34).. 滞にあるとき, 債権者は相当な期間を設定して, その期間内に債務の履行がなかったならば,損. 提案 1. 害賠償か解除を行うことができるとしている.. 双務契約 に お い て 債務者 が 遅滞 に 陥った と. この規定が ADHGB354 ~ 356 条30)の解除権と. き,債権者は,債務者に対して,給付をさせる. 解除の際の事前の通知の必要性に倣ったもので. ための期間を設定することができる.期間内に. ある31).. 給付がなされない場合,債権者は,不履行によ. この債務者が遅滞にあるとき,債権者に期間. る損害賠償を請求するか,あるいは,契約を解. 設定 の 権限 を 与 え,期間経過後 は,損害賠償. 除することができる.契約の効果において,給. か解除を行うことができるとすることによっ. 付が債権者の利益にならない場合,期間を設定.
(7) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). (67). 67. する必要はない.期間内の給付が一部分のみし. る(247 条 1 項35)).こ の 権利 は,不履行 に よ. か生じない場合,247 条 2 項または 369 条 1 項. る損害賠償請求,あるいは,契約の解除のこと. 2 文を準用する.. である.これらは草案によれば債権者に与えら れる.243 条の場合は除外される.つまり,既. 提案 2. 判力ある判決がなされた後は,遅滞により給付. 債務者が遅滞の場合,債権者は,履行ならび. が債権者にとって利益がなくなった場合(247. に遅延損害賠償,あるいは,不履行による履行. 条 2 項)のみである.双務契約の場合も同様で. に代わる損害賠償を要求し,あるいは,契約を. ある(369 条 2 項).これに対して,提案 1 と 2. 解除することを選択することができる.. は,双務契約の場合,HGB(筆者注:ADHGB. 債権者が不履行による履行に代わる損害賠償. のこと)354 条ないし 356 条に関連して,他方. を要求し,あるいは,契約を解除する意思を有. 当事者が遅滞した場合,債権者に,設定した猶. する場合,債権者は,債務者にその旨を通知し,. 予期間が徒過した場合,不履行による損害賠償. その際,さらに遅れを取り戻すための相当な期. と解除の選択権を与える.提案 3 はさらに進ん. 間を設定しなければならない.給付は保持され. でいる.それは,債務者の過責(Verschulden). る(提案 1 のように) .. を要件(246 条36))とする遅滞の必要性を放棄 し,債務者による給付が責めに帰すべき状況で. 提案 3. の遅滞とされない場合も,債権者に解除権を維. 双務契約において,給付の時期が,361 条の. 持させた.提案 4 は,提案 3 の提案者に対して,. 明示的な方法によって定められていない場合,. 提案 3 の編集上の明確化を目的とした.すなわ. 債権者は,債務者に対して,威嚇(Androhung). ち,支払い期限になっている場合,まず,期間. とともに設定した期間に給付をなすことを決定. 設定が許されるべきである.」と述べている37).. することができる.債権者は,設定した期間内. すなわち,第一草案 369 条 2 項では,給付が遅. に給付の履行がない場合, もはや受領できない.. 滞によって無利益になったときは損害賠償がで. 給付が設定した期間内に履行されないときは,. きるのみだったのに対して(第一草案 243 条),. 361 条の規定を準用する.. 提案 1 と 2 は,債務者に遅滞があれば,債権者. 債務者の遅滞の結果,給付が,債権者に何ら. に,猶予期間を設定して,猶予期間の経過後,. 利益がない場合,債権者は,期間を設定するこ. 不履行による損害賠償と契約の解除の選択権を. となく契約を解除することができる.給付が一. 与えた.提案 3 と 4 は,さらに遅滞の場合に限. 部不能であること,または,一部だけでは債権. られず解除権の行使を認めたのである.. 者に何ら利益にならない場合も同様である.. そ し て,第二委員会 は,次 の こ と を 考慮 し た.すなわち,「草案は原則において,給付が,. 提案 1 ないし 3 の文言から明らかなように,. 遅滞により債権者に何ら利益を有さず,実行で. 第一草案 369 条とは異なり,債務者が遅滞にあ. きない場合のみ,遅滞による解除ができる.使. る場合,期間を設定して,その期間の経過後に. 用賃貸借,用益賃貸借(Pacht)(529 条),請. 契約を解除できるとしている.. 負契約(569 条)や 雇用契約(566 条)を 除外. ま ず,第二委員会 は,解除 を 債務者 が 過責. する.このため 369 条 2 項の規定は,主に売買. (Verschulden)を前提とした遅滞にある場合. および交換のみに意義を有する.しかし,それ. に認めた.その理由として, 「草案によれば,. は,売買の場合,不当に困難なものになる.と. 債権者 は,遅滞 の 場合,追完履行 と と も に 履. いうのは,金銭給付の場合,債権者に利益がな. 行遅滞による損害賠償を請求することができ. いということをほとんど言わせることはできな.
