制御角正負全域で動作するサイリスタブリッジ
数野寛
清弘智昭
(昭和54年8月31日受理)Thyristor Bridge with Full Range of Control Angle
from Positive to Negative
HiroshiKAZUNO NoriakiKIYOHIRO Abstract Commutation voltage of the 3・phase thyristor bridge was investigated・Three circuits of the bridge were considered. Each of them has two thyristors in their main current path, and acts as a rectifier withln the control angle of retardation from posltlve to negatlve, and as a inverter within the control angle of advance from positlve to negatlve. The first circuit was equipped with both commutating capacitor and reverse parallel thyristor between the phases. In this circuit, there are two faults, namely, the commuta・ tion voltage rises abnormally, and the spike current flows out into the AC lines every commutation. The second one was added small saturable reactors and resistors to improve that faults. But, it is impossible to suppress completely out且ow of the spike current lnto the AC lines. The third one was a modi丘cation of the丘rst one. One end of the reverse parallel thyristor was changed to connect to another points, and thus that faults were improved. This coincides with one of the circuit which has been used only as a self excited inverter up to this time・ Consequently, the expansion of utilization of that thyristor bridge, over the whole control angle from positive to negative, could be predicted.
1.まえがき
普通のサイリスタブリッジは自然転流に依存してい るため,制御角遅れの整流器動作および制御角進みの 他励式インバータ動作しか実現することができない。 ところが直列ダイオード方式サイリスタブリッジにお いては,制御遅れ角正負全域の制御整流器動作および 制御進み角正負全域の制御インバータ動作が可能であ る1)。ここで言う制御インバータとは交流側に独立し た定周波,定電圧の独立電源を有し,電力変換上は他 励式インバータと同様の動作をするが,転流はこの電 圧によらず強制転流(自励転流)能力を有するインバ ータをいう。 しかしながら普通のサイリスタブリッジにおいて は,主電流通路にサイリスタ2個のみが存在するのに 対し,直列ダイオード方式においては,サイリスタ2 個,ダイオード2個計4個の素子が存在するので,電 力消費,電圧降下,電圧変動および経済的の見地より 好ましくない。そこで主電流通路にサイリスタ2個の みが存在し,かつ制御遅れ角正負全域での制御整流器 動作,および制御進み角正負全域での制御イン7〈 一一タ 動作可能な二,三の回路につき検討した。 まず,相間に転流コンデンサと逆並列接続のサイリ スタを有する回路につき検討した。この場合希望の変 換動作は可能であるが,二つの欠点を有する。一つは 転流を繰返すたびごとに転流コンデンサの電圧が次第 にエスカレートするので,適当な抑圧回路を設けて保 護iする必要があること。