• 検索結果がありません。

ペルー -- ジャガイモから穀物へ (特集 世界は何を食べているか -- 第三世界の主食)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ペルー -- ジャガイモから穀物へ (特集 世界は何を食べているか -- 第三世界の主食)"

Copied!
3
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

ペルー -- ジャガイモから穀物へ (特集 世界は何

を食べているか -- 第三世界の主食)

著者

清水 達也

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

161

ページ

28-29

発行年

2009-02

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004832

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.6(2009. 2)― 2   ペ ル ー と い え ば ア ン デ ス 、 ア ン デ ス と い え ば ジ ャ ガ イ モ の 原 産 地 。 確 か に ア ン デ ス の 人 々 は ジ ャ ガ イ モ を よ く 食 べ る 。 し か し 、 今 日 の ペ ル ー で は 人 口 の 半 分 以 上 が 海 岸 地 域 に 居 住 し て お り 、 穀 物 の 消 費 が 増 え て い る 。 以 前 か ら 消 費 さ れ て い る コ ム ギ に 加 え 、 近 年 は コ メ の 生 産 ・ 消 費 が 拡 大 し て い る 。 た だ し 、 コ ム ギ や 飼 料 原 料 の ト ウ モ ロ コ シ に つ い て は そ の 多 く を 輸 入 に 依 存 し て い る 。 そ の た め 、 今 回 の 食 糧 危 機 で は パ ン や 鶏 肉 を 中 心 に 食 料 品 価 格 が 上 昇 し 、 国 民 の 間 で イ ン フ レ に 対 す る 懸 念 が 高 ま っ た 。

