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体育授業におけるすぐれた実践家の卓越性に関する研究 : 斉藤喜博の遂語記録を対象として

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(1)

2014年

学位論文

体育授業におけるす ぐれた実践家の卓越性に関する研究

―斎藤喜博 の逐語記録 を対象 に して一

兵庫教育大学大学院学校教育研究科

教育内容・方法開発専攻

行動開発系教育コース

学籍番 号 氏

名 ■江

13210D

助 友 京 子

(2)

目次 第

I章

緒 言 第 1節 研究 の動機 第

2節

問題 の所在

(1)先

行研 究 について

(2)研

究の限定 第 Ⅱ章 体 育 授 業 の す ぐれ た 実 践 家 の 卓 越 性 第

1節

研究の 目的 第

2節

研究 の方法

(1)対

象 とその授 業

(2)品

詞分析 の方法

(3)文

献研 究 (質的研 究

)の

方法

(4)デ

ー タの信頼性及び妥 当性

(5)手

続 き 第

3節

品詞分析 の結果並び に考察

(1)高

学年 と上位群 の比較

(2)低

学年 。中学年 。高学年の比較

(3)特

徴的に使用 されていた品詞

(4)相

互作用の実際 第

4節

質的文献研究 の結果並び に考察

(1)小

林篤・ 阪田尚彦 の文献 よ り (文献か らみ られ る斎藤 の特徴) 第III章 総 合 考 察

(1)量

的研 究の解釈 と文献研究の解釈 の比較

(2)発

間について

(3)低

学年 。中学年・ 高学年に共通す る言語的相互作用 第 Ⅳ 章 ま とめ 第

V章

今 後 の 課 題 注釈 引用 。参考文献 謝辞 ペ ー ジ 1 1 3 3 7 8 8 8 8 9 11 12 12 14 14 23 27 30 39 40 50 50 52 54 57 60 61 62

(3)

I章

緒 言 第

1節

研 究 の 動 機

1970年

代 以降始 まった工業化社会か ら脱 工業化社会 への転換の 中

,ス

ポー ツや運動 を健康のためだけ ではな く

,生

涯 の楽 しみ として享受すべ きで ある とす る生涯 スポー ツの理念が強調 された こ とによつて, 「楽 しい体育」が強調 された。このことよ り,「楽 しい体育」のス ローガ ンのも とで

,学

習成果ではな く, 学習過程で楽 しさを経験す るこ とが重視 された。す なわち

,そ

れ までの運動技能 の習得 を重視 した体育 授 業ではな く

,学

習過 程 にお ける思考・ 判断や楽 しさ経験 を大切 に して

,課

題解決力 (学び方

)の

成果 や情意的な成果 (関心・ 意欲 。態度

)を

よ り重視す る体育授業を しよ うとい うものである。 この考 えに基づいて行 われたのが 「めあて学習」である。「めあて学習」 とは

,一

人ひ と りの個性や運 動能力 の違 う子 どもが

,自

己の能力 に適 した課題 で

,体

育の時間に進 んで楽 しく学習す るこ とがで きる よ うに工夫 された学習形態である。 しか しなが ら

,こ

の学習形態では

,学

習過程 にあま りに も多 くの重 点が置 かれ てい るた め

,子

どもに運動技能が身 につかない とい う問題点がみ られ るよ うになつた。具体 的 には

,大

学生 になって も逆上が りがで きなか った り

,頭

跳 ね跳び を習 つた経験 がなか った りす る場合 がみ られ る。 こ ういつた問題 は

,子

どもの体力低下の一因 とも考 え られ るだろ う。 こ うした社会的背景を受 けて

,平

20年

3月に学習指導要領が告示 された。 この学習指導要領 では, 「楽 しさ」 とい う主観 的態度 を学習の中核 に据 えるのではな く

,運

動 の基礎・ 基本 を培 い

,そ

の上で, 自主的 。自発 的な学習を展 開す るこ とに よつて,「楽 しさ」を得 るこ とを 目指 してい る。本来

,体

育授業 の楽 しさは

,わ

かった り

,関

わつた りす ることを通 して

,課

題 がで きるよ うにな るこ とに よつて経験で きるものであ り

,楽

しさや 自発性 を 目先で唱 えるだけでは

,実

現できるものではない。す なわち,「わか る

,で

きる

,か

かわ る」 ことの緊密 な関係 を

,子

どもたちの主体的な学習 の中で倉1出させ て

,体

育授 業 に対す る愛好的態度

,運

動技能

,学

習集 団機能 のす べての学習成果 を高 めてい くことが

,真

の 「体育の 楽 しさ」 につ なが るもの と考 え られ る。 また

,こ

の学習指導要領 の改訂 のポイ ン トの

1つ

として言語活動 の充実がある。 この こ とは

,各

教科 等 を貫 く重要 な改善の視 点 として示 され た。す なわち

,言

語 は

,知

的活動や コミュニケー シ ョン

,感

性・ 情緒 の基礎 となるもので ある。それ故

,す

べての教科 において言語 に対す る関心や理解 を深 め

,言

語 に 関す る能力 の育成 を図 る上で重要な言語環境 を整 え

,子

どもの言語活動 を充実す ることを指摘 している のである。 一方

,小

学校学習指導要領解説体育編 (2008)において

,言

語活動 の充実 に関 しては,「集 団活動や身 体表現 な ど通 じて

,コ

ミュニケー シ ョン能力 を育成す るこ とや

,筋

道 を立てて練習や作戦 を考 え

,改

善 の方法な どを互いに話 し合 う活動 な どを通 じて論理 的思考力 をは ぐくむ こ とに資す ることを踏 まえ

,そ

,ぞ

れぞれ の運動 が有す る特`性や魅力 に応 じて

,基

礎 的な身体能力や意識 を身 に付 ける。」 と記述 され てい る。 この よ うに

,体

育科 にお ける言語活動 では

,コ

ミュニケー シ ョン能力や論理 的思考力 を育成す るこ とが求 め られ てい る。

(4)

ところで

,体

育の授 業 には

,課

題 を把握す るた めの話 し合 い場面 (以下

,課

題把握場面 と称す

)と

課 題 を解決す るための練習場面 (以下

,課

題解決場面 と称す

)が

ある。双方 の場面は

,他

の教科 において も

,同

様 に認 め られ る。 しか し

,体

育授 業 においては

,他

の知識教科 と大 き く異なる点が ある。す なわ ち

,体

育授業 においては

,子

どもが運動課題 を言語 的に理解 できて も

,実

際にその運動 ができ る とは限 らない。子 どもたちの運動 に対す る感 覚的認識 を理性 的認識 に結びつ けてい く必要がある。そのた めに は,体育授 業 にお ける教 師 と子 どもな らび に子 ども同士 の言語活動 を充実 させ る必要が ある。と りわけ, 学習成果 (態度得点 と技能

)を

高 めるた めには

,教

師 の言語相互作用 の適切性 で ある 「いつ

,だ

れ に, 何 を

,ど

の よ うに」発言すれば よいかが重要 になる。 以上 の こ とか ら

,小

学校体育授業 において子 どもの 「わか る」 と 「でき る」 を統一 し

,学

習成果 (態 度得点 と技能

)を

高 める教 師の言語活動 について検討 しよ うとす る ところに本研 究 の動機 が ある。

(5)

2節

問 題 の 所 在

(1)先

行研 究 につ い て

1970年

代 に入 る と

,ア

メ リカの教師の有効性研究の第

3期

に位置づ け られている「プ ロセスープ ロダ ク ト」研究法が登場 して くる。 この研 究法は

,教

師 の属性 あるいは教 師教 育の経験 とい つた前提変数, 生徒 の属性 あるいは生徒の特性 といった文脈変数

,過

程変数

,そ

して成果変数 の関係 を検討す るもの, す なわち変数 間の関係 を検討 してい る。「プ ロセスープ ロダク ト」研 究法では

,過

程変数 として教 師行動 及び生徒行動 の分析 が 中心 に位置づけ られてい る。 こ うした 中

,ア

メ リカ を中心 に体育授 業分析 のた め の多様 な組織的観察法が開発 された。とくに,授業過程 にお ける教師行動研 究 に大 きな関心 がむ け られ, 教 師の 「プ ロセス」 を測定す る道具 として

,多

くの教 師行動観察法が開発 された。 これ らの教師行動観察法 を用いた研究結果か ら,体育授 業 中の主な教師行動 として「マネー ジメン ト」, 「学習指導」,「巡視」,「本目互作用」の

