持続可能性教育 (Sustainability Education) の展望
持続可能性教育(Sustainability Education)の展望
九里 徳泰
(工学部環境工学科)Ⅰ.環境教育とその歴史
1. 「環境教育」の誕生 Environmental education という用語は 1948 年の国際自然 保護連合(International Union of the Conservation of Nature and Natural Resources ɆIUCN)の設立総会で、トマス・プリ チャード(Thomas Pritchard) により「環境教育」の言葉 が初めて用いられたといわれる1)。 しかし、それ以前から生物学者、都市計画家、教育者である パトリック・ゲディス(Patrick Geddes)により「自然学習」 (Nature Study)という概念が育まれ、その実践が行われてき た。その概念は、<教育―環境>の関連性を理解し、自身の研 究を生物学から社会学へと発展した結果として結実したもので あり、のちに「自然学習」実践はスコットランドの首都エディ ンバラの展望塔で行われた。ゲディスが「環境教育の父」と言 われる所以でもある2)。アメリカにおいても、19世紀後半より、 自然教育、野外教育、環境保全教育が行われ、後の環境教育へ の礎となる。 2.「環境教育」の定義 1970 年、アメリカでは世界に先駆けて環境教育法(The Environmental Education Act)を公布した国となったが、環境 教育は次のように定義された。 「環境教育とは人間を取り巻く自然及び人為環境と人間との 関係を取り上げ、その中で人口、汚染、自然の配分と枯渇、自 然保護、運輪、技術、都市や田舎の開発などが、人間環境に対 してどのようなかかわりを持つかを理解させるプロセスであ る」3)。 自然と人間の関係性及びその影響理解ということに重きが置 かれている。 1972 年に開かれた、国連人間環境会議での宣言第 19 項で環 境教育は「個人、企業および地域社会が環境を保護向上するよ う、その考えを啓発し、『責任ある行動』をとるための基盤を拡 げるに必須のものである」4)としている。責任ある行動を各主 体に求め、学校という教育現場だけでなく、個人や企業におい て行われるべき教育という視点がすでにこの時期に盛り込まれ ている。背景としては、地球的な産業公害の発生があるが、こ の会議が現代の環境教育へつながる原点であるといってもいい。 日本の環境教育の定義は、文部省(当時)の「環境教育指導 資料(小学校編)」(1992)において、次のようにされた。 「環境教育とは、環境や環境問題に関心・知識をもち、人間 活動と環境との関わりについての総合的な理解と認識の上にた って、環境の保全に配慮した望ましい働きかけのできる技能や 思考力、判断力を身につけ、よりよい環境の創造活動に主体的 に参加し環境への責任ある行動がとれる態度を育成することで ある」5)。 これは、国連人間環境会議や後述する 1970 年代のベオグラ ード憲章、トビリシ勧告という国際情勢を踏まえての定義づけ であるが、最終的には教育により単なる知識を得るだけの教育 ではなく、「責任ある行動」(Responsible Environmental Behavior)を育むものであるということに注目したい。 1997 年の「環境白書平成 9 年度版」では以下のように、環境 教育の説明がなされている。 「環境教育・環境学習の目指すところは、まず、今日の環境 の状況を認識し、環境問題がエネルギーの消費等人間の経済活 動や日常的な活動に由来しているという人間と環境とのかかわ りを理解し、社会全体の生活様式や経済活動の変革の必要性を 学ぶことである。そして、その上で、これを単なる環境に係る 知識の習得にとどめるのではなく、習得した知識を踏まえて、 自らの行動と環境とのかかわりを常に意識し、可能な限り環境 に負荷を与えない生活を実践していく能力(環境リテラシ一)を 養成することである。」6) ここでも主体的な環境負荷低減型生活態度の実践が謳われて いる。 3.環境教育を取り巻く国際的な動向 「環境教育」という言葉は、1948 年の国際自然保護連合 (IUCN)の設立総会で初めて使われた。環境教育という言葉を 定義する上で、また環境教育を概念的理解するために重要な国 際的な宣言や提言を以下に列挙する。 