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認知症の予防と支援に役立つ人工知能と高齢者とともにつくる認知症予防支援サービスの開発

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1.は じ め に

団塊の世代が 75 歳を超える 2025 年まで,あと 10 年 を切った.執筆時点では,前期高齢者とされる 65 歳を 超えたばかりで元気な人が多いが,75 歳を超えると健 康に問題を抱える人の割合が増えることが予想される. 高齢者が多数派となる近未来社会において,一人でも多 くの高齢者が,一年でも長く自立した生活を送ることが 求められる.余力がある高齢者は,若者,次世代を支援 する役割も期待される.そのためには,高齢者が防ぎ得 る認知症にかからない社会を実現するための手法,技術, サービスと,それらが社会で活用される仕組みを開発す る必要がある.このような考えのもと,著者は,高齢者 の認知機能維持や向上につながる会話を支援することを 目的とする手法,共想法を考案し [Otake 11, 大武 12b], 手法を改良し,システム,サービスを開発し,社会実装 を進めながら,超高齢社会の担い手となる高齢者ととも に探索研究する新たなアプローチに挑戦している.この 研究を推進するに当たり,本学会近未来チャレンジの仕 組みを活用し,2007 年度全国大会でテーマを提案, 2008年から 2012 年まで,近未来チャレンジセッション 「認知症予防回復支援サービスの開発と忘却の科学」を 主催した [大武 09a, 大武 09b, 大武 10].近未来チャレン ジとは,5 年以内で社会貢献できる現実路線の人工知能 技術を募集し,優れたものを学会としてサポートするこ とにより,強力な AI 技術を世の中に送り出すことを目 的とする仕組みである.2007 年から 2011 年まで 5 回の 審査に合格し,5 年以内で社会貢献することに成功し, 2012年に修了認定を受けた.その後,2013 年には国際

セッション「Cognitive Training and Assistive Technology for Aging」[大武 13],2014 年にはジェロンテクノロジー に関する国際会議においてシンポジウム「Application and Acceptance of Technology for People with Dementia and People Who Care for Them: Towards Assistive Intelligence via Artificial Intelligence」 [Otake 14a],2015 年には日本─スイス共同ワークショッ プ「Aging,Health and Technology」を開催し,関連研 究者とのネットワークを広げている.2013 年には,竹 林らが近未来チャレンジにおいて「認知症の人の情動理 解基盤技術とコミュニケーション支援への応用」を提案, 2014年よりセッションが開催されている [竹林 14].城 戸らは,米国人工知能学会の春のシンポジウムで,健康 や幸福に資する人工知能技術に関するワークショップを 開催しており,2014 年のテーマは「Big Data Becomes Personal─発見情報学が拓くヘルス & ウェルネス─」 [城戸 14],2015 年のテーマは「Ambient Intelligence for Health and Cognitive Enhancement─人の認知を拡 張し健康を促進する環境知能─」[城戸 15],2016 年のテー マ は「Wellbeing Computing: AI Meets Health and Happiness Science」であった.2016 年の本学会国際シ ンポジウムで,福田らは,ワークショップ「Healthy Aging Tech Mashup Service, Data and People」を開催 している [大武 16b].人工知能が認知症や高齢者の健康 や生活の質向上に役立つことの共通認識が生まれ,領域 としての発展が期待できる状況にある [大武 13]. 本稿では,これまでに開催されたセッションなどでの 研究発表を起点に,認知症の予防と支援に役立つ人工知 能について議論する.いずれも,技術開発と社会実装に は,当事者である高齢者や関係者の参加や関与が不可欠

認知症の予防と支援に役立つ人工知能と

高齢者とともにつくる認知症予防

支援サービスの開発

AI for Prevention of Dementia and Assisting People with Dementia and

Development of Support Services for Prevention of Dementia Co-created

with Older Adults

大武 美保子

千葉大学,NPO 法人ほのぼの研究所,科学技術振興機構

Mihoko Otake Chiba University. / Fonobono Research Institute. / Japan Science and Technology Agency. otake@chiba-u.jp

Keywords:

prevention of dementia, assistance of people with dementia, coimagination, co-creation, cognitive activity support, older adults, participatory approach.

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である.方法論を含めて示すことを目的として,著者が 高齢者とともにつくっている認知症予防支援サービスの 開発について,本学会近未来チャレンジセッションで高 齢者自身が発表した内容と,その後の展開を紹介する.

