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異所性尿管手術後の尿失禁が人工的尿道括約筋ポートシス テム設置術によって完治した犬の 1 例

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Academic year: 2021

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(1)症例 報告. 異所性尿管手術後の尿失禁が人工的尿道括約筋ポートシス テム設置術によって完治した犬の 1 例 A case of dog treated with artificial urethral sphincter port system for urinary incontinence after operation of ectopic ureter. 桑原康人  Yasuhito KUWAHARA ,石野明美,桑原典枝 クワハラ動物病院. Keywords 異所性尿管,尿失禁,人工的尿道括約筋ポートシステム ■ 要約. 異所性尿管矯正手術後も尿失禁が持続する犬に対して、人工的尿道括約筋ポートシステム設置術を行った。 術後、カフ周りの組織の増生による尿道内圧の上昇に合わせて、カフ内の生理食塩水の量をこまめに調整 する必要があったが、最終的に尿失禁を完治させることができた。 ■ Abstract. Artificial urethral sphincter port system was attached to a dog with persistent urinary incontinence after ectopic ureteral surgery. After the AUS port system was installed, urinary incontinence could be completely cured, although it was necessary to adjust the amount of saline in the cuff frequently according to rise of the urethra internal pressure by hyperplasia of the tissue around the cuff. 日本獣医腎泌尿器学会誌,12(1) :20 - 22,2020. 人工的尿道括約筋ポートシステム設置術によって治療. はじめに. する機会を得たので報告する。. 異所性尿管とは、本来膀胱三角に開口する尿管が、 尿道や腟に開口する先天性奇形で、若齢時から尿失禁 がみられる場合が多い。これに対して異所性尿管を狭 窄しないように膀胱に移設すれば、水尿管症、水腎症 は改善するが、約 50%の症例では尿失禁が持続し、追 [6]. 加の処置が必要になることが多い. 症例 ラブラドール・レトリバー、避妊雌、8 歳 6 ヵ月齢、 体重 29.3 kg。仔犬の時に紹介元病院で異所性尿管と. 。術後残存する. 診断され矯正手術を受けたが、術後も尿失禁が続く. 尿失禁に対しては、様々な内科療法(尿道括約筋収縮. ため塩酸フェニルプロパノールアミン(PROIN, 1.1. [2]. mg/kg BID)を投与していた。塩酸フェニルプロパノー. [1, 2]. が実施され、良好に反. ルアミン投与中も断続的に尿失禁があり、尿失禁が. 剤、膀胱収縮筋弛緩剤など) や外科療法(テフロン 注入療法、腟懸垂法など). 応するものがある一方、約 27%の症例では十分な反応. ひどい時にはエストリオール(エストリール、2 mg/. が得られず、尿失禁が残存するのが現状であった[6]。. head SID)も併用投与していた。4 年前より塩酸フェ. 近年、こういった難治性尿失禁に対する新しいデバ. ニルプロパノールアミンが入手困難となり、尿失禁が. イスとして獣医用人工的尿道括約筋ポートシステムが. ひどい時にはエストリオールのみを投与していた。そ. 開発され、良好な結果が報告されている. [2, 5]. 。今回、. 異所性尿管矯正手術後も尿失禁が持続する犬を、この. の後尿失禁は徐々に悪化し、1 ヵ月前からはエストリ オールを投与していても尿が漏れる状態になり、常に. クワハラ動物病院:〒 463-0002 名古屋市守山区中志段味墓前 2024-1 連絡担当者:桑原康人 TEL:052-736-9948 FAX:052-736-9948 Email:[email protected]. 20.