(8) 68 (68). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). いか ら で あ る.債務者にもう一度契約実現の. としない理由として,次の 3 点を挙げている.. 可能性を与える前に,既判力ある判決により. ①遅滞 は,定期売買(361 条),請負契約(569. 金銭未払いの債務者に対して勝訴を得させる. 条)と雇用契約の場合は要求されず,また,賃. ことを常に強要するのである.不当性は,特. 貸借と用益賃貸借(529 条)の場合は絶対的に. に,はじめから見込みのない場合が妥当するで. 要求されないこと40),②遅滞の必要性は,債務. あろう.例えば,土地の買主が,売買後まもな. (Verbindichkeit)から満足な給付を受けるも. く横柄であることが明らかになった場合であ. のとして,債権者が債務者にもはや要求するこ. る.そのような規定は,遅滞は債権者に解除権. とができず,債権者が,履行を引き受けなけれ. を与えず,つねに他が存在する,とする普通. ばならない遅滞の状況の場合のように,債務者. 法(gemeines Recht)の 原則 に 対 す る 一般人. に帰責性がない場合である.しかし,この場合,. の法認識(Rechtsbewusstsein)に適合しない.. 給付の権利が問題となるのではなく,反対給付. ALR(プロイセン一般ラント法)第一部第五. をすでに保持しているか,あるいは,すでに債. 章 369 条ないし 407 条も,売買の場合,他の観. 務者に委ねたままになっているかどうかが問題. 点が存在し,また,HGB354 条ないし 356 条の. となるのである.また,債権者への相当な給付. どこに特に重点が置かれたのかとも同じであ. で,債務者の責めに帰すことができない給付は,. る.これを通じて,その適用範囲は,本質的に. 指定した日時を逸し,また,遅れを生じるも. HGB を超えて,普通法の修正を充分に準備し. のでもない.解除権の行使は,当事者が契約を. たのであろう.伝統的な法の破壊,特に重大な. 締結したときの目的を達成(dienen)すること. 責任を負っていた以前の法発展の終了は問題と. ができない場合に認められるべきである41).③. ならず,今日の取引において時期にかなった履. 提案 3 の構造とともに双務契約を考慮すること. 行をすることが要請されるのである. 」を考慮. や,遅延した当事者の給付義務自体を適切な基. した38).. 準で認定するだけでなく,過小な実践的有利さ. これは,①第一草案では,給付の無利益を理. を生じさせない.すなわち,遅延した債務者が. 由として解除を認める普通法の立場を貫徹する. 過責に陥り,他方において,そのことについて. ことは不可能であり,使用・用益賃貸借契約,. の認識が明らかでない債権者を煩わしているか. 請負契約,雇用契約では例外が認められるこ. どうか,あるいは,債権者に期間を設定する権. と,②第一草案の規定は,売買・交換契約で意. 利があるかどうか,という厄介な問題の検査で. 味を有することになる.しかし,金銭給付の場. ある.これにより,紛争とその解決のための手. 合,債権者に利益がないということはほとんど. 続きによる煩雑さを避けられる.. なく,第一草案 243 条により,債権者は,既判. その他の点で,提案 3 は,当事者の意図や通. 力ある判決を得なければならないこと,③本来. 常取引の解釈を強調した.「当事者が,契約の. の領域を超えて適用される ADHGB によって,. 際,他方当事者が適切な時期に履行せず,設定. 普通法の修正が準備されている.これは,伝統. 期間に追完しない場合,各々の当事者は解除す. 的な法の破壊ではなく,今日の取引において. ることができるとする黙示の条項の下で双務契. 時期にかなった履行をすることが要請されるこ. 約が取り交わされた場合である.したがって,. と,を考慮している.. 解除は,一時的不能の他方当事者が,自己の債. 次に, 第二委員会は, 債務者の過責 (Verschulden). 務を一時的に解放される場合(237 条),特に. を前提とする遅滞を要件としない提案 3 について. 許されなければならない.売主は,…売買の目. 次のように述べている39).. 下の必要性に満足している買主に,契約の際,. 提案 3 が,必 ず しも遅滞を要件として必要. 不確定期限のままでいることを要求することは.
(9) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). (69). 69. できない.…それゆえに,提案 3 の問題は,実. 次に解除の効果が取り上げられた.ここでも. 践的で簡易な商法で達成することを主な利点と. 債務者の帰責性が問題となった.369 条 c 項(第. する取引の要請を考慮した. 」を理由として挙. 一草案では 369 条⑶項)として次のような提案. げている42).. がなされた46).. この提案 3 に対して,多数派は,①提案 3 の 法的根拠の適法性は未決定のままであり,債権. 提案 4. 者の権利を一方的に強調することや双務契約の. 369 条ないし 369b 条のおいて定められる解. 学問的統一性が十分に考慮されないこと,②提. 除権について,約定(契約)どおりの解除権発. 案者によって挙げられた類似性による正当化に. 生のために 426 条ないし 433 条の規定が準用さ. 43). は疑いがあること ,③提案 3 は,債務者に対. れる.. して不公平な困難さをもたらす.買主は,契約 を通じて権利を取得し,負担について過責とな. 提案 5(提案 4 に追加する). らない限り,この権利を行使することを正当化. 結果において債務者の責めに帰すべき事由が. できないことに由来する.提案 1 に適合した規. ないのに解除権を実行する場合,受領した反対. 定は,さらに双方の利害を公平に考慮する.解. 給付により,不当利得の補償に関する原理に. 除の可能性を通じて,債権者は負担を定められ. よってのみ債務者は責任を負う.. る.すなわち,躊躇を通じての利害が,少なく とも義務違反はないが,契約状態が,他方当事. 提案 6. 者にとって大きな経済的意味を有する場合,不. 361 条,369a 条 に お い て 定 め ら れ た 解除権. 十分な契約から解放することである.これは,. を,約定(契約)どおりの解除権のため,426. 過責に基づく懈怠の場合に正当化させる.しか. 