強制転流能力を有する一3相サイリスタブリッジ
数野寛
清弘智昭
(昭和55年8月30日受理)A Certain Thyristor Bridge with Capability of
Forced Commutation
HiroshiKAZUNO NoriakiKIYOHIRO Abstract The series・diode・system thyristor bridge is able to act as a controllable recti丘er and inverter over the whole control angle from positive to negative, and is of practical use. However, it has four semi−conductor elements in the main current path, therefore it is not desirable from view points of loss, voltage regulation and cost. We have been looking for the thyristor bridges which have the same ability and more have only two elements in the main current path. Previously, we showed that a certain thyristor bridge, which had been only using as the self・excited inverter, satisfied this requirement. But it had several disadvantages, namely−the need of starting auxiliary source, and a number of commutating capacitor and auxiliary thyristor. This time, we encountered other thyristor bridge which had a same ability. This needed not a separate auxiliary source and had a small number of commutating capacitor and auxiliary thyristor compared with former. We have analyzed the mechanism of establishing the commut− ating voltage about it and concluded by saying that the commutating voltage is aquired over the whole control angle, and since it has excellent performance, wider applications will be expected.1.まえがき
普通のサイリスタブリッジは自然転流に依存するた め,制御角進み領域での整流器動作,制御角遅れ領域 でのインバータ動作を実現することはできない。自然 転流の普通サイリスタブリッジの領域はもちろんのこ と,上記領域においても動作可能なものとして直列ダ イオード方式サイリスタブリッジを挙げその有用性に つき発表した1)2)。しかしながら直列ダイオード方式 は構成は簡単,制御は容易,転流は確実で実用的なブ リッジとして利用されているが,主電流通路内にサイ リスタ2個,ダイオード2個計4個の素子が直列に存在 し,損失,電圧変動,経済的負担の面から思わしくな い。そこで強制転流能力を有し,主電流通路内に素子 数2個のみからなるサイリスタブリッジを物色し,そ の転流能力を検討し,制御整流器,制御インバータの ec。
C a 1呉
TA ∼ ∼氷αらli・ l ib τ÷ b ic TK TB Tc Ta Tb T, C 陥ぞE
T6 T6 Tti T6 Tご S 主プリツジ 転流補助ブリツジ 図一1 強制転流能力を有するサイリスタブリヅジ Fig・1 Thyristor bridge with capability of forced commutation. R.C Ld TA TB Tc Db D1 Da Dc a 1 C 。L R∫、
c次淑ヅ輻
Red :ξ 1㍑R
sl@T3