2.認 知 症 の 定 義

認知症の予防と,認知症の人を支援する技術を開発す るためには,認知症に関する理解を深める必要がある. 認知症の定義を整理し,認知症になると困難になること について述べる [浦上 13, 矢冨 08]. 認知症の定義は,一度発達した認知機能が,後天的な 障害によって持続的に低下し,日常生活や社会生活に支 障をきたすようになった状態を指す.最もよく用いられ ている精神疾患の分類と診断の手引きによれば,認知症 の診断基準は,記憶障害と認知障害からなる障害が認め られ,それが原因で,社会生活上,職業上,明らかに支 障をきたしており,以前の水準から著しく低下している こと,障害は,せん妄の経過中のみに起こるものではな いこと,とされている,認知症の診断基準における認知 障害は,失語,失行,失認,実行機能障害のうち一つあ るいは複数が認められることと定義される.失語,失行, 失認,実行機能障害の定義を表 1 に示す.障害される機 能は,知能ロボットに必要なものとして,人工的に実現 が試みられている機能と重なる.認知症は,人間の知的 能力が低下する病であることから,人工知能が認知症支 援に役立つ. 認知症の症状は,中核症状と周辺症状の二つに分類で きる.中核症状とは,上述の記憶障害と認知障害を指し, 認知症の本質的な症状である.認知症の人全般に出現す る.これに対し,中核症状や不適切な介護,環境などに よって,二次的に出現する行動障害や感情の変化などを, 周辺症状,もしくは行動,心理症状と呼ぶ.妄想,幻覚, 不安,焦燥,せん妄,睡眠障害,多弁,多動,依存,異食, 過食,徘徊,不潔,暴力,暴言などがある.周辺症状は, 心理的状況や性格,周囲の関わり方,環境などによって 現れ方が異なり,すべてに見られるわけではない.診断 基準とその症状からわかるように,認知症は,疾患その ものと,生活および社会環境の組合せで現れる社会的な 病である.

3.認知症の人の支援に役立つ人工知能

認知症への理解を深めることにつながるため,認知症 の予防の前に,認知症の人の支援の考え方について述べ る.これに基づいて,認知症の人の支援に役立つ人工知 能について述べる. 認知症の人を支援する人工知能は,認知症の人を直接 的に支援するものと,認知症の人を支援する人,具体的 には家族や地域住民,医療関係者らを間接的に支援する ものに大別される.両方の基礎となるのは,行動観察に 基づくモデル化である.以下,中核症状と周辺症状につ いて,それぞれ典型的なアプローチを紹介する. 3·1 中核症状へのアプローチ 行動観察に基づくモデル化の研究として,細馬らによ る,中核症状の一つである実行機能障害により,困難を 期待している日常生活動作を分析した研究がある.具体 的には,介護施設において,食事を終えた後,下膳でき ない認知症患者について,その理由は,ステップ実行の 手順の誤りであることを明らかにした [細馬 10a, 細馬 10b].下膳するためには,一度トレイを食卓に置き,ま ず椅子を引いて自分が立ち上がってから,トレイをもち 上げる必要がある.しかし,下膳しようという目的に即 して,座ったままトレイをもち上げてしまい,椅子を後 ろに引けないので,立ち上がることができず,動けなく なったのである.目的に向かう途中で,一見目的と直結 しない動作を間にはさむといった,動作計画ができない か,あるいは,できたとしても,それを記憶しておいて 順にステップ実行することができなくなっているため に,このようなことが起こる.実行機能障害により日常 生活動作ができなくなっている人を支援するには,日常 生活動作を分析し,ステップに分解し,ステップ実行を 外部化するとよい. 実行機能障害がある人の支援としては,できないこと に必要な機能を,少し外から補うことで,できるように する方法がある.一連の手順がわからなくなるために実 行できない動作を,ステップに分解し,一つずつ指示を 出すことで,できるようにする.例えば,トイレの排泄 支援の場合,トイレのふたを開く,ズボンを下ろす,ふ たに背を向けて座る,排泄する,要素に分解できるが, その手順がわからなくなると,ズボンを下ろす前に排泄 しようとしたり,ふたを閉めたまま座ったりして,うま くいかなくなる.安田らは,このようなとき,一つず つ順にすべき動作の指示を出すシステムを開発すること で,一連の動作の流れを自分では組み立てられなくて も,実行することが可能になることを示した [安田 08]. Mihailidis らは,手洗い動作について支援することに成 功した [Mihailidis 04]. 行動観察に基づくモデル化は,介護施設において,介 表 1 認知症における認知障害 障 害 定 義 失 語 言葉を見つけ出したり,理解することができない 失 行 運動機能は損なわれていないにもかかわらず,動作を遂行することができない 失 認 感覚機能は損なわれていないにもかかわらず,対象を認識あるいは同定することができない 実行機能 障害 計画を立てる,組織立てる,順序立てる,抽象化することなどができない

