ケインズ体系とシュムペーター体系のための序説(1) : シュムペーターの理論について
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(2) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシュムペ ーター体系との融合のための序説1. ケイ ン ズ体系と シ ュムペータ ー 体系 と の融 合のため の序 説 1 (シュムペータ ーの 理論について). 亀. 畑. 日 シユムペーターの景気循環理論. 第1章. 義. 彦. 次. 登3. シユムペーターの景気循環モデ. 登 1 均衡の概念にっいて. 巷 2 経済体系はどのように して発展. ル (3つの接近). S4. シュムペーター・モデルの検討. を生み出すか. 第1章. シユムペーターの景気循環理論. 登1 均衡の概念について シ ュ ム ペ ータ ー は、 彼 独特 の 均 衡 概 念 を 考 え る にあ た っ て、 そ の 基 礎 を ワル ラ ス に 求め て い る。 マ ーシャル の 部 分 均衡 お よ びチ ェ ム バ リ ン、 ロ ビンリ ン の 集 団 均衡 そ してケイ ンズ の 集計 概念 に よ る 均衡 が 現 実 の経済 の 常識 で は よ り一 般 的 と 考え ら れ て い る中 で、 特 に シ ユ ム ペ ータ ーが ワル ラ ス. の均衡概念を考慮する理由は、 マ ーシャル等の均衡は、 一般均衡は なく ても部分 均衡は存在し、 ケ イ ンズ的均衡は、 貯蓄投資に基づく総体的均衡であるという理由による。 すなわちこれらの均衡は、 あ る場 合 には 不完 全雇 用 の 状態 で、 ま た あ る 場 合 に はイ ンフ レ ーシ ョ ン の 伏 態 で 均 衡 が 可能 に な る という 意 味 で、 不 均 衡 と両立 して い る か らで あ る。 しか し ワル ラ ス 均 衡 が支 配 し てい る場 合 には、. すべての家計とすべての企業の収支計画 は正確に釣合い、 企業の生産する総量は、 家計又は他企業 に よっ て購 入さ れ、 そ の よ う な点 で 価格 と 数量 と が決 定 さ れ る ①。 そ れ故、 ワル ラ ス 均衡 こ そ 唯 一. の厳密に正しい均衡すなわち完全均衡概念であると考えるのである。 そしてもし経済全系 がこの均 衡帯を離れている限り不完全均衡の状態にあり、 現実の世界は、 ほとんど常にこのような状態にあ る とい っ て も よい。 従 っ て シ ュ ム ペ ータ ーに あ っ ては、 完 全均 衡と い う理 論 的 図式 は、 現 実 経済 が 不完 全 均衡 を表 現する ため の用 具 にす ぎ ない ③。 シ ュ ム ペ 冊夕 - の 目 的 の 一 つ は、 こ の完 全 均 衡 と. いう基本概念を中心にすえた上で、 一貫した純粋理論体系によってではなく、 実証によっ て均衡か らの動的な不均衡を常態とする現実の経済を考えることにより、 理論と実証との乗離を縮少ないし は解消しようとするところにある ◎。 ワルラス 均衡では、 均衡からの乗灘は、 完全競争の仮定のも と に、 再 び 均衡 に 復 帰 す る。 しか しシ ュ ム ペ ータ ー に お い ては、 そ れ は あく ま で も 仮 説 で あ り、 絶. え間なく撹乱されている現実世界は、 均衡とは正反対の結果を生む方向にむか っ てはるかに進みさ えすると考える⑥。 また動的な問題を考えるわけであるから、 ワルラスとは異の、 時間の問題が直 接 に考 際さ れる。 以上 のよ う な こ と か ら シ ュ ム ペ ータ ー の 均 衡 概念 は、 ワ ル ラ ス のそ れ を 基礎 に お い てはい る がそ れ と同 一 では なく、 む しろ ワル ラ ス均 衡 の一 変 種 で ある とい う こと が で き よ う。 シ ュ ム ペ ータ ーは、 こ の 時間 の問 題 を まず、 需要 曲 線 と 供 給 曲 線 と の傾 斜い か んに よっ て 価格 と. .収 定 常の 過 程 を と る変動する蜘妹の単理論 ⑥を例にとって示す ⑦。 生産量が発散、 、.
(3) . 亀畑義彦:ケイ ン ズ体系とシュムペーター 体系と の融合のための序説1. この時間の導入は期待値の導入を意味している。 すなわち将来への期待の不確実性と現実の需要曲 線との反作用が、 価格と生産量と の変動をもたらし、 社会的損失と過剰能力は、 主としてこの不確 実 性 に 起 因 す る も の で あ る。 シ ュ ム ペ ータ ー は、 景 気 循 環 の 研 究 に と っ て、 こ の 不 確実 性 の 重要 さ を 指摘 し て い る⑧。 こ の 考 え 方 は、 メ ンガ ー に よ っ て 示さ れ、 ウイ ザ ー、 ベ エ ー ムー ヴァ ベ ル グに よ っ て 受け つ がれ た 帰 属 理 論 に 基 づ い てい る。 こ の 帰 属 理論 と は、 次の よ う な も の で あ る。 ま ずメ ン ガーは、 財 と なる ため の 性 質 を 次の4 つ に わけ て い る ⑨。. 蜘棚 ◎ ◎. ( 1 ) 人間 の欲望があること の であ る こと. 3 ( } そ して物が欲望を満足させ ると い う こ と を人 が 知 っ てい る こ と. 4 ( ) その欲望を満足させるためには 物の処方を行わねばならないこと (例えば、 賃を得る人は労働を、 利潤を得るには商品を提供すると い う こ と). 第 1 図. 第2図. 以 上 の4 つの条件をすべて満たすものが財であっ て、 そ の条件の1つでも失うならば、 財の性質. を失うことになる。 すなわち欲望を与えないものは財としての性質を持たない。 故に経済財のみが 価 値 を 持つ、 自 由 財 は 有用 で あ っ ても 価 値 を 持 た ない と さ れ る。 ここ でメ ンガ ーは、 直接 に 消 費さ. れない 生産財も、 やがて欲望を満足させる財に変形されるのであり、 直接的な財を 「第1 次財」 そ して生産財を 「高次財」 と考える ⑬。 すなわち最終消費財パンが第1次財であり、 小麦粉、 塩、 燃 料およびパンを焼く職人の用役等は、 第2次財、 小麦は第3次財ということになる⑭。 しかしメ ン ダ ーの 分 析 は、 一 つ の例 であ っ て、 そ の す べ て を 語 っ て い る もの で は な い。 な ぜ な ら、 小 麦 又 は燃. 料 を一般家庭で使用 した場合には、 第1次財 であるが、 パ ンの生産者にと っては高次財であるから である。 経済構造が高度化すればするほど、 この等級の区別は 一層変化 してくる (この点につい て 〆 ・ンガーは、 消費財と生産財とのあいだの 「因果関係」 を考えるために、 この概念を導入 したと述 べ てい る ⑱。. 次に、 メ ンガ ーは 高 次 財 の特 長 を 次 の2 つ あ げて い る。. 1 ) 数種の高次財が補完的関係 にない限り、 低次財を生産しないことが多い⑩。 ( { 2 ) 高次財が必要とされるのは、 最終生産物を必要とするからであり、 従っ て高次財への必要度 は、 最終消費財へ の欲望の大きさに依存する。 すなわち生産要素の価値は、 最終生産物いかに 帰 属 して い る も の で あ る ⑭。. この 考 え 方 が、 ウ ィ ザ ー お よ び ベエ ー ムに よ っ て 受け つ が れ、 そ して シ ュ ム ペ ータ ー の 理 論 の 中 に 取入 れら れる の で あ る ⑮。. このような帰属の過程が均衡からの乗離となって現われるのである。 す なわち欲望の変化と予想 の変 化 に応 じ て経 済 の 循 環 的 流 れ が 示 さ れ る こ とに な る。 こ の よう な こと か ら、 シ ュ ム ペ ータ ー の 循 環 的 流 れ がワル ラ ス に 基 礎を お き、 そ れに オ ース トリ ア 学 派 を 取 入 れ た も の で.あ ると 云 わ れ る 。 こ の こ とは、 経 済発 展 の 考 え方 に ベ エ ー ム の理 論 を 導 入 す るこ と に お い て、 一 層 明 確に な っ て く る。 シ ュ ム ペ ータ ー に よ れ ば、 均 衡 は 経 済 理 論 の 骨 子 で あり ⑯、 こ の よ う な 状態 が 実 現 す る こ と は 決 し. てないとしても、 参照の点と して分析や診断のために有用であり、 実際欠くことを得ないものであ 2.