環境教育における概念的基礎となるものは、1975 年のベオグ ラード憲章である。ベオグラード憲章(表-1)は、30 年以上も 前のものであるが、個人の意識改革、行動と責任といったこと まで明記され、非公的教育部門においては、労働者、経営者、 意思決定者といった行政や企業組織においても環境教育が行われるべきであると指摘している。これは企業における環境教育 実践への最初の具体的な指摘である。また、環境教育の包括指 針として「環境教育は、環境を全体として考えるべきで、自然 環境、人工環境、生態学、政治、経済、技術、社会、法律、文 化、倫理にわたること」7)としており、その包括的なアプロー チは単なる自然保護教育ではなく、全ての教育と人間生活に関 わるものであると指摘している。この憲章は、日本の環境教育 の指針も使われ、優れた環境教育目標であると環境教育研究に おいては評価されている。 表-1「ベオグラード憲章」環境教育のゴール、 教育の達成目標の 6 段階、教育対象8) <環境教育の目標(ゴール)> 環境教育の目標(ゴール):環境とその関連する問題に気づき、 関心を持つと共に、現在の問題解決や新しい問題を防止するた めに、個々にまたは集団でそのための知識、技術、態度、意欲、 関わりなどを目的達成のために意識的、意図的に働く住民を世 界中に育てることである。 <環境教育の 6 つの目標段階> 1.関心:全環境とそれにかかわる問題に対する関心と感受性を 身につけること。 2.知識:全環境とそれにかかわる問題および人間の環境に対す る厳しい責任や使命についての基本的な理解を身につけること。 3.態度:社会的価値や環境に対する強い感受性、環境の保護と 改善に積極的に参加する意欲などを身につけること。 4.技能:環境問題を解決するための技能を身につけること。 5.評価能力:環境状況の測定や、教育のプログラムを生態学的、 政治的、経済的、社会的、美的、その他の教育的見地にたって 評価できること。 6.参加:環境問題を解決するための行動を確実にするために、 環境問題に関する責任と事態の緊急性についての認識を深める こと。 <教育対象> 1.公的教育部門―学齢未満、初級(小学校)、中等学校(中学 校)、高等教育学生(高校生や大学生)、同様にトレーニングお よび再トレーニング中の教師、環境専門家を含むこと。 2.非公的教育部門―環境の領域にあるか無いかを問わず若い 人と大人、個々に、または集団の全ての住民、例えば家族、労 働者、経営者、意思決定者を含んでいること。 1980 年に、IUCN(国際自然保護連合)が、UNEP(国連環 境計画)、WWF(世界自然保護基金)と共同で世界環境保全戦 略(World Conservation Strategy)を発表し環境教育に関して も触れられている。 「人間が自然界と調和しつつ幸せに生き延びていくためには、 人間だけでなく、植物と動物を含めた新しい倫理が人間社会に 要求される。環境教育の任務は、この新しい倫理に適応する心 構えと態度を育み強化することである。」9) とされ、この戦略 の中で、「持続可能な開発(sustainable development)」という 概念が国際的に提起された。 「持続可能な開発(sustainable development)」という概念 は、「人間にとって必要な事柄を満たし、人間生活の質を改善す るために生物圏を改変し、人的、資金的、生物的、非生物的資 源を利用するうえで、将来の世代の二一ズと願望を満たす潜在 能力を維持しつつ、現在の世代に最大の持続的な便益をもたら すような人間の生物圏利用の管理」10)(筆者訳)である。開発 の世代間公平性(将来起こる問題)、地域間公平性(南北国際格 差の問題)を考慮しながら環境保全(管理)を行うという概念 で、現在の持続可能性の考えかたの原型となった。 世界環境保全戦略以降の国際的な会議における環境教育に関 わる指摘を以下(表-2)にまとめる。 表-2 世界環境保全戦略以降の国際的な会議における 環境教育に関わる指摘 1987 年 国連・環境と開発に関する世界委員会 国の役割として、「国民の意識啓発や環境教育の普及」が必要で あり、「企業活動の展開に当たっては地域や地球環境への配慮を 徹底する」(Our Common Future「地球の未来を守るために」11)
