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教育インターンの目的と意義 -県立高校健康教室を事例として-

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(1)研究報告. 教育インターンの目的と意義. -県立高校健康教室を事例として- 教育学研究科学校教育 有 元 典 文. イムス横浜国際看護専門学校 尾 出 由 佳 神奈川県立大和高校 岡 本 弥 生. 1 はじめに. 1.2. 本学部 ST 制度の蓄積. 平成 22 年 7 月、新教育学研究科改組準備委員会 ( 三. 本学では既に平成 17 年 4 月に横浜市教育委員会と. 宅晶子委員長 ) の指示で「教育インターン」の開発に関. 連携強化推進プロジェクトを締結し、平成 17 年度文部. して検討する小委員会 ( 以下 WG) が組織された。2 回. 科学省「大学・大学院における教員養成推進プログラ. の WG と 1 回の臨時 WG を開催、9 月と 1 月に学内ア. ム」の採択を得て、横浜市教育委員会、横浜市小学校. ンケートを実施し、実施上の問題等の検討を行ってきた。. 校長会との協働のもと、小学校教員養成で培うべき資. 本稿では、新教育学研究科の目指す実践性を代表する. 質・能力の観点を特定し、観点別達成目標と評価基準. 特徴的な科目のひとつである 「教育インターン」に関して、. を表に示した「横浜スタンダード」を開発した。週に1. その背景を示し、今後の展開について具体的な実践例. 回、終日小学校現場に出向く「日常的・継続的教育実. を取り上げることで明らかにすることを目的とする。. 習プログラム」を実施し、 「横浜スタンダート」が掲げる 教員の資質・能力の観点別達成目標にそって、学生は. 1.1. 体験 ( インターンシップ ) の強調. 養成段階の 4 年間、 「拠点校スチューデント・ティーチャー. 近年、教員養成、看護教育などさまざまの職業人養. (Student Teacher、以下 ST)」として、本プログラムに. 成において、単に座学だけにとどまらない、現場での体. 理解を示す拠点小学校で行われるこの「日常的・継続. 験を通した学習の必要性が強調されている。. 的な教育実習プログラム」を選択で履修してきた。こう. ひとつの理由は、現場での力量がこれまで以上に問. した活動デザインにおいて、学生は < 大学での学習 > と. われている現状にある。学校教育の領域では、 「教師力」 ・. < 現場での体験 > を往還させることに取り組んできた( 福. 「授業実践力」といった能力概念が喧伝され、大学での. 田ら, 2009)。. 教員養成においても、教育実習の改善・充実・研究が 求められている。また各教育委員会が教職志望者に向. 1.3. 本学 ST 活動に関する研究的蓄積. けて「教師塾」と総称される実践力を養うための現場. 本学 ST プログラムに関する先行研究を以下に示す。. 参観を含んだ中長期の講習会を開催することも一般的. 最初に ST が現場での体験についてどのような内省を. となっている。. 持つかについての研究を取り上げる。柴田・有元 (2010). 現場体験の重要性が強調されるもうひとつの理由に. は、週 1 回終日の ST プログラムに参加した学部 1 年生. は、 「省察的実践家」という実践家モデルの一般化が. 3 名の、前後期計 8 ヶ月間のネット上の活動記録掲示板. 考えられる。Schön(1983) は、実 践 者が実 践の中 (in. に残った書き込みを分析した。その結果、表 1 に示すと. practice) で、実践について (on practice) の省察を行い、. おり、現場の教師の実践、およびそれらと自らとを比較. 自ら成長していくことの重要性を主張した。このことはと. した「理想の教師像」に関する書き込みが全体の 6 割. りもなおさず、自らの実践を記述し分析するような現場. 弱 (57.7%) を占めた。. 研究 ( フィールド・リサーチ ) の必要性につながる。つ. このことは、現場の実践者を間近に観察し、また教. まり①養成段階だけでなく、②現場の実践家において. 育活動を協働することで、自らの実践の水準が明確に. も、また③教育研究者にとっても、理論研究と現場実. 意識され、逆に担任教師の力量が将来の学習のガイド. 践の往還の必要性が認識されている現状であると考え. ラインとして意識された結果だと考えられる。また児童. られる。. に対しての「集団の統制」について多く言及する ST が 教育デザイン研究 第2号 49.