もう一点は転流時交流母線へ昭和54年12月 山梨大学工学部研究報告 第30号 スパイク状の電流が流出し,誘導障害防止の見地より 好ましくないことである。この欠点の改良策として, 極く小形の可飽和リアクトルと抵抗とを用いてスパイ ク電流振幅を抑圧し,あわせて転流電圧の異常上昇を 防止した。しかしながら線路流出のスパイク電流を完 全には抑えることはできなかった。そこで補助サイリ スタの接続位置を変更することにより,スパイク電流 の線路流出を防止するよう改めたところ,これは結局 従来から専ら自励式イン7〈 ・一タとしてのみ用いられて きた回路に帰着した。したがって結果的には,従来か らあったこの自励式インバータのブリッジが,制御遅 れ角正負全域での制御整流器動作および制御進み角正 負全域での制御インー〈 ・一タ動作が可能であることを, 理論的にも実験的にも裏付けることができた。 以下,各回路の転流電圧の確立機構,特性等につい て順を追って述べる。 2・回路構成および転流電圧 2.1回路その1 単相,三相いずれも同じように考えることができる が,ここでは三相の場合について述べる。図一1に主 回路構成を示す。Br・1がサイリスタブリッジ, TA∼ Tc’は主サイリスタ, Tl∼T3’は転流用補助サイリス タである。平滑用リアクトルLdは十分大きなインダ クタンスを有し,直流電流Idは平滑とする。 Cは転 流コンデンサ,1は交流側の漏れインダクタンスと し,素子は理想的なるものと仮定する。この際交流電 流は120°通電形方形波電流とみなしうる。Br.2は 転流電圧の異常上昇を防止するための抑圧回路であ り,Cdは一般には電解コンデンサでよく, Cd>C のように選ぶ。 いま,制御角を進みのδ,整流器動作時(制御遅れ 角α=一δ<0)における各サイリスタへ供給するゲー TA TB Tc a 乃 8 @ 113島 S.W. θcα ¢α6∼ 11 T{ T2cT≦ ∼ ∼
@ b
T3 (ed) qect.ヱ1・ qL 陥 T5 c C ∼@e6c
T‘ T≦ T6@Br.1
Br.2 メン → 一 Rd 図一1 回路その1の主回路図 Fig、1 Main circuit diagram of the first circuit. (a) TA (b)TEI T, 2 T3 Ti 3 図一2 δ ?モa@ θαゐ eαe P @l l瓦・i・δ{ ed C玩 ,』〆輪, @1 | 1 広1 l l l @ l l @ l l l ■ @ γ<0γ=−90・α<0 @ 制御角負・強制転流域 @ 1 ∫ l I @l | l @l l l @ ・−9ぴ㎞,.。 e:㌫誌1 ‘言
l l I | l l I l l i l l l l I f | | l l l 1l I l ; 1
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1 l l I Fig.2 制御角と交流電圧,直流電圧およびゲー トパルスとの関係 Relationship among control angle, AC voltage, DC voltage and gate pulses. トパルスのタイムチャートを図一2に示す。主サイリ スタへは60°間隔で発生する時間幅の狭い二連パルス を用い,転流補助サイリスタへは同じ幅の単発パルス を用いる。 転流電圧確立の模様を解析する。いま,図一2(a)に おいて,TA, Tc’オン, TAからTBへ転流する瞬 時(eαc波上P点)を考える。この場合の等価回路は 図一3のようになる。いま,転流コンデンサCが図 示極性に電圧Vσで充電されていたと仮定する。TB, T、へ同時にゲートパルスを与えると瞬時にオンし,TAはオフする。一方Cの電荷は, C→T1→1→電
源eαb→1→Cを通して共振放電を起こし極性が反 転する。この際転流は交流電源周期に比し,無視しう eac↑ 五 ←一一 図一3 回路その1の転流時の等価回路 Fig、3 Equivalent circuit of the first circuit at the instant of commutation.るほどの短時間に完了するものとし,この間交流電源 電圧の瞬時値は不変に保たれているものと仮定する。 電流を図のように置くと次式が成立する。
箒∫」蛭_∋ω
iα(0十)=五なる初期条件のもとに(1)式を解け ば,←五噛+ヱ
(2)となる。Cの端子電圧が0となるまでがTAの逆電