) 1992 年 地球サミット 「アジェンダ 21」で環境教育は持続可能な社会の実現を可能と するための方法の一つとして「教育、意識啓発及び訓練の推進」 として明記され、「教育は持続可能な開発を推進し、環境と開発 の問題に対処する市民の能力を高める上で重要である。」と記さ れており、さらに、「教育はまた、持続可能な開発にそった環境 および倫理上の意識、価値と態度、そして技法と行動様式を達 成するために不可欠である」12)としている。 1997 年 テサロニキ宣言 「環境教育は今日までトビリシ環境教育政府間会議の勧告の枠 内で発展し、進化して、アジェンダ 21 や他の主要な国連会議で 議論されるようなグローバルな問題を幅広く取り上げてきてお り、持続可能性のための教育としても扱われ続けてきた。この ことから環境教育を『環境と持続可能性のための教育 (Education for Sustainble Developmeny=ESD)』と表現して もかまわないといえる」 、「持続可能性のための教育は、持続 可能な未来を達成するための手段として考えられ、人口、貧困、 環境劣化、民主主義、人権と平和、開発と相互依存などの概念 に関係して、統合するようなものとして捉えられた」、「持続可 能性のための教育という広い概念発展においては、環境教育の 経験から多くのことを学ぶことができると認識された」13)。
ベオグラード憲章は、環境教育の行動計画としては今でも有 効であるが、各国で十分な検討がなされていないことが指摘す ることができる。また、テサロニキ宣言では、環境教育は「環 境と持続可能な開発のための教育=Education for Sustainable Development (ESD)」であると国際的に提言され、環境教育は この 50 年の間に、環境問題解決の教育的手段から、持続可能な 社会を達成するための手段となる「環境と持続可能な開発のた めの教育」として南北問題や貧困、環境問題など、途上国と先 進国との関係から生じる問題の解決に向けて、あらゆる人の参 加と行動を促す教育、つまり「開発教育」など様々な教育が ESD に統合されてきている。その主体及び範囲は、決して学校教育 だけではなく、企業や社会といった主体における環境教育も国 際的に歴史的に謳われてきたということを理解することは重要 なことである。 4.日本における環境教育の成立過程 1950 年、1960 年代に日本の各地で起こった公害に対応する 形で、「公害教育」が日本では行われてきた。同時に、自然環境 破壊が各地に広がるとともに「自然保護教育」が行われてきた。 1970 年代中頃になると、公害対策が進み産業型公害の鎮静化と ともに、公害教育と自然保護教育が「環境教育」へと統合され てゆく。しかし、各種企業による公害対策が行われた事実はあ るものの、1988 年の「公害は終わった」という国の喧伝により、 公害教育が衰退し、公害教育が「知識として」の教育化が成さ れてしまう。 1980 年代に入ると、環境教育の必要性についての認識が高ま り、1985 年東京で世界環境教育会議が行われた。これは国内の さまざまな環境教育実践を一同に会して世界に発信する試みで、 この会議により日本型の「環境教育」へと統合が行われた。 環境庁は 1986 年、「環境教育懇談会」を設置し、a.情報、教 材等の充実、b.環境教育活動のための拠点の整備、c.民間活動の 支援体制の整備・充実、指導者の育成、d.ネットワークの形成・ 整備を行った14)。 1993 年、公害対策基本法と自然環境保全法を統合し、環境教 育の規定も含まれた環境基本法が公布された。1992 年にブラジ ルのリオで開かれた地球サミットにおいて環境教育の重要性が 議論され、宣言に盛り込まれたことを受けている。 環境基本法では、「今日の環境問題を解決するためには、経済 社会システムやライフスタイルを環境への負荷の少ないものと へと変革していく必要がある」15)という考え方のもと、第 25 条で以下のように規定しており、日本においての環境教育・環 境学習が法制度上、初めて位置づけられたものである。 国は、環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに環境の 保全に関する広報活動の充実により事業者及び国民が環境の 保全についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保 全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要 な措置を講ずるものとする。