空気圧シリンダの動く方向と速度の制御学習のための
ハンドリングアームシステム教材の開発
†Development of a Handling Arm System for Use as Teaching
Materials in Learning to Control the Movement Direction
and Speed of Pneumatic Cylinders
山田 貴志* 渡辺 富夫**
Takashi YAMADA Tomio WATANABE
本論文では,空気圧シリンダの動く方向と速度の制御学習のためのハンドリングアームシステム教材 の開発と,本システムの性能と指導者の視点の評価を目的とした。ハンドリングアームは,空気圧シリ ンダを駆動源に持つラックとピニオンの動力伝達を利用した回転関節,ガイド付薄型空気圧シリンダを 駆動源に持つ直動関節,薄型空気圧チャックを駆動源に持つエンドエフェクタの簡易な機構を有してい る。具体的には,まず本システムの自動制御に基づいて,飲料缶を移載するハンドリング作業が可能な 本システムの性能を確認した。次に,本システムを教材とした制御の基礎から実際の配線,操作までの 実習での使用に関して,指導者の視点から評価した。評価の結果,実習に対する興味・関心だけでなく, 流量制御弁と方向制御弁の知識を体験的に習得させることが期待でき,教材としての本システムの有用 性が示唆された。 キーワード:機械設計,機構,空気圧回路,制御弁,ハンドリングアーム
1.はじめに
生産システムの制御方法には,電気,空気圧,油圧 がある。空気圧制御機器は,経済性,安全性,環境負 荷に優れており,機械の自動化や省力化の一翼を担っ ている。また,高等学校学習指導要領(工業編) 1)では, 機械設計,原動機,電子機械などの科目において,空 気圧制御機器を扱うことになっている。そのため,空 気圧制御機器の構造,機能,利用例の理解を学習目標 とした授業では,制御の基礎から実際の配線,操作ま でを実習で習得しているものと推察される。しかしな がら,生産システムの機械に組み込まれた空気圧制御 機器を観察できる教材が少ない。 一方,本研究と関連した先行研究としては,自律型 移動ロボット 2)-4),歩行型ロボット 5)-7),ロボットアー ム8)9)を教材とした授業実践を通して,プログラムによ る計測・制御,センサ・アクチュエータ,動力伝達機 構の理解を深める学習効果が示されている。しかしな がら,生産システムでは,製品の整列や積み上げ,積 み降ろしなど,効率よく正確に移動させるために,ハ ンドリングシステムとして,ロボットアームが活用さ れているが,対象物をつかむためのエンドエフェクト までを学習できるロボットアームを教材とした学習指 導の展開や効果は,十分な知見が得られていない。 著者らはこれまでに,空気圧シリンダを駆動源に持 つラックとピニオンの動力伝達機構の仕組みの理解を 支援するための肩回旋筋力計測システム学習教材を開 発した。本教材を用いて,工業科の教員を目指す大学 生を対象とした分解・組立実習を行い,興味・関心・ 意欲,動力伝達機構の仕組みの理解を深める有効な教 材であることを示した 10)。次に,機構解析による力学 計算の理解を学習目標として,本教材の仕組みを題材 とした学習指導計画に沿い,空気圧制御機器の学習初 心者である技術科・工業科の教員を目指す大学生を対 象とした計測制御実習は,トルクと圧力の知識を深め るだけでなく,機械のエネルギー損失の気付きを与え る学習効果があることを確認した11)。 (2019 年 5 月 20 日受付,2020 年 2 月 4 日受理) * 香川大学 (正会員 A) ** 岡山県立大学 (非会員) † 2018 年 12 月本学会第 34 回四国支部大会(高知)にて 発表空気圧制御機器を用いて,適切な仕事を行うために は,力の大きさ,速度,方向を必要な仕事に応じて, 圧縮空気を制御する必要がある。この仕事の三要素を 制御する機器は,制御弁と呼ばれ,圧力制御弁,流量 制御弁,方向制御弁がある。しかしながら,肩回旋筋 力計測システムを教材とした授業実践では,力の大き さを制御する圧力制御弁を取り上げた空気圧回路の設 計学習を提案したものであり,速度を制御する流量制 御弁と方向を制御する方向制御弁を加えた空気圧回路 の設計学習へと授業展開することまでは,検討できて いなかった。