4つ

に区分 され

,な

かで も

,教

師の 「相互作用」が授 業の雰囲気 と授業成果 に深 く関係す る重要な教授行動であることが明 らかになった (シーデン トップ,1988)。 一方

,わ

が国においては

,高

橋 らが一単位授 業の学習成果 としての形成的評価 法 (高橋 ら

,1994)を

開発 し

,教

師行動 との関係 を検討 してい る (中井 ら

,1991:岡

沢 ら

,1990:高

橋 ら,1989a,1989c)。 その結果

,肯

定的な相 互作用 は高い授 業評価 を生み 出 し

,否

定的な相互作用 は逆の関係 を生み 出す 関係 を見出 している。 さらに

,高

橋 ら

(1991)は ,

自らが開発 した 「教 師行動観察法」 と単一 の授 業評価 と の関係 か ら,「マネー ジメン ト行動」並び に「直接指導」を少な くし

,相

互作用の 「発 問 (分析 的)」,「受 理 (傾聴)」 ,「肯定的 フィー ドバ ック (技能 的)」,「励 ま し」を多 く,「矯正的 フィー ドバ ック (行動的)」 を少 な く用 い るこ とに よって授業評価 を高 めるこ とを報告 してい る。 また

,形

成 的評価 票 を用 いて学習 成果 と教師行動 の関係 を調べた研究で は

,熟

練教 師 と一般教 師の間には

,特

に相互作用 に有意差が認 め られ

,熟

練教 師の方が個 々の子 どもによ り積極 的 に働 きかける傾 向がみ られ た (高橋 ,1997)。 また

,梅

野 ら

(1997)は

,態

度得点 と「教 師行動観 察法」 との関係 を

,重

回帰分析 法 を用いて検討 し た。 その結果

,態

度得点 には 「相互作用」行動 と「巡視 」行動 の

2つ

の寄与率がきわめて高値であるこ とを認 めてい る。す なわち,「肯定的・矯正的 フィー ドバ ック」 と「発 問」活動 の恒常的な働 きかけが重 要で あ り

,そ

れ を的確 に発揮 され るた めには質 的な教 師の 「巡視 」行動が重要 な要因であ るこ とが指摘 され た。また

,上

位 群 並び に下位 群 ともに 「評価 」得点 に対 して 四大教 師行動 が優位 に関係す ることが 認 め られ た。 と りわけ

,態

度得 点 と相互作用 の関係 を重 回帰分析 した結果 か ら,「評価 」 には

,矯

正的フ ィー ドバ ックか ら肯定的 フィー ドバ ックをか けることが,「よろこび」には

,肯

定的 フィー ドバ ックか ら 矯正的 フィー ドバ ックをか けるこ とがそれぞれ効 いてい るこ とが認 め られ た。 これ らの ことか ら

,態

度得点 を高 め る教授活動 は

,積

極 的な 「巡視 」 を基盤 に

,教

師が言語 的相 互作 用 を適切 に営む こ との重要性 が示唆 され る。 しか も

,こ

うした教授活動 は態度得点 のみな らず

,当

然他 の学習成果の向上にも効いて くるもの と予想 され る。 この よ うに

,体

育分野 においては

,国

内外 を問わず,「プ ロセス」を測定す る道具が開発 され

,授

業の

(6)

分析 的研 究が積み重ね られ てきた。 しか しなが ら

,高

(1992)は

,こ

れ までの組織 的な観 察方法では体育授 業の基礎 的条件 (マネ ジメ ン トや授業の規律

,授

業の雰囲気

,学

習従事量や運動 量な ど

)の

適否 は判 断で きて も

,内

容 的条件 (授 業 の 目標 。内容 の押 さえ方

,教

材・教 具の工夫

,学

習過程 の組織化 な ど

)の

適否 は判断す るこ とはで き ない と指摘 してい る。 この こ とは

,こ

れ までの教 師行動研究 において

,教

師の相互作用行 動 としての量 的な部分 は明 らかにな ったが

,学

習成果 を高 める教 師の言語 的相互作用 の 内実 にまで迫 つていない こ と を示 してい る。す なわち

,学

習成果 を高 める言語的相 互作用 を適切 に営む た めの授業分析 の真価 が必要 であ り

,新

たな分析方法の開発 が今 日的課題 として導 出 された。 そ こで

,1990年

代後半

,深

見 ら

(1997)は

,相

互作用 の中でもフィー ドバ ックに着 日して研究 を進 め た。すなわち

,彼

らは

,単

元 レベルで研 究 を進 め

,単

元経過 にお ける教 師 のフィー ドバ ック行動 の推移 と

,そ

れ が学習成果 に与 える影響 を事例的 に明 らかに した。 その結果

,次

3点

を挙げてい る。 ①成功裡 の単元では

,形

成的授 業評価 が授業時間の推移 とともに向上す る。 ②直接 的指導場面やマネー ジメン ト場面 の時間量は漸減

,逆

に運動学習場面が漸増す る。 ③教 師の相互作用 は増加す る。 しか しなが ら

,授

業評価 の高 まっていなか った単元 ではそ の よ うな推移パ ター ンは見 られ なか った こ とを指摘 してい る。 これ らの研究は

,こ

れ までの教 師行動研 究の問題 で あ る集 団か らみた平均的

,一

般 的な傾 向を示す とい う限界 を超 えよ うとしてい るもの と考 え られ る。 また

,深

見 ら (2000)は,「教 師の積極 的なフィー ドバ ック行動や 望ま しい表現の しかたは

,子

どもに とつて よ り『 役 に立つ助言』 として受 け止 め られ

,そ

の こ とが よ り大きな学習成果 (形成 的授業評価) を生み 出す 」 とした研 究仮説 を証 明 した。す なわち

,教

師が子 どもの学習 に有効 な フィー ドバ ックを与 えるた めの指標 として

,次

4点

を挙げてい る。 ①技能 的学習 に対 して 「肯定的 。矯正的 フィー ドバ ック」 を積極 的 に与 えるこ と。 ②子 どもに確 実 に伝達 され るよ うな位置

,タ

イ ミング

,言

葉 でフィー ドバ ックを与 えること。 ③肯定的 フィー ドバ ックを与 える際 には

,感

情 をこめて (共感的 に

)か

かわ ること。 ④具体 的 フィー ドバ ックを与 える際 には

,子

どもの印象 に残 るよ う吟味 された言葉 を適用す ること。 さらに

,深

見 。高橋

(2003)は

,子

どもか ら有益 に受 け止 め られた教師の矯正的 フィー ドバ ックに焦 点づ けて

,器

械運動 の授業 を対象 に子 どもの学習成果 (技能

)に

つ なが るフィー ドバ ックのあ り方 を検 討 した。 その結果

,矯

正的 フィー ドバ ックのすべての分析視点 (課題 の挑戦性

,つ

まず きへの焦点化, 言語 内容 の具体性

,言

語 内容 の適切 さ

,子

どもの技能成果

)が

子 どもの役 に立 った とい う「受 け止 め方」 に重要な影響 を及ぼす ことを認 めている。 これ らの研 究は

,教

師の相互作用行動 が直接

,子

ども・生徒の 授業評価 と関係 が ある とい う考 え方でな く

,両

者 の間に子 ども。生徒 の相互作用行動 の 「受 け止め方」 と い う媒介変数があると想定す る研究である。 しか しなが ら

,こ

れ らの研 究 は

,教

師の フィー ドバ ック行動 を子 どもの授業評価 との関係性 か ら補完

(7)

す るに とどまってい るもの と考 え られ る。

一方で,上原 。梅野 は,文法上か らも,ま た語彙 の意味の上か らも言葉 の最小単位 である品詞 を基軸に,

体育科 の先行研究で認 め られた教師の作用言語 (Interactional Words,以 下

IW品

詞 と称す

)を

分析単 位 とす る品詞分析 を開発 し

,検

討 を行 つた。 まず

,学

習成果 の うち運動 の感 じ方・ 考 え方 。行 い方 とい う学力 の中核 と深 く関係す る学習成果 (態 度得点

)を

高 める教師の言語的相互作用 について検討 した (上原 。梅 野,2000)。 具体的 には

,小

学校高 学年 (5・

6年

)を

対象 に同一の課題解決 的プ ログラムに よる走 り幅跳び の授業 を行 って もらい

,学

習成 果 を顕著 に高 めた学級 (上位 群

)と

そ うでない学級 (下位群

)の

逐語記録 を品詞 によ り分析 した。その 結果

,一

単位授業 にお ける

IW語

群 の使用頻度 の比較 か ら

,名

詞 (動作

),名

詞 (時間

),副

詞 (叙述), 副詞 (程度

),形

容詞 (対比

)の 5種

類 の品詞 において上位 群 の方 が下位 群 に比べ て

,有

意 に多い結果が 認 め られ た。さらに

,課

題把握場面 と課題解決場面にお ける

IW語

群 の使用頻度 を検討 した結果

,双

方の 場面では

,副

詞 (叙述

),副

詞 (程度

),形

容詞 (対比

)の

3つ

の品詞 において

,課

題把握場面では助詞 (終助詞

),形

容詞 (肯定的

)の

2つ

の品詞 において

,課

題解決場面では代名詞 (人称

),名

詞 (動作), 名詞 (時間

)の 3つ

の品詞 において,それ ぞれ上位群 の方が下位 群 に比べて有意 に使用頻度 が多か った。 これ らの品詞 は

,子

どもの多様 な運動 の感 じを発生 させ るとともに

,適

切 な言語 で あるこ とが子 どもの 心情調査か ら確認できた。 こ うした品詞 を伴 う指導方法を逐語記録か ら抽 出 した結果

,得

られ た指導方 法 は 「子 どもの課題 を理解す るた めの言語 的相互作用」 と 「運動教材 の持 つ運動特`性に出会わせ る言語 的相互作用」 とに大別 され た。 次 に