(環境基本法第25条)16) 1994 年の環境基本計画では、「持続可能な生活様式や経済シ ステムの実現のために環境保全に関する教育及び学習を推進す ること」17)を定めた。また、学校における環境教育の重要性、 社会教育その他、多様な場における環境教育・環境学習、広報 の充実について述べられている。 1998 年の中央環境審議会の「持続可能な経済社会構築を目指 した環境教育・環境学習の推進方策について」で環境教育は以 下のように指摘された。a 環境教育・環境学習に関するこれまで の施策は、ライフスタイルの変革という観点からの政策的な方 向づけが、ほとんど行われていなかった。b.これまでの環境教 育・環境学習は、総合性や体系性が不十分で、継続的な実践体 験が十分には位置づけられていない18)。 2003 年には、環境基本法の第 25 条に基づいた、「環境の保 全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律」が具 体的な施策、措置を定めることになった。国民一人ひとりの環 境保全に対する意識・意欲を高め、持続可能な社会づくりにつ なげていくことを目的とし、環境教育を「環境の保全について の理解を深めるために行われる環境の保全に関する教育及び学 習」19)と定義している。この法律では、国・地方自治体・国民・ 民間団体などの責務が定められており、国による基本方針の策 定、学校や地域、職場における環境教育の推進、環境教育にた ずさわる人材の育成などが具体的施策としてあげられているが、 強制力はない推進法である。 2005 年∼2014 年にかけて「国連持続可能な開発のための教 育の 10 年」が制定された。これは、持続可能な開発の実現に必 要な教育への取り組みと国際協力を、積極的に推進するよう各 国政府に働きかける国連のキャンペーンで、2002 年に南アフリ カで開催されたヨハネスブルグサミット(持続可能な開発に関 する世界首脳会議)で、日本の市民と政府が共同提案し、第 57 回国連総会で実施が決議され、2005 年 3 月、国連本部(ニュー ヨーク)にて持続可能な開発のための教育(ESD)の 10 年開始 記念式典が開催され開始された。その根底となる考えは、「持続 可能な開発」で、現在直面する諸問題を解決し、よりよい「持 続可能な社会」をつくるため、社会的公正の実現や自然環境と の共生を重視した「サステナビリティ=持続可能性」という新 しい「開発」概念、それは民主的で誰もが参加できる社会制度 と、社会や環境への影響を考慮した経済制度を保障し、個々の 文化の独自性を尊重しながら、人権の擁護、平和の構築、異文 化理解の推進、健康の増進、自然資源の維持、災害の防止、貧 困の軽減、企業責任の促進などを通じて、公正で豊かな未来を 創る営みとしての「開発」のための教育である。その教育の範 囲は図−1であり環境教育だけでなく様々な教育を統合してい るものであり、持続可能性という概念のもと現在でもその統合 は続いている。
図-1 持続可能な開発のための教育(ESD)の教育要素20)
Ⅱ.企業における環境教育
本章では環境教育の非公的教育部門における企業がどのよう な環境教育を企業内で行ってきたかを概観・検証し、未来の環 境教育を展望する。 1.公害対策から企業内環境教育へ 企業は、1960 年代より公害防止の観点から企業内における公 害防止管理及び教育を行ってきた。また 1980 年年代半ばより、 地球環境破壊の現状が世界的に注目されることとなり<地域の 環境問題>公害とともに、<地球規模の環境問題>地球環境問 題へと企業対応が拡張してゆき、企業における環境影響調査、 環境管理が始まり、公害対策教育とともにリテラシー(一般教 養)としての環境教育が企業において実践され始められる。ま た、1996 年の ISO14001 発効により、企業の環境管理は本格的 なものとなり、認証取得をした企業はその要求事項「4.4.2 訓練、 自覚及び能力」により企業における環境影響側面(リテラシー も含む)に関する環境教育の定期的な実践が求められることと なる。その中身は、従業員全員が日常業務において必要とされ る一般的な環境経営に関する知識を習得する「一般教育」と各 職能における具体的な環境取り組みのために必要な知識を習得 する「専門教育」、業務別に行われる「部門別教育」、役職別に 行われる「階層別教育」に大別できる。 2.