そのため,著者らは,肩回旋筋力計測シ ステムを拡張して,空気圧シリンダの力の大きさを制 御する空気圧回路の設計から空気圧シリンダの動く方 向と速度を制御する空気圧回路の設計へと効果的に学 習指導が展開できるシステムを提案できないものかと 考えた。 本論文では,肩回旋筋力計測システムを拡張して, 空気圧シリンダの動く方向と速度の制御学習のための ハンドリングアームシステム教材の開発と,本システ ムの性能と指導者の視点の評価を目的としている。具 体的には,まず本システムの自動制御に基づいて,飲 料缶を移載するハンドリング作業が可能な本システム の性能を評価している。次に,本システムを教材とし た制御の基礎から実際の配線,操作までの実習での使 用に関して,指導者の視点から評価している。
2.肩回旋筋力計測システムの概要
2.1 システムの構成 肩回旋筋力計測システムは,空気圧シリンダを駆動 源 に 持 つ ラ ッ ク と ピ ニ オ ン の 動 力 伝 達 機 構 (PneumaticRobot),エアコンプレッサ,圧力制御弁と しての電空レギュレータ(SMC 製 ITV3051-312BL), インタフェースモジュール(16 ビット D-A 変換ボード (インタフェース製 PCI-3340),16ビット A-D変換ボー ド(ニッタ製 IFS-PCI-2184Q),パルスカウンタボード ( イ ン タ フ ェ ー ス 製 PCI-6201)) , Microsoft 製 WindowsXP を OS とする PC で構成されている。 2.2 回転関節 肩回旋筋力計測システムの回転関節は,PC からの ディジタルI/O 信号が D-A 変換ボードで DC 電圧に変 換され,その電圧値で 2 台の電空レギュレータに配線 された空気圧シリンダの押し側と引き側への圧縮空気 の制御により,肩回旋の外旋方向と内旋方向に移動さ せることができる。関節角度は,関節軸に取り付けら れたロータリエンコーダ(オムロン製 E6B2-CWZ6C-2000)のパルス信号をパルスカウンタボードで計測し, PCで確認することができる。肩回旋の筋力は,力覚セ ンサ(ニッタ製 IFS-90M31A50-I50)が取り付けられた グリップ 2 に力が加わる場合に出力される DC 電圧を A-D 変換ボードを介して PC で確認することができる。 操作者が肩回旋筋力計測システムを使用している様子 を図 1 に示す。右手の指は,グリップ 2 を握り締める。 前腕は,アームカバーにあてがう。左手の指は,手指 と機構の接触を防止するために,グリップ 1 を握り締 める。筋力は,グリップ 2 に取り付けられた力覚セン サの計測値に応じて,水平方向の動力伝達機構を力制 御し,操作者の肩回旋の内旋方向に発揮される力に拮 抗させることにより,定量的に評価することができる。 肩回旋筋力計測システムの回転関節の限界可動範囲を 図2に示す。アームカバーの軸の中心(JSH)を原点とし, ラックの移動方向をy 軸,y 軸に直角方向を x 軸とす る。x 軸を 0°とすると,肩の内旋方向は 70°,肩の (a) 正面 (b) 背面 図1 肩回旋筋力計測システム (参考文献10,11 より写真を引用) ロータリエンコーダ ピニオン外旋方向は 50°となり,回転関節の限界可動範囲は 120°となる。点線の矢印は,操作者の肩回旋の内旋 方向に発揮される力に拮抗させるために,空気圧シリ ンダの押し側への圧縮空気の制御により,シリンダ ロッドに連動したラックの直線運動をピニオンで回転 運動に変換し,アームカバーが軸を中心に内旋方向 70°から外旋方向 50°へと移動させるための動力伝達 の様子を示している。PneumaticRobot の組立図は, 参考文献10 に示している。
3.肩回旋筋力計測システムを拡張した
ハンドリングアームシステムの開発