(4) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシュムペーター体系と の融合のための序 説1. ⑰ る0 すなわち実際の状態は、 均衡状態からのへだたりでもって都合よく定義で きる 、 と考えるの である。 例えば、 現在の商品の絶対量又は相対量、 物価や所得の絶対量または相対量を、 過去の年 の 同 じ 変動 のそ れぞ れ の値 と 比 較 す る こ と に よ っ て、 そ の 状況 を 論 じるこ とが 多 い。 こ の や り 方 の. 根拠は何もない。 すなわち、.現在の経済体系のすべての与件が変化 した場合、 その状態での或る商 品の価格とその商品の過去の価格とが同一比率を保つという理由は ないからである。 しかしながら、 このことを考慮しない慣習的で大ざっ ぱな均衡概念は、 あらかじめ経済諸量間の均衡関係を前提に して、 この状態からの乗離は、 何らかの危険な状態あるいは諸困難と、 支えがたい 状態 を作り出す こと およ び、 そ の比較 が実 際 の 乗 雛 の 性質 の 程 度を測 る こ とに なる と いう こと を意味 する か も 知 れ. ない。 すなわち、 慣習的で大 ざっ ぱな均衡値を正常値と して、 それと実際値とを比較することによ. ⑱ っ て、 そ の 乗離 の性 質 や 均 衡 値 の 時 系 列 を 引 出 す こと を シ ュ ム ペ ータ ーは 重 視 す る 。 そ して そ の. 均衡概念と して最も重要なのは、 理論的均衡値が常に存在するということではなく、 均衡への傾向 があ ると い うこと であ る。 こ の こ と に つい て も っ と 云 う な ら ば、 論 拠と な る の は、 経 済的 変 数 の 値. が、 きわめて大 ざっぱな実際上の常識さえも異常に高いと認められる数字と、 またこのよ うな常識 さえも異常に低いと認められる数字との間で、 景気循環の進行中に変動するとい う事実と、 同じ常 識 が正 常 と 認め る 値ま たは 値 の 区 域 が、 これ ら の2つ の 数 値 の間 の どこか に あ ると い う 事実 と で あ. る。 均衡概念をこのような役目につかせるためには、 均衡状態が自 ら存在 しない場合に、 その存在 を仮 定す る の では なく、 体 系 が そ れに 近づ き つ つ ある 場 合 に だ け、 そ の 存在 を 仮 定 するこ とに す る。 何 故 なら、 ブ ーム の 最 中 に おい て、 理 想 的 均 衡に つい て語 る こと は ほ と ん ど意 味の な い こ と で あ り、. その要因が作用す る間は、 均衡は存在しないであろうからである。 このような要因が作用しなくな っ た 時に、 均 衡 へ の調 整 が 開 始 せ られ るであ ろ う。 そ して こ の 時に は、 理 想 的均 衡 が 経 済 過 程 の 目 標と なり、 経 済過 程 の 性 質 とい う も の が、 そ れと の 関係 で 明 らか に なる。 そ の 時に だ け 均 衡 は 「経. 済変数の理論的規範」 と呼ぶものになる。 したがっ て体系がも し到達されなけれび、 均衡条件を充 たすと いう状態に近づく時間尺度上の不連続点でだけ 均衡が認められるものとなる⑩。 しかし実際 の体系は、 このような点に到達することは決してないであろうから、 均衡点の代りに均衡区域 (そ まず っ と 均 衡 し て い る) を考 え る ほ う が、 よ り 適 の中では 全 体と し ての体 系 がこ の 区別 の 外 で よ り‘ 切であ り、 シ ュ ム ペ ータ ーは、 こ れ を均 衡 の 近傍と 名 付 け、 事 実 上 の均 衡点 の意 味 で 使用 す る ⑳。. 図示するならば、 第3図のA. B。 C が均衡の近傍であり、’A。 B。 C を結んだ線が趨勢である。. そ し てAA′BB′C が 循 環的 流 れ の 軌 動で あ る。 シ ュ ム ペ ータ ー に よ れ ば、 こ の 趨 勢 は、 景 気 循 環と. るいはその属性にずぎないものと考える。 そ れ 区別される現象ではなく、 趨勢は循環過程の結果あ・ ⑭ l tt 故、 彼は こ れを 結 果的趨勢 ( rend) と 呼ん で い る 。 re su. 第3 図. 3.
(5) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系と シュムペーター体系との融合のための庁説1. ~2. 経済体系は どのようにして発展を生み出すか. シ ュ ム ペ ータ ーは、 経 済 発 展 の 要 因と し て人 口お よ び 蓄 積 の 変 化 を 考 え る が、 発 展 の原 動 力 を 革. 新に求める。 彼によれば、 革新とは、 商品の生 産につい ての技 術上の変化、 新市場や新供 給源泉の 間拓・作業の組織化・材料処理の改良および新事業組織の設立ト換 言すれば、 経済生活の領域での ⑳ 『ち が っ た やり か た で こと を 運 ぶ こ と』--と 定 義さ れ る 。 従 っ て 発 明 と は 同 義で は ない、 発 明 が. ⑱ 現実に取入れられて上記の形態をとっ た時にはじめて革新になる 。 それ故、 発明の強調は、 経済 ⑭ 分 析 に と っ て重 要性 の ない 要 素 を 強 調 す るこ と に な る 。. 革新は外生的なものではなく内生的なものである。 何故なら、 既存の生産要素を新しい用途にふ りむけるということは、 純粋に経済的な過程であり、 資本主義社会では純粋に事業活動上のこと だ か ら で あ る ⑳。 そ し て成 長と 革 新 と は 相 互に 作用 し あい、 お 互 に 条 件 と な る の で あ っ て、 観 察さ れ る 歴史 的変 動は、 こ れ らす べ て の 結 果 で あ る。 こ の よう な革 新の も た ら す 経 済過 程 内 の 変 化 をそ の. ⑳ あらゆる結果や経済体 系のそ れへの反応をシュムペータ ーは経済発展と呼ぶ 。 この考え方では一 ベ ェ ーム の迂 回 生 産 の 理 論 の 発展 で あ る。. べェ ームは、 資本を単なる利子や概念の問題と してではなく、 資本が 生産構造に およぼす影響と いう、 いわば資本主 義的生産構造の中における資本の持つ動きを分析したという点に大きな意義を 有 してい る。 そ の 手 法 が 時 間 を導 入 した生 産 の迂 回 化 の 問 題 で あ り、 こ れ は メ ン ガ ÷ の 財 秩 序. ⑰ Gi i f er。rdnung の 理論 を 基 礎 と して、 賃 金 基 金 説 を 批 判することから、 迂回生産の理論と し て結 実 し、 オ ース トリ ア 資 本 学 説 の 基 礎 と な っ た。 ベ ー ム に よ れば、 生 産 期 間 の延 長 に よる 収 益 の増 大 の 機会 が 存 在す るの に もか か わら ず、 資 本 の 不足 がそ れ をさ え ぎっ て い る と 考 え る。 し た が っ て、 た と え生 産方 法 の改 善が 等 存 在 しな く ても、. 資本蓄 積がおこなわれ、 生産の迂回化がおこなわ れるならば、 経済は発展するものと考えるのであ る。 ベエ ー ム は、 資 本 不 足 ぎ み の 状態 の 中 で、 い か に して生 産 の迂 回 化 を おこ な うか を 論 じる ので. あるから、 成熟した資本主義が投資機会の欠 ばうに悩んでいる現実とは大いに相違している。 まず剰余価値が 生ずる条件として、 同質の財の場合、 現在財は将来財よりも価値が高い (Agio = 打歩) こ と を あ げ ⑳、 そ の 理由 を 次 の 三つ に まと め て い る。. ⑳. { 1 ) 異っ た時期における欲 求と充足の関係. ⑳ { 2 ) 将来 の欲望およびその満足に役立つ手段の低評価 ⑮ { 3 ) 技術的原因 (例えば過去と比較して現在が 最も技術水準が高いと 考える) f fe陀解 から資本 t ai こ れ ら の 3つ の 理 由 に よ っ て 発 生 ず る 現 在 財 と 将 来 財 と の 価 値 の 差 Wer ⑳ 義経 済に お け る 最 も 利子 が 発 生す る 、 も のと べ ュ ー ム は 考 える。 そ し て 第 3 の理 由こ そ が 資 本主 特 徴的 な も ので あ っ て、 迂 回 生産 を 示す も の であ る。 そ してこ のこと に よ っ て 生 ず る 剰 余 価 値 を本. ing Li i cher kapitalzins と よ んで い る。 こ の 本 源的 利 子率が実物を 源 的 源 的 資 本 利 子 urspr. も っ て お こ な わ れる こ と に よ る。 こ の 実 現 された資本による生産均衡の維持方法を示ずものが、 ベ ェ ームの 輪 環 図 Rings chema で あ る。 この図は、 生 産 均衡の 実 物 的構 造 の み な らず、 資 本 形 成 の過 程 を も 示 して い る。. 第 1図と第2図は異 った生産期間輪環図である⑳。 一 番外側は、 次年の消費財を生産するための. 2 )は 2 年 目 の 消 費 財 を 生 産 す る た め の 資本 … … 等 と い う よう に よ っ て い 資 本部 分で あ り、 次 の 輪 環( る。 第 1図 は 生 産 の 迂 回 化 が 短い こ と を 示 し て おり、 従 っ て 初 期 の 資 本 主 義 の 状態 を 示 して いる。 こ れ に 対 し て 第 2図 は、 生 産 の迂 回 化 が 長 期 に な っ て お り、 成 熟 じた 資 本 主 義 の 状 態 を 示 してい る。 こ こ で 内側 に 進 む に つ れ て 面 積 が 漸 次 減少 す る のは、 た と え 長 い生 産 の迂 回 期 間 を有 して い て も、. それは低い 成熟段階をも含んでいるということおよび消費財の生産のため には、 絶えず生産力の投 4.
