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 NMRの信号がはじめて観測されてから47年になる。その後、NMRは1960年前半までPhys. Rev.等の物理学誌上を賑わせた。1960年代後半、物理学者の間では”NMRはもう死んだ”とささやかれたということであるが(1)、しかし、これほど発展した構造、物性の

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第8章 磁気緩和Ⅰ

8. 1 ブロッホ方程式と CW-NMR

Blochは磁化の運動に緩和の効果を導入した[1].熱平衡値からずれた縦磁化(Z磁化) は 指 数 関 数 的 に 平 衡 値 に 近 づ く と 仮 定 し , そ の 特 性 時 間 をT1と し て 縦 緩 和 時 間

(longitudinal relaxation time)と呼んだ.横磁化(XY磁化)が熱平衡値 0 に近づく特性時間T2として,これを横緩和時間(transversal relaxation time)と名付けた.Bloembergenらは

これらをそれぞれスピン―格子緩和時間,スピン―スピン緩和時間と呼んだ[2]. Bloch の命名は縦磁化,横磁化を区別しているのに対して,Bloembergenらの命名は緩和の機 構を反映している.ここではBlochの命名を用いる.高周波回転磁場が存在するときの 磁化の運動方程式(3.2.12)に緩和の効果を加えて, 0 2 ( ) x y dM M M dt = −ω −ω − T x (8.1.1a) 1 0 2 ( ) y z x dM M M M dt = −ω + ω −ω − T y (8.1.1b) 0 1 1 ( z z y M M dM M dt ω T − = − ) (8.1.1c) この式をブロッホ方程式という.ここで 0 y M y= M , 0 z M z= M ,θ ω= 1t,θ11T1,θ21T2, 0 1 (ω ω) ω − ∆ = (8.1.2) とおくと, 2 dx x y dθ = −∆ −θ (8.1.3a) 2 dy y z x dθ = − + ∆ −θ (8.1.3b) 1 ( 1) dz z y dθ θ − = − (8.1.3c) 高周波磁場が十分長い間照射されており,磁化が時間変化しなくなって定常状態に達し た時の磁化は,

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8. 1 ブロッホ方程式と CW-NMR 95 2 2 0 1 2 2 2 2 2 2 0 2 1 2 0 2 1 1 2 ( ) 1 1 {( ) } x M T M T T ω ω ω θ θ θ θ ω ω ω − ∆ = = + ∆ + + − + T (8.1.4a) 2 1 2 2 2 2 2 0 1 2 1 2 1 {( 0 ) }2 1 1 2 y M T M T T θ ω θ θ θ ω ω ω − − = = + ∆ + + − + T (8.1.4b) 2 2 2 0 2 2 2 2 2 2 0 2 1 2 0 2 1 1 2 1 {( ) } 1 1 1 {( ) } z T M M T T ω ω θ θ θ θ ω ω ω + − + ∆ = = + ∆ + + − + T t (8.1.4c) となる. これらは回転磁場のもとでの磁化であるが,実際には直線偏光磁場BX =2B1cosω を 加え,反対方向の回転磁場の影響が小さいとして無視する.実験室系における磁化MXMYは cos sin X x y M =M ωt M− ωt sin cos Y x y M =M ωt M+ ωt であるので, 2 0 0 2 1 0 2 1 2 2 2 2 0 2 1 1 2 0 2 1 1 2 ( ) cos sin 1 {( ) } 1 {( ) } m m X T H T H M t t T T T T T T ω ω ω χ ω ω χ ω ω ω ω ω ω ω − = + + − + + − + と表すことができる. χmは核の磁化率(4.2.2)である.これを 1 1 2 cos 2 sin X M =χ′ H ωt+χ′′ H ωt (8.1.5) と表すと,χ′, χ″は高周波複素磁化率χ χ= ′−iχ′′の実数部分,虚数部分で, 2 0 0 2 2 2 0 2 1 1 2 1( ) 2 1 ({ ) } m T T T T ω ω ω χ χ ω ω ω − ′ = + − + (8.1.6a) 0 2 2 2 0 2 1 1 2 1 2 1 ({ ) } m T T T T ω χ χ ω ω ω ′′ = + − + (8.1.6b) となる. 単位時間にスピン系単位体積によって吸収されるエネルギーは 1 1 0 1 2 T X X dB P M dt H B T dt χ′′ ω = − ∫ = であるので,高周波磁化率の虚数部分はエネルギーの吸収を表す.高周波磁場の周波数 に関して半値半幅 2 1 1 2 2 1 T T T ω δ = + のローレンツ型の吸収曲線になる.実数部分はこれ に対応する分散曲線である.図8. 1 に吸収および分散曲線を示す.

