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退職所得に該当する「打切支給の退職金」

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判例研究

退職所得に該当する﹁打切支給の退職金﹂

はじめに 一事案の概要 一一事実関係 三当事者の主張 1請求人︵X︶の主張 2原処分庁︵Y︶の主張 四裁決の要巳目 五評釈 1﹁打切支給の退職金﹂に係る過去の裁決事例 2﹁打切支給の退職金﹂に係る過去の裁判例 ︵1︶五年定年制事件 ︵2︶一〇年定年制事件 3所得税基本通達三〇1一と三〇1二の構図 むすびにかえて∼法政策論的な視点を含めて

村耕治

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)106 国税不服審判所平成一五年六月二五日裁決・裁決事例集六五集一八一頁︹タインズJ六五ー二−二二︺ ︹要旨︺勤務先から、専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支給された一時金は、いわゆる ﹁打切支給の退職金﹂であり、所得税基本通達三〇1二︵三︶に定める役員の分掌変更等により変更後の報酬 が激減した者や職務の内容・地位が激変した者に対して変更前の勤続期問に係る退職金に当たり、退職所得に 該当するとし、請求人の主張を容認した事例 ︹参照条文︺所得税法二八条・三〇条一項・同条二項、所得税基本通達三〇1一・三〇1二︵三︶

はじめに

所得税法において、退職所得とは、退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける給与及びこれらの性質を有 する給与をいう︵所得税法三〇条一項︶。通例、退職時までの勤務に基づき使用者から支払われる一時の給与がこれに 当てはまる。したがって、退職時に、使用者以外の者から支払われる一時の給与は、厳密にいうと、この定義に当ては まらない。しかし、所得税法は、国民年金法、私学共済組合法など社会保険制度や退職金共済制度に基づく一時金など も、過去の勤務に基づいて支給されること及びその保険料の一部を使用者が負担していることなどを理由に﹁みなし退

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職手当﹂とし、,退職所得として課税することにしている︵所得税法三一条・所得税法施行令七二条︶。 わが国の退職金制度は、生涯雇用や年功序列賃金の考え方を基礎に形成されたものである。その支払が退職時に一機 に支給されることや退職後の生活保障の意味合いなどを勘案して、担税力調整や平準化の方法による税負担の軽減措置 を講じている。具体的には、退職所得は、給与所得︵所得税法二八条︶とは異なり、分離課税の対象となっており︵所 得税法二二条一項︶、その年中の退職手当等の収入金額から退職控除額を差し引いた残額の二分の一が課税の対象とさ れる︵所得税法三〇条二項︶。 退職所得に当てはまるためには、一般に、次の三つの要件を満たすように求められる。①退職すなわち勤務関係の終 了という事実によって初めて支給されるものであること。②退職時までの継続的な勤務に対する報償ないしその期間の 労務の対価の一部の後払いの性格を有すること。そして、③一時金として支払われること︵最高裁昭和五八年九月九日 判決・民集三七巻七号九六二頁参照︶。 今日、わが国の雇用関係が、まさに﹁身分から契約へ﹂大きくシフトしてくるに伴い、雇用形態もますます多様化し かつ流動化してきている。こうした流れのなか、成果主義を徹底するために、これまでの生涯雇用から定期雇用契約制 度を移行する企業も少なくない。また、退職金制度を廃止する企業や、退職一時金から年金制に移行する企業もある。 企業によっては、こうした制度移行に際して、過去の勤務期間に応じて退職金を精算のうえ支給を行っている。この場 合、支給される一時金は、退職所得に当たるのかどうかが問われてくる︵日高大開﹃退職給付制度の改廃等をめぐる税 務﹄︹二〇〇五年、大蔵財務協会︺二一七頁参照︶。なぜならば、先に触れたように、勤務関係の終了という事実がない 場合に支給する一時金は、原則として退職所得の要件に当てはまらないからである。

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)108 もっとも、この点について、所得税法は、引き続き勤務する者に一時金を支給する場合であっても、−それを支給する ことに合理的な理由があるときには、﹁これらの性質を有する給与﹂として、退職所得として取扱うことにしている。 例えば、使用人が役員になった場合に使用人であった期間につき支給する退職金が、典型である︵大阪高裁昭和五四年 二月二八日判決・訟務月報二五巻六号一六九九頁︶。この種の一時金は、一般には、﹁打切支給の退職金﹂と呼ばれる。 ︵﹁打切支給の退職金﹂について詳しくは、注解所得税法研究会編﹃注解所得税法︵四訂版︶﹄︹二〇〇五年、大蔵財務協 会︺五四八頁参照︶。 所得税基本通達は、﹁打切支給の退職金﹂に当たる例として、次のような退職手当等をあげている︵三〇ー二︵一︶∼ ︵六︶︶。 ︵一︶新たに退職給与規程を制定し又は相当の理由のより従来の退職給与規程を改正した場合における改正前の勤続

