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東日本大震災後の産地ブランドに対する消費者評価 -選択型コンジョイント分析法を用いた福島県産コメとモモの定量分析-

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フードシステム研究第 27 巻4号 2021. 3 【報告論文】

東日本大震災後の産地ブランドに対する消費者評価

-選択型コンジョイント分析法を用いた福島県産コメとモモの定量分析-

東京農工大学

観山 恵理子

九州大学

馬奈木 俊介

Estimation for Consumer’s Evaluation of Agricultural Products

after Great East Japan Earthquake

-A Choice Based Conjoint Analysis of Rice and Peach Produced in Fukushima-

Tokyo University of Agriculture and Technology Eriko MIYAMA Kyushu University Shunsuke MANAGI In this article, we examine how consumers evaluate agricultural products from radio affected area after Great East Japan Earthquake with choice based conjoint analysis. Our analysis focus on both product attributes and personal attributes that affect consumer’s evaluation. Results show that consumers are still very concerned about consuming agricultural products made in Fukushima and Tohoku area almost 4 years after the disaster. Female living with children in western Japan have the severest evaluation of the Fukushima made products. Information improves consumer’s evaluation of the Fukushima made products. Processing can be a good marketing strategy for Fukushima made products.

Keywords: consumer evaluation, willingness to pay, conjoint analysis, nuclear accident, disaster

1. 研究の背景と目的 2011 年 3 月に発生した東日本大震災とそれに続 く原子力発電所の事故(以下原発事故)によって 東北・関東地方では放射性物質の飛散を起因とす る農産物の風評被害が問題となった。2020 年現在、 事故発生から9 年が経過したが、原子力発電所が 立地する福島県産の農産物価格は、品目によって は未だ震災前よりも低い水準で推移している。例 えば、コメの価格は2014 年から 2017 年にかけて 回復傾向にあったのに対し、モモの価格は2018 年 まで回復が見られなかった。しかし、2019 年には、 7 月のモモの価格は震災前に近い水準まで回復し た一方で、コメの価格は全国全銘柄平均値と比較 して相対的に低い水準のままである(註1)。 本研究では、このように異なる価格の動きを示 している福島県産のコメとモモを取り上げ、原発 事故発生から4 年が経過した時点での消費者の評 価を定量的に分析することを目的とする。コメと モモを取り上げる理由は、(1)価格の回復傾向に 差異があること、(2)福島県の気候条件に合い、 震災前より産地ブランドを形成していた代表的な 農産物であること、(3)主食であるコメと代替品 が多く嗜好品的な性質を持つモモでは消費の特性 が異なるため、有効な対策も異なる可能性がある こと、の3 点である。 加えて、本研究では、福島県産のコメとモモに ついて購入に抵抗を示す消費者の特性も明らかに し、品目別に、消費者の層ごとにターゲットを絞 った対策を講じるための情報を得ることを目的と する。 2. 分析の枠組み 1)先行研究 東日本大震災後の東北・関東地方産農産物の消 費者評価については国内で多数の先行研究がある。 特に 2011 年から 2012 年までの災害直後の期間 に多くのアンケート調査が実施され、原発事故の 影響を受けた地域産の多様な農産物に対して、ど 論文原稿 - Manuscript

