人口規模別にみた都市のコンパクトレベルの比較に関する研究
5
0
0
全文
(2) 2. 都市のコンパクトレベルの測定. いる。よって、コンパクトなまちづくりも、これらの制約 を受けることから、一元的なものではなく、都市の特徴に. コンパクトシティとは、一般的には、住む場所と働く場. 合わせたものが求められるべきである。例えば、コンパク. 所が隣接したコンパクトな空間形態をもっ都市と考えら. トなまちづくり導入の主たる目的が、交通におけるエネル. れる。日本の都市の場合には、その行政区域全域あるいは. ギー消費削減で、 あった場合、大都市が目指すコンパクトな. 一部の行政区域が都市計画区域として指定され、市街化が. まちづくりと地方の小都市が目指すそれとでは自ずと異. 促進されるエリアとしての市街化区域と市街化が抑制さ. なってくるはずである。言い換えれば、都市はその特徴に. れるエリアとしての市街化調整区域に線引きされている。. 合わせて、最適なコンパクトレベルを選択してし泊瓦なけれ. このような日本の都市の実情に併せ、コンパクトシティを. ばならないのである 。最適なコンパクトレベルを選択する. もう少し具体的に言い換えるならば、“コンパクトシティ. にあたっては、異なるコンパクトレベルとその効果を定量. とは、市街化区域、特にその核となる中心市街地に、住宅. 的に測定し比較することが重要となってくる。. (あるいは人口)、事業所、商業施設、そして公共施設が集. コンパクトなまちづくりを導入することによって、どの. 積し、それらが徒歩で移動可能な距離に、あるいは公共交. ような効果が都市にもたらされるかを検証した研究はい. 通機関で結ぼれている都市"と定義づけることができる。. くつかある。中道、谷口、松中 3) は、豊田市を事例とし. しかしながら、どの都市機能をどの程度集積させれば、コ. て、コンパクトな都市空間形態のエネルギー消費面におけ. ンパクトシティと呼ぶことができるのかといった基準が. る優位性を Smart Layout Indicators to Materialize. あるわけではなく、また、都市のコンパクト化を考える上. CompactCity (SLIMCity)モデルを用い、シミュレーショ. で重要なことは、コンパクトのレベルを上げれば良いとい. ンによって実証した。また、石塚 4) は、コンパクト前と. うことではなく、最適なコンパクトレベルを選択すること. コ ン パ ク ト 後 の 自 動 車 交 通 移 動 量 を 、 Life Cycle. であると考える。. Management(LCM)評価手法を用いたシミュレーションにて. 最適なコンパクトレベルを検証するためには、連続的に. 比較し、円形都市と方形都市の両方において、コンパクト. 都市のコンパクトレベルを定量的に比較で、きる指標が必. 化による自動車交通移動量の削減効果を実証している。こ. 要となってくる。ここでしづ“連続的"とは、低、中、高. o(最も低いコンパク. れらの研究は、都市のコンパクト化によるその目的への効. といった段階的で、はなく、例えば、. 果、特に交通におけるエネルギー消費面で、の効果について、. トレベルを指す)から連続的に測れるということである。. シミュレーションにて検証を行い、コンパクトなまちづく. このような指標として、まず考えられるのは、市街化区域. りの議論に有益な科学的データを提供している。しかしな. あるいはその核となる中心市街地にある都市機能の密度. がら、これらの研究は、コンパクト化の効果の有無につい. (例えば、中心市街地における人口密度)と都市計画区域に. ての検証であり、都市にとっての最適なコンパクトレベル. ある都市機能の密度(例えば、都市計画区域における人口. についての検証は行われていない。都市にとっての最適な. 密度)を比較することによって、当該都市のコンパクトレ. コンパクトレベルを選択するにあたっては、次のようなプ. ベルを測定する方法で、ある。我が国におけるコンパクトシ. ロセスを踏む必要がある。まず、都市の特徴(人口規模、. ティは、主として、都市機能の中心市街地への集積を目的. 面積、地形、産業構造、人口構成、歴史、文化等)とその. とすることから、指標を考えるにあたっても、市街化区域. 空間形態との因果関係を明らかにすることである。そして、. よりも中心市街地における都市機能の密度に焦点を当て. 