3.1 教材開発の目的 本研究では,ハンドリングアームシステムの配線・ 運転・評価を学習者に行わせ,流量制御弁と方向制御 弁を体験的に習得できる教材の開発を目的とする。本 教材は,既習した肩回旋筋力計測システムの知識・技 能を活用し,さらにハンドリングアームシステムの知 図2 肩回旋筋力計測システムの回転関節の限界可動範囲 アームカバー 押し側への圧縮空気 ラック x軸(0°) y軸 軸の中心(JSH) 空気圧シリンダ グリップ2 (力覚センサ) 外旋方向 に移動 ピニオン (a) 内旋 70° (b) 中立 (c) 外旋 50° 図3 本教材の学習に関する構造図 【学習課題】 飲料缶を移載する 必要な動きを 分けて考える 動きに対応した 命令を考える 組み合わせる 【学習目標】 空気圧シリンダの動く 方向と速度を制御する 空気圧回路を理解する 【ハンドリングアームシステムの配線・運転・評価】 肩回旋筋力計測システムの知識・技能の活用 図4 ハンドリングアームシステムの構成(■は,本教材の学習内容である。) 回転関節 PC D-A変換 圧力制御弁 空気圧シリンダ パルスカウンタ ロータリエンコーダ ディジタル出力 方向制御弁 流量制御弁 ガイド付き薄型空気圧シリンダ オートスイッチ ディジタル入力 ディジタル出力 方向制御弁 流量制御弁 薄型空気圧チャック オートスイッチ ディジタル入力 インタフェースモジュール 制御弁 アクチュエータ・センサ ※筋力計測 ハンドリングアーム 直動関節 エンドエフェクタ識・技能を積み重ねて,空気圧制御機器の理解を支援 するものである。本教材の学習に関する構造図を図 3 に示す。学習課題は,ハンドリングアームシステムを 用いて,飲料缶を移載することである。学習目標は, 空気圧シリンダの動く方向と速度を制御する空気圧回 路を理解することである。学習課題を達成するための 学習指導の手順として,学習者には,まず必要な動き (回転関節,直動関節,エンドエフェクタ)を分けて考 えさせる。次に,直動関節,エンドエフェクタの動き に対応した命令を考えさせる。さらに,既習した肩回 旋筋力計測システムの回転関節,直動関節,エンドエ フェクタを組み合わせた動作原理を考えさせる。本教 材を使用する対象者は,肩回旋筋力計測システムの仕 組みを既習した工業高等学校,工業高等専門学校,理 工系大学などの機械系の生徒や学生である。 3.2 システムの構成 ハンドリングアームシステムは,アームカバーの動 きに連動し,力覚センサが取り付けられたグリップ 2 を取り外した肩回旋筋力計測システムの回転関節を包 括したシステムである。ハンドリングアームシステム 図5 ハンドリングアームシステム 飲料缶 座板1 座板2 表1 機械加工の部品リスト No. パーツ名 材質 数量 1 クランプマウント アルミ 1 2 クランプマウント アルミ 1 3 クランプ アルミ 1 4 クランプ アルミ 1 5 クランプゴム 天然ゴム 4 6 チャックマウント アルミ 1 7 シリンダベース SUS304-2B 1 8 クランプ SUS304 1 9 ブラケット SUS304 1 10 カバー SUS304-2B 1 11 バー SUS304 1 12 ホースブラケット SUS304 1 13 ホースブラケット SUS304 1 14 アダプター SUS304 2 15 軸受 SUS304 2 16 ホースブラケット SUS304 2 17 座板 SUS304-2B 2 18 ブラケット SUS304 1 19 ブラケット SUS304 1 20 ブラケット SUS304 1 21 ブラケット SUS304 1 22 ブラケット SUS304 1 23 ブラケット SUS304 1 表2 市販品の部品リスト No. パーツ名 規格 メーカー 数量 27 薄型空気圧チャック MHF2- 12D2R-M9BWVL SMC 1 28 ガイド付き薄型空気圧シリンダ MGPM20- 100A-M9BWL SMC 1 29 流量調整弁 AS1201F-M5-04 SMC 2 30 流量調整弁 AS2201F-01-04S SMC 2 31 マニホールド SS5Y3-20-02 SMC 1 32 ソレノイドバルブ SY3220-5LOU-C4 SMC 2 33 プラグコネクタ SY100-30-4A-30 SMC 4 34 レギュレータ逆流機能付 01-BE-R AR20K- SMC 1 35 サイレンサ AN10-01 SMC 2 36 ワンタッチ管継手 KQ2L04-01AS SMC 2 37 ワンタッチ管継手 KQ2S06-01AS SMC 1 38 ポリウレタンチューブ TU0425B-20 SMC 1 39 ポリウレタンチューブ TU0425BU-20 SMC 1 40 オイレスブシュ LFF-2010 オイレス 2 41 オイレスブシュ LFB-2010 オイレス 2 42 ファインU ナット FU06SUS 冨士精密 2 43 ステンレス コネクタ MAS-SG16 SUS ネオフ レックス 4 44 フレックス VFM-16 レックス ネオフ 3m 45 樹脂ワッシャー WSJW30-20-3 ミスミ 2 46 アルミフレーム HFSB8-4040-720 ミスミ 1 47 突起付ブラケット HBLFSN B8 ミスミ 2 48 先入れナット HNTT8-8 ミスミ 4 49 先入れナット HNTT8-5 ミスミ 16 50 フレームキャップ HFC8-4040-B ミスミ 2