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報告論文 のような要因が消費者評価に影響を与えたかが分 析された。 東日本大震災後2 年あまりの研究成果をレビュ ーした門間(2013)によれば、震災発生直後に実 施されたアンケート調査等を用いた多くの研究で、 東日本大震災とそれに続く原発事故によって放射 性物質の農産物に対するリスクが認識され、消費 者の消費行動に影響を与えたと述べられている。 いずれの先行研究においても福島県をはじめと する原発事故の影響を受けた産地の農産物に対す る消費者評価は厳しいものであることが確認され ている(有賀 2016 など)。加えて、情報、居住地、 被災地でのボランティア経験といった消費者の特 性が被災地産農産物への消費者評価に影響するこ とが示された(竹下 2014; 谷口・大竹 2014; Ito and Kuriyama 2017)。これらをうけて本研究で は、特性が異なる品目への評価が先行研究で分析 されたような消費者の特性によってどのように異 なるのかを明らかにするため、コメに加えて嗜好 品的な特徴を持つモモを分析対象とする。 2)分析方法 本研究では、アンケートを通じて消費者に仮想 的に購入したい商品を選択してもらい、消費者の 選好を推定する選択型コンジョイント分析を用い る(註2)。図 1 のような選択肢をコメとモモのそ れぞれについて回答者に8 回提示し、最も購入し たいもの、あるいはどれも買わない、のいずれか を選択してもらう。なお、コメは自宅用の白米 5 ㎏、モモは自宅用の白桃1 個の購買についてたず ねた。提示する商品のプロファイルについては、 表1 の商品属性を用い、Sawtooth Software 社の提 供する「SMRT」というソフトウエアによって「1 人に見せるカード数」は4 種類とどれも買わない の5 枚、「1 人が選択する回数」は 8 回、回答者数 は5,000 人と設定した結果出力された 10 パターン のプロファイルセットを回答者にランダムに割り 付けた(註3)。 商品属性のうち、「被災地復興支援ラベル」は、 このラベルが貼られた商品の売り上げの一部が東 日本大震災の被災者(主に食品の生産者など)に 支払われることを意味する。「検査機関」は、食品 に含まれる放射性物質の量を計測し、被ばくの程 度(実効線量)を計算する機関や場所を表す。回 答者には、選択肢を表示する前に表2 のような形 でこれらの商品属性の説明を行った。 産地については、福島県に加えて、モモとコメ のそれぞれについて、事故が発生した原子力発電 所からの距離と産地のブランド力が異なる産地を 設定した。具体的には、原子力発電所からの距離 が比較的近い関東地方に位置し、代表的な産地ブ ランドがない県としてコメとモモの両方で茨城県 を、原子力発電所から一定の距離があり、ある程 度の生産量や産地ブランドが存在する産地として コメは北海道、モモは岡山県を、原子力発電所の 影響を受けた東北地方に立地し、ある程度の産地 ブランドが存在する県としてコメは宮城県を、モ モは山形県を、東北地方以外に立地する日本にお ける最も代表的なブランド産地としてコメは新潟 県、モモは山梨県を、原子力発電所から遠く、代 表的な産地ブランドがない産地としてモモとコメ の両方について九州地方を設定した(註4)。 得られたデータは、Train(2003)による混合ロ ジットモデルを用いて分析する。混合ロジットモ デルでは、McFadden(1974)による条件付きロジ ットモデル分析と比較して IIA(Independent of Irrelevant Alternatives)条件を緩和し、個人の選好 の多様性を考慮することができるという利点があ る。本研究では、モデルの頑健性を確認するため に、個人属性を説明変数に含まず、商品属性の効 果を検証する主効果モデルと、個人属性×商品属 性の交差項を説明変数としてモデルに含む交差項 モデルを推計する。このようにして推計された係 数をもとに、平均的な個人の各属性に対する限界 支払い意思額(Marginal Willingness to Pay: MWTP) をHensher et.al (2005)に倣い推計する。 本研究における交差項モデルでは、年齢や性別 といった一般的な個人属性の他に、先行研究にお いて被災地産農産物への消費者評価に影響がある ことが認められた知識、居住地、さらに被災経験 を消費者の商品選択に影響を与える説明変数とし て設定した(註5)。加えて、近年増加が指摘され ている加工・業務用需要との関連を分析するため、 加工品の消費と外食の頻度を説明変数に加えた