期間に係る退職手当等

︵二︶使用人から役員になった者に対してその使用人であった勤続期間に係る退職手当等 ︵三︶役員の分掌変更等により変更後の報酬が激減︵おおむね五〇パーセント以上の減少︶した者や職務の内容・地

位が激変した者に対して変更前の勤続期間に係る退職手当等

︵四︶定年に達した後引き続き勤務する使用人に対し定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等 ︵五︶労働協約等を改定して定年延長を行った場合における旧定年に達する前の勤続期間に係る退職手当等 ︵六︶法人が解散した場合において引き続き役員又は使用人として清算事務に従事する使用人に対して解散前の勤続

期間に係る退職手当等

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今回評釈する裁決事例︵国税不服審判所平成一五年六月二五日裁決・裁決事例集六五集一八一頁︹タインズJ六五− 二−二二︺︶は、受給した一時金が前記所得税基本通達三〇ー二の要件を満たす﹁打切支給の退職金﹂に当たるのかど うかを争ったものである。本件において、審査請求人は、勤務先から専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労 金とし耐時金の支給を受けたが、これを﹁給与所得﹂とする税務署長の主張を受け入れず、﹁打切支給の退職金﹂、すな わち﹁退職所得﹂に当たるとして争った。国税不服審判所は、請求人の主張を認め、支給された一時金は、前記所得税 基本通達三〇1二の︵三︶に定める﹁役員の分掌変更等により変更後の報酬が激減した者や職務の内容・地位が激変し た者に対して変更前の勤続期間に係る退職手当等﹂に当たり、退職所得に該当するとの裁決を下した。本裁決は、所得 税基本通達三〇ー二の︵三︶の具体的適用を例証する上で、数少ない先例の一つである。

事案の概要

本件は、審査請求人Xに対し勤務先から役員退職慰労金として支給された一時金が﹁給与所得と退職所得のいずれに 該当するかを争点とする事案である。 Xは、平成一二年分の所得税について、確定申告書に総所得金額︵給与所得の金額︶二五、三五九、九九〇円、還付 金の額に相当する税額○○○○円と記載して法定申告期限までに申告をした。その後、Xは、給与所得として申告した うちの退職慰労金相当額は退職所得に該当するとして、平成一三年一一月一四日に総所得金額︵給与所得の金額︶を

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白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)110 一六、八四七、九九〇円、退職所得の金額を三、○八○、○○○円及び還付金の額に相当する税額を二、八七四、 〇三九円とすべき旨の更正の請求をした。 これに対して、原処分庁Yは、平成一四年四月三〇日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分︵以下﹁本件通知処 分﹂︶をした。Xは、この処分を不服として、平成一四年六月二七日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年 九月二七日付で棄却の異議決定をした。その後、Xは、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成一四年 一〇月二五日に審査請求をした。

二事実関係

本件において、以下の事実は、請求人X及び原処分庁Yの双方に争いがなく、国税不服審判所の調査の結果によって も、その事実が認められる。 ︵1︶Xの勤務先であったA株式会社︵以下﹁A社﹂︶は、平成一二年一〇月一日に株式会社B︵以下﹁B社﹂︶及び株 式会社C︵以下﹁C社﹂。A社及びB社と併せて﹁合併三社﹂︶と合併︵以下﹁本件合併﹂︶し、商号をD株式会社 ︵以下﹁D社﹂︶に変更した。 ︵2︶合併三社が平成一二年七月一四日に締結した合併契約書の概要は次のとおりである。 ・合併三社は、対等の精神で合併する。ただし、法手続上、A社を存続会社とし、B社及びC社は、解散する。

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・合併期日は、平成一二年一〇月一日とする。 ・A社は、合併によりD社と商号変更し、本店所在地をP市に変更する。 ・合併三社のそれぞれの取締役及び監査役は、合併期日の前日をもって退任し、退任する取締役及び監査役に対し て、合併期日の前日までの期間を計算期間とする退職慰労金を、合併三社それぞれの臨時株主総会の決議により

