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農協経営と職員の労働問題 (河野稔教授退官記念論文集)

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125

農協経営と職員の労働問題

生  田 靖 1  わが国の農協における労働問題を考える場合,まずつぎの3つの視点を明確 にしてアプローチすることが必要である。  1つは農協で働く職員の一般的な性格である。農協で働く一とくに単位農協 で働く一職員は,農業者的,農地所有者的,そうして労働者的という3つの魂 をもち,いわば多彩な性格でいうどられていることを,実態調査の結果から指           摘したことがあった。その後,10年の歳月が経過し,わが国農業の引つづく変        ち     第1表 農協職員の農家・非農家出身別,出身居住地別内容{蒙欝琴(単位:%) 区  分 三農・山村計 都市的農村計 十 【= 性別

男女計

今  回  調  査 前  回  調  査 農家 出身 Q﹂qδ −QJ

87

79.2

80

54

ρOrD 男女 計 男女 61.3 72. 8 61.1 非農家     計出 身 18.1 1100.0 26.7 1100.0 20.s Boo.o 34.2 46.0 38.7 27.2 38.9 100. 0 100,0 100.0 100. 0 100.0 地居 合外 組域住 地居 合内 達域住 95.1 94.3 4.9 5.7 g4. g 1 s. . 1

60

98

8∩◎ 89.0

03

20

QゾQゾ 10. 4 12.0

ILO

農家 出身 つ﹂8

0!007

77.7

42

54

ρ0戸D 60.7 非農家 出 身 19.7 28. 2 22.3 34.6 45.8 39.3 ∩︶4 6門0

23

0だU

4476

07

8Qゾ 地居 合内 組域住 計 組合地域外居 100.0 100. 0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 93. 9 1 6. 1 94. 9 1 5.! 1 g4. 3 1 rD. 7

11

0只︶ Qソ8 1 sg. 3 8ρ0 1Qゾ Q4QO ∩コQ4

Q41 1

1 iO.7

24

80

 1

一ts−t l.6−s.6i3i.41i.to o l gi 4.i. s.6170,2−11g.. s l ioo.olgo.gi−Sl.rli (注)1.農家とは,専業農家・第一種兼業農家・第二種兼業農家の職員をいう。   2.組合地域内居住とは,組合の定款で定めた地区内に居住する職員をいう。 1) 生田靖稿「農協の職員間題と労働組合運動」桑原正信監修.農業開発研究センター  編『現代農業協同組合論第2巻一農協運動の現状分析』所収,308∼310ページ。 2) 農協労働問題研究所『農業協同組合の労鋤管理に関する総合報告書』 (昭和56年3

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      3)      第2表 あなたの生まれた家は今農業をやっていますか。 (%)

隊ガル愚計はいいいえ軸響

総男 女 全

 000∩V  OOOO  

OOOO

 2345合2345合2345

計代代代代計代代代代計代代代代

管理職(課長相当職以上) 一一・高?E 2, 527  535  632  391  262 1, 820  279  218  152  0r8  707  814  850  543  320  562 !, 965 2, 527  535  632  391  262 1, 820  279  218  152  58  707  814  850  543  320  562 1, 965 75. 0 79. 3 75. 6 83. 6 82. ! 79. 3 58.1 72. 5 71.7 39. 7 63. 9 72.0 74.8 8e. 3 74. 4

69

22

87

972195913﹁390956

蝕脇田鳳玖職肌皿築紛翫器触蛾盟

IZ4

27, O O. 1 0.2 0.3 0.1 0.5 O.1 0.2 0.2 O.2 (注) 全国農協中央会,農協労働問題研究所「系統農協に働く職員の意識」 (昭和59  年1月)より。 化(とくに兼業化と都市化の進行)と農協組織をとりまく環境の変化は,農協 職員の性格を徐々に変えさせていることは予測されうる。すなわち,感覚的に いえぽ,農業者的,土地所有者的性格がやや希薄化し,労働者的性格が強まっ たかもしれないという予測である。しかしこの点,手元にあるいくつかの調査 結果からみると(第1表及び第2表),従来からの性格について大きな変化は 生じていないことが推測される。土地所有者的性格は一般に土地もち労働者と  月刊)は,全国の168単位農協(職員100人規模以⊥1)にアンケート調査を依頼し164  農協(回答率97.6%)の回答のもとにまとめたものである。なお回答農協は純農μ」村  75農筋,都市的農村89農協である。表には前回調査の結果ものせている場合があり,  前回調査は,318農協を昭和50年6月に行なわれた。 3) 全国農協中央会,農協労働問題研究所「系統農協に働く職員意識」は,単位農協に  働く職員2,000名,県連合会1, OOO名,全国連合会500名に対象に行なわれている。第  3表は単協職員の回答のみである。

