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<活動報告>精神科病棟における退院前訪問を実践して見えてきた看護 利用統計を見る

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29 Yamanashi Nursing Journal Vol.16 No.2 (2018)

活動報告

精神科病棟における退院前訪問を実践して見えてきた看護

大門 恵美

DAIMON Emi

Ⅰ.はじめに

山梨大学医学部附属病院(以下,当院)の精神科病棟は, 病床数 40 床の開放病棟である。主な疾患としては気分 障害が多く,長期入院を要する患者の中には,支援者の いない独居生活を送る患者や,介護支援導入を必要とす る患者も少なくない。そのため,当院の精神科病棟では, 平成 26 年より患者の地域生活移行の支援を目的に退院 前訪問を導入した。退院前訪問を行い,実際の自宅での 生活環境を確認することは,退院後の生活を見据えた準 備を行う上で効果的である。イメージだけではなく,患 者が自宅でどのような環境の中で生活し,どのようなこ とに不自由さを感じているかを,実際看護師が目で見て 確認することができる。そして,患者・家族と退院前訪 問を振り返りながら,病院における退院指導が具体的と なり,個別性のある支援内容を考えることに繋げられる。 現在,当院の精神科病棟で実践している,退院前訪問 の取り組みについて報告する。

Ⅱ.退院前訪問の実績(表 1)

1. 退院前訪問した期間:平成 26 年 5 月~平成 29 年 10 月 2. 訪問件数:52 件 3. 訪問患者の性別・年齢 男性 9 名,女性 43 名の計 52 名であった。年齢は平均 68.0 歳(±12.7 歳) 4. 退院前訪問に関わるスタッフ 看護師・精神保健福祉士(以下,PSW)・精神科医師・ ケアマネージャー・訪問看護師・ヘルパー・福祉相談支 援センター・デイサービスの職員・介護用品担当者等が, 退院前訪問の時間に合わせて,自宅での生活環境を一緒 に確認している。 地域支援者と自宅でカンファレンスを行うケースや, 患者の住んでいる自宅だけでなく,退院後に患者が入所 する施設へ患者・家族に同行し,施設見学や施設の方よ り説明を受けた症例もある。入所前に,施設の確認がで きることは,患者・家族にとっても安心に繋がっている。

Ⅲ.退院前訪問フローチャートについて

以下に退院前訪問の流れをフローチャートに沿って説 明する。(図1) 1. 退院前訪問に関する情報収集(表 2) 2. 毎週火曜日のカンファレンスでは,在院日数が 30 日 を 超 え て い る 患 者 に つ い て, 医 師・ 看 護 師・ PSW の合同カンファレンスを実施する。 3. カンファレンスで,退院前訪問が必要と判断され た患者へ訪問制度について説明する。 4. 同意が得られた場合,PSW と訪問の日程調整を実 施する。 5. 訪問前に,患者・家族から訪問同意書と,事前の 情報を得るためにチェックリスト(表 3)を用いて情 報収集をする。 6. 訪問実施した内容については,看護記録に残し多 職種で共有し,カンファレンス等で,退院後の支 援内容について検討をする。

Ⅳ.退院前訪問の実際と課題

1. 入院前生活の情報収集について 入院時の情報収集では,65 歳以上の患者に対して, 介護認定取得の確認を行っている。介護認定を受けてい る場合には,介護度や現在受けている支援,担当ケアマ ネージャーの確認をしている。また,精神保健福祉手帳 や障害者手帳の確認も行っている。退院を見据えた情報 収集としては,退院後の生活の場や,家族がどの程度支 援できるかを確認している。しかし,精神科では在院日 数が長期となる患者もおり,退院調整を始めた時点で介 護認定初回 6 ヶ月または,2 回目以降の更新期限 1 年が 過ぎ,医師の意見書等も必要となるため,退院調整に時 間を要したケースもある。調整がスムーズに行えるため には,更新期限の確認や定期的な情報更新を行っていく 必要がある。 2. 退院前訪問カンファレンスについて カンファレンスでは,入院 30 日を経過した患者を対 象に,退院前訪問の必要性について検討している。しか 受理日:2018 年 1 月 19 日 山梨大学医学部附属病院看護部:University of Yamanashi Hospital, Nursing Department