,上

原 。梅 野

(2003a)は

,小

学校 高学年 (5・

6年

)の

走 り幅跳び (閉鎖的ス キル教材

)と

サ ッ カー (開放 的スキル教材

)の

授業 を対象 に学習成果 (技能

)を

高める教師の言語的相互作用 を検討 した。 す なわち

,小

学校 高学年 (5・

6年

)の

態度得点の高い学級 を対象 に

,同

一 の課題解決的プ ログラムによ る走 り幅跳び の授業 を行 つて も らい

,学

習成果 (技能

)を

顕著 に高 めた学級 (上位 群

)と

そ うでない学 級 (下位 群

)の

逐語記録 を品詞 によ り分析 し

,技

能 を高 める教師の言語 的相 互作用 を検討 した。 その結 果,一単位授 業にお ける

IW語

群 の比較 において,技能 が高まった結果 として発せ られ る形容詞(肯定的) においてのみ

,上

位 群 の方 が下位 群 に比べて有意 に使用頻度が高か つた。課題把握場面 と課題解決場面 にお ける

IW品

詞 の使用頻度 を比較 した結果

,双

方 の場面では形容詞 (肯定的

)に

おいて

,課

題解決場面 で は走 り幅跳びの技能特`性に関わる品詞 (代名詞 :人 称

,名

詞 :身 体部位・ 動作・ 時間

)に

おいて

,そ

れ ぞれ 上位群 の方が下位群 と比べて有意 に使用頻度が高かつたさ一方

,課

題把握 場面では

,授

業 の雰囲 気 を高 める感 動詞 (肯定的

)に

おいて

,下

位 群 の方 が上位 群 に比べて有意 に使用頻度 の高 い結果 となっ た。 また

,サ

ッカー を対象 とした研 究 (上原 。梅 野

,2003b)で

,一

単位 授業 にお ける

IW語

群 の使用頻 度 を比較 した結果

,副

詞 (程度

)と

名詞 (空間

)に

おいて

,上

位 群 の方 が下位 群 に比べて有意 に使用頻 度 が高い結果 となった。 まず

,課

題把握場面 と課題解決場面おける

IW品

詞 の使用頻度 を比較 した結果,

(8)

双方の場面で有意差の認 められた結果はなかった。次に,各

IW品

詞の使用頻度の比較では課題把握場面 では

,副

詞 (程度

)と

形容詞 (対比

)に

おいて上位群の方が下位群 と比べて有意に使用頻度が多 く

,課

題解決場面では名詞 (空間

)に

おいて上位群の方が下位群 と比べて有意に使用頻度が多かった。 これ らのことか ら

,運

動教材 スキル構造 (閉鎖的スキル と開放的スキル

)が

異なれば

,技

能を高める 品詞 も異なることが認められた。 最後に

,小

学校高学年 (5・

6年

)の

走 り幅跳びの授業を対象に

,学

習集団機能を中心 として態度得点 と技能を高めた学級 とそ うでない学級における教師の発言を品詞 により

,分

析・検討 した (上原・梅野, 2007)。 その結果

,一

単位授業における

IW品

詞の比較か ら上位群は

,下

位群に比べて

,名

詞 (固有

)と

代名詞 (人称

)の

使用頻度が有意に多い結果であつた。課題把握場面 と課題解決場面における

IW品

詞の 使用頻度を比較 した結果

,双

方の場面で有意差の認 められた品詞はなかった。課題把握場面では

,名

詞 (動作

),副

詞 (叙述

),副

詞 (程度

),形

容詞 (対比

)の

4つ

の品詞 を併用することで

,上

位群の教師は 子 どもの課題の必然`性と意味理解を促進 させ るとともに

,形

容詞 (肯定的

),助

詞 (終助詞

)を

多用する ことで授業の雰囲気を明るくす るところに特徴がみ られた。また

,課

題解決場面において名詞 (時間), 名詞 (動作

),副

詞 (叙述

),副

詞 (程度

)の

4種

類の品詞 を併用す ることで

,上

位群の教師は子 ども一 人ひ とりの課題の解決に応 じる指導方法 (走 り幅跳びの技能特`性に触れ させ る指導

)を

展開させるとこ ろに特徴がみ られた。 これ らのことから

,態

度得点

,技

,学

習集団機能の

3つ

の学習成果を高めるに は

,子

ども一人ひ とりにより多 くかかわ り

,課

題把握場面では子 どもの考 えを認 めた上で課題 を明確に 提示 し

,問

いかけなが ら課題の形成情報を流す ことが重要であ り

,課

題解決場面ではよ り具体的な矯正 的フィー ドバ ックをかけることで子 どもの課題解決に応ず ることか重要であることが考えられた。 これ ら一連の研究成果 より

,上

原 。梅野は学習成果 (態度得′点

,技

,学

習集団機能

)を

高める教師 による特定の

8つ

の品詞の使い方 (計

12種

類の品詞

)が

存在 していることを認めている。 ①助詞 (終助詞

)は ,授

業の雰囲気を明るくする。 ②名詞 (固有

),代

名詞 (人称

)は ,子

ども一人ひ とりの課題解決を促す。 ③副詞 (叙述

)は

発問す る際に用い

,子

どもの多様な運動の感 じを引き出す。 ④形容詞 (対比

)は ,子

どもの課題の形成を促す。 ⑤副詞 (程度

)は ,ジ

ェスチャーや フィンガーアクションなどの身体的所作 とともに用い

,子

どもの 課題解決に応 じる動きのイメージを明確 にす る。 ⑥形容詞 (肯定的

),感

動詞 (肯定的

)は ,子

どもの工夫 した動 きを認める。 ⑦名詞 (身体部位

)は ,動

きのイメージを具体化する。 ③名詞 (動作

),名

詞 (時間

),名

詞 (空間

)は

運動教材が有する技能特性を明確に伝達する。 しか しなが ら

,上

原 。梅野の研究は

,学

習成果を高める品詞の用い方を明 らかにしたが

,そ

れ らを「い つ

,誰

,何

,ど

のように」発言すればよいのか とい う適切性 を究明す るまでには至っていない。そ れ故

,個

々の子 どもの学習状況を正 しく認識 し

,子

どもの学習成果につながる意味のある教師の言語的

(9)

相互作用 を明 らか にす る必要が ある。

(2)研

究 の限 定 本研 究では

,教

師の言語的相互作用 の観 点か ら

,体

育授業 にお けるす ぐれ た実践家 の卓越性 (実践的 な見識

)を

事例的に検討す ることに した。 体育授 業 にお けるこれ までの量的な研 究方法では

,基

礎 的条件 (マネ ジメン トや授業 の規律

,授

業 の 雰囲気

,学

習従事量や運動量な ど

)の

適否 は判 断できるが

,内

容的条件 (授業の 目標・ 内容 の押 さえ方, 教材・ 教具 の工夫

,学

習過程 の組織化 な ど

)の

適否 を判断で きない とい う課題 が ある。 これ らは

,量

的 研 究の限界である。 この限界を超 える研究法 として

,近

年注 目されているのが質的研究である。すなわち, 質的研究を用いた体育授業研究では,「教師の実践的な見識 の形成 と教室における関係 の編み直 し」(佐藤,1996) が迫 られ る。 とりわけ