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第8章 磁気緩和Ⅰ 96 図8. 1 高周波磁化率の実数部分χ′およびχ″の周波数依存性.χ′は分散,χ″は吸収を表す 高周波磁場の周波数を定常の条件を満たすようにゆっくり変えながら,高周波磁化率を 測定する方法がCW(continuous wave)法である.実際には,線幅の広いブロードライ ンNMR では,高周波磁場の周波数を一定にして,静磁場を掃引してラーモア周波数を 変えている. (8.1.4c)から定常状態のZ磁化はω ω= 0で平衡磁化の11 (1+ω1 1 22T T )倍になる.これを飽和 因子と呼び,T1 =T2 = 1sec,ω1/2π=10Hzとすると 0.00025 で非常に小さい.溶媒の大き なピークを照射して飽和させ消去するのに用いる.(8.1.6)よりω0−ωを消去すると, 0 2 2 2 2 1 1 2 0 2 0 2 2 2 2 2 1 1 2 1 1 2 1 4 ( ) 1 1 1 1 4 4 ( ) ( ) 1 1 m m m T T T T T T T T T ω χ χ ω χ ω χ ω χ ω ω ′′ − ′ + + + + = (8.1.7) が得られる.ωが変化すると( ,χ χ′ ′′)の点は,図8. 2 に示すように,軸の長さ 0 2 2 1 1 2 1 4 1 m T T T ω χ ω + , 0 2 2 1 1 2 1 4 1 m T T T ω χ ω + ,中心 0 2 2 1 1 2 1 4 (0, ) 1 m T T T ω χ ω + の楕円上を動くことがわかる.χ′′の最大値は

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8. 1 ブロッホ方程式と CW-NMR 97 0 2 max 2 1 1 2 1 2 1 m T T T ω χ χ ω ′′ = + (8.1.8a) また,χ′の最大値は 0 2 max 2 1 1 2 1 4 1 m T T T ω χ χ ω ′ = + (8.1.8b) である.ω を増大に伴って χ1 ′,χ′′ともに減少し飽和するが,その程度はχ′の方が弱 いことがわかる. 図8. 2 χ′とχ″をプロットしたもの t = 0 からラーモア周波数に等しい周波数の高周波磁場がかかった場合,磁化はどの ような経過で定常状態になるかを調べてみよう.この場合,(8.1.1)は 2 x dM M dt = − T x (8.1.9a) 1 2 y z dM M M dt = −ω − T y (8.1.9b) 0 1 1 ( z z y M M dM M dt ω T − = − ) (8.1.9c) となるので,x成分は時定数T2で平衡値0 になる.一方,

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第8章 磁気緩和Ⅰ 98 2 dy z y dθ = − −θ (8.1.10a) 1 ( 1) dz z y dθ θ − = − (8.1.10b) であるので, 2 1 ( 1) / 0, z z y θ y θ − − − = − = 0の2直線の交点が定常点である.図8. 3 に 各領域での変化の方向を矢印で示す.どの位置から出発しても定常点に近づく. 図8. 3 磁化が平衡へ近づく様子.2つの直線はそれぞれ− −z y2 =0,y−(z−1) θ1 =0で ある.2直線の交点が定常点である.各領域での変化の方向を矢印で示す 8. 2 緩和の理論 NMRには主な緩和時間が2つある.Blochは磁化の時間変化を記述したブロッホ方程 式に2つの緩和時間,T1,T2を現象論的に導入した[1].Bloembergenらは,双極子―双 極子相互作用による局所磁場が分子運動によって揺らぐことによって緩和が引き起こ されると考え,T1,T2を分子パラメータで表した式を導いた[2].緩和が揺動する局所磁 場によってもたらされるという基本的な考えを初めて示したものである.日本のKubo とTomitaは非可逆過程の統計力学の手法をもちいて磁気緩和を取り扱った[3].揺動する 相互作用ハミルトニアンの相関関数のフーリエ変換からT1,T2を求める一般的な理論を 示した.その中でBPPの式の誤りも指摘している.Solomonは双極子相互作用をする2 ス ピ ン 系 に つ い て 詳 し く 遷 移 確 率 を 計 算 し ,T1,T2の 具 体 的 な 式 を 導 い た[4]. Kubo-Tomitaから3年遅れて,Redfieldは密度行列に対する主導方程式をもとにブロッホ