次のプロセスとして、上述の因果関係を制約として、コン. るべきかもしれないが、本研究がサンプルとする 395都市. パクト政策が導入された場合にどの程度の効果がもたら. 全て(第 3章参照)について、中心市街地に関するデータを. されるかをシミュレーションによって検証し、最適なコン. 入手することは困難なため、市街化区域における都市機能. パクトレベルを選択することである。このようなシミュレ. の密度をもってこれに代えることとする。. ーションによる検証を行うためには、都市の異なるコンパ. 1 )の このようにして測定する方法を式に表すと、式 (. クトレベルを定量的に測ることの出来る指標が必要とな. とおりとなる。都市機能は、具体的には、住宅(あるいは. る。. 人口)、事業所、商業施設、公共施設であり、これら都市. 次の第 2章では、同一都市のコンパクトレベルの変化、. 機能それぞれについてコンパクトレベルを測ることが可. そして都市聞のコンパクトレベルの違いを定量的に比較. 能となる。また、都市のコンパクト化といった場合は、住. することのできる指標を構築する。そして、第 3章では、. む場所と働く場所が隣接する空間形態を指すが、現実には、. その指標を用いて、我が国の 395都市のコンパクトレベル. コンパクト政策導入の下で、都市に点在する様々な産業の. を都市の人口規模別に比較する。最後の第 4章では、この. 事業所を市街化区域内に集積させることは、不可能である。. 指標の汎用性について述べることとする。. 特に、製造関連の事業所の集積などは、環境への影響もあ. -70-.
(3) 域が拡大した場合、 U C L Iの値は下がることになる。. り、持続可能なまちづくりに反することとなる。よって、 現実問題として、市街化区域に集積できる事業所は、大部. U C L I は、次の二つの利点を持つ。一つは、都市計画区. 分において、商業施設関連とオフィス関連の事業所という. 域面積あるいは市街化区域面積が増減しても、同一都市の. ことになる。. コンパクトレベルの変化を相対的に捉えることが可能と なる。例えば、市の合併によって、都市計画区域面積およ び市街化区域面積が拡大しても、 U C L I に変化が生じるの U C L I=FD / AD: -F /A p. は、あくまでも都市計画区域面積に対する市街化区域面積. ( 1 ). の割合に増減が生じた場合となる。もう一つは、都市機能. U C L I:U r b a nC o m p a c tL e v e lI n d e x. の市街化区域における集積度と都市計画区域面積におけ. (コンパクトレベル指数). る市街化区域面積の割合を比較することによって、都市間. FD:市街化区域にある都市機能. のコンパクトレベルの違いを相対的に比較することが可. AD :市街化区域面積. 能となる。. Fp :都市計画区域にある都市機能 Ap :都市計画区域面積. 3. 日本の都市のコンパクトレベル この章では、前章で構築した式 ( 2 ) を用いて、都市機 しかしながら、都市のコンパクトレベルを測定するにあ. 能の内の住宅(但し、測定するにあたっては、住宅数の近. たっては、先述のコンパクトシティの定義が含んでいるよ. 似値として人口を用いる)における日本の都市の U C L Iを、. うに、都市機能の密度よりも都市機能の集積度(市街化区. 都市の人口規模別に計算する 。2 0 0 5年 9月時点で、日本. 域にある都市機能の割合)がポイントとなる。この点を踏. 4 5の都市(東京 2 3区を除く)があり、内、 1 4都市 には 7. まえ、式 ( 1 ) を式 ( 2 ) のように書き換える。式 ( 2 )は 、. 0 0,0 0 0 以上の政令指定都市、 3 7都市が人口 が人口約 7. 市街化区域にある都市機能の割合と都市計画区域面積に. 3 0 0,0 0 0以上あるいは面積 1 0 0平方キロメートル以上の中. おける市街化区域面積の割合を比較することによって、都. 4 5都市に住む約 1億人の都市人口の 核市である。これら 7. 市のコンパクトレベルを相対的に測定する方法を示して. 3. 8%が人口 7 0 0,0 0 0以上の 1 4の政令指定都市を含 内 、 2. いる。. む1 7の大規模都市に、 21 .5% が人口 300, 000~699, 999 の. 3 7 の中核市を含む 5 2 の中規模都市に、 28.3%が人口 100 , 000~299, 999 の 175 の小規模都市に、そして 26. 