(2) 教育インターンの目的と意義. おり、現場体験という具体的な実践に深い動機をもって. 範囲はどこですか」のようになったり、また配布物・教. 参加すること ( 正統的周辺参加, Lave & Wenger, 1991). 科書 ( モノ ) には試験の為の記憶に備えたアクセスがな. が、座学とは異なるリアリティを持った学習上のインパ. されたりするだろう。. クトを学習者に与えたことが示唆される。. 森下・尾出・岡崎・有元 (2010) は、ST プログラムの. 表 1 ST の書き込み内容のカテゴリ分析. 学習環境デザインについて着目し、分析を行った。その 結果、教育現場の体験は「ST の教育的デザイン」と「教 育実践の保持のデザイン」が共存する学習環境である ことが明らかになった。前者は、大学が教育現場とそ の体験を「有用化」(Arimoto et al., 2008) しようとする デザインで、ST の学習・成長を可視的にする「省察のテ クノロジー」( カリキュラム、ルブリック、ST ノート、電 子掲示板、ビデオ等 ) を用いることで体験が有意味なも のになるように教育的に組織化していた。後者は教育現 場がその社会的機能をきちんと維持するためのデザイ. ※括弧外は切片数,括弧内は全体に占める % を示す. ンであって、むしろ ST にとっては現場への自由なアクセ スを阻む制約となるものだった。しかしこの現実的制約. 次に「学習環境のデザイン」の観点から、ST プログ. が ST プログラムを真剣なものにし、正統的周辺参加と. ラムという活動システム (Engeström, 1987) を分析した. しての専門家教育として特徴付けていた。. 研究を示す。 「学習環境のデザイン」とは、90 年代初. 以上のように、現場体験は、学習者の深い動機を伴っ. 頭から注目されてきた概念で、学習を単に個人の達成と. た参加と、適切な学習環境のデザインによって有用化さ. とらえるのではなく、学習が生起する社会的、文化的状. れることで、専門家養成の一部としてよりよく機能するこ. 況とのセットで成立するものと考える視点のことである。. とがこれまで示唆されてきた。逆に言えば、動機を伴っ. 教育工学の CSCW( コンピュータ支援共同作業 ) の領域. た深い参加ではなく、適切な省察のテクノロジーが準備. でまず検討され、また状況的学習論の領域では「学習. されず、単なる体験として行われる実習は、実習生にとっ. のカリキュラム」(Lave & Wenger, 1991) という概念に. ての教育的機能が保証されない。実践の場に深く参加. よってこのことは研究されてきた。. し、専門家と出会い、自らの実践との差分を的確に認. レイヴ&ウェンガー (1993) は「学習者の視点から見た. 識し、先達に専門的且つ科学的にあこがれる機会として. 日常実践における学習の資源が置かれている場」(p.79). 機能することが、実習に求められている。. を「学習のカリキュラム」と定義し、それは「参加を通し て生じる」としている。つまり「学習のカリキュラム」と. 1.4. 教育インターン:実践の研究化と研究の実践化. は教えるためのカリキュラムではなく、そこに参加したも. 以上のように、これまでの本学 ST 事業に関する研究. のにとって学習が生起する場のことを指している。ここ. では、教育実践の只中に科学的省察の手段を携えて臨. では、学習環境のデザインを「モノ・ヒト・コトの布置. むことの意義が示唆されてきた。単なる体験ではなく、. と各々へのアクセスの工夫による学び方、考え方のデザ. 大学の学習と実践の場の学習を行き来させるような省察. イン」と定義する。例えば、講義内容に関して「後に試. 的実践家モデルの適用が必要とされていると言えるだろ. 験を行うこと」はひとつの学習環境のデザインである。. う。つまり、今後は①養成段階の実習生、②現場の実. そのことで、聴き手は内容を「ただ傾聴、理解するだけ. 践家、③教育研究者の三者にとって、現場実践と理論. のもの」ではなく、 「後の試験に備え記憶すべき一連の. 研究を往還させ、実践を記述し分析し還元するような現. 情報」としてとらえるようになるだろう。. 場研究 ( フィールド・リサーチ ) が必要とされていると考. 講義 ( コト ) をこのように布置する ( 設定する ) ことに. えられる。. よって、聴き手 ( ヒト ) の講義内容へのアクセスはこの目. こうした中で本学 教育学 研 究 科において新たに必. 的に限定的になり、例えば講師 ( ヒト ) への問は「出題. 修科目として開設される「教育インターン」は、現場と. 50.