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護者が日常的に行っていることである.困難をきたして いる場面を分析し,何が原因でできないかを考え,でき ない部分は介護者が補い,できる部分を本人ができるよ う支援するのである.認知症の人は,機能低下が一様に 起こるのではなく,障害される機能に個人差があるため, 介護する際は,一人一人の症状を把握し,何ができて, 何ができないかを,見極めることが求められる.これは, 日常生活の様子から,細馬らが行ったような観察を行 い,原因を特定する高いスキルが求められる.すべての 介護者が,そのようなスキルを最初からもっていたわけ ではないので,高いスキルをもつ介護者が,そういった 観察と考察を記録し,他の介護者と情報共有することが 有効である.このような,患者情報の記録や利活用によ る知識伝達をすること,さらには,そういった記録を取 ろうとしたり,参照したりすることで,介護者の観察ス キルを高めることを支援する,気付きの支援技術などが 有効である.認知症に特化しているわけではないが,内 平らのつぶやき介護記録システムや [平林 13, 内平 13], 福田,西村らの介護記録支援システムが役立つ [Fukuda 14, Nishimura14]. 3·2 周辺症状へのアプローチ 機能低下によりできないことが増えて,自信を失った り,不安な気持ちになったり,暴力などの周辺症状が引 き起こされることがある.認知症になっても,すべての 機能が低下するのではなく,残存機能もある.機能が低 下してもできることをする機会をつくることで,残存機 能を活用し,情動を安定化し,周辺症状を緩和すること が期待できる.認知症の人に直接働きかける支援として, 遠隔記憶や言語機能の活用支援があげられる. 認知症になると,数分前から数日前という,近時記憶 が最初に失われる.症状が進むと,子供時代までさかの ぼる遠隔記憶のみ残る.安田らは,残存機能である,遠 隔記憶の想起を支援する,本人にとって良い気分を思い 起こさせるような思い出の写真を編集した動画を作成 し,患者に見せることで,情動を安定化することができ ることを示した [Yasuda 09].また,認知症になると, 短期記憶機能が低下するため,少し前に話したことを忘 れてしまい,何度でも同じ話を繰り返す症状が見られる. これも,人間ではしだいに相手にされなくなることが多 いが,中野らは,会話エージェントに置き換えることで, 患者が相手に嫌がられる経験をせずに,会話を楽しむこ とができることを示した [Sakai 12].会話をすることを 通じて,発話機能や,言語認識などの,言語機能を活用 することができる.嫌な顔をされないことで,不安感が 減り,情動が安定する効果が期待できる.このほか,情 動に直接働きかける支援として,和田らは,アニマルセ ラピーを参考に,ロボットセラピーを目的として開発さ れたアザラシ型ロボットが,介護施設において認知症高 齢者の情動を落ち着かせたと報告している [和田 06]. 周辺症状に対する,認知症の人を支援する介護者など への間接的な支援として,前節で述べた中核症状に対す る支援と同様,知識共有とスキル獲得の支援が有効であ る.竹林らは,認知症の周辺症状の事例に対して,その ケアの対処方法や技術,考え方など多数の注釈が付与さ れたマルチモーダル認知症コーパスを構築している [ 竹 林 14].介護者の目が行き届かない死角をなくし,誤っ て施設外に出て迷子になることを防ぐため,赤外線セン サやカメラなどを用いた見守りシステムが提案されてい る.藤波らは,患者のプライバシーや,介護者の監視に つながるとする,介護者からの反発などを招く場合があ ることが報告されているが [ 杉原 10],近年では実用化 している.

4.認知症の予防に役立つ人工知能

認知症の予防を支援する人工知能について説明するた めに,認知症の予防に関する基本的な考え方を整理する [浦上 13, 矢冨 08].本章は,認知症の予防に役立つ ICT [大武 15b] に基づいて概要を述べる.詳細は [大武 15b] を参照されたい. 認知症が防げるかどうかは,専門家の間でも意見が分 かれる.認知症は,症状で定義される病気なので,原因 疾患が複数ある.すべての病気と同様に,絶対にかから ない方法はないが,中にはかかるリスクを減らす努力が できる疾患もある.認知症の原因疾患は,60 種類以上 あるとされる.認知症の予防といったときに,主に想定 されるのは,両者を合わせて全体の 70% 程度を占める とされるアルツハイマー型と脳血管性認知症である.こ れらは,発症のリスクを高める危険因子や,発症のリス クを抑える抑制因子が知られている,著者が考える防ぎ 得る認知症にかからない社会とは,かかるリスクを減ら す活動を,社会を構成する人が自然に行える仕組みが備 わった社会である. 広義の予防には三段階,一次予防,二次予防,三次予 防がある [浦上 13].認知症における一次予防とは,認 知症にならないよう発症を予防することである.認知症 における二次予防とは,認知症の早期発見と進行を遅ら せる支援を行うことである.認知症における三次予防と は,認知症になっても人間の尊厳をもって暮らし続けら れるよう支援することである.どの段階の予防について も,疾患そのものに働きかけることと,生活および社会 環境を整えること,両方向からのアプローチが有効であ る.三次予防は,前章に述べた認知症の人の支援に相当 することから,一次予防,二次予防に役立つ人工知能に ついて述べる. 4·1 認知症の一次予防に役立つ人工知能 認知症の一次予防とは,認知症の発症を防ぐことであ る.認知症の発症を防ぐには,認知症の発症のリスクを

