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RoboCupRescue Simulationにおける開発・実験を支援する環境の提案

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Academic year: 2021

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(1)

RoboCupRescue Simulation

における

開発・実験を支援する環境の提案

Proposal of environment to support development and experiment

in RoboCupRescue Simulation

鷹見 竣希

1

高柳 和央

1

伊藤 暢浩

2

岩田 員典

3

村瀬 洋介

4

内種 岳詞

5

Shunki Takami

1

, Kazuo Takayanagi

1

, Nobuhiro Ito

2

,

Kazunori Iwata

3

, Yohsuke Murase

4

, and Takeshi Uchitane

5

1

愛知工業大学大学院 経営情報科学研究科

1

Graduate School of Business Administration and Computer Science,

Aichi Institute of Technology

2

愛知工業大学 情報科学部

2

Department of Information Science, Aichi Institute of Technology

3

愛知大学 経営学部

3

Department of Business Administration, Aichi University

4

国立研究開発法人理化学研究所 計算科学研究機構

4

RIKEN Advanced Institute for Computational Science

5

神戸大学 経済経営研究所

5

Research Institute for Economics and Business Administration, Kobe University

Abstract: RoboCupRescue Simulation is provided as a testbed of multi-agent systems research for disaster relief. However, researchers have to implement a combination of a plurality of al-gorithms, and need a complicated experimental procedure for the experiment. These tasks are heavy burden for the researchers. Therefore, we propose an environment that integrates an agent development framework and an experiment management system in order to support researchers.

1

はじめに

近年の大規模な自然災害に対する様々な取り組みの 1 つに国際的な RoboCupRescue Simulation(以降,RRS) プロジェクトがある [1].RRS は,災害救助エージェン ト及びシミュレーションを対象とした研究と,その成 果による社会貢献を目指している. しかし RRS が対象とする災害救助問題の解決には, 経路探索や情報共有, 資源割り当てアルゴリズムなど, 複数のアルゴリズムを組み合わせた実装が求められる. また実験では火災,建物倒壊,通信など多様な条件を 考慮しつつ,複数の被災地に対して膨大な回数のシミュ レーションが必要であり,研究者への負担が大きい.そ こで研究者を支援するため,エージェント開発フレー ムワークと実験管理システムを組み合わせた,開発と 実験を統合して総合的に支援する環境を提案する. 連絡先:愛知工業大学大学院       〒 470-0392 愛知県豊田市八草町八千草 1247        E-mail: [email protected] 提案した環境の有効性を,講習会において複数のエー ジェント開発者で開発範囲を分担して開発可能である ことと,実験における負担を軽減できていることを確 認した.

2

RRS

における研究・開発について

2.1

RRS の概要

RRS は都市直下型地震を対象に,被災地域と災害救 助活動をコンピュータ上で再現し,災害発生から約 5 時間程度の災害救助活動を取り扱うことができる研究 プラットフォームである.災害救助活動においては,消 防隊・救急隊・ガレキ撤去隊と各部隊の司令部の 6 種 類のエージェントを制御する.RRS におけるエージェ ントの活動内容を図 1 に示す.消防隊 (赤丸) は火災の 消火,救急隊 (白丸) は自力で移動できない市民 (緑丸) の救出,ガレキ撤去隊 (青丸) は道路閉塞の啓開をおこ

(2)

Ĉȅइȅฅఆ ആ؉؉ആആȅ І̅؉ԅԉആȅ Ԇ؉Ԇąആȅ Ĉȅ ؉ȆЅฅఆ  図 1: RRS の主要エージェント なう.移動できる市民については,シミュレーション 内で自力で避難所まで向かう. RRS を用いることで災害救助問題を応用とした人工 知能や情報科学の研究が可能であり,災害環境下での経 路探索や情報共有,タスク割り当てアルゴリズムなどの 研究がおこなわれてきた.特に RRS プロジェクトでは Group Formation(グループ形成),Path Planning(経路 探索),Search(情報探索),Multi-Task Allocation(マル チタスク割り当て),Communication(情報共有) の 5 つ の課題が提唱されている.また毎年,技術交流を目的 としてエージェントプログラムを用いた競技会が開催 されている.