  二 〇 〇 七 年 一 〇 月 、 農 村 開 発 プ ロ ジ ェ ク ト に 関 す る 聞 き 取 り 調 査 の た め に ペ ル ー 中 南 部 の ア ン デ ス の 農 村 を 回 っ た 。 プ ロ ジ ェ ク ト を 実 施 す る 農 業 省 や N G O 職 員 が 同 行 し た の で 、 あ ち こ ち の 村 で 食 事 を ご ち そ う に な っ た 。 そ の 際 に 何 度 も 食 べ た の が 茹 で た ジ ャ ガ イ モ で あ る 。 フ レ ッ シ ュ ・ チ ー ズ 、 目 玉 焼 き 、 ク イ ( テ ン ジ ク ネ ズ ミ ) な ど を お か ず に 、 小 振 り の ジ ャ ガ イ モ を 食 べ な が ら 、 村 人 の 話 を 聞 い た 。   ア ン デ ス は 多 く の 作 物 の 原 産 地 で あ る 。 中 で も ジ ャ ガ イ モ は そ の 代 表 で 、 ペ ル ー と ボ リ ビ ア を ま た ぐ チ チ カ カ 湖 近 く が 原 産 地 と 考 え ら れ て い る 。 ペ ル ー で は ア ン デ ス の 高 地 を 中 心 に 年 間 三 〇 〇 万 ト ン が 生 産 さ れ 、 食 用 の 作 物 と し て は 国 内 で 最 も 生 産 量 が 多 い 。 二 〇 〇 三 年 の 国 民 一 人 あ た り の 年 間 消 費 量 は 七 二 キ ロ グ ラ ム で 、 こ れ に 続 く コ ム ギ ( 五 一 キ ロ グ ラ ム ) や コ メ ( 四 九 キ ロ グ ラ ム ) を 大 き く 上 回 っ て い る 。 図 1 に 主 要 な 食 料 で あ る ジ ャ ガ イ モ 、 コ ム ギ 、 コ メ の 年 間 一 人 あ た り 消 費 量 の 推 移 を 示 し た 。 ジ ャ ガ イ モ は 一 九 七 〇 年 以 降 消 費 量 が 減 少 し 、 一 九 八 〇 年 代 末 の 経 済 危 機 の 時 に は コ メ や コ ム ギ を 下 回 っ た 。 そ の 後 、 一 九 九 〇 年 代 半 ば 以 降 は 消 費 が 回 復 し て い る 。   ア ン デ ス に は 様 々 な 種 類 の ジ ャ ガ イ モ が あ る ( 写 真 )。 大 き く 分 け て 、 主 に 自 給 の た め に 栽 培 さ れ る 在 来 種 と 、 販 売 の た め に 栽 培 さ れ る 商 業 種 が あ る 。 在 来 種 は 商 業 種 に 比 べ る と 小 さ く 、 皮 の 色 が 紫 や 赤 の も の も 多 い 。 筆 者 が 農 村 で ご ち そ う に な っ た の も 在 来 種 で 、 皮 は 濃 い 紫 色 だ が 中 は 白 い 。 在 来 種 の 中 に は ソ ラ ニ ン と 呼 ば れ る 有 害 成 分 を 多 く 含 む も の が あ り 、 こ れ を 取 り 除 い て 長 期 に 保 存 す る た め に チ ュ ー ニ ョ と い う 加 工 食 品 に す る 。 チ ュ ー ニ ョ は ス ー プ な ど に 入 れ て 食 べ る 。   残 念 な が ら 、 海 岸 地 域 に あ る 首 都 の リ マ 市 で は 在 来 種 の ジ ャ ガ イ モ を 食 べ る 機 会 は あ ま り な い 。 ス ー パ ー で 売 っ て い る の は 商 業 種 に 加 え 、 在 来 種 の 改 良 品 種 が 中 心 で あ る 。商 業 種 は 皮 が 黄 土 色 の ほ か 、赤 み が か っ た も の や 濃 い 紫 色 の も の な ど が あ る 。 い ず れ も 中 身 は 白 っ ぽ い こ と か ら 「 パ パ ・ ブ ラ ン カ 」( 白 い ジ ャ ガ イ モ ) と 呼 ば れ る 。 一 方 、 在 来 種 の 改 良 品 種 の 一 つ に「 パ パ ・ ア マ リ ー ジ ャ 」( 黄 色 い ジ ャ ガ イ モ )が あ る 。白 い ジ ャ ガ イ モ と 比 べ る と 小 さ く 、 中 身 が 黄 色 い の が 特 徴 で あ る 。 ペ ル ー の レ ス ト ラ ン や 家 庭 で は 、 料 理 方 法 に 応 じ て こ れ ら の ジ ャ ガ イ モ を 使 い 分 け て い る 。 た と え ば マ ッ シ ュ ポ テ ト の 中 に ツ ナ 、 ア ボ カ ド 、 ゆ で 卵 な ど を 挟 み 込 ん だ 「 カ ウ サ 」 と い う 前 菜 料 理 は 、 黄 色 い ジ ャ ガ イ モ を 使 う 。 つ ぶ し や す く 、 味 も 水 っ ぽ く な ら な く て 見 た 目 も 美 し い 。 炒 め た タ マ ネ ギ と ひ き 肉 を マ ッ シ ュ ポ テ ト で 包 ん だ 「 パ パ ・ レ ジ ェ ナ 」 は コ ロ ッ ケ と

清水達也

市場で売られる様々 な種類のジャガイモ (筆者撮影)

(3)

29 ―アジ研ワールド・トレンド No.6(2009. 2) 味 が 似 て い る 。 つ ぶ し た 時 に 粘 り け が あ る 白 い ジ ャ ガ イ モ を 使 う と 作 り や す い 。   こ の よ う に ジ ャ ガ イ モ は 、 ペ ル ー で は 食 卓 に 欠 か せ な い 食 料 の 一 つ で あ る 。 た だ し 図 1 で み た よ う に 、 ジ ャ ガ イ モ の 年 間 一 人 あ た り 消 費 量 は 、 一 九 七 〇 年 か ら 二 〇 〇 三 年 の 間 に 約 三 割 も 減 少 し て い る 。 代 わ っ て 消 費 が 増 加 し た の が 、 コ ム ギ 、 続 い て コ メ で あ る 。