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8. 2 緩和の理論 99 方程式を導出した[5].現在,磁気緩和の基本的な理論はRedfield理論と言われているが, 正しくはKubo-Tomita-Redfield理論というべきであろう. 緩和を2準位モデルによる現象論で考えてみよう.熱平衡を達成できる程度の極めて 弱い相互作用しかない,ほとんど独立な多数のスピン1/2 の集団を考える.大きな静磁 場中で1つのスピンは,αおよびβ の状態の中,どちらかを1つ占めることができる. 図8. 4 に示すように,2つのエネルギー準位の占拠数をnαおよびnβとすると,それら の時間変化は次の方程式に従う. 図8. 4 α,βの2つのエネルギー準位の占拠数nαおよびnβ.W(α β→ )は,1つのスピンがα状態 からβ状態へ遷移する確率.W(β α )も同様 ( ) ( ) ( ) ( ) dn W n W n dt dn W n W n dt α α β α β α β β α β α β α β → → → → = − + = − (8.2.1) ここでW(α β )は,1つのスピンがα状態からβ 状態へ遷移する確率である.W(β α )も 同様である.熱平衡状態においてはdn dn 0 dt dt β α = = なので,占拠数の比はボルツマ分布 を仮定して, 0 ( 0 0 ( ) exp( / ) n W B kT W n ) β α β β α α γ → → = − = = (8.2.2) W をW(α β→ )とW(β α→ )の平均とすると,

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第8章 磁気緩和Ⅰ 100 0 ( ) 0 ( ) (1 ) 2 (1 ) 2 B W W kT B W W kT α β β α γ γ → → = − = + = = 占拠数の差を n=nαnβとすると, 2 ( eq) dn W n n dt = − − (8.2.4) したがって,T1は 1 1 2 T W = (8.2.5) と書くことができる.Wは無限大の温度における遷移確率で,量子力学的な計算で求ま る遷移確率である.BloembergenらおよびSolomonは,双極子―双極子相互作用の場合に この遷移確率を計算してT1を求めた. 8. 3 主導方程式 スピン系のハミルトニアンを時間によらない部分H0と,時間に関してランダムに変動 する部分H1(t)からなるとする[5,6].H1(t)を摂動と考えると,相互作用表示での密度行列 は * * * 1 1 [ ( ), d H t dt i ρ ] ρ = = (8.3.1) である.ここで * 0 0 * 0 0 1 1 exp( ) exp( ) exp( ) ( ) exp( ) iH t iH t iH t iH t H H t ρ = ρ − = − = = = = (8.3.2) この式を積分して, * 1 0 1 * ( )t * (0) t[H t( ), * ( )] i ρ =ρ + ∫ ′ ρ ′ = t dt′ (8.3.3) 積分の中にあるρ* ( )t′ に再びこの式を入れると, * * 1 1 0 0 1 1 * ( )t * (0) t[H t( ),{ * (0) t[H t( ), * ( )]}]t i ih ρ =ρ + ∫ ′ ρ + ∫′ ′′ ρ ′′ = dt dt′ ′′ (8.3.4) * * * 2 * * * 1 1 1 0 1[ ( ), (0)] ( ) [1 t ( ),[ ( ), ( )]] d H t H t H t dt i i ρ ρ t dt ρ ′ ′ = + ∫ = = ′ (8.3.5)

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8. 3 主導方程式 101 ランダムに変動する系の多数の集団を考え,両辺をこの集団で平均する.集団平均をバ ーで表す.H t1*( ) 0= ,H1*(t)とρ*(0)の間に相関がないと仮定する.集団平均の結果,右 辺の第1項は消える.第 2 項の積分変数t′の原点をtに移動し, t′ = − とおいてτの積t τ 分に変換する. 1 1 2 0 * 1 [ *( ),[ * ( ), * ( )]] t d d H t H t t dt ρ = − τ τ ρ τ ∫ = (8.3.6) H1*(t)の行列要素とH1*(t-τ)の行列要素の積の集団平均はτのみの関数で,ττcでは 0 と仮定する.tcのとき積分の上限を∞に,ρ* (t−τ)をρ* ( )t に置き換えてよく, 1 1 2 0 * 1 [ *( ),[ * ( ), * ( )] d d H t H t t dt ρ ∞ τ τ = − − = ρ ] (8.3.7) ここでρ は平均の密度行列である.摂動ハミルトニアンH* 1(t)の相関関数を次のように 定義する. , ( ) ( | 1( ) | )( | 1( ) | ) Gαα ββ′ ′τ = α H t α β′ ′ H t−τ β (8.3.8) , ( ) Gαα ββ′ ′τ はτ の偶関数と仮定する.相関関数の半フーリエ変換はスペクトル密度関数 j であるので, , , 0 ( ) ( ) i jαα ββ ω = ∫Gαα ββ τ e−ωτdτ (8.3.9) 煩雑な計算の結果, * ( ) , ( ) i t ( ) d t R e dt α α β β αα αα ββ ββ ββ ρ − − +′ ′ ρ ′ ′ ′ ′ = ∑ * t ′ (8.3.10) と書くことができる.ここで指数関数の肩のα,α′等 は非摂動ハミルトニアンのα状態 等のエネルギー固有値を角周波数で表したものである.Rαα ββ, はスペクトル密度関数 を用いて, , 2 , , , , 1 { ( ) ( ) ( ) ( Rαα ββ jαβ α β jα β αβ β α jγβ γα βα jβ γ α γ γ γ )} α β β α δ γ β δ β ′ ′= ′ ′ − + ′ ′ ′− ′ − ′ ′∑ − − ∑ ′ ′ ′ = −γ (8.3.11) と表すことができる.指数関数の部分は時間に関して激しく振動するので平均として消 えるので, β β− ′= −α α′ (8.3.12) を満たす項(永年項)のみが寄与する.したがって,