s2 T4 ∼ b L C D; Dl T《 T6T〔 D‘ D2 主ブリッジ 転流補助回路 図一2 強制転流能力を有するサイリスタプリヅジ Fi9.2 Thyristor bridge with capability of forced commutation. 立場よりその実用性を検討してきた3)−5)。一例として 従来専ら自励式インバータとしてのみ用いられてきた 図一1のようなサイリスタブリッジにつき上記立場よ り転流機構を解析し,優れたブリッジであることを証 明し,多方面への応用の可能性を述べてきたが5),難 を言えば,始動用補助電源を要すること,補助サイリスタ,転流コンデンサの数がやや多いこと,PWM
方式へは直接適用し難いこと等があげられる。 たまたま極く稀にではあるが図一2のようなサイリ スタブリッジに遭遇する機会を得た6)−8)。誰によって 考案されたものか詳らかでなく,転流についても詳細 は不明である。補助サイリスタや転流コンデンサの数 も少なく,制御角遅進全域での整流器動作が可能なばかりか,PWM方式への直接の適用も予想されるの
で,以下主としてその転流機構について解析を試み る。2.転流理論
図一1は転流コンデンサCの端子電圧による電圧転 流であるのに対し,図一2はCLの共振放電による電 流転流とみなすことができる。解析に先立ち次の仮定 をおく。 i〕,転流所要時間は印加交流電圧周期に比し無視し 得る程の短時間に完了するものとし,この間交流 電圧瞬時値は不変の値を維持するものと仮定する。 ii〕,直流回路の平滑用リアクトルは十分なるインダ クタンスを有し,直流電流は平滑とする。 iii〕,サイリスタおよびダイオードは理想的なるもの とする。 図一2において1は交流側に存在する漏れインダク タンスを示す。TA∼Tc’が主サイリスタ,Da∼Dc’ はダイオードブリッジを形成し,整流電圧により,R, 可 Ent −”↓tt P 一竺、巴・。δ・。δ・bcδ・垣δ・。。δ。。、δ T^ TB Tc TK T6 T6 Tl T2 T3 T」 B→C’B凶℃一〉名C翌’A・’B’ 図一3 サイリスタブリッジに適用される電圧, 制御角,整流出力電圧,ゲートパルス, 交流電流,星形相電圧の位相関係 Fig.3 Phase relationships among supPlied voltages to the thyristor bridge, control angle, output rectified voltage, gate pulses, A.C. currents, and star phase voltages. T3, T4を経て転流コンデンサCを充電すると共に, 消弧通路をも形成する。T1, T2は消弧に先立ってC の電圧極性を共振反転させるためのサイリスタであ る。 2.1補助充電回路の時定数の小さい場合 ダイオ・・一ドブリッジの整流電圧によりCを充電する場合CLR回路は非振動性でLの値は小さく,充
瓜 1.、i T( Ll 図一4等 価 回 路 Fig.4 Equivalent circuit.電時定数はほぼCRで決まるものとする。交流電圧 位相で電気角60°以内に充電が完了する場合を考え る。ほぼ3時定数で充電が完了すると見れぽ, R≒τ/18C (1) を要す。ただしTは交流周期とする。 2.1.1 制御角が進みの場合 図一3にサイリスタブリッジに適用される電圧,制 御角進みのδ,直流側電圧ed,各サイリスタへのゲー トパルス,交流電流,星形相電圧との位相関係を示
す。いま,Tctがナン, TAからTBへ転流するP
なる時点につき考える。この場合の等価回路は図一2 から図一4を得る。 期間①:最初Cの端子電圧をD・側が+でEo(今 は未知数,後刻決定)とする。T1をオンしL, Cの 共振放電により極性は反転する。共振回路の損失を無 視すれぽ反転後の電圧もEoである。反転完了と同時 にT1はオフする。反転所要時間はπゾLCである。 期間②:C→L→D、→TA→D。→Cの経路を経てTA 中の電流Idの消弧にかかる。この経路を通る共振放電電流icが五に等しくなった時点でTAはオフす
る。所要時間はL一
ナ曲毒
t・一工・in−1:響 (2)
となり,この時Cの端子電圧eo(彦1)はec(ti)一一Ea+÷∫湯c曲言詰・dt
=一γ・E。・一(L/C)1。・ (3) となる。TAオフと同時にこの電圧が飛躍電圧となっ てT3へ印加されるので,十分なスナバ回路を設けな いとこのdv/dtによって誤点弧を招き易い。 期間③:ia=五の単流期間で, Cが逆充電され・ TBが0バイアスになるまで続く。所要時間t2は 一VEo2−(L/C)ld2+ld t2/C=Em sinδ..ト@≡δ±罐一(L/C亘(4)
となる。ただしEmは交流線間電圧最大値とする。こ の時Cの端子電圧は次のようになる。 eo(彦2)=Em sinδ (5) 期間④:ia, ibの重流期間である。 これを解いて, t iα=1d COS γ/(21十L)C i・・一 ld{・一…V(2Z:L)C} を得る。継続時間t3は ia(t・)一・d…ソて2芸L)C−・ (7) (8)∴・・一三〆(21+L)C (9)