条 な い し 431 条,433 条 の 規定,ま た は,第. し,361 条,243 条の場合を除き,債務者に過. 369a 条の場合においても,432 条47)の規定が. 責がなく,一時的に給付を妨げる責めに帰すべ. 準用される.債務者は,受領した反対給付によ. き状態がもはや存在しない場合(237 条,241. り,不当利得の補償に関する規定によってのみ. 44). 条) ,不法で不公平であること ,を重視した.. 責任を負う.. 特に③を重視した. 第二委員会は,これらを考慮して,最終的に. 第一草案 369 条⑶項とは以下の点が異なって. 提案 1 を採択した.第二委員会は,提案 3 の解. いる.まず,第一草案 369 条⑶項で準用されて. 除権の行使に債務者の遅滞という過責を必要と. いない第一草案 432 条が,提案 4 では準用され. しないということに対して,提案 1(多数派の. ている.提案 5 では,提案 4 に従いながら債務. 反論③)の「提案 1 に適合した規定は,さらに. 者に帰責性の無いときは不当利得法の適用に. 双方の利害を公平に考慮する.解除の可能性を. よって解決することにしている.提案 6 は,債. 通じて,債権者は負担を定められる.すなわち,. 務者の帰責性を問わず,債務者が受領した反対. 躊躇を通じての利害が,少なくとも義務違反は. 給付について不当利得法の適用を認めている.. ないが,契約状態が,他方当事者にとって大き. 第二委員会 は,提案 4 に 対 し て は,「432 条. な経済的意味を有する場合,不十分な契約から. は,期間指定を必要とすることなく,債権者に. 解放することである.これは,過責に基づく懈. 解除権が発生する場合に,間違いなく準用され. 怠の場合に正当化させる. 」という,当事者双. る.ここにおいて,債権者は,債務者に,履行. 方の公正の観点から,解除には,過責を前提と. か解除をするかの意思表示をする.債権者が債. 45). する遅滞が必要であるとの理解を採用した .. 務者に猶予期間(Nachfrist)を定めた場合も,.
(10) 70 (70). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). 同じく 432 条が準用される.履行を請求する債. された場合」,すなわち,債務者に過責がない. 権者の権利は,たしかに期間の経過を必要とす. 場合は,不当な困難となるのである50).. る.しかし,さらに不履行による損害賠償と解. 以上により,解除権の行使及び解除の効果に. 除の間で選択権がある.また,432 条は,債務. おいても,債務者の過責が問題となった51).. 者に,解除を選択することを望む債権者の意思. 最後に,解除権の行使における両当事者のイ. 表示を発生させる可能性を与える.同じく 361. ニシアティブについて述べる.. 条(369b 条)の場合もある.すなわち,定期. 債権者の設定した期間内に給付がなされない. 行為の際,債権者が,債務者に対して定めた期. 場合の法的効果をどうすべきかについて提案 3. 間が経過したとき,履行を請求する権利が失わ. (第 1 項 2 文)は,定期行為(361 条)に 関 す. れることである.432 条の準用において,債権. る規定を適用しようとした.提案 1 によれば,. 者に不履行による損害賠償請求権が与えられな. 債権者は,「不履行による損害賠償を請求する. い場合の言及がない.というのは,他方当事者. か,契約を解除する」権利が与えられるべきと. 48) に過責の負担がないからである. 」 として否. す る.こ れ に 関連 し て,期間 の 経過後,債権. 定した.提案 6 に対しては,第一草案と意見の. 者には以下のような権利を選択することができ. 一致した提案 4 に, 「債務者を受領した反対給. る.すなわち,履行ないし遅延した履行の賠償. 付により,不当利得の補償に関する規定のみに. を請求することである.提案 2 は期間指定の関. 従って責任を負わせようとする限りで逸脱す. 連において債権者の通知を必要とする.すなわ. る. 」として否定した.最終的に第二委員会は,. ち,期間の経過とともに,履行に代わる不履行. 両提案の中間である提案 5 を採用した.. による損害賠償か解除を選択することである.. 提案 5 を採用するにあたり第二委員会は,以. それとともに,ADHGB355 条に関連して,履. 下の点を考慮した. 「主に法感情と取引の要請が. 行請求の排除は,文言において,より明らかに. 問題となった.草案は,当事者に双務契約にお. 用いられるべきとする52).. いて解除を許容し,要件とすることができる場. 第二委員会は,この提案 1 と 2 の客観的差異. 合で,かつ,その限りでの法であるということ. について以下の点を考慮した.. から出発している.すなわち,部分的に過ぎな. 債権者は債務者に給付の発生時期を決めるこ. い場合,最終的な履行を生じさせることなしに,. とができるとする提案 1 第 1 文は,金銭の重大. 何らかの契約の根拠により物を受領した各々の. さを述べた.期間設定の意義は,債権者が期間. 当事者は,解除の可能性が存在することを自覚. の経過後,給付の引き受けを拒否するというこ. しなければならない.この要件は現実的に不当. とにしなければならない.それから,期間の経. でなく,また,それゆえに一般的に草案の規定. 過とともに,履行を請求するという債権者の権. は不公平でない.最終的な債務が認められるこ. 利は失効する.この考えは,243 条と同様な方. となしに解除が実行された場合,その実行は債. 法によりもたらされることが勧められるであろ. 49) 務者にとって不当な困難だけを生じさせる. 」. うとする53).. ここでは, 「何らかの契約の根拠により物を受. そして,第一草案 369 条 2 項とともに,給付. 領した各々の当事者は,解除の可能性が存在す. が,債務者の遅滞の結果,債権者に何らの利益. ることを自覚しなければならない. 」として,. がない場合,前もって期間設定をする必要はな. 「法感情と取引の要請」を前提に,債務者に何. いということで一致していた.というのは,「そ. らかの過責があれば,解除権が行使されたとし. のような場合,設定期間内の追完を通じて債権. ても,不当な困難とはいえない.しかし, 「最. 者の利益が満足されないからである.しかし,. 終的な債務が認められることなしに解除が実行. 提案 1 と 2 の 差異 は,誰 が こ の 場合 に イ ニ シ.
