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学位論文審査結果の報告書
生年"a 名本籍(国籍)
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判立授与の条件
(博士の学位)赤澤典昭
昭禾口 38年8月 岡山県 博士(農学
第 226 号
学位規程第5条該当
20日 文題 ウ 剰 ¥^なヌ&^H学位論文審査終了日
審査委員
こ1二 す ノレ ,'、 ス る 養 研 殖 細 プ口 易 平成30年平成30年
菌 の お 1月16日 2月20日 住 け ゛ 査) る (副主査) (副主査) (副査) (熊 11) 防 御1工口充
に太田博巳
家戸敬太郎
永田恵里奈
1工口充
こ習@圃圃習
一" 払鯛a イ
本論文は、マレーシアの大規模集約殖場・Agrobost社でのマ不ジメントにおいて持続 可能な養殖を具現化するために作成された。東南アジアのエビ養殖では、多くのエビの病 気に襲われ、様々な問題が発生してきた。その中で、稚エビ品質の重要性とバイオセキュ
リティーの重要性に注目している。エビの疾病の中でもWSSV(white spot syndrome virus) は、最も被害の大きなウイルス病で、その防御には次の2つのことが有効であった。 1つ 目は、 PCR検査システムを設け、すべての池入前のPL (post Larvao)に対してロット毎に PCR検査を実施することである。 2つ目は、養殖用の海水を池に導入する前、ウイルスの キャリアーやベクターを夕ーゲットとして、30即mの塩素ガスで殺滅処理を実施することで ある。これらの対策を導入した後、著者は2006年から2015年までWSSVの感染は皆無とする ことに成功している。 1990年から2000年代中頃にかけた、 pehaeuS 勿onodon (ブラックタイガー)の養殖は、海 洋にて捕獲される親エビに依存していた。親エビのPCR検査では、頻繁にウイルスの保有を 確認しており、特に2005年は顕著になっていた。この状況が養殖者のブラックタイガー養 殖を複雑で困難なものしていった。複数のウィルス感染がブラックタイガーの成長の阻害 となった。"貢繁1こ1潅言忍されたIHHNV (1nfectious Hypodermal and Hematopoietic Necrosis ViNS)は、単体では大きな問題はないとされていたため、PL段階で陽陛であっても養殖池
に池入していた。当時、すでにウイルス陰性の親エビを確保することが困難であったため でもある。
上述のような背景の下、第2章ではエビ養殖場におけるウィルスの複合感染にっいて検
討している。当初IHHNVに感染したエビについては、深刻なへい死をもたらさないと考えら れていた(Lightner et al.,1983; Be11 and Lightner 1984)。しかしながら、養殖業者
は、ブラックタイガーの成長と生存率の低下に見舞われ大きな損害を被るようになった。 そこでブラックタイガーの成長と生存率に関して、 1種類のウィルス感染と2種類・3種
類といった複数のウイルスによる感染の場合を比較した。その中で、ⅧV (Monodon
山OuloviNS)に感染した場合、 1種類の感染でも著しい生存率の低下と成長の阻害を確認 した。しかし、 2種類・3種類のウイルス感染がある場合に、より大きな成長阻害の問題 となっていた。 Kanokpornら(2006)は、 Monodon slow Growth virus(MSGV)と称してぃた
ゞ、これはウイルスの複合感染と考えた方が望ましいのではないかと考えた。 第3章では、養殖場におけるウィルスに対するバイオセキュリティーにっいて検討して いる。エビ養殖場において、ウイルス感染は最も深刻な被害をもたらす。ウイルスの感染 様式には、 2通りある。 1つは親エビから感染する垂直感染である。PCR検査のデータで は、ブラックタイガーの親エビがウイルスに感染し、第2章で述ベたとおり、複合感染を 起こし養殖を困難にしていた。親エビの産卵誘発として利用している多毛類のPolychaetes bloodwormからもウイノレスを検出し、これが親エビに感染している可能性についても確認し ている。つまり水平感染の可能性である。この水平感染は、養殖場の周辺環境、海洋・河 川・排水路、養殖池に住む小動物がキャリアーや媒介者となりエビに感染する事例であ る。 polychaetesbloodwormの事例も紹介しているが、インドネシアの養殖場からのサンプ
ノレの、カニや巻貝などからPCR検査によって1ⅧV(1nfectious myonecrosis virus)・ WSSVを