  ジ ャ ガ イ モ の 消 費 減 少 と 穀 物 の 消 費 拡 大 の 背 景 と し て 、 ア ン デ ス の 農 村 か ら 海 岸 地 域 と 主 要 都 市 へ の 大 規 模 な 人 口 移 動 と そ れ に 伴 う 生 活 様 式 の 変 化 な ど が 挙 げ ら れ る 。   一 九 四 〇 年 代 ま で ア ン デ ス 地 域 に は 全 人 口 の 約 六 割 が 住 ん で い た 。 イ ン フ ラ の 整 備 や 海 岸 地 域 に お け る 工 業 の 発 達 に よ り 、 一 九 六 〇 年 代 に は ア ン デ ス 地 域 か ら 海 岸 地 域 の 都 市 部 へ 大 規 模 な 人 口 移 動 が 起 き る 。 一 九 七 〇 年 代 に は 海 岸 地 域 の 人 口 が ア ン デ ス 地 域 を 上 回 り 、 現 在 は 人 口 の 五 四 % が 海 岸 地 域 に 住 み 、 ア ン デ ス 地 域 は 三 三 % に と ど ま っ て い る 。 こ れ に 伴 い 食 生 活 も 変 わ っ た 。 自 ら が 作 っ た ジ ャ ガ イ モ 中 心 の 食 事 か ら 、 購 入 し た 穀 物 や そ の 加 工 品 の 消 費 が 中 心 に な っ た 。 特 に コ メ や 麺 類 の よ う に 短 時 間 で 調 理 で き る 食 料 が 好 ま れ た 。 中 で も コ メ の 年 間 一 人 あ た り 消 費 量 は 、 一 九 六 一 年 の 二 〇 キ ロ グ ラ ム か ら 、 二 〇 〇 三 年 に は 四 九 キ ロ グ ラ ム へ と 約 二 倍 半 に 達 し て い る 。

  コ ム ギ は 以 前 か ら 海 岸 地 域 を 中 心 に パ ン ま た は パ ス タ な ど の 形 で 食 さ れ て い る 。 移 民 が 多 か っ た ス ペ イ ン と イ タ リ ア の 食 文 化 の 影 響 で あ る 。 麺 類 に は ス パ ゲ ッ テ ィ や う ど ん く ら い の 太 さ の 「 タ ヤ リ ネ ス 」 と 、 ご く 細 い 「 フ ィ デ オ 」 が あ る 。 例 え ば タ ヤ リ ネ ス を 使 っ た 料 理 に は 、 バ ジ ル を ミ キ サ ー で ペ ー ス ト に し た 緑 色 の ソ ー ス で あ え る 「 タ ヤ リ ン ・ ベ ル デ 」が あ る 。 ス パ ゲ ッ テ ィ ・ ジ ェ ノ ベ ー ゼ に 似 て い る が 、 ペ ル ー で は 目 玉 焼 き と 薄 切 り 牛 肉 の ス テ ー キ を 添 え る 。 フ ィ デ オ を 使 っ た 料 理 に は 「 ソ パ ・ ア ・ ラ ・ ミ ヌ タ 」 が あ る 。 一 分 の ス ー プ と い う 名 前 の 通 り 短 時 間 で で き る ス ー プ で 、 ス ー プ の 中 に 鶏 肉 、 野 菜 と 細 い 麺 が 入 っ て い る 。   コ ム ギ が ヨ ー ロ ッ パ 風 の 料 理 に 多 く 使 わ れ て い る の に 対 し て 、 コ メ は ヨ ー ロ ッ パ の 料 理 と 地 元 の 食 材 が 融 合 し た 「 コ ミ ダ ・ ク リ オ ー ジ ャ 」( ク レ オ ー ル 料 理 ) や 、 中 国 か ら の 移 民 が 持 ち 込 ん だ 料 理 を ペ ル ー 人 が 好 む よ う に ア レ ン ジ し た 「 チ ー フ ァ 」( ペ ル ー 風 中 華 料 理 ) に よ く 登 場 す る 。 ど ち ら の 場 合 も 、 メ イ ン ・ デ ィ ッ シ ュ に 添 え て 白 い ご 飯 が 出 さ れ る 。 長 粒 種 の パ サ パ サ と し た ご 飯 で 、 ク レ オ ー ル 料 理 の 場 合 に は 油 で ニ ン ニ ク を 炒 め 、 そ の 中 に コ メ と 塩 を 入 れ て 炊 く こ と が 多 い 。   コ メ 自 体 が 主 菜 と な る 料 理 も あ る 。 代 表 的 な 例 が ク レ オ ー ル 料 理 の 「 ア ロ ス ・ コ ン ・ ポ ヨ 」。 鶏 肉 の 炊 き 込 み ご 飯 で ス ペ イ ン の パ エ リ ア と 似 て い る 。 ペ ル ー で は コ リ ア ン ダ ー を 使 う の で コ メ が 緑 色 に な り 、 一 緒 に 煮 込 ん だ 骨 付 き の モ モ 肉 を 添 え る 。