圧期間となる。これを彦1とすれぽ 一Vc+音∫二’i・d・・一・ より次のようになる。 tl=〆2zc Em sinδ (3)㎡」ぎん (4)
−tan−i 「Vc十Em sinδ 一般に五の増加につれて減ずる傾向にあるが,⇔躍錫E・・i・・とす繍・ぽ21とCの共
振周期の1/4となる。V,の許容値や制御角δに応じ てこの値がサイリスタのターンオフタイム以上になる (V・+Em・i・・)・+e’i・・ レ } よう1,Cを調整する。1は一般には交流電源側の漏 れインダクタンスであるが,必要とあらぽ微小なイン ダクタンスを追加してもよい。 つぎにiα(彦2)=0となる時間t2(ただしZん/双ア は第2象限の角)を求め,極性反転後の転流コンデン サの端子電圧V・’を求めれぽ v・t−−Vc+−R∫82iadt (5)
より次のようになる。 v・t−u(Vc+E・鋪・+吾五・+E・㎡>Vc
(6) この値は極性反転前より高い。それは放電通路に沿っ て正極性の電源電圧eαb=Em sinδ>0が存在するた めである。図一3においてV・は図示極性と仮定した が,制御角負のこの領域においては当初Vc=0であ ってもこの共振充放電を繰返す度ごとに電圧は上昇 し,回路損失がなけれぽ◎◎にまで達する。転流電圧 が不必要に大きいことは素子の耐圧,dv/dt耐量, Cの耐圧の見地より好ましくないので,適当な大き 図一4 転流時交流線路に流出す るスパイク電流波 Fig.4 Spike current wave flowing out into the AC lines at the instant of commutation. さに抑圧する必要がある。図一1のBr・2はこの抑圧 回路の一例であり,ほぼ線間電圧の最大値Em程度 に抑えようとすれば,Em2/R,程度の損失を伴う。 また,図一4に示すように転流時iα,ibは大きな波高 値を有し,スパイク電流が線路へ流出することにな る。 つぎに制御角正領域においては,図一3中eab〈0(ebα >0)でCは充電されないが,普通のサイリスタブ リッジと同様自然転流によって動作が可能である。 2.2 回路その2 回路その1においては動作は確実であるが,転流時 流入電流波端部に急峻なスパイク電流が重畳されるの で,誘導障害防止の見地より好ましくない。また,繰 返し共振充放電のため転流電圧が不必要に上昇するの で適当な抑圧回路を必要とした。そこで極く小形の可 飽和リアクトルと抵抗を用いることによりこのスパイ ク電流を抑圧し,かつ転流電圧の異常上昇を防止する ことができた。 図一5に主要回路の構成図を示す。ゲートパルスの タイムチャートは図一2と同様である。回路その1の 場合と同じ時点につき転流を考える。この場合の等価 回路は図一6のようになる。転流コンデンサCの電 圧は図示極性にVcとする。 TB, T1がオンすると TAは逆バイアスされ, TA, SRAは瞬時にしてオ フするものと仮定する。制御遅れ角αニーδ(<0), eab ・= Em sinδ, SRBは(Vc十Em sinδ)により‖舜時 にしてオフするとすれば次式が成立する。籔∫罐一一李}
(7) 回路は非振動的であるとしてあ(0+)=0なる初期条 件のもとにこれを解けぽ次のようになる。昭和54年12月 山梨大学工学部研究報告 第30号 eca C T^ T8 Tc 五 a 1 / T, ↑‘ T2 T3 8礼心 ll τ C 2冗 C ・・
`ぷ・・
@ 1 2償 CSRc・ e己 γ`
SRA SRB 負荷 TI T≦ ■6cbJ T∫h
Ti T‘ T6 図一5 回路その2の主回路図 Fig.5 Main circuit diagram of the second circuit. eac↑些TE
r 図一6 回路その2の転流時の等価回路 Fig.6 Equivalent circuit of the second circuit at the instant of commutation. ib−・・−狽?狽高堰o(品毎挟岳
一(rld十Em sinδ十Vc −〃Z2 211,)・一’M2t}ただし・…か/(㌃仁姦…命
/(41)2−2是 とする。 さて,定常時転流開始前においては, 一M・ jε ’t (8) SRB中の磁 気動作点は半周期前に巻線下半分を流れていた九に より正の飽和点に達している。いま,図一7において i・(・・)一・なる時刻・1を考,lt.・2z et“t・∫二1 ri・ dtなる 電圧時間積によりSRBの磁気動作点は未飽和線上を下陶ぷ・励で上昇し・
