【特別支援学校:肢体不自由】
表現活動「ぞうけい」学習指導案
県立広島特別支援学校
指導者L 山根諒子
T1 塚谷雅子
1 日時・場所 平成22年7月5日(月)10:40~11:25 小4教室
2 学年 小学部第4学年(女子1名,男子1名)
3 単元名 さわってつくろう
4 単元設定の理由
○児童観
対象としている児童の学習集団は,女子1名と男子1名の計2名で編制されており,自立活動を中心
とする教育課程で学習している。障害の程度は異なるものの,重度の運動障害と知的障害があり,日常
生活において支援を要することが多い。また,1名は,日によって体調の良し悪しに差があり,体力面
への配慮が必要となるため,体調管理によって授業に参加できないことも多い。視覚によって情報を受
け止めることに難しさがある児童もいるため,聴覚や触覚,嗅覚など,他の感覚を併せて活用すること
で環境把握ができるように配慮を要する。
「ぞうけい」の授業では,感覚あそびを主に,素材としっかりと関わって感触などを味わうとともに,
活動を通して感じたことを表現していく力を引き出すことができるように活動を繰り返し行ってきた。
しかし,上記のような実態があるため,学習を積み重ねていくことや日常生活の中で経験を重ねていく
ことに難しさがあり,感覚刺激に過敏に反応したり,鈍感だったり,楽しめる感覚の幅が狭かったりす
る。筋緊張の状態や筋力,麻痺などの身体的課題も多く,上肢の動きが制限されやすいため,一人で充
分な感覚あそびをすることは困難な実態がある。それぞれの課題に応じた上肢の動きができるような活
動を設定することで経験を重ねながら,しっかりと上肢を動かすことができるように支援していく必要
がある。また,児童の感覚の受容や表出の表れやすさには姿勢管理も影響し,体幹や頭部を安定させな
がら,それぞれの児童に合わせた姿勢を支援していくことが重要となる。
コミュニケーションについては,2名とも,表情や発声,身体の動きなどによって意思や快・不快を
表現している。互いに意識している様子があり,視線を向けたり,相手に向けて声を出したりする様子
が見られている。指導者が言葉をかけたときなどには,話しかけられていることを感じて表情を変えた
り,返事をするように発声を返したりする。
○教材観
本単元で扱う洗濯のりや小麦粉粘土をつくる過程では,ザラザラしていた粉洗濯のりやサラサラして
いてフカフカだった小麦粉が,水を混ぜることによってベトベトと手にくっつく感触になるといった感
触の変化を味わうことができる。そして,のりや粘土の状態になると,手を開いて押したり,手の平で
触りながら素材を引き伸ばしたりしているときなどに,指の間に素材がすり抜けていく感覚を受け止め
ることができる。小麦粉の場合,粉の段階では,ヒンヤリとした心地よい感覚も味わうことができる。
また,柔らかさや温度が異なる素材を扱うことで,
「柔らかい」
「(少しだけ)固い」
「冷たい」
「温かい」
などの感触や温覚刺激を意識しやすくすることができる。そして,それらを混ぜ合わせることで,色の
変化を感じ取りにくい児童にも,感触や温度の変化していく様子から混ざり合うことがイメージしやす
くなると考えている。
手の平や指の間などでしっかりと感触・感覚を受け止め,小麦粉粘土のような素材と関わる活動を繰
り返すことで,色々な感触・感覚を受容することができるようになったり,活動への意欲や手の操作性,
支援を受け入れながら活動する力などが高まったりすることが期待できる。
○指導観
指導にあたっては,素材とかかわる時間を十分確保することで,素材に触っているときに,感触・温
度の違いや変化,出来上がった素材の感触などを味わい,
「おもしろい感触だな」
「嫌な感触だな」「もっ
と触りたいな」などの気持ちをもてるようにする。このとき,他者とともに上肢を動かしたり,自発的な
動きを引き出したりすることで,
「手の平で感触を確かめる」
「筋緊張を緩めてゆっくりと大きく上肢を
動かす」
「色々な動きを経験する」など,それぞれの児童の課題も取り入れながらしっかりと上肢を動か
すことができるように行っていきたい。