(2) ①. ②. 作動チューブ 膀胱 カフ (14×10mm). ポート (CP2). 0.5ml 生理食塩水 注入. 図 2 手術初見. ヒューバー針(PosiGrip, Norfolk Vet Products, USA) 図 1 獣医用人工的尿道括約筋ポートシステム(AUS port system, Norfolk Vet Products, USA) ①のシリコン製のカフを近位尿道の周りに、②のチタン 製のポートを皮下に設置して、ポートから生理食塩水を 注入してカフを膨らませて、尿失禁が起きなくなる程度 に尿道を絞扼することによって尿失禁をコントロール する。カフには 11 × 6 mm(体重 3-6 kg 用)、14 × 8 mm (10-20 kg 用 )、14 × 10 mm(20-30 kg 用 )、14 × 12 mm (25-40 kg 用)がある。ポートには CP6(子猫、小型猫用)、 CP4(猫、小型犬用)、CP2(犬用)が用意されている。. と注射器を使って完全に抜いた後、カフによる尿道圧 迫の具合をみながら 0.5 mL の生理食塩水をポートよ り注入し、通常通り閉創した。 手術翌日、麻酔からの覚醒は良好で食欲もあり、排 便状態も正常であった。しかし、依然尿淋滴が認めら れたため、経皮的にポートより生理食塩水 0.2 mL を 追加注入した(計 0.7 mL) 。生理食塩水追加注入後、 暴れた場合や排尿姿勢の際に尿失禁があるものの、通 常の状態では尿失禁はなくなったため、抗生物質を処 方して退院させた。. 紙オムツをして対処していた。尿失禁の改善を期待し. 退院後、頻尿のため紙オムツを再度装着した。7 日後、. て当院へ紹介来院した。. 頻尿はなくなったが、寝て起きると紙オムツはたっぷ. 初診時血液検査所見:PCV 41%、TP 6.7 g/dL, 血漿. りと湿っているとのことであったため、ポートより生. TBil 0.2 mg/dL, Cre 1.4 mg/dL, Alb 3.1 g/dL で、特. 理食塩水をさらに 0.2 mL 追加注入した(計 0.9 mL) 。. に異常は認められなかった。. しかし、尿道を絞扼しすぎたせいか排尿困難となった. 初診時尿検査所見:尿 pH 7.0, 尿比重 1.021, UPC 0.01,. ため、ポートより生理食塩水を 0.1 mL 抜去した(シ. 尿沈渣に異常所見はなく、尿培養は好気性培養陰性で、. ステム内 0.8 mL)。. 特に異常は認められなかった。. 手術 2 週間後、1 日中紙オムツを装着しているもの. 初診時排泄性尿路造影検査所見:左腎は萎縮し、右腎. の日中の尿失禁はなく、就寝中のみ多量の尿失禁が認. は正常であった。腎盂や尿管の拡張は左右とも認めら. められるとのことであったため、就寝時以外は紙オム. れなかった。. ツをとるよう指示した。. 治療および経過:症例に対して獣医用人工的尿道括. 手術 3 週間後、 外に出すと初めは勢いよく排尿するが、. 約筋ポートシステム(AUS port system, Norfolk Vet. 後半は尿淋滴がみられるとのことであったため、膀胱. Products, USA) (図 1)による治療の可能性を飼い主. の超音波検査を実施してみると排尿直後にもかかわら. に示したところ、希望されたので本システムの設置を. ず膀胱内にかなりの残尿が認められた。よって膀胱の. 実施した。. 収縮力が不十分で尿を出しきれないことが尿失禁の続. 本症例には 14 × 10 mmのカフとCP2 のポートのセッ. く原因と考え、膀胱の収縮力を高めるためにベタネコー. トを使用した(図 2) 。開腹下、カフ尾側縁がちょう. ル(ベサコリン、7 mg/head TID)を処方するとともに、. ど骨盤入口のところに来るように近位尿道の周りを 2. 外に出して排尿させる時にお腹を圧迫して尿を出し切. cm の幅で鈍性剥離し、カフを装着し、カフの作動チュー. れるよう補助するように指示した。. ブを腹膜を通して、内股の皮下に設置したポートに接. 手術 4 週間後、外に出して排尿姿勢をとっても尿淋. 続した。その後システム内のエアーをポートに刺した. 滴しかみられず、お腹を圧迫しないと通常の排尿がで. 21.