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フードシステム研究第 27 巻4号 2021. 3 (註6)。各変数の定義は表 3 のとおりである。原 発事故と放射性物質の飛散に関連する知識につい ては、表4 にある質問項目すべてに回答してもら い、正答率が30%未満だった設問は 2 点、その他 の設問については1 点とし、10 点満点で評価した 数値を回答者の知識を表す変数として分析に使用 した。 図 1 アンケート回答者に示された選択肢の一例 出所: 筆者作成 表1 設定した商品属性とその水準 出所: 筆者作成 表2 商品属性に関する説明 出所: 筆者作成 表3 説明変数一覧 出所: アンケートデータより筆者作成 表4 知識を問う問題の正答率と配点 出所: アンケートデータより筆者作成 3)データ 分析に用いたデータは、2015 年 2~3 月にかけ て、日経リサーチを通じて行ったWeb アンケート 調査より得た。調査対象者は日本全国の 20 歳か ら 69 歳までの男女で、地域ごとの人口構成比に 合わせて調査対象者を抽出した。全回答者数は 5,227 人であった。本研究では、「購入したいと思 う食品に関する質問では、確信をもって選ぶこと ができましたか」という質問に対して「まったく 確信をもって選択できなかった」と答えた標本、 あるいは普段「自宅用の白桃(生食用)は購入し ない」または「白米(5kg)は購入しない」と答え た標本、のいずれかに当てはまる場合に分析から 除外した。また、分析に用いる個人属性が未回答 のため欠損値となっている標本も除外した結果、 コメの有効回答者数は3,825 人、モモの有効回答 者数は3,019 人であった。 3. 分析結果 モデルに含まれる変数とその係数の推計結果は 表5 の通りである。なお、産地は茨城県、購入場 所はスーパーマーケット、放射性物質の検査機関 は大学等の研究機関を基準とした場合の推計値で ある。 まず、主効果モデルの推計結果について述べる。 産地については、コメ、モモのいずれも福島県産 の評価は他県と比較して低く、更に宮城県や山形 県といった東北地方に含まれる産地もその他の産 地と比較して評価が低い傾向が見られた。これら の地域では、福島の原子力発電所から距離が近い 属性 価格(コメ/モモ) 産地(コメ/モモ) 購入場所 検査機関 被災地復興支援ラベル 1,500円/100円 福島県/福島県 農作物直売所(農協などが運営) 店頭で自分で検査 あり 2,000円/150円 茨城県/茨城県 スーパーマーケット 販売店の自主検査 なし 2,500円/200円 新潟県/山梨県 小売店(八百屋) 農協やその他の生産者団体 3,000円/250円 北海道/岡山県 コンビニエンスストア 大学等の研究機関 3,500円/300円 宮城県/山形県 インターネット 国や自治体 九州地方/九州地方 百貨店 水準 食品の特性 説明 被災地復興支援ラベル 売上の一部が東日本大震災の被災者(主に食品の生産者など)を支援することに活用されることを示しています。 食品に含まれる放射性物質の量を計測し、被ばくの程度(実効線量)を計算する機関や場所を表します。 ・「店頭で自分で検査」では、あなたが店頭で直接計測して調べられることを表します。 ・「販売店の自主検査」は、販売店が独自に検査した結果を商品に表示することを表します。 ・「農協やその他の生産者団体」は、農協や生産者団体が独自に検査した結果を商品に表示することを表します。 ・「大学等の研究機関」は、大学等の研究機関が検査した結果を商品に表示することを表します。 ・「国や自治体」は、国や自治体が検査した結果を商品に表示することを表します。 ・「店頭で自分で検査」以外では、あなたが直接計測して調べることができません。 放射線の検査機関 変数 変数の説明 平均値コメ 平均値モモ 標準偏差コメ 標準偏差モモ 年齢 回答者の年齢(20歳~69歳まで1歳刻みで回答) 47.71 49.43 13.74 13.37 男性 男性=1、女性=0 0.56 0.53 0.50 0.50 東北に居住 回答時東北地方に居住=1、その他=0 0.06 0.07 0.24 0.25 西日本に居住 回答時西日本に居住=1、その他=0 0.37 0.37 0.48 0.48 東北地方への愛着 最も愛着がある都道府県として東北地方に属する県を回答=1、その他=0 0.07 0.08 0.25 0.26 大卒 大卒=1、その他=0 0.59 0.58 0.49 0.49 子供と同居 子供(年齢不問)と同居=1、その他=0 0.41 0.43 0.49 0.50 高所得 年収801万円以上=1、800万円以下=0 0.28 0.30 0.45 0.46 加工品消費頻度 よく食べるまたは時々食べる=1、ほとんど食べないまたは全く食べない=0 0.43 0.43 0.50 0.50 外食頻度 毎日= 6 、週に3~6回 = 5、週に1~2回 = 4、 月に2~3回=3、月に1回程度=2、 月に1回未満=1、めったに外食をしない= 0 2.88 2.90 1.29 1.27 知識 原発事故と放射性物質の飛散に関連する 質問事項への回答に基づいた得点合計 (10点満点) 2.75 2.81 1.75 1.71 被災経験 東日本大震災で被災経験がある=1、東日本大震災で被災経験がない= 0 0.27 0.28 0.45 0.45 どれも買わないダミー 購入したい商品を選択する際に「どれも買わない」を選択した=1、それ以外=0 0.20 0.20 0.40 0.40 設問 正答率(未回答を除く) 配点 「ベクレル(Bq)」は、「放射線物質が放射線を出す能力の強さ」を表 す単位のことである 47.78% 1 放射線によってヒトに健康被害が発生した場合、放射線を浴びた本 人の孫まで影響が受け継がれることが科学的に証明されている 31.88% 1 一般的な日常生活で1人のヒトが太陽や土壌などから受ける放射線 の年間の総線量は、世界平均で5ミリシーベルトから7ミリシーベルト の間である 15.70% 2 原発事故後に放射性物質の飛散によって、農産物の出荷制限が行 われた産地は福島県のみである 67.45% 1 2015年2月現在でも、放射性物質の問題によって福島県の一部では 米の作付制限が行われている 60.57% 1 原発事故後に放射性物質の飛散によって、2011年産の福島県産の 桃は一時出荷制限の対象になった。 9.52% 2 原発事故後に山形県全域で、出荷制限の対象となった品目はクマ の肉のみである。 5.16% 2 Q: 以下の文章について、あなたのご意見にあてはまる方をお選びください。(それぞれひとつずつ) 1.そうであると思う 2.そうではないと思う 3.わからない・どちらでもない