(11) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). (71). 71. アティブ取るかについて問題となった.提案 2. 締結されなかったような状態を回復することが. は,HGB に関連して債権者のイニシアティブ. 目的となり,解除は損害を填補する手段から乖. を要求する.すなわち,給付を価値の無いもの. 離することになった.第二委員会の前のドイツ. として拒絶し,確認し,また,期間指定が不十. 帝国司法庁準備委員会の修正案において,解除. 分であるという意思表示をするには,債権者の. 権は,給付の無利益性を根拠とした解除から乖. 通知を必要とすることである.これに対して,. 離して,債権者(解除権者)からの債務者遅滞. 提案 1 は,債務者にイニシアティブを取らせる. の場合における設定期間経過後の解除権の行使. (zuweisen) .し か も,提案者 に よ り 賠償 と し. が認められることになった.これを受けた第二. て の 369 条 3 項,提案 さ れ た 369c 条…が,適. 委員会では,設定期間経過後の解除権の行使が. 合的に変更された 432 条に追いやられることで. 認められることに関連して,解除権行使及び解. 54) 間接的なものとなる. 」 .. 除の効果において債務者の過責(帰責性)を前. 解除権行使のイニシアティブについて,提案. 提とする遅滞を考慮することになった.また,. 2 が,HGB に関連して債権者に事前の通知を. 解除権の行使について,債権者と債務者いずれ. 要求することによって,債権者にイニシアティ. がイニシアティブを取るかを考慮して,最終的. ブを取らせることに対して,提案 1 は,第一草. には,両当事者の公平の観点から,債権者のみ. 案 432 条によって債務者にイニシアティブを取. ならず,債務者にもイニシアティブを取らせる. らせた(解除権が消滅する) .この両提案の差. ことになった.. 異は,給付の無利益性により解除権の行使を例. このようにドイツ民法典の起草作業の過程に. 外的に認めた普通法上の解除制度が,ADHGB. おいて,解除権の行使は,無利益性を根拠とす. のように簡易・迅速に解除権を行使できる原則. るものから,債務者の遅滞を根拠して設定期間. 的な制度に変化したことに対する対応の差異と. の経過後に行使できるものとなった.つまり,. もいえる.最終的に,第二委員会は,提案 1 を. 解除権の行使は,例外的なものから,簡易・迅. 採用した.ここでも,第二委員会は,両当事者. 速な原則的なものとなった.そして,原則的な. の公平の観点から,債権者からの解除権行使を. ものになったということは,解除が損害賠償に. 設定期間の経過後認める一方で,債務者に対し. 付随 す る も の か ら,損害賠償 と 二者択一 の 手. ても解除権の消滅についてイニシアティブを取. 段(損害賠償 と 並 ぶ 別 の 手段)へ の 変遷 を 意. らせることを認めたといえる.. 味した56).実際,解除と損害賠償は二者択一の. こうして,第二委員会の議論を経て,第二草. ものとなった.こうして,ドイツ民法典の起草. 案 276 条・277 条・279 条となる.そして,旧. 作業において,解除制度は,要件・効果ともに. 55). 債務法 325 条・326 条・327 条となった .. ADHGB の簡易・迅速な解除制度により近づく. ⑷ 小 括. ことになった.. ドイツ民法典の起草作業において,部分草案 では解除は原則として認められず,例外として. 3 総 括. 債務者の債務者の遅滞・不能により給付が無利. 以上から,ドイツ民法典起草過程のおける解. 益になるか価値を著しく失ったときに契約の解. 除制度の変遷については,以下のことがいえる.. 除を認めた.そして,解除は損害の填補として. まず,ドイツ民法典起草過程前後の学説にお. 行われるとした.第一委員会の議論で起草され. いては,ヴィントシャイトに代表されるように,. た第一草案の解除制度は,給付の無利益性によ. 給付が無利益になった場合,損害賠償を通じて. り解除権の行使を認めた.その一方で,解除と. 解除と同様の結論が得られるので,原則として. 損害賠償は選択的関係となり,解除は,契約が. 解除を認めないとする見解が一般的であった..