の構成を図 4 に示す。ハンドリングアームシステムは, 直 動 関 節 と エ ン ド エ フ ェ ク タ の 機 構 を 拡 張 し た PneumaticRobot,エアコンプレッサ,制御弁,イン タフェースモジュール,Microsoft 製 WindowsXP を OS とする PC で構成されている。ハンドリングアーム システムは,肩回旋筋力計測システムと比較すると, 方向制御弁と流量制御弁の制御弁,ディジタル入出力 ボードのインタフェースモジュールが拡張されている。 方向制御弁には,空気の方向の制御が行える方向切換 弁(SMC 製 SY32205LOU-C4)を用いており,空気圧ア クチュエータの前進・後進と開・閉の制御は,方向切 換弁で行っている。流量制御弁には,片方向のみで流 量の制御が行える流量調整弁(SMC 製 AS2201F-01-04S 及び AS1201F-M5-04)を用いており,空気圧アク チュエータの速度制御は,流量調整弁で行っている。 方向切換弁の設定と動作確認は,ディジタル入出力 ボード(インタフェース製 PCI-2758AM)で行っている。 3.3 ハンドリング作業 ハンドリングアームシステムの外観を図 5 に示す。 PneumaticRobot の機構に直動関節とエンドエフェク タの機構を拡張したハンドリングアームの組立図を図 6 に示す。機械加工の部品リストを表 1 に示す。市販 品の部品リストを表 2 に示す。ハンドリングアームは, 回転関節,直動関節,エンドエフェクタの簡易な機構 を有している。ハンドリングアームシステムでは, PneumaticRobot のアームカバーの軸(JSH)の中心に対 して,半径方向に向き,質量 0.175kg,外径 53mm× 高さ 91.6mm の飲料缶をつかみ,水平を保って移載す ることを想定している。作業領域は,水平面において, 図6 ハンドリングアームの組立図
直動関節が移動できる範囲とし,図 6 において,θ 0=70°,θ1=50°,R0=321mm,R1=421mm になっ ている。ハンドリングアームの前方左右には,座板 1, 2 を配置している。ハンドリング作業は,座板 1 に飲 料缶を置き,座板 1 から座板 2 へと飲料缶の移載を自 動制御で行っている。 3.4 直動関節 拡張した直動関節の外観を図 7 に示す。直動関節は, PC からのディジタル I/O 信号がディジタル入出力ボー 図9 空気圧回路 図7 直動関節 ガイド付き薄型空気圧シリンダ 流量調整弁 薄型空気圧チャック 流量調整弁 流量調整弁 図8 エンドエフェクタ
ドで DC 電圧に変換され,その電圧値で方向切換弁に 配線されたガイド付き薄型空気圧シリンダ(SMC 製 MGPM20-100A-M9BWL)の押し側と引き側への圧縮 空気の制御により,前進・後退方向に移動させること ができる。薄型空気圧シリンダの出口側には,流量調 整弁を用いており,流れ込む空気の流量を絞ることに より,速度制御を行うことができる。前進端・後退端 は,ガイド付薄型空気圧シリンダに取り付けられた オートスイッチから出力される通電状態により,ディ ジタル入出力ボードを介して PC で確認することがで きる。 3.5 エンドエフェクタ 拡張したエンドエフェクタの外観を図 8 に示す。エ ンドエフェクタは,PC からのディジタル I/O 信号が ディジタル入出力ボードで DC 電圧に変換され,その 電圧値で方向切換弁に配線された薄型空気圧チャック (SMC 製 MHF2-12D2R-M9BWVL)のフィンガ開側と フィンガ閉側への圧縮空気の制御により,開・閉方向 に移動させることができる。薄型空気圧チャックの出 口側には,流量調整弁を用いており,流れ込む空気の 流量を絞ることにより,速度制御を行うことができる。 