支払う。

︵3︶平成一二年八月二五日のA社の臨時株主総会において、取締役及び監査役に対する役員退職慰労金の支払が決議 され、同日の取締役会において、その支払金額等については、役員退職慰労金内規等に基づき、代表取締役社長に

一任した。

︵4︶D社は、平成一二年一一月八日に、Xに対し役員退職慰労金八、九六〇、OOO円︵以下﹁本件一時金﹂︶を支 給したが、その際、本件一時金は賞与に該当するとして、給与所得としての源泉徴収をした。 ︵5︶Xは、E銀行などの金融機関に勤務後、平成五年一〇月にA社に入社し、平成六年六月に専務取締役に就任、平 成一二年九月三〇日に同職を退任し、同年一〇月二日にD社の代表取締役に就任した。

三当事者の主張

本件通知処分をめぐる当事者の主張の骨子は、各々、次のとおりである。

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)112 1請求人︵X︶の主張 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消を求める。 ︵1︶本件一時金は、次の理由から退職所得に該当する。 ・本件一時金は、A社を含む三社が合併することに伴い、従業員退職給与規程の廃止による打切り支給と平灰を一 にして、役員退職慰労金内規に沿って計算された退職慰労金が臨時株主総会の決議に基づき打切り支給されたも

のであること。

・本件一時金は、合併に伴う事業計画の一環として退職金制度を廃止することに伴い支給されたものであり、その 支給に至る経緯から、打切り支給に相当の理由があると考えられること。 ︵2︶本件一時金に対する給与所得としての課税は、次の理由から課税の公平を損なうものである。 ・同じ状況での従業員に対する打切り支給は、退職所得として取り扱われており、オーナーではない役員と従業員 とを区別する課税上の必要性はないと認められる。 ・法人が解散した時の役員で清算人となった者や引き続き監査役として勤務する者に対し、その解散前の勤続期間 に係るものとして解散時に支給された退職金は、実質的に退職したと同様の事情があると認められるかどうかの 判定なしに、一律に退職所得として取り扱われている。 ・退職所得課税の趣旨からして、本件一時金を退職所得として課税することは、不当に課税の公平を欠くとは認め られず、むしろ、給与所得としての課税は、課税の公平を欠くものである。

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2原処分庁︵Y︶の主張 原処分庁Yは、次の理由により、原処分は適法であるとし、審査請求を棄却する、との裁決を求める。 ︵1︶法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に支給した給与については、その支給が、例えば、 常勤役員が非常勤役員になったこと、分掌変更等の後における報酬が激減したことなどで、その職務の内容又はそ の地位が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められるものである場合には、退職により一時に受け る給与等に該当すると解されている。 ︵2︶Xは、本件合併による役員改選により、合併における存続会社の専務取締役から、合併後の法人の代表取締役に 就任したのであり、このことは、役員に再任されただけであって、また当該役員の改選により、常勤役員から非常 勤役員に選任される等、実質的に退職したと同様の事情にあるとは認められない。したがって、本件一時金は、退 職に基因して一時に受ける給与等には該当せず、XのA社の役員としての地位に基づき一時に受ける給与に該当す るから、給与所得として課税することが相当である。したがって、Xの主張には理由がない。 ︵3︶以上のことから、Xの総所得金額︵給与所得の金額︶は、二五、三五九、九九〇円となり、この金額は、Xが確 定申告書に記載した金額と同額であるから、本件一時金が退職所得に該当するとされた平成一二年分所得税の更正 の請求に対して、その更正をすべき理由がないとして行われた本件通知処分は適法である。

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)114

四裁決の要旨

国税不服審判所が下した裁決の骨子は、次のとおりである。 ︵1︶法令等の解釈 本件の争点は、請求人が勤務先から支給された本件一時金は、給与所得と退職所得のいずれに該当するかである。 所得税法上、退職所得が給与所得に比し優遇されている趣旨は、一般に、退職を原因として一時に支給される金員は、 その内容において、退職者が長期間特定の事業所等において勤務したことに対する報償及びその期間中の就労に対する 対価の一部分の累積たる性質をもつとともに、その機能において、受給者の退職後の生活を保障し、多くの場合、いわ ゆる老後の生活の糧となるものであるため、他の一般の給与所得と同様に、一律に累進税率による課税の対象とし、一 時に高額の所得税を課することとしたのでは、公正を欠き、かつ、社会政策的にも妥当しない結果を生ずることになる から、かかる結果を避けるためであると解される。 そして、所得税法第三〇条第一項に規定する退職により一時に受ける給与とは、①退職すなわち勤務関係の終了とい う事実によって初めて給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払い の性質を有すること、③一時金として支払われることの三要件が必要である。 また、同項に規定する﹁これらの性質を有する給与﹂に当たるというためには、当該金員が定年延長又は退職年金制 度の採用等の合理的な理由による退職金支給制度の実質的改変により清算の必要があって支給されるものであるとか、 あるいは、当該勤務の性質、内容、労働条件等において、重大な変動があって、形式的には継続している勤務関係が実