  国 際 市 場 に お け る 原 油 や 穀 物 価 格 の 高 騰 で 、 二 〇 〇 七 年 後 半 か ら ペ ル ー 国 内 で も 食 料 品 価 格 が 上 昇 し た 。 中 で も 値 上 げ が 目 立 っ た の が パ ン と 鶏 肉 で あ る 。 朝 食 な ど で よ く 食 べ ら れ る 手 の ひ ら 大 の フ ラ ン ス パ ン の 価 格 は 、 二 〇 〇 七 年 八 月 の 一 三 セ ン タ ボ ( 約 二 〇 円 ) か ら 、 二 〇 〇 七 年 末 に は 一 七 セ ン タ ボ へ 約 三 割 値 上 が り し た 。 鶏 肉 は キ ロ グ ラ ム あ た り 六 ソ ル ( 約 二 〇 〇 円 ) か ら 、 最 も 高 く な っ た 二 〇 〇 八 年 八 月 に は 七 ・ 五 ソ ル へ と 二 割 超 上 昇 し た 。   図 2 に 主 要 食 料 の 生 産 と 輸 入 の 推 移 を 示 し た 。 ジ ャ ガ イ モ と コ メ は 国 内 で 自 給 し て い る の に 対 し て 、 コ ム ギ は 約 九 〇 % 、 鶏 の 飼 料 と し て 使 わ れ る ト ウ モ ロ コ シ は 約 五 〇 % を 輸 入 に 依 存 し て い る 。 こ の 輸 入 依 存 度 の 高 さ が 価 格 上 昇 に 結 び つ い た 。   ペ ル ー で は 好 景 気 が 続 い て い る に も か か わ ら ず 、 大 統 領 支 持 率 は じ り じ り 低 下 し て い る 。 最 近 で は 、 二 〇 〇 八 年 五 月 の 三 五 % か ら 、 九 月 に は 一 九 % に ま で 下 落 し た 。 不 支 持 の 最 大 の 理 由 が 、 食 料 を 中 心 と し た イ ン フ レ ー シ ョ ン に 対 す る 懸 念 で あ る 。 ( し み ず  た つ や / ア ジ ア 経 済 研 究 所 地 域 研 究 セ ン タ ー ) 図1 主な食料の1人あたり年間消費量 20 0 40 60 80 100 120kg 1961 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2003 ジャガイモ コムギ コメ 図2主要食料の生産と輸入 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 1961 1964 1967 1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 100万t ジャガイモ生産 コメ生産 コムギ生産 コムギ輸入 (出所)FAOSTAT. (出所)FAOSTAT.

参照

関連したドキュメント

異世界(男性) 最凶の支援職【話術士】である俺は世界最強クランを従える 5 やもりちゃん オーバーラップ 100円

世世 界界 のの 動動 きき 22 各各 国国 のの.

Kwansei Gakuin Architecture

生物多様性の損失も著しい。世界の脊椎動物の個体数は、 1970 年から 2014 年まで の間に 60% 減少した。世界の天然林は、 2010 年から 2015 年までに年平均

世界レベルでプラスチック廃棄物が問題となっている。世界におけるプラスチック生 産量の増加に従い、一次プラスチック廃棄物の発生量も 1950 年から

石川県の製造業における製造品出荷額等は、平成 17 年工業統計では、全体の 24,913 億円の うち、機械 (注 2) が 15,310 億円(構成比 61.5%)、食品 (注 3) が

・生物多様性の損失も著しい。世界の脊椎動物の個体数は 1970 年から 2014 年ま での間に 60% 減少した。また、世界の天然林は 2010 年から 2015 年までに年平 均 650

フロント リテイ リング、ジェネックス、親和建設、 SCREEN