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報告論文 というイメージがブランド力による正の評価を打 ち消す効果を持っていたと推察される。一方、原 発事故のあった被災地から遠い九州産は評価が高 い傾向が見られた。また、新潟県や岡山県といっ た東北地方以外のブランド産地は高評価であった。 これらの結果より、今回のアンケートでは、東北 のブランド力よりも原子力発電所から遠いという イメージの方が消費者に高く評価されたと言える。 購入場所についてはスーパーマーケットの評価が 最も高く、次いで直売所の評価が高い。その一方 でインターネットやコンビニでは評価が低かった。 ただし、モモにおいては、直売所、百貨店、小売 店の評価が近い値であった。検査主体については、 「大学等の研究機関による検査」の評価が最も高 く、それに次いでコメでは「農協やその他の生産 者団体」が、モモではそれに加えて「国や自治体」 が評価される結果となった。一方で、「店頭で自分 で検査」や「販売店の自主検査」といった組織的 な保証がない検査の評価は低かった。被災地復興 支援ラベルの係数は統計的に有意であるものの係 数の値は小さいため、消費者評価への影響は限定 的である。 次に、交差項モデルの推計結果について述べる。 年齢は福島県産のコメ、モモへの消費者評価と統 計的に有意な関係が見られなかった。性別は、男 性の方が福島県産を高く評価する傾向があった。 居住地については、モモのみ、西日本に居住して いる人の方が福島県産への評価が低くなる結果と なった。一方で、東北地方に愛着を持っている人 は、コメとモモの両方で福島県産への評価が高い 傾向がみられた。モモでは、これに加えて、高所 得、加工品の消費頻度が高い、東日本大震災で被 災経験を持つ、といった特性を持つ人が福島県産 を高く評価する傾向にあった。一方、外食の頻度 や学歴については、コメ、モモのいずれについて も福島県産への評価に有意な影響を及ぼさないと いう推計結果となった。また、子供と同居してい る場合には福島県産への評価が下がる結果となっ た。 原発事故や放射性物質に関する知識を問う設問 群の得点を表す「知識」については、コメとモモ の両方で推計された係数は正で統計的に有意であ り、正しい知識は福島県産農産物への評価を高め る効果があることがわかった。 表 5 推計結果 出所: アンケートデータより筆者作成 コメ主効果モデル コメ交差項モデル コメ主効果モデル モモ主効果モデル モモ交差項モデル モモ主効果モデル 説明変数 係数 係数 MWTP(円) 係数 係数 MWTP(円) 価格 -0.001*** -0.001*** -0.012*** -0.012*** どれも買わないダミー -3.207*** -3.191*** -2308 -2.305*** -2.311*** -192 福島県産 -0.581*** -0.732*** -418 -0.332*** -0.771*** -28 新潟県産/山梨県産 0.723*** 0.728*** 520 0.619*** 0.622*** 52 北海道産/岡山県産 0.625*** 0.620*** 450 1.023*** 1.027*** 85 宮城県産/山形県産 0.076** 0.083** 55 0.459*** 0.454*** 38 九州産 0.378*** 0.382*** 272 0.518*** 0.523*** 43 直売所 -0.287*** -0.264*** -206 -0.156*** -0.156*** -13 コンビニ -0.715*** -0.699*** -514 -0.672*** -0.671*** -56 百貨店 -0.519*** -0.530*** -374 -0.228*** -0.229*** -19 小売店(八百屋) -0.382*** -0.381*** -275 -0.163*** -0.163*** -14 インターネット -0.693*** -0.693*** -499 -0.815*** -0.820*** -68 店頭で自分で検査 -0.428*** -0.426*** -308 -0.312*** -0.310*** -26 販売店の自主検査 -0.37*** -0.369*** -266 -0.297*** -0.297*** -25 農協やその他の生産者団体 -0.06** -0.068*** -43 -0.077*** -0.077*** -6 国や自治体 -0.02 -0.0036 -14 -0.062** -0.063** -5 復興支援の有無 被災地復興支援ラベル 0.064*** 0.056*** 46 0.079*** 0.079*** 7 年齢×福島県産 -0.003 0.0004 男性×福島県産 0.419*** 0.286*** 西日本居住×福島県産 -0.022 -0.294*** 東北への愛着×福島県産 0.376*** 0.729*** 大卒以上×福島県産 -0.020 -0.058 子供と居住×福島県産 -0.246*** -0.267*** 高所得×福島県産 0.083 0.197** 加工品消費頻度×福島県産 0.021 0.276*** 外食頻度×福島県産 -0.010 -0.001 知識×福島県産 0.057*** 0.094*** 被災経験×福島県産 0.111 0.187** 観測数 30,600 30,600 24,152 24,152 対数尤度(最大) -39894.727 -39888.737 -32019.365 -31948.752 *** 有意水準1%、**有意水準5%、*有意水準1%で統計的に有意 産地(茨城県基準) 購入場所(スーパー基準) 放射性物質検査 (大学等の研究機関基準) 個人属性