2.2

RRS におけるエージェント開発

RRS が取り扱う災害救助問題は複雑な複合問題であ る.災害救助問題では様々な被災地において,火災や 建物倒壊,無線通信の可否などの被災状況が刻一刻と 変化する.これを被災地によって異なる災害救助ロボッ トチームの災害救助戦略で解決する.災害救助戦略の 実現においては,災害環境下での経路探索や情報共有, 資源割り当てアルゴリズムなどを全て用意する必要が ある.また図 1 にあるガレキ撤去隊による啓開活動な どでは,啓開する方向やエージェントの位置を角度や 座標により指定する必要がある. RRS を用いた研究を促進させるためには,複雑な災 害救助問題の構造を解明し,問題を細分化して解決し ていくことが必要である. 図 2: RT ミドルウェアの動作イメージ

2.3

RRS における実験

RRS ではエージェントの開発・評価にあたって,火 災の発生場所や建物の倒壊率,通信状況など多様な条 件を考慮し,複数の被災地を対象として実験をおこな う必要がある.またエージェント内のパラメータの設 定をそれら各状況に対しておこなう場合がある.これ らの実現には膨大な回数のシミュレーションが必要で ある. RRS では 1 回のシミュレーションに約 20 分程度の 時間を要するため,複数の計算ホストで同時にシミュ レーションを実行し,実験の効率化を図ることがある. また 1 つのシミュレーションにおいてエージェントの 処理を複数の計算機に分散させることが多いため,複 数の計算機を同時に制御する必要がある.

2.4

関連研究について

2.4.1 OpenRTM-aist OpenRTM-aist[2] は産業技術総合研究所が開発して いる RT ミドルウェア規格 [3] に基づいて実装されたロ ボット開発用のフレームワークである.RT ミドルウェ ア (RT-Middleware) を用いたロボットの実装イメージ を図 2 に示す.RT ミドルウェアでは,アクチュエータ 制御やセンサ入力,行動の制御に必要なアルゴリズムな どロボットの構成要素を 1 つのコンポーネント (RTC) として分割し,各コンポーネントを組み合わせること でロボットを構成する.これによりロボットを制御す る上で必要な要素を細分化することができる.またそ れぞれのコンポーネントをモジュールとして入れ替え 可能であり,既存のモジュールを活用することもでき るため,ロボットの開発・改良における開発者への負 担を軽減することが可能である. RT ミドルウェアは実物のロボットを主な適用対象と しているため,リアルタイムで制御するロボットの開 発に適している.しかし RRS ではシーケンシャルな構 造でエージェントをプログラミングすることが多いた め,RT ミドルウェアを使用した場合,既に存在する コードや知識を活用することが難しい.

(3)

2.5

実験の実行を支援するツールについて

2.5.1 ジョブ管理システム

複数のジョブと計算機におけるジョブの実行を管理す るシステムである.主なシステムの例として,NTT デー タ社の Hinemos[4] や,独 Software- und Organisations-Service 社の JobScheduler[5] がある.実験を各ジョブ として扱うことで実験の実行を自動化することができ, 複数の計算ホストでの実行管理も可能である.また高 度な実験のスケジューリングや GUI による実行管理な どを実現することができる. 2.5.2 OACIS OACIS は理化学研究所計算科学研究機構の離散事象 シミュレーション研究チームが開発しているシミュレー ション実行管理フレームワークである [6].先に挙げた ジョブ管理システムの機能に加えて,シミュレーショ ンに特化したジョブ管理機能や,実験結果の管理機能 が実装されたシステムである.実験パラメータの管理 や結果の自動管理機能により,多様な条件による膨大 な数のシミュレーション及び分析を支援することが可 能である. しかし OACIS は,様々なシミュレーションソフト ウェアを対象とした汎用的なシステムであるため,シ ミュレーション実行時に複雑な操作が必要である RRS では,シミュレーションスクリプトの作成,またエー ジェントプログラムや地図・シナリオファイルを別に管 理しなければならず,単純に使用することができない.

3

開発・実験を支援する環境の実現

3.1

本研究の目的

本研究では RRS におけるエージェント開発と実験の 現状を踏まえて,災害救助問題における複雑な問題を 解明・解決,およびプログラムコードを再利用しやす くするため,モジュール構造を導入したエージェント 開発フレームワークの実装する.また実験における負 担を減らすために,シミュレーション実行管理フレー ムワークである OACIS を導入した RRS 用の実験環境 を実装する.これらエージェント管理フレームワーク と RRS 用の実験環境を組み合わせ,エージェントの開 発と実験を統合し総合的に支援する環境を提案する.