4%. UCLI=FD / A : - F/A p D-. が人口 1 0 0,0 0 0未満の 5 0 1の小規模都市に住んでいる。す. =FD• A p: -F p• AD =F o / F p : - A D/ A p. なわち、日本の都市人口の 54.7%が人口 3 0 0,0 0 0未満の ( 2 ). 小規模都市に住んでいることになる。 前章にて言及したように、我が国において都市のコンパ. 但し、. クト化と言う場合には、一般的に、都市機能を中心市街地 0く Fo /Fp 壬 1. に集積させることを指すことから、コンパクトレベルを測. 0 < Ao / A p豆 1. 定する際には、中心市街地における都市機能の集積度を測. UCLI>0. ることが望ましいと考える。しかしながら、中心市街地に 関するデータ(例えば、人口、面積、事業所数等)を入手す ることが困難で、あったこともあり、日本都市年鑑より入手. 2 ) を用いた場合、コンパクトレベルが最も低いケ 式 (. 可能な市街化区域に関する同様のデータをもってこれに. ースは、コンパクトレベル指数(以下、 U C L I ) が限りなく. 4 5都市について、市街化区域におけ 代えることとした。 7. 0に近い場合である 。それは市街化区域における都市機能. る住宅、事業所、商業施設、公共施設といった都市機能の. の集積がほとんど見られないケースである。市街化区域に. 数量に関するデータは利用できないものの、市街化区域に. おける都市機能の集積度が高まるにつれ、あるいは都市計. おける人口データは、日本都市年鑑より、全ての都市につ. 画区域面積における市街化区域面積の占める割合が小さ. いて利用できる。また、都市計画区域面積における市街化. くなるにつれて、 U C L Iの値は高くなる。また、式 ( 2 )を. 区域面積の割合に関するデータは、 7 4 5都市の内、 3 9 5都. 用いた場合、ある都市において、市街化区域における都市. 市について、日本都市年鑑より、利用できる 。よって、こ. 機能の集積度が変化しなくても、郊外化によって市街化区. こでは、市街化区域における人口データおよび都市計画区. 唱'ム. ηi.
(4) 〆. 域面積における市街化区域面積の割合に関するデータの. 区域面積に対する市街化区域面積の割合 ( A Ap)を計算し、. 9 5都市について、住宅面での U C L Iの 両方が利用できる 3. それらの平均値を求めたものである(データ出所は、同様. C L Iを計算した。結果は、表 近似値として、人口面での U. 、 2 0 0 5 に、日本都市年鑑 2005および地域経済総覧 2006で. 1のとおりであり、都市の人口規模別に人口面における. 年 3月末時点の数字)。そして、 U C L I は、前章の式 ( 2 ). U C L Iの数値が示されている。. に基づいて、「市街化区域のおける人口集積度の平均値J を「都市計画区域面積に対する市街化区域面積の割合の平 均値Jで、割って求めたものである。. 表 -1 人口面における都市の U C L I. 表 -1に示されているように、市街化区域における人口 集積度は、平均で見た場合、都市の人口規模が小さいほど、 低くなる傾向にある。そして、都市計画区域面積に対する 市街化区域面積の割合も、平均で見た場合、都市の人口規 模が小さいほど、低くなる傾向にある。小規模都市におい ては、人口の市街化区域への集積度は低いものの、都市計. 都市の規模. 画区域面積に対する市街化区域面積の割合も低いことか 0 0,0 0 0未満の小規模都市が相対的 ら、結果として、人口 1. にコンパクトレベルが最も高くなっている。このことは、 小規模都市においては、人口が都市計画区域全体に分布し ている一方、市街化区域に指定されている面積の割合が、 他の規模の都市に較べて、相対的に低いことを意味してい る 。. 4. 結び U C L I を活用することによって、都市のコンパクト政策. 導入に際しての方向性を定量的に示すことが可能となる。 まず、次のようなケースにおいて、コンパクト政策導入に おける方向性を定量的に示すことが可能となる。都市の規 模を問わず、どの程度のコンパクトレベルが適切で、あるか の判断をするには、各都市機能(すなわち、住宅、事業所、 商業施設、公共施設)の異なるコンパクトレベルが都市の 様々な側面(経済面、社会面、環境面)にもたらす総合的 な効果を検証する必要がある。