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高める危険因子を取り除くことが有効である.危険因子 としてあげられるのは,糖尿病,高血圧,喫煙習慣,心 臓病,うつ病である.生活習慣を改善し,これらの病気 を防いだり,症状を抑えたりすることで,発症する確率 を下げることができる.逆に,認知症の発症のリスクを 抑える抑制因子を,生活の中に積極的に取り入れること も有効である.抑制因子には,食事,運動,知的活動, 社会的交流があげられる [矢冨 08].危険因子を取り除 くためには,生活習慣を改善し,認知症の発症率を高め る,中年期からかかりやすい生活習慣病を防ぐことが有 効である.これには,健康管理を支援する技術が有効で ある.健康管理には,抑制因子にも含まれる,食事と運 動の管理が有効である.食事については,例えば,画像 から食事の栄養成分やカロリーを計算する技術が役立つ [Aizawa 13].また,運動については,加速度センサに より運動量を推定する技術により管理できる.いずれも, 物体認識や機械学習とデータマイニングなどの人工知能 が役立つ.抑制因子のうち,知的活動と社会的交流の支 援は,ゲームやコミュニケーション支援など,いずれも 人工知能の得意とするものである. 4·2 認知症の二次予防に役立つ人工知能 認知症の二次予防とは,認知症の前段階で早期診断し, 認知症への進行を遅らせることである.日常生活や社会 生活に支障をきたさない段階で,認知症の前段階である 軽度認知障害と診断することで,認知症への進行を抑制 するためのリハビリなどを行うことができる.軽度認知 障害の段階で低下する機能を訓練することで,認知機能 を担う神経ネットワークを強化し,疾患による悪影響を 少なくすることができると考えられているからである. 早期診断のために,認知機能の低下を検出する技術は, 盛んに研究がされている.加藤らは,脳機能計測データ や,検査時の受け答えの音声から,認知機能と相関のあ る特徴量を抽出する技術を開発した [加藤 11, 加藤 12]. 既存の認知機能検査をタブレットなどを用いて簡便に行 うスクリーニングツールなどが開発されている [Onoda 13].軽度認知障害の段階で低下する認知機能は,体験 記憶,注意分割機能,計画力を含む実行機能である.定 義を表 2 に示す.軽度認知障害の段階で低下する認知機 能を活用する活動として,ウォーキング,料理,パソコン, 旅行,園芸,会話などがあげられる.認知機能を活用す るように工夫を加えることでさらに効果が上がるとされ る.

5.高齢者とともにつくる認知症予防支援

サービスの開発

本章では,著者の共同研究者である高齢者による,人 工知能学会近未来チャレンジセッションにおける研究発 表に基づいて,著者が高齢者とともにつくっている認知 症予防支援サービスの開発について紹介する.サービス 実施に基づいて開発した基盤技術についても併せて述べ る. 前提となる知識として,サービスの基盤となる手法, 共想法と,その研究拠点であるほのぼの研究所について 述べる. 共想法は,軽度認知障害において低下する認知機 能を活用するように工夫を加えた会話支援技術である [Otake 11, 大武 12b].主として一次予防と二次予防の段 階で用いることを意図して設計されているが,三次予防 の段階でも活用することができる.共想法は次の二つの ルールで定義される会話支援手法である.1)テーマを あらかじめ設定して,参加者が写真と話題をもち寄る,2) 順序ともち時間を均等に決めて,話題提供する時間と, 質疑応答する時間を分け,参加者に聞くことと話すこと のバランスのとれた会話の機会をつくる.テーマに沿っ て話題と写真を用意する工夫により,体験記憶の活用を 支援できる.また,もち時間を決めて稠密かつ双方向に する工夫により,話すことと聞くことの複数のことに同 時に注意を向ける注意分割機能の活用と,時間内にまと まるよう組み立てて話す計画力を含む実行機能の活用を 支援できる.共想法をスムーズに実施し,実施と同時に 記録が残せるよう,共想法支援システムを開発し,運用 している.司会者は,スクリーンに映し出される画面を 操作しながら,参加者に発言を促す.記録者は,各時刻 における発話者を記録する. ほのぼの研究所は,認知症予防を目的とする会話支援 手法,共想法を,効果的に実施する手順と社会実装手法 を研究し,防ぎ得る認知症にかからない社会の実現に貢 献することを目的として,2007 年 7 月に,研究拠点と して設立された.そして,2008 年 7 月に,研究拠点の 運営組織を NPO 法人化した.実践研究を中心的に担っ てきたのは,執筆現在,平均年齢 70 歳代,最高 90 歳代 の,市民研究員と名付けた高齢者である.最初は共想法 に参加した人が実施者・運営側となり,市民研究員とし て活躍している.脳血管障害を経験された方,足腰が悪 い方,耳が遠い方も参加している.市民研究員は,共想 法の実施研究の共同研究者として,共想法の新しい実施 方法を発見している.さらに,大学,企業,自治体,公 的機関,病院,介護施設,福祉活動 NPO と連携し,多 世代での協働事業を実践している. 表 2 軽度認知障害において低下する認知機能 認知機能 定 義 体験記憶 出来事を記憶して思い出す機能 注意分割 機能 複数の作業を並行して行うときに,適切に注意を振り分ける機能 実行機能 行動の目標を設定し,うまく遂行できるように計画を立て,抽象化し,行動を監視する管理能力