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大門 恵美

30 Yamanashi Nursing Journal Vol.16 No.2 (2018)

表 1 退院前訪問の実績 期間:H26 年 5 月~ H29 年 10 月 訪問件数:52 件(男性 9 名・女性 43 名) 平均年齢:68.0 歳(±12.7 歳) 自宅カンファレンス:9 件 退院前訪問フローチャート 入院時に退院前訪問に関する情報収集 入院30日経過 退院前訪問カンファレンス(看護師・医師・PSW) 退院前訪問が必要と判断した患者へ訪問制度について説明 患者・家族に「退院前訪問の同意書」を用いて説明(可能であれば医師も同席) チェックリストを用いて, 事前情報収集 PSWへ連絡, 日程調整 看護師長に報告 患者・家族の同意が得られない・不明な場合 訪問に際し, 医師と対応検討 記録に残し, 多職種で共有 退院前訪問実施 患者・家族の同意が得られた 図1 退院前訪問の流れ 表 2 退院前訪問に関する情報収集 1.基本情報 1)65 歳以上の患者は,介護認定を取得しているかを確認する。 2)介護認定を受けている場合は,介護度と現在受けている支 援やケアマネージャーを確認する。 3)精神保健福祉手帳の有無と障害者手帳の有無を確認する。 4)退院後の生活の場を,医師や患者または家族に確認する。 5)家族に対して,面会の頻度を確認する。 2.初期カンファレンス 1)推定入院期間と退院先を明らかにする。 2)家族の理解や協力体制を明らかにする。 3)介護保険や手帳等の申請の必要性を検討する。 3.退院前訪問カンファレンス 1)退院後の生活を具体的に検討する。 2)介護保険や手帳等の申請の必要性を再検討する。 3)PSW 介入の必要性の有無(今後の社会資源等)を検討する。 4)就労支援施設やデイサービス等の見学や導入を検討する。 5)退院前訪問フローチャートに従って支援する。 ・ 入院時より,退院生活を見据えた情報収集を行い,必要な支援が受け られているのか,退院が決まってから困らないように準備をする。 表 3 退院前訪問チェックリスト チェック項目 1.医療 注意サインの把握・悪化時の対処方法・困った時の連絡先・ 病院への連絡手段・通院の手段・外来受診・薬の管理(本人・ 家族)・コンプライアンス・訪問看護の参加・訪問看護師と の連絡・訪問介護・デイサービスの利用 2.生活 火の始末・戸締り・光熱費の手続き・お風呂の準備,入浴・ 住居周辺の環境(店・散歩)・洗濯機の操作,洗濯・掃除・ 片付け・ゴミ出し 3.人間関係 同居している家族・家族との関係・キーパーソン・家族の 健康状態・近所の人との関係・友人との関係 4.食事 料理・炊飯器の使用・ガスの使用・電子レンジの使用・宅 配サービスの利用・レトルト・冷凍食品の使用・弁当やお 惣菜の利用,購入 5.お金 治療費・食費・交通費・その他の生活費・金銭管理 6.QOL 仕事,作業所など・趣味,楽しみ・話し相手・淋しいとき の対処方法 ・ 退院前訪問の前にあらかじめ,患者や家族よりチェックリストを基に 情報収集を行い,訪問時の観察視点をピックアップする。