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第8章 磁気緩和Ⅰ 102 * , ( ) ' ( ) d t R dtραα′ = ∑ββ′ αα ββ′ ′ ββ * t ρ ′ (8.3.13) Σ′は(8.3.12)を満たす状態についてのみ和をとることを表す. 密度行列の対角要素の時間変化は * , ( ) ' ( ) d t R dtραα = ∑β αα ββ ββ * t ρ (8.3.14) 対角要素は占有確率を表すので,上の式は多くの分子種についての1 次化学反応式と同 等になる.平衡状態での密度行列をρ とすると,詳細均衡の原理により αα0 0 , , Rαα ββ ββρ =Rββ αα ααρ0 (8.3.15) が成り立つ. , Rαα ββ =Rββ αα, (8.3.16) なので 0 0 ββ αα ρ =ρ (8.3.17) 占有確率は状態によらず等しいことを意味し,分布は一様になる.この状況は無限大の 温度の系に対応する.有限の温度の場合には,占有確率はカノニカル分布するが,そう ならなかったのは,スピン系のハミルトニアンのみを考えたためである.熱浴を表す格 子系のハミルトニアンも考慮すると,(8.3.14)の右辺の * ββ ρ ′を(ρββ* ′( )t −ρβ0β′)で置き換 えればよいことが示されている.ここで 0 E kT E kT e e β γ ββ ββ γ ρ ∑ = = (8.3.18) は温度T で熱平衡状態の密度行列である.以後,集団平均のバーを省略して * * , ( ) ' ( ( ) ) d t R t dt 0 αα αα ββ ββ ββ ββ ρ ′ ′ ′ ρ ′ ρ ′ ′ = ∑ − (8.3.19) 上の式を主導方程式(master equation)という.ρ に対する式は(8.3.2),(8.3.3)より 0 0 , ( ) [ , ( )] ' ( ( ) ) d i t H t R t dtραα′ = −= ρ αα′+ββ∑′ αα ββ′ ′ ρββ′ −ρββ′ (8.3.20) である.

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8. 4 演算子形式の主導方程式 103 8. 4 演算子形式の主導方程式 無秩序な摂動ハミルトニアンが,次章で述べるように,もう少し具体的に空間座標に よる部分A とスピン座標による部分 T の積で, (8.4.1) 2 ( ) ( ) 1 2 ( ) ( 1)q q ( ) q q H t A t T − =− = ∑ − と表される場合を考える.空間座標による部分は時間の無秩序関数で (8.4.2) ( )*q ( 1)q ( ) A = − Aq q T を満たし,スピン座標による部分は ( )q ( 1)q ( ) T + = − − (8.4.3) を満たすとする.+はエルミート共役を表す.相互作用表示で表した無秩序摂動ハミル トニアンの行列要素はH0の固有状態の間で * ( ) ( ) 1 ( | | ) ( 1)q q ( )( | q | ) i t q H A t T e(α α) α α = α − α − ′ となるので,T( )q の部分は ( ) 0 ( ) 0 ( ) ( ) ( ) , q p iH t iH t i t q q q p p p e =Te= =Teω− ω − =ωpq ) (8.4.4) と表すことができる.したがって, (8.4.5) ( ) * ( ) ( 1( ) ( 1) ( ) q p iw t q q q p q p H t =∑ ∑ − A t Te− 空間座標の関数の相関関数を ( )q ( ) ( )q ( ) ( 1)q ( )q ( ) ( )*q ( ) ( 1)q ( )q ( ) q q q q A t At+τ =δ − ′ − A t A t+τ =δ − ′ − c τ (8.4.6) とする.これは実の偶関数である.(8.4.5)を(8.3.7)に入れ, * ββ ρ を(ρββ* ( )t −ρβ0β)で置 き換え,バーを省略すると, ( ) * ( ) ( ) * ( ) 0 2 , 0 1 '[ q ,[ q ,( ( ) )]] ( 1)q q ( ) iwpq p p q p p d T T t c e d dt τ ρ ρ ρτ ′ ′ = − ∑ ∑ − ∫ − = τ (8.4.7) , ' p p′∑ は ( )q ( q) 0を満たす項(永年項)のみをとる. p p ω ω− ′ + = ここで,スペクトル密度関数を以下のように定義する. ( )q ( ) ( )q ( ) i J ω ∞ c τ e−ωτd −∞ = ∫ τ (8.4.8)