∫8’ ・i・ dt+∫12、 ・i・ dt−・ (9) なる時刻t2で再び飽和に達する。もしもib(t2)≒ld と仮定するならぽ,彦2でi。,ibの重流はほぼ完了し, Cの端子電圧ec(t2)は図示とは逆極性に ec(t2)≒Emsinδ十rld (10) (a) (b) ia ξ2 +己 言=07 lY 人1 1 1→
〔 十M τ1 図一7 転流時の電流と可飽和リアクトル の磁気動作点の関係 Fig.7 Relationship between the current at the commutation instant and the magnetic working point of the saturable reactor.T、 T,丘
TIMγ¢一十.・一一 ,一 一 is、 、匂 、、’C−+一・wMノ TX TA Tζ T,と Vc −十 ’℃’ T, 「^’ TI i ↑ ’MM
i’7, TX TE (a) (b) 図一8 逆並列サイリスター端の接続点の変更 Fig.8 change of connection point at one end of reverse parallel thyristor. に達し,これが次期転流電圧Vcとなる。九に比例 した項を含むことは負荷の大小に応じ確実な転流を実 現する上から有利である。 2・3 回路その3 回路その1の図一3,回路その2の図一6いずれにせよ Cの放電(もしくは逆充電)が,C→Tl→1→電源eab →1→C,もしくはC→rとSRBの並列→1→電源eαb →Z→Cなるルートを経て行われるために,外線ヘス パイク状の電流が流出することとなる。いま図一8(a) において補助サイリスタの片方の接続点MM’を(b) のように分離して接続変更したとすれぽ,Cの逆充電 は平滑用リアクトルL,による定電流性のため五で 行われることとなり,線電流波高値は五以上になる ことはあり得ない。この考え方に基づいて回路を構成 すれぽ図一9(a)のようになり,これは従来から専ら 自励式インバータの一つとして用いられてきたサイリ スタブリッジと一致する。このサイリスタブリッジの 始動を円滑にし,かつ制御角が小さい領域での動作をC T、T、 T、 T, T、 T,≧°° a C →五 1 εα6c宏 ふ1 C 1 C ∼→εb、b e・
P
T《 T,t T6 T〔 T≦ T5 eabふ1
(a) C c ↑↑£。 Ld=oo T, T‘ T6 T6 Tf T5 T5 (b) 図一9 回路その3の主回路図 Fig、 g Main circuit diagram of the third circuit. eac↑ Ld <一一 図一10 回路その3の転流時の等価回路 Fig.10 Equivalent circuit of the third circuit at the instant of comm, utation. 確実にするため(b)のように補助電源Eoを挿入する とよい。ti 一トパルスのタイムチャートは回路その 1,その2の場合と同様である。前と同様TA, Tc’オンでTAからTBへ転流する瞬時を考える。等価
回路は図一10のようになる。 1) 制御遅れ角α=一δ(<0)の場合 Cの端子電圧は図示極性へV・とする。現象は次 のようないくつかの段階に分かれる。 (i)ia=五の単流期間, TBがゼロバイアスと なるまで続く。継続期間をtlとすれぽ 一E・−Vc+÷偏1−E・・i・・ C(Eo十「Vc十Em sinδ) (11) 彦1= Idとなり,この時のCの電圧ec(のは次のようにな
る。 ec(tl)=Eo十Em sinδ (12) (ii) ia, ibの重流期間,この現象の開始点を時間 原点に選ぶが時変数は便宜上同じtを用いる。 iα十ib=1ば 一E・+(E・+Em・i・・)+−3/1 ’adt+畷一Em・i・δ+畷 (・3)
i。(0+)・・ ldなる初期条件のもとにこれを解けぽ,’・一・d…ン、差 (・4)
iα(t2)=Oとなる時刻t2におけるCの端子電圧を ec(t2)とすれば,これは次期転流電圧Vcに等しく ec(t・)==・Vc−E・+Em・i・・+〆㍗ (・5) となる。 2) 制御遅れ角がα=δ(>0)で比較的小さい場合 (i) ia ・= ldの単流期間, 継続期間をtlとすれ ぽ前と同様にして次のようになる。 C(Eo十「Vc−Em sinδ) t1= (16) 石 ec(彦1)=Eo−Em sinδ (17) (ii)ia, ibの重流期間, 継続期間をt2とすれ ぽ前と同様にして次のようになる。 ・・(t・)−V…E・−Em・i・δ+〆吾L (・8) 3)α=δでia=五の単流期間がちょうどなくな りTB, T1がオンした瞬時からia, ibの重流が 始まる場合 t1 == Oとなる。一 Eo−Vc==−Em sinδより Vc= Em sinδ一Eo となる。一方, ・・(t・)−Vc−E・−Em・i・・+〆吾ん ==−Vc+↓/吾L ∴孔一一e/喜M