(12) 72 (72). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). つまり,普通法時代の解除についての理解とほ. る.そして,無利益性を根拠とする解除権の行. とんど異なることはなかったといえる57).. 使は,債務者の遅滞の結果,給付が債権者に何. ドイツ民法典の起草に入り,キューベルが起. らの利益を有さなくなった場合,期間設定の必. 草した部分草案でも,解除は原則として認めら. 要はないとして,補充的なものとなった.債権. れず,債務者の遅滞・不能により給付が無利益. 者(解除を望む一方当事者)からの債務者遅滞. となるか価値を著しく失ったときに,例外的に. の場合における設定期間経過後の解除権の行使. 解除が認められるに過ぎないとした.そして,. が認められることによって,ADHGB の解除制. 解除は損害の填補として行われるとされた.部. 度に近づくことになった.. 分草案の段階では,普通法時代の解除の理解と. 第二委員会では,設定期間経過後の解除権の. ほとんど同じであったといえる.しかし,効. 行使が認められることに関連して,解除権行使. 果の面で, 「契約が締結されなかったかのよう. 及び解除の効果において債務者の過責(帰責性). な権利 を 有 し,かつ,義務を負う. 」として,. を前提とする遅滞を考慮することになった.遅. ADHGB の規定と類似性が認められる58).また,. 滞に過責が必要とされる理由については,当事. その後の解除と損害賠償の二者択一の関係への. 者双方の公平の観点から,債権者の解除権の行. 発展の一里塚とも見て取れる(部分草案では解. 使は,債務者に解除という不利益を与えるだけ. 除と損害賠償は並存する関係) .その他では,. の理由が必要であるとしている.また,解除権. 普通時代の無利益性を根拠とした解除は裁判を. の行使について,債権者と債務者いずれがイニ. 通じてなされるのが前提であったが,部分草案. シアティブを取るかを考慮して,最終的には,. 以降は,相手方に対する意思表示によって行わ. 両当事者の公平の観点から,債権者のみならず,. れることになったこと (形成権として機能する). 債務者にもイニシアティブ(解除権の消滅)を. が注目に値する.. 取らせることになった.もっとも,これは,解. 第一委員会で起草された第一草案は,解除権. 除権の行使が,給付の無利益性を根拠とする例. 行使の要件としては,給付の無利益性をメルク. 外的なものから,原則として設定期間経過後に. マールとして,解除権の行使を認めた.この点. 認めるものに変わってからの対応の差異といえ. は,普通法,部分草案と同じである.しかし,. ることは前述した通りである.. 解除と損害賠償は選択的関係となり,解除は,. 本稿の主題である催告に関してまとめると,. 契約が締結されなかったような状態を回復する. 次のようにいえる.. ことが目的となり,解除は損害を填補する手段. ドイツ民法典の起草において,催告(正確に. から離れた.. は設定期間経過後の解除権の行使)による解除. 第二委員会 に 先立って行われたドイツ帝国. 権の行使は,ドイツ帝国司法庁準備委員会の修. 司法庁準備委員会 の 修正案 は,ADHGB354 ~. 正案で初めて現れることになった.それまでは,. 356 条の規定に倣い,双務契約において債務者. 普通法時代の給付の無利益性を根拠にして,例. が遅滞にあるとき,債権者は,相当な期間を設. 外的に解除権の行使を認めたに過ぎなかった.. 定して,その期間内に給付がなされない場合,. こ の 修正案 が 出 さ れ た の は,ADHGB354 ~. 損害賠償か,解除を行うことができるとした.. 356 条の規定に倣ったものであり,普通法時代. これによって,普通法から第一草案までの給付. の給付の無利益性を根拠とした解除から乖離す. の無利益性を根拠とする解除権の行使と決定的. ることになったのは前述した通りである.この. に乖離することになった.債務者が遅滞にある. よ う な ADHGB の 簡易・迅速 な 解除権 の 行使. とき,債権者 は,期間を設定し,期間経過後,. を倣うことになったのは,私法の特別法である. 解除権を行使できるのが原則となったのであ. 商法の分野のみならず,私法の一般法である民.
(13) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). 法においても必要性があったからといえる.ま た,部分草案で,当事者からの意思表示による 解除権の行使 (形成権) が認められることになっ たのも理由として考えられる. そして,第二委員会の議論において,前述の 通り,解除権の行使の方法について,過責を前 提とした遅滞の必要性と債権者・債務者いずれ がイニシアティブを取るかが問題となった.前 者については,当事者双方の公平の観点から, 債権者の解除権の行使は,債務者に解除という 不利益を与えるだけの理由が必要であるとし た.また,後者については,債権者と債務者い ずれかがイニシアティブを取るかを考慮して, 最終的には,両当事者の公平の観点から,債権 者のみならず,債務者にもイニシアティブ(解 除権の消滅)を取らせることにした.これらは, いずれも原則として催告の期間を設定して,そ の期間の経過後に解除か損害賠償を認めるので ある.催告による設定期間により,両当事者の 利害の調整を図ったものといえる. ADHGB とドイツ民法典の起草過程を比べる と,前者が簡易・迅速な商取引の要請から,催 告(通知)による解除を認め,裁判による両当 事者の利害の調整を図る機能を当事者に委ねた といえる.これに対して,後者は,解除権の簡 易・迅速な行使の考慮に加えて,両当事者の公 平の観点(両当事者の利害の調整)をより詳細 に考慮して(過責を前提とする遅滞の必要性と 債権者・債務者いずれがイニシアティブを取る かの問題) ,催告による解除権の行使を認めた ものと思われる. こうして,旧債務法における解除制度が成立 することになるが,その後のドイツの学説・判 例ではどのように取り扱われるようになったの だろうか.そして,2002 年のドイツ債務法の 改正の議論はどのようなものであったであろう か.これらの点について,Ⅳで検討する. . (以上本号). (73). 73. 注 1)部分草案については,拙稿「ドイツにおける 解除制度の発展に関する考察─催告を中心とし て─⑵」本誌 11 巻 2 号を参照されたい. 2)部分草案 20 号 2 条は,ほぼそのままの形で第 一草案 360 条 に なった.理由書(Motive)は, ①そこで規定された原則が普通法に則したもの で あ り,オース ト リ ア 民法 919 条,ザ ク セ ン 民法 868 条,ヘッセ ン 草案 138 条,146 条,ド レスデン草案 151 条にも含まれていること,② これと異なるフランス民法典の立場を採用しな い こ と,③本文 で 後述 す る 第一草案 369 条 の 法定解除権の規定がこの原則に対する例外で あり,その原則を明確にするために規定され た, などを述べている(Benno Mugdan (hrsg.) , Die gesamten Materialien zum Bürgerlichen Gesetzbuch für das Deutsche Reich, Bd. 2, 1899, S. 109(Motive 198 f.) ) しかし,第二委員会では,その規定の内容は 当然であり,また,帝国の一部では異なる準則 の妥当するところもあるので,この規定の維持 には十分な理由が無いとされた(B. Mugdan, a. a. O., S. 630(Protokolle 1253) ) . なお,第一草案 360 条は次のような規定であ る. 第一草案 360 条 契約当事者の一方がその義務を履行しないと き,相手方は,特別な取り決め,あるいは,法 律上の規定によって異なることが定められてい ない限り,それを理由に契約から離脱する権利 を有さない. 