(6) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシュムペーター体系との融合のための庁説1 ◎ そ の た めに は、 入 が必要 であ ると い うこ と に よ る 。 そ し て こ の こ と が拡 大 再 生 産 を 可 能 に す る が、. 消費の1 部を断念 し、 それを貯蓄し、 生産にふりむけることが条件と なる (貯蓄増大には、 利子率 の低下が関係してくる) ⑮。 貯蓄 の増による消費財需要の減少は消費財価格を低下させることにな り、 消費財の需要は再び増大する。 また貯蓄は生産部門に投下され、 消費財の生産が増大する。 し かしこのことは、 先の消費財需要の増大が消費財価格 をおし上 げているために、 新たな消費財の生 ⑳ 産は 再び 消費 財 価格 を 引 き 下げる の に 役 立 つ。 そ して こ の過 程 が反 復 さ れ る 。 ま た ベ ェ ‐ム の資 本 理論 の特 徴 は、 迂 回 生 産過 程 に お ける 賃 金 と 利 子 の 変 動 と 決 定 およ び賃 金 と. 産 利 子 と の相 互関 係 と して と ら える こと が で き る。 す な わ ち少 い 一 定 の資 本 で、 より 短 い 迂 回生 が 労 おこ なわ れ る な ら ば、 労働 力に よ っ て 生 産 を 増 大さ せ よ うと す る た めに、 労 働 需 要 力 が増 大 し、. 働力が不足するために賃金は上昇する。 それゆえ、 他の事情が等しい限り (資本一定、 生産技術- 定等) 。 利 潤が 低下 し、 利子 率 も ま た低 下せ ざる を 得な い。 こ のこ と は生 産 の 迂 回 化 を し た ほ う が. 有利となり、 企業は低い利子率で資本を借り入れ、 高い賃金の労働力の代りに資本設備を使用する。 しかし今度は、 資本が相対 的に 生産性の上昇 ‐は労働を過剰に し賃金を低下させ利潤を上昇させる。 不足する ため、 利子率もまた上昇し、 生産 の迂回化を短縮した方が有利となる。 このような運動の l の 賃 金基 金説と 通 じて l t Mi 止 む点で、 賃 金 と 利 子 が 決 定 さ れ る。 こ の 考 え 方 は、 J . Stuar い る。. 賃金基金説の欠点は、 労働需要を決定す る賃金基金を与件 と考えている点にある。 資本を労働者. 動 へ の前払 と 考えて おり、 そ の決 定 が どの よ う に なさ れ、 そ し てそ れ が どの よ う な 要 因 に よ っ て変 考え する の かとい う こ とに つい て は 不 明であ る。 しか し賃 金 基金 説 では、 資 金 を労 働 者 へ の 前 払 と. i t enf ond s てい る点 は すく れ てい る。 べ ェ ー ムも こ の 考 え 方 を 受 け つ ぎ、 資 本 を 生 存 基 本 Subs. すなわち生活資料 (消費財) の集積とみなし、 迂回生産の程 度が生存基本の大きさによっ てきまる. ⑰ ので あ り、 こ の考 えか た を 基礎 に し て 賃 金 と 利 子 と の 相 互依 存関 係 と い う も の に つ い て論 じて いる 資本と は 何か、 と いう 間 に対 し て、 ベ ェ ー ムは、 資 本 を 定 義によ っ て で は なく、 資 本 の作 用 の 中. に資本の本質を見ようとした。 それゆえ、 総中間生産物をもっ て資本と考え、 実物資本が迂回生産 に と っ て い かに 重 要 な 役 割を は た してい る と いう こと に つい ての 優 れ た分 析 を おこ な っ た。 しか し そのた め に 貨 幣 自体 に 関 する 認 識 が軽 ん じ ら れ たと い う こ と がで き よ う。 す な わ ち 貨 幣 経 済 の も と. ⑳ で貸付られるのは貨幣であり、 この貨幣が商品に対する購売力を持つのであ るから 、 貨幣経済の もとでの資本分析をおこな うためには、 週 よりもまず、 資本が貨幣の形態をとるということを認識 の す るこ と が 必要 で ある。 も し べェ ー ムが こ の こ と を 認識 してい るな らば、 彼 の 理 論 は、 単 に 迂 回 長 短の み で なく、 景気 循環 と い う も の に ま で 議 論 が 発 展 してい た こ とで あ ろ う。 こ の 点 につ い て、. ウィク ゼルは 「貨幣は資本の一形態である」. ⑳とか 「貨幣資本は貨幣の形態で貸付けら れる」 ⑳ と. ムの こ の い う こ と を 認識 した 上 で 貨 幣 理 論 を 資本 理 論 と の 融合 を 行おう と した。 ま た やは り ベ エ ー. 点について、 革新と信用創造とを結びつけ、 生産の迂回化の問題を景気循環の理論にまで高めたシ. の過 程 が シ ュ ム ペ ータ ーに よ る 革 新 の 波 及過 程 ュム ペ ータ ー の業績 は 大 き い。 そ して こ の 迂 回生 産 れ と 考え てよい。 こ の 革 新は、 シ ュ ム ペ ータ ー にあ っ て は、 新人、(新 規 参入) に よ っ て も た ら さ 、 その 中 合 には 、 旧 企業にと っ てか わる もの と 考 え てい る。 し た が っ て 大 企業 が継 続 的 に 存 在す る場 な で 人 が入 れ変り、 そ の 人達 が 革 新 の担 い 手 に な っ てい る のであ り、 継 続 企 業 は、 革 新 の 担 い 手 と ⑭ 争 も競 て 企業 おい に る人 達 の単 なるタト殻に す ぎない の であ る 。 こ の よ う に シュ ム ペ ータ ーは、 大 一 時的 な もの で あ り、 て よ 利 で あ 潤 は 革 新 に る 潤 企業 者利 従 て っ が 支配 的 で ある と 考え てい る。 っ ⑬ 革 新 企業 は、 出 現 もの であ る 。 こ のよ う な 経 済 では、 競争 と 適 応の過 程 の中 で、 や が て 消 滅 す る・. するや否や防禦 的立場におかれる ばかりでなく、 不欠避的に所属産業や所属部門の既存の構造をお き. 5.