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      農協経営と職員の労働問題  127 いわれるもので,やや保守的性格が植えつけられる。農業者的性格は,家計補 充を農業所得で補うという意味で低賃金条件をつくりあげる。また低賃金への 対応力がつよい。いずれにしてもこれらが労働者的性格をよわめる方向に作用 することは間違いない。       第3表単協労組の組織状況  2つは農協職員の労働組合 の組織率が高いことである。 第3表にみられるように昭和 40年代の半にすでに職員数で 43%が労働組合に組織されて おり,最近はそれが50%に近         の ついているのである。  わが国の民間産業の労働組 合の組織率は全体で約3割程 度,中小零細企業の労組組織 率はもっと低くなる(農村地 帯の農協と同種事業をおこな っている企業は更に低い)。 したがってこのような高い労 組組織率は一般企業と比べて      

昭58年1

昭45年

 4, 315  1, 979   46% 287, 289 138, 517   4890  530  529  70 1,129  570/o       

  A   C

  ノ ココノ

ABBCDD

︵  ︵  ︵  ︵  ︵ ︵

数協率数数率

協綿

D籍

 巨 従組

 .震 協

単労組単労組

統一体加入単協数 上部団体加入状況     %%% £U ﹁0  3  7  0  2 ∩O  Qゾ 3  4  2 Qゾ 9σ 単一 体(E) 連合 体(F)

協議会(G)

合   計(H)

加入率(H/B)

全農協労連(1) 総 評 系(J) 同 盟 系(K)      1/B      J/B      K/B  6, 063  2, 148   3590 241,255人 104,260人   43%

 523

 553

  25  1, 601   0r19(0

 989

 325

  14   46%   !5%

  1%

      注;農協労研調査による。 かなりの高水準にあるものといえよう。  しかも県段階等の統一団体,上部団体への加入率も高い。これらの現象は30 年代の早い時期に結成された全国,県段階連合会の職員の労働組合が,40年代        ら  に入り単位農協の労働組合の組織化を支援した結果である。逆にいえば三段階 制系統農協組織という形態をとっておらなければ,単位農協では恐らくこんな 4)農水省による調査では若干異っている。昭和57年の調査結果によると単協4.359組  合のうち,労働組合法に基ずいて労働組合を組織しているものが2,361(54.2%)労  働組合員数が!61,769人(57.4%)となっているp 5)前掲,生田稿,320ページ,

(4)

に早く,且つ高い労組の組織率に至ってはないであろう。  ところで労働組合が自主的,主体的な組織化というよりも,外部からの働き かけによる組織化という側面がつよい場合,組織実態やその活動内容が問題と な:ろう。一般に単協の役職員は血縁的,地縁的,上下的関係がつよいので,労 使関係では敵対的関係はうすく,労働組合自体も仲間的で,よい意味でややル ーズな場合が多いのではないかと推察される。  3つは,いまふれた単協一県段階連合会一全国連合会という系統三段階制組 織であることと直接関連することである。この三段階組織の間には本店一支店 一出張所的な(実はここに系統組織の本質的な問題があるのだが,ここでは問   の わない)事業的,経営的つながりはもちろんあるが,それぞれは独立した独自 の事業体,経営体である。したがって,労働問題もそれぞれそこにおのずから 異なった諸側面が存在している。つまり単協段階での労働問題がもっとも複雑 なのである。  本稿では組合員にもっとも密着している単位農協の職員の労動問題を検討す る。 2  農協の労働問題は職員の主として労働条件をめぐって展開する。農協職員の 労組組織率が高いにもかかわらず,その労働条件は必ずしもよいとはいえな い。逆にいえぽ,農協連合会労組の働きかけの結果による高い労組への組織率 だからこそ,労働問題もやや複雑になっているといってもよい。  といっても,単協職員の労働条件の実態を,民間企業のそれと比較して明か にした調査結果をわれわれはもっているわけではない。この点,民間企業の労 働条件もまた単純ではないため,なかなか調査比較が困難だということもあ る。ここではいくつかの調査結果を手がかりにして,つぎの3点にしぼってみ ておきたい。  第1は,農協職員の賃金条件である。第4表は男女別,年令階層別,勤務年 6)生田靖『日本農業と協同組合』67ページ以下参照g