3.2

開発を支援する環境の提案

3.2.1 エージェント開発フレームワークの設計 複雑な問題を多くの研究者で解明・解決するため,ま たプログラムコードの一部をモジュール化することで, コードの再利用をしやすくし研究者への負担を減らす ために,エージェント開発フレームワークを開発する. フレームワークの設計にあたって 2.4 節の関連研究で挙 げた OpenRTM-aist に基づいて設計する方法も考えら れたが,RRS ではシーケンシャルな構造でエージェン トがプログラミングされていることが多いため,既に 存在するコードや知識を活用しやすいよう,RRS 独自 のエージェント開発フレームワークを設計・提案する. 3.2.2 エージェントの共通アーキテクチャの導入 エージェントの全体的な動作を共通アーキテクチャと して固定することで,開発者ごとに生まれるコンポーネ ントの組み合わせの差異を減らし再利用性を確保する. エージェントプログラムの開発時は,このエージェン トの共通アーキテクチャの基にモジュールを実装する. 図 3 に共通アーキテクチャの導入前と導入後のイメー ジ図を示す.図の左側が共通アーキテクチャの導入前 を表しているが,これまでは各研究者が自身の研究内 容に合わせて,エージェントプログラムを独自に構築 していたため,プログラムの移植性が低かった.図の右 側は共通アーキテクチャの導入後を表している.網掛 け部のようにエージェントのプログラム構造を共通化 し,プログラムコードを容易に移植できるようにする. またエージェント間通信プロトコルを統一し,他の開 発者が開発したエージェントとも通信を可能にする. 3.2.3 プログラムコードのモジュール化 エージェント開発において用いるプログラムコード を細分化,また再利用できるようにし,開発における 負担を減らすため,2.4.1 項で挙げた RT ミドルウェア でも実現されているコンポーネントのモジュール化を 導入し,エージェント開発における研究者への負担を 軽減する. • アルゴリズムのモジュール化 アルゴリズムモジュールの分割にあたって現段 階では,RRS プロジェクトで提示されている 5 つの課題を基準にできるかぎり分割した.図 4 に 課題とモジュールの割り当てを示す.図の左側が 5 つの課題で右側がフレームワークのモジュール である.また複合的な問題を解くアルゴリズム と,単純な問題を解くアルゴリズムをそれぞれ

(4)

図 3: 共通アーキテクチャの導入前と導入後

図 4: RRS における課題と ADF のモジュール

Complex Modules, Algorithm Modules として 分類し,どのようにプログラムを書くべきなのか を明確化した.複合的な問題を解くアルゴリズム (Complex Modules) は単純な問題の集合体であ ると考え,できるだけプログラム内部の構造を分 割して構成すべきである.また今後プログラムを 分割できると経験的に判明した場合は,新たなコ ンポーネントとして切り出すことにより複雑な問 題の解明を目指す. • 制御プログラムのモジュール化 2.2 節で述べたように,RRS では座標や角度な どを指定してエージェントを制御する必要があ る.このような低レベルの制御については,制御 プログラムとしてモジュール化する.意思決定の ようなマクロなアルゴリズムと座標や角度を用い た制御のようなミクロなアルゴリズムを分離する ことで,意思決定のようなアルゴリズムを研究し たい研究者への負担を軽減する. 3.2.4 その他 共通アーキテクチャの導入により,エージェン間通 信プロトコルとパラメータの一括管理が可能になった. ここではこれらについて述べる. • エージェント間通信プロトコルの統一 RRS ではエージェント間通信のプロトコルが 統一されていない.エージェント間の通信プロト コルが統一されていない場合コンポーネント間の 依存関係が強くなり,アルゴリズムのモジュール 化が難しい.そこで太田ら [7] や尾橋ら [8] によっ て提案された RRS におけるエージェント間通信 プロトコルを参考にすべてのエージェントが共通 で利用する通信プロトコルを策定する.このプロ トコルのもとで通信するメッセージを情報共有系

(5)

図 5: フレームワークの構造 と命令系として定義する.情報共有系では各エー ジェント,道路,建物について取り扱う.命令系 では救助,消火,啓開,偵察について取り扱う. • パラメータの一括管理 使用するモジュールの指定や実験時に書き換え たいアルゴリズム内の固有値をフレームワーク で一括管理することにより,パラメータの入力イ ンタフェースを共通化し,2.5 節で挙げた実験を 支援するツールからのパラメータの入力を容易に する.