,す

ぐれた体育授業の実践を事例的に検討す ることが注 目されている。 しか し

,一

方 で

,質

的 (事例的

)研

究 に も

,研

究者 の主観 にな りやす い とい う欠′点がある。 そ こで

,本

研 究では

,す

ぐれた体育実践家である斎藤喜博注1)の 逐語記録 を対象 に

,品

詞分析 を用いて 量的 に検討す るとともに

,小

林篤 と阪 田尚彦 の文献研 究 (質的研 究

)の

解釈 と比較 。検討 す るこ とによ って

,斎

藤 の卓越性 を追求す る。 ここで言 う卓越 とは

,辞

書的 には 「群 をぬいてす ぐれ てい る」(広辞苑

)と

い う意味である。卓越 は人 を興奮 させ

,喜

ばせ

,そ

して挑戦 させ る。そ して

,す

ば らしいパ フォーマ ンスは

,私

た ちにそれ以上の 関心 を持たせ る。なぜ な らば,私たちの可育旨陛の大 き さを明 らかにす るか らである(片岡,1985)。 では, 教 師 において卓越 した人 とは

,授

業 の名 人・ 達人 といわれ る人で あろ う。体育授 業の名 人・ 達人 とは, 子 どもた ちの学習意欲 を喚起 し

,学

習成果 を確 実 に生み 出す こ とのできる教 師で ある と考 える。 この よ うな名 人・ 達人は教育 に対す る情熱 と努力

,さ

らには職場 の恵 まれた教育・研究環境 に支 え られて生み 出 され る。つ ま り

,体

育授 業 に関わつた知識や技術 を身 につ け

,そ

れ らを子 どものニー ズ に対応 して発 揮す る実践力 を習得すれ ば

,誰

もが名 人・ 達人 になれ る とい うことで ある (高橋 ,2005)。 それ故

,教

師 は 自らの教授技術 を高 め続 け

,卓

越性 を追求 してい く必要が ある。 ここに卓越`性を研 究す る必要性 が あ る。 これ までの斎藤喜博 についての研究 は

,質

的研 究が主で ある。斎藤 の卓越性 について の著書 は何冊 も 出版 されているが

,量

的研 究か ら斎藤 の卓越性 を追求 した ものはみ られ ない。 そ こで

,品

詞分析 と先行 研 究 (文献研究

)を

組 み合 わせ て研 究す るこ とで

,斎

藤 の卓越性 を さらに詳 しく知 るこ とがで きる と考 えた。 また

,斎

藤喜博 は

,戦

後 の教育 に大 きな影響 を与 えた人物 で あ り

,す

ぐれ た実践者 であつた。 こ の よ うな人物が行 った授業の逐語記録 をもとに研 究す ることは

,教

師の適切 な言語 的相互作用 を究 明 し てい く

1つ

の手立てになるもの と考 える。 なお

,今

,品

詞分析 を行 った斎藤 の授業は

,全

て器械運動領域 を対象 とした介入授業であった。そ れ故

,子

ども

,時

,教

材 な ど指導 を行 う上で様 々な制約 があつた もの と考 え られ る。

(10)

第 Ⅱ章

体育授業のす ぐれた実践家の卓越性

1節

研 究 の 目的 一般 に

,体

育授業の主たる活動は

,身

体運動お よび身体活動であるが,そこで営まれる実際の授業は, 教師の発言が大きく影響を及ぼす と言われている。 これまで上原 。梅野 らは文法上か らも語彙の意味の上か らも言葉の最小単位である品詞 を基軸に

,体

育科の先行研究で認められた教師の作用言語を分析単位 とす る品詞分析を開発 し,検討 した(上原 。梅野, 2000,2003a,2003b,2007)。 一連の研究成果 より

,学

習成果 (態度得点

,技

,学

習集団機能

)を

高める 教師による特定の

8つ

の品詞の用い方 (計

12種

類の品詞

)が

存在 していることを認めている。 しか しなが ら

,上

記相互作用研究では

,有

効なフィー ドバ ックお よび学習成果を高める品詞の月]い方 を明 らかにしているが

,そ

れ らを,「いつ

,誰

,何

,ど

のように」発言すればよいのか とい う適切性 を究明するには至っていない。それ故

,子

ども一人ひ とりの学習状況を正 しく認識 し

,子

どもの学習成 果につながる意味のある教師の言語的相互作用を明らかにす る必要がある。 そこで本研究では

,す

ぐれた体育授業実践家である斎藤喜博の卓越性を教師の発言 (逐語記録

)を

対 象に

,品

詞分析の視′点か ら検討す るとともに

,質

的研究の解釈 と比較・検討す る。 第

2節

研 究 方 法

(1)対

象 とそ の授 業 本研 究の対象 は

,斎

藤 喜博 が行 つた介入授 業の逐語記録 と斎藤 に関す る著書である。 品詞分析 の対象は

,逐

語記録 は,「わた しの授業第

2集

」(斎藤喜博著

)に

記載 されていた逐語記録で ある。 なお

,品

詞分析 を した逐語記録 は

,表

1に

示 した とお りで ある。 文献研 究の対象 は

,小

林篤 は,「斎藤 喜博 一そ の体育指導 を中心に一」 (2000),「 斎藤 喜博 ―その全仕事 ―」 (2013),「 斎藤 喜博 の体育授業の論理」

(1978),兵

庫教育大学研究紀要第

14巻 (1994)で

ある。一 方

,阪

田尚彦 は,「体育 の授 業 と教授技術 」

(1990),体

育科教育辞典 (斎藤 喜博 の 「腕 立て開脚 とび」) (1977),「 戦後体育実践論第

2巻

(1997)で

ある。 これ らの文献か ら斎藤 の卓越性 に関す る特徴的な 部分 を抜粋 し

,質

的に検討 した。

(11)

1.品

詞 分析 した斎藤 の授業 低学年

1年

:前 まわ り (10分)

1年

:う さぎ とび (11分)

2年

:開 脚腕 立て とび上が りお り (26分)

2年

:前 まわ り (予想

3分

) 中斡

3年

:閉 脚腕 立て とび上が りお り 。腕 立て閉脚 とび (24分)

3年

:腕 立て開脚 とび (予想

8分

)

4年

:頭 支持 回転か らの前まわ り (21分)

4年

:と び こみ前まわ り (5分) 高学年

5年

:台 上前まわ り (25分)

6年

:台 上前まわ り (予想

10分

)

6年

:腕 立て開脚 とび (23分)

6年

:頭 支持台上前転 (9分)

(2)品

詞分析 (量的研究

)の

方法 上原 。梅野が開発 した品詞分析 (2000)は

,名

,動

詞 といつた品詞の使用頻度の違いを比較 。検討 するものであるが

,彼

らがこれまでの教師の 「相互作用」研究の結果に基づいて

,体

育授業における教 師の作用言語 を文法上 か らもまた語彙 の意 味 の上 か らも言葉 の最小 単位 で あ る品詞

(IW品

詞 : Interactional Words)を 基軸に検討 している。 1つ目は

,相

互作用の雰囲気に関わるカテ ゴリーである。先行研究 より

,授

業全体では

,授

業の雰囲気 が子 どもの課題解決に影響を及ぼす ことか ら

,授

業の雰囲気を和 らげる教師の発言 として,`…・(だ)ね', `・・。(だ)よ

'と

い う助詞 (終助詞

)を

設定 している。

2つ

日は

,相

互作用の対象に関わるカテ ゴリーである。先行研究 より授業の雰囲気は

,教

師の発言が個 人に向けられているか否か と深 く関係す ることか ら

,`○

○君

',`○

○ さん'とい う名詞 (固有

)と

`あ なた',`きみ

'と

い う代名詞 (人称

)を

設定 している。 3つ日は

,課

題の確認お よび深化 に関わるカテゴリーである。先行研究より

,課

題の把握場面では

,子

どもの授業評価の高い授業では,発 問活動によって課題の意味理解 を促進 させることか ら,`な ぜ…?', `ど(し)・・・?', `も し…した ら

?'と

い う副詞 (疑問 。強調・仮定

)を

分析 している。また

,先

研究より

,課

題解決場面では

,子

どもの授業評価の高い授業では

,子

どもの動きを課題 にあった動きヘ と高める矯正的フィー ドバ ックは

,主

として技能的パ フォーマンスの誤 りを正すために与 えられる言語 的・非言語的な行動 とされている。 この矯正的フィー ドバ ックを言語的活動に限つて考えて

,子

どもの 課題 を確認 させる `長い一短い', `大 きい―小 さい

'と

い う形容詞 (対

)や

,教

師による具体的な動 きの説明

,示

範やジェスチャーな どによく用い られ

,課

題 を深化 させる。`こ (し

)',`そ

(し)' とい う副詞 (程度

)を

設定 している。

(12)