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5·1 共想法の市民参加型実施手法の開発 [長谷川 08] 2008年に開催された,1 回目の近未来チャレンジセッ ションでは,研究拠点ほのぼの研究所において,参加者 の一部が実施者となり,共想法に基づく認知症予防の実 践研究の担い手となる基本的な手順について,ほのぼの 研究所の市民研究員が発表した.千葉県柏市介護予防セ ンターにおいて,4 回の会話セッションから構成される 共想法プログラムに参加した高齢者の一部が,次に開催 された共想法プログラムの司会者を交互に務めたことを 報告した.発表者は,2007 年に実施された,世界初の 共想法の参加者で,ほのぼの研究所が開所した当初から の市民研究員である.発表当時 84 歳であった.以後毎年, 近未来チャレンジセッションにおいて市民研究員が発表 を行った. 5·2 社会的知性に基づく共想法実施人材の養成 [蓼沼 09] 千葉県生涯学習センターの依頼を受けて,全 15 回の 連続講座「認知症の予防」を開催した際の実施手順と, 実施を通じて得られた知見について述べた.4 回の会話 セッションから成るプログラムを 2 度実施し,その間に 公開講演会や演習を挟む構成とした.前半は,市民研究 員がチューターを務め,受講者が実施者となる際に行う 作業を実演して見せた.後半では,前半で共想法に参加 した受講者が共想法実施者となった.チューターを務め る市民研究員は,新たに募集した会話セッション参加者 と,受講者の両方に目配りした.共想法参加者,受講者, チューターの配置を図 1 に示す.社会的交流を支える知 能,社会的知能に着目し,共想法実施者と参加者がとも に社会的知性を磨きあうことが重要であると述べた.こ のとき,聞くことと話すことのバランスが取れた社会的 交流がなされているかを確かめる評価手法として,会話 双方向性計測法を考案した [大武 09a, Otake 11]. 5·3 持続可能な共想法に基づくサービス提供手法の開発 [前川 10] 全 15 回の講座は,参加者にとっても実施者にとって も負担が大きかったことから,短いサイクルの講座を繰 り返し実施することで,参加者がニーズに応じて多様な 参加方法を選びながら,その一部が段階的に実施者とな る,持続可能なサービス提供手法について報告した.具 体的には,2 回の座学と 1 回の実習の計 3 回で構成され る体験コースを開催し,希望者が,その後,4 回の会話 セッションから成る,標準共想法と名付けたプログラム に参加する仕組みとした.さらに,標準共想法参加者の 中の希望者が,共想法実施者になる仕組みとした(図 2). 高齢者が参加者,実施者になるうえでの難しさについて, 健康や体力,ストレス耐性の弱さなどをあげ考察した. 5·4 介護福祉施設における共想法実施手法の開発 [塚脇 11] 会話支援手法を,多様な認知機能の高齢者に適用し, そのために必要な工夫と,得られる効果について検討す るため,介護施設において共想法を実施する取組みにつ いて報告した.要介護者を対象とする実施における工夫 について述べた.1)話し手もしくは聞き手となる参加 者のそばで話を引き出したり,話を聞き取って全体に伝 える,補助司会者を置くことが有効である,2)一人ず つの視聴覚機能や認知機能低下に配慮すること,3)人 数を減らし,もち時間を短くするなどして,集中力が持 続する時間に収めること,などである.実施を通じ,周 囲からの質問に答えようとすることで,参加者が話題提 供時に用いられなかった新たな言葉の量を調べる,会話 相互作用量計測法を考案した [大武 10].感覚や行動を表 す単語や写真を用いて問いかけることで,認知機能が低 下した高齢者の発話が促されることを確かめた [Otake 12a].また,司会者,補助司会者の声掛けスキルをロボッ トに実装する取組みを行った [大武 14c]. 図 1 共想法参加者,実施者,チューターの配置 図 2 持続可能なサービス提供手法の概念図