開端・閉端は,薄型空気圧チャックに取り付けられた オートスイッチから出力される通電状態により,ディ ジタル入出力ボードを介して PC で確認することがで きる。 3.6 空気圧回路 ハンドリングアームシステムの配線・運転・評価を 行うためには,回転関節,直動関節,エンドエフェク タを駆動する方向の設定と動作確認の方法を学習者に 理解させる必要がある。回転関節を駆動する方向の設 定と動作確認の方法については,肩回旋筋力計測シス テムにおける空気圧シリンダの押し側と引き側への圧 縮空気の制御及び関節軸に取り付けられたロータリエ ンコーダの関節角度の計測の知識・技能を活用するも のであり,学習指導の方法は,参考文献11 で報告して いる。直動関節とエンドエフェクタを駆動する方向の 設定と動作確認の方法については,ガイド付き薄型空 気圧シリンダと薄型空気圧チャックの動く方向や速度 を制御する空気圧回路を学習者に理解させる必要があ る。ガイド付薄型空気圧シリンダと薄型空気圧チャッ クの動く方向や速度を制御する空気圧回路を図 9 に示 す。配線盤を図 10 に示す。配線盤は,PC,インタ フェースモジュール,空気圧制御機器,電源回路を学 習者に配線させることにより,ガイド付き薄型空気圧 シリンダと薄型空気圧チャックの動く方向や速度を制 御する空気圧回路を体験的に習得させる学習指導に役 立てることができる。 3.7 動作原理としてのシステムの評価 ハンドリングアームシステムの動作原理を表 3 に示 す。座板1 から座板 2 へと飲料缶を移載するハンドリ 図10 配線盤 ディジタル入出力ボード 電源 オートスイッチ 方向切換弁 表3 ハンドリングアームシステムの動作原理(■は,本教材の学習内容である。) 状態番号 関節 ディジタル入出力ボード 回転関節 直動関節 エンド エフェクタ 第N ビット(出力部) 出力値 (16 進数) 第N ビット(入力部) 入力値 (16 進数) 直動関節 エンド エフェクタ 直動関節 エンド エフェクタ 1 2 3 4 1 2 3 4 ① 内旋 後退 開 0 1 0 1 0a 0 1 0 1 0a ② 内旋 前進 開 1 0 0 1 09 1 0 0 1 09 ③ 内旋 前進 閉 1 0 1 0 05 1 0 1 0 05 ④ 内旋 後退 閉 0 1 1 0 06 0 1 1 0 06 ⑤ 外旋 後退 開 0 1 0 1 0a 0 1 0 1 0a ⑥ 外旋 前進 開 1 0 0 1 09 1 0 0 1 09 ⑦ 外旋 前進 閉 1 0 1 0 05 1 0 1 0 05 ⑧ 外旋 後退 閉 0 1 1 0 06 0 1 1 0 06
ング作業は,状態番号①から⑧へと順番に関節を制御 する必要がある。表 3 のディジタル入出力ボードの第 N ビットは,論理の 1,0,信号があるとき 1,ないと き 0 を示している。ディジタル入出力ボードは,1 バ イト出力(もしくは 1バイト入力)の制御が可能である。 例えば,状態番号①では,回転関節が内旋方向 70°に ある場合に,ディジタル入出力ボードの出力部である 第2 ビットと第 4 ビットに信号 1 として,0a(16 進数) となる出力値を設定することにより,ガイド付薄型空 気圧シリンダが後退するとともに,薄型空気圧チャッ クが開くように制御される。また,ディジタル入出力 ボードの入力部である第 2 ビットと第 4 ビットに, オートスイッチがオンとなって電流が流れる状態を示 す信号 1 として,0a(16 進数)となる入力値を読み取る ことにより,ガイド付薄型空気圧シリンダが後退し, 薄型空気圧チャックが開いている状態を確認すること ができる。プログラムのソースコードは,C++言語で 記述している。飲料缶を移載するハンドリングアーム システムの回転関節,直動関節,エンドエフェクタの 限界可動範囲を図11 に示す。これにより,本システム の自動制御に基づいて,飲料缶を移載するハンドリン グ作業が可能な本システムの性能を確認した。 3.8 教材としてのシステムの評価 本研究では,教材としてのハンドリングアームシス テムの有用性を評価した。具体的には,工業高等学校 の実習助手を対象として,流量制御弁と方向制御弁を 観察させるとともに,ハンドリング作業を実演した。 