4つ

目は

,子

どもの動 きの評価 に関わるカテ ゴ リーである。先行研究 よ り

,肯

定的な相互作用 が多い と 子 どもの授業評価 も高い こ とか ら

,`す

ば らしい

',`い

い'とい う形容詞 (肯定

)と

`よ― し',`よ っ し

'と

い う感動詞 (肯定

)を

設定 してい る。

5種

類 日は

,運

動技術 の指導に関わるカテ ゴ リーで ある。体育科 において

,課

題 内容及び運動 の仕方 を 説明す るために不可欠であることか ら

,`手

',`足 'と

い う名詞 (身体部位

),`ス

ター ト

',`踏

切'とい う名詞 (動作

),`今

',`さ つき

'と

い う名詞 (時間

),`前

',`横 'と

い う名詞 (空間

)を

設定 した。 表

2は

,先行研究 に基づいて設定 した

IW品

詞 をカテ ゴ リー別 に分 けた ものに具体例 をカロえて示 した も ので ある。 品詞分析 については

,逐

語記録 に基づいて一単位授業にお ける品詞 の使用頻度 をカ ウン トした。 この とき

,対

象学年

,学

習 内容 に よって授 業時間にバ ラツキが認 め られ たた め

,一

般 品詞 に関 しては

,い

ず れ の授 業 も45分授業 としての使用頻度 にな るよ うに補正 した。一方

,IW品

詞 に関 しては

,斎

藤 の逐語記 録 は全 て課題解決場面であつたた め

,一

単位授業 の課題解決場面

30分

48秒

での使用頻度 になるよ うに 補正 した。す なわち

,課

題 の把握場面か ら課題 の解決場面 に至 るまでの時間が51分の場合

,45分

を分母 とす る割合 (1.13)を その時の品詞 の使用頻度数 に除 して補正す る。30分

48秒

,先

行研 究 (上原・ 表

2.先

行研 究 に基づいて設定 した

IW品

詞 とその具体例

品詞の特性

:

IW品

詞名

具体例

相互作用の対象

相互作用の雰囲気

課題

(め

あて

)の

確認及び深化

矯正的

(技

能的

)

フィードバックの内容

名詞 (人名) 代名詞 (人称) 助詞 (文末終助詞) 副詞 (叙述) 形容詞 (対比) 名詞 (身体部位) 名詞 (動作)

g詞

(0寺) 名詞 (空間) 副詞 (程度) 形容詞 (肯定的) 感動詞 (肯定的)

「○○君」「○○さん」「○○ちゃん」「○○」など

「あなた」「あんた」「きみ」など

「・…

(だ

)ね 」

(だ

)よ 」

・¨

(た

)わ 」

・…

(た

)な 」

「・

・。

(た

)の 」

「・…

(た

)か

な」の

6つ

「なぜ」「なんで」「どう

(し

)」

「全然」「もし」など

「速い一遅い」「長い―短い」「大きい一小さい」など

「膝」「肩」「足」「手」「頭」「腰」「腕」「首」など

「助走」「踏み切り」「着地」など教材の運動局面のテク

ニカルターム

「今」「さっき」

「最初」「最後」「・¨

(す

る)と き」など

「前」「横」「後ろ」「上」「下」「ここ」など

「しっかり」「こう

(し

)」

「フワフワ」など

「いい」「うまい」「きれい」「よい」など

「よ一し」「よっしゃ」「お一し」「ええ」など

子どもの動きの評価

(13)

梅野,2007)で得 られ た時間である。 また

,特

徴 的な品詞 が用 い られ た部分 を抜粋 し

,低

学年 。中学年 。高学年 それぞれ

2場

面ずつ抜粋 し, 実際 に斎藤 が行 つた言語的相互作用 について考察・ 検討 した。

(3)文

献研 究 (質的研 究

)の

方 法 近年

,質

的研 究は

,量

的研 究の よ うに大量 のデー タを数値化 し

,そ

こか ら一般化 を行 うことはできな い。そのため,「仮説検証型 の研 究」には適 していない。

Richards&Morse(2008)は

,質

的研 究が最善 とす る研究 目的 として

,以

下の

5種

類 を挙 げてい る。 ① ほとん ど知 られていないような

,ま

たは既知の理解では不十分な領域を理解すること。 ②複雑な状況や多重的な背景を持つデータ

,変

化 しなが ら移 ろいゆく現象の意味を理解すること。 ③ ある状況やそれを経験 しているプ ロセスの対象者か ら

,彼

らがそれにおいている意味や彼 ら自身が 経験 していることの解釈の仕方を学ぶこと。 ④あなた 自身のものの見方や既知の研究結果ではな く

,む

しろ現実を反映 した理論や理論的な枠組み を構築す ること。 ⑤現象を深 く詳細に理解す ること。 質的研究方法の一つ として

,グ

ラウンデ ッ ド。セオ リー 。アプローチ (以下

,GTA)が

注 目されてき

ている。

GTAは

,Barney Glaser&Anselm Straussが

提唱 した質的研究方法である。 これは

,デ

ー タ に基づいて理論を産出する方法であ り

,デ

ータを切片化 し

,ラ

ベルを付け

,カ

テゴリーにまとめるとい う過程を行い

,理

論に発展 させていこ うとす るものである。つま り

,デ

ー タに根 ざして分析を進め

,デ

ータに基づいて理論をつ くることを目指 した手法である。また

,GTAは

研究対象 とす る現象のプロセス の解明を可能にする研究方法でもある (文木,2008)。 本研究の分析は

,GTAを

用いて行った。 この手法には

,い

くつかの種類があるが

,先

行研究で取 り上 げた文木

(2008)の

手法を参考にした。斎藤 について書かれている小林篤 。阪田尚彦の文献を以下の手 順で分析 した。 ① ラベ リング 文献か ら抜粋 したセンテンスを

,内

容を重視 して区切 り

,ラ

ベルをつけた。 ② カテゴリー化 ラベルをつけたものの関連性を見て

,カ

テ ゴリーを作つた。 ③ サブカテ ゴリー化 もう一度

,カ

テ ゴリー

,ラ

ベルを検討 し

,カ

テゴリーの中をさらに分類 した。 ④ 関連図の作成 カテ ゴリー

,サ

ブカテゴリーの関連性を検討 し

,相

関図を作成 し

,ま

とめた。

(14)

(4)デ

ー タの妥 当性及び信 頼性 小林・ 阪 田の文献研究か ら得 られた斎藤 の 特徴 を も とに して切片化 したデー タの妥 当性 を得 るため

,著

(A),大

学の教科教育学者 1名 (B)と 現場経験 のある大学院生 1名 (C) の計

3名

に よる トライアンギュ レー シ ョンを 経 て

,カ

テ ゴ リー を作成 した。 トライ ア ンギ ュ レー シ ョンは,「デー タ (多様 なデー タを検 討す る

)に

よる トライ ア ンギュ レー シ ョン」, 「研 究者 (異な る複数 の研究者 が担 当す る, あるいは評価者 を用意す る

)に

よる トライ ア ンギュ レー シ ョン」,「理論 (一つ のデー タを 解釈 す る際 に

,複

数 の異 な る理論 を用 い る) に よる トライ アンギュ レー シ ョン」,「研 究手 法 (一つ の問題 を解 くた めに

,複

数 の手法 を 用 い る

)に

よる トライ ア ンギ ュ レー シ ョン」 の

4つ

に分類 され る (フ リック ら,2002)。 本 研 究では,「研究者 に よる トライア ンギュ レー シ ョン」を用いた。 図

1に

,そ

れぞれ の分 析者 の役害Jを模 式的に示 した ものである。

(5)手

続 き ① まず,著 書か ら逐語記録を抜き出す。それをテキス トデータ化 し文章を品詞 に分割す る。そ して, 一般品詞 と

IW品

詞の使用頻度をカ ウン トし

,低

学年

,中

学年

,高

学年 と

3つ

に分ける。 このと き

,対

象学年

,学

習内容によって授業時間にバ ラツキが認め られ るため

,一

般品詞 に関 しては, いずれの授業 も

45分

授業 としての使用頻度になるように補正す る。一方

,IW品

詞に関 しては, 斎藤の逐語記録は全て課題解決場面であるため

,一

単位授業の課題解決場面30分

48秒

での使用 頻度になるように補正す る。次に

,斎

藤 の高学年 と先行研究 (上原 。梅野

,2007)の

上位群の品 詞分析の比較・検討 を行い

,そ

の後

,斎

藤の低学年 。中学年・高学年の品詞分析の比較・検討を す る。 ② 次に

,斎

藤の高学年 と先行研究 (上原 。梅野

,2007)の

上位群の品詞分析の比較・検討 を行い, その後

,斎

藤の低学年。 中学年 。高学年の品詞分析を比較・検討す る。 小林 。阪田の文献研究 データの切片化 (分析担当者:A) 下位の概念カテゴリーの解釈・命名 (分析担当者:A。 3) 上位の概念カテゴ:プーの解釈 ◆命名 (分析担当者:A・ BoC) 図

1.GTA法

に よる分析 フ ロー チ ャー ト

(15)