3)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), Die Beratung des Bürgerlichen Gesetzbuchs in systematischer Zusammenstellung der unveröffentlichen Quellen, Recht der Schuldverhältnisse I, 1978. S. 304 f.(Protkolle I 1215 ff.) . 4)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 272(Prtokolle I 1135) . 5)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 273 f.(Prtokolle I 1139 ff.) . 6)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 272(Prtokolle I 1137 f.) . 7)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 272(Prtokolle I 1138) . 8)次 の よ う な 規 定 で あ る(H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 558 (Prtokolle I 621).; W. Schubert (hrsg.), Die Vorlagen der Redaktoren für die erste Kommission zur Ausarbeitung des Entwurfs eines Bürgerlichen Gesetzbuches, Recht der.
(14) 74 (74). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). Schuldverhältnisse, Teil 1, 1980, S. 322.). 部分草案 19 号 11 条 自らの債務を定めた時期に履行しない契約当 事者は契約に基づく権利を失う,という留保(失 権約款の留保)の下で契約が締結されるとき, これが生じると,相手方は契約から離脱するか, あるいは,履行を請求するかの選択権を有する. 9)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 560 (Prtokolle I 625). 10)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 560(Prtokolle I 626). 11)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 560(Prtokolle I 625). 12)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 560(Prtokolle I 628). 13)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 276(Prtokolle I 1144). 14)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 561(Prtokolle I 627). 15)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 277(Prtokolle I 1147 f.). 16)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 567(Prtokolle I 755). 17)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 575. 18)条文については,H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), a. a. O., S. 473 f. und 596.; B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm.(2)), S. Ⅹ Ⅹ Ⅹ Ⅶ und L を参照した. 19)次のような規定である. 第一草案 243 条 債務者が,既判力ある判決がなされた後,債 権者に設定期間内に給付をなさなかったとき, 240 条ないし 242 条の規定が準用される.設定 期間は,期間の経過後,債権者がもはや給付を 望まないということを生じさせなければならな い. 第一草案 240 条 ⑴ 債務者の負担すべき給付が債務者の責めに帰 すべき事由により全部あるいは部分的に不能を 生じたとき,債務者は自己の債務を履行するこ とはできない.そして,債務者は,債権者に債 務不履行により生じた損害を賠償する責任があ る. ⑵ 目的物の価値が決定された給付について全部 あるいは部分的な不能を生じたとき,債務者に 給付を義務付ける給付の場所および時期が決定 される.債権者は,状況に応じて受領しなけれ ばならないときのみ,損害が上昇した価値の取 消である遅れた時期の価値を主張することがで きる. 第一草案 241 条 不能が,債務者が債務関係を考慮して許容す. べき錯誤によって生じたとき,不能は,債務者 の責めに帰すべき事由によって生じなかったも のとみなされる. 第一草案 242 条 ⑴ 債務者の責めに帰すべき事由により,給付に 部分的不能のみが生じた場合で,債権者は,不 能を生じなかった給付部分では,債権者にとっ て何ら利益がないとき,その部分の拒絶または 返還の下に,全債務についての不履行による損 害賠償を請求することができる. ⑵ 427 条 2 項,3 項及 び 第 428 条,431 条,433 条の規定が準用される. 20)第一草案 428 条 な い し 431 条,433 条 の 規 定の内容は次の通りである.428 条は返還債務 の履行,429 条は目的物が偶然に滅失・毀損し た場合でも解除権者の解除権の行使を認める, 430 条は解除権の制限,431 条は解除権の消滅, 433 条は解除権者及び債務者が複数いる場合の 解除権の行使方法,という規定である. 21)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O., S. 115 f. (Motive, S. 209). なお,第一草案 368 条は次のような規定 である. 第一草案 368 条 ⑴ 債務者が,不能を生じたことにより双務契約 の給付義務から解放されるとき,全部不能の場 合,債務者は反対給付について何らの権利を有 さない.一部不能にとどまる場合,債権者は, 392 条の規定の基準に従い,反対給付が一定程 度減額される.債務者がすでに不相当な給付を 受領した限りにおいて,債権者は,不当利得法 による補償に関する規定に従い,給付物の返還 を求めることができる. ⑵ 給付が, 債権者の責めに帰すべき事由により, あるいは債権者の遅滞の後, 不能を生じたとき, 債務者は,反対給付の権利を保持することがで きる.債権者は,債務者が不履行によって節約 できた必要費の金銭価値を求めることができ, また,不履行が債務者に他の債権者の労働価値 を使用させることを可能にしたときも,債務者 が,債権者の労働価値の使用,あるいは,悪意 によりしないままでいることにより所得した金 銭価値を控除することができる. ⑶ 債権者が,238 条の規定に従い,債務者に補 償した給付目的物の返還または譲渡,あるい は,補償請求をする場合も,債務者は,反対給 付を求める権利を保持することができる.債権 者は,約束した給付の価値より少なく保持する 限りで,392 条に従い,相当な反対給付の減額 をすることができる. 22)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O., S. 115 f. (Motive, S. 209 f).なお,第一草案 361 条は,後注(脚注 34)を参照されたい. 23)なお,受領遅滞の場合については, 「契約の.