(5)

      農協経営と職員の労働問題  !29 第4表 年令階層及び勤続年数階層別賃金比較(昭和56年)

         男子 全産業平均=100

輪騒轡・年

1(ト’14年  15∼19年  20∼29年  30年以上 18∼19才 20 一一・ 29// 30 一一 34!1 35 一一 39 !/ 40 一 44 /1 45 ’v 49 // 84. 4 85.! 86. 4 84. 9 90.0 82.6 84.2 76.2 85.6 女 子

牽癖郷・年・・t一・L・’・4年1・5一一・9年

20∼29年  30年以上 18∼19才 20 一一 24// 30 一一 39// 35 一一一 39// 40 一一 44// 45 一一 49 // 92.3 89.7 92.1 97.7 101.5 95.0 108.0 95.6 103.3

\、勤続年数

         0  年

年令階層\

・・∼・4年・5一一・9剣 20一一29年  30年以上 18−19才 20 一一 24// 30 ’v 39 /! 35 一一 39// 40 一一 44// 45 t’v 49 // 89.2 88.3 84.0 84. 4 85.9 79. 2 81.7 74.9 79.8  労働省「賃金センサス」(昭和56年度)  全農労連「賃金実態調査報告」(昭和56年度) 数別に全国の全産業平均の賃金と単協職員のそれと比較したものである。女子 の年令別の場合に全産業平均に近いケースもみられないではないが,全般的に は低く,男子で全産業平均の85%程度,女子でおおよそ,90∼9596程度となっ ている。  このような状態は就職当初の初任給段階からはじまっていることがつぎの第 5表からも明らかとなるgA県内単協の学歴別初任給と全国産業平均のそれと

(6)

      第5表 初任級比較(昭和57年) (千円)

1平

卸小面金

A

高校卒男

     女

手大卒 男

     女

大学卒 男

     女 103.4(100.0) 97. 5(100. 0) 1!1.2(100.0) 106.9(100.0) 127.2(100.0) !19. 1 (100. 0) 101.5 99.1 109.7 105.7 127.6 119.0 99.8 95.9 122.4 105.9 122.0 1!7.7 93.3 (90.0) 87.8 (90.0) 100.1 (90.0) 99. 8 (9. 3. 0) 108.3 (85.0) 106.6 (90.0) 注1) 平均,卸小売,金融は,「賃金センサス」より。  2) A県は,農協職員の賃金実態調査より。          第6表 所定内及び一時金(昭和57年) (千円)

平均年一難年数

平均給与一時金

.i./i

i’/i

子子体子子体

37.・2才 35. 1 // 36. 5 f1 37. 5 // 32.5 !1 37. 5 !! 13.8年 10. 5 // 12. 7 !1 !2.711 6. 9 // 11. 5 !1 200.9 ( 81.0) 153.2 (110.0) 184.8 ( 82.0) 249.1 (100. 0) 139.8 (100.0) 225. 7 (100.0) 1, 035.0 (103.0)  836.3 (171.0)  969.9 (110.0) 1, 004. 9 (100. 0)  488.7 (100.0)  884.9 (100.0)  注,第5表に同じ。 を比較してみると離職職員は約90%という線からスタートしているのである。 A県の農協職員の男子の場合でみると,大体90%でスタートして(大卒では85 %)その後,年をとるに従って格差がひらいていくことになる(第6表)。つ まり勤務年数14年37.2才で平均給与で全産業平均賃金の8割程度のところへ落 ち着いている。  第2に労働時間についてみてみよう(第7表)。 農協職員の所定労働時間は 1週40∼42時間(59.1%)あるいは42∼44時間(29.3%)に集中しており,両 者を合せると9割近くに達する。これに対し,全産業平均の場合は38∼40時間 (34・8%)あるいは42時間以下(62・9%)に集中する9さらに∼1ゆ00人以鳴