③ 続いて

,品

詞分析で得 られた斎藤が特徴的に使用 していた

IW品

詞が多 く用い られている場面を 逐語記録か ら抜粋 し

,斎

藤の言葉がけの特徴について品詞分析 とともに検討す る。そ して

,斎

藤 の言葉がけの特徴を導き出す。 ④ さらに

,斎

藤 について書かれた小林・ 阪田の文献か ら

,斎

藤の指導の特徴について書かれている 部分を抜粋 し

,似

ている部分をま とめ

,質

的に斎藤の卓越性 について追及す る。 ⑤ 最後に

,品

詞分析で認められた斎藤の特徴 と文献研究で認められた斎藤の特徴を比較・検討 しな が ら

,総

合考察をする。

(16)

3節

品 詞 分 析 の 結 果 及 び 考 察

(1)高

学年 と上位 群 の比 較 斎藤 の高学年 を対象 とした授 業 にお ける言葉 がけ と先行研 究 において子 どもの学習成果 (態度

)を

高 めた上位群の教師の言葉 がけを比較 した。 図

2は

,1単

位授 業 (45分間

)あ

た りの一般 品詞 の総数 を斎藤 (高学年

)と

上位群 (先行研 究

)で

比 較 した ものである。 その結果

,斎

藤 (高学年

)と

上位群 (先行研究

)は

ともに約

3000語

であ り

,大

きな差 は認 め られ なか った。先行研究 よ り,学習成果 (態度得点)を高 めるす ぐれた教師は

,1単

位授 業で

3000語

以上発言 し, 学習成果 を高 めなかった下位群 の 1.7倍 の発言量であるこ とが報告 されてい る。す なわち

,斎

藤 は

,先

行 研 究 の上位 群 と同程度 の発言量である ことか ら

,子

ども一人ひ とりに対 しての言葉 がけが多 く

,体

育授 業 に対す る愛好的態度 も高 める教 師であった もの と考 え られ る。 図

3は

,各

一般品詞 の使用頻度 を斎藤 (高学年

)と

上位群 (先行研 究

)で

比較 した ものである,, 1授業(45分 間)あた りの各一般 品詞の使用頻度 を比較 した結果,助詞 と助 動詞 を除 く

8種

類の1111i可 に 大 差 は認 め られ なかった。 この こ とよ り

,斎

藤 (高学年

)と

上位群 (先行研 究

)は

, ともに正 しい 日本FII の文法に則 り

,各

一般 品詞 を用いて 自分の考 えを子 どもに適切に伝 えていた もの と考え られ る。 残 る

,助

詞 は

,高

学年

1096語

,上

位群

870語

であ り

,斎

藤 (高学年

)の

方が上位群 (先行研究

)よ

り も多 く用い られ ていた。逆 に

,助

動詞 は

,斎

藤 (高学年

)231語

,上

位群 (先行研究

)335語

で あ り

,上

位 群 (先行研 究

)の

方 が斎藤 (高学年

)よ

りも多 く用い られ ていた。 一般 に

,助

詞 は

,品

詞 をつ なぎ合 わせ る言葉 である。そのた め

,斎

藤 の発言 は

,一

文が長 く

,そ

の内 容 も豊 かだった もの と考 え られ る。 r五、 ヽ●口/ 35〔)() 3000 2500 立つ〔)〔 ) 15〔)〔 ) 1〔)00 うl‐lt) () (先行 研 究

)の

一 般 品詞 の総 数 図

2.斎

藤 (高学年

)と

上位群 (1単位 授 業)

(17)

一方

,助

動詞は,「です」,「ます」な ど

,文

末に使用 し

,文

を丁寧にす る言葉である。そのため

,斎

藤 は,「です」「ます」をあま り使わず

,言

い切 りの形が多かったものと考えられ る。 こうした助詞 と助動 詞の使い方は

,斎

藤個人の特徴を表 していると推察 され る。 (語) 1400 1200 1000 800 600 400 20〔〕 〔) ■ 斎藤 麟上位群 ― 躙 接 続 詞

‐ 懸

感動 詞 (語) 1400 1200 1000 880 600 400 200 0 動 詞 形容 動 譲 藁1羅 ― 華 連 体詞

爾 輻

形容群 図

3.斎

藤 (高学年) 名言司

鯰瞑

義 動護 と上位群 (先行研 究

)の

各一般 品詞 の使用頻度

(1単

位 授業)

(18)

r 、   6 500 400 30〔) 200 100 図

4.斎

藤 (高学年

)と

上位群 (先行研究

)の IW品

詞の総数 (課題解決場面) 図

4は

,1単

位授 業 にお ける課題解決場面 (30分

48秒

)の

IW品

詞 の総数 を斎藤 (高学年

)と

上位 群 (先行研 究

)で

比較 した ものである。 斎藤 (高学年

)は

530語

で あ り

,上

位群 (先行研究

)は

390語

で あつた。一般 品詞 の総数 は

,斎

藤 (高学年

)と

上位群 (先行研 究

)で

同程度で あった。 しか し

,IW品

詞 の総数 は

,斎

藤 (高学年

)の

方 がやや多か った。 この ことよ り

,斎

藤 は

,課

題解決場面において

,子

ども一人ひ とりに絶 えず矯正的フ ィー ドバ ックや肯定的 フィー ドバ ックの言葉 が けを していた もの と考 えられ る。 図

5は

,1単

位授 業にお ける課題解決場面 (30分

48秒

)の

IW品

詞 の使用頻度 を斎藤 (高学年) と上位群 (先行研究

)で

比較 した ものである。 名詞 (身体部位

),代

名詞 (人称

),形

容詞 (肯定的

),形

容詞 (対比

),副

詞 (程度

)の 5種

類 の品詞 では

,斎

藤 (高学年

)の

方 が上位群 (先行研 究

)よ

り使用頻度が多い ことが認 め られた。一方

,名

詞 (時 間

,空

,動

,固

),副

詞 (叙述

),感

動詞 (肯定的

)の 6種

類 では

,上

位 群 (先行研究

)の

方が斎 藤 (高学年

)よ

り使用頻度が多い ことが認 め られた。残 る助詞 (文末終助詞

)は ,斎

藤 (高学年

)と

上 位 群 (先行研 究

)は

同程度だった。 まず

,斎

藤 (高学年

)の

方 が多 く使用 していた

5種

類 の品詞 につ いてみてみ る。 名詞 (身体部位

)は

,学

習成果 (技能

)を

高 める教師が よ く使用 している言葉 である。この こ とよ り, 斎藤 は

,教

材 である運動 に関す る知識 が豊富で

,指

導 のポイ ン トを熟知 し

,子

どもたちの技能 を高めて 斎 藤 上位群

(19)