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5·5 認知症予防支援人材養成課程の開発 [佐藤 12] 初期の認知症高齢者,軽度認知障害高齢者,要介護者, 健常高齢者など,状態に応じた個別適合型認知活動支援 の手法を明らかにすることを目的として,問合せがあっ た介護施設や病院,福祉活動 NPO における実施を支援 する形で実践研究を展開している [Otake 14b].これま でに,長崎県の病院,茨城県の介護施設,大阪府の介護 施設,埼玉県の福祉施設と協働で,医師,看護師,作業 療法士,臨床心理士,保育士,健常高齢者の実施者の協 力を得て,共想法を実施している.また,定常的な実施 として,入門,継続,研修コースを開催した.以下,執 筆時点まで継続している継続コースについて述べる.継 続コースは,2 週間に 1 回のペースで,月 2 回,合計 4 回の会話セッションを 1 セットとし,これを,夏学期, 秋学期,冬学期の 3 回,年 3 セット行うものである.共 想法に継続的に参加したいという参加者の要望に応える 実施上のニーズと,継続的に実施した場合の長期的な効 果を明らかにしたいという研究上のニーズから,2011 年から,共想法継続コースを開始した.継続コースに参 加している参加者を対象に,定期的に認知機能検査を行 い,認知機能が維持されていることを確かめている.以 上の実施状況と,異なる施設に勤務する実施者を育成す る取組みを報告し,人材養成に共通する手法として,相 互学習が有効であると述べた.この発表は,2012 年に 開催された近未来チャレンジ卒業セッションにおいて 行った関係で,パネルディスカッション形式で行い,パ ネルディスカッションの司会を遠隔操作型ロボットが 行った.図 3 にパネルディスカッションの様子を示す. 中央が小型卓上ロボット,左右にパネリスト,左手のパ ネリストの後ろに操作者を配置した.併せて,インタラ クティブセッションでポスター発表とロボットのデモン ストレーションを行った.一連の発表とロボットの操作 を 3 名の市民研究員が担当した. 5·6 街歩き共想法の開発 [大武 15a, 大武 15c] 共想法継続コースを実施する中で,共想法に効果的に 参加するためには,すでに撮影した写真をもち寄るので はなく,テーマを与えられてからそのテーマに沿った写 真を新たに撮影し,そのときの体験について話題提供を するプロセスを踏むことが重要とわかってきた.このよ うにすることで,加齢とともに低下しやすく,認知症の 初期に低下する,最近のことに関する近時記憶を,共想 法に継続して参加することで活用できることになる.す なわち,話題探しが重要ということである.共想法継続 コースで得られた知見を踏まえ,話題探しをする機会と して,街歩きをし,写真を撮影し,そこでの体験につい て撮影した写真を用いて会話する,街歩き共想法プログ ラムを考案した.「今日一緒にでかけて,今日あったこ とを今日話す」場づくりをする.執筆時点までに,東京 都,千葉県,茨城県,埼玉県,愛知県の全 8 か所で,計 9回開催した(表 3).発話に含まれる,現在,過去,未 来の時間を推定する技術 [Khoo 16, Onoda 15, 大武 15a, Otuki 15]とともに開発している. 5·7 学生インターンシップの受入れによる多世代共創 活動を通じて,高齢社会の担い手は,高齢者のみなら ず,高齢社会を構成する全世代であるとの視点を得た. そこで,千葉大学のインターンシップ型授業科目「地域 NPO 活動体験」を通じて,6 名の学生を受け入れ,街 歩き共想法を企画運営する課題を出し,人材育成に当 たった.年功序列の旧弊に陥らぬよう,高齢者がこれま での街歩き共想法の実施を踏まえた実施方法について講 義し,学生はそれを受けて,自ら企画立案,実施,報告 の一連を主体的に推進し,高齢者がそれをフォローする 形とした.このようにすることで,多世代が相互にフラッ トな関係で協力し,サービスを共創できることを確かめ た.このようにして 8 回目の千葉県成田市成田山新勝寺 で開催した街歩き共想法は,千葉大学のインターンシッ プ型授業の一環として行った.実施を通じて,プログラ ムを実施できる人材を育成することができた. 5·8 企業との協働による事業化への取組み 上記インターンシップは,共想法の事業化を検討する ことを目的として,企業との連携により開催した.街歩 きの企画と手配は,旅行会社の協力を得た.また,街歩 図 3 近未来チャレンジ卒業セッションにおけるパネルディス カッション 表 3 実施した街歩き共想法 回 数 会 場 場 所 1 谷中根津千駄木 東京都台東区 2 真壁のひなまつり 茨城県桜川市真壁町 3 海浜ニュータウン 千葉県千葉市 4 柏の葉スマートシティ 千葉県柏市 5 スキップシティ 埼玉県川口市 6 足助町旧市街 愛知県豊田市足助町 7 柏の葉スマートシティ 千葉県柏市 8 成田山新勝寺 千葉県成田市 9 鹿手袋 埼玉県さいたま市

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き共想法で集まった話題と写真を編集してフォトブック にまとめる,本づくり街歩き共想法を,印刷会社の協力 を得て行った.街歩きや会話というコトをフォトブック というモノにし,サービスにつなげる可能性を検討する 取組みである.共想法に高齢者が好む観光の要素を加え, フォトブックという形にすることで,付加価値を高め, 営利活動として事業化する可能性を検討している.