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フードシステム研究第 27 巻4号 2021. 3 4. 結論 本研究では、選択型コンジョイント分析法を用 いて、福島県で産地ブランドを形成していたモモ とコメに対する消費者評価を定量的に分析した。 その結果、福島県産は他県産と比較して震災発 生から4 年が経過しても他県産よりも低く評価さ れていることが明らかとなった。東北地方内の他 の産地についても九州や西日本の産地と比較する と支払い意思額が低かった。この分析結果より、 消費者は、原発事故前の産地ブランドよりも、事 故が発生した原子力発電所からの距離を重要視し ていることが示唆された。その他の商品属性につ いては、大学等の研究機関による検査を実施した 上で、スーパーマーケットや直売所で販売される ものが最も高い評価を得た。被災地復興支援ラベ ルは、福島県産農産物の評価を高める効果が認め られたが、効果の大きさは限定的であるため、こ の方法で被災地を支援するためのコストと比較し て収益が高い場合にのみラベルの貼付が実施され ることが望ましい。 個人属性については、福島県産農産物の購入に 大きな抵抗を示さないと考えられる購買層の特性 は、コメとモモの両方で、東北地方に愛着がある ことと正しい知識を持っていることであった。こ の結果から、福島県産農産物の販売においては、 より正確な知識を広め、産地への愛着を高めるマ ーケティングが有効であることが示唆された。モ モでは、これに加えて高所得であること、被災経 験があること、そして、加工品の消費頻度が高い ことが福島県産への評価を高める結果となった。 一方で、根強い抵抗を示す層は、女性、ならび に子供と同居している人々であった。モモについ ては、これに加えて西日本に居住している人々も 福島県産への評価が低い傾向にあった。 商品属性については、概してコメとモモでは類 似する推計結果となったが、個人属性に関する推 計結果に差異が認められた点に注目したい。主食 であり、日常的に広く生産・消費されるコメに対 して、モモは嗜好品であり、代表的な産地や消費 の頻度が限定されている上に個人の嗜好が消費に より強く反映されるため、コメよりも多くの個人 属性が福島県産への評価に対して統計的に有意と なったことが考えられる。本研究の分析結果より、 モモでは、居住地域に応じて被災産地への共感や 愛着を高めるマーケティングや、高所得で加工品 消費頻度の高い男性をターゲットとした商品の開 発が有効であるといえる。 (註1)コメの価格については、農林水産省により公 表されている主食用米の全銘柄平均価格と福 島県各地の銘柄平均価格の比較、モモの価格に ついては、東京都中央卸売市場年報における全 国のモモの平均価格と福島県産モモの価格の 比較検討による。 (註 2)本調査におけるアンケートの質問項目は、 Ito and Kuriyama (2017)の 2011 年調査の質問項 目を参考として構成した。 (註3)SMRT によるプロファイル作成では、計算の 効率性を高めた上で、属性同士の交差効果を考 慮できるプロファイル作成のアルゴリズムを 選 択す るこ とが できる 。詳 しくは Sawtooth Software, Inc. (2017) pp.16-19 を参照のこと。 (註4)原発事故後の生鮮食品小売りにおいて、原発 事故の影響を受けていないことを示すために 「西日本産」や「九州産」という表記が多く見 られたこと、また、コメとモモのいずれについ ても九州地方に突出して生産量の高い産地が 存在しないことから、特定の県名ではなく、九 州地方という表現を用いた。 また、本研究において、コメのブランド力に ついては、知名度、連想、ロイヤルティ、知覚 品質、イメージといったコメのブランドの構成 要素を総合的に評価した小池ら(2006)におい て、ブランド力の総合評価が上位5 位に入って いる、新潟県、宮城県、山形県、北海道産をブ ランド力のある産地として考える。モモについ ては、同様の研究成果が無いため、一般的に日 本における青果物の建値機能を持っていると 言われている東京都中央卸売市場での取扱量 が2011 年から 2015 年にかけて連続して 5 位 以内に入っている山梨県、山形県、ならびに単 価が連続して5 位以内に入っており、数量が 4 年間10 位以内にある岡山県をブランド力のあ