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質的には単なる従前の勤務関係の延長とはみられないなどの特別の事実関係があることを要するものと解される。 したがって、引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするものを定めた所得税基本通達三〇1二の取扱 いは、退職所得課税の趣旨等に照らし合理性が認められ、当審判所においても相当と認められる。 ︵2︶認定事実 X提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。 ・A社の平成二年六月一四日付﹁第三二回定時株主総会招集ご通知﹂に添付の営業報告書によれば、同社の代表 取締役は同社の創業者であるFであり、同年三月三一日現在の同社の大株主は、有限会社G︵持株比率二一二・一 %︶、F︵同一七・五%︶、A社従業員持株会︵同一〇・三%︶、H︵同九・三%︶1︵同五・八%︶及びE銀行 ︵同一・九%︶等であった。なお、Fは、有限会社Gの代表取締役を兼務していた。 ・A社の平成一二年六月二二日付﹁第三三回定時株主総会招集ご通知﹂に添付の営業報告書には、①同社は、同年 二月二九日よりJ株式会社︵以下﹁﹂社﹂という。︶の傘下に入ることとなったこと、②同社は、同月二八日を 払込期日として、割当先を﹂社として第三者割当増資を実施したこと、③A社の第一位株主であった有限会社G、 第二位株主であったF及び第四位株主であったHは、それぞれ、その所有株式の全株を﹂社に譲渡したこと及び ③﹂社は、同年三月三一現在において、A社の発行済株式総数の六一・一%を保有していた旨の記載がある。 ・B社の平成一二年六月九日付﹁第七二期定時株主総会招集ご通知﹂に添付の営業報告書等によれば、B社及びC 社においても、﹂社が平成一一年三月までには両社の発行済株式総数の過半数をそれぞれ取得したことにより、 ﹂社の傘下に入ったことが認められる。

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白鴫法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)116 ・D社が○○財務局長に提出した平成一二年四月一日から平成=二年三月三一日までの事業年度の有価証券報告書 によれば、平成一三年三月三一日現在において、﹂社は、D社の発行済株式総数の五七・九%を所有していた。 ・A社の平成一二年六月一三日付﹁第三三回定時株主総会招集ご通知﹂に添付の営業報告書には、同社におけるX の役職は専務取締役であり、その担当又は主な職業は全般統轄兼秘書室長である旨の記載がある。 ・D社の平成一二年一〇月二日開催の取締役会議事録には、同取締役会において、①代表取締役にXが選任された こと、②役付取締役として、会長にL、社長にMが選任されたこと、③執行役員として、最高執行役員にM、執 行役員にNほか二名が選任された旨の記載があり、また、同社の経営方針・計画・企画経営関係の決裁権限一覧 表によれば、決裁権者は社長又は取締役会、審議は執行役員会であり、代表取締役は報告を受けるのみであるこ

とが認められる。

・Xは、平成二二年六月のD社の定時株主総会において役員を退任しており、その退任に当たっては退職一時金等

の支給を受けていない。

・Xが平成一二年分の所得税の確定申告書に記載した同年分の給与所得に係る収入金額二八、四八四、二〇〇円の 内訳は、本件一時金八、九六〇、○○○円並びにA社及びD社からの役員報酬一九、五二四、二〇〇円であり、 それぞれの源泉徴収税額は三、一三六、○○○円及び三、〇二九、一三九円である。 ︵3︶以上の事実から、本件について判断すると、次のとおりである。 ・A社は、法律の形式上は本件合併後において存続する法人であるが、本件合併は、J社の傘下に入った合併三社 が整理統合されたものであって、A社も実質的には被合併法人と同一視されるものであると認めるのが相当であ