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精神科病棟での退院前訪問の実践と看護

31 Yamanashi Nursing Journal Vol.16 No.2 (2018) し,入院 30 日前後の患者の場合,まだ治療期間中で退 院まではしばらく期間を要するという判断から,すぐに 退院前訪問の検討に入れていないのが現状である。患者 一人一人の退院前訪問の目的を明らかにして,どの時点 で訪問することが効果的であるか検討することも必要で ある。 3. 退院前訪問の時期について ほとんどの患者は,退院日が設定されてから検討され ることが多い。退院日は,具体的ではなく,例えば何月 の何週目など,退院まではある程度,退院を検討する期 間はある。しかし,介護認定等が必要な患者であれば, 手続きにも時間を要すため,早めの対応が必要である。 4. 退院前訪問の同意について 退院前訪問を実施するには,患者・家族の同意がなけ れば実施することはできない。今まで実施した退院前訪 問では,独居生活を送る患者を看る事のできない家族が 心配し希望されるケースでは,退院前訪問の同意がス ムーズであった。しかし,医療者が自宅に訪問すること に抵抗を示す患者・家族はまだまだ多いため,退院前訪 問の必要性について,退院後外来で診ていく医師と一緒 に説明することも効果的と考える。 5. 退院前訪問の日程調整について 日程調整は,患者・家族に訪問希望日時を複数日決め てもらい,PSW と希望日時で日程調整を行っている。 主な調整は,訪問する多職種への連絡や訪問車の手配で ある。多職種が訪問する場合には,日程調整を早めにす る必要がある。 6. 退院前訪問の実施について 退院前訪問は,多職種で確認しサポートできるために, 2 名以上で訪問している。患者は訪問時間に外泊または 外出を行い,訪問中に自宅で生活できる調整と,支援者 がいる場合には家族に同席を依頼している。 訪問時間は 1 時間~ 2 時間程度で,自宅での生活状況 や自宅周辺の環境を確認している。また,地域支援者と 自宅の環境を確認しながら,カンファレンスを行うケー スも増えてきている。

Ⅴ.考察

1. 早期退院前訪問の必要性 4 年間の退院前訪問は,すべてが入院後期の退院を検 討し始めた時期に行っている。しかし,実際退院前訪問 で,自宅に出向くと入院中には見られない,患者が一人 で家事を行っている姿であり,入院中の環境が退院を見 据えたものではないと感じている。スタッフより訪問報 告を受け,患者が自宅で過ごす姿は,入院中の患者には 想像できない行動範囲で,段差があっても誰の手も借り ずに生活している患者を,もっと早い段階で知る必要性 を感じた。 2. 退院前訪問を行なったことでの学び 患者が高齢であること,薬剤中心の治療を行っている 中では,転倒リスクが高いと判断し,入院中安全に生活 できるための配慮として,離床センサー等を活用するこ とも少なくない。患者中心の看護ではなく,医療者側を 配慮した対応とも取れてしまう。 試験外泊する患者の中から,「外泊中に 2 回転倒して しまった。」と,報告を受けることもある。入院中,転ば ないように早めにキャッチする対応ではなく,転んでも 危険がないような環境を整えることが,医療者がいなく なった自宅での生活を見据えた看護であり,必要なこと ではないかと考える。 3. 精神科退院前訪問指導料の算定 入院中の患者が円滑な退院が行えるため,自宅等に訪 問し当該患者又はその家族等に対して,退院後の療養上 の指導を行った場合に,当該入院中 3 回(入院期間が 6 ヵ 月を超えると見込まれる患者にあっては,当該入院中 6 回)に限り算定することができる。訪問制度を活用しな がら,入院中の生活環境を検討するために,入院早期の 訪問は効果的であると考える。 退院前訪問で確認できた情報が,入院早期に把握でき ていれば,入院中の環境調整や,退院後の必要なサービ ス・申請等の検討がスムーズに行えると考える。

Ⅵ.今後の課題

1. 患者・家族に訪問制度について説明し,退院を見 据えた看護が行えるように,入院早期より退院前 訪問を計画していく。 2. 入院中の患者の生活環境を整え,日課の中に,病 棟内で実践できる運動療法の機会を作る。 3. 退院前訪問による地域連携の機会を増やしていく。

Ⅶ.おわりに

地域連携を行う上で,退院サマリーによる紙面の情報 提供だけでは,地域に戻った患者を支援する他職種への 情報提供には伝えきれない現状がある。退院前訪問とい う手段で,これからも地域で支援する他職種との連携を 図りながら,患者の生活の質向上を目指し,個別性を考 えた支援ができる取り組みを実践していきたい。

表 1 退院前訪問の実績 期間:H26 年 5 月~ H29 年 10 月 訪問件数:52 件(男性 9 名・女性 43 名) 平均年齢:68.0 歳(±12.7 歳) 自宅カンファレンス:9 件 退院前訪問フローチャート 入院時に退院前訪問に関する情報収集 入院30日経過 退院前訪問カンファレンス(看護師・医師・PSW) 退院前訪問が必要と判断した患者へ訪問制度について説明 患者・家族に「退院前訪問の同意書」を用いて説明(可能であれば医師も同席) チェックリストを用いて, 事前情報収集 PSWへ連絡, 日

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