3.3

エージェント開発フレームワークの実装

3.3.1 フレームワークの実装 今回実装したエージェント開発フレームワークの構造 のイメージを図 5 に示す.図 5 の網掛け部である Agent 内がフレームワークの実装である.また点線で示した 部分がモジュールであり,エージェント開発時にプロ グラミングする対象となる.本節ではフレームワーク 内部のそれぞれの実装について 3.2 節の設計に基づい て述べる. 3.3.2 エージェントの共通アーキテクチャ エージェントがどのようにアルゴリズムモジュールや 制御プログラムモジュールを呼び出して行動を決定する か定めるコンポーネントである.このクラスを Tactics と呼ぶ.各エージェントは Tactics に記述した基礎とな 図 6: モジュール群の読み込み るエージェントのアーキテクチャから,タスク割り当 てや経路探索アルゴリズム,制御プログラムモジュー ルなどを呼び出して行動を決定する.また呼び出すモ ジュールはモジュールの共通名で Tactics 内に記述する ことで,エージェントの設定ファイルから実際に使う モジュールと紐付けることが可能である. 3.3.3 モジュール群 3.2.3 項の設計で示した図 4 のようにグループ形成を Clustering,経路探索を PathPlanning,情報探索とタ スク割り当てを TargetDetector としてモジュール化し た.また制御プログラムは ExtAction として同様にモ ジュール化した.これらモジュールの Tactics への読み 込みについて図 6 に示す.図右側に示したモジュール のインスタンスは,図上部に示す ModuleManager と 呼ぶクラスで生成・管理する.またエージェント起動 時にモジュールの設定ファイル (module.cfg) を読み込 むことで,使用するモジュールを切替可能にする. 3.3.4 パラメータの一括管理 読み込むモジュールの設定は前述の module.cfg か ら読み込む.またアルゴリズム内で使用する固有値は DevelopData クラスから取得できるようにし,各値は エージェント起動時の引数として JSON で入力可能に した.

3.4

実験を支援する環境の提案

RRS における実験を支援する環境を実現するにあた り,シミュレーション実行管理フレームワークである OACIS による実験管理を導入する. 図 7 に OACIS による実験管理の導入前と導入後のイ メージ図を示す.図の左側が OACIS による実験管理の 導入前,右側が導入後を表している.RRS でエージェ

(6)

図 7: OACIS による実験管理の導入前と導入後 ントの実験をするには,図内青丸で示すように,各種 エージェントのパラメータの指定や,シミュレーショ ンを実行する計算機クラスタの制御,膨大な結果の収 集や管理などの操作をおこなう必要があった.OACIS による実験管理の導入により,図内網掛けで示した部 分の作業が自動化され,実験でおこなう操作を減らす ことができる.また実験における操作の大半を自動化 できることにより,実験の再現も容易におこなえるよ うになる. しかし OACIS は汎用的なシステムであるため RRS の実験へ適用するには足らない機能が存在する.そこ で OACIS を RRS の実験へ適用する際に補助すべき機 能を RRS 用の拡張として開発する.本節では補助すべ き機能について述べる. • エージェント管理 OACIS でシミュレータや実験パラメータの管 理は可能であるが,エージェントプログラム自体 の管理はできない.そこでエージェントプログラ ムを管理する拡張を用意する. • 地図・災害シナリオ管理 エージェントプログラムと同様に OACIS では 地図・災害シナリオの管理ができないため,地図・ 災害シナリオを管理する拡張を用意する. • 計算機クラスタ管理 RRS では複数の計算機を組み合わせた計算機 クラスタで 1 つのシミュレーションをおこなう. しかし OACIS には計算機クラスタを制御する仕 組みがない.そこで計算機クラスタの管理をでき る仕組みを導入する. • シミュレーションスクリプト OACIS から呼び出し,シミュレーションにお ける一連の動作を記述したスクリプトを用意す る必要がある.この中で実際にエージェントや地 図・災害シナリオを読み込み,計算機クラスタの 各計算機へ接続しシミュレーションを実行する. これにより実験を 1 つのジョブとして扱えるよう にする. • シミュレータ管理 OACIS ではシミュレーションスクリプトと,指 定できるパラメータ群のセットをシミュレータと 呼ぶ.しかしパラメータは,使用するエージェン トや使用するモジュール,アルゴリズムの固有値 など実験の目的により変化する.そこで様々なシ チュエーションに応じてシミュレータを OACIS に登録できる仕組みを導入する.