エビの生産量は各国で増産となり、生産コストは低くなった。消もバナメイの増産に 伴う価格の低下によりバナメイを選択するようになった。そして、エビ需要は上昇した。 第4章ではバナメイ養殖におけるPuddl.whoe1の効果について検討している。バナメイ養 殖においては、養殖池中のバイオマスが高くなるとともに、給餌飼料の量も大きくなる。 ここではPuddlewheel(養殖用水車)の養殖池の環境に与える影響に関して調ベている。 Puddlowh.01の数を変えてエビ養殖池に設置し、養殖日数による溶存酸素と微細藻類の組 成を調ベた。 puddlewhee1の能力とそれによる反応を知ることは大変重要である。池底の 状態を良好に保つには、給餌飼料の量が増大も考えると、特に溶存酸素の量を上げること で池底の酸素を増やし嫌気性細菌を増やさないことが望ましい。 puddlowhe01のその他の 役割としては、池底の堆積物を集積させることと微細藻類の組成を安定させ、エビにス レスを与えないことが挙げられる。 puddlewhee1の設置方法により、一定の効果が望める ことが明らかになった。ただし、これに関しては、さらなるバランスの追究が必要であろ つ。 2010年になり、バナメイの養殖において原因不明の病気が発生した。発症からへい死ま での速さと感染の大きさから、ウイルス病ではないかと当初は考えられた。当時は多く 研究者が原因究明を目指していたが、2013年になるまで誰も究明に至らなかった。この間 継続して多くの感染池を出し、対処してきた。その様な状況で、感染池から弱ったエビを 採取し、清浄な海水の入った水槽に入れてどのような動きをするのか観察した。採取した エビを入れた水槽を見たとき、多くのエビは、異常な遊泳をしており、時間を置かずへい 死するものと考えていた。しかし、昼過ぎになり水槽を観察してみると、多くのエビは健 常な動きに戻りつつあった。採取した池のエビが100%近くへい死したものとは対照的で あった。この観察が起点となり、毒素のからんだ病態を想起し、原因は細菌によるものと して焦点を絞った。本疾病はその症状から稚エビ期死亡症候群/急性肝すい臓壊死病 EMS/AHPND)と名づけられた。第5 ・ 6章では則S/AHPNDの原因究明に取り組んでいる。感 染源として細菌に焦点を絞り感染したエビの個体から細菌を採取し同定を試みた。また、 毒素についてもマレーシアの検査機関で調ベている。養殖データの分析を感染池と非感染 池に分け、比較し、その違いから発症の傾向を探った。その結果、高PHと発症の関係を疑 うとともに、微細藻類の組成の変化についても発症に関係しているのではないかと考え た。との2つの傾向、高PHと微細藻類の影響に関して調ベるために、水槽での実験を行っ た。高PHと細菌源と考えた池底堆積物を伴った水槽では則S/AHPNDが発症した。このことか らPHストレスがEMS/AHPND発症の1つの要因と考えた。このEMS/朋PND発症の確認は、 Li帥飢nor とFlogel(2012)に提唱されたものに準じ、顕微鏡による観察で、感染した細胞 を確認することで行った。一方、微細藻類の実験では、 EMS/AHPNDの発症は確認されなかっ た。 最後の第6章では、池底堆積物と高PHがもたらす、養殖バナメイに対する則S/AHPNDにつ いて検討を加えている。池底堆積物と高PHを伴った水槽実験で則S/AHPNDの発症機序が明ら かになった。原因菌とPH変化のような環境ストレスが結び着いたときにEMS/AHPNDが発症す ることと、原因菌はエビ養殖池の池底堆積物などに主に生息しているということである。 以上のことから、則S/AHPNDの発症を防ぐには、養殖池の環境変化を観察し、過剰な給餌 を防ぎ、池底堆積物の集積を減らすことである。養殖池の水交換量を増やしたりすること も安定した健康な状態を保つ一助となることを本論文では提案している。
2016年中国.GuangzhoUで行われたGOALミーティングのJames L.Andersonによるプレゼン テーシヨンは、 FA0等のデータをもとにしたものであるが、2016年の世界の養殖エビ生産量
は、 4,000,000 (Mt)に達するとしている。そのうち1,500,000(Mt)が東南アジアで、さらに
1,400,000 (Mt)が中国としてぃる。つまり、世界の養殖エビ生産の73%がアジアで生産され
ている。さらに、東南アジアでは、 38%を生産していることになる。また、 2005年
(2,700,00O Mt)から2011年(4,000,00O Mt)にかけての生産量の増加は特に顕著であり、ブ
ラック》イガーからバナメイへのシフトのインパクトがいかに大きかったかを示してぃ
る。一方2011年から2015年にかけての落ち込みも大きく、 EMS/AHPND (Early Mortality
Syndrome/ Acute Hepatopancreatic Necrosis Disease)による被害の大きさを物言吾ってし、
る。
東南アジアの生産量の拡大は、各国の発展とともにインフラの整備が進んできたととも
大きな要因であるとともに、エビ養殖が熱帯 亜熱帯という気候適応もあり、主要な外貨
獲得産業となっている。一方、エビ養殖の急激な拡大は、マングローブ帯をはじめとする
環境破壊を想起させ、負のイメージに繋がっている側面もある。 本論文の著者である赤澤氏は、1999年マレーシア・マレー半島東海岸のパハン艸1にて工ビ養殖に携わってきた。その間に経験したエビの病気、現在においても未だに甚大な被害
をもたらしているWSSV(white spot viru.)をはじめとするウィルス病、 2008年頃から東南
アジアに中国から拡大したEMS/AHP即の原因と特定されたh'力h'oparahaemob訂'CUSなどの