6.お わ り に

本稿では,認知症の課題解決に役立つ人工知能に関す る研究について,認知症の定義と,認知症の人の支援, 認知症の予防に分けて述べた.そして,高齢者とともに つくっている認知症予防サービスの開発の取組みを紹介 した.人工知能の発達に伴い,既存の職業が人工知能に 取って代わられると予想されている.技術を開発すると 同時に,それを活用して認知症予防事業を開発し,事業 に携わる多様な職業を生み出していきたいと考えてい る.本誌 31 巻 2 号(Vol. 31, No. 2, p. 167)の巻頭言「生 活の中で普通のことを適当にする知能」[大武 16a] で述 べたように,認知症になるとできなくなるタスクは,人 工知能にとっても難しいタスクである.認知症の課題解 決に取り組むことを通じて,人間の知能の本質に迫るこ とができると期待される.著者は,防ぎ得る認知症にか からない社会を,日本の高齢化が最も進み,団塊ジュ ニア世代が 75 歳を超える,遅くとも 2050 年までに実 現することを目指している.そのために,団塊の世代が 75歳を超える 2025 年に向けて,認知症予防事業を次々 と生み出すと同時に,基盤技術を開発していく計画であ る.本稿を読み,そのための活動をご支援もしくはご協 力,ご参加いただける方は,著者までご連絡いただけれ ば幸いである. 謝 辞 本研究は,科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業 の支援を受けて行った.ご指導,ご協力,ご支援いただ いたすべての関係者と参加者に感謝の意を表す.

◇ 参 考 文 献 ◇

[Aizawa 13] Aizawa, K., Maruyama, Y., Li, H. and Morikawa, C.: Food balance estimation by using personal dietary tendencies in a multimedia food log, IEEE Trans. Multimedia, Vol. 15, No. 8, pp. 2176-2185(2013)

[Fukuda 14] Fukuda, K., Hamasaki, M., Fukuhara, T., Fujii, R., Horita, M. and Nishimura, T.: Findings on hand-over system for care-workers in real operation, Proc. 2nd Int. Conf. on

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[Onoda 13] Onoda, K., Hamano, T., Nabika, Y., Aoyama, A., Takayoshi, H., Nakagawa, T., Ishihara,M., Mitaki, S., Yamaguchi, T., Oguro, H., Shiwaku, K. and Yamaguchi, S.: Validation of a new mass screening tool for cognitive impairment: Cognitive Assessment for Dementia, iPad version, Clinical Interventions in Aging, Vol. 8, pp. 353-360 (2013)

[Onoda 15] Onoda, K. and Otake, M.: Estimation of mental time by analysis of tense during conversation, Ambient Intelligence

for Health and Cognitive Enhancement, AAAI Spring Symposium, pp. 55-61(2015) [大武 09a] 大武美保子:認知症予防回復支援サービスの開発と忘却 の科学─共想法により社会的交流の場を生成する会話支援サー ビス─,人工知能学会論文誌,Vol. 24, No. 6, pp. 569-576(2009) [大武 09b] 大武美保子:認知症予防回復支援サービスの開発と忘 却の科学─マルチスケールサービス設計手法の提案─,人工知 能学会論文誌,Vol. 24, No. 2, pp. 295-302(2009) [大武 10] 大武美保子:認知症予防回復支援サービスの開発と忘却 の科学─会話における思考の状態遷移モデルと会話相互作用量 計測法の開発─,人工知能学会論文誌,Vol. 25, No. 5, pp. 662-669(2010)

[Otake 11] Otake, M., Kato, M., Takagi, T., Iwata, S. and Asama, H.: The coimagination method and its evaluation via the conversation interactivity measuring method, Jinglong Wu (Ed.), Early Detection and Rehabilitation Technologies for

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[Otake 12a] Otake, M., Nurzaman, S. G. and Iida, F.: Embodied cognition in psychological therapy, J. Cognitive Science, Vol. 13, No. 4, pp. 431-452(2012)

[大武 12b] 大武美保子:介護に役立つ共想法─認知症の予防と回 復のための新しいコミュニケーション,中央法規出版(2012) [大武 13] 大武美保子:認知症から見る人間の知能と人工知能によ

(8)

[塚脇 11] 塚脇章生,蓼沼芳保,佐藤由紀子 ほか:認知症予防回復 支援サービス「ふれあい共想法」の介護福祉施設における実施 手法の開発,人工知能学会第 25 回全国大会論文集(2011) [浦上 13] 浦上克哉,川瀬康裕,児玉直樹 編:認知症予防専門士テ キストブック,徳間書店(2013) [内平 13] 内平直志:音声つぶやきによる看護・介護サービスの記録・ 連携支援,人工知能学会誌,Vol. 26, No. 6, pp. 893-898(2013) [和田 06] 和田一義,柴田崇徳,谷江和雄:介護老人保健施設にお けるロボットセラピー─実験一年目における効果の評価,計測 自動制御学会論文集,Vol. 42, No. 4, pp. 386-392(2006) [Yasuda 09] Yasuda, K., Kuwabara, K., Kuwahara, N.,