(7) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系と シュムペーター体系との融合のための庁説1 びや か す ⑳ こと に な る。 ま た シ ュ ム ペ ータ ー は、 企業 は銀 行 と 密 接 に 結 び つ い てお り 革 新は か な 、. らず信用創造によっ て実現されるものと考える⑭。 その理由としてまず循 環的流れは、 均衡から出 発 し て 均衡 で そ の1 つ のサイ クル を終 了 す る の で あ る か ら、 均 衡 に お い て は 利 潤は 存在 せ ず 従 う 、. て貯蓄は存在しないであろうことが考えられる。 また貯蓄は途中で見失われたり止められたり方向 を誤 っ た り、 再 び 引 出 さ れ たり す るき わ め て 不 確 定な も の で あ っ て絶 え ず変 化す る も の であ る か ら. である。 したがっ て経済発展の起動力として、 古典派のように貯蓄は重要視されない⑳。 しかし革 新に誘発された経済成長過程 において、 取引の必要資金として貯蓄が利用されることについてはシ ユ ム ペ ータ ーも 異 論 は なく、 こ の 点に い たる と シユ ム ペ ータ ー の 考 え方 は ハ ロ ッ ド ドーマ ー の 、 、. 考え方と大きな差異はなくなってくる。 登 3 シユ ム ペー タ ー の 景気 循 環 モ デ ル (3 つ の 接 近) 1. 骨格の観察 (第1次お よび第2次接近). す でに S Iで 述べ た ごとく 、 経 済 変 動 は、 均 衡 の 近 傍 に よ っ て 分 離さ れ た 諸 単 位 と な っ て 進 行 す る。 シュ ム ペータ ー の 2 局 面 循 環 の場 合は、 体 系 が 企業 者活 動 の働 撃 に よ って 均 衡 から 離 れ 別 の 、 均衡に近づくまで、 すなわち第1図のAから Bま で を1 単位 と 考 え、 シュ ム ペ ータ ーは これ を 第 1 次接 近 と 呼ぶ ⑳。 そ して 四 局 面循 環 の場 合 に は、 A - B ーC を1 単 位 と 考 え こ れ を 第 2 次 接 近 と 、 呼 ん でい る ⑰。 しか し原 理と して は第 2次 接 近 のみ を 考 える 。 シュ ムペ ータ ーは、 信 用 創 造 を 革 新 (イ ノ ベー シ ョ ン) の貨 幣 的 補 足 物と み な す ⑬ 革 新 へ の 融 。. 資が信用創造によって行なわれるなら、 要素の移転は旧企業からの資金の引上 げ (もとの命令の取 消 し) に よ っ て で は なく、 新 しく 創造 さ れ た 資 金 が 企業 者の 処理 に ま かさ れ る一 方 旧 企 業に ま か 、. された現存資金の購買力が減少するということによ って行なわれる⑳。 この革新が新工場や新設備 に具体化さ れる時には、 戦略的関係にある旧 企業にもその影響がおよび、′革新が群生する。 そして 物価の実際 あるいは予期された騰貴 が取引の増大をもたらす。 これが体景を均衡から霜離させ ブ 、 ームに 至 る 過 程 であ る ⑬ (第 3 図 A A′ ) 。 しか しこ の ブ ー ム が 不 況 の 唯 一 の 原 因 と な る す な わ 。. ち革新の群生はやがて生産力の増 大を導き、 企業間の戦略的関係により価格が低下し、 そのことが 投資活動の低下に影響を与える。 これが景気後退である。 そして景気後退期には 体景を均衡に近 、 づける機構が作用 している。 しかし、 ついで物価の下落および販売力 (取引) の低下が作用するよ ⑬ ′) うになると、 再び均衡の近傍から下方に向っ て離反する (B ,- B. 。 こ れが 不 況 であ る 。 次に 不況からの回復が始まっ た場合、 ヒックス流には、 そのまま繁栄に向って均衡の近傍を横切 る こと にな る。 す な わ ち、 回 復 と 好況 と の間 の 基本 的差 は な い。 この よ う な 考 え 方 に対 して シ ユ 、. ムペータ ーは、 次の点からこれを否定する。 すなわち回復は、 在庫量払底 .遊休工場設備 失業労 、 、 働者、 遊休信用の漸次的除去である。 ここには革新らしいものは何も見出 されない。 したがっても し回復を好況局面と同視するならば、 革新は好況を先導する ことと何の関係もないこと になる⑳こ こでさらに回復の要因が均衡の近傍以上に体系を引上げたと しても、 革新が存在しないの であるか ら、 体 系 は再 び 均 衡 以 下に 逆 戻 り す る こと に な る。 よ っ て シュ ム ペ ータ ーに よ る 回 復は 循 環 の 最 、 初 の局 面 では なく、 最 後 の 局 面 な ので あ る。 す な わち ブ ー ムへ の道 行 は 革 新 に よ っ て も た ら さ れ る も のであ り、 回 復は 適応 のメ カ ニ ズム に よ る も ので あ る。 した が っ て シ ユ ムペ ータ ーは 景 気循 環 、. を発散的ないしは非減衰的なものとするヒックスの型ではなく、 減衰的な機構を支持していること に なる。 2 . 第 3 次接近. これまでは、 循環的流れの 単一 の継起と、 その各々のものが先行のもの や後続のものと同型であ ると考えてきた。 しかし現実 には、 さまざまな長さと強度とを持ちお互いに重なり合っていると思 6. ・.
(8) . 亀畑義彦;ケイ ンズ体系とシュ ムペーター体系との融合のための序説1 ⑳ ⑭ 。 シ ュム ペ ータ ー の第3 次 接近 あ る い は循 環 式 とい わ れる も の がそ れで あ る (第4図 参 照)。 図 の① は ゴ ン ドラ テ ィ ーフ 波 動 で あり ⑮、 I98o 年 代か ら 1842 年 に 至 る ま で. わ れる 理由 がある. を第1長期波動、 1842年から1892年までを第2の長期波動、 そ して1897年以後を第3 の長期 波動とした。 この第1の波は産業革命を、 第2の波は蒸気と鉄鋼の時代を、 そして第3の波は電気、 化学および自動車の時代を意味している⑮。 第 4図. ,. ② ③. 図の②は ジ ュ グ ラ ー 循 環 で あ り ⑳、 ジ ュ グ ラ ーに よ っ て、 ゴ ン ドラ テ ィ ーフ 波 動 の中 に も 平 均9. ~1 0年の周期を持つ波動のあることが発見された。 ③はキチ ン循 環で あ り、 キ チ ンとク ラム に よ っ て発 見 さ れた も の で、 ほ ぼ40ケ月 の 周 期 を 持 っ て い る ⑳。. ④は、 ①から③までの和を示す。 すなわち、 観察可能な動きである。 ここで図のA点およ びB点 が均衡の均傍にほかならない。 以 上 が シ ュ ム ペ ータ ーのい う 景 気 循 環 式で ある。 シ ュ ム ペ ータ ー の 分 析 に よ れ ば、 1ゴ ン ドラ テ ィ ーフ循 環 に対 して6 ジ ュ グラ ー循 環 が、 そ し て1 ジュ グラ ー循 環 に 対 し て3 キ チ ン循 環 が 数え ら れ る。 し か しそ れ ら の 数 が い つも 同 じで あ る と 仮 定す る こ と に つい て は、 合 理 的 な 理 由が あ る わ け. ではなく ⑳、 大まかな観察の結果である。 革新による懐妊期間は長短さま ざまであるため、 この3 循環 の併 存 を、 シ ュム ペ ータ ーは 革 新 に よ っ て説 明 し よ うと しな が ら も、 キ チ ン循 環 につ い て は、 な お需給 の 適応 の 変 動 に す ぎ ない と い う 可能 性 に つい て 指 適 し て い る ⑩。 シ ュ ム ペ ータ ー の場 合、 在 庫循 環 に つい て の 明示 的 な 説 明 は な い け れ ども、 こ の 適 応 機 構 を 考え てい る と い うこ と は、 キチ. ン循環として在庫循環を考える用意があったことを示している。 S4. シユムペ ー タ ー モ デル の 検 討. 1 , 理 論 の要 点 を中 心 と し て 以 上 に おい て示 さ れ た シユ ム ペ ータ ー の景 気循 環 理 論 に お け る トレ ン ドと サイ ク ル と は、 分 離さ れ てい ない ばかり か、 趨 勢 は 循 環 的 過 程 以外 の 何物 で も ない。 こ れ は、 ハ ロ ッ ドお よ びヒ ッ ク ス な どのケイ ンズ的モ デル ない し はカ レッ キ ーカ ル ドア 型モ デル と は 明 らか に異 っ てい る。 シ ュ ム ペ ー タ ー のい う 趨勢と は、 均 衡 の近 傍 と 同 義で あ っ た。 そ れ 故、 我 々 が 一般 に 使用 し てい る 趨 勢 (あ る い は 成 長) の概念 と、 シ ュ ム ペ ー タ ーのい う 趨 勢の 概 念 と は 異 っ てい る。 す な わち、 我 々 が循 環 と.