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      農協経営と職員の労働問題  131 第7表週所定労働時間の民間産業との比較    (単位;%)

護ト38…∼・・…一一42.・・1 一44…一・・…劃霊計

翻夏時剛・・6」…159・・29・・1・・32・41・・…

民間企業

産業計1・.・1・・.・・8.… 43・・・… 1・・…

1QO人以上 100人一・一999人 30一一一90人 17.9 6.7 2.8 54.7 26.3 8.1 18.6 20. 0 13.0 4.2 16.1 17.4 O.7 4.7 7.4 2.6 18.4 38. Jr 100.0 100.0 !00.0 注1)民間産業は,労働省「賃金・労働時聞制度の実態」昭和55年度による。  2) 農協は第1表に同じ。   第8表 週休2日制実施の有無および実施形態の民間産業との対比 (単位;%)

扇\型i

計 未実施       内       訳解 施    完全囲3回1隔週旧2回[月1回 その他

農(55年、月)協・・…179・92…1群

雨■・α・1

︵54年9月︶ 民間産業

産業計・・…127・・72・923・・1・・812・6・…1・3・3…

1,000人以上 100∼999人 30一一99人 100.0 100,0 1 ioo.o 6.3

3L8

59.9 93.6 68. 2 3一 9, 9

1劉11:1

2.61 2.2 12.5 14.9 8.8 !6.5 16.8 !2.2 g.sI o.i 16. 7 14.0

0300

 注,第1表に同じ。 の企業では38∼40時間が(54.7%),42時間以下(91.2%)に集中する。なお 100∼900人企業でも42時間以下が53%となる。30∼90人企業のように48時間以 上のところにもつとも集中しているというほどではないにしても,農協職員の 場合やや長時間労働の傾向がみられるのである。  週休二日制度に至っては,民間企業とかなりの格差がつけられている(第8 表)。信用事業をおこなっていることや,その他の農村的諸条件が週休二日制 の採用を難かしくしているのであろう。なお最近,銀行,郵便局の第二土曜休 業制が採用されたので若干かわりつつはあるだろうと思う。  さらに,この所定労働時間には共済事業の集中推進や一日貯金の集金や,部 落座談会の出席時間などは含まれていない。労働組合の調査によると,この時        マ  間は馬鹿にならないのである。  7)例えば北陸N県興協労苺の謁糞によるζ昭57年・県下単磁の年間に共済を推価しk

(8)

      第9表 退     職 (1)年齢別退職区分 (単位:o内%)

斎rr遅ミ勾欄・山村都市膿村i

計 組 合 数 75 89 164 男 子 女 子 25才未満 25才一34才 35才一44才 45才一54才 55才以上 26 ( 11,8) 40 ( 18.2) !4 ( 6.4) 22 ( 10,0) ユ18 ( 53.6) 36 ( ll.3) 67 ( 21.0) 18 ( 5.6) 32 ( 10.0) 166 ( 52.1) 62 ( 11,5) 107 ( 19.9) 32 ( 5.9) 54 ( 10,0) 284 ( 52,7) 計       220(100・0) 319(100・0)1539(1000) 25才未満 25才一34才 35才一44才 45才一54才 55才以上 226 ( 55,6) ユ23 ( 30.3) 14 ( 3.4) 21 ( 5.2) 22 ( 5.5) 291 ( 49.7) 189 ( 32.3) 26 ( 4.4) 39 ( 6.7) 40 ( 6. 9) 517 ( 52,2) 312 ( 31.5) 40 ( 4. 0) 60 ( 6.1) 62 ( 6.2) 計 406 (100.0) 1 585 (100.0) ] 991 (100.0) 前回調査 318 綾:劣 i( 53. 8) (100.0) lll:霧