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る。 ・また、Xは、本件合併の合併期日の前日をもってA社を退職し、合併期日の前日までの勤務に対する報償として、 A社の役員退職慰労金内規等に基づく一時金として、D社から本件一時金の支給を受けたものと認められる。 ・そして、Xの場合、A社の専務取締役から本件合併の存続法人であるD社の代表取締役に就任しているので、原 処分庁Yが主張するように、形式的には継続していると見られる勤務関係ではあるが、上記の各事実のとおり、 実質的には、J社の傘下に入った合併三社の整理統合としての本件合併に伴う一時的かつ形式的な代表取締役へ の就任であって、請求人の勤務の性質、内容に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とはみられない 特別の事実関係があるものと認めるのが相当である。 ・そうすると、Xの場合は、所得税基本通達三〇1二の︵三︶に定めるその職務の内容又はその地位が激変した者 に該当し、上記のとおり、XがA社の専務取締役であった勤続期間に係る役員退職慰労金として支払われたもの と認められる本件一時金は、退職所得に該当すると判断するのが相当である。したがって、Yの主張には理由が ない。

五評釈

今回評釈の対象にした裁決において、請求人Xは、代表取締役ではあるが、社長や専務等の役職にはない。会長や社

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)118 長には他の取締役が就任し、職務内容に重大な変動があった。このことから、単なる従前の勤務関係の延長とは認めら れないと判断された。すなわち、所得税基本通達三〇1二︵三︶の定めるところに従い、その職務の内容又はその地位 が激変した者に当たるとされた。このことから、国税不服審判所は、原処分庁Yの主張を認めず、Xの請求を認め、専 務取締役であった勤続期間の係る役員退職慰労金として支払われた一時金を退職所得と判断したわけである。 このように、本件裁決は、﹁打切支給の退職手当﹂が退職所得と認められるためには、必ずしも当該手当を支給した 事業体からの受給者の完全な離脱が前提ではないことを確認している。むしろ、完全に離脱していないとしても、単な る従前の勤務関係の延長ではなく、当該手当が支給されたのは、職務内容や地位の激変などが理由であることを立証で きれば認められる、との判断を示したことに意義がある。 ちなみに、裁決は、原処分庁Yを拘束するので、Yは裁決に不服であっても、裁判所に訴えを提起することはできな い。したがって、Xの請求は容認され、本件は確定を見た。 ﹁打切支給の退職金﹂が所得税法上の退職所得にあたるのかどうかについては、これまでも争われてきている。数は 限られているが、すでにいくつかの裁決や判例がある。これらの先例はいずれも、雇用が今日ほど多様かつ流動的では なかった時代のものである。以下に、点検して見る。 1﹁打切支給の退職金﹂に係る過去の裁決事例 その一つは、満五年ごとの支給される退職金名義で支給された金員についての裁決である︵昭和五九年二月一日裁決. 裁集二七集七八頁タインズJ二七−二10五︶。本件において、請求人は、雇用後満五年目ごとに退職金を支給する

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旨の退職金支給規程を定め、これに従って使用人に対して退職金名義の金員を支払っていた。本件における退職金支給 規程は、労使が合意のうえ定められた。こうした支給規程を必要とした背景には、昭和四〇年代に中小企業の倒産によ り退職金を支払わずに使用人を解雇する事例が相次いだことがあった。本件において請求人は、使用人に満五年ごとに 雇用期間満了による退職金名義の金員を支給しており、その受領後まもなく実際に退職した者については退職所得とし て取扱うように主張した。本件裁決において、国税不服審判所は、請求人︵雇用主︶と受給者︵使用人︶との間で雇用 関係を従前どおり維持していることなどの事実から、退職金ではなく、給与所得たる賞与に当たり、その金員を受給後 まもなく退職の事実が生じても、これを遡及して退職所得とすることはできないとの判断を下した。 この裁決において、国税不服審判所は、﹁打切支給の退職金﹂が退職所得と認められるためには、﹁退職﹂という受給 者が当該手当を支給した事業体からの完全な離脱が前提となっていなければならない旨の“原理主義”を貫いたといえ る。そして、本件においては、退職金の支給がそうした完全な離脱が前提となっていない事実を根拠に、請求人の申立 てを認めなかった。 2﹁打切支給の退職金﹂に係る過去の裁判例 一方、﹁打切支給の退職金﹂に関する裁判例としては、 ︵1︶五年定年制事件 一つは、使用人は勤続五年ごとに退職し、 二つの最高裁判例がある。 再就職の希望者は引き続き雇用することになっている場合において、五年