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第8章 磁気緩和Ⅰ 104 ( ) ( ) 0 ( ) ( ) q q i j ω = ∫c τ e−ωτdτ d (8.4.9) ( ) ( ) 0 ( ) sin( ) q q k ω = ∫c ωτ τ (8.4.10) ( )( ) 1 ( )( ) ( )( ) 2 q q q j ω = J ω −ik ω なので * ( ) ( ) * ( ) ( ) ( ) ( ) 0 2 , 1 1 '( 1) [ ,[ ,( ( ) )]]{ ( ) ( )} 2 q q q q q q p p p q p p d T T t J ik dt ρ − ρ ρ ω ω ′ ′ = − ∑ ∑ − − − = q p (8.4.11) 虚数部分はエネルギーのシフトを表すので,この部分を非摂動ハミルトニアンに組み込 むことができ * ( ) ( ) ( ) ( ) * 0 2 , 1 '( 1) ( )[ ,[ ,( ( ) )]] 2 q q q q q p p p q p p d J T T t dt ρ ωρ ′ ′ = − ∑ ∑ − − = ρ } (8.4.12) となる. 物理量B の観測値は (8.4.13) * { * B Tr ρ B < > = で求められる. (8.4.14) {[ ,[ , ]] } { [ ,[ , ]]} Tr A B C D =Tr C B A D の関係があるので,(8.4.12)の両辺にB をかけて対角和をとると * ( ) ( ) ( ) ( ) * 0 2 , 1 { '( 1) ( )[ ,[ ,( ( ) )]] } 2 q q q q q p p p q p p d Tr B Tr J T T t B dt ρ ωρ ′ ′ = − ∑ ∑ − − = ρ (8.4.15) あるは, * ( ) * ( ) ( ) ( 0 2 , 1 {( ( ) ) '( 1) ( )[ ,[ , ]]} 2 q q q q q p p p q p p d B Tr t J T T B dt ρ ρ ω − ′ ′ < > = − ∑ ∑ = ) (8.4.16) と表される. ( ) ( ) ( ) ( ) 2 , 1 '( 1) ( )[ ,[ , ]] 2 q q q q q p p p q p p b J ω T − ′ ′ = ∑ ∑ − = T B } (8.4.17) (8.4.18a) * { * b Tr ρ b < > = 0 { 0 } b =Tr ρ b (8.4.18b) とおくと * * 0 ( d B b b dt < > = − < > − ) (8.4.19) が得られる.BとしてIZを選ぶと,磁化のz成分の時間変化を知ることができる.

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文献 105 緩和は揺動する局所磁場によって引き起こされるエネルギー準位間の遷移である.局 所磁場の原因として,双極子―双極子相互作用,四重極子相互作用,化学シフト異方性, スカラー相互作用等があり,揺動の原因として熱運動,化学交換,電子スピン緩和や四 重極緩和等の相互作用する相手の磁気緩和がある.緩和の速さはエネルギー準位間の遷 移確率であり,揺動局所磁場の大きさの2乗平均と揺動のスペクトル密度で決まる.以 下の章では緩和の原因となるいくつかの具体的な相互作用について考える. 文献

1) F. Bloch, Phys. Rev. 70, 460(1946).

2) N. Bloembergen, E. M. Purcell, and R. V. Pound, Phys. Rev. 73, 679(1948).

3) R. Kubo and K. Tomita, J. Phys. Soc. Jpn. 9, 888(1954).

4) I. Solomon, Phys. Rev. 99, 559(1955).

5) A. C. Redfield, IBM J. Res. Develop.1, 19(1957).

6) A. Abragam, “The Principles of Nuclear Magnetism”, Clarendon Press, Oxford, 1963. 富田

参照

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