3.5

RRS のための OACIS の拡張

拡張の実装にあたり,保守性を保つため OACIS 本体 のプログラムには手を加えず,OACIS が提供する API を通じて拡張部から OACIS の制御をおこなう.拡張後 のイメージ図を図 8 に示す.青色で示した部分が RRS のための拡張である.この部分について次に述べる. • エージェント管理 エージェントプログラム本体を拡張部管理下 のディレクトリにアップロードできるようにし, 拡張部のデータベースにエージェントの名前と位

(7)

Scenario Management

Computer Cluster Management RRS Experiment Management System

OACIS Design of experiments Simulation Script Simulator(OACIS) Management Agent Management Computer Clusters Job&Results Management Automatic result evaluation Host Management Simulator Management Upload Agent & Scenario

[Retry] Monitoring API RRS Simulation RRS Simulation 図 8: RRS のための OACIS の拡張 置,使用するパラメータ,コメント,登録日時を 登録・管理する. これによりエージェントファイルの管理も統合 的におこなうことを実現する. • 地図・災害シナリオ管理 エージェントプログラムと同様に地図・災害 シナリオを拡張部管理下のディレクトリにアップ ロードできるようにし,拡張部のデータベース に名前と位置,コメント,登録日時を登録・管理 する. • 計算機クラスタ管理 計算機クラスタの情報を拡張部のデータベース で管理する.シミュレーション実行の際は,ロー カルホストのシミュレーションスクリプトを呼び 出し,そこから各計算機を用いてシミュレーショ ンをおこなう.シミュレーションスクリプト内で の計算機クラスタの切り替えは,作業ディレクト リを換えて OACIS に計算ホストとして登録する ことで実現する.シミュレーションスクリプトは 各作業ディレクトリに配置した,計算機クラスタ の設定ファイルを読み込むことでそれぞれ指定さ れた計算機に接続する. これにより計算機クラスタを用いたシミュレー ションの実行を実現する. • シミュレーションスクリプト SSH を用いて各計算機にシミュレーションに用 いるエージェントプログラムや地図・災害シナリ オを転送し,エージェントのコンパイルスクリプ トを実行した後,シミュレーションを開始する. シミュレーションの開始において必要な起動タイ ミングの制御もおこなう.スクリプトが正常に終 了した場合は終了コード 0 を出力し,異常終了し た場合は 0 以外の終了コードを出力することで, OACIS で正常終了を判断できるようにする. これにより OACIS を用いた計算機クラスタを 用いた RRS の実行を実現する. • シミュレータ管理 データベースに登録したエージェントや地図・ 災害シナリオを元に OACIS にシミュレータとし て登録する.パラメータのパターンは各種類の エージェントにおいて以下のパターンで登録でき るようにする.含まれない値については固定値と してシミュレータを登録する. – エージェントプログラム – エージェントプログラム+各種モジュール – アルゴリズムの固有値 これにより実験の目的に応じたパラメータを持 つシミュレータの作成を実現する.

4

実験と評価

4.1

評価の目的

3 章で提案した開発・実験を支援する環境において, 実際に複数のエージェント開発者でエージェントプロ グラムを開発・実験し,コードの再利用性が確保でき ているか,実験における負担が軽減しているかについ ての評価および考察する.これにより提案した環境に おいてプログラミング思想が異なる複数のエージェン ト開発者で開発範囲を分担して開発可能であるか,実 験における開発者への負担を軽減できているかを確認 する.

4.2

実験について

2016 年 10 月 22-23 日に福岡大学において開催され た RoboCup Simulation リーグの講習会で,約 30 人 を 6 チームに分けてそれぞれエージェントの開発をお こなった.そこでチームが異なるエージェント開発者 が開発したエージェントを組み合わせてもエージェン トが連携して活動できるか,各チームで開発したエー ジェント群の救急隊,消防隊,ガレキ撤去隊をそれぞ れ他チームのものと組み合わせる実験をした.講習会 においては時間の都合で 6 種類の組み合わせで実験し たが,後日,全 216 の組み合わせで実験をおこなった.