例えば、同じ人口規模の二 つの都市が、同じ数値の U C L Iを目標設定しても、二つの 都市の異なる様々な特徴としづ制約から、必ずしも、コン パクト政策導入目的における同様の効果を期待できると は限らない。最適なコンパクトレベルを検証することによ 表 - 1における「市街化区域における人口集積度の平均. って、さらにコンパクト化を推し進めるべきなのか、推し. 値」は、都市の人口規模グループ。別(大都市、中都市、人. 進めるとするならばどの程度が適切なのかといった方向. 0 0,0 0 0 " ' 2 9 9,9 9 9の小都市、人口 1 0 0,0 0 0未満の小都 口1. 性を定量的に示すことが可能となる。また、前章表 - 1の. 市)に、グルーフ。に属する都市其々について、市街化区域. データが示すように、次のようなコンパクト政策導入にお. の人口が都市計画区域の人口に占める割合 ( F D / F )を計算 p. ける方向性を見い出すことが出来る。まず、小規模都市が. し、それらの平均値を求めたものである(データ出所は、. コンパクト化政策を推し進める際、人口面のみから見た場. 日本都市年鑑 2 0 0 55)および地域経済総覧 2 0 0 66)で 、 2 0 0 5. 合には、さらに市街化区域への人口の流入を促進するとい. 年 3月末時点の数字)。また、「都市計画区域面積に対する. う方向性が見えてくる。一方、大規椀怖がコンパクト化. 市街化区域面積の割合の平均値」は、都市の人口規模グル. 政策を推し進める際は、市街化区域における人口集積度が、. ープ別に、グループ。に属する都市其々について、都市計画. 既に 9 7 .1%という高い数値に達しているため、市街化区域. 円I'. ηノ臼.
(5) の人口の流入を促進するよりも、市街化促進エリアとして ・ ,. の市街化区域面積を減らすという方向性が見えてくる。 本研究で提唱した U C L Iを活用することにより、我が国 におけるコンパクトシティ導入の議論が、より客観的なも のへと移行出来るのではなし 1かと考えている 。. 参考文献 1 )J e n k s,M .,B u r t o n,E .a n dW i l l i a m s,K .:T h eC o m p a c t u s t a i n a b l eU r b a nF o r r n ?,E&F NS p o n( 1 9 9 6 ). C it y-AS 2 ) 海道清信:コンパクトシティー持続可能な社会の都市像. を求めて、学芸出版社 ( 2 0 0 1 ). 3 ) 中道久美子、谷口守、松中亮治: 都市コンパクト化. 政策に対する簡易な評価システムの実用化に関する研 究一豊田市を対象にした S L I MC I T Yモデルの応用一、都. o.3 9 3( 2 0 0 4 )、p p. 6 7 7 2. 市計画論文集、 N 4 ) 石塚義高: 都 市 L C M評価手法による自動車交通移動. 量の削減効果からのコンパクトシティ化評価に関する 研究、環境の管理、第 5 3号 ( 2 0 04 )、p p. 9 1 6 .. 0 0 5、第一法規 ( 2 0 0 5 )、 5 ) 全国市長会編 :日本都市年鑑 2 p p .3 12 3 5 5. 6 )東 洋 経 済 新 報 社 :地 域 経 済 総 覧 2006、 pp. 2 5 4 2 8 5 .. i 門. べU n.
(6)
関連したドキュメント
菜食人口が増えれば市場としても広がりが期待できる。 Allied Market Research では 2018 年 のヴィーガン食市場の規模を 142 億ドルと推計しており、さらに
度が採用されている︒ の三都市は都市州である︒また︑ ロンドン及びパリも特別の制
い︑商人たる顧客の営業範囲に属する取引によるものについては︑それが利息の損失に限定されることになった︒商人たる顧客は
都内人口は 2020 年をピークに減少に転じると推計されている。また、老年人 口の割合が増加し、 2020 年には東京に住む 4 人に
日本における社会的インパクト投資市場規模は、約718億円と推計された。2016年度の337億円か
これまで、実態が把握できていなかった都内市街地における BVOC の放出実態を成分別 に推計し、 人為起源 VOC に対する BVOC
総合的なお話を含めていただきました。人口の関係については、都市計画マスタープラ