}・側

(100.0)  注,第1表に同じ。  第3は直接的な労働条件とは関係しないが,農協職員の場合若年層の中途退 職者がかなり多いことである。農協労研の調査結果によると(昭和56年)男子 だけでみて退職者539人のうち34才未満の退職者が169人もあり,全体の31.4% を占めている(前回調査ではさらに高く46.2%,第9表(1))。勤務年数でみて も6年未満のものが133人もおり,全体のやはり3割近く(27.・7%)に達して いる(前回調査では同じく43.9%,第9表(2))。 さらに転職先の調査結果から みるとこれらの退職者は若いので大多数は県内企業に転職したと考えられる (同調査では76人)。  男子の若い階層が農協職員をやめて転職することは「生きがいや働きがい」 を職場に求めることとも関連すると同時に,農協の賃金条件を中心とした労働 職員で,一番多い日数は約60日,平均14.8日となっている。しかもその日の夜間の帰 宅時間は午後10時頃が59.2%と,つまり6割がかなり遅い帰宅となっている(全農協 労連「労畏のなかま」)’83年5月号g

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② 勤続年数別区分 農協経営と職員の労働聞題  133      (単位=o内%)

蜜「≧黙白歯・山村障肺的農村

計 組 合 数 ,, 1 82 i 14Jr 男 子 女 子

3年未満

3−6年

7−14年

15−30年 31年以上 27 ( 14.7) 25 ( 13.6) 3! ( 16.8) 66 ( 35.9) 35 ( 19.0) 36 ( 12.2) 45 ( 15.2) 59 ( 19.9) 98 ( 33.1) 58 ( !9.6) 63 ( 13.1) 70 ( 14.6) 90 ( 18.7) 164 ( 34.2) 93 ( 19.4) 計 !84 (100.0) 29. 6 (100. 0) 480 (100.0)

3年未満

3−6年

7−14年

ユ5−30年 31年以上 93 ( 26.ユ) 144 ( 40.3) 91 ( 25.4) 27 ( 7. 6)  2( O.6) 114 ( 20.6) 246 ( 44.4) 131 ( 23,6) 55 ( 9.9) 8 ( 1. ,5) 207 ( 22.7) 390 ( 42 8) 222 ( 24.4) 82 ( 9.0) /0 ( 1.1) 計 357 (100.0) 554 (100,0) 91/ (100.0) 前回調査   318 ( 23.3) ( 20.6) !( 56.1) (100.0) ( 36.8) ( 45.2) !( 18.0) (100.0)  (注)1 勤続年数の未記入もしくは不明の組合数19(純農・山村12都市的,農村7) 条件とも強く関係していると考えられる。低い賃金水準,長時間労働,そうし てあとでふれる職場での組合員からの疎外感等が若者に退職転職の道をたど らせているのである。 3  わが国の農協は,資本主義経済社会の中で経済活動を行なっている事業体で あり,経営体である。しかし,この経営体は他の資本的企業と非常に類似した 側面とそれとは異なったいくつかの特徴的側面とをもっている。これらのこと が,農協の労働聞題に投影し,労使関係を複雑にする要因にもなっていること に注目しなければならない。まずそれらの諸点について簡単に整理しておこ う。  第1に農協という経営体はその各種事業において他の資本的企業体等との市 場競争関係の上では,特殊な位置を占めているわけではない点である。  資本主義経済社会における経営体は,きびしい市場競争関係の中で一瞬なり

(10)