(19) (20) となり,この時の制御角δは次のようになる。 Em・i・δ一E・一÷、/存∴、一≡+封㍗ (2・)
Em 4)・in−1{伝丁尾・」/E’。}<・なる場合昭和54年12月 山梨大学工学部研究報告 第30号 孔=現十E励sinδ 耽=1弘
@ 鴇竃
@ 品厚
12 一τrエdれ鷲宴
@ (†庖ア ゾ Em−E。 コ δ=o° 1 δ=90° →十δ叶庖
δ=sin−1 Em 図一11 回路その3の制御角と転流電圧の関係 Fig.11 Relationship between control angle and commutation voltage at the case of third circuit. iα十ib=ld −E・−Vc+−r−∫g i.dt+畷 一一Em・i・・+Z・豊 (22) i・(0+)=Idなる初期条件のもとにこれを解けぽ, i._1、C。,±__E・・i・ijLE・−V・.,i。_⊆ v/21C i/ 21C ,/−iit’ (23) iα(t2)=0とすれぽ 彦2=1/2tc tan−1(1d/A) (24) ただし,Aニ(Em sinδ一Eo−V,)/v’ 21/Cとする。 ld ・5A一定一〇一整流器
一、一’、一、X−、・・一一ttインバータ 計算値〃
国30 田 腰 選20 恒10
XXN
\}N 一90° −60° −30° 0° 30° 60° 90° α(負),γ(負) α(正),γ(正) 図一12 回路その1における制御角一直流電圧特性 Fig.12 control angle vs・Dc voltage char− acteristics at the case of first circuit. (a) e・(・・)・==一路才∫:九●鵡+躍 ×(vlα2+・42一4) これが次期転流電圧となるので,‥鵡∀吾(i/…+A・ −A)
この式を整理すると次のようになる。 (一丁〆喜・・y γc= Em S輌nδ一Eo 以上をまとめれぽ図一11のようになる。3・実験結果
(25) 3・1回路その1 線間電圧50Hz,42V, C ・20μF,1=146μH, Cd=100 μF(電解),Rd ・= 100 9とした。サイリスタブリッジ の直流側電圧Edと制御角の関係を示せぽ図一12の ようになる。太線は計算値を示す。制御進み角γ=0 近傍の小領域,αニ0近傍の制御遅れ角負の小領域内 においては,転流電圧の確立不十分で転流失敗を招来 (b) (c) 図一13α=−30°の時の直流電圧,交流電圧・ 電流および転流コンデンサ電圧の波形 Fig.13 Wave forms of Dc voltage, AC voltage and current, and commut・ ating capacitor voltage at the case ofα=:−300. するが,これら小領域を除けぽ満足な動作が得られ る。α>O,γ>0の動作は普通のサイリスタブリッジ と変わらない。図一13にα・=・−30°の時の波形例を示す。(a)は直 流電圧edを示し,強制転流により高い電圧の相から 低い電圧の相へ乗り移っていることがわかる。(b)は 印加星形相電圧と流入電流の関係を示し,電流が30° 進んでいることを知る。(c)は転流コンデンサの端子 電圧波形である。図一14にγ=−30°の時の波形例を 示す。(a)は直流電圧edであるが同じく強制転流に より高い電圧の相から低い電圧の相へ乗り移ってい る。(b)は印加星形相電圧に逆らって30°遅れの電流 がブリッジより流出していることを示す。(c)は転流 コンデンサの端子電圧波形である。強制転流域におい ては120°通電形電流波の端部に急峻な衝撃電流波の 重畳されているのを見る。これは転流コンデンサの極 性反転時の電流である。 3・2 回路その2 交流電圧100V,1=100μH, C=20μF, rニ7Ω, SR は断面積4・8cm2,飽和磁束密度0・95wb/m2の角形 飽和鉄心へ36+36回の巻線を施して用いた。いま,制 御遅れ角α=−60°,Id=20A, Emsinδ=122.5v, vc (a) (b) (c) 図一14γ=−30°の時の直流電圧,交流電圧・ 電流および転流コンデンサの電圧波形 Fig.14 wave forms of Dc voltage, Ac voltage and current, and commut・ ating capacitor voltage at the case of γ=:_300. § .5 140 120 100 80 60 40 20 0 一20’ −40 −60 一一W0 ・−100 −120 図一15 n/i‘(SR, rなり ∼l