となり,Cの端子電圧は次のようになる。 ・・(・・)−Em・i・・+音∫㌧4・−E・・i・・ 十∨(21十L)ノCld もしこの値が.Emより大ならば, T3をオンし, (10) 電気角60°後に 交流整流電圧によりCを補助充電し ようとしても充電されることはない。したがって次期 転流電圧はこの値となり,最初仮定したEcはこの値 をとる。またもしこの値がEmより小さいならぽ, 電気角60°後T3をオンとすれぽ続く60°間にほぼ Emまで充電され, Eo≒Emと考えれぽよい。いず れにせよ少なくともほぼEm以上の転流電圧が得ら れる。以上の場合の様子を図一5に示す。 e〔(tl)/”一\、 ’ 、 Y / ・、ノ 、’ 、, iα \↓δ E(、
{ \ん 丁一一 Q ち② ちEmsmδ Ec 撃?E i,k期間@、_
『2③ 孟3④ 図一5転 流 過 程 Fig.5 Process of commutation. Ld iα+あ=1d(一定) Em・i・・+÷∫二i・dt+(1+L)皇 =Em,i。δ+1.血 dt iα(0十)=ld (6) T6 1d 図一6等 価 回 路 Fig・6 Equivalent circuit,したがってδ=0∼90°の制御遅れ角負の整流器動 作も,δ=90°∼180°の制御進み角負のインバータ動 作も可能となる。 2.1.2 制御角が遅れの場合 この場合は図一4に対応して図一6の等価回路を得 る。 期間①:Cの極性反転 期間②:TAの消弧 については,2.1.1の場合と同様であるから省略す る。
期間③:TAオフし, Da中をiaが流れるとDb
はebα ・Em sinα(aは制御遅れ角)により正バイア スされるのでオンし,ia, ibの重流が始まる。 Cの端 子電圧が一ンEc2−(L/C)ld2から0に達するまではTBは負バイアスでオフ,この重流はCの端子電
圧が0になるまで続く。継続時間をt2とすれぽ 一〆E,2−(L/C)ld2+ldt2/C=O∴t・−CゾEc
磨^C)1d2 (・・)
となる。 を解けぽ, Em sinα づα=1d− ・t 21 . Em sinα ・t tb= 21 ・・(t1)/’{’\Y/
、、 A ノ 『α’一 一 一 一 一 一 砧 E(一 Id→
T 1 Ec 2 τ1 1γ z2 23 ec εc…
匇ヤ①一」②
③ 4 図一7 転 流 過 程 Fig.7 Process of commutation. t,一〆(21+L)C,。n−・レ(21+τ)/C・i・(t・) Em sinα となり,Cの端子電圧eo(彦3)は ・・ω一÷∫:鋤一一恥i・α (18) (12) (13) (14)ia(・・)=・・− Q1 C’/ E°2一 U/C)1d2
(15) を得る。 期間④:TBが正バイアスされてオン, Dbが逆バ イアスされてオフする。ibが1, TB中を流れ, ia, ib の重流となる。 ia+ib=1,(一定) 一b−∫1 iadt+(1+L)砦一一Em・i・α
+z互L
dt iα(0十)=iα(t2)((15)式) を解けば, t i。=i。(t2)・COS (16) Em sina 〆(21十L)で一 レ/(21十τ)7c . t’sln/(21+L)C (17)
となり・継続時聞t3はぱ旬=0より, 十1/(Em sinα)2十{(21十L)/C}ゴα戸(汀「>0 (19) となる。しかし現実にはこの値は正であるが,比較的 小さな値であり,電気角60°後にT3がオンし, R を通じて続く60°間にほぼEmまで充電されるので, Ec≒Emと考えればよい。以上の場合の様子を図’7 に示す。 したがってα=0∼90°の制御遅れ角正の整流器動 作も,α=90°∼180°の制御進み角正のインバータ動 作も可能である。元来この領域は普通のサイリスタブ リッジで自然転流可能な領域であるが,本方式におい てはこの領域の動作を何等阻害するものではない。 2.1.3 逆電圧期間およびL,Cの決定前2項を通じてTAの逆電圧期間はCの電圧eo
が一VEo2 一(L/C)Iel2から0までの期間であるか ら安全を見越してEo≒Emとして, −1/Em2−(L/C)Id2十Id tr/C=0∴tr−CンEm
烽奄k/C)ld2>t・ff(2・) ただしt。は逆電圧期間とする。また,共振電流ピーク値を九のk倍まで許すと
すれぽ,〆舞一妬 (2・)
(20),(21)式より Idtr c= (22) Eml/−1−(17渥互TL−C(Emkld)2 (23)
TA (off) T6(ON) 図一8等 価 回 路 Fig.8 Equivalent circuit. 基準信号 (蕃籠1の Em 一δ=180° eab 図一9電 圧 波 形 Fig. g Voltage wave forms. としてC,Lの所要値を求めることができる。 2.2補助充電回路の時定数の大きい場合
Rを大きく選びT3がオンしてから電気角60°の