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)120 ごとに退職金名義で支払われる金員についての判断である︵以下﹁五年定年制事件﹂︶。本件においては、第一審判決 ︵東京地裁昭和五一年一〇月六日判決・訟務月報二二巻一一号二六四八頁︶、控訴審判決︵東京高裁昭和五三年三月二八 日判決・行集二九巻三号三六四頁︶、さらには最高裁判決︵最高裁昭和五八年九月九日判決・民集三七巻七号九六二頁︶ はそろって、給与所得に当たるとした。 この五年定年制事件において、最高裁は、所得税法に定める﹁退職手当、一時恩給その他の退職により一時に受ける 給与﹂︵所得税法三〇条一項︶に当たるかどうかについて、①退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて 給付されること、②従来の継続的な勤務に対する報償ないしその間の労務の対価の一部の後払いの性質を有すること、 及び③一時金として支払われること、の三判断基準を示している。この判断基準に基づき、五年定年制に基づいて支給 した金員は、①の基準を満たしていないことを理由に退職所得に当たらないとした。すなわち、打切支給の退職手当が 退職所得とされるには、受給者の当該手当を支給した事業体からの完全な離脱が前提である旨を明らかにしたものであ る。 ︵2︶一〇年定年制事件 もう一つは、勤続満一〇年定年制を敷く会社において、定年に達した使用人に対して退職金として支給された金員に ついての判断である︵以下﹁一〇年定年制事件﹂︶。 一〇年定年制事件第一審判決では、﹁退職所得というには、原則として雇用契約の終了に伴い支給されるものである ことを要するが、被用者が常に事業主体から完全に離脱し絶縁することを要すると解すべきではなく、引き続き雇用関 係を継続している場合であっても、当該退職金が支給されるに至った経緯など特段の事情があるときは、退職所得優遇

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課税の制度趣旨に照らし、これを税法上の退職所得と認めるべき場合が存する﹂との具体的な判断に当たっての基本的 なスタンスを明らかにしている。その上で、﹁本件のように、勤続満一〇年定年制が就業規則に明記されている以上、 従業員には一〇年に達した後、引き続き雇用されることを会社に要求する当然の権利はなく、再雇用については原則と して会社に選択権があるといわざるを得ないこと、また、右定年制が租税回避の目的で設定されたものではなく、会社 の倒産状態からの再建過程にあって労使双方の一致した意見により採用されたこと等の特殊事情からみて、右勤続満 一〇年定年制に基づく退職は、その後の再雇用のいかんにかかわらず、社会一般通念上も退職の性格を有すると認める のが相当であり、当該金員は所得税法上の退職所得に当たる﹂と判示した︵大阪地裁昭和五二年二月二五日判決・訟務 月報二三巻三号五八一頁。本件判例評釈として、吉良実・民商法雑誌九〇巻五号二二〇頁︹一九八四年︺、品川芳宣・ 商事法務一〇一七号三〇六頁︹一九八四年︺参照︶。 この一〇年定年制事件控訴審判決も、本件第一審の判断を支持して、退職所得に当たるとした︵大阪高裁昭和五三年 一二月二五日判決・行集二九巻二一号二一〇七頁︶。これに対し、最高裁判決では、退職所得といえないとして、大阪 高裁に差し戻した︵最高裁昭和五八年一二月六日判決・訟務月報三〇巻六号一〇六五頁︶。 この一〇年定年制事件において、最高裁は、前記五年定年制事件判決に依拠して、継続的な勤務関係の途中において 退職金名義で支給される金員は、退職所得に当たると認められるには、前記三判断基準を満たす必要があるとした。ま た、課税上、﹁退職により一時に受ける給与﹂として取扱うには、勤務関係が形式的には継続していても、実質的には 従前の勤務関係の延長とはみなされないような新たな雇用契約に基づくものであることをうかがわせるような特段の事 情がなければならないとした。その上で、原審︵控訴審︶で確定した事実関係においては、そうした実質的な事実関係