(3) 理論研究の往還の場として構想されている。インター. ( フィールド ) に赴き、大学教員の指導の下に、. ンしつつ (in practice)、フィールド・リサーチする (on. 現場の実践者の支援を仰ぎつつ共同し、フィー. practice)、またそのことを現場に還元する、そういうサ. ルドにおける実習 ( インターン ) 及び調査研究 ( リ. イクルを全ての大学院生が経験することを企図したもの. サーチ ) を通してその課題に取り組むための科目. である。. である。附属学校の他にも、学校、教育委員会、. 教職志望の院生においては、これは将来の省察的実. 学部開講の学外活動・学外学習、地域交流科目、. 践家としての「実践の研究化」の準備段階にあたるだろ. 院生自らの実践の現場などで検証を行うことも可. う。また教育研究を行う院生にとっては、実践家との協. 能である。得られた知見はゼミでの振り返り ( 省. 働を前提とし、現場への還元を意識するような「研究の. 察 ) と報告書によるコース全体での共有を行う。. 実践化」を試みるトレーニングにあたるだろう。また同. 成果・知見は現場へフィードバックすることが望. 時に、このことは特に重要だと思われるが、協働する現. まれる。. 場の実践家および大学教員にとっても、この現場-大. 履修目標: 「教育デザイン」科目と連動し、学校や地. 学の往還サイクルから学習することは極めて大だと予想. 域・社会における教育実践・活動のフィールドで. される。. のインターン及びリサーチを通して、自らの研究. これまでも本学研究科は高度な専門性と実践性を. 課題である教育デザインが現実の学校教育や地. もった研究への取り組みによって特徴付けられてきた。. 域・社会に対していかなる位置付けと役割を持つ. 社会人院生を除く修了生の教育・心理・福祉関連職へ. かについて、理論と実践を往還させつつ検討す. の就職が全体の 6 割、博士課程後期への進学 1 割で. ることが出来るようになること。. あったことにも、その実践性と専門性の特徴が現れてい. 「教育インターン」の開講・実施にむけては、全専門. る。新しい研究科はこうした特徴を意識的に先鋭化し、. 領域からの委員で構成された作業部会で、想定される. 専門性と実践性の融合を計画的に目指すことになる。 「教. 実践・研究例を収集し、また各附属学校とのすりあわ. 育インターン」はそのための具体的な展開のひとつであ. せと具体化を行ってきた。今後は教育デザインセンター. る。. を中心に、各附属学校、地域の学校、教育関連諸機関. 「教育インターン」の目的は、教職志望者には実践の. などとの連携の下に、この非常に新しいタイプの大学院. 場での参加的学習の機会を提供し、教育研究を志すも. 教育が動き出すこととなる。繰り返すが、これは単なる. のには実践研究の場を提供することである。これまでボ. 講義科目の新設ではなく、実践と研究の往還サイクル、. ランティアや非常勤で現場に関わっていた院生にとって、. 実践者と研究者の対話の場の構築に他ならない。受講. 実践への参加に加え、自らの大学院での研究計画に結. する院生はもちろんのこと、このことから大学教員も、. び付けた理論的なふりかえりの機会となることが期待さ. 研究科も、附属学校も、そして現場の実践家もまた学. れる。そうして研究計画に基づいてインターン的なこと. 習することになるだろう。本稿自体が、研究者と実践者. を行い、修論や、就職後の実践につなげることがこの. そして学生達の共同の実践、研究であることも、 「教育. 目標である。. インターン」の意義を表すこととして特に強調しておき. 以下シラバス ( 案 ) から抜粋することで、本研究科が. たい。. この必修科目「教育インターン」で目指す内容の具体を. まず「教育インターン」の仕組みは用意されるが、そ. 示す。. の本質は今後の 「教育インターン」の実践例の蓄積によっ. 授 業 目的: 「 教 育インターン (Field Internship and. て定義されることになるだろう。. Research in Education)」は、コア科目「教育デ ザイン」等の学習を教育の現場で検証し、それ. 2 「教育インターン」の具体的展開. によってさらなる研究の深化を図るために配置. 2.1. 県立高校 健康教室との連携. される。本科目は、単なる教育実習とは異なり、. 本研究では、 「教育インターン」の具体的な実践例と. 学生が自らの教育実践・教育研究上の目的と解. して、県立高校の健康教室を大学研究室と連携して実. 決すべき課題を持って教育実践に関連した現場. 施した例を示す。本研究の実践の場は、神奈川県立大. 教育デザイン研究 第2号 51.