細菌病、 sritunyalucksano et al.,(2015)によるNACAの緊急報告でも取り上げられてぃ る、 EHP(Enterocytozoon hepatopenaeD などの寄生虫症など甚大な被害とも対崎してし、 る。また、同氏は2005年頃から始まったPenaeus monodon (ブラックタイガー)から L北oenaou. van始moi(バナメイ)への養殖品種の大きな転換も目の当たりにしてきた。 同氏は、主として大型の養殖場のマネジメントを通して上述の変化を経験している。同氏が経営に関わったのはマレーシアのAgrobest社(P0始鴫艸D とBIUOArchip010即社(BAB社
/iKerpan養殖場・Kedah艸b であるが、それぞれ450池・200池を有する規模のマレーシアで は有数の養殖場である。 これらの養殖場を運営するにあたって、同氏は持続可能なビジネスモデルにするためには 何が必要なのかを常に考えている。先述の負のイメージに対していかにそれを変えられる か、また養殖場立地地域との共存についても大きな課題として取り組んでいる。そんな中 で、安定した養殖事業の運営には、いかに病気の侵入を防ぎ、拡大を防ぐかというウィル ス・細菌に対するバイオセキュリティーの問題について考えることが欠かせないと理解し てきたのが同氏といえる。 本論文ではは、特に大型の養殖場を持続可能にするために、何が必要なのかを養殖場で の実践を通して研究してきたものである。 第2章では、ブラックタイガー養殖におけるウイルスの複合感染に関する研究を行って いる。 2000年代中盤まで、ブラックタイガーの養殖は天然の親エビに依存していた。そ の天然の親エビ資源が複合的なウィルス櫂患によってブラックタイガー養殖を困難なもの としていった。本章では、複合感染がいかに成長を阻害しているかをエビの成長に沿って 文 査 子 ノ、 の E二ι第4章では、養殖池において必要なPuddle 肱ee1の効果に関して、設置数ど谷子酸素の関 係および微細藻類にどのように影響しているかを検証している。養殖池の中央部に集積す
るSludg0が嫌気性細菌の巣窟となることが考えられることで、このスラッジがさらに EMS/AHPNDの感染源となる可育をS勢があることから、 puddlo whe01の重要性を提案してい
る。 先述のとおり、2006年頃からバナメイの生産が東南アジア各国で拡大していった。バナ メイの特性は、不安定化したブラックタイガーの親エビに対して、すでに陸上での親エビ 生産が可能になっていたことが挙げられる。この変化によって、安定的に稚エビの確保が できるようになった。また、当初のバナメイの養殖結果は、ブラックタイガーに親しんだ 養殖企業にとって驚くような結果をもたらした。まず、池入密度がブラックタイガーの3-5 倍になり、生存率も高く、生産性は著しく向上した。一方、飼料効率もブラックタイガー より30-40%良好で、コストも安価な結果となった。これによって、東南アジアではエビ養 殖域が増えたことも相まって、東南アジアのエビ生産量は一気に増加した。この状況は、 2010年頃から原因不明の病気として拡がった則S/AHPNDが発生するまでは継続していた。こ の様なEMS/AHPND発生の背景をふまえて、第5章では、 EMS/AHPNDが起こった時からその原 因の究明に取り組んだ経緯をまとめている。当初はウイルスなのか、細菌なのかも理解で きない状況から研究を開始している。特に、櫂患したエビ個体の特徴や、発症した池の細 菌に夕ーゲットを絞り検討をおこなっている。その後、養殖データを詳細に調ベ、同時 ・同稚エビの池で、櫂患した池と櫂患しなかった池のデータを比較している。この比較 、ら、PHの上昇と微細藻類の組成に違いを見出した。この環境要因、PHの上昇との関連性 を確認するために水槽実験を行い、バナメイへの感染を確認するとともに初期感染(神経 障害症状の発症)エビから組織検査や細菌の同定を目指している。また、初期感染期に工 ビの共食いも観察し、EMS/AHPNDの拡大が起こる経緯についても考察を加えている。水槽実 験による一連のバナメイの動向は、神経毒の可能性と使用した汚泥の関係から細菌症であ ることを強く示唆するとともに、組織観察から破壊の状態も確認できている。この後 Tran et al.(2013)によってバナメイに対する感染実験が行われ、 h'力h'0
Parahaemolyh'CUSが原因菌として特定された。また、 Hirono et al.(2014)は、 PCRの開発 を行い、EMS/A肝NDの原因菌・毒素に対するアプローチは進化していった。しかし、養殖現 場におけるEMS/AHPNDが完全に抑え込まれているという状況には至っていない。 第6章では、第5章での研究をもとに、高PHがバナメイに与える影響を実験レベルで観 察し、 EMS/AHPNDの発症を再現したものとしてまとめたものである。この研究から、環境ス トレスと病原の関係によって病気の発症に至る過程明らかにしている。この実験によっ て、養殖環境下での則S/AHPND発症のメカニズムが理解され、病気を食い止め、損失を食い 止めることに繋がる光明が見出せたといえる。 よって、本論文は博士(農学)の学位論文として価値あるものと認める。なお、審査に あたっては、論文に関する専攻内審査および公聴会など所定の手続きを経たうえ、平成30 年2月20日、農学研究科教授会において、論文の価値ならびに博士の学位を授与される学力 が十分であると認められた。