(15) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). 相手方への過責(Verschulden)ある他の契約 の相手方による適切な給付は,直ちに不能とな らず,完全に事情により不能を生じるのであ る.すなわち,契約の相手方が約束した給付を まったく受領しないこと,積極的利益を全く有 していない場合である.利益により,契約の相 手方に損害賠償請求権か解除権を与えるのみで ある.給付の取るに足らない部分の実現性に よって,契約の相手方に解除権を与えることを 拒絶することで一貫するであろう.さらなる場 合は,既判力ある判決による特別な支払い遅 滞(Mora)の場合における解除による解決で ある(擬制的不能の場合(243 条)).権利があ ると承認されるものとして考慮する限りで,現 行法の相応しい継続教育,または,ともかく推 奨に値するフランス法の修正が明らかに存在す る. 」 と述べている (B. Mugdan (hrsg.), a. a. O., S. 115 f. (Motive, S. 210)). 24)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O., S. 115 f. (Motive, S. 210). 25)山中康雄「解除論(二)」法学志林 48 巻 3 号 30 頁(1950 年),北村実「ドイツにおける契約 解除効果論 の 展開」龍谷法学 9 巻 1 号 63 頁以 下(1976 年)など参照. 26)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (2)), S. 587. 27)B. Mugdan(hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (2)), S. 116 (Motive, S. 211). 28)特に,北村・前掲(脚注 25)を参照されたい. 29)H. H. Jakobs/W. Schubert (hrsg.), Die Beratung des Bürgerlichen Gesetzbuchs in systematischer Zusammenstellung der unverntlichen Quellen, Recht der Schuldverhältnisse I, 1978, S. 476 (Prot RJA 341 f.). 30)ADHGB については,拙稿(脚注 1)を参照 されたい. 31)H. H. Jakobs/W. Schubert, a. a. O., S. 475 (Prtokolle RJA 337 f.), Zusammenstellung der gutachtlichen Aeußerungen zu dem Entwurf eines Bürgerlichen Gesetzbuchs, gefertigt im Reichs=Justizamt, Bd. 2, 1890, Neudruck 1967, S, 122 f. 32)この点について,同じく債権者に期間設定 を 認 め て い る 第二草案 277 条 で,バ イ ネ ル ト が,こ れ に よって 普通法 の 原則 が 破 ら れ た,と 述 べ て い る(D. Beinert , Wesntliche Vertragsverletzung und Rücktritt, 1979, S. 183). 33)ただ,ADHGB の解除制度と全く同じ構成と いうわけではない.ADHGB では,354 条で, 売主からの解除の場合,商品が引き渡されてい ないことが要件となっていた.司法庁修正案で. (75). 75. も,同様の規定が置かれることが前提となって いたが,最終的に採用されるには至らなかった (H. H. Jakobs/W. Schubert, a. a. O., S. 476) . この点について,後注(脚注 50)でも関連し て述べるので,そちらも参照されたい. 34)B. Mugdan (hrsg.), Die gesamten Materialien zum Bürgerlichen Gesetzbuch für das Deutsche Reich, Bd. 2, S. 639 f (Prokolle, S. 1289 f.). な お, 提 案 は 5 ま で あ る. 提 案 4 は, 第 369a 条 は,提案 3 の 編集上 の 明確化 を 目的 と して, 「双務契約において,給付の時期が,361 条の明示的な方法によって定められておらず, または,給付が,日時(あるいは期間内)にな されなかった場合,その日時(その期間内)の 債権者は,最終的に権利行使を期待することが できる. 」と決定すべきと提案した.提案 5 は, 369 条 1 項(第 2 項としての枠組み)に関連し て, 「 243 条の場合において,債務者が期間内 に給付をせず,あるいは,一部分のみしか給付 をしなかった場合も同様である. 」と提案した. なお,第一草案 361 条は以下の通りである. 第一草案 361 条 ⑴ 契約により,契約による給付が契約締結者に よって,厳密に確定した日時あるいは確定した 時期に生じさせる場合で,給付が確定した日時 あるいは確定した時期に生じなかったとき,他 方の契約締結者は,契約を解除するか,あるい は,契約上の権利を主張することができる. ⑵ 解除に関しては,426 条ないし 431 条,433 条の規定が準用される. 35)次のような規定である. 第一草案 247 条 ⑴ 債務者は,債権者に遅滞による損害を賠償し なければならない. ⑵ 給付が債務者の遅滞の結果,債権者に何らの 利益をもたらさなかったとき,債権者は,給付 を拒絶して,かつ,既に受領した部分を返還し て,全債務の不履行による損害賠償を要求する ことができる.427 条 2,3 項,または,428 条, 431 条,433 条の規定を準用する. 36)次のような規定である. 第一草案 246 条 債務者の責めに帰すべき事由によらない結果, 237 条,241 条の規定より,彼に給付を義務付 けられない限りで,債務者は遅滞とならない. 第一草案 237 条 ⑴ 債務関係の発生の結果,債務者の責めに帰す べき事由によらずに給付の不能が生じた限り で,債務者は給付を義務付けられない.給付が 永続的な不能を生じた限りで,債務者は自己の 義務(Verbindlichkeit)から解放される. ⑵ 債務者が定められた目的物を給付しなければ ならない場合で,彼の責めに帰すべき事由によ.