(4) 教育インターンの目的と意義. 和高校 ( 以下、大和高校 ) 第 1 学年を対象とした健康教. 健委員によるリハーサルや、学生の確認作業のなかで修. 育であった。大和高校では 1、2 学年を対象に、年に 1. 正が繰り返された。11 月 16、17 日の高校での保健委. 度ずつ、養護教諭と各クラスに 2 名ずつ任命された保. 員によるリハーサルでは、班ごとのマンガ作成で教員に. 健委員が中心となって実施する健康教育の場として「健. よるファシリテーションがないとうまく進められない状. 康教室」という授業が設定されている。従来は、タバコ、. 況が観察された。そのため、班活動における登場人物. アルコール、デート DV、性感染症などの健康課題を題. のイメージ喚起のためのファシリテータ役が学生に託さ. 材にしてきた。本年、平成 22 年においては、第 1 学年. れることとなった。また 11 月 18 日の学生の最終確認で. の教諭間の話し合いから、 「社会性の欠如」が課題とし. は、マンガ作成において高校生が充分に熟考せず安易. て浮かび上がったため、人権や生きる力という視点から、. にハッピーエンドにすることを危惧する意見が挙がった。. 「精神的な成長」を活動の目標として据えることとなっ. そこで今回の活動の目的は単にハッピーエンドを目指す. た。この時点で養護教諭である岡本から有元、尾出に. ものではなく、いかにそれぞれの立場をイメージできる. 授業計画の相談が持ち込まれ、高校と研究室とが連携. かにかかっているということを伝える文言を台本の中に. した健康教室の実施を企画した。. 挿入することとした。 こうしてできた教材は、以下の通りである ( 図 1)。. 2.2. 教材開発 筆者らの協議の結果、健康教室の目的を「親しい関 係にあっても、認識の違いがあることを確認すること」 とし、これに沿って授業の立案をした。高校生がクラス の仲間と協働で取り組む具体的活動を実施することを 目指し、登場人物の立場を想像してマンガ作成すること を課題にすることとした。マンガ作成活動は、人前で演 じるロールプレイングより抵抗が少なく、かつ登場人物 の主観を協働で客観的に検討できることから選択された。 教材開発の流れを示す ( 表 2)。 表 2 教材開発、授業準備の流れ 図 1 マンガ作成活動の流れ マンガ作成のテーマは友人間トラブル事例 (「 友人事 例」; 表 3) と、恋人間トラブル事例 (「恋人事例」; 表 4) の 2 例とした。 表 3 友人事例. 10 月 11 日、11 月 11 日の二日にわたって行われた検 討会議は、筆者ら 3 名と参加大学生・大学院生 ( 以下、 学生 ) で行われた。 「要綱」、 「活動詳細」、 「台本」は、 岡本が案を作り、有元、尾出がコメント、修正を行うと いう形で作成された。これらに対して、高校における保. 52.