企業内環境教育から CSR 教育へ 企業における経営は、21 世紀に入り環境経営から CSR 経営 へと変化してゆく。CSR 経営とは、企業の多様なステイクホル ダー認識、要求のもとに行われる企業活動で、「企業活動のプロ セスに社会的公正性や倫理性、環境や人権などへの配慮を組み 込み、ステイクホルダーに対してアカウンタビリティを果たし ていくこと」(谷本 2006)21)とすると、これに呼応した企業内 教育が必要となる。そこでは、ステイクホルダーの確定から必 要な教育プログラムとシステムの準備というプロセスを踏む。 CSR 教育内容は、網羅すると以下となる。環境教育、法令順 守(コンプライアンス、腐敗防止)、情報セキュリティ、各種ハ ラスメント、消費者保護、労働安全衛生、人権、地域投資・地 域貢献、CSR 入門等。現在では、2010 年に発行した ISO26000 (表−3)が CSR の世界的ガイダンスとなり、その指標が世界 標準となった。 表-3 ISO26000 規格の概要22) CSR 教育はエコ・バリュー(環境配慮価値)、ソーシャル・ バリュー(社会貢献価値)を高める教育であると同時に、企業 価値を高めるものであるとともに、プロアクティブ(先手を打 つ)な企業リスクマネジメント教育でもあり、企業戦略の側面 が色濃い。しかし、企業の行う事業とその影響範囲とそれに呼 応して行う CSR 活動の関連性、連動性、因果関係をしっかり把 握しないと、最近マネーロンダリングならぬグリーンウオッシ ュとして「広告としての比較的安価な CSR」となってしまう可 能性がある。 リコーにおいては、CSR と事業の継続性を図−2のように整 理している。特徴的なのは、企業価値向上にとどまらず、「持続 可能な社会構築」への参与を最終目的としているところである。 つまり、現代企業は、各種ステイクホルダーとともに CSR を含 む企業活動による企業価値向上も求めるが、長期的視野では持 続可能な社会構築という目的、ビジョンをもっているという点 㪎䈧䈱ේೣ ⺑⽿છ ㅘᕈ ୶ℂ⊛䈭ⴕേ 䉴䊁䊷䉪䊖䊦䉻䊷䈱ኂ䈱ዅ㊀ ᴺ䈱ᡰ㈩䈱ዅ㊀ ᴺ䈱ᡰ㈩䈱ዅ㊀ ࿖㓙ⴕേⷙ▸䈱ዅ㊀ ੱᮭ䈱ዅ㊀ 㪎䈧䈱ਛᩭਥ㗴 ⚵❱⛔ᴦ ੱᮭ ഭᘠⴕ ⅣႺ ᱜ䈭ᬺጁⴕ ᶖ⾌⠪⺖㗴 䉮䊚䊠䊆䊁䉞ෳ↹䈶㐿⊒ 䋷䈧䈱ⷙᩰ᭴ᚑ ╙㪈㗄䋺ㆡ↪▸࿐ ╙㪉㗄䋺↪⺆䈶ቯ⟵ ╙㪊㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱ℂ⸃ ╙㪋㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱ේೣ ╙㪌㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱⼂䈶䉴䊁䊷䉪䊖䊦䉻䊷䉣䊮䉭䊷䉳䊜䊮䊃 ╙㪍㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱ਛᩭਥ㗴䈮㑐䈜䉎ᚻᒁ ╙㪎㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䉕⚵❱ో䈮⛔ว䈜䉎䈢䉄䈱ᚻᒁ 㪎䈧䈱ේೣ ⺑⽿છ ㅘᕈ ୶ℂ⊛䈭ⴕേ 䉴䊁䊷䉪䊖䊦䉻䊷䈱ኂ䈱ዅ㊀ ᴺ䈱ᡰ㈩䈱ዅ㊀ ᴺ䈱ᡰ㈩䈱ዅ㊀ ࿖㓙ⴕേⷙ▸䈱ዅ㊀ ੱᮭ䈱ዅ㊀ 㪎䈧䈱ਛᩭਥ㗴 ⚵❱⛔ᴦ ੱᮭ ഭᘠⴕ ⅣႺ ᱜ䈭ᬺጁⴕ ᶖ⾌⠪⺖㗴 䉮䊚䊠䊆䊁䉞ෳ↹䈶㐿⊒ 䋷䈧䈱ⷙᩰ᭴ᚑ ╙㪈㗄䋺ㆡ↪▸࿐ ╙㪉㗄䋺↪⺆䈶ቯ⟵ ╙㪊㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱ℂ⸃ ╙㪋㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱ේೣ ╙㪌㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱⼂䈶䉴䊁䊷䉪䊖䊦䉻䊷䉣䊮䉭䊷䉳䊜䊮䊃 ╙㪍㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䈱ਛᩭਥ㗴䈮㑐䈜䉎ᚻᒁ ╙㪎㗄䋺␠ળ⊛⽿છ䉕⚵❱ో䈮⛔ว䈜䉎䈢䉄䈱ᚻᒁである。大手企業のいくつかは、持続可能な社会構築というビ ジョンをすでに持ち出している。つまり、企業は CSR を踏み台 にし、さらにはそれを飛び越え、事業活動そのものへの社会性 の組み込みという現象となっている。