いた もの と考 えられ る。 代名詞 (人称

)は

,「あの人」,「この人」な どの言葉 であ り

,個

人 を特定 し

,子

ども一人ひ とりに言葉 が けをす る ときによく用い られ る。 この ことよ り

,斎

藤 は

,子

ども一人ひ とりに言葉 がけを し

,子

ども の課題解決を促す ことを重視 していたもの と考 え られ る。 形容詞 (肯定的

)は

子 どもの工夫 した動 きを認 め

,授

業の雰 囲気 をよくす る言葉 で ある。 この こ とよ り

,斎

藤 は

,介

入 した授業 にお いて

,授

業の雰 囲気 を よくしよ うと工夫 していた もの と考 え られ る。系 統的学習 を行 つていた と考 えられ る斎藤 の授業 において

,こ

の形容詞 (肯定的

),つ

ま りほめ言葉 が多か ったのは意外である。形容詞 (対比

)は ,子

どもの課題 (めあて

)の

形成 を促す言葉 で あ る。 この こ と よ り

,斎

藤 は

,特

に 「柔 らかい一固い」,「いぃ 一悪い」 とい う言葉 を使用 し

,運

動 の理想 の形 を伝 えよ うとしていた もの と考 え られ る。 副詞 (程度

)は ,ジ

ェスチ ャーや フィンガー アクシ ョンな どの身体的所作 を多 くし

,子

どもの課題解 決 に通ず る動 きのイ メー ジを明確 にす る言葉 で ある。 この こ とよ り

,斎

藤 は

,具

体 的な動 きの説 明を言 葉 だ けでな く

,動

作 を伴 い視覚的 にわか りやす く伝 えるよ うに工夫 していた もの と考 え られ る。 これ ら

5種

類 の品詞 の 中で も形容詞 (肯定的

,対

)の 2種

類 は

,特

に斎藤 (高学年

)の

方 が多 く使 用 してお り

,斎

藤 の指導 の特徴 を表 してい るもの と考 え られ る。 形容詞 (肯定的

,対

)の

使用頻度 は

,一

般 的 に

,問

題解決学習 を した上位群 の使用頻度 の方が高い はずである。 なぜな ら

,問

題解決学習 は

,グ

ルー プ活動が多 く

,系

統 的学習は一斉学習で提示・説 明的 な教授活動が多いためである。 しか し

,品

詞分析 では

,系

統 的学習 を していた と考 え られ てい る斎藤 の 方 が使用頻度 は高か つた。この こ とよ り

,斎

藤 の行 う授 業は

,一

斉学習で あるが

,教

師が一方 的 に話 し, 技能が高 まる方法 を教 え込んでい るわ けではな く

,子

ども一人ひ と りに対 し適切 に声掛 けをす ることに よ り

,子

ども個人に課題 を持たせ

,考

え させ るよ う働 きかけてい る授業であつた もの と推察 され る。 次 に

,上

位群 (先行研 究

)の

ほ うが多 く使用 していた名詞 (時間

,空

,動

,固

),副

詞 (叙述), 感動詞 (肯定的

)の 6種

類 についてみてみ る。 名詞 (時間

,空

,動

)は ,矯

正 的フィー ドバ ックに関わる言葉 である。 この ことよ り

,斎

藤 は, 矯正的 フィー ドバ ックをそれ ほ ど多 く使用 していなか った もの と考 え られ る。 感動詞 (肯定的

)は ,形

容詞 (肯定的

)と

ともに子 どもの動 きを評価す る品詞 である。品詞分析 よ り, 斎藤 は

,子

どもの動 きを評価す る際

,感

動詞 (肯定的

)よ

りも形容詞 (肯定的

)を

多 く使 用 していた こ とがわか った。 この こ とよ り

,斎

藤 は

,主

に形容詞 (肯定的

)を

用 い

,子

どもたちの動 きを具体的に評 価 していた と推察 され る。 名詞 (固有

)は ,代

名詞 (人称

)と

同様

,個

人 を特 定 し

,子

ども一人ひ とりに言葉 がけをす る ときに よく用い られ る言葉である。 この品詞 は

,1度

も使用 され ていなか った。 これ は

,今

,品

詞分析 を した 授 業 は どれ も介入授 業 であったた め

,斎

藤 は授 業 をす る際

,子

どもの個人名 を知 らなかった ことが原 因 で あるもの と考 えられ る。

(20)

副詞 (叙述

)は

子 どもの多様 な運動 の感 じ方 を引き出 し

,問

題状況 の共有化 を図 る言葉 であ る。 つ ま り,「なぜ」,「どうして」,「もし」といつた課題解決的学習において発 問す る ときに使用す る言葉である。 この品詞は

,1度

も使用 されていなかった。 この ことよ り

,斎

藤 は

,系

統的学習で提示・説明的な教授活 動 を展 開 していた もの と考 えられ る。この副詞 (叙述

)が

1度も使用 され ていなか った ことについては, 考察が必要で ある。 学習成果 (態度得 点

)を

高 めた授 業 において

,子

どもに対 して発間が全 くなかった とい うのは考 えに くい。斎藤 は

,一

般 的な教 師が発す るよ うな 「なぜ」,「 どうして」,「も し」 とい う言 葉 が けではな く

,ま

た別 の言葉 を用いて子 どもの多様 な運動 の感 じ方 を引き出そ うとしているのか もし れ ない。 これ らの ことよ り

,副

詞 (叙述

)を

1度

も使用 していなか った とい う点 は

,斎

藤 の発言 の特徴 を表 している と考 え られ る。 (言

) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 覇斎藤 W上位 群

一一華

・作

・ 動   名

筍 一 間

身体部位

塚 轟

人称 代名詞 (語) 16〔) 140 12〔) 1(〕0 8〔) 60 4〔) 20 0

輻筐

隋胴

わ漱 丈末 終 助詞 助 詞 ﹁ ● . 〓 薔 一 警 吉t的 I彰イド:可 (先行研 究

)の

IW品

詞 の使用頻度 (1単 位授業)

5.斎

藤 (高学年

)と

上位群

(21)

続 いて

,品

詞分析で斎藤 が特徴的に使用 していた

,名

詞 (身体部位

),代

名詞 (人称

),形

容詞 (肯定, 対比

),副

詞 (程度

)の 5種

類 の品詞 が多 く使用 されてい る場面 を逐語記録か ら抜粋 し

,具

体的な相互作 用 について検討 した。 表

3は

,6年

生の台上前まわ りの授業において

,助

走 の指導 を してい る場面である。

Tlで

は,「助走 に流れがないんです。」 と助 走には流れ が大事だ とい うこ とを伝 えた後,「ここまできて あ らた めて腕力 を使 って る。」と動作 に流れ がない とむ だに腕力 を使 わなけれ ばな らな くな るこ とを指摘 してい る。

T2で

は,「踏み込みでキュー ッと力 んだで しょ。」 と「キュー ッ」 とい う感覚 的な言葉 を用い てい る。 この 「キュー ッ」 とい う言葉 は

,車

や 自転 車 のブ レー キをか ける際 によ く用 い られ る言葉 で あ る。 ここでは

,ブ

レー キの よ うに踏み込む際に助走の勢いをな くして しま うイ メー ジを表 してい る と考 え られ る。

T3で

は,「助走 をもつ と柔 らか く,ポ ンポンポン と柔 らか く。」と助走に流れ を作 るためには, 柔 らかい助走が必要で あるこ とを指摘 してい る。 この 「ポ ンポ ンポ ン」 とい う感 覚的な言葉 は

,

リズ ミ カル で軽やかなイメー ジを持たせ る言葉 である

6こ

こでは

,こ

の言葉 を用い柔 らかい助走 のイ メー ジを 子 どもたちが想像 しやす くしてい る。 また,「足 をもつ と上 げて」や 「腕 を しっか り振 って」な どと身体 部位 を使用 し,動 き方 を細か く指導す るのではな く,「柔 らか く」とい う1つの言葉だけで済ませている。 また,「柔 らかい」 とい う形容詞 (対比

)は ,他

の場面で もよく使 われてい ることか ら

,斎

藤 の体育の授 注

)表

中のアンダー ライ ンは

,斎

藤 が特徴 的 に使用 していた

5種

類 の品詞 を示 している。 表

3.台

上前まわ り (6年 生) 丁

1

これも

,助

走に流れがないんです。だか ら

,こ

こまで来てあらためて腕力を使つてる。

T2

ここの踏み込 みでキユーッと力んだで しょ。 丁

3

そうでな

<,(や

つてみせながら

)助

走をもっと柔 らか

<,ポ

ンポンポンポンと柔らか<。 今の子

,も

う一回や ります。(やり直 し)

T4

そうだそうだ !よ ―し

,さ

れいだ !そ うなんだ !こ ういうふうに違うわけですね。 丁

5 3の

されいなんだよ。

T6(次

の子に

)力

が入つてるなあ。助走にあんなに力が入つてる。

17

あんた

,こ

こ (跳箱のニメー トルほど前

)か

らや ってご らん。(子ども

,短

い助走でまわる)

8

ここのほうがされいだつたでしょう。助走して

<る

よりされいでしょ。

9

はい

,今

度ここ (踏み切 り板の上

)か

ら。(子ども

,踏

み切 つて まわる

)こ

こでもで きる。 丁

10そ

れを (肩を怒 らせて走 って みせなが ら

)力

を入れてこういう助走を したんです よ。

(22)