(5) 表 4 恋人事例. 事であり、その為に様々な視点 ( 友人、大人、教師等 ) との対話が大切である」というものであった。 表 5 当日の流れ. 学年の半数のクラスは友人事例、他半数のクラスは 恋人事例を扱うこととした。1 クラスを 8 班に分け、4 班は一方の立場から、残り 4 班はもう一方の立場から事 例の続きを2コマ作成する( 例えば、1~4 班は Aの立場、 5 ~ 8 班は B の立場でマンガを作成 )。その際に、各 班の登場人物に「性格特徴」を指定する。これは、性 格特徴に沿った他者の立場で考えることと、安易にハッ ピーエンドにさせないための工夫である。性格特徴には アサーション研究における 3 種類の自己主張のパターン を援用し、 「相手中心で消極的なタイプ」 「自己中心で攻 撃的なタイプ」 「自分も相手も尊重するタイプ」の 3 種 類とし、これをランダムに割り振った。その後、立場の 異なる 2 班 ( 例えば、A の立場の 1 班と B の立場の 5 班 ) が 1 組となり、一緒にオチの 4 コマ目を作成する。そ の目的は、他者 ( 設定された登場人物 ) の立場に立って. 3 実践の結果. 考える経験をすること、さらに両班の登場人物を対峙さ. 3.1. 完成作品. せた時に、立場の異なる 2 者がどのようにトラブルに向. 生徒達が作成した作品を紹介する ( 図 2)。. き合うかを体験することであった。 2.3. 当日の流れ 本実践は平成 22 年 11 月 29 日の 5、6 校時に 1 学 年を対象に実施した ( 表 5)。5 校時は各クラスでのマン ガの作成とクラス代表作品の選出、6 校時は学年全体 でクラス代表作品の共有と大学教員 ( 有元 ) による活動 の総括・講演であった。5 校時には各クラスの保健委 員が司会進行をつとめた。大学生・院生は 9 名が学生 アドバイザーとして参加し、1 クラスに 1 ~ 2 名が配属 された。学生アドバイザーの役割は、保健委員による 進行の補助、登場人物の立場を具体的にイメージする 手助け、クラス作品の講評と選出 ( 以上、5 校時 )、選 出作品のロールプレイ (6 校時 ) などであった。大学教 員の講演は、 「他者理解と視点」というテーマだった。 内容は、 「他人の心を理解することは実際には困難また は不可能であるため、他者の視点に立ってみる工夫が大. 図 2 生徒の作品例. 教育デザイン研究 第2号 53.

(6) 教育インターンの目的と意義. 1% (3). 4 コママンガの 1 コマ目には、トラブル事例 ( 表 3 ま たは表 4) が書いてあり、班ごとに作成したのが 2 コマ 目と 3 コマ目であり、4 コマ目と考察は異なる立場を割 り当てられた 2 つの班が 1 組となって創作した。ここに 挙げた作品例は、恋人事例 ( 表 4) であり、両班に割り 振られた性格特徴は「自己中心で攻撃的なタイプ」、そ の性格特徴を踏まえた上で、左の 2 コマは C 役、右の 2 コマは D 役の思いをマンガにしたものである。 3.2. アンケート結果 6 校時終了時に収集したアンケート結果を示す。アン ケートは 1 学年計 255 名に実施した。 2% 1% (6) (2). 8% 9% (46) (51). ⑤大学教授の話 21% (122). 13% (73) 13% (77). ②4コママンガ作成 ①トラブル事例のロールプレイング ⑥保険委員の頑張り. 16% (92). 19% (111). ③4コママンガ作品の発表(5時間目) ④代表4コママンガ作品の発表(6時間目) ⑦大学生アドバイザー ⑧その他. 図 5 印象に残ったこと ( 複数回答可 ) 具体的に印象に残った項目として、一番回答が多かっ たのが 「⑤大学教員の話」であり 21% だった。続いて 「② 4 コママンガ作成」が 19%、 「①トラブル事例のロール. ①よかった 50% (128). 47% (119). ②まあまあよかった ③あまりよくなかった ④よくなかった. プレイング」が 16%、 「⑥保健委員の頑張り」が 13%、 「③ 4 コママンガ作品の発表 (5 時間目」が 13%、 「④代表 4 コママンガ作品の発表 (6 時間目 )」が 9%、 「⑦大学 生アドバイザー」が 8% という結果であった。 3.3. 大学生・院生、教員の感想. 図 3 今回の健康教室の印象 健康教室の印象は、 「①よかった」と 「②まあまあよかっ た」の回答を併せて 97% がよかったと感じていたこと. 次に、学生 7 名と授業者である岡本の感想を示す。 感想については健康教室後に、 「①健康教室を実施して みての改善点」 「②大学と現場の連携について」の 2 点 について自由記述で求めた。. がわかった。. 5% 0% 1% (12) (1) (2). 表 6 学生の感想 ( 改善点 ) ①理解できた 55% (138). 40% (102). ②まあまあ理解できた ③あまり理解できなかった ④理解できなかった ⑤無回答. ※括弧内は回答人数を示す 活動の改善点として、作業時間の不足や時間配分の 難しさ、またこれらの原因として活動自体の難しさを挙 げた者が 7 名いた。彼らは配属クラスにおいて実際の 活動が予定より遅れたことなども併せて記述していた。. 図 4 健康教室のテーマと目的の理解 健康教室のテーマと目的の理解については、 「①理解 できた」と「②まあまあ理解できた」の回答を併せて 95% が理解できたと感じていたことがわかった。. 54. 具体的な改善案として、高校生に活動の流れをフロー チャートで提示すること、4 コママンガ作成に充てる時 間を充実させること、作業時間を意識させるように声か けすること、マンガ作成の際に目的の主眼ではないイラ ストに凝らせないために人形や吹き出しを用意すること.