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)122 があるとはいえないとした。 ちなみに、この一〇年定年制事件最高裁判決では、次のような反対意見が付されている。 ﹁わが国の労働関係が原則とし終身雇用であ︹中略︺る。しかし、終身雇用制にも漸次変化が見られ、能力主義的雇 用関係も芽生えつつあり、とりわけ中小企業においては、一〇年という期間は労働者が同一使用者に雇用される期間と しては必ずしも短いものではなく、三〇年を終身雇用の平均勤務期間とすれば、それを分割し、退職金を一〇年ごとに 精算支給することとすれば、それぞれの企業の労使間の事情に適すれば、税法上もそのままこれを受け容れるべきで、 それを退職金という名の一般給与と見て、年収全体の中に組み入れ累進課税を適用して所得税を課すのは相当ではない。 ︹中略︺したがって、本件係争の退職金名義の金員を所得税法上の退職所得にあたるとした原審の認定判断は正当であ り、︹中略︺本件上告はこれを棄却すべきであると考える。﹂︵前記訟務月報三〇巻六号一〇六五頁、一〇七五頁︶。 このような反対意見は、ますます雇用が多様化しかつ流動化を強めている今日においては正鵠を得ており、先駆的な 見識として評価できる。 なお、この一〇年定年制事件差戻審の大阪高裁は、最高裁の指示に従い、次のような理由を示して、当該金員を給与 所得とした︵大阪高裁昭和五九年五月三一日判決・判例タイムズ五三四号一一五頁︶。 この一〇年﹁定年制の適用により退職金名義の金員を受領した︹中略︺従業員︹中略︺について、その受給後、存続 する勤務関係が従前の勤務関係の延長ではなく、新たな雇用関係に基づくものと認めるに足る根拠はなく、更に右金員 が定年延長、退職年金制度の採用等の合理的理由による退職金支給制度の実質的変革による精算の必要に基づく支給で あるとか、勤務関係の性質、内容、労働条件等において形式的に継続している勤務関係が実質的には単なる従前の勤務

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関係の延長とみられないなどの特段の事情の存在は︹中略︺認めることができない﹂とした。その上で、﹁本件金員は、 勤務関係の継続中における給与であって、退職すなわち勤務関係の終了という事実によって初めて給付されるものでは なく、実質的にみて課税上﹃退職により一時にうける給与﹄と同一に取り扱うことを相当とするものでないといわなけ ればならないから、︹中略︺右金員を給与所得としてなした本件課税処分は適法であ﹂るとして、納税者の訴えを退け た︵前記判例タイムズ五三四号一一五頁、二六頁︶。 3所得税基本通達一一一〇1一と一一一〇ー二の構図 すでに触れたように、﹁退職により一時に受ける給与﹂を、実質的な事実関係において、退職所得と判断する場合の 基準としては、所得税基本通達三〇1二が出されている。 所得税基本通達では、三〇1一︹退職手当等の範囲︺において、退職手当等とは、本来退職しなかったとしたならば 支払われなかったもので、退職したことに基因して一時に支払われることとなった給与をいうと定めている。この三〇1 一は、﹁退職所得﹂と、賞与その他の給与であり﹁給与所得﹂に当たるものとを区分する際の基準を示すことをねらい としたものである。この三〇ー一によれば、支給した一時金が退職所得に認められるには、﹁退職﹂という事業体から 完全に離脱している事実のあることが求められる。 次いで、同三〇1二︹引き続き勤務する者に支払われる給与で退職手当等とするもの︺は、引き続き勤務する役員又 は使用人に対し退職手当等として一時に支払われる給与のうち、その給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計 算上その給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものは、三〇1一にかかわらず、

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)124 退職手当等とすることを定めている。つまり、﹁打切支給の退職金﹂で、退職所得として認められるものの範囲を明ら かにしたものである。 具体的には、三〇1二の︵三︶を取り上げて見てみると、すでに若干触れたように、役員の分掌変更等により、例え ば、常勤役員が非常勤役員︵常時勤務していない者であっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその 法人の経営上主要な地位を占めていると認められるものを除く︶になったこと、分掌変更等の後における報酬が激減 ︵おおむね五〇パーセント以上減少︶したことなどで、その職務の内容又はその地位が激変した者に対し、当該分掌変 更等の前における役員であった勤続期間に係る退職手当等として支払われる給与などをあげている︵高倉明ほか共著 ﹃所得税基本通達逐条解説﹄︹二〇〇四年、大蔵財務協会︺一五四頁参照︶。この所得税基本通達三〇1二︵三︶は、今 回評釈している裁決の判断過程においても典拠として使われたものである。 課税実務上、﹁打切支給の退職金﹂に対する所得税基本通達三〇1一と三〇1二との適用関係が問題になる。この場 合、当該退職金が退職所得に認められるかどうかについては、まず、三〇1二の基準に従い精査することになる。精査 の結果、その適用が認められないとされるときには、三〇1一に従って判断されることになる。 むすびにかえて∼法政策論的な視点を含めて 今回評釈した裁決においては、請求人Xの職務内容に重大な変動があり、単なる従前の勤務関係の延長とは認められ