持続可能な社会の大きな 構成要素であり影響圏の強大な企業が、社会変革組織として「持 続可能企業=サステイナブルカンパニー」へと変容してきてい るとも言える。図−2の中の企業が活動する上で配慮すること の空白の縦の矢印には任意の問題が入ることを考慮したい。 図-2 リコーにおける CSR 事業の関連性と目標23) 3.CSR 教育から持続可能性教育への変化の可能性 企業の CSR 教育とそれに至る背景をみてきたが、CSR 教育 を超える、持続可能性教育の事例はまだ少ない。しかし、企業 が CSR 経営を追求し、持続可能な社会構築のための持続可能な 企業へと変革する過程では、自ら CSR 経営は、統合された持続 可能性経営(サステイナブルマネジメント)へと変革して行く と考えられる。つまり、その過程で企業内教育も持続可能性を 鑑みた教育へと変容してゆくのは必至である。CSR 経営の末に 企業が長期ビジョンで達成しようとしている「持続可能な社会」 を前提とした企業経営は持続可能性経営(サステイナブルマネ ジメント)といえるであろう。企業の社会への影響圏の拡大と その責任領域の拡大は今も続いている。 このような背景から、社会においても、もちろん企業におい ても新しい経営スタイルと教育が当然求められてくる。 米国においては、1992 年のアジェンダ 21 のフォローアップ として大統領諮問機関(PCSD:President Council for Sustainable Development)が設置され、産業界・NGO・政府 機関・研究機関など幅広い分野の人々が集まり、ワーキンググ ループを設置し、持続可能な開発に向けての提言作りを行って いる。同機関により 1994 年に「持続可能性のための教育」の行 動計画が策定された。ユネスコによる 1997 年のテサロニキ会議 (International Conference on Environment and Society)の タイトルは Education and Public Awareness for
Sustainability とされ、環境教育が EfS(Education for
Sustainability)へ取り込まれる。
2002 年 8 月 「持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハ ネスブルグサミット)」で日本が「ESD (Education for Sustainable Development)の 10 年」を提言、実施文書に盛り 込まれた「国連・持続可能な開発のための教育 10 年計画」のも と、ESD が進められている。その教育領域は平和教育、ジェン ダー教育、開発教育、多文化共生教育、人権教育、環境教育、 福祉教育など多岐にわたる。 ESD は、多面的なものの見方やコミュニケーション能力など の「育みたい力」、参加型学習や合意形成などの「学習手法」、 そして共生や人間の尊厳といった「価値観」などで結ばれてい て、単なる教授科目だけが ESD ではなく、目標、方法、価値観 が ESD 教育であるといえる。 これらの ESD 科目は、小学校∼高校においては、総合的学習 の時間で任意に取りいれられ、社会・生涯教育においては地域 ESD によりその教育が行われている。大学教育においても国立 大学を始めサステナビリティ研究の大学院が創設され研究、実 践がされだしている。学校や社会における教育は、人間の能力 を引き出すことであり、よりよく生きるためのものであり、未 来社会を作りあげる“礎”である。現在の喫急な環境、社会問題を 乗り越え、持続可能な社会を目指す1つの手段が教育であると いえる。 一部の企業は、学校や社会における教育目標と同じ目標<持 続可能な社会構築>を持って企業活動を展開しだしている。そ れはすべてのセクターにおける持続可能な社会構築への模索と 教育であるといえる。このような状況において、影響力のある 大手企業が目先の営利追求という短期的な意思決定だけを取る とはおおよそ思われず、企業環境変化及びその認識、またステ イクホルダー要求により、持続可能な開発を前提とした企業内 教育への変遷が起こると考えられる。
Ⅲ.持続可能性教育の展望