(7) などが挙げられた。. に基づいた研究のあり方を希求する記述が得られた。. 消極的だった高校生への対処については 2 名が記述. 改善点としてはもっと交流する時間があれば良かった. した。全く意見を言わなくても授業が進んでいってしま. ということ、学生の役割がもっと絞られていた方が動き. うことへの危惧や、事前に興味を持たせるような活動に. やすかったのではないかということが挙げられた。. よってそのような事態を回避できるのではないかという. その他、学生アドバイザーという立場は教師という立. 意見があった。. 場と比べて肩肘張らなくてよかったのでアドバイスしや. よりリアルな題材の採用については、友達事例の読書. すかったという意見や、教育実習だけでは現場の経験. ノートについて「丸々写すわけないよ」という高校生の. が足りないので、大学と現場の連携には大変興味があ. 声が聞かれたことから、数学のプリントなど、より現実. るという意見があった。. 的な題材を採用することが改善案として挙げられた。. 岡本は現場の教員として、教育現場のニーズに専門的. 岡本も健康教室実施上の改善点として、作業時間の. な知識や技術、新しい視点を提供してもらえるという点. 不足を挙げたが、単に時間を延ばしても内容について深. で、大学との連携は貴重だという感想を持った。また有. く考えられたかは疑問だとして、プログラム内容と時間. 意義な連携にするためには、教育現場側は大学と連携. の割り振り両方の見直しの必要性を指摘した。. する明確なねらいを持っていること、大学側は各教育現. 学生ボランティアの役割の焦点化についても述べてお. 場の実態を捉えることが必要であるとした。このために、. り、生徒に対してより積極的に働きかけられる役割を考. 教育現場と大学が共同で準備を進める、充分な対話時. える必要があるとしていた。学生の立場は、教育インター. 間の確保の必要性を指摘した。. ンとして現場との協働の準備段階にどれだけ関われるか によっても異なるだろうと結論した。. 3.4. 本実践の考察 実践現場における今回の連携の意義としては、健康 教室の印象について 97% の高校生が「①よかった」 「② まあまあよかった」と答えていたこと、テーマと目的の 理解について 95% の高校生が、 「①理解できた」 「②ま あまあ理解できた」と答えていたことと、高校生の作品 から、本健康教室の目的であった高校生がクラスの仲 間との協働作業を通して「親しい関係にあっても、認識 の違いがあることを確認すること」を達成できたと判断 できる。目的達成に大学側が果たした役割としては、教. 表 7 学生の感想 ( 大学と現場の連携 ). 材開発、当日のアドバイザー役としての学生参加、大学 教員による活動の総括と講演ということになる。教材開. 大学と現場の連携について、今回の活動については. 発にあたっては、表 2 の教材開発期間に、検討会議の. 全員が肯定的であった。具体的には、今回の保健教室. ほか電子メールによる相談も 20 通を超えた。岡本は現. で自分達の役割の意義として、高校生が緊張感を保つ. 場での健康教育の実践者として、有元・尾出は教育心. きっかけとなれたことや、アドバイスによって理解の助. 理学の研究者として、学生は教職を志望する立場、研. けになれたことが挙げられていた。. 究を志望する立場として、それぞれが高校生にとっての. 研究と現場の連携についての記述もあった。 「現場で. よりよい学習環境を目指して対話を重ねる中で、授業は. 調査を行いたいと考えているが、コネもないので途方に. デザインされていった。. 暮れている」といったように、卒業論文や修士論文の. 大学側の参加学生にとっての本活動の意義としては、. 研究を行うために現場に入る機会を求めているといった. 高校生による活動目的の理解とその達成の助けとなれ. 記述や、 「研究室を離れて、現場を見ることができ、研. たこと、活動の中で高校生がほどよい緊張感を維持し、. 究と実践の場をつなぐことができると思う。」といったよ. 集中して取り組むためのきっかけになれたことを実感し. うに、文献研究や実験室研究とは異なる現場との連携. ていたことが挙げられる。作業時間の配分や、消極的. 教育デザイン研究 第2号 55.