(9) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシュムペータ ー体系との融合のための序説1 い う場 合 に は、 い わ ゆ る ハ ンセ ンの い う主 循 環 (設 備投 資 循 環) を さ す も の で あ り、 シ ュ ム ペ ータ ー の いう ジュ グ ラ ーサイ ク ル がこ れに あ た り、 ゴ ン ドラ テ ィ エ フ ・ サイ ク ル を さす ので は な い。 そ してハ ンセ ン流に は、 設 備投 資循 環 を 結 ぶ 線 又 は 曲 線 を 趨勢 と 呼ん で おり、 従 っ て シュ ム ペ ー タ ー のい う ゴ ン ドラ テ ィ ーフ ・ サイ ク ル は、 我 々 の概 念 で は 趨 勢 と 同 義で あ る と考 え るこ と が で き よ う。 この よ う に 考 え るな ら、 ジ ュ グラ ー・ サイ ク ル (設 備投 資 循 環) を 主 循 環 と 考 えるハ ンセ ン流 の 考. え方に、 単純にキチン・サイクル (在高循環) が含まれる。 これが主循環から導かれるものとみな してよい で あ ろ う か と い う 問 題 と か、 あ るい は ヒ ッ ク ス流 の 景 気 循 環 理 論 の 弱 点 と い わ れ る独 立 投 資 の 取 扱い につ いて、 シ ュ ム ベ ータ ーの均 衡 総 念 が 適 用 可 能で ある と い う 解 釈 に た つ こ と に なる (こ れ は シ ュ ー ム ペ ータ ー の 基 本 的 考 え方 と は 異 っ てい る が、 1 つ の応 用 があ る。 こ れ ら のこ と に つ い て は後 述す る こ と に す る。 ) ま た シ ュ ムペ ータ ー の 理 論 は、 完 全 競争 を 前提 と して い る か ら、 経 済 発 展過 程 に 伴 う 産 出 量 の 増 大 (革 新 に よ る) は、 価 格 の 長期 的 低 下傾 向 を も た らす ⑬。 こ のこ と は、 シ ュ ム ペータ ー に おけ る. 趨勢の観測が、 未だ競争 が支配的であっ た1 9世紀より2 0世紀の初めの4半期によるものであること による。 しかし2 0世紀以後の資本主義経済の価格趨勢が上昇傾向を示していることを取上 げるなら ば、 明 らかに 相 違 して い る。 しか し こ れ のみ か ら シ ュ ム ベ ー タ ー・ モ デル が19世紀 の資 本 主 義経 済 の みに 適 応 せ ら れ る と 考 え る の は 早 急に す ぎる で あ ろう。 ま た 革 新 に 基 づ く シ ュ ム ペ ータ ーの 理 論 が、 需要 面 に つ い て の分 析 を 軽 ん じ てい る と い う こ とに つい ては、 こ れ ま で の シ ュ ム ペ ー タ ーの 論 述 か ら 明ら か であ る。 しか し シ ュ ム ペ ータ ー の 言う 成 長 要 因 と し て の人 口 と 蓄 積 の変 化 ⑲ あ るい は. 新生産物な いしは新生産方法 の導入及びそれと結びついた信用創造の効果が消費財需要と投資財需 要 の増 大を もた ら す で あ ろ う こ と を読 み と る こ とは 可 能 で あ る。 さ らに シユ ム ペ ー タ ーの 意 図 と は. 別に政策的な有効需要の創造と波及を補足するならば、 このことは、 短期的には不況から均衡の近 傍 へ の一 層 の 吸 引 力 と な る (シュ ムペ ータ ー は、 長 期 的 に は 政 府 の介 入 は 停 滞 要 因 と 考 え てい る)。 しか しこ の補 足 的 説 明 を の ぞく な らば、 シ ュ ム ペ ータ ー は、 第2 次 的接 近 と してベ ェ ‐ ム に 基礎 を. おいた革新の導入による発展を強調するあたり、 供給面からの分析に全力を注ぐことになり、 第2 次接近によってなされる経済発展自体による需要面への波及効果についての分析はやはり軽視され たと 考 え る こと がで き る であ ろ う。 こ の点 に も ポ ス ト・ ケイ ンジア ン に よ る 有 効需 要 の重 視とは 方 向 が異 っ て い る。 故 に、 革新 は1 回 限 り の群 生を考 え、 需 要 の 波 及 効 果 は 考 慮 してい ない こ と か ら、 シ ュ ム ペ ータ ー は、 景 気 循環 を 発 散 的 ない しは 非 減 衰 的 なも の と す る ヒ ッ ク ス ない しは グ ッ ドウ ィ ン流 の 型 を 退け、 カ レ ッ キ ー ン同 様、 減 衰 的 な 機 構 を 考 え て いる こ とに な る。 こ の こと は 革 新 の群. 生を基礎に持つ循環の歴史的認識からの結果である。 この考え方は、 ケイ ンズ以来の理論的な流れ か らす る な らば、 是 認 し が た い 帰 結で あ る よ う に 思わ れ る。 し か し な がら、 ケイ ン ズ 流 のあ るい は. ケイ ンズ体系の長期化の過程に於ける有効需要の考え方は、 革新という供給面と結びつけることに よ り、 シ ュ ム ペ ータ ー の 景 気循 環 モ デ ル に お け る 革 新 の 取 り 扱 い につ い て の 説 明 が 改善せ ら れる で あ ろう。 こ の 点 に 関 して ヒ ッ ク ス の よ う な 乗 数 ・ 加 速 度の相 互 作用 と、 シ ュ ム ペ ータ ーの 理 論 と を 結 びつ け る な ら ば、 シ ュ ム ペ ータ ーの 理 論 は、 極 め て分 析 的 なも の に なっ た で あ ろ う。 こ の 点 に 関 して、 グァ ドウィ ンに よ っ て 示さ れ た 革新 を 中 心と した 乗数 ・ 加 速度 と の 結 びつ き を持 つ 循 環 的. 成長の考え方は、 極めて示唆 に富んでいる。 さらに、 現存資本設備と必要資本設備量との不一致に 景 気 循環 の 原因 を 求 め る グ ッ トウ ィ ンの 考え 方 の中 に、 シ ュ ム ペ ー タ ーの 既 存 企の 存 在 と 革 新 の 群 生 と い う 問 題と●を結 び つ け た ウィ ル ソ ンの 構 造 的 効 果 の 問 題 を 同 時 に 考 慮 す る こ と がで き る なら ば、 そ れは、 ポス ト・ ケ ィ ン ジ ア ンの 理 論 をシ ュ ムペ ー タ ー の 理 論と の 融合 を 助 け る べき で あ ろ う ⑬。 2 ,. 8. シュ ム ペ ータ ーと マ ル ク ス.