とも立ち止ることの許されない組織体でありゴーイング・コンサーンである。 農協という経営体もその例外ではない。現実に即してやや具体的にみれば,ま ず信用事業は地方の銀行や信用金庫,郵便局等と競争関係にある。販売事業で は卸売業者などの商業資本と,購買事業では同じく地域の商店等や地廻り商人 と,共済事業は保険会社(代理店)や郵便局等ときびしい競合関係に立ってい る。  幸いにして,信用事業は米代金が自動的に農協に振込まれることをペースに 事業が確立した。販売事業は米の集荷,倉庫搬入とその後の共販運動に支えら れた。購買事業は肥料の取扱いを中心に地域の零細な商人に汗することができ た。そうして新しく取り組んだ共済事業は農村ではこれまで空白地帯でありこ の空白を義理と人情で埋めるかたちでこの事業も飛躍的にのびた。  つまり事業的にはきびしい競争条件にある信用事業や共済事業は,国などの 政策的な支えと農村特有の義理と,人情という人間関係に支えられて伸ばして これたのである。また販売購買事業は,米の取扱いや生産者組織の活動ととも に,この事業ではあまり強力な敵手がおらず,殿様商売的な対応も可能な側面 があった。さらに農協の各種の施設整備が有利に事業に結びついた側面も見逃 せない。  しかしいずれにしても,市場での競争,競合は事業実績にあらわれ,経営成 果に反映する。経営体としての維持,発展は経営担当者(常勤理事)の責務で あり,職員もその一端を担い,その過程で組合員の要求,期待にも応えていか ねばならない,そういう経営体である。  第2に農協は組合員の生産活動と生活の一部門協同化し,事業化することで 経済活動を行なっている経営体である。したがって,その経営構造は各組合員 の経済活動内容や規模,そうしてその集積量に規定され,限定されることにな る。換言すれば,組合員の生産活動が盛んであり,生活が豊かであり,しかも その集積量,すなわち,農協の事業として協同化される部分,量が大きいほど 農協は経営体として充実し,伸びる可能性が与えられる。  しかし,農協は農業者を構成員とし,その経済活動の協同化であるからその

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      農協経営と職員の労働問題  135 部分,量は無限大に伸ばしうるものではない。つまり組合員の人的結合関係を ベースにおいた,生産・流通・利用の協同化であるから一定の規模の規定性を         8) うけざるを得ない。組合員数が適正規模をオーバーすれば,農協から組合員の 離反が生じ,また組合員間の利害の対立も厳しくなり,農協の運動的側面も希       薄化する。  農協は農民が出資所有し,経営し,利用する経営体であり,事業を運動によ って推進するという中身は以上のようなものである。その適正規模を欠いたと き,所有,経営,利用の三位一体関係は失なわれ,組合員は利用価値がなけれ ばまずその利用から離れていき,むしろ農協に敵対するようにさえなる。  その点,資本的企業はもともと所有と経営と利用とは分離している経営体で あって,スケールメリットこそこの経営体の核となるものである。そこに両者 の大きな相違がある。  第3は,総合農協といわれることが示す農協経営の特徴である。総合農協と いうのは,農協の各種事業(信用,販売,購買,営農生活指導,共済等)が有 機的に関係し合って,組合員経済を発展,向上させるために事業がすすめられ ることを意味している。組合員を対象とする事業が協同組合的妙味,協同組合 的成果をあげうる事業の総合性が農協経営に与えられており,これを如何に発 揮するかが経営担当者の1つの手腕のみせどころでもある。  なお,この事業の有機的関連性,総合性の理想型からいえば,まず組合員の 豊かな畏業生産があり(そのためにはまず営農指導事業や資金手当てのための 信用事業に支えられておらねぽならない),これが販売事業に結びついて有利 な市場対応があり,農産物の販売代金が農協の信用事業に流れ込み,生産,生 活購買事業ものびていく,こういう組合員の営農の充実,発展がベースとなっ て,農協の経営体・経済活動が活発化するという構図である。 8) 武内哲夫,生田目『協同組合の理論と歴史』51ページ以下。 9)単位農協の段階では,いわれるような運動的側面はきわめて希薄である。県連,全  国連をつつんだ系統農筋規模,全国規模になれば,運動的側面もあらわれてくるが単  協は,むしろ経営体的側面の方が前面に出る。