(8) 教育インターンの目的と意義. な学生への対応についての指摘は、教職志望の学生に. られていない目標 (target unknown to everybody)」を. よる、将来の実践家としての「実践の研究化」の準備. 目指すことだと見いだした( 有元 , 2008)。 それはインター. 段階にあたるような省察だと言えるだろう。また教育研. ン生にとっても、誰にとっても、答えが未知なる領域な. 究を志す学生にとっては、現場との対話の中で、現場の. のである。 「教育インターン」はこうした答えのなさのリ. ニーズに配慮しつつ自らの研究をデザインしていく「研. アリズムを現場に生じさせ、そこに学生や実践者を巻き. 究の実践化」を試みる機会であったと考えられる。. 込む装置として現場を再デザインすることになるだろう。. 最後に、長期に渡る現場での活動を望む声が教職志. トゥオミ - グルーンは学校から現場への知識の転移を、. 望の学生からも、教育研究を志望する学生からも挙がっ. 新たな理論的概念を開発し、日常の実践的な問題解決. ていたことを取り上げておく。今回は単発のイベント的. に適応するための、 「二つの活動システムの共同作業の. な授業支援であったが、研究者、学生が現場に入りこ. 増加」として定式化している。つまりどちらかがどちら. んで継続的に現場教員と協働することは、学生が現場. かを一方的に指導できるような単純な事態ではなく、む. での省察を深める意義を持つだけでなく、現場にとっ. しろ安定した実践のルーチンを乱し、新しい知恵のため. ても学習環境のデザインに学校外の新鮮な視点が持ち. の共同作業のプロセスを賦活させることだというのであ. 込まれる機会となるだろう。 「教育インターン」は学生を. る。こうした考えに従えば、 「インターン」とは実践現場. 媒介とした理論と実践の対話の場となり得ると考えられ. から学習者への一方向性の教育というだけではなく、院. る。. 生を媒介とした大学と現場の対話の場の構築として再定 義することが可能だろう。. 4 まとめ:発達のゾーンとしての「教育インターン」. まとめると、 「教育インターン」 は、 まず第1に院生にとっ. 以上具体例を提示しつつ示してきたとおり「教育イン. て実践・研究への深い動機を伴った参加の機会である. ターン」は、理論と実践の対話の場である。本稿では. と言える。実践例の中に示したとおり、学生・院生は 「もっ. 幾度も「理論と実践」と併置して論じてきたが、しかし. と長期に参加したい」 「もっと現場で研究したい」という. そもそも理論と実践はこのように二元論的に布置される. 希望と期待を持っていた。. ような関係にはなく、どちらともが互いに依拠し合う複. 第 2 に「教育インターン」は、科学的、意識的な実. 合体の 2 側面に過ぎない。そもそもが往還的であり、. 践の省察の機会である。インターンを単なる現場体験. そもそもが対話的な活動だと考えられる。従って「教育. にとどめず、体験を積極的に有用化し、インターン生に. インターン」とは、理論と実践が相互に互いのあり方を. とっての発達のゾーンにすることが期待される。本稿で. 規定し合うような、現実的な「場の構築」ということに. 示した実践例では、養護教諭・大学教員を交えての検. なるだろう。. 討会議や実践後の生徒アンケート等によって、ある程度. 現実的な場である以上、これは一般の講義科目とは. の体験の省察がはかられた。ただしここではまだ準備. 異なり、シナリオもなく、誰も最適な答えを知らない。. 的な実践であり、 「教育インターン」の実施に向けては. 現場の実践家や大学教員が、より知識があるからとい. ゼミや全体報告会、報告資料、データベース等を活用. う理由だけで、インターン生に最適な指導や援助する場. した体験の省察と共有に関してさらに洗練の余地がある. 面とはなり得ない。大学教員も、現場の実践家も、ど. だろう。. う学生を支援するべきか、どんな発達のゾーンを作って. 最後に第 3 として、 「教育インターン」は現場と研究. やるべきかを決定する基準は持ち得ない。