(10) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシュムペーター体系との融合のための序説1 シュ ム ペ ータ ー の第 1 次 接 近と 第2 次 接 近 に おい て は、 1 景 気循 環 の経 済 諸 量 が 前期 又 は 後 期 、. の景気循環のそれと関連しあっているものではなく、 自足完了的であることから 景気循環が単一 、 に 継 期 し、 そ の 各 々 のも の が 先 行 の も の や 継 続の も のと 同 型で あ る と 考え て きた そ の 限 り に おい 。 て シ ュ ム ベ ータ ーの 接 近 は極 め て 静態 的 均 衡 の 性格 を有 して い る こ のこ と は 先 に 見 た よ う に 。 、 、. シュムペーターの変動の原因は革新であり、 かつ一般的な完全競争的均衡模型を選択したために 1 、 変 動 が市 場 に 及 ぼす 諸 効 果 に つ い て の分 析 が 阻 止 さ れ てい る。 そ れ 故、 シ ュ ム ペ ータ ーの 景 気 循 環. 理論からは、 独占的剰 余の可能性及びその効果 (例えば、 独占的剰余の革新に対する抑圧的可能性 及び総需要 への影響等) についての考察がなされていない。 これらのことから 景気 循環の単一性 、 を主張することに なり (ヒックスと類似)、 包括的な経済変動理論の形成の可能性を阻止している. ◎ こ の 点につ い てマル ク ス は ど う で あ た う か っ ろ 。 。 の産 マル クス 業 予 備軍 は、 技 術進 歩 の結 果 も た らさ れ た もの で あ り、 こ れ が賃 金に よ る利 潤へ の 食 い 込み を防 ぎ、 資 本関 係 を維 持さ せ た。 した が っ てそ の 限り に お い て は マル ク ス の 資本 蓄 積 法 則 、. は、 革新 に 基 づく シュ ム ペ ータ ー の 発 展理 論 と 似 てい る まず マル ク ス の 単純 再 生 産表 式 を例 に と 。 ろ う。. 1 n. 400CI 十 lo。ovl 十 looOD 一 つ ム ニ 6000w. . 200C2 + 500V2 十 500M2 = 3000W2 6000C 十 1500V 十1 500 M. =. } I. 9 00OW =. 生産手段需要額. 生産手段総額 (供給) (前貸資本額). こ こで 第1 部門 の6000W・ 及 び第 宜 部門 の3000W2 は各部門の生産手段の総額 (供給) をあ らわ し、 か つ VI 十MI =C2 なる故、 2つの部門の不変 資本の合計 は6000C(需要) となり 需. 、 要=供給なる関係 が維持され、 この静態的均衡理論に必要な資本関係は常に維持される この静態 。 的均 衡理論 は シ ュ ム ペ ータ ーの 景 気循 環 理 論 と 同一 で あ る。 し か しマル ク ス の 再 生 産過 程 と シ ム ュ ペ ーター の景 気循 環理 論 と を比 較す る な らば、 こ の両 者 は一致 し な い す な わ ち 。 1 4000C・ 十 100OV, 十 1000]輪 = 6000WI B 1500C2 十 75oV2 十 750M2 ェ 300ow2 5500C. 十 1750V. 十 1750M. = 900O W. とい うマ ル ク ス の 拡 大 再生 産表 式 に おい て は、 Cz < VI 十M・な る 故、 生 産 手 段 の 供 給6 000W,. がその需要5500Cを超過するから、 静態均衡 (同時均衡) 論的なものではない。 さらに第2年目 をみ ると 1 =. 4400C, 十110O V・ 十110OM・ こ6600W・ 1600C2 十 800v2 十 8 00ル』 =3200 w2 6000C 十190OV 十190OM =980 0W. となるから、 第2年目の生産手段の供給 (600W ・)は、 第2年目の更新部分に純投資を付加した 生産物の需要 (6000C )に等しく、 従ってマルクスの景気循環利論は動態均衡論的なものとみな され な け れ ばな ら ない。 故 に、 先 に み た 単 純 再 生 産表 式 で 示 さ れ た シュ ム ペ ータ ー の 景 気 循 環 理 論 とマル クス の景 気循 環 理 論と は、 厳 密 に は異 な っ てい る そ れ 故 シ ム ペ ータ ■の理論が静態 ュ 。 、. (同時) 均衡論的な経済理論であるのに対して資本蓄積の法則に基づいたマルク スの動的 (異時的) 均衡理論は、 過少消費によっ てではなく、 「剰余価値の概念すなわち利潤率の不可避的な低下及び 9.
(11) . 亀畑義彦i ケイ ンズ体系とシユムペーター体系との融合のための序説1 超過利潤の循環的破壊に 基礎づけられた、 事実上、 長期沈滞の理論であり⑮、 包括的経済変動理論 への ア プロ ーチ の た め の多 く の可 能 性 を 含 ん でい る とい う こと が出 来 よ う。 こ の点 に つい て ラ ンゲ は、 マル ク スの 理 論 は 経 済 発 展 の 理 論 であ る と考 え る。 何 故 な ら、 マル ク ス の 産業 予 備軍 が技 術進. 歩の結果発生し、 それらの賃 金をして労働の価値以上になることを妨ぎ、 利潤を存在させ、 又資本 関係を永続せしめるものであるからである。 すなわち技術進歩こそ 資本主義の継続的維持の必要条 件であり、 資本の有機的構成の高度化を説明すべき資本主義制度の動態的性質は、 このことによっ て証明される⑱と考えるからであ る。 しかしながらマルクスの理論が剰余価値の概念に基づく 不均 衡発 展 を とる 限 り、 シ ュ ム ペ ータ ー の 理 論と 同 じも の と 考 える こ と す な わ ち 経 済 発 展 の 理論 と み る こと は 困 難 で あ ろ う ◎。 と こ ろ で シ ュ ム ペ ー タ ー は、 イ ノ ベ ー シ ョ ン に 基 づく 企業 者 の創 造 的 破 壊 に よ る 永 遠 の 継続 の み を考え てい たの で あ ろ う か。 換言 する な ら ば、 シ ュ ム ペ ータ ー の 理 論 の 中 に 停 滞の問 題 は 含 ま れ て い ない のであろ う か。 次 は、 こ の こ と につ い て 考 え てい る こ とに す る。 3 シ ュ ム ペ ータ ー に 停 滞理 論 はあ る か こ の 問 題 に関 して シ ュ ム ペ ータ ーは 次 の よ う に 述 べ て い る。 「1935年 ま で の 正 常 以 下 の回復、 1 93 7 年 にか け て の 正 常以 下 の繁 栄、 そ の 後 の停 滞等 は、 次 の原 因 に よ っ てたや すく 説 明 さ れ る。. すなわち、 新財政政策、 新労働立法、 私的企業に対する政府の態度の全面的変化等への順応に付随 する 諸 困 難 がこ れ で あ る」 ⑳。 こ の言 葉 は、 シ ュ ム ペ ー タ ー の 停滞 理論 を 探 る ため の糸 口 に なる。 す なわ ち、 シュ ム ペ ータ ー は、 景 気 循 環 を 減 衰 的 な 機 構 と 考 えた こと に つ い て は 上 述の ご と く で は. ion) の 過 程 を 永 続 せ し t i e dest rcec あるが、 革 新と 競 争 と の 相 互 作用 が創 造 的破壊 (Cr e at v しめ、 たとえ独占の形成においても、 独占間の競争 が経済進歩の推進力となるという経済成長を考 えて い る。 そ して も し、 不 況 か ら の 回 復 が 正 常以 下 で あ り、 か つ そ れ に 引 き 続 い て沈 滞 が存 在す る ‐ィ ‐ ル 政 策も とす れ ば、 そ の 原 因 は 政 府 によ る 政 策の 介 入 に あ るこ と を 指 適 し て お り、 ニ ュ ー ・7 またそ の例 外 で は な い と 考 え る。 す な わ ち そ れ は、 企 業 の 競 争 原 理 を 奪 う も の で あ って、 1930 年 代の 大 不況か ら の 回復 が不 充 分 であ っ た の も、 そ の こ とに 原因 があ る も の と み な す ⑳ と 述 べ る に 至 っ て い る。 こ の よ う に なる と、 ケイ ンズ 政 策の 定 着は、 明 ら か に 長 期 停 滞 を 結 びつく こ とに な る。 こ の点 につ い て シュ ム ペ ータ ーは、 更 に 次 の よ う に 述べ てい る。 「資 本主 義 経 済 の 行動 の 中 に 資 本. 主義が崩壊する要因があるのではない。 逆説的ではある が、 資本主義的企業の 非常な成功こそが、 元来それと 結びついている階級の威信と社会的重要性とを傷つけるに至ること、 及び巨大な企業単. 位 が、 ブル ジョ ア ジー の 社 会 的 重要 性の よ っ て立 つ 職 能 か ら、 ブル ジョ ア 自 身 を 追 い出 す に 至 る ⑳。. の後継としての社会主義を強く志向するような事 そして不可避的にその存続を不可能ならしめ、 そ● 態を作り出す。 資本主義的企業は、 他ならぬ自らの業績によって、 進歩を自動化せしめる傾きを持 -- つから、 それは自分自身を余計なものたらしめる 一 自 らの 成功の圧迫に耐えかねて粉砕される 傾向を持つと我々は 結論する。 完全に官庁化した巨大な産業単位は、 中小規模企業を追い出し、 そ の所有者を 「収奪」 するのみならず、 遂には、 企業自体をも追い出し、 階級と してのブル ジョアジ ーをも 収 奪す る に 至 る。 そ して そ の過 程 に於 て、 ブル ジ ョ ア 階 級 は、 自 己 の 所 得を 失 う の み な ら ず、 そ れこそ も っ と 重 要 な こ と で あ る が、 そ の 機 能 をも 失 う のを い か んと も し が たい。 社 会 主 義 の 真 の 先導 者は、 そ れ を 説 法 し た 知 識人 や 煽 動 者 で は なく、 パ ンダ ーバイ ト、 カ ーネ ギーそ して ロ ッ ク フ ⑪ ェ ラ ー の一 族 の如 き 人 々 で あ る 。 この ように し て、 シ ュ ム ペ ータ ーに おい て も 停滞 理 論 は 存 在 して お り、 しか も 公 共 政 策 が 資 本 主 義を衰 退さ せる 政 策の 柱 に す え ら れ てい る。 こ れ に 対 し て トロ ッ ドは、 トロ の 成長 と 技 術 進 歩 と い i ront er う 外 生 的要 因に よ る 停 滞 理 論 を 考 え て おり、 ハ ンモ ンも 又、 ①人口の増加率の逓減 ② New f io.