次に,ハンドリングアームシステムを教材とした制御 の基礎から実際の配線,操作までの実習での使用に関 して,指導者の視点から予想される学習者の反応を把 握するための調査を実施した。調査対象者は,工業高 等学校に勤務する実習助手12 人(平均年齢 31.3 歳,平 均教職年数 5.8 年)である。調査内容は,3 項目とした。 問 1 が「学習者が実習に対する興味・関心を持つと思 うか。」,問 2 が「学習者が流量制御弁と方向制御弁 の知識を体験的に習得できると思うか。」を 5 件法で 問うことにした。問3は,自由記述で記入させた。5件 法は,5:はい,4:どちらかと言えばはい,3:どち らとも言えない,2:どちらかと言えばいいえ,1:い いえ,とした。 調査結果を表 4 に示す。問 1 の「実習に対する興 味・関心」については,4.8と高く評価していることが 確認された。また,「生産システム,生産工場,機械 の自動化をイメージさせやすい教材として良いと思 う。」,「制御技術への興味・関心にもつながると思 (1) 状態番号① (2) 状態番号② (3) 状態番号③ (4) 状態番号④ (5) 状態番号⑤ (6) 状態番号⑥ (7) 状態番号⑦ (8) 状態番号⑧ 図11 ハンドリングアームシステムの回転関節,直動関節,エンドエフェクタの限界可動範囲 表4 工業高等学校の実習助手を対象とした 指導者の視点からの調査結果 調査 結果 問 内容 平均 標準偏差 1 学習 者が実習(配線・運転・評 価)に対する興味・関心を持つと 思うか。 4.8 0.4 2 学習者が流量制御弁と方向制御 弁の知識を体験的に習得できる と思うか。 4.6 0.7
う。」などの自由記述が得られた。問 2 の「流量制御 弁と方向制御弁の知識の体験的な習得」については, 4.6と高く評価していることが確認された。また,「空 気 圧 制 御 機 器 の 教 材 は 少 な い 。 実 習 で 使 っ て み た い。」,「見て,触れて,体験できることで,より深 く理解させることができると思う。」などの自由記述 が得られた。 調査結果により,実習に対する興味・関心だけでな く,流量制御弁と方向制御弁の知識を体験的に習得さ せることが期待でき,教材としての本システムの有用 性が示唆された。
4.おわりに
本論文では,肩回旋筋力計測システムを拡張して, 空気圧シリンダの動く方向と速度の制御学習のための ハンドリングアームシステム教材の開発と,本システ ムの性能と指導者の視点の評価を目的とした。具体的 には,まず本システムの自動制御に基づいて,飲料缶 を移載するハンドリング作業が可能な本システムの性 能を確認した。次に,本システムを教材とした制御の 基礎から実際の配線,操作までの実習での使用に関し て,指導者の視点から評価した。評価の結果,実習に 対する興味・関心だけでなく,流量制御弁と方向制御 弁の知識を体験的に習得させることが期待でき,教材 としての本システムの有用性が示唆された。 なお,本研究では,工業高等学校の実習助手を対象 に,本システムを教材とした実習での使用を想定させ, 指導者の視点から有用性を評価しているが,今後の課 題としては,調査対象者(工業科の教諭・生徒,理工系 大学の学生など)やその人数を拡大して,教育的効果を 検討する必要があるものと考えられる。参考文献
1) 文部科学省:高等学校学習指導要領解説工業編, http://www.mext.go.jp/component/a_menu/educa tion/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/07/13 /1407073_14.pdf (最終アクセス日:2019 年 5 月 16 日) 2) 嶋田彰子・山菅和良・針谷保男・鈴木道義:自律 型ロボット教材を活用したプログラムと計測・制 御学習に関する授業方法の開発と評価,日本産業 技術教育学会誌,第 49 巻,第 4 号,pp.297-305 (2007) 3) 紅林秀治・青木浩幸・室伏春樹・江口啓:自律型 3 モータ制御ロボット教材を用いた授業による学 習効果の検討,日本産業技術教育学会誌,第51 巻, 第3 号,pp.195-202 (2009) 4) 古平真一郎・坂本弘志・針谷安男:自律型ロボッ ト教材を用いた「プログラムによる計測・制御」 学習の授業実践に基づく学習効果の検証,日本産 