紫外線照射による二酸化炭素の有機物化
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(2) 中村:紫外線照射による二酸化炭素の有機物化. 1 . はじめに S o l a re n e r g y は,極めて良質で, かつ豊富なエネ 紫外線ランプ. ノレギー源である。その上環境にやさしく,化石燃料や 原子力のように公害を発生しないから人類を含む生 態系にとって理想的なエネノレギーであると考えられ る 。 ただ,その希薄さの故に人類にとっては使いにくい エネノレギーとなっている。その故に集熱,蓄熱などの 熱利用に関する技術開発が鋭意進められている。しか し,とのような熱利用のみならず,太陽光の赤外から 貯留槽. 紫外まで,その全放射領域にわたる利用を考えること. ポンプ. 反応槽. 図1 反 応 装 置. は,良質な S o l a re n e r g yの利用にとって極めて重要 な乙とと考える o. て. との点について,太陽電池は,集光などの段階を経. I R吸収スペクトノレを測定した。 G C M a s s スペクトノレを測定して検討した。. さらに. るととなくより短波長領域の S o l a re n e r g yを利用す. 乙変えて, 3% H202 水 同様の実験を,上の蒸留水l. る手段として有用である。また植物による光合成も巧. 6 h rであっ を用いて行った〈乙の時の照射時間は 3. みな S o l a re n e r g yの利用である。. た 〉 。. 太陽光の中で,紫外線はその量は少ないとはいえ, 夏の日焼け,冬の雪焼け等に見られるように,その化. 3 . 実験結果と検討. 学作用はかなりのものがあるように見受けられる。こ の点に着目し,不燃性の無機化合物を紫外線を用いて. 照射中の CO2 の減少を測定したガスクロマトグラ. 可燃性の有機化合物に変換することにより S o l a re n -. ムの例を図 2に示す。またとれを照射時聞に対してプ. e r g yを貯えることを試みた。無機化合物として,近. ロットしたのが図 3である。この図で aは H20での,. 時,その温室効果の故に注目されている二酸化炭素を. bは H2027 kでの実験である。. 取り上げた。. 生成物のガスクロマトグラムを図 4 . 図 5~ζ 示す。. 2 . 実. 同じく. 験. I Rスペクトノレを図 6 . 図 7に示すロマススペ. クトノレは図 8 . 図 9に示す。 図 3を見ると, CO2 は,紫外線照射時間と共に減. CO2を飽和させた蒸留水中に CO2 を通しながら, 5 4 n r n )で照射した(図 1) 0 低圧紫外線ランプ(波長 2 CO2ガスはローラーポンプを用いて 150mlfmin の定 流量で閉回路中を循環させた。実験中の内圧の減少は. C02存在比. CO2飽和蒸留水を追加して調整した D 照射時間は 1 0 -. 7 6 . 2 9 6. 2 4 . 8 9 6. Ohr. 1 0 h r. 8 . 1 9 6. 2 0 時間であった。 照射中の CO2 の量的変化は,随時マイクロシリン ジでサンプリングし.Porapak N を充填剤とし,オ 0. ーブン温度7 0C. キャリアーガス Heの条件下でガス クロマトグラフィーにより調べた。 照射終了後の液相から,生成物をジエチノレエーテノレ を用いて抽出し,、ンリコン. OV-1を充填剤とし,オ. 0 ーブン温度2 3 0 C,キャリアーガス He によりガスク. 照射時間. ロマトグラフィーを行った。 乙の生成物はまた,. 2 0 h r. 02 図 2 H20中の紫外線照射による C の減少〈ガスクロマトグラム〉. N a C l セノレ上にコーティングし ハU. “ ヮ.