(12) . 亀畑 義彦;ケイ ンズ体系と シュムペーター体系との融合のための序説工. の 消 滅 (新 領 土、 資 源の 発見の 可能性 の 消 滅③ 資 本使用 的発明か ら資本節約的な発明への転 換、 等とい う 外生的な要素による投資 機会の減少による 長期停滞論⑬を持っている。 このハンセン の 考 え方 に ついて、 シ ュ ム ペ ータ ーは 次のよ う な 批判 を 行 っ て い る。. 1 { ) ハンセンによれば、 総人口増加率の減退自体が需要の拡大を制限するが故に、 生産量の、 従 て っ 投資の増加率の減少をもたらすと主張している。 しかし欲望と有効需要とは同じものではない。 もし同じものだとしたら、 も っとも貧しい国民こそも っ とも活発な需要を示す国民となる筈である。 すなわち有効需要 を伴わない人口増加は意味がないから である。 故に人口増加率は減退しても、 1 人当りの購売力がそれを上回っ て増大するならば、 人口の増大が労働の増大をもたらし、 これが生 産量の増大をもたらす条件であるとすれば、 そのことは同時に、 人口増加率の減少は労働力不足に 基づく生産量制限の条件になると考えることは可能であるということである。 しかしながら出生率 低下の反面、 労働節約的技術進歩や婦人労働市場への進出を考えるならば、 1 人当り生産量はむし ろ増大す る傾 向を示すことができるであ ろう。 又人口が増大し、 あるいは特定部門で労働力が過剰 になることにより、 労働節約的技術進歩への投資誘引を弱めることもありうる。 要するに人口増加 率の減退は必ずしも有効需要の低下とは結びつかない⑩。 ier の 消 滅 に つ い て 2 ( ) New Front 。 こ の こ と に つ い て、 資 本 主 義 の 領 域 に 加 っ た 土 地 が、 収 穫 逓減 がいま や正し く 姿 を現 わ す と い う意 味 に おい て開 発 さ れ つ く したと す れ ば、 こ の こと は、. 投資の抑制要因となろう。 しかし( 1 )で述 べた如く、 技術進歩は、 かかる傾向を逆転せしめた。 かく て予 想しうる近き将来においては、 我々が将来支配しうるあらゆる力を総生産量の無制限な拡大に 打込んで食糧と原材料との豊富の困惑の中で暮らすことになるであろうということは、 最も安全な 予 言 の1 つ であ る と い え よう。 こ の こ と は、 鉱物 資 源 に つ い て も 同 様で あ る。 こ こ で以 上 の 可能 性. が充分大きいことを考慮した上で、 なおそれらの可能性が実現された段階においては、 その機会は 常に枯渇するであろうか。 もしそうであるとすれば、 不況と共に 経適は永壷 の停滞に落ち込むであ ろう。 しか し産業革命以来、 技術の発展は当時の人口の予想の限りではなかっ たであろう。 又地上 の 征服か ら空 の 征服 へ の歩 み も こ れ に 等 しい。 ま さ に技 術的 可 能 性 は、 海 図 に 載 っ て い な い 海 に 等 しい こ とを 考え る な ら ば、 現 実 の経 済 は 既 に フ ロ ン ティ ア を 消 滅 せ しめ て い る と 考 え る こ と は で き ない で あろ う。 す なわ ち地 理 的フ ロ ンテ ィ ア と 経 済 的 フ ロ ンテ ィ ア と を 混同 し ては な ら な い ⑩。. 最後に、 資本使用的発明から資本節約的発明への転換を停滞の要因とみなしうるであろ うか。 こ の点 に つい て、 た しか に鉄 道 建 設 の 時 代 に 比 し て そ れ 以 後 に お い て は、 同 じ 鉄 道 建 設 に 投 資さ れ る. 固定資産の比率は低下するであろう。 しかしそれは、 鉄道という同一対象の中での比較である。 そ こでこの対象を現在、 鉄道によっ て実際に運送されている旅客数および財貨量 と同量のものを駅逓 馬車や荷馬車で運送する時に要する費用を鉄道との関係でみるならば、 鉄道の方がより資本節約的. で あ るとい うこと がで きよ う ⑬。 そ して ひと た び鉄 道 建 設 が完 成 した あ か つ き に は、 そ の 内 部 で の. 一層 の 資本 節約 的な技 術 が 進 歩 する こ と にな るで あろ う。 だ か ら と い っ てこ の こと は、 も う 鉄 道建 設 の ご とき 大き な 革新 をも た らさ ない と い う こ とに は な ら ない、 す なわ ち そ の 他 の まっ た く 新 し い. 分野が存在してくる。 例えば、 絹生産と人絹生産、 石油化学の合成および公害防止機械等 における がごときものである。 このように考えるならば、 投資機会は無限に 存在す る。 そしてその採用は投 資誘因のいかんにかかわっ てくる。 換言すれば、 長期停滞は、 巨額の投資と結びつくような大きな 技術的可能性を採用しうる投資誘因が 存在しないがために、 革新と結びつかないということ、 すな わ ち経 済 的 フロ ンティ ア が 縮少 してい る た め に 停 滞 が発 生す る と 考 えた ほう が 妥 当 で は な い だ ろう か。 シ ュ ムペ ータ ー の立場 に 立 っ てハ ンセ ンの 外 生 的要 因 に 基 づ く 停 滞理 論 の 批判 を 試 み る なら ば以 11.
(13) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシュムペーター 体系との融合のための序説1 上 の よ うな こと が い い う る。 しか しな が らハ ンセ ンの立 場 は、 外 生 的 な原 因 に よ る 結果は、 外 生 的. な治療において治療可能であり、 従っ て資本主義の停滞は、 国家による外生的手段のみによっ て解 決 可 能 で あ ると い う 解 釈 を 与 え て い る こと に なる。 す な わ ち ハ ンセ ン の解 釈 は、 現 代 の 資 本主 義 に. おける長期停滞を回避するためには、 外生的な刺激を与えることが必要であるという結果を導く。 すなわち財政投融資に 基づく国家の手による有効需要創造政策がそれである。 かくしてハンセンの 帰 結 は、.政 府に よ る 公 共 政 策 を資 本 主 義 の 政 策と して は 好ま しく な い と考 え る シュ ム ペ ータ ーの 考 えと は対 立 して い る ⑮。 ま た 本研 究 が一 ク ライ ンに よ る ケイ ンズ体 系の 長期 化 以 来、 停滞 の 問 題 を す ぐれ て内 生 的問 題 と して 取 扱 っ て き た が一 ハ ンセ ンは、 そ れ を外 生 的 な も のと考 え る と こ ろに 大 き な問 題 を 残 してい る。 そ こ が 停 滞 を 需要 面 に 重 点 を おい た ハ ンセ ンと は 逆 に、 シ ュ ム ペ ータ 一 流 に、 供 給 面 であ る 経 済 的フ ロ ンテ ィ ア と い う 内 生 的 な問 題 を中 心 に 裾 るな ら ば、 停 滞 理論 を考 えて い く た めに は、 独 占 を どの よ う に 評 価 した ら よ いか と い う こと が 重 要と な っ てく る。 そ こ で 次に、 シ ュ ム ペ ータ ーに よ る 経 済発 展と 独 占と の関 係 の捉 え方 に つい て 論述 する こ と に す.る。 4 , シ ュ ムペ ータ ーと 独 占 シ ュ ム ペ ータ ー は、 彼 独特 の 独 占理 論 を 展 開 する にあ た っ て、 ま ず、 完 全競 争 の 非現 実 性につ い て、 次 のよ う な 指摘 を 行 っ てい る。 「資 本 主 義 の 現 実は、 か っ て は 生 産 成 果 の 極 大あ る いは 少 なく と も こ の体 制 に つ い て の 真剣 な評 価に お い て、 主 要 な要 素 を な すに 足 るほ どの 大き な 生 産 効果 を も. たらす のに有利にゆく傾向があっ たが、 その後の発展と共に競争を消滅せしめる独 占的構成体が拡 大 して、 今 日 で は そ の 傾 向 が 逆転 さ れて しま っ た。 しか し 事 実は こ れ に 反 する。 完 全競争 が現 実に おい ても 過 去 のい かな る 時 代 に お い ても、 決 し て現 実 的 で な か う た ことは き わ めて 明白 で あ るか ら. である。 