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ないと判断された。すなわち、所得税基本通達三〇1二︵三︶に定める要件に合致し、﹁退職により一時に受ける給与﹂ に当たると判断された。こめことから、過去の勤続期間の係る役員退職慰労金として支払われた本件一時金は退職所得 とされた。 雇用形態はますます多様かつ流動化してきている。今回評釈した裁決は、ある意味では、こうした時代の流れを織り 込んだ判断ともいえる。今後、増えると思われる﹁打切支給の退職金﹂が退職所得に当たるかどうかを判断する際の新 たな典拠になるといえる。 本件裁決とは事実関係が異なるが、企業が従前からある退職金制度を廃止する場合には、どうであろうか。この場合、 引続き在職する使用人に対する過去の勤続期間に応じて支給する一時金についての課税取扱が問題となる。退職金支給 制度の実質的変革に伴う清算の必要に基づく支給であることからからして、退職金を打ち切り支給する﹁特段に事情﹂ ないし﹁合理的な理由﹂があるケースといえる。したがって、当該一時金は退職所得に当たると見てよいであろう。 ところで、法解釈論を離れ、退職所得のあり方について、少し法政策論的に考えて見たい。 政府税制調査会は、二〇〇五年六月二一日に、報告書﹁個人所得課税に関する論点整理﹂を公表した。この中で、 ﹁退職所得﹂のあり方について、次のように述べている。 ﹁退職所得については、従来から、勤労に起因する報酬である点において給与所得の変形と考えられるものの、それ が一時に支給される点や、老後の生活保障的な所得であること等を考慮し、累進性を緩和する観点から、特別な負担軽 減措置が講じられてきた。 近年においては、前述の雇用形態、就業構造の変化ともあいまって、退職金を支給しない代わりに在勤中の給与を引

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白鴎法学第12巻2号(通巻第26号)(2005)126 き上げる、退職一時金に代えて退職年金を支給するといったように退職金の支給実態は多様化している。 こうした中、退職所得控除は勤続年数二〇年を境に一年当たりの控除額が急増する仕組みとなっており、また、勤務 年数が短期間でも所得の二分の一に課税されるなど、現行制度には必ずしも合理的とは言えない面がある。特に、短期 問勤務に対しても二分の一課税が適用されるという点に関しては、給与を低く抑え、高額の退職金を支払うといった操 作を行うことで、事実上租税回避に使われている側面があることに留意すべきである。 こうした状況を踏まえれば、退職金については、全体として多様な就労選択に対し中立的な制度となるよう課税のあ り方を見直すべきである。 制度の見直しにあたっては、多年にわたって支給されるべきものが一時に集中するとの退職所得の性格に照らして、 引き続き何らかの平準化措置が必要となる。また、重要な人生設計上の期待にも関わる問題となることから、所要の経 過措置も含めた適切な工夫が必要であろう。﹂ この報告書でも触れているように、一般に、課税実務上、過去の勤続期間に応じて支給する一時金についての所得区 分が争われる背景には、退職所得が給与所得より税制上優遇されていることがある。退職金制度は、短期間に雇用し給 与を退職金に転化して支払うことを始めとして、さまざまな節税対策や自社株対策などに利用されたりもする。このた め、節税封じなどの観点から制度改正をすべきであるとの主張がある︵佐藤英明﹁退職所得課税と企業年金課税につい ての覚書﹂碓井ほか編﹃公法学の法と政策︵上︶﹄︹二〇〇〇年、有斐閣︺四一五頁参照︶。 ただ、法政策論的な観点から制度改正を行う場合には精査すべき問題も少なくない。例えば、現行の退職所得課税の 下で、勤続三〇年で二、○○○万円の退職金を受給したとしよう。この場合、所得税と個人住民税とをあわせても、納

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税額は三〇万円程度で済み、手取りは約一、九七〇万円となる。しかし、仮に、退職所得控除が勤続年数にかかわらず 一律三〇万円となり、二分の一の軽課も廃止されたとする。この場合には、所得税と個人住民税をあわせた負担は 二四七万円程度にもなり、手取りは約一、七五三万円に減る。 多様な就労形態に対し課税制度は中立的であるべきことは当然である。しかし、拙速な見直しは、早期退職制度の駆 け込み利用など思わぬ副作用が出かねない。また、伝統的な生涯雇用の下にある退職金受給候補者が退職後の生活原資 を確保できるのかなどを含め、慎重な検討が望まれる。

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