(3) Vo 1 .28 ( 1 9 91 ). 近畿大学原子力研究所年報. 1 .0. 近 制. 捜0.1 寝 y=exp ( ー 1 . 15t ). (3%H202水中の照射). 0 . 0 1 0. 5. 1 0. 1 5. 2 0. 照射時間 (hr),t. 図 3 紫外線照射時間と C02の減少の関係 ではやや黄褐色を帯びた,いずれも粘調な物質を得た。 これらのガスクロマトグラム(図 4,図 5) から,い くつかの生成物の存在が見られるが,主生成物の保持 時間は,かなり接近しており,類似の物質であること, また分子量も大きいことが推定される。. 'H凶︿ドω. IR スペクトノレ(図 6, 図 7) からは,アルコーノレ 1 1 ) 3, 300cm,同じくーC-O-( 1, 255cm, 性の -OH( 1 1 1 1, 100cm- • , 1000cm-), -CH ( 2, 920cm- • 2, 8 6 0 ) の吸収が見られる。 cm-1• , 1460cm-1 ,, 1375cm-1 1の吸収 1700cm-1• , 1630cm-1 および 800cmまた, ,. はオレフィンによるものと考えられる。また , 11 0 0 cm-1近傍の吸収はエーテル構造によるものであるう o. 図 " H20中の照射生成物のガスクロマトグラム. 図 8, 図 9のマススペクトノレからは,. これら両者. の親イオンピークはともに M/Z 3 6 8 にあり,互い 1 5 H 2 8 0 1 0 に異性体であることがわかる。分子式は C. と見られ図 9の分裂イオンピーク M/Z 2 5 5は p CS H902 ,すなわち. CH3 ① ((CH(OH))8 ) + または,. ② ((CH(OH))3CH2 ー0ー(CH(OH))4CH ) + と思われ 3 るが,分裂ノマターンから②の方が可能性が高い。また, LFN 同 ︿ 1Fω. M/Z1 3 5は p-CloH170S,すなわち ((CH(OH))4CH3 ) + と思われる o 図5. 図 8の M/Z1 4 9 は (CH2 (CH(OH))4CH ) + と見 3 られる乙とから,生成物は図 9の生成物とはエーテ jレ. 3 5 五日202水中の照射生成物の ガスクロマトグラム. 結合の位置の異なる物質と見ることができる o また. 少することがわかる o また, H20 中での照射よりも. , 書08であり,乙の中に二重結合 2個 M/Z279は Cll日. H202 水中での照射による減少の方がはるかに速く,. エーテノレ結合 1個を含むと推定される。. 6 8の多価アノレコーノレであ いずれにしても, 分子量3. 図 3から後者の方が前者のおよそ 1 2 倍の速さで減少す ることが判る。図 3から,照射時聞に対する CO2 の. ることは確実である D. 0 . 0 9 3 t ),後者 存在比 Yは,前者について Y=exp( 5 t ) の関係が得られる。 について. Y=exp (-1.1. このようなアルコー Jレがと、のようにして生成するか を調べるために,照射時間を短くして,その生成物に. 照射後の液から生成物をジエチノレエーテノレで抽出. ついて検討した。 H2 0 中について 1 0時間, H2 02水中. し,溶媒を除去した後に,前者では無色に近く,後者. について 3時間の照射を行った。前者についてのガス. -2 1ー.
(4) 中村:紫外線照射による二酸化炭素の有機物化. 1 0 0 . 0. 1 0 0 . 0. 8 0 . 0. 4 0 . 0. 4 0 . 0. 2 0 . 0. 2 0 . 0. 。. 0 . 0 4 0 0 0 .. 3 0 0 0 . 01 2 0 0 0 . 0. 1 1 5 0 0 . 0. 0 . 0 0 5 0 0 . 0400.. ' 1 0 0 0 . 0. 図 6 H20中の照射生成物の赤外線吸収スペクトノレ. 1 0 0 . 0. 1 0 0 . 0. 8 0 . 0. 8 0 . 0. 6 0 . 0. 6 0 . 0. 4 0 . 0・. 4 0 . 0. 2 0 . 0. 0 . 0 4 0 0 0 . 0. 。. 3 0 0 0 . 0 '2 0 0 0 .. 1 5 0 0 . 0. 0 . 0 5 0 0 . 04 0 0 . 0. 1 0 0 0 . 0. 図 7 3必 H2 02水中の照射生成物の赤外線吸収スペクトノレ. EU. hU. Re--at--ve. 1 4 9. 1 6 7. 5 0. 1 0 0. 1 5 0. 2 0 0. 2 5 0. 3 0 0. 4 0 0. 図 8 日2 0中の照射生成物のマススペクト Jレ. 4 5 0. 5 0 0. M/z. nL nL.