業技術教育学会誌,第51 巻,第 4 号,pp.285-292 (2009) 5) 伊藤陽介・垣内洋範・大泉計・菊地章:四足型ロ ボットの歩行運動を制御するための教育用ソフト ウェアの開発,日本産業技術教育学会誌,第49 巻, 第1 号,pp.1-9 (2007) 6) 松永泰弘・牧野晃佳・四元徹:サーボモータを用 いた教材用二足歩行模型に関する研究,日本産業 技術教育学会誌,第 52 巻,第 2 号,pp.87-94 (2010) 7) 紅林秀治・高山大輝・樋口大輔・菱田亘・大村基 将・江口啓:16 自由度人型ロボット教材の開発, 日本産業技術教育学会誌,第 55 巻,第 1 号, pp.25-34 (2013) 8) 森慎之助・山本透・森岡弘・白濱弘幸:中学校技 術・家庭科(技術分野)におけるロボット技術を用 いた動力伝達および機構学習,日本産業技術教育 学会誌,第48 巻,第 3 号,pp.193-200 (2006) 9) 金田忠裕・藪厚生・安藤太一・大崎純平・川崎直 哉:ユニットの組み合わせによって構成可能なロ ボットアーム教材の開発,日本産業技術教育学会 誌,第59 巻,第 4 号,pp.273-279 (2017) 10) 山田貴志・渡辺富夫:空気圧駆動型肩回旋筋力計 測システム学習教材の開発,日本産業技術教育学 会誌,第56 巻,第 2 号,pp.125-133 (2014) 11) 山田貴志・渡辺富夫:空気圧駆動型肩回旋筋力計 測システム学習教材を用いた計測制御実習の提案, 日本産業技術教育学会誌,第 57 巻,第 4 号, pp.241-250 (2015)Abstract
In this study, we developed a handling arm system for use in teaching students how to control the movement direction and speed of pneumatic cylinders. The handling arm gives a simple structure with a rotary joint that uses the power transmitted by a rack and pinion with a pneumatic cylinder as the drive source, a prismatic joint with a guided thin pneumatic cylinder as the drive source, and an end effector with a thin pneumatic chuck as the drive source. More specifically, first we confirmed the performance of the system during automatic control, and found that it could perform handling work in which beverage cans were transferred from one location to another. Next, we evaluated the system from the perspective of an instructor regarding its use as teaching material during actual training from basic control to actual wiring and operation. We found that it not only spurred curiosity and interest during training, but also allowed students to gain hands-on knowledge of flow control valves and directional control valves, suggesting that the system could be effective teaching materials. Key words: Mechanical design, Mechanism, Pneumatic circuit, Control valve, Handling arm