(16) 76 (76). 横浜国際社会科学研究 第 12 巻第 1 号(2007年 7 月). らずに給付ができなくなったときにも妥当す る. 37)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 640. 38)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 641. 39)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 641. 40)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 641. 41)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 641. なお,提案 3 は,例として,売買と交換を 挙げ,債権者が反対給付を義務付け,設定した 日時に相互の給付交換が生じる目的が無益にな る場合,解除権の行使が認められるべきと述べ て い る(B.Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 641.). 42)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 642. 43)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 642. その理由として,賃貸借の場合,第一草案 は,一般的に遅滞の必要性を確認している.請 負契約の場合も同様である.というのは,これ は,一般に定期行為の性質を負担しているから である.しかし,与えられた規定の一般給付は, 未だ正当化されない.第 361 条と第 241 条の場 合は,同じく特に類似している,と述べている (B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 642.). 44)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 642. その理由として,債権者に債務者の費用を 当てにする口実を与えてはならない.期間指定 は,まず期限の到来後に発生すべきものなので (提案 4),規定において,債務者は,遅滞を定 められる.解除権は遅滞を必要とする多くの場 合に,増幅した不利益は発生できない.例外的 に,債務者の利益においても,妥当性が考慮さ れる,と述べている. 45)遅滞に過責あるいは culpa が必要である,と いう理解は一般的であったと考えられる.遅 滞 を 扱った も の と し て,C. O. V. Madai, Die Lehre von der Mora, 1837, § 2, S. 14 f.; F. Mommsen, Beiträge zum Obligationenrecht, Dritte und letzte Abtheilung: Die Lehre von der Mora, 1855, § 2, S. 13 ff.; B. Windscheid/T. Kipp, Lehrbuch des Pandektenrechts, 2. Bd., 9. Aufl., 1906, § 277, S. 134 Fn 9 を 参照.遅滞 に culpa を必要としないものには,G. F. Puchta, Pandekten, 12. Aufl. 1877, § 269, S. 410. が あ る. 46)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 644. 提案は,1 ~ 3 であるが,記述の便宜上, 提案 4 ~ 6 として本文で用いることにする.. 47)次のような規定である. 第一草案 432 条 解除権は,合意した期間内になされず, また, 合意した期間がない場合,4 週間の期間内にな されなかったとき,消滅する.期間は,解除権 が条件に左右されないときは,契約の締結とと もに始まり,条件に左右されるときは,履行条 件に従い,権利者が他方から意思表示を要請さ れた時点から始まる. 48)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 645. 49)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 646. 50)不当な困難という批判に対する反論として提 案 6 は, 「両当事者を異なる基準で図る.一般 基本原理と当然の感情には異議を唱えなけれ ば な ら な い.例 え ば,交換 の 際,解除権 を 実 行した当事者が受領物を全部使用して返還し た 場合,過責 あ る 当事者 の 責任 は 不当利得法 により制限されるべきである. 」と述べている (B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 646.) . 51)提案 4 は,解除の効果について,債務者の過 責を考慮しない点以外,文言上は提案 5 と同じ と思われる.しかし,提案 4 は,売主が解除権 を有するのは売買の目的物を引き渡していない 場合のみを前提としているのである.したがっ て,予定していた解除の効果はそれぞれの提 案で異なっている(B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 645.) . 52)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 643. 53)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 643. 54)B. Mugdan (hrsg.), a. a. O. (oben Anm. (34)), S. 643. 55)なお,第二委員会終了後に作成された編集会 決議暫定集成 369a 条は,以下の通りである(H. H. Jakobs/W. Schubert, a. a. O., S. 482 ff.) . 編集会議暫定集成 369a 条 双務契約において当事者の一方がその給付に つき遅滞にあるとき,相手方は給付の実現のた めに相当な期間,期間経過後には給付の受領を 拒絶する旨の意思表示を共に求めることができ る.この期間内に給付が実現されない場合,相 手方は,不履行による損害賠償を請求するか, あるいは,契約を解除することができる.履行 請求権は排除される.期間の経過の際,給付が 部分的にしか実現されないとき,369 条 1 項の 2 文の規定が準用される. 56)解除とともに損害賠償の請求を認めるわが国 の解除制度とは異なる.この点については,鶴 藤倫道「契約の解除と損害賠償(一) , (二・完) 」.
(17) ドイツにおける解除制度の発展に関する考察(大滝). 民 商 法 雑 誌 110 巻 3 号,4・5 号,北 村 実「契 約解除効果 に 対 す る ド イ ツ 民法典(BGB)の 規定について」天理大学学報 102 号 45 頁,同「解 除と損害賠償との関係する BGB の EntwederOder 主義」天理大学学報 105 号 75 頁,同・前 掲(脚注 26)などが論じている. 57)普通法時代の解除についての考え方について. (77). 77. は,拙稿「ドイツにおける解除制度の発展に関 する考察─催告を中心として─⑴」本誌 10 巻 2 号を参照されたい. 58)拙稿(脚注 1)を参照されたい. [おおたき てつひろ 横浜国立大学大学院国際 社会科学研究科博士課程後期].
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