Hb、Ht、Plt、PT-INR、APTT、LDL-C) の 各 項 目との関連について検討した。統計学的検討は スピアマン順位相関係数を用いた。 また、シリンジの違いによる凝固時間の検討 として、ガラスシリンジとプローベ(ステンレ ス製)による撹拌とプラスチックシリンジとラ スプ(ステンレス製)による撹拌での凝固時間 の差を上記症例とは別に6膝(男性5膝、女性 1膝、平均年齢25.3歳)で検討した。静脈血を 20mL採血して、それぞれのシリンジに10mLず つに分けて同時に撹拌した。 結 果 プラスチックシリンジ使用時のfibrin clot凝 固時間は平均11分(2.5−23)であった(図2)。 性別、年齢、BMI、術前採血検査とは相関を認 めなかった。 シリンジの違いによる凝固時間の差は、ガラ スシリンジは平均5.7分(5−6.5)、プラスチッ クシリンジは平均16.4分(9−24)であり、ガ ラスシリンジはプラスチックシリンジに比べて 凝固時間が短く、 ばらつきも少なかった(図 3)。 考 察 半月板損傷に対する縫合治癒促進手技とし はじめに 当院では、半月板断裂に対して可能な限り温 存を目的に縫合することを原則としている。し かし、縫合のみでは治癒が期待しにくい症例も あり、fibrin clotを併用した半月板縫合術を行っ ている。fibrin clot凝固時間にはばらつきがあ り9)、手術時間に影響する場合もあるため、凝 固時間について検討した。 本研究の目的は、プラスチックシリンジ使用 時のfibrin clot凝固時間に関連する因子を検討 することと、プラスチックシリンジとガラスシ リンジによるfibrin clot凝固時間を比較するこ とである。 対象と方法 2017年8月から2019年3月にfibrin clot併用 による鏡視下半月板縫合術を施行した症例55 膝(男性26膝、女性29膝)を対象とし、平均 年齢は37.7歳(14−73)であり、10代(17膝) と50代(14膝)が多かった。 fibrin clotの作成は、 患側の大伏在静脈から 静脈血を10−12mL採血して、プラスチックシ リンジ内でダイヤモンドラスプ(ステンレス 製)を用いて撹拌した(図1)。 プラスチックシリンジ使用時のfibrin clot凝 固時間と性別、年齢、BMI、術前採血検査(WBC、 東北膝関節研究会会誌 Vol. 29 (2020)
半月板縫合に用いる fibrin clot 凝固時間の検討
済生会山形済生病院 整形外科豊 野 修 二 福 島 重 宣 山 本 尚 生
Key words: fibrin clot(フィブリンクロット) clotting time(凝固時間) meniscal repair(半月板修復)
ンレス製のラスプという一般的な手術器具を 用いて、作成時間は約11分であり、他の報告 と同程度であったが、ばらつきが多かった(表 1)。 凝固時間のばらつきは個人差によるものと考 えられるが、本調査では予想しうる因子は特定 できなかった。PT-INR、APTTなど採血検査で は正常範囲内で比べているため、差がなかった と考えられた。 ガラスシリンジでプラスチックシリンジに比 べて凝固時間が短縮した理由として、ガラス表 面の陰性荷電面に血液が接触することによって て、fibrin clotはArnoczkyら1)が 犬 の 半 月 板 縫 合に対する有用性を報告し、Henningら2)が良 好な臨床成績を報告した。fibrin clotにはEGF、 VEGF、TGF-β1などの成長因子が多く含有され ており、治癒促進が期待されている8)。 fibrin clotの作成方法について、 採血部位は 上肢、 大伏在静脈および足背静脈、 採血量は 20−30mL、作成時間は約10分、fibrin clotを撹 拌するための器具は、ガラスやステンレスが多 く用いられている3)4)7)。本報告では、患側の 大伏在静脈から10−12mL採血し、撹拌は手術 室に常備してあるプラスチックシリンジとステ 図1 fibrin clot の作成 図2 fibrin clot 凝固時間 図3 シリンジの違いによる凝固時間の差 東北膝関節研究会会誌 Vol. 29 (2020) 32
文 献
1)Arnoczky SP et al:Meniscal repair using an exogeneous fibrin clot. An experimental study in dogs. J Bone Joint Surg Am 1998;70: 1209-1217.
2)Henning CE et al:Arthroscopic meniscal repair using an exogenous fibrin clot. Clin Orthop Relat Res 1990;252:64-72.
3)Kamimura T et al:Meniscal repair of degenerative horizontal cleavage tears using fibrin clots : Clinical and arthroscopic outcomes in 10 cases. Orthop J Sports Med 2014;2: 2325967114555678.
4)Laidlaw MS et al:Circumferential suture repair of isolated horizontal meniscal tears augmented with fibrin clot. Arthrosc Tech 2017;6:e1567-e1572. 5)桝谷 亮太ほか:PT測定における検体保存 の影響.医学検査 2014;63:535-544. 6)中冨 靖ほか:内因系凝固研究の現状−Ⅻ 因子、 Ⅺ因子および高分子キニノーゲンの 欠損マウスについて−.血栓止血誌 2009; 20:323-328. 7)谷藤 理ほか:Fibrin clotを用いた半月板修 凝固因子の活性化が促進されるためと考えられ る。内因系凝固の引き金として第Ⅻ因子、第Ⅺ 因子、プレカリクレインおよび高分子キニノー ゲンなどが挙げられている。陰性荷電表面が存 在すると、これらの因子は表面に凝縮され、い わゆるcontact activationにより活性化される6)。 ガラスシリンジの使用によって凝固時間は平 均5.7分と短縮され、ばらつきも少なく、fibrin clot作成による手術時間の延長を少なくするこ とができると思われた。また、ガラス棒を用い ることでさらに凝固時間が短縮できる可能性 も示唆された。さらに、ガラス容器では氷冷保 存で第Ⅶ因子のcold activationが生じて凝固時 間が短縮するとされており5)、冷やしながら撹 拌することで凝固時間が短縮できる可能性もあ る。 ま と め fibrin clotの凝固時間について検討した。 本 調査では凝固時間を予測しうる因子は特定でき なかった。ガラスシリンジはプラスチックシリ ンジに比べて凝固時間が短く、ばらつきも少な かった。 表1 fibrin clot 作成方法の比較 採血部位 採血量(ml) 器 棒 時間(分) 2014 Kamimura 25−30 シリンジガラス ステンレス 約10 2017 Laidlaw 30 ステンレスボウル ガラス 2018 谷藤 大伏在静脈足背静脈 20−30 ガラスすり鉢 ガラス 約10 本報告① 大伏在静脈 10−12 プラスチックシリンジ ステンレス (2.5−23)平均11 本報告② 大伏在静脈 10 シリンジガラス ステンレス (5−6.5)平均5.7 半月板縫合に用いる fibrin clot 凝固時間の検討 33
復術.関節外科 2018;37:52-60.
8)Tezono K et al:Bioactivity of the vascular endothelial growth factor trapped in fibrin clots : production of IL-6 and IL-8 in monocytes by fibrin clots. Haemostasis 2001;31:71-79. 9) 豊 野 修 二 ほ か:Fibrin clotを 用 い
たall-inside法による半月板縫合.東北膝関節研究 会会誌 2019;28:25-29.
東北膝関節研究会会誌 Vol. 29 (2020)