社会・環境問題の出現とそれによる社会環境変化、及び様々 な教育領域の影響を受け、環境教育は新たな方向へ歩みを続け ている。その新しい教育が持続可能性のための教育(Education for Sustainability=EfS)である。 1992 年の地球サミットにおいて採択された「アジェンダ 21」 の中で、「教育が持続可能な開発にとって欠かすことはできな い」24)と書かれ ESD(Education for SustainableDevelopment)という言葉が初めて登場する。また、1997 年の テサロニキ宣言では、Education and Public Awareness for Sustainability が提示され、環境教育が EfS の一部として取り 込まれた。
テサロニキ宣言においての EfS とは、生涯にわたる教育プロ セスであり、それは、市民の力を持って新たなる問題に対し積 極的に参画するものである25)。それには、問題解決能力、自然
科学・社会科学の知識、責任ある個人のそして組織への行動を 促すものであり、環境および経済的な反映を確かにするもので ある、としている26)。
21 世紀において学校・社会環境教育と企業内環境教育は持続 可能な社会構築という 1 つの大きなゴールに向かって新しい環 境教育、ESD(Education for Sustainable Development)、EfS (Education for Sustainability)を経て、持続可能性教育 (Sustainability Education)へ統合されつつあるというのが本 論の発展的構成としての展望である(図-3)。 図-3 持続可能性教育に統合される各主体における環境教育 以下は、未来の教育としての持続可能性教育像のアウトライ ンである。 統合された、持続可能性教育は3つの E システム(3E system)を持つ。 ① 環境 Environment ② 経済 Economy ③ 公正(社会) Equity この要素にはサブシステムが存在する。これらシステム同士 の相互関係を理解するには「システム思考」が重要となる。 また、このような教育を達成するためには、最善の情報に基 づいた責任ある行動(Responsible Environmental Behavior) をとるための方法を市民に提供する必要性がある。 持続可能性教育には6つのテーマがある。 ① 生涯学習 lifelong learning 学習とは学校教育、学校教育外において一生行われる、途切 れない(シークエンスな)過程である。 ②学際的アプローチ Interdisciplinary approaches 人間と環境との相関性と相互依存性を理解することが持続可 能性教育では不可欠であり、それらの要素には、地球規模の社 会−地政学法則、生物・物理化学、人間社会経済システムなど を含んでいる。持続可能性が総合的思考を育む教育的アプロー チとなる。 ③システム思考 Systems thinking 持続可能性について学習することで、統合されたシステムア プローチを発展させる機会を提供する。 ④パートナーシップ Partnerships 持続可能性教育を推進していくためには地域と教育セクター、 企業との結びつきが大切である。 ⑤多文化的視野 Multicultural perspectives 持続可能性を成し遂げるためには、多様な文化的見解や問題 解決方法の理解が不可欠である。 ⑥能力を与える Empowerment 上記の 6 つのテーマは個人や団体が持続可能性を実現する能 力となる。 以上のような教育を達成するための教育者としての課題は3 つである。 ①階層的な複雑性に関する考え方に向き合わなければならない ことに気づくこと。 ②複雑性の考え方を自分たちの生活や地域社会に応用する中で、 理解に関する技能を身に付けること。 ③「気づき」の重要性。世界をこれらの新しい持続可能な視点 で見たのはいつか、それはどのようにしてであったかを理解す ること。この変容に導いた出来事、あるいはプロセスがなんで あったか、を同じ経験をしたものと話合い交流する。共有化さ れた経験を基に、教育を受ける側が「気づき」の体験ができる ように教えたり、経験させたり、その意味を理解し深く考える ような自発的な「気づき」を体験させる。 さらに、持続可能性教育の5つの学習領域 (経済・環境・社 会の要素)は以下となる。 ①未来についての考察、未来へ影響をあたえること ②持続可能な地域社会の設計 ③自然資源の管理 ④安定した経済 ⑤グローバリゼーション これら 5 つの領域を経験すると、個人的、地域レベルの行動 へと駆り立てられるような、持続可能性の全体像を見ることが できる。 