感触・感覚を十分に受け止めたり,いろいろな上肢の動きを経験したり,見たり,感じたことを発信
したりするためには,頭部・体幹を安定させた学習姿勢の保持や上肢の支援に留意することが求められ
る。そこで本単元では,2名の児童がメインの活動を順番に行うように設定し,姿勢や上肢への支援を
丁寧に行うことができるようにした。こうすることによって,待ち時間は増えるが,待っている間にも
友だちの活動を意識できるようにし,それによって「自分もやりたい」という気持ちを高めて,その気
持ちを表現する場にしていきたい。
また,素材の感触や温度,上肢の動きなどについて,内容にあわせた擬音・擬態語を取り入れながら
声かけをするなどして,児童が自分や友だちの活動を意識し,学習を意識するための手がかりとなるよ
うにしたい。
5 単元の目標
○手の平や指先,指の間などで洗濯のりや小麦粉粘土などの素材に触り,つくる過程での感触の変化や
素材の感触などを受け入れながら,上肢を動かすことができる。
○活動を通して感じたことを,表情や身体の動き,視線の動きなどで表現することができる。
6 指導計画
[全10時間]
第1次 ザラザラ・もちもちヌトヌト洗濯のり(3時間)
第2次 ヒンヤリサラサラ・ベトベト小麦粉粘土(7時間) 本時 3/7
7 本時の目標
(1) 全体の目標
○手の平や指先,指の間などで小麦粉粘土に触り,温度の違いや小麦粉粘土の感触などを十分に受け止
めることを中心にしながら,できるだけ上肢を動かそうとする。
○活動を通して感じたことを,表情や身体の動き,視線の動きなどで表現することができる。
(2) 個々の目標
これまでの様子
目標
支援・配慮事項
A
・体力がなく,疲れやすいため,基本的に登校は午前のみである。 日によって体調の良し悪しに差があり,授業への参加回数が少な い。日常生活では臥位で過ごすことが多いため,座位姿勢をとる だけでも体力を消耗しやすい。ベンチ椅子座位はもたれるような 姿勢を挟みながら20分くらいなら可能であるが,その後は休息 が必要となる。体調や疲労によって活動への集中力が変動しやす い。 ○感触や温度などを 受け止めながら,教 員 と 一 緒に 色々 な 手 の 動 きを 経験 し たり,自発的に手を 動 か し たり する こ とができる。 ・感触・感覚を受け 止めたり,上肢を 動かしたりしやす くするために,体 幹や頭部の安定, 円背に留意した姿 勢を支援する。・触覚に過敏性があり,不快な刺激を受けると四肢を体幹部に引き 寄せるように縮まる反応を見せる。ネバネバやヌトヌトなどの感 触が好きだが,温覚刺激に過敏に反応をすることがよくある。慣 れたり,気持ちが向いたりすると手を伸ばすことができる。 ・両肩が亜脱臼の状態にある。上肢の自発的な動きは多いが,左右 の動きは未分化で,動かし方のパターンには限りがある。筋力が 弱いため,上肢の空間保持が安定しにくく,必要以上に大きな動 きになったり,衝動的な動きになったりすることも多い。肘を支 点にすると目的的に上肢を動かしやすくなる。トントンとたたく ような動きは一人でもよくするが,平面上を上下左右に動かすこ とはほとんどない。 ・意欲が高まったときには,注視したり,上肢を積極的に動かした り,声を活発に出したりする。問いかけに対して,声や表情など で応えようとする。肯定の場合に,明確に意思表示をすることが 多い。 ・低緊張で円背になりやすく,体幹・頭部を安定させた姿勢をとる ことが難しい。右凸の側わんがある。 ・友だちの様子を見つめたり,応援するように声をかけたりするこ とがある。 ・活動を大まかに見通す力があり,期待感や意欲をもって活動に臨 むことができる。 ○快・不快を声や表情 で表現したり,小麦 粉 粘 土 を注 視し た り,自分から手を伸 ば し た りす るこ と ができる。 ・肘などを介助して, 動きを引き出すよ うに支援する。 ・体調や疲れ具合を 観察し,姿勢や活 動の時間配分に配 慮する。 ・気持ちや意思の表 現や,自主的な上 肢の動きなどを受 け止め,言葉で即 時フィードバック する。