(8)

表 1: 成績上位 8 位までの組み合わせ 順位 救急隊 消防隊 ガレキ撤去隊 Score 1 A C A 143.4091 2 A B A 141.4178 3 E B A 140.9280 4 A B F 136.5078 5 E B B 134.8257 6 B B D 134.3782 7 C B D 134.3404 8 B B E 133.8126

Sample Sample Sample 114.2580

A A A 114.2574 B B B 126.5861 参考 C C C 124.3933 D D D 114.2580 E E E 119.9167 F F F 120.8222

4.3

実験結果と考察

各チーム (A–F) 組み合わせた実験の成績上位 8 位ま での結果と,参考値として Sample と各チームごとの 結果を表 1 に示す.実験の結果から特に同じチームだ から結果が良くなるというわけでは無いということが わかる.このことから今回提案したフレームワーク上 で開発したエージェントであれば,別々に組み合わせ ても連携して活動できることがわかった.これにより コードに再利用性があることを確認できた. また実験の実行においては,講習会の様な場で実験 的にシミュレーションする場合には,基本的に 1 人の オペレータが直接シミュレータを操作し,シミュレー ション結果の管理などをおこなう.この際操作する手 数が多いため,誤って結果を保管し忘れてしまう場合 もあった.しかし今回は複数のオペレータが操作に携 わったが,操作する内容が単純であるため,また多くが 自動化されているためトラブルはおこらなかった.こ のことから実験時の研究者への負担を軽減できている ことがわかる.

5

まとめ

本研究では,RRS を利用する研究者を支援するため, エージェント開発フレームワークと実験管理システム を組み合わせた,開発と実験を統合し研究者を総合的 に支援する環境を提案した.評価では複数のエージェン ト開発者で開発範囲を分担して開発可能であり,コー ドの再利用性を確保できていること,実験における負 担を軽減できていることを確認できた. 今後は 3.2.3 項で述べたように,複合的な問題を解く アルゴリズム (Complex Modules) は単純な問題の集合 体であると考え,切り出せる問題は新たなコンポーネ ントとして切り出し複雑な問題の解明を目指す必要が ある.

参考文献

[1] “RoboCupRescue Simulation”, http://roborescue.sourceforge.net/ [2] 産業技術総合研究所, “OpenRTM-aist” http://www.openrtm.org/

[3] Noriaki ANDO, Takashi SUEHIRO, Kosei KITA-GAKI, Tetsuo KOTOKU, Woo-Keun Yoon, “RT-Middleware: Distributed Component Middleware for RT (Robot Technology)”, IROS2005, (2005) [4] 株式会社NTTデータ, “Hinemos”

https://ja.osdn.net/projects/hinemos/

[5] Software- und Organisations-Service,“JobScheduler” http://www.sos-berlin.com/jobscheduler

[6] Yohsuke Murase, Takeshi Uchitane, Nobuyasu Ito, “A tool for parameter-space explorations”, Physics Procedia, 57, p73-76, (2014)

[7] Takefumi Ohta, Fujio Toriumi, “RoboCupRes-cue2011 Rescue Simulation League Team Descrip-tion”, RoboCup 2011 Istanbul, (2011)

[8] Dai Obashi, Toshiyuki Hayashi, Kazunori Iwata, Nobuhiro Ito, “An implementation of communication library among heterogenous agents NAITO-Rescue 2013(Japan)”, RoboCup 2013 Eindhoven, (2013)

図 3: 共通アーキテクチャの導入前と導入後
図 5: フレームワークの構造 と命令系として定義する.情報共有系では各エー ジェント,道路,建物について取り扱う.命令系 では救助,消火,啓開,偵察について取り扱う. • パラメータの一括管理 使用するモジュールの指定や実験時に書き換え たいアルゴリズム内の固有値をフレームワーク で一括管理することにより,パラメータの入力イ ンタフェースを共通化し,2.5 節で挙げた実験を 支援するツールからのパラメータの入力を容易に する. 3.3 エージェント開発フレームワークの実装 3.3.1 フレームワークの実装
図 7: OACIS による実験管理の導入前と導入後 ントの実験をするには,図内青丸で示すように,各種 エージェントのパラメータの指定や,シミュレーショ ンを実行する計算機クラスタの制御,膨大な結果の収 集や管理などの操作をおこなう必要があった.OACIS による実験管理の導入により,図内網掛けで示した部 分の作業が自動化され,実験でおこなう操作を減らす ことができる.また実験における操作の大半を自動化 できることにより,実験の再現も容易におこなえるよ うになる. しかし OACIS は汎用的なシステムであ
表 1: 成績上位 8 位までの組み合わせ 順位 救急隊 消防隊 ガレキ撤去隊 Score 1 A C A 143.4091 2 A B A 141.4178 3 E B A 140.9280 4 A B F 136.5078 5 E B B 134.8257 6 B B D 134.3782 7 C B D 134.3404 8 B B E 133.8126

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