また、持続可能性教育においては、以下の要素が重要となる。 ①複雑な環境、経済、社会システムの深い理解 ②持続可能な世界において上記のシステムの関連性の重要さ ③さまざまな考え方や、文化、人種、宗教、倫理、地域、世代 間の差から起こる複雑な問題の解釈を尊重する。 このような教育を達成するということは、現在の社会におけ る支配的なパラダイム(大量生産・大量消費・大量廃棄型社会 システム)から新しい環境パラダイムへの転換である6)。そして、 持続可能性という行動原理による新しい社会制度形成の大きな 社会システム変革を意味している。 環境教育においては、学校・社会 VS 企業での環境教育のジ レンマがほどけ、「持続可能な社会構築」という大きな社会目的
により「持続可能性教育」という形をとり、さらに力を持った 市民が、自然・社会科学の学際知識及び多文化を理解する感性 を持ち、パートナーシップのもとシークエンス化された教育・ 文化・社会のもとに統合が行われる可能性が出てきたというこ とを意味している。 [引用文献] 1)阿部治「環境教育の課題」『小学校教員のための環境教育ガイ ドブック』日本ユネスコ協会連盟,1992 年 2)安藤聡彦『都市のナチュラリスト・ゲディス ― <人間−環 境>系のライフヒストリー分析試論 ―』一橋大大学,1998 年 3)United States of America,The National Environmental Education. Act of 1970 (P. L. 91-516), 1970
4)United Nations, Declaration of the United Nations Conference on the Human Environment,1972
5)文部省『環境教育指導資料(小学校編)』1992 年 6)環境省『環境白書平成 9 年度版』1997 年
7)UNESCO, The Belgrade Charter A Global Framework for Environmental Education, 1975
8) 7) 同掲書
9)IUCN-UNEP-WWF,World Conservation Strategy,1980 10) 9) 同掲書
11)環境と開発に関する世界委員会編, 大来佐武郎監修, 環境庁 国際環境問題研究会訳「地球の未来を守るために」福武書 店,1987 年
12)United Nations,Agenda 21,1992
13)UNESCO-International Conference Environment and Society, Education and Public Awareness for Sustainability, Thessaloniki,1997 14)環境庁『環境教育懇談会報告―「みんなで築くよりよい環 境」』1988 年 15)環境基本法,1993 年 16) 15)同掲書 17)環境基本計画,1994 年 18)環境省中央環境審議会『中央環境審議会企画政策部会環境教 育小委員会中間取りまとめ骨子』1998 年 19)環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関す る法律,2003 年 20)持続可能な開発のための教育 10 年推進会議編『国連持続可 能な開発のための教育 10 年キックオフ!』持続可能な開発のた めの教育 10 年推進会議,2005 年 21)谷本寛治『CSR―企業と社会を考える』NTT 出版,2006 年 22)青木修三(2010)「ISO26000 発行へ─ 持続可能な社会の構築 を求めて」『サステイナブルマネジメント」10-1,環境経営学会 23)リコー『社会責任経営報告書 2007』2008 年 24)United Nations,Agenda 21,1992 25)朝岡幸彦「持続可能な社会に向けた環境教育の戦略と社会教 育の役割」『日本社会教育学会紀要』No38,pp144-145,2002 年 26)UNESCO-International Conference Environment and Society, Education and Public Awareness for Sustainability, Thessaloniki, 1997
27)シュネイバーグ,A.・グールド,A.K.満田久義訳『環境と社会』 ミネルヴァ書房,1999 年