(3) きないようになってきたとのことであったため、尿道. 術 1 週間後では尿失禁の改善に乏しかったため、シス. の絞扼をさらに弱めるために、ポートより生理食塩水. テム内に 0.2 mLの生理食水を追加投与した。その結果、. を 0.05 mL 抜去した(システム内 0.75 mL) 。. 尿閉や膀胱内残尿の増加を招き、システム内の生理食. 手術 5 週間後、排尿姿勢をとった時にお腹を圧迫し. 塩水を 0.1 mL、0.05 mL、0.05 mL と順次抜去する必. て尿を出し切れば尿失禁はないが、寝て起きると紙オ. 要が生じた。結果的には追加投与した 0.2 mL の生理. ムツはまだ濡れているとのことであったため、膀胱の. 食塩水はすべて抜き去った時点で、排尿自制ができる. 超音波検査を再度実施してみると、排尿直後にもかか. 状態に落ち着いた。これは 4 週間の間にカフ周りの組. わらずまだかなりの残尿が認められた。よって尿道の. 織が増生したことで、システム内の生理食塩水の量を. 絞扼をさらに弱め、排尿時により完全に排尿させ残尿. 尿失禁が続いていた 0.7 mL に戻しても、排尿自制が. をなくすために、ポートより生理食塩水をさらに 0.05. できる尿道圧が保てるようになったためと考えられた。. mL 抜去した(システム内 0.7 mL) 。. システム内の生理食塩水を順次抜去していく途中、膀. 手術 6 週間後、2、3 時間ごとに外に出し、最後にお. 胱の収縮力不足を考慮してベタネコールの投与も行っ. 腹を圧迫して尿を出し切れば尿失禁はなく、寝るとき. たが、本来は必要のない処置であったと思われた。つ. は念のため紙オムツをしているが、朝まで漏れていな. まり、人工的尿道括約筋ポートシステム設置術は、術. いとのことで、ベタネコールの内服を終了し、経過観. 後のカフ周りの組織の増生に応じて、システム内の生. 察とした。. 理食塩水を段階的に調整する必要がある処置であった. 手術 12 週後、紙オムツはしておらず、寝る前と長. と考えられた。 先に引用した人工的尿道括約筋ポートシステム設置. 時間車に乗る前は圧迫排尿するが、それ以外は自力排. 術の評価を行った 2 つの報告[2, 5]でも、最終的に尿閉. 尿のみで尿失禁はなくなったとのことであった。. に陥りシステムの除去が必要になる症例が少数あった ことが述べられている。よって今回の症例も現時点で. 考察. は良好な排尿自制がみられているが、将来的には再度. 様々な原因による難治性の尿失禁を持つ雌犬 18 頭 に人工的尿道括約筋ポートシステム設置術を行ったと. 尿閉に陥る可能性があるため、長期に注意深い観察が 必要だと思われた。 以上のように人工的尿道括約筋ポートシステム設置. ころ、すべての犬において尿失禁の程度は改善したこ [2]. とが報告されている. 。ただし、この報告において. 術は、術後も長期にわたってシステム内の生理食塩水. 機能的な排尿自制に至った犬は 18 頭中 12 頭(67%). を段階的に調整する必要があるが、システム内の生理. のみであった。我々の症例は、5 週間に渡って何度も. 食塩水を調整して尿道内圧を変えられることが本シス. システム内の生理食水の量を調節する必要があったが、. テムの利点であり、尿失禁を改善するために有用な方. 最終的にはほぼ完全な排尿自制を得ることができた。. 法の 1 つであると考えられた。. 本症例では、人工的尿道括約筋ポートシステム設置. 参考文献 [1] Arnold, S., Jäger, P., DiBartola, S.P., Lott-Stolz,. [4] H o l t , P . E . ( 1 9 9 0 ) : L o n g - t e r m e v a l u a t i o n o f. (2013): Use of a percutaneously controlled urethral hydraulic occluder for treatment of refractory urinary incontinence in 18 female dogs. Vet. Surg., 42, 440447.. [5] Reeves, L., Adin, C., McLoughlin, M., Ham, K., Chew,. [2] Currao, R.L., Berent, A.C., Weisse, C., Fox, P.. [3] D e w e y , C . , d a C o s t a , R . C . : N e u r o l o g y a n d. Neruropharmacology of Normal and Abnormal Urination (3rd ed), Dewey, C., da Costa, R.C. eds,. 22. 437-444, WILEY Blackwell, New Delhi, 2016.. G., Hauser, B., Hubler, M., Casal, M., Fairburn, A., Rüsch, P. (1989): Treatment of urinary incontinence in dogs by endoscopic injection of Teflon. J. Am. Vet. Med. Assoc., 195, 1369-1374.. c o l p o s u s p e n s i o n i n t h e t r e a t me n t o f u r i n a r y incontinence due to incompetence of the urethral sphincter mechanism in the bitch. Vet. Rec., 127, 537-542. D. (2013): Outcome after placement of an artificial urethral sphincter in 27 dogs. Vet. Surg., 42, 12-18.. [6] White, R.N. (2001): Urethropexy for the management. of urethral sphincter mechanism incompetence in the bitch. J. Small Anim. Pract., 42, 481-486..

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参照

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