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報告論文 る産地として考える。 (註5)被災経験については、2011 年の東日本大震 災において、帰宅困難(災害による宿泊あるい は徒歩での帰宅経験)、24 時間以上の通信手段 の断絶(電話・インターネットなど)、24 時間 以上のライフライン(電気、ガス、水道のいず れか)の断絶 、家財道具や生産設備等の損失・ 遺失、住居の倒壊・流失(居住不可能な状態)、 住居の破損(修復後居住可能な状態)、24 時間 以上の避難所滞在 、全治 2 週間以上のケガ、 2 親等以内の親族の死亡(災害を直接の原因と する)、災害を直接の原因とした失業、のいずれ かの項目に「はい」と答えた場合に被災経験あ りと定義した。 (註6)加工食品は、コメについては、原型を残さな い米の加工食品(米こうじ味噌、米粉パンなど) モモについては、原型を残さない白桃の加工食 品(ジュース、桃ヨーグルト、ゼリーなど)と 定義し、それぞれ自宅で食べる頻度をたずねた。 参考文献 有賀健高(2016)『原発事故と風評被害―食品の放射 能汚染に対する消費者意識―』昭和堂.

Hensher, D. A., Rose, J. M. and W. H. Greene (2005) Applied Choice Analysis, Cambridge University Press. Ito, N. and K. Kuriyama. (2017) Averting Behaviors of Very Small Radiation Exposure via Food Consumption after the Fukushima Nuclear Power Station Accident, American journal of Agricultural Economics 99(1): 55-72. https://doi.org/10.1093/ajae/aaw078. 小池 直・山本康貴・出村克彦(2006)「ブランド力の 構成要素を考慮した農畜産物における地域ブラ ンド力の計量分析―インターネットリサーチか らの接近―」『北海道大学農經論叢』62: 129-139. 門間敏幸 (2013)「放射能汚染地域の農業・食料消費 に関する研究動向」『農業経済研究』85(1):16-27. https://doi.org/10.11472/nokei.85.16.

McFadden, D. (1974) Conditional Logit Analysis of Qualitative Choice Behavior, in P. Zarembka, ed., Frontiers in Econometrics, Academic Press, pp. 105-142.

Sawtooth Software, Inc. (2017) The CBC System for

Choice-Based Conjoint Analysis, CBC Technical Paper https://sawtoothsoftware.com/uploads/sawtoo thsoftware/originals/CBC%20Technical%20P aper%20(2017).pdf (2020 年 12 月 11 日参照). 竹下広宣(2014)「放射性物質汚染食品に対する消費 者購買行動の定量分析―福島第1原子力発電所 事故による被災地産人参に対するWTP の低下―」 『フードシステム研究』21(3):153-157. https://doi.org/10.5874/jfsr.21.153 谷口葉子・大竹秀男(2014)「食品の「応援消費」の 行動決定要因の分析―3.11 被災地でつくられた食 品の購買行動を例に―」『フードシステム研究』 21(3):158-163.

Train, K. E. (2003) Discrete Choice Methods with Simulation, Cambridge University Press.

[付記]本稿は、環境省「第Ⅱ期 環境経済の政策 研究」の助成を受けた研究成果の一部である。

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