なぜな ら完全競争と生産成果との結びつきの消滅については、 生産量の増加率は少なくと も製造工業において、 巨大規模では、 巨大規模企業が優勢に なりはじめたと考えられる1 8 9 0 年 代以後、 少 しも減少していないこと、 すなわち総生産量の時系列の動きは趨勢の中断を暗示するよ うなものは何もないことをあげて、 さらに大衆の現代の生活 水準は、 比較的拘束なき大企業の時代 に 上 昇 し た こと を 指摘 し て い る。 こ の こと か らシ ュ ム ペ ータ ー は、 目 ざ ま し い 進歩 を と げ た個 々 の 項目 に つい て研 究 す れ ば、 そ の 結 果 は、 比 較 的 自由 な競 争 状態 の 下で 作用 して い る 企業 の ドア に は い た らず、 まさ しく 大 企業 の ドア にい た る で あ ろう こ と、 そ して 大 企業 は、 生活 水 準を 低 下せ しめ る どこ ろ か、 か え っ て それ を 押 上 げ る のに 大 い に貢 献 し た の では な い か、 と 考 える ◎。 す な わち、. 彼によれば、 おおよそ資本主義は、 本来経済変動の形態ない し方法であって、 決して静態的でない のみならず、 決して静態的たり得ないものである。 しかも資本主義過程のこの発展的性格は、 ただ 単に社会的自然環境が変化し、 それによっ て また経済活動の与件が変化するという状態の中で、 経 済 活 動 が 営 ま れ る と い っ た 事 実 に 基 づく も の で は ない。 こ の 事 実も な るほ ど重 要で あ り、 こ れら の. 変化 (戦争、 革命等) は、 しばしば産業活動を規定するものであるが、 しかもなおその根源動因た る も の で は ない。・資 本 主 義の エ ン ジン を始動 せ し めそ の 運動 を 継 続 せ し め る 基 本 的 衝 動 は、 資 本 主. 義的企業の創造にかかわる 新消費材、 新生産方法ないし、 新輸送方法、 新市場、 新産業組織形態か 0年か ら1 94 0年ま で の労 働 者 の家 計の 内 容 は、 単に 76 らもたらされるものである⑩。 例えば、 1 一 定 線 上 で の 成 長で はなく、 質 的 変 化の過程を経たものである。 同様にして、 輪 作・耕 転、 施 肥を合理化 し始めた頃から今日の機械化された器具 - エ レ ベーターや鉄道と連絡して 一 に いたる までの典型的な農場生産設備の歴史は、 革命の歴史である。 木炭がまから現在の型の溶鉱炉 にいたる鉄鋼産業の生産装置の歴史、 水車から現代の動力工場にいたる動力生産装置の歴史、 駅逓 馬車から飛行機にいたる運輸の歴史等もみなそうである。 内外の新市場の開拓および手工業の店舗 や 工 場 か ら U・ S ・ ス チ ール の ご と き 企業 に いた る 組 織 上 の 発 展 は、 不 断 に 古 き も のを 破 壊 し、 新 12. ・.
(14) . 亀畑義彦:ケイ ンズ体系とシユムペーター体系との融合のための序説1. しきものを創造して絶えず内部から経済構造を革命化する産業上の突然変異一生物学的用 語を使用 する こと が 許さ れるな ら ばー の同 じ 過程 を 例 証す る。 こ の創 造 的 破壊 の過 程 こそ 資本 主 義に つ い て. の本質的事実である。 それはまさに資 本主義を形成するものであり、 すべての資本主義的企業がこ の 中に生 き ねばな らぬ も の で あ る。 よ っ て以 上 のこと か ら、 資 本 設 備 お よ び 技 術一 定 の も とで の多. 数の売手と買手が、 価格を与件と して各々が受動的な極大行為を行なうという完全競争 の理論、 シ ペ は 近代的産業 ュ ムペ ー タ ー の理 論か らは きわめ て非 現実 的 な も のであ る。 よ っ て シ ュ ム ータ ー 、. 構造は完全競争ではなく、 規模の経済と経済進歩との関係としてと らえ、 特に独占と創造的破壊と の結びつきによる 経済進歩を強調する⑲。 そ して独占が革新と結びつく限り、 価格は長期的に は賃 金率の自動的変化によって妨げられない限り、 技術進歩に呼応して低下する。 しかしそれは完全競 争 の 状態 ほ どには 低 下 しな い。 な ぜ な ら、 企 業 者利 潤 に は、 独 占 的 な要 素 が横 た わ っ て い る か らで あ る。 こ のこ とは 不況 局 面に お い ても 作用 する。 不 況の た だ中 に あ っ て、 物 価 が低 下 し て い く 時、 需要 が伸 びる とは 考え られ ない。 例 え ば、 不 況 に おい て 自 分 た ち の 将来 を と り こ し苦労 す る 人 達 は たと え価格 が25%低 下 して も、 人 口 は 新 しい 乗用 車 を買 お うと は し ない であ ろ う。 価格 引 下 げ がよ り一層 の 価格 低 下を 呼 ぶ と 予 想 せ ら れ て いる 場 合 に は な お さ ら の こ とで あ る。 こ の場 合、 競争 価格. ほどには価格は低下しないという意味での価格の下方硬直性は、 競争が完全な場合よりも大きな iぢ と 失 業 と を 一 般 的 に す る で あ ろ う。 こ の 価 格 の 下 方 硬 直性 は、 ブ 冊 ム の 時 Excess Cap ac に おい ても 競争 価格 ほ どには 上 昇 しな い こと を意 味す る。 又 こ れ と は 逆 に、 不況 に お け る 競 争 価 格. の完全な低下は利潤の完全な消滅による一層の産出量の低下と失業とを生み出すであろうことから一 ⑳ む しろ価格 の 完 全な伸 縮 性 は、 経 済 の 不安 定 化要 因で あ る 。 こ の よ う な 考 え に 至る と シ ュ ム ペ ー タ ー理 論 の 自 己矛 盾 が おき てく る。 す な わち 価格 の 下方 硬直 性 に よ る 不 況 の ボ トムで の 何 ら か の 独. 占利潤の存在があるのであろうから、 均衡の近傍という無利潤の均衡水準の存在がなくなるであろ う。 又均衡の近傍の存在を認めるとしても、 景気回復による生産量が増大する時、 価格の上昇が競 争 価格 ほ どで は ない た め、 需 要 が一 層 増 大 す る。 そ れ 故 シ ュ ム ペ ータ ーが示 した よ う に、 大 期 にお ける信用創造とt+ 1 期 に お ける そ れ の 引 きは らい に よ る 有 効 需要 の 不変 と い う 状態 は 存 立 しなく なる。 こ の 状態 は、 シ ュ ムペ ータ ー の独 占と 経 済 進 歩 と の 関係 か ら は 異 っ た も のに な っ て い る。 す. なわち革新による生産能力の増大を独占の行動に求め、 それが経済成長と結びつく ためには、 当然 有効 需要 の増大 がな けれ ば な らない。 し か し こ の 点に つ いて シ ュ ム ペ ータ ー は、 信用 創 造 の み に 求 めて い る。 信 用 創 造 は、 無 限に 続 行 せ ら れ る も ので は ない。 し か も シ ュ ム ペ ータ ーに あ っ ては、 t. 期の均衡における信用創造の発生は t +×期の均衡に おいて再 び吸収せられてしまうため、 生産能 力 の一 方 的 拡大 の み が発 生 してく る こ と に な る。 こ れ は ポ ス ト・ ケイ ン ジア ン が等 しく 問 題 と した とこ ろで あ る。 シ ュ ム ペ ータ ー が政 府 の 役割 を経 済 進 歩 の マイ ナ ス 要因 と 考 え る 限り 一 層 そ のこ と が云 い 得 る。 た しか に 独 占そ の も のは、 イ ノ ベ ーシ ョ ン を 遂 行 す る 潜 在 力 を 有し ては い る。 しか し. 以上のような論述の過程から、 それが停滞のための内生的要因となる点を重視しなけ ればならない。 こ の点 に つい てシ ュ タイ ン ドル は、 は っ き り と、 独 占 な い し は 寡 占 は、 経済 成 長で は なく、 停 滞 と 結 びつ け て 考 えて いる ◎。 こ のこ と に つ い ては 頁 数 の制 約 のた めは ぷ く。. (注) 紀要の頁数の制約のため、 次の個所は 次号にまわす。 1 , シュタイン ドルの内生的停滞諭 2 , 引用文献 計81 3 . 結 び. (本 学 助教 授 ・ 旭 川 分 校) 13.
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