I∼
t , ’200 400 600 t(μs) \、、 1 ∫ i∫\i、(SR, rなし> 1∫ 、ノ 回路その1,その2におけるスパイク 電流波形の比較(α=一一 60°,1d=20A, 計算結果) Fig.15 Comparison of spike current wave form between the first circuit and the second circuit (calculated result)・ 図一16 スパイク電流波形例(α=−30°・1d= 5A,0.5msec/div) Fig・16 An:exampleこof spike current wave form. ≒Emsinδ+rld=262・5Vの場合の電流波形と,同一 転流電圧下でSR, rのない回路その1の場合の電流 波形とを比較して示せぽ図一15のようである。ただし 図は計算結果である。実測結果の一例を図一16に示 す。これはα=−30°,1d =5Aの時のもので横軸は 0.5msec/divである。 3・3 回路その3 線間電圧50V, C = 4ptF,1=180μH とした。図一17 にa=−60°,1d=6Aの時の波形例を示す。(a)は 直流電圧eel,(b)は星形相電圧と流入電流の関係を示 す。図一18にγ=一・60°,Id=6Aの時の波形例を示 す。(a)は直流電圧ed,(b)は星形相電圧とブリッジ よりの流出電流の関係を示す。回路その1,その2の 場合の電流に比し,波形端部の急峻な衝撃電流のなく昭和54年12月 山梨大学工学部研究報告 第30号 (a) (b) 図一17α=−60°,1d=6Aの時の直流電圧お よび交流電圧・電流波形 Fi9.17 Wave forms of DC voltage, and AC voltage and current at the case ofα=−600, Id=6A. なっているのがわかる。また補助電源の挿入により制 御角0近傍の動作も確実に行うことができた。 4.む す び 主電流通路内にサイリスタ2個のみが存在し,制御 角正負全域にまたがっての整流器動作やインバータ動 作が可能なサイリスタブリッジについて検討してき た。解析は三相ブリッジについて行ったが,単相の場 合についてもほぼ同様に扱うことができる。 回路その1から始まって線路流出のスパイク電流を 抑圧するための工夫を重ねていったところ,結局回路 その3に到達した。これは従来から単に自励式インバ ータとしてのみ用いられてきたものの一つである。し たがってこのサイリスタブリッジが制御遅れ角正負全 域での制御整流器動作や,制御進み角正負全域での制 御インー〈・一タ動作が可能なブリッジであり,従来全く 用いられてこなかった分野にまで動作範囲を拡張しう るものであることを改めて理論的にも実験的にも証明 することができ,新たな可能性を付与することができ たと言える。 直列ダイオード方式サイリスタブリッジにあって は,サイリスタ,ダイオード共に主電流が流れるので (a) (b) 図一18 γ=−60°・Id=6Aの時の直流電圧およ び交流電圧・電流波形 Fig.18 wave forms of Dc voltage・and AC voltage and current at the case of γ==_600, 1〔1=6A. 同一容量を必要とするのに対し,回路その3において は,補助サイリスタは転流の目的のみに用いられるの で小容量のものでたり,かつ転流コンデンサの数が直 列ダイオード方式の場合の半分ですむことも有利な点 の一つである。 皮相力率改善の見地から遅進制御の組合わせブリヅ ジ等サイリスタブリッジの応用2)として,直列ダイオ ード方式サイリスタブリッジの採用が多く考えられて きたが,今後これに代わるブリッジとして回路その3 のサイリスタブリッジが広く活用されるのではなかろ うかと考えられる。 最後に本研究に当たり実験に御協力いただいた滝, 中瀬,桑原,岸本,溝田の各氏に感謝する。