Abe, S. and Tetsuntani, N.: Effectiveness of personalized reminiscence photo videos for individuals with dementia,

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(2009) [安田 08] 安田 清,岡崎芳樹,内海 章,山添大丈,阿部伸治:3 次 元計測を利用したトイレ動作支援システム : トイレ模擬環境で の評価,人工知能学会第 22 回全国大会論文集(2008) [矢冨 08] 矢冨直美,宇良千秋:「地域型認知症予防プログラム」実 践ガイド,中央法規出版(2008) 2016年 4 月 11 日 受理 大武 美保子(正会員) 1998年東京大学工学部卒業,2003 年同大学院工学系 研究科博士課程修了,博士(工学).東京大学特任助 手,講師,助教授,准教授を経て,2012 年千葉大学 大学院工学研究科准教授,現在に至る.認知症の祖 母との会話をきっかけに,双方向会話による認知症 予防研究に取り組む.2008 年市民と産官学が連携す る研究拠点として NPO 法人ほのぼの研究所を設立, 代表理事・所長を務める.2004 年より 2008 年まで,2010 年から現在まで, JSTさきがけ研究者を兼務.2014 年,平成 26 年度科学技術分野の文部科 学大臣表彰若手科学者賞受賞.主著は,「介護に役立つ共想法」(中央法規 出版,2012).

著 者 紹 介

[Otake 14a] Otake, M. and Fujinami, T.: Application and acceptance of technology for people with dementia and people who care for them: Towards assistive intelligence via artificial intelligence, Gerontechnology, Vol. 13, No. 2, p.116(2014) [Otake 14b] Otake, M.: Application of co-imagination method to

healthy older adults, older adults who need care, and older adults with dementia, Gerontechnology, Vol. 13, No. 2, pp. 119-120(2014) [大武 14c] 大武美保子:高齢者の認知活動を促進する会話支援ロ ボット,人工知能,Vol. 29, No. 6, pp. 591-598(2014) [大武 15a] 大武美保子:会話におけるこころの時間の推定と街 歩き共想法による体験記憶と近時記憶の支援,人工知能,Vol. 30,No. 6, pp. 745-750(2015) [大武 15b] 大武美保子:認知症予防に役立つ ICT ─防ぎ得る認 知症にかからない社会に向けて─,情報処理,Vol. 56, No. 2, pp.145-151(2015) [大武 15c] 大武美保子:認知症予防のための会話による体験記憶支 援技術の開発,老年看護学,Vol. 20, No. 1, pp. 36-40(2015) [大武 16a] 大武美保子:生活の中で普通のことを適当にする知能, 人工知能,Vol. 31, No. 2, p. 167(2016) [大武 16b] 大武美保子,倉橋節也,太田唯子:国際シンポジウム JSAI International Symposia on AI 2015(JSAI-isAI 2015) 開 催報告,人工知能,Vol. 31, No. 1, pp. 159-165(2016) [Otuki 15] Otuki, Y. and Otake, M.: Application of recent episodic

memory function for preparing and presenting topics of group conversation supported by coimagination method, Ambient

Intelligence for Health and Cognitive Enhancement, AAAI Spring Symposium, pp. 62 - 67(2015)

[Sakai 12] Sakai, Y., Nonaka, Y., Yasuda, K. and Nakano, Y.: Listener agent for elderly people with dementia, Proc. 7th

Annual ACM/IEEE Int. Conf. on Human Robot Interaction,

pp. 199-200(2012) [佐藤 12] 佐藤由紀子,田口良江,武下秀子 ほか:認知症予防支援 サ─ビス「ふれあい共想法」における人材育成課程の開発,人 工知能学会第 26 回全国大会論文集(2012) [杉原 10] 杉原太郎,藤波 努,高塚亮三:グループホームにおける 認知症高齢者の見守りを支援するカメラシステム開発および導 入に伴う問題,社会技術研究論文集,Vol. 7(2010) [竹林 14] 竹林洋一:認知症の人の暮らしをアシストする人工知能 技術,人工知能,Vol. 25, No. 5, pp. 5154-523(2014) [蓼沼 09] 蓼沼芳保,鵜目勲勇,鳰原吉也 ほか:認知症予防支援サー ビス「ふれあい共想法」における社会的知性に基づく人材の養成, 人工知能学会第 23 回全国大会論文集(2009)

参照

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■2019 年3月 10

(※1) 「社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会報告書」 (平成 29(2017)年 12 月 15 日)参照。.. (※2)