業の 中で特徴 的な言葉 の一つで ある と推 察 され る。 この場面では

,助

走 の際

,身

体全体 を リラ ックス さ せ て走 ることをイ メージさせ るために「柔 らか く」とい う言葉 を使 っている と考え られ る。

T4で

は,「こ う」 とい う副詞 (程度

)が

T3で

の子 どもの動 きを示すために用い られてい る。副詞 (程度

)は

ジェスチ ャーや フィンガーア クシ ョンな どの身体 的所作 を多 くし

,子

どもの課題解決 に通 じる動 きのイ メー ジを 明確 にす る品詞 で ある。斎藤 も 「そ う」,「こ う」 とい う言葉 とともに身体的所作 を用い

,子

どもた ちの 運動 のイ メー ジを明確 に しよ うとしていた もの と考 え られ る。また

,ほ

める ときには,「きれ い」 とい う 形容詞 (肯定

)を

用 いてい る。

T5で

も同様 に,「きれ い」が用 い られてい る。

T6で

は,「力が入 つて る な ぁ。助走にあんなに力が入 つてい る。」 と力 の入 つた助走は理想 的ではない ことを指摘 してい る。

T7

では

,助

走 を長 くと りす ぎてい る子 に対 して

,短

くす るよ うに指導 してい る。 また,「あんた」 とい う代 名詞 (人称

)を

用 いて個人 を特定 し

,子

ども一人ひ とりの課題解決 を促 している。

T8で

,や

は り短 い助 走のほ うが 「きれい」で あつた と

,短

い助走で も

,台

上前まわ りを成功 させ ることがで きることを子 ど もた ちに印象づ けてい る。 さらに

,T9で

,T8に

加 えて

,助

走 がな くて も台上前 まわ りはできる とい うことを説 明 してい る。そ して

,T10で

,助

走がな くて も成功で きるのに

,身

体 に力 を入れ て助走 を して も意味がない と子 どもたちに伝 えている。その際,「こ う」 とい う副詞 (程度

)を

用いて肩 を怒 らせ て走 っている子 どもの動 きを真似 ている。 以上 の こ とよ り

,こ

の場面では,「今 の子」,「あんた」 とい う代名詞 (人称

)を

用いて

,助

走 の練習を してい る子 どもに対 して一人ひ とり言葉がけを してい る。 この言葉 がけは

,子

どもの動 きをほめる とき と修正す るときがある。 この場面では

,子

どもの動きをほめる際,「きれ い」 とい う形容詞 (肯定的

)と

4.腕

立て開脚 とび (6年 生) (前腕だけ上下に動かして

,軽

<ポ

ンポン0日いている子を見て) 丁

1

祭の太鼓じゃないから。(笑い)

2

はい,ど んどん

0日

いて。おお,う まい。つかんでいないよ。

2二

。といかなきや。

T3

はい

,次

の人。前へ手を出しちゃだめだといつたでしょ。ほらほらそれも。

(笑

)

T4

前へ

,cつ

向けてたんじゃだめだよといつたでしょ。 二

2じ

ゃな

<,こ

う (手を少し内側へ

)向

けるんだ。こう向けなけりゃ

,倒

立だってできないでしよ。

T5

言つたこと

,頭

に入れて

<だ

さい

,六

年生だから。その二人違つてる。や り直し。

T6

手だけじゃない。ここ (腕全体

)を

使うんですよ。ポソ

!

巫ン! l r ここ (腕

)で

支えるように。跳箱とぷとき

,腕

で支えなけりやとべないでしよ。 20

(23)

「こ う」 とい う副詞 (程度

)を

ともに用いている。 これ は,「きれい」 とい う言葉 だ けでは伝 わ りに くい た め,「こ う」 とい うジェスチャー とともに動 きを具体的に伝 える言葉 が用い られた もの と考 え られ る。 一方

,子

どもの動 きを修正 しよ うとす る ときには,「柔 らかい」とい う形容詞 (対比

)が

用 い られ ている。 その際,「キュー ッ」や 「ポンポンポン」 といつた感覚的な言葉である副詞 (程度

)を

用 いて動 きのイメ ー ジを子 どもに伝 えている。できていない子 に対 して

,具

体 的な動 きを伝 えて も実際にそ の通 りに身体 を動かす ことが難 しい と考 えてい るもの と推察 され る。それ故

,イ

メー ジに関わる感覚的な言葉が用い られてい るもの と考 え られ る。 また

,斉

藤 は

,修

正 を加 えた後

,子

どもの運動が良 くなっていれば必ず ほめ

,で

きた ことを認 めてい る。 この場面で用 い られ ていた特徴 的な言葉 として 「きれ い」 と 「柔 らか い」とい う言葉があつた。この

2つ

の言葉 は

,ほ

かの場面において も何度 も用い られている。そのため, 柔 らか くきれ いな動 きが斉藤 の理想 の運動 の形で ある もの と考 え られ る。この「きれ い」と「柔 らかい」 は

,な

ん とな くの動 きのイ メー ジはわかるが

,具

体 的 に身体 を ど う動かせ ばいいかはわか らない。斉藤 は

,こ

2つ

の言葉 を用い ることによつて

,子

どもたちに どう身体 を動かせ ばよいか 自分 自身で考 える 余地 を残 してい るもの と推察 され る。さらに,自分で考 え らけれ ばな らない状況 におかれ ることによ り, 自分以外 の子が何 を言 われてい るのか聞き耳を立てた り

,ほ

め られた子 の運動 を見た りす る活動がみ ら れ るもの と考 え られ る。 表

4は

,6年

生の腕 立て開脚 とびの授業 において

,着

手 と跳び越 し方 を指導 してい る場面で ある。

Tlで

は,「祭 りの太鼓 じゃないんだか ら」 と

,ひ

じを曲げ

,前

腕 だけを上下に動 かす動作 を否定 して い る。その上で

,T2で

,上

手 に叩 くこ とがで きてい る子 どもに対 して,「うまい」 とい う形容詞 (肯 定的

)を

用 いてほめてい る。その直後 に

,上

手 くで きていない子 に対 して 「つかんでない よ。 グー ッと いかなきゃ。」 と「グー」 とい う感覚的な言葉 を用いなが ら修正すべ き点 を指摘 してい る。「グー」 とい う言葉 は

,手

のひ らと指 を用いて物 を強 く押す動作 を表す言葉 である。 ここでは

,跳

び箱 を叩 く際

,跳

び箱 に手が触れた ときに

,し

っか りと力 を入れ なけれ ばな らない とい うこ とを子 どもたちにイ メー ジさ せ るために用い られてい る と考 え られ る。

T3で

は,「前へ手 を出 しちゃだめだ といったで しょ。」と指先 をまっす ぐに向けたまま跳び箱 に手 をつ く動作 を否定 してい る。

T4で

T3と

同 じよ うに指摘 し,「こ う」 とい う副詞 (程度

)を

身体的所作 とともに用 い

,子

どもたちの運動 のイメー ジを明確 にさせ よ うと してい る。

T5で

も指 の向きについての指導が続 いてい る。「そ う」,「こ う」 とい う副詞 (程度

)を

用い なが ら斎藤 自身が示範 を し

,理

想 の形 を伝 えよ うとしてい る。そ して

,指

の先 をまっす ぐに して前へ 向 けるのではな く

,跳

び箱 についた手が動かない よ う指 の先 を少 しうちに向けるよ うに指導 してい る。 こ の こ とは

,跳

び箱 に手 をつ く際

,指

をそ ろえて伸 ば したまま手 を前 に押 し出す と滑 つて しま うた め

,跳

び箱 の上をつかむ よ うに手をつ く指導を しているもの と考 え られ る。

T6と

T7で

,腕

全体 を しつか り 使 うことを子 どもた ちに意識 させ てい る。 この授業 内では他 に も斎藤 が

,腕

に関 して指導 している場面 が あつた。斎藤 は

,跳

び箱運動 において

,腕

で身体 を しっか り支 えることを大切 に考 えてい るもの と推 察 され る。 また

,T6で

は,「ポ ン」 とい う感覚的な言葉 が用い られてお り

,こ

れ は

,弾

む よ うな動作を

表 1.品 詞 分析 した斎藤 の授業 低学年 1年 :前 まわ り (10分 )1年:うさぎ とび (11分 ) 2年 :開 脚腕 立て とび上が りお り (26分 ) 2年 :前 まわ り (予 想 3分 ) 中斡 3年 :閉 脚腕 立て とび上が りお り 。腕 立て閉脚 とび (24分 )3年:腕 立て開脚 とび(予想8分) 4年 :頭 支持 回転か らの前まわ り (21分 ) 4年 :と び こみ前まわ り (5分 ) 高学年 5年 :台 上前まわ り (25分 )6年:台 上前まわ り(予想
表 5.特 徴 的な IW品 詞 の使用頻度 の多い上位 5種 類 の言葉 (低 学年 ) 識 低 学年  (50分 ) 上位 5種 類 の言葉 代名 詞 人称   (11) (こ の )人 (7),あ なた (3) 形 容詞 肯定 (58) いい (3つ , うまい (10,き れい (18),よ い (3) 文寸 Lヒ  (109) いい (3つ , うまい (10,柔 らかい (18),き れい (18),大 きい (8) 副 詞 程度 034) こう (32),そ う 01),ふ う 00),よ う
表 13.品 詞分析 と文献研究の解釈比較 品詞分析からわかった斎藤の特徴 A 代名詞 (人 称 ) 練習 (運 動 )を した後の子ども一人ひとりに必ず言葉がけを している。 B 形容詞 (肯 定的 ) 明確な価値判断のもと ,子 ども の技能の高まりをほめている。また,授業の雰囲気もよ&lt;し よ うとしている。 C 形容詞 (対 比 ) 特に「柔らかい」 「いい」という言葉を使用し,運動の理想 の形を伝えようとしている。斎藤 の 指導の特徴を表している。 D 副詞 (程 度 ) 感覚的な言葉や「こう

参照

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