(5) Vo .2 1 8( 1 9 91 ). 近畿大学原子力研究所年報 R100 e. 2 5 5. ~ 8 0. :60. 1 3 5. t40 U. 3 6 8. 320 a. n. c. e. 1 5 0. 2 5 0. 3 0 0. 3 5 0. 4 0 0. 4 5 0. 5 0 0. M/z. 図 9 3労 H202水中の照射生成物のマススペクト Jレ クロマトグラムは図 1 0に示す通りであり,後者につい ても同じパターンを示し,両者の生成物は殆ど同じと 思われた o 図1 0のピーク 1. ピーク 2のマススペクトルは図 1 1 . 図1 2に示した通りであった。図 1 1の親イオンピー. 8であり,① C5H120 或 い は ② C4Hs02 クは MjZ8 の分子式が考えられるが,分裂パターンでは②の可能. CH2 0H の構造が考え 性が高く .CH(OH)=CH-CH 2 られる。図 12では,親イオンピークは MjZ1 0 6にあ .H 1 00aの分子式に相当し, り. C4. ピーク 1にさらに. -OH と -Hが付加した形になっている。 図10 日20中の照射中間生成物の ガスクロマトグラム R. 1 0 0. e. 乙れらのアノレコール類が,さらに縮重合を繰り返し より高分子の生成物を与えたものと思われる。. 4 3. ~ 80 t. :6 0・ A. b 4 0. U. n. d. a 2 0. n c. e 0 2 0. ぞJ . J 4 0. ~r 7fr も. ト. 6 0 8 0 1 0 0 1 2 0 1 4 0 1 6 ⑪ 1 8 0 2 0 0 図11 H20中の照射中間生成物のマススペクトル〈ピーク 1) M/z. Reiat--veAbundance. unHUF08qnd. 向. u 円 n u n M n U A U. E E -. o. 2 0. 9 1. 1 0 6. 3 9 ~1 _ _6 5. 3 ? f l .. J5~X 4 0. 7 . . 11 8 0. . 1 . 1 . 1 1 11. 6 0 1 0 0 1 2 0 1 4 0 1 6 0 1 8 0 2 0 0 図1 2 H20中の照射中間生成物のマススペクトル〈ピーク 2) M/Z , nh. q o.
(6) 中村:紫外線照射による二酸化炭素の有機物化. ヨ 全. @. @. 柑. 持. Ö O•5 () @. 0. o. @. 5. 1 0. 1 5. 2 0. 2) 照射光量 (μE/m. 図1 3 H20中の太陽光照射による C02の減少 。司.0. した照射光量に対して CO 2 の存在比をプロットする. 3のようになり,図 3と同様の傾向を示した。 と図 1 また,エーテノレ抽出して得た生成物のガスクロマト グラムは,図 1 4に示したように,図 1 0と殆ど同じ保持 時間を持っし 2の生成物がみられた。乙のことは太 陽光を用いても CO 2 の有機物化が大いに可能性のあ ることを示している o. 5 . まとめ O L F ω. 円同. CO2を炭素源として化学工業に利用する例は極めて 少なく,アンモニアと CO2 からの尿素を合成する方 法が知られているくらいである。最近注目されている. H20中の太陽光照射生成物の. CO2からのメタノーノレ合成にしても,電解還元法以外. ガスクロマトグラム. では加熱,加圧下で触媒の存在を要し,目下その最適 条件が鋭意探索されている所である o 今回行った,太陽光を用いる CO2 の有機物化は,. 4 . 太陽光による実験. 未だその緒についたばかりであり,なお多くの問題を. 同じ実験を紫外線ランプでなく,太陽光による外部 照射で行った。この場合,反応容器は紫外線を通す石. はらんでいる(例えば選択的な有機物化の達成など〉 が,その可能性は大いにあることが示唆された。. 英製とした。シリコンフォトダイオードを用いて測定. -2 4ー.
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