間に整流電圧によるCの充電が完了しない場合を考 える。この場合においても制御角によっては正規充電 ルートR,T3(もしくはR, T,)を経ずにダィ1“ ・一 ドブリッジ素子とオン中の主サイリスタを通して交流 電圧によりCが側面から充電され転流電圧が得られ る場合があるのでこれについて述べる。 図一8の等価回路において,TBがオン中の120°間 に,eαb>0, e,b>0なら, b→eαb→a→1→Dα→C→L →D1→TB(オン)→1→bの充電ルート,b→e・b→c→1 →D。→C→L→Dl→TB(オン)→1→bの充電ルートが 形成されるので,図一9の電圧波形から推して, δ=180°∼90°ではEmまで, δ=60°では.Em sin 60°で, δ=300ではEm sin 30°で, δ・=15°ではEm sin 15°で, δ=0(α ・O)では0で, α=150ではEm sin 15°で, α=300ではEm sin 30°で, α=60°ではEm sin 60°で, α=90°∼180°ではEmまで充電される。よって, 動作全域を通じて転流電圧の比較的得難いのは制御角 電圧制御 可変遅延 PLL 「’一一一一一’rm’一一P 百カウンタ ー_一」 パルス分配 デコーダ Pulse Pu se Pulse 増幅 増幅 増幅START
一
T3,T,用 Tl,T2用 TA∼T6用 図一10制御回路のブロック図 Fig.10 Block diagram of control circuit. .賓鋤ミへ、 Em=・145.6V Id=10A一定 ’tK 一tX0 −60 −30 0 30 60 α,γ〔°〕 α,γ〔°〕 図一11制御角と直流電圧との関係 Fi9.11 Relationships between control angle and D.C. voltage. の小さな整流器動作範囲であり,補助充電がなければ 制御角0時に最低で,(10),(19)式より Eo・=1/(21十L)/C ldとなる。 よってT3がオンし てから電気角60°の間にある程度の充電電圧が得ら れるようにRを選ぶことが必要である。(例えぽEm sin 60°程度)。制御インバータの動作範囲では補助 充電回路に頼らずとも制御進み角正負を問わずEm 以上の転流電圧が得られる。3.制御回路
制御回路のブロック図の一例を図一10に示す。サイ リスタブリッジに作用する電圧はeαb,eac?ebc, eb・, 90(a) α ==−60° (ld=6A) 150V/div 1.65ms/div (b) γ=−60° (ld=6A) 150V/div 1.65ms/div (c) (e) α=60° (ld ・・6A) 90V/div 1.65ms/div α=−30° (1, ・= 6A) 100V/div 3.3ms/div (d) (f) γ=60° (ld=6A) 150V/div 1.65ms/div α=30° (ld = 6A) 100V/div 3.3ms/div (9) γ=−30° (ld ・= 6 A) 100.V/div 3.3ms/div (h) γ=30° (ld ・・6A) 100V/div 3.3ms/div (i) α=−30° (ld=9A) 3.3ms/div (i) α=30° (ld ・6A) 3.3ms/div (k) γ・=−30° (ld=9A) 3.3ms/div (1) γ=30° (ld=9A) 3.3ms/div E. == 145.6V Fig、12 図一12 各 種 電 圧 電 流 波 形 Various wave forms of voltages and currents.
e,。,e,bの6種類であり,制御のための基準信号電圧 としては一般に6種類が必要となる。しかしブリッジ の動作に伴い,入力変圧器の巻線間の相互誘導や分布 容量を通じて転流に伴い発生するノイズが他相へ誘導 されると誤動作を招き易い。そこで外部から導入する 基準信号電圧はできるだけ少なくしたい。3相とか6 相は規則正しい位相関係にあるので,ある1相の線間 電圧を基準信号として取り込めぽ,他の相の分は内部 で作り上げることができる。こうすることにより相互 間の干渉を防LLできるばかりか,回路構成の部品点数 を大幅に削減することができ,かつ各相のパルス特性 を揃えることができる大きな特長がある。 サイリスタブリッジの動作に先立って,充電補助サ イリスタT3, T4をナンし,転流コンデンサが充電さ れた状態からスタートする必要があるので,T3, T4 へのゲートパルスの発生を優先させている。主サイリ スタのtr“ 一一トパルスの所要幅は広目(πVLC+t、+t2 以上)に,補助サイリスタのそれは狭目(π〆LC程 度)にするため,幅決定のモノマルチを別個に用い, 幅の広いものについてはパルス増幅器の負担軽減のた め50kHzで変調した。制御角の設定は電圧制御形の 可変遅延回路の直流電圧を可変することにより行う。