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 ところが現実はどうか。組合員の兼業化の進展,稲作へのモノカルチャー 化,農村の都市化など最近の農業・農村の変化は農業生産基盤の充実発展をベ ースにした総合農協の妙味を,必ずしも十分に発揮しえない条件をつくりあげ てきている。  つまり厳しい現実状況のもとで,一般的にいえば,農協の販売事業,購買事 業,加工利用事業などは経営的に採算の合わない事業になっている。しかし, 総合農協である以上,これを切り捨てるわけにはいかない。そこで何とか儲か る方の事業でこれをカバーしょうという経営動機が生れることになる。つまり 信用事業や共済事業の方に力が傾斜し,その悪循環がはじまるのである。 4  さきにのべた第1の点から,農協の労使関係は一般の企業体と決して異なる ものではないことが明かとなる。経営者は理事(会)であり,職員は労働者で あり,そこには一般的な労使関係が成立する。この経営者は決して資本家では なく,農業者にすぎないのだが,資本主義社会の資本の論理は経営にきびしく 反映する。市場競争関係がきびしいほど,経営者側から当然ハードな合理化攻 勢がかけられるだろう。経営の合理化が競争に勝つ一つの条件であり,コスト の節減が至上命令になるからである。またノルマの達成もその一つである。  さらに,農協職員の賃金条件との関係からいえば,地域での競合企業等の賃 金が一つの規定要因になってくる。具体的にいえば農協職員の賃金のアッパー を画するのが,地域の信用金庫や郵便局となり,競合商人の自家労賃部分やそ この従業員の低賃金水準にまで足をひつぱられる可能性がある。  同時に上記第2の点から単協職員の労働条件なかんずく賃金条件は,組合員 経済の実態に規定されることになろう。つまり基本的には組合員の平均所得的 なものが単協職員の賃金条件の平均水準を規定するように働くことになろう。 組合員経済,すなわちその営農活動が盛んであり,所得が高く暮しが豊かであ れば,農協事業も活発となり経営も安定,発展する。それがまた職員の賃金条 件にはねかえり,職員が働きがい,生きがいを職場により強く見出し,これが

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      農協経営と職員の労働問題  137 組合員経済をまたより充実させ,農協経営にも更に結びつく,という循環であ る。勿論,その逆の循環の場合もある。  一方,農協の組合員規模がやたらに拡大し,地域範囲が拡がっていくと農協 職員と組合員の結びつきは当然弱くなる。接触は少なくなり両者の緊張関係も 弱くなる。規模の拡大は農協組織の官僚化をおしすすめ,他方で,組合員は農 協を「わが農協」視から「他の商人」視に変ってくる。両者の離反は組合員の 職員観を変えてくる。例えば組合員は多就業形態をとり,かつ農業生産は,長 時間労働に結びつき易い。したがって農協職員の単に賃金条件だけでなく,労 働時間についても,親密度を失っただけ厳しい目を光らせるようになる。こう なるといままでおらが農協の親しい職員であったことが裏目に出てくる。近親 憎悪が増巾されたごとく労組と組合員の反目さえ生じうる。        ユの  しかもなお日本の企業経営は社会的自律集団の性格を強くもち,利潤追求と いう目標とともに,生活集団の維持という面が強いといわれる。農協も経営体 であり経営体そのものとして維持し,役職員の生活を守ろうとする機能が働 く。この点は他の資本的企業と同様である。これがつよまると組合員から農協 は経営主義に走りはじめたとの批判がおこるだろう。  第3は農協事業の総合性と関連する点である。総合性のよい点が前面に出れ ば問題はないが,さきに見たように悪しき点に結びつくと,例えば,営農指導 員や生活指導員さえ,貯金集めや,共済ボーリングにかり出されてくる。儲か らぬと月給はあがらぬという論理と組合員から嫌われる仕事をせねばならな い,という板ばさみのなかで,職員はやる気を失ない,萎縮していく場合も多 い。これらのことは若い職員を退職→転職へといたらしめる。  ところで農協経営者(理事)は労務管理面ではいわぽ素人である場合が多い。 農村棄しがらみをもちながらも労組は結成されている。農協組織の内部では農 村的な複雑な人間関係が労使関係をつつみ込みながら働いている。職員は労働 老的性格とともに農業者的,土地所有老的性格から労使の厳しい対立を忌避し たいという性格を持っている。したがって,すでにみたように低賃金条件が成 10)津田眞激『日本の労務管理』222ページ。

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立しゃすいとともに労使関係は複雑となり,いったんこれがこじれると手がう けられなくなりかねない。だが同時に,農協労使関係の特殊性論,労使協調論 等が登場する余地も残されている。それはともかく,結論的にいえば,干遠な ようではあるが,豊かな農業,農家をつくりあげることが農協労働問題の解決.

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