したがって. の対話の場の構築の機会である。実践例に示したとお. これは学習者のために準備された「教育のカリキュラム」. り、本稿の研究/実践自体がそうした対話の場であっ. にはなり得ない。どう協働し、どう指導し、インターン. た。現場の問題意識に始発し、研究者、学生との協働. 生にとってどんな発達のゾーンを構成するかは、実践の. でアイディアを膨らませ、現場で実践し、そしてこうして. 場という「いま・ここ」でまさに試されている現実的な. 論文にまとめ公刊すること、この一連の過程で我々が多. 問題解決と不可分に一体だからである。. くを学んだことこそが、 「教育インターン」の可能性を示. 看護教育におけるインターンシップを分析したトゥオ. すことだと考える。. ミ - グルーンは、実践の中での教育とは「未だ誰にも知. 56.

(9) 本実践研究への参加学生: ・横浜国立大学大学院教育学研究科学校教育専攻学 校心理学分野 2 年 郡司菜津美・柴田真穂・朴星亞 1 年 新原将義・中塚圭二郎・松田尚之. 福田幸男・海老原修・中嶋俊夫・杉山久仁子・石田淳一・加 藤圭司・渡辺邦夫・青山浩之・物部博文・池田敏和・金馬 国晴・堀内かおる・有元典文 2009 教職実践演習 ( 仮称 ) としての拠点校スチューデントティーチャー・プログラム の可能性 , 日本教育大学研究年報 , 27, 343-357. ・横浜国立大学教育人間科学部学校教育課程心理発達 専門領域 4 年 布施貴也・海野雄也 3 年 平野泰行. 森下覚・尾出由佳・岡崎ちひろ・有元典文 2010 教育実習に おける学習はどのように構成されているのか-教育的デザ. 引用文献 有元典文 2008 共同体の接触から見えてくるもの―TuomiGrohn の論文より インターナショナルナーシング・レ ビュー 31(5), 55-60 Arimoto, N., Morishita, S. & Oide, Y. 2008 Learning to be a “Very Good” teacher -Artifacts that change the activity system of student teaching., ISCAR 2008 Book of abstracts, 50 Engeström, Y. 1987 Learning by expanding: An activitytheoretical approach to developmental research. Helsinki: Orienta-Konsultit.. インと実践の保持のデザインとのダイナミクス- , 教育心 理学研究 , 58(1), 69-79 Lave, J. & Wenger, E. 1991 Situated learning : Legitimate peripheral participation. Cambridge [England]; New York: Cambridge University Press. ( 佐伯胖訳 1993 状況に埋め 込まれた学習―正統的周辺参加 産業図書 ) Schön D. A. 1983 The Reflective Practitioner: How Professionals Think In Action. New York: Basic Books.(佐 藤学・秋田喜代美訳 2001 専門家の知恵 反省的実践家は 行為しながら考える ゆみる出版) 柴 田 真 穂・ 有 元 典 文 2010 ST( ス チ ュ ー デ ン ト・ テ ィー チャー)による実習現場への言及点-実習体験の資源化に 着目して- , 横浜国立大学大学院教育学研究科教育相談・ 支援総合センター研究論集